注意!

 

# 11 雪降る街

脚本:面出明美/コンテ:佐藤真人/演出:佐藤真人/作画監督:菱沼義仁、前澤弘美

 今回はすごく面白かったです。ジェイドの幼少時代のエピソードがしっかり観られたのがよかった。それに、何と言っても絵が綺麗でした。全編ルークが可愛かったなぁ〜♥

 

 以下は重箱の隅ツッコミです。読みたい方だけどうぞ。





 今回のアバンは、またも《前回のハイライト》。そしてやっぱり最短でした。

 

 Aパートは、大海を行くタルタロスの甲板に佇むルークから。凪いでいるものの広がる海は曇天を映して暗く、傍にいるのはミュウ一匹だけ。前のみを見つめて立ち続ける主人の周囲を飛んで、「ご主人様…」と気遣わしげに呼びかけています。そこに、ひらひらと舞い落ちてくる小さな白い薄片。

ミュウ「冷たいですの。何ですの?」
ルーク「雪だよ。見たことないのか?」
#ミュウ、大きな目を見開いて、嬉しそうにくるくる飛び回る
ミュウ「初めてですの! きれいですの!」
#微笑ましそうに、はしゃぐミュウを見つめるルーク

 ミュウもルークもむっちゃ可愛かったです! 十七歳ルークがこんなに表情が穏やかで可愛いのは、TVAじゃ初めてかも。

 にしても、ミュウが住んでいた北ルグニカ〜南ルグニカの辺りが雪が降らないほど温暖だとは思えないので、つまりミュウは雪が降る季節を迎えたことがない、生まれて一年足らずの仔供ってことなのかな。いやでも、チーグルは寒さが苦手ということなので、やっぱりあの辺りには雪が降らないってだけなんでしょうか。

 

 直後にタルタロスが大きく揺れて緊急停止。浮いてるミュウは揺れが分からずにキョトンとしてましたけど。艦橋ブリッジに駆け付けると、機関部の一部が故障したとジェイドに告げられる。

#故障と聞いて、顎をガクンと落として愕然とするミュウ。宙に浮いたまま足をパタパタさせて、耳を下げて訴える
ミュウ「ご主人様、ボク泳げないですの」
#ルーク、穏やかに笑いかけて
ルーク「知ってるよ。大丈夫。沈みゃあしないって」

 WEB上至るところのあらゆる感想文で読みました。「ミュウ、お前は浮いてるから溺れないだろ」という突っ込みを(笑)。

 原作のミュウは(この時点では)飛べません。アニメ化で設定を変更したのに台詞をそのまま使ってしまった故に生じた《ボケ》ですね。

 原作ルーク長髪時代に、この会話の前段となるべきものがあります。バチカルへ向かう連絡船で敵に襲われた時、ミュウが「ご主人様、大変ですの! ミュウは泳げないですの」と訴える。ルークは「うるせぇ。勝手に溺れ死ね」と怒鳴ってミュウをボールのように蹴飛ばしました。そんな最低っ子がこんなに優しくなりましたという話。こういうやり取りが前にあったからこそ、今回「泳げないですの」と訴えられて「知ってるよ」と返している。

 なお、ミュウが「泳げないですの」とご主人様に訴えるシリーズ(?)は、原作だとあと一回、フェレス島でもあるんですけど、アニメでは出てくるのかな。

 

 ジェイドがルークに故障を告げた後に、ティアが「状況は?」と訊き、ナタリアが「ガイが様子を見に行っていますわ。彼は音機関に詳しいですから」と返していました。ルークが艦橋に駆け込んできた時、ティアは既にそこにいて、操縦席脇に立ったまま窓の外を見ている様子でしたが、つまりルークが駆け込んでくる少し前まで彼女も別の場所にいたってことになるのかな。

 

 余談ながら、タルタロスが故障した原因について。原作の《ルークの日記》には、ローテルロー橋を目指していて防衛用の機雷に接触したと説明してあり、実際、ローテルロー海にタルタロスを進めるとイベントが発生します。機雷に接触しての故障だったため、アニスがすぐさま「沈んじゃうの?」と不安がったというわけ。でもアニメ版では中央大海の北を航行していた時に停止したっぽかったですし、普通の故障でしょうね。魔界クリフォトの泥が原因かしら。

 

 アニメで見たら、ケテルブルク港がすっごく立派でビックリしました。流石は貴族御用達の高級リゾート地。

 上陸してから港を出るまでの会話はほぼ原作どおり。「私はマルクト軍第三師団所属、ジェイド・カーティス大佐だ」という名乗りにすんごく力が入ってて笑った(笑)。自分の《良くない評判》も積極的に利用してるんですね、この人。

 街に入ると、ルークがイオンを気遣うオリジナルエピソードが挿入されていました。(会話の後半は、原作ダアト脱出直後のフェイスチャット『また、このメンバーで……』から。)

 第7話の、体の弱いイオンに配慮しなかった親善大使ルークとの対比なんだと思います。勿論、とても素敵でしたが、やっぱ長髪時代(親善大使期以前)のルークにもイオンを気遣わせてて欲しかったなァと、今更なことを思いました。外殻大地編は本当にキツキツパンパンでしたから無理だったのは分かってますけど、もし描かれていたら、イオンの「ルークは元々優しかった」という台詞にもっと説得力が出た気がします。なんか勿体ない。

#歩きながらイオンを気遣うアニス
アニス「イオン様、寒くないですか? 先にホテルに入ってた方がいいんじゃないですか?」
イオン「僕は大丈夫です。知事にも挨拶をしておきたいので」
アニス「そうですか……?」
ルーク「無理すんなよ、イオン」
イオン「え?」
#前を歩きながら、ルークが振り向いて声をかけている
ルーク「お前、身体があんまり丈夫じゃないんだからさ」
イオン「ありがとうルーク。心配してくださって」
ルーク「! 〜〜いや」
#ルーク一瞬目を見開いて赤面し、誤魔化すようにもごもご言う。(コミカルな表情の変化が可愛かったです。)少し胡乱げなアニス
アニス「なぁにぃ〜? 髪を切ったらなんか優しくなったぁ〜?」
#ルークの隣を歩きながら、ナタリアが微笑む
ナタリア「そういえば、随分雰囲気も違いますわね」
ルーク「そ、そうか?」
#ジェイド、歩きながら振り向かないまま
ジェイド「あなたなりに、色々と思うところがあったのかもしれませんね。(振り向いて眼鏡を押し上げ、少し皮肉に)まあ、今更という気もしますが」
#憮然となