注意!

 

# 1 預言スコアの世界

脚本:面出明美/コンテ:こだま兼嗣/演出:佐藤照雄/作画監督:菱沼義仁

 原作発売から三年弱後に放映開始となった、テレビアニメ版の第一話です。なんとびっくりサンライズ制作。

 放映日時は、TOKYO MXが2008年10月3日の金曜夜9時から。翌々日の10月5日、日曜早朝1時55分(土曜深夜25時55分という扱われ方してますが)から大阪の毎日放送(MBS)、そのおよそ一時間後に中部日本放送(CBC)。バンダイチャンネルのインターネット一週間無料配信が二週間後の10月14日からでした。更に、BSデジタル放送のBS11での放送が10月31日より金曜夜11時。CS放送のアニマックスで11月3日の月曜夜7時からとなっています。ただし、MBSとCBCの初回放送は二話連続放映だったため、バンダイチャンネルで第一話が配信された今週現在、関西と中部日本の方は、既に第三〜四話まで視聴済みということになります。

 様々なインタビュー記事を読むと、企画が具体化したのは原作ゲームが出てから一年後くらい、2006年末〜2007年頭頃のようです。てっきりゲーム会社の方から企画を持っていったのだと思い込んでいたので、『テイルズ オブ マガジン』Vol.2の樋口プロデューサーのコラム記事に、サンライズ側から話が来たとあって驚きました。それだけ高い評価をされたということでしょうから、原作ファンとしては浮かれるばかり。アニメ制作スタッフが集められ始めたのは2007年の2月頃。とても余裕を持って作られているそうで、三か月前に情報開示された時点で全26話の脚本は全て完成。8月末からアフレコが開始されたそうですが、映像は完成している状態だそうです。

 このことを、放映開始前の様々な記事で声優さん方が口々に褒めていました。曰く、アフレコの時に絵が全部ある、細かいキャラの表情によって感情が示され、伏線が張られていて素晴らしいと。でも放映開始してからの座談会記事(『テイルズ オブ マガジン』Vol.2)では、表情が入ってしまっているから自分の解釈と合わずにやりにくいことがある、と仰っていて、ちょっとおかしかったです。どんなことでも物事は善し悪しなんですね。

 原作ゲームやドラマCDでは自分なりのキャラクター解釈を演技に込めることができていたけれど、アニメ版は映像が完成しているのでアニメスタッフの解釈に添うことになり、その意味で、より分業の度合いを高く感じるそうです。そっかー……。で。記事を読んで、なんとなく、一番窮屈に感じているのはジェイド役の声優さんっぽいなぁと思いました(笑)。絵が完成しちゃってると、アドリブなんかも入れにくいんでしょうしね。

 話がそれますが、この座談会記事で、『アビス』は発音しにくい特殊な言葉が多いという話題になり、ジェイド役の声優さんが「文字面のカッコよさばかりを、追求するな! と(笑)。それはもう、ずっと言ってることなんですけど。」と発言してらっしゃるのが。うーん。文字書きには痛い言葉かも。

 放映開始前の監督・副監督さんたちのコメントでは、とかく《原作どおり》という点がアピールされていたと思うのですが、開始後は《原作と違う点を楽しんでください》というコメント中心になったので、あれれと思いました(笑)。実際に観てみると、原作を尊重しつつ細かい範囲で再構成と補完を行っている感じ? 原作どおりとも言えますし、原作とは違うとも言えますね。

『テイルズ オブ マガジン』Vol.1のインタビューでは、監督さんは長髪ルークの性格等のキツい部分も原作どおりにやると仰っていましたが、実際は、やはりマイルドになっていました。な〜んだ。けどやっぱり、様々な制限のあるTVアニメなんだから当然なのでしょうか。

 

 第1話を見た結論を書けば、面白かったです。原作既知なので先を知りたくてワクワクするという感覚はありませんが、先がどんな風にアニメ化されているのかはワクワクします。これから半年、毎週楽しみに視聴したいなと思いました。

 原作未見の方々はどんな風に感じるんだろうという点に興味を持っていたんですが、感想ブログ等見て回ると、現時点では好意的な声ばかりで、なんだか嬉しかったです。



 では、以下にもっと重箱の隅をつついた感想を書きます。

 第一回目だからって重箱をつつき過ぎた…(^_^;)

 無駄に長くてくどいうえ、どーでもいいことしか書いていないので、それでも読んでみようという勇者のみ先へお進みください。





◆キャラクターデザインについて

 最初に公式サイトでキーイラストを見た時は、正直、冴えない絵に見えてショックでした。でも何度も見ているとその日のうちにだいぶ慣れて、次第に公表されていったPV動画やキャラクター設定画を見るにつけても、これなら問題ないなと安心していきました。実際に放映された映像を見ても、デザインで引っかかるような部分はなかったです。

 ゲームのキャラクターは衣装デザインが複雑で、描くのに手間のかかるものだそうですが、アニメ版のキャラクターデザインは、衣装の線を可能な限り省略せずに原作の雰囲気を再現したのが売りとのこと。某ホビー系アニメの超省略ぶりを思い出すと、無性にありがたい。ところでアニメ版のガイのタイツは結構厚手の布がゆったりしてる感じで、『ファンダム2』でゼロス言ったところの《ピチピチスパッツ》じゃないよね(笑)。ピチピチタイツ男の汚名返上か。

 放映開始前、公表された画面映像の中に幼少時代のルークとナタリアの姿があって、その衣装・キャラクターデザインが『電撃マ王』漫画版外伝1のオリジナル設定デザインそのままだったので、漫画版も参考にされてるんだなーと分かりました。

 しかし本音を言うと、『マ王』漫画版で幼少ルークが短髪にデザインされているのが、ちと不満だったので、あぁーTVA版にも採用されちゃうのかーこれで事実上完全唯一公式化やねーと、ちょっとしょんぼり。短髪子ルクも可愛いですけど、長い方が個人的に好きなので。保護されて屋敷にやって来たばかりのルークとか、髪が長い方が萌えます(笑)。

 放映開始してから漫画家さんが自ブログに書いておられたことには、外伝の内容がTVアニメ版に反映されるとのこと。それじゃ第一話に出てきたファブレ邸の庭の《森》は外伝1に出てくる謎の花畑と森の伏線なんですか(苦笑)。

 でも、外伝だけという訳じゃないんじゃないかなーというのが、私の現時点での印象です。キャラクター設定画の表情集を見ると、点目顔やビックリ顔など、一部の表情が『マ王』漫画版を参考にしてるっぽい気がする…。あと、ナタリアの愛国姫の衣装。原作ゲームのポリゴンだと後ろ側の裾が短いんですが、『マ王』漫画版では裾が長〜く描かれていて、それが凄く奇麗でお姫様っぽくて印象に残っていて。そしたらアニメ版のナタリアの衣装も、後ろ側の裾が長くなってました。いや。もしかしたらポリゴンで再現されていなかっただけで、原作ゲームの元デザインがそうだっただけなのかもしれませんけど。とにかく『マ王』漫画版と同じだなぁと思った。

 ところで、アニメ版のルークの顔立ち、特に目の辺りが何かに似ているような気がするなぁと引っ掛かっていたのですが、こないだ気付きました。原作ゲームのポリゴンのルークの顔によく似てるんだわ、これ。

 

◆OPについて

 原作ゲームと同じ『カルマ』を使ったのは、制作スタッフさんたちのこだわりと熱意が凄いと感じました。原作とアニメは別物ですから…という方向には逃げず、ひとまとまりの作品として考えているというのかな。やっぱりファンとしては嬉しい。安心感があります。ですが、曲の長さがゲーム版で使われたままの二分半ほどだったのには驚きました。TVアニメのOPは普通一分半くらいで、当然『カルマ』もそのように編集されると思っていたからです。

 んんん…。正直、毎週見るTVアニメのOPとしては長いなぁ…。それと、監督さんが仰るには、原作でアニメムービーだった部分をアニメ化する際は意図的に似せて作っているということで、OPもゲーム版のOPムービーを真似た…オマージュ的なカットが多かったんですが、これはあまりよくないと思いました。頭の中でゲーム版と比較してしまい、差異がやたらと目についてしまう。

 それと、音と映像のシンクロ度が低く、快感が感じにくいと思ったんですが、どーでしょう。途中に《今回のハイライト》みたいな感じで本編映像が流れるのですが、出来ればそれは、曲調が変わるところに挿入してほしかったです。「鏡なんだ僕ら互いに〜」のサビ部分とか。こう…『蒼き流星SPTレイズナー』のOPとかだと、歌の途中の間奏の所に《今回のハイライト》を入れてて、すっごくカッコよかったじゃないですか。でも『アビス』は切れ悪くだだ漏れるマヨネーズのよう…。

 ここで音と絵のシンクロが壊れてしまう感じで、そこ以降の映像の流れに、音楽との乖離感を感じてしまいました。六神将&ヴァンが次々出てくる辺りなんかは特に、音と関係なくダラダラ絵が流れているような感じで。もっとも、何度も繰り返して見ていたら、そんなに違和感を感じなくなりましたんで、単に慣れの問題なのか。

 トクナガで戦うアニスや、閃覇瞬連刃ぽい剣技を披露するガイは、むっちゃカッコよかったです。そしてルークとアッシュの対決シーンは、作画や動きの崩し癖みたいなところをオマージュしちゃうのかーと、えらくウケた(笑)。凝りすぎ(大笑)。Good Job!

 ラストの、ルークが仲間たちの所に笑顔で駆け寄って、青空をバックにタイトルが出るところは大好きです。幸せな感じ〜。

 OPはストーリーが進むと手が加えられていく(?)らしいので、どうなるのかも楽しみです。

 

◆EDについて

 いい歌ですよね。公式サイトで歌詞を見たとき、勝手に、ルークとティアの曲かなぁという印象を持ちました。前半はルーク視点で後半はティア視点、みたいな。後半には「強さと引き換えに差し出した 涙の在り処を」なんて、ティアの設定そのものみたいな歌詞もありますし。

 EDに使われているのは全体の歌詞をシャッフルした特殊なものですが、そちらに使われていない、フルバージョン後半の「あなたと繋いだこの歌を 歌いながら 迷いながら/私はここ 冒険の途中 ひとりにひとつ与えられてしまった 世界の真ん中」という部分が凄く好きです。そうだよね。一人一人が独立して自分の世界の中心にいて、ずっと自分の人生という冒険を続けているんだよなぁ。愛する人との別れのような辛い出来事があっても、旅は終わらずに……などと、独りよがりにイメージ。最後に「そしてきっと 平行な旅路の交差点で/今もずっと 始まりの二人が待ってる」と希望を持たせてあるのもいいですよね。未来の現実なのか、心の中の夢なのかは好き好きの解釈で。ルークとティアで始まりの二人と言うと、やっぱ、星空の下のタタル渓谷をイメージしちゃいます。

 EDは基本的に止め絵で構成。シロツメクサの花畑で遊ぶミュウ、ティア、イオンとアニス、ナタリア、見守るジェイドとガイって感じで。

 花冠をかぶるナタリアがむっちゃ可愛いです。愛らしいなっちゃんが見られただけで幸せ。ティアも綺麗で可愛い。お昼寝ミュウや、戯れるアニスとイオンは微笑ましい。ジェイドとガイは休日の行楽地のパパ。花畑にいるルークのイラストも見たかったなー。

 これらの全てのイラストに紫色の蝶が描き込まれています。私は「あ、青色ゴルゴンホド揚羽」と思ってました。アニスは蝶を捕ろうとしてるし(笑)。しかしWEB上の色んな感想を見て回ったら、ルークとアッシュのイラストのみ花畑ではなく蝶もいないので、この蝶はルークとアッシュの魂ではないかだとか、凄い考察が色々あって、深さに驚きました。『マ王』漫画版の作者さんは、花畑でナタリアが花冠をかぶっているのは、ご自分が描かれた外伝1の、幼少ナタリアがレプリカルークに花冠を被せるシーンを彷彿とさせると書いておられましたし。色んな見方がありますな。

 ルークとアッシュのイラストから、原作ゲームの戦闘突入画面を模した、画面全面にヒビが入ってパリーンと割れる切り替えで《次回予告映像》が流れ、それが終わるとミュウが「!」のエモーションバルーンを出して記憶陣(セーブポイント)を発見、中に入ってバイバイと手を振る動画で終了。記憶陣の動き方も忠実に再現です。細かく原作ネタを拾っていて、特に、《セーブポイント》に入って終了というのは、なんかすごーくいいなぁと思いました。「あー今日はこれで終わっとくか」というのが、物凄く実感できる。条件反射的に(笑)。

 ところで、EDの中に次回予告がはめ込んであるのが特殊だと、沢山の感想で見たのですが、そうだっけ…? 私はあまり沢山はアニメを見ていないのですが(田舎なので放映数自体少ないのれす)、最近(?)だと平成『ヤッターマン』のEDもそうでしたし、そんな珍しい手法じゃないよーな。けれど、OPが長い分、次回予告をEDの中に入れて尺を稼いでいるんだろうという大勢の見方には賛同っす。

 ちなみに、ティアのカットの後の間奏部分でフォニック文字の文章が出ますが、多分原作ファンの多くがなんて書いてあるか調べたんじゃないかと(笑)。「SEE YOU AGAIN SOON」。《次回もまた観てね》、ですね。

 ですが蝶がルークの魂だという考察の流れで見て行くと《またすぐに逢おうな》になるのかな。

追記。『テイルズ オブ マガジン』Vol.3に、OPとEDの絵コンテを担当した副監督さんの解説コメントが掲載されていました。EDが花畑で遊ぶパーティーメンバーなのは、OPのラストシーン、全員が草原に揃った絵のイメージを引っ張っているのだそうです。「物語が進んでいくとあの絵が持つ意味が、少しずつ違ってくるような、そんなふうになるといいかな、と。」とのことですが。…これはOPのラストシーンのことを言っているのかな。どんな意味が込められているんでしょうか。

 

◆音楽について

 音楽が、原作ゲームの音楽担当のメインでらした桜庭統さんということで、アニメ版のBGMはゲーム版のアレンジなんかもあるのかなぁと期待していたんですけど、とりあえずゲームと同じ音楽はなかったよーな。もしかしたらアレンジ曲があったりしたのかもしれませんが、私には分からなかった。

 ですが、聴いているとやっぱり、ゲーム版と同じ方の作った音楽だなぁというのは分かる感じ。

 BGMじゃないし桜庭さんの曲でもないけど、『譜歌』は原作ゲームそのままでした。『カルマ』と同じく、使用が実現したのは制作スタッフさんたちの熱意の賜物ですよね。嬉しかったです。

 


 

◆内容について

 OPの冒頭にアバンタイトルが入ってて、世界観の説明がしてあったとこ。

 一つの大きな大陸が別れて現代のオールドラントの地形になるシーンに、まず衝撃を覚えました。そ、そーだったんかー! これ、二千年前の譜術戦争フォニック・ウォーの時に起こったという地殻変動を表す描写ですよね? 地殻変動があったと原作関連資料の文字では読んでましたが、ここまで大規模なものだった…というか、たった二千年前までオールドラントがパンゲア状態だったとは想像もつかなかったんで。なんか一気に、譜術戦争に対して印象変わったです。そっかそっかー…。

 …って。え? そうじゃなくて、もしかして外殻を浮上させることによって地形が変わったって意味なのかな? うーん。今回だけじゃ分からないので次回以降に判断を保留。

 そんで、初回の説明で簡潔にしなきゃいけないので仕方ないですが、

「始祖ユリア・ジュエが、七番目の音素フォニム、ローレライから詠み取った、星の誕生から終焉までの出来事を預言スコアとし」

っていうの、間違ってもないけど正しくもない、ような…? 「星の誕生から終焉までの出来事」というのは厳密には惑星預言プラネットスコアのことで、ユリア以外の預言士スコアラーも日常の預言を詠むのだし。とかいうのは番組を見て行けば分かることなので、気にする必要はないんだけど《コアな原作ファン》らしく気にしてみた。

 始祖ユリアに関しては、母シュザンヌがローレライ教団と導師イオンについて説明してくれるシーンにもイメージ映像が流れて、興味深かったです。

 原作設定ではユリアには十人の弟子がいたことになっているんですが、画面にいたのは七人だけです。十人の弟子のうちの七人を特に七賢者と呼んだそうなので、その七人のことかなと思うんですが、気になったのは、弟子たちの中心に僧侶の服を着た線の細そうな若者がいること。てっきりダアトかなと思ったんですが、ダアトは七賢者に入ってないんですよね。裏切り者だから。……も、もしかしてフレイル・アルバートなのか? 一応初代導師だしなー。まあ違うでしょうけど。その隣にいるガイ似の剣士さんは、きっとヴァルター・シグムントですよね。…というか。シグムントさん(仮)以外で剣士らしき人は、一番端っこにいる黒いたっぷり顎髭のおっさんしかいないので、なんかショックです…。えええ。ひょっとするとこの熊(失礼だな)がフレイルなのおぉおお!?

 んー。その隣にいるマントをはおっていてオールバック金髪で髭の、黒髭のおっさんよりは若いっぽい人も剣士らしく見えなくもないし、ヴァンに似ていなくもないから、この人がフレイル、かなぁ。

 個人的に、ユリアの弟子たちが強面こわもてのおっさんぞろいだったので、ちょっとショックでした。もっとゲームのパーティぽい、色モノ集団かと思ってた(苦笑)。

 そしてこのたった一枚のカットから、(並んで座ってるから)シグムント(仮)とダアト(仮)はもしかして仲の良い友達だったのかなーとか、(兄弟なのに離れて座ってるし、年齢が結構違うように見えるので)もしかしてフレイル(仮)とシグムント(仮)は微妙に溝のある兄弟だったんかな腹違いだしどっちかが妾腹…というか使用人の子なんていう事情とかありそー、とかまで妄想の世界に羽ばたきました。ヤレヤレです。

追記。この感想は基本的に、バンダイチャンネルのネット配信を見て書いているのですが、BS11での放映が始まったのでそちらの鮮明な映像を見てみると、勘違いしていたことが結構ありました。

 ユリアの弟子の中の金髪オールバック髭の男性は、マントをはおっていませんでした。ゾロっとした長いチュニックっぽい服を着てる。やはり剣士ではないようなので、じゃあ黒髭熊剣士がフレイル…? それと、弟子たちの中央にいる線の細い僧侶は、胸の影が描かれてあるように見えるので、どうも女性っぽい。つまり、やはりダアトではない…?

 

 各話タイトルの表示方法やデザインが、原作ゲームの地名の表示形式を模してあって、原作ファンはニヤリとさせられますね。

 屋敷の形が少し原作から変わっていて、ルークの部屋は中庭に面して突出しているものの、母屋と廊下で繋がった形になってるみたいっぽいです。扉の向こうに赤じゅうたんの敷かれた廊下がありました。でも原作のルークの部屋の位置にある建物がアニメ版でもルークの部屋なのか、現時点では確信が持てません。

 物語の開始は、自分の部屋の窓から庭に飛び下りるルークの姿より。

 話を《庭でガイ、ナタリアと会話》という形に再構成した結果、ガイが窓からルークの部屋に入ってくるエピソードが入れられなくなったので、代わりにルークに窓から抜け出させることで、普段からルークのみならずガイも、他人に見咎められたくないときは窓を使って出入りしていることを暗示したのかなぁ。ガイが窓から入ってくるエピソードと、ルークが《鳥籠》の部屋の窓から空を見上げている原作冒頭シーンは好きだったので、なくなっちゃったのはちょっと残念かもでした。(ルークが空を見上げるシーンは、屋敷の広い庭を歩いていて軽い頭痛が起きた後、立ち止まって少し空を見上げるという形に再構成されてるんですけど、なんかニュアンスが違うんですよね。)代わりに新規エピソードが一杯見られましたからいいのですが。

 飛び出すなり、庭師のペールに見咎められる。ここでルークがやや両腕を広げてペールの方に歩み寄りながら「いたのかペール」と笑って言う。二度目からは全然平気でしたが、初めて見たとき、何故か吹き出すくらい可笑しかったです。あたかも《愛する人を抱擁しようと近づく演劇のワンシーン》が始まるかのような錯覚を、一瞬覚えたのでした。さもなきゃルークがルー大柴にでもなったような。「ハァ〜イ ペェルゥ〜」とバタ臭い口調で言い出しそうな。どんな錯覚だ。

ルーク「ペールは今日も土いじりか。毎日毎日よく飽きないな」
ペール「とんでもない。これがわしの仕事でございますから。むしろわしの育てた花で、公爵様やルーク様をお慰めできるなら、これ以上の幸せはありません」
ルーク「あの父上が花なんか見てる暇ないと思うぜ。息子の俺とも、滅多に会わねぇしな」

 ルークの台詞を原作から一個追加して、ルークが父親の愛情に飢えていることをサラッと表現してます。おぉー。

 それから、屋敷の裏庭にある《森》…とルークは呼んでいるけど、実際は林程度なんだろーなって所…へ出かけるルーク。「あ、ガイには言うなよ。うるせーからな」なんて言うんですけど。ここで早くも、声優さんたちや監督が再三発言していた表情の伏線が出てきます。ルークの背を見送るペールは、笑顔を引っ込めて、なにやら含みがありそうに眼光鋭くしてる…。少し怖いよ。

 

 ところで、TVアニメ化が発表されて最初に公開されたPV映像に、メイドに近づかれたガイが持っていた食料品の籠を放り投げて壁に貼りつくシーンがあったんですが、投げられた籠がどうなったか気になるのでぜひチェックしようと思ってました。……なんと、メイドさんが見事にダイレクトキャッチしてました。す、すっげー!

 このメイドさんはじめ、第一話に登場するメイドたちは、アイドルユニットのAKB48の中から三人が声優に挑戦しているとのこと。本職の声優さんとはやっぱり違いますけど、素人として見るならかなりお上手だなと思いました。素人をゲスト参加させた時にありがちな、気の抜けた棒喋りはしていなかったです。

 

 さて。ルークは《森》の高〜い木の枝の上に座ってお屋敷を眺めながら、変わり映えしねーなぁとぼやき中。……ってところで、近くの木の、ルークよりやや低い枝から「やっぱりここか」とガイが声を投げかけてきました。ペールがチクった? って訳でもないらしく。

ガイ「何年お前の世話をしてると思ってる。ご主人様の行きそうなところは分かるさ。(ウインクして)使用人の鑑だろ」
#ルーク、ムッとした様子で見下ろして
ルーク「俺はガイのこと、ただの使用人だなんて思ってない!」
#ガイ、少し驚いた様子で見上げ、
ガイ「ルーク……」
#視線をそらして少し苦しそうに笑う
ガイ「……そうだな」

 表情の伏線その2、ですね。

 ガイがルークを探しに来たのは、ナタリアが訪ねてきたのにルークが自室におらず、騒ぎになったから。右往左往するメイドたちを見たガイは「またか」と苦笑してましたし、探し当てたルークに「ルーク。お前が勝手に部屋を抜け出したら、騒ぎになるって言ったろ」と言ってましたから、ルークが自室から庭に脱走してプチ行方不明になるのは日常茶飯事なんですね。

 木の下からナタリアが呼ぶので、ガイとルークはそれぞれ木から飛び降ります、が。このシーン、どひゃーっ! と度肝を抜かれました。身軽に飛び降りたガイは原作の時点でそういうこと出来そうなイメージだったんで兎も角、ルークまでもがすんごいアクロバティックに木から下りるんですもん。枝から枝へ身軽に飛び移り、枝を掴んで振り子のように両足を振り上げ、かなり高いところから一気にスタッと。

 考えてみれば、ティアですら初めて屋敷に現れたとき二階建て以上の屋根の上から身軽に飛び降りてたんでしたよ。この世界じゃこういうの当たり前なんだ…。けど私は、原作でガイに《はったり筋肉》なんて言われてましたし、お坊ちゃんだったルークはもうちょっとヘタレだったんじゃないかと勝手に思い込んでたんで、やたらと驚いてしまった。ごめんよルーク…!

 

 この後しばらくは、ルーク、ナタリア、ガイのバチカル幼なじみ組の会話になりますが、すっごく良かったです。私がこの三人が好きだってこともありますけど、テンポよく会話をさせながら、自然に細々とした設定を視聴者に伝えている。メインストーリーに関わる大きな設定はもとより、ルークの偏食や身長コンプレックスのようなささやかな、けれどファンには嬉しい小ネタまで。ここは、脚本家さんが本当に原作が好きなんだなーと伝わってきたところでした。脚本に、《少しでも多く伝えよう》とする欲がある、という感じ。

ナタリア「確かにこの婚約は、わたくしたちが生まれてすぐに決められたものですけど、わたくしたちには確かな絆がありますわ。(両手の指を組んでうっとり空を見上げて)あなたからもらった約束の言葉。本当に嬉しかったのです」

 原作ゲームだけではルークとナタリアの婚約が親の決めたことだって言うのが分からないんですけど(ゲーム後に出たインタビューと『エピソードバイブル』でのみ明かされています)、アニメ版ではその説明を初回から自然に入れてきました。おおお。着々と補完してるなぁ。

 ついでに、幼き日の《ルーク》がナタリアに《約束》したのは夕日を見ながらのことだった…というのは、ファミ通文庫小説版や多くの商業・同人二次創作でもよく見るシチュエーションだったんですが、アニメ版でもしっかり夕日でしたので、本当にそうだったんだ…と、妙なところで感心。

 この先、オリジナルルークと朝日を見ながら約束を確かめ合うことになるけど、レプリカルークとは夕日の中で約束を交わしてから別れることになる。夕日は、《約束》と並んで、『アビス』のキーイメージの一つなのかなぁ。

 

《約束》の話をされたルークは、「ガキの頃のプロポーズの言葉なんて覚えてねーっつーの!」と弾くように反発。ナタリアがしょんぼりして、話題は七年前の誘拐と記憶喪失に及ぶ。

 ここで七年前にルークが屋敷に《戻ってきた》際の、ガイ視点の回想イメージが入りますが(ナタリア視点の回想は、夕焼けの《約束》のイメージ)、布に包まれて床に座り込み、不安そうに辺りを見回す少年を、両親や使用人たちが心配そうに取り囲んでいるというのに、守り役で親友のはずのガイは人垣の向こうに遠巻きに立っていて、凄く冷たい目で見ているのでした。表情の伏線その3。そしてカメラがパンして、柱に飾られている宝刀ガルディオスを映す。これも見事な伏線の張り方だと思います。

 あと、個人的に興味深かったのが、十四歳のガイが屋敷内でしっかり帯剣していたところ。この頃から既に護衛剣士としても認められていたってことでいいのかな。

 

 で。過去に思いを馳せ、それぞれの思考に暗く沈んでしまったナタリアとガイに子供っぽい不機嫌顔を向けて、「過去のことなんかいいだろ! 俺は俺なんだから」とルークは苛立たしげに叫びます。これはアニメ版のオリジナル台詞。それを聞いたナタリアとガイはハッとして、それぞれ過去の想いから浮上。

#ガイ、空気を変えるように笑ってルークに歩み寄る
ガイ「そうだな。記憶がなくても、これだけ、(肩を抱いて)ちゃんと育ったんだし?」
#離れて腕を組んでルークの姿を眺め、笑いながら
ガイ「いや。もうちょっと育った方がいいか」
ルーク「なんだと! 人が気にしていることを!」
ガイ「身長が欲しいなら、好き嫌いはなくさないとな」
ルーク「くぅ〜っ、ちょっとデカいからっていい気になるなよ。俺だってもう少ししたら伸びるんだ」
ガイ「そうかぁ〜? 頑張れよ〜」
#くすくすと笑いだすナタリア。不思議そうに見返すルークとガイ
ルーク「なんだよナタリア」
ナタリア「そうしていると、兄弟みたいですわね」
ルーク「そうか? まあ、ずっと一緒にいるからな」
#少し不思議そうながらも納得している様子のルークを見て、ガイはフッと苦笑(自嘲?)して視線をそらす

 表情の伏線その4。ガイに関してはホントに細やかに描いています。

ナタリア「今のあなたに多少の不満はありますが」
#ルーク、ムッとして
ルーク「なに?」
ナタリア「こうして今、側にいてくださるだけでわたくしは幸せですから」
#微笑みながらしみじみとした様子で言って、背を向けて屋敷の方へ戻り始める。立ち止まって振り返り
ナタリア「でもやっぱり、もう一度聞きたいのです。あの約束。いつか、思い出してくださいませね」
#微笑んで立ち去っていくナタリア
ルーク「何しに来たんだ? あいつは」
ガイ「お前の顔を見に来たんだろ」
#笑顔で指摘されて、ムッとガイを睨むルーク。ガイ、「降参」とばかりに両手をあげて、先に立って歩き出す
ガイ「俺たちも帰るか。屋敷で大騒ぎになってるぞ」

 ホントに、ナタリアとガイってルークの扱いに慣れていますよねー。この頃のルークはいちいち突っかかるし、自分を少しでも軽んじられたと感じるとあからさまに不機嫌な顔になるんですが、二人とも笑顔で受け流してる。ルークエキスパート(笑)。

 ナタリアの「今のあなたに多少の不満はありますが〜いつか、思い出してくださいませね」という台詞は、とてもよかったです。ナタリアのレプリカルークへの気持ちが凝縮されている感じ。ナタリアはずっと、《記憶喪失前のルーク》が好きだったんですけど、《記憶喪失後のルーク》のことも、多少の不満はあれど嫌ってなかったんですよね。…それでも《約束をくれたルーク》を忘れることはできなかった。そして、かつてルークと彼の記憶を誘拐で失った傷がナタリアにとってどれほど深く大きかったかも分かる。生きて側にいてくれるだけで幸せ、と。うんうん。原作を噛み砕いて分かり易く、短い台詞でサラッと説明してる。凄いなぁ。

 

 屋敷へ戻りかけたルークは幻聴を伴う頭痛を起こし、倒れて気を失ってしまう。目覚めたのは自室のベッドの上。どうやらガイが運んでくれたみたい。

 ルーク、靴履いたままベッドに寝てます…。ガイ、靴くらい脱がせてあげなよ〜。原作ゲームではポリゴンの人形なので、寝るときは服を全部着たまま掛け布団もかけないのですが、こっちは手描きのアニメなんですからそのくらいの融通はきかせて欲しい…というか、そんなところは原作踏襲しなくてもいいのに。(^_^;)

 国や時代によっては靴を脱がずにベッドに寝ることも現実にあったみたいですが、現代日本人としては、靴履いたままベッドに寝てられると気になるよ〜。シ、シーツが汚れるっ。

 ルークが目を覚ますまで、ガイはベッドから離れた部屋の隅の壁に寄り掛かって腕組みしていて、ゲーム中のガイのポリゴンキャラの演技パターンそのままで感心しました。すごいこだわってる…!

追記。後でBS放送の鮮明な絵を見たら、正確には、出窓に腰をおろしていました。あれ…(^_^;)。ゲームに似せてるというのは考え過ぎだったみたいです。それでも、腕を組んで少し離れた壁際にいる、という演技パターンが原作ゲームのガイの特徴なので、そのイメージに似てて結構嬉しい。

 幻聴を伴う頭痛は誘拐後から起こるようになったという会話。原作ではルークが「くそっ。マルクトの奴らのせいで俺、頭おかしい奴みてぇだよ」と言いますが、アニメ版では「マルクトの奴ら、一体俺に何しやがったんだ!」という台詞に変更。《放送してはいけない言葉》に引っ掛かったのかしらん。

 この次に、原作では冒頭のムービーに入っている、ユリアロードに入るティアのシーンが入って、やっとAパート終了です。なんか密度濃いなぁ。

 

 Bパート。頭痛で倒れたシーンからどのくらい経ったのか、自室で機嫌よく剣の手入れをしているルークの姿からスタート。ガイはいません。そこにメイドが、公爵が応接室に来るよう呼んでいると伝えに来ました。原作だとこのエピソードは午前中の出来事だと思われるのですが、アニメ版だと午前中というのは厳しいかもですね。それとも、Aパートとは違う日だったりするのだろーか。

 考えてみたらAパートのラストに《ユリアシティから出発するティア》の姿が描かれてますもんね。アラミス湧水洞からバチカルまで、どんなに急いでも数日はかかるはず。

 お坊ちゃんでも自分の剣の手入れは自分でするんだなーと感心。きっとヴァン辺りが剣士の心得として説いてたんでしょうが。

 それにしても、原作版を見慣れた目だと、ルークの部屋が凄く広く見えます。そして恐ろしく片付いている。WEBラジオ『テイルズリンク・ジ・アビス』のミニドラマではルークは部屋を汚くしていてガイが片付けているなんて語られてましたが、ピオニー陛下の私室の有様も考慮して考えるに、やっぱ倉庫整理のミニゲームでガイが言っていたとおり、ルークは結構 整理整頓好きなんじゃないでしょうか。

 あっ、部屋の中にちゃんとライティングデスクもある。あそこで勉強してるんですね。で、流石にアニメ版ではヴァンの肖像画は飾ってないみたい(笑)。

 

 原作だと、メイドに呼ばれる前に執事のラムダスから、グランツ謡将が訪ねてきている、もうすぐ呼ぶから部屋で待っていてくださいと言われています。しかしアニメ版にはその描写がありません。なのにルークを呼ぶメイドがヴァンの来訪を告げるといった脚色がされていない。そんなわけで、ルークはヴァンの来訪を知らなかったはずなのに、応接室に入ってヴァンの姿を見ても全く驚きもせずに稽古をねだるという、ちょっと不思議な流れになっています。これでは、アニメだけ見ると、ヴァンは客員としてファブレ邸に住んでたみたいに感じられる。Aパートから流れがブツッと切れているっぽくもあるので、なんとなく、脚本を切り貼りして書き直していた名残かなぁという感じ。あるいは絵コンテ化の時のアレンジの名残?

 

 応接室での会話は、流れは原作どおりですが、結構細々と台詞に修正が入ってます。シュザンヌのローレライ教団の説明が詳細になっていたり、原作ではヴァンが言っていた台詞を公爵が喋ってたり。公爵が「少しは辛抱することを覚えなさい」とルークを叱った後のシュザンヌの台詞もちょこちょこ違う。

(原作)「あなた! この子はさらわれた時に怖い思いをして、心に傷を負ったんですのよ。そのせいで子供の頃の記憶まで失って……。可哀想だと思われませんの?」

(アニメ版)「あなた! 何もそんな言い方しなくても。この子は充分に辛い思いをしているのですよ。記憶を失うほどの怖い思いをして……」

 それから、原作にあった、ヴァンが代理人に剣の稽古をつけさせると言うとルークが「ヴァン師匠せんせいがいいんだよっ!」 と駄々をこねるくだりがカット。それを受けて公爵が言った「わがままを言うな、ルーク」の部分もなし。

なんで伯父上は俺を閉じ込めるんだよ」というルークの悪態から、原作では続いていた「国王だからって変な命令しやがって、ムカつくっつーの」という暴言部分をカット。

 それを聞いたシュザンヌが、成人すれば自由になれるのだからとルークをたしなめる台詞もやや短めに修正されています。…これらは秒数稼ぎかな?

 母からたしなめられた後、原作のルークはふてくされて頬杖をつきそっぽを向いたままですが、アニメ版のルークは「……分かってます」と、決まり悪げに言ってしゅんとしてしまいました。アニメ版のルークは、原作ほどには子供っぽくないみたい。そして、お母さんには素直だし弱いんだなぁ〜というのがよく分かりました。お父さんに叱られた時には、ムスッとしてるばかりだったのに。

 シュザンヌが、誘拐以来、剣術稽古さえ恐れるほど過保護になっているという要素は触れられず。

 

 続いて、中庭でのヴァンとの剣術稽古に。部屋から自分の剣を取ってきたルークが中庭に出てくると、ヴァンとガイが密談しています。彼らの台詞も微変更アリです。ペールが「ルーク様。そこは足元がぬかるんでおりますから、お気をつけて」と大声を出して呼びかけながら、視線はヴァンとガイに送っている。表情による伏線その5。ぬかるみも、多分、わざと作っておいたんでしょうね。

 稽古は真剣で行われてました。まさに真剣勝負。一歩間違えたら死にそうなんで、これならシュザンヌ母上が心配するの分かる…。譜業のカカシは無し(笑)。

 

 この後は原作どおり。ティアが現れて譜歌で屋敷の人々を眠らせ、ヴァンに襲いかかるが、ルークがヴァンを庇い、ルークとティアの間に発生した擬似超振動でタタル渓谷に飛ばされる。疑似超振動発生の際、ティアが咄嗟に防御譜術を使おうとするという描写の追加あり。

 ルークが第七音素セブンスフォニムを放出、驚いたティアが第七音素で防御しようとしたので干渉で疑似超振動が発生した、ということみたいです。

 

 第一音素譜歌ナイトメアを歌いながら、正面玄関から堂々と歩いて入って行ったティア。白光騎士団に顔見られてるよねコレ。保身のことなんてカケラも考えてない。ここで兄とせめて相討ちに持ち込めたらそれでいい、兄を討ち果たせようが失敗しようが、恐らく私が生きてこの屋敷から去ることはない、くらいに考えていたのかな。

 

 そういえば、ティアの譜歌が響き渡ったとき、原作でペールが「これは譜歌じゃ! お屋敷に第七音譜術士セブンスフォニマーが入り込んだか!?」 と言うんですが、アニメ版では「これは譜歌じゃ!」としか言いません。それで初めて気づいたんですが、原作のこの台詞、考えてみたら、ちょっとおかしかったのかな?

 ティアが詠っているのは譜歌の中でも特殊なユリアの譜歌。そしてペールは、恐らくこの歌を聴き知っていたはず。その歌い手がフェンデの血筋でしかあり得ないことも。ですからこの歌を聞いたとき、「第七音譜術士セブンスフォニマーが入り込んだ」と言うのは、間違ってもないけどなんか妙、だったのかも。

 

 飛ばされたルークは夜のタタル渓谷で目覚める。……実はここ、少し不満でした。もう少し長く、せめてあと五秒くらい、タタル渓谷の静かで美しい景色を映して、神秘的な雰囲気、一種の《異境感》を出してほしかったんです。直前の、光の筋となって飛ばされていくルークとティアをナタリアやバチカル市民たちが驚いて見上げる、というカットは無くてもよかったですから、《始まりの場所》の美しさと神秘感は存分に味わわせてほしかったなぁ。

 

 ところでアニメ版のタタル渓谷って、原作とは地形が少し違ってないですか?

 原作だと、地図上では海に面してません。(実際の画面では海が見えるようになってますが。)でもアニメ版ではハッキリと、セレニアの花畑の下が直接海になってました。

 もしかすると最後、落下したエルドラントがここに繋がるという形にするんでしょうか。崖が妙に突出してましたし。確かに、ラストシーンを考えると、その方が収まりがいいのかも。

 

 原作にあった、ティアが気を失っているルークに呼びかける時、初対面なのに名前で呼んでいるという不自然さが解消され、ただ「起きて」と言うだけに。あと、原作のタルタロスの牢屋で目覚めた時のシチュエーションが何故かここに混ぜてありました。(ローレライの「目覚めよ」という声がティアの声に移り変わる。)

 ルークとティアの会話は、原作と比べてずっと簡易的で、とてもとてもマイルドになっていました。多分、アニメ版から入った人が原作プレイしたらビックリするだろうくらい。ティアが「あなた、何も知らないみたいだから、ここで話をするのは時間の無駄だと思うわ」って言わないし、「あなたに話しても仕方ないことだと思うし、理解できないと思うわ。それに、知ってどうするつもり?」とも言わないし。

 何より驚いたのは、初めての戦闘が終わった後のシーン。原作だと、ティアは「安心するのはまだ早いわ。ほら、そこにも魔物がいる」 と冷たく言うだけ。戦い方が未熟だと説教までする。ところがアニメ版では。

#戦闘終了後、座り込んで肩で息をしているルークに歩み寄るティア
ティア「あなた、実戦は初めてなのね」
#ルーク、ふてくされたようにそっぽを向く
ルーク「……悪いかよ」
ティア「いいえ。助かったわ。ありがとう」
#驚いてティアの顔を見上げるルーク。ティア、優しく微笑んでいる

 最初からルークを褒める余裕があり、ツンケンしていなくて、ルークの言動に逐一反発しないし、答えたくない質問をされたときの話のそらし方も上手で、全体的に角の立たない会話術を心得ている。

 えぇえええええ。誰これ。こんなの初期ティアじゃないぃっ!!

 これは、《理想のティア》? アニメ版のティアは最初から人間が完成してる人なのね。

 彼女の微笑みに思わず見とれたルークが、パッと照れ顔を背けて悪態をつくツンデレシーン付きでした。ルクティア好きの人は大喜びしたのかな。

 

 原作では、この辺りのティアはとにかくピリピリしていて、絶対に打ちとけまいとする壁のような頑なさ、それを隠すことのできない未熟さ・不器用さを感じるのですけど、アニメ版では最初から余裕と、それに伴う優しさがあって、人間が出来ている。

 原作初期のティアが頑ななのも、この時点での彼女の追い詰められた心境を鑑みれば納得できるものですし、今後の彼女の成長や変化を見守るのも楽しいので、あれはあれで良いのですが、尺の短いアニメ版では細かい心境の変化を描写していくのは困難なのかもしれない。それに、最初から分かり易く主人公に優しい女の子として描く方が、やっぱ無難ではあるし、何より、無為に叩く視聴者が減りそう。人間描写が浅くなったかなとは思いましたが、観ていて安心感はありました。何のストレスもなく観れると言うか。

 

 戦闘シーンは、ルークが魔物に怯えて情けない悲鳴をあげたり、魔物が覆いかぶさるように飛びかかって来たのを、咄嗟に剣を突き出して倒して、でもそれがなかなか抜けなくて嫌そうな声を出したり、がむしゃらに立ち向かいながらも、ややへっぴり腰で戦っていたところは、四の五の言わずに動きでルークの怯えや初実戦の頼りなさを表していて、すごく良かったです。

 でも個人的に不満と言うか、疑問を感じたところはありました。

  • ティアが《杖》の一閃で、簡単に大きな魔物を真っ二つにしてしまう。ヘッド部分に刃が付いているという解釈なのかもしれないけど、あくまで《杖》で《槍》ではないはずだし、ティアは基本的に後衛で譜術士フォニマーのはずなのに、いくらなんでも豪快すぎでは。
    (もしかして、ゲーム版OPムービーで、ルークやガイが魔物を一閃で豪快に分断しているシーンのオマージュなのか?)
  • 第一音素譜歌ナイトメアが、紫色の光弾を手で投げつけて敵にぶつける、積極的な攻撃技になっていた。
    あれって、対象になった敵が足元から紫のもやっとした光に包まれて、紫の泡がぽこぽこ立ち昇って眠らせるという演出じゃなかったっけ、原作だと。
    …あー、ゲームシステム上では「闇属性の攻撃譜術で、ごくまれに眠らせる」ってことになってるのか。でも物語上では誘眠の術に過ぎないし、演出が違うので、観たとき違和感が強かったです。
  • 登場した魔物の種類が、原作のタタル渓谷のこの時点で登場するものと異なっている。

 特に魔物の種類。ええと…これみんな、原作にいないオリジナル魔物? のような気がしたけど勘違いでしょうか。他の点では細かい部分まで原作を再現しているのに、魔物のみ初回からオリジナリティ路線。初回戦闘だから強そうな魔物を出して迫力を感じさせたいと思ったのかもしれませんが、初回だからこそ、普通にサイノッサスとかプチプリが出たら嬉しかったです。

 ティアは投げナイフは使わないのね。「投げナイフは、最後の武器よ!」とか。

 

 渓谷の出口で水汲みに来ていた辻馬車の馭者と出会う。なんか馭者が若くて細い。原作にあった、

ルーク「フン。俺をケチな盗賊野郎と一緒にすんじゃねぇ」
ティア「……そうね。相手が怒るかもしれないわ」

というギスギスしたやり取りは、やはり消滅しています。辻馬車の料金が、原作では一人一万二千ガルドだったのに、アニメ版では一人二万ガルドでした。オールドラントでも物価高騰か…。せちがらいのう。ティアが母の形見のペンダントを馬車代として手放す。このシーンのティアの絵が可愛かった。馬車に乗れることになり、ルークが「へぇ……お前いいもの持ってんな。これで靴を汚さなくて済む!」と晴れ晴れと笑う。

 放映開始前、何かのインタビューでルーク役の声優さんが「悪気はないのに、気付かずに他人を傷つけてしまうというような部分を演じたい」というようなことを仰っていましたが、それはこのシーンのことだったのかなぁと思いました。また、「過去の自分の演技をなぞることはしたくない」という発言をしてらしたこともあったと思うんですが、私はこの台詞、原作版の「へぇ……お前いいもの持ってんな。これでもう靴を汚さなくて済むわ」という言い方の方が好みだったかもしれません。原作版はもう少し横柄な感じで、周囲を全く見ずに無責任に放言してしまっている、この当時のルークのヤな奴ぶりが出ていたかなぁとか。…って。結局、アニメ版はルークもマイルドになってるってだけなのか。

 そう言われたティアが黙ってルークを睨むのは原作どおり。(原作では「・・・」のエモーションバルーンで表現されてましたが。)

 

 翌朝に辻馬車でローテルロー橋を渡る。アニメ版で見ると、ローテルロー橋は万里の長城のようにくねくね曲がっていて本当に長くて、船が通る箇所は太鼓橋状に盛り上がっていました。辻馬車には他に同乗者もいて、四頭立てでなく二頭立て。

 この辺のティアの言動は原作同様、ひどく冷たいです。絶対零度まで下がってます。…ペンダントの件で怒ってんのかな(苦笑)。けど全然その冷たさに気付いてない、愚かで可愛いルーク。

 橋を渡り切ったところで陸上装甲艦タルタロスが砲撃をしながら出現。ってところで次回へ続く。

 変なところで切れたな、という印象でした。とにかく一本の中にエピソードを詰め込めるだけ詰め込もうとしている結果?

 あと、タルタロスが黄色ぇー! と思った。こんなに黄色かったっけ? 妙に気になるので、黄金装飾部分の彩度をもう少し下げてほしかったかもです。



 第一話の脚色を見て気になったのは、原作にあった、軟禁されているルークの閉塞感や倦怠感、そして剣術が唯一の趣味で楽しみであること、剣の師であるヴァンに対する極端に強い思慕が、薄まって感じられる点でした。これは、広々とした庭でガイやナタリアなどの親しい人々と語り合う様子を描いたため、軟禁生活でも割と楽しくて、退屈ではないように見えるためかと思います。

 もっとも、そのエピソードを描いたことで、ガイやナタリアの内面、ルークとの関わりが非常に明瞭に分かるようになっていたわけで。これはこれで利点がある。

 結局、物事はどんなことでも善し悪しがあるというか。あちらを立てればこちらが立たず? 原作とアニメ両方を見ていれば相互補完されて完璧、ということなのかもしれません。

 

 次回予告を見て思ったことも幾つかあるんですが、後発組の感想でそんなこと書いても間抜けなだけなのでやめておきまする。

 ではまた次回。

 



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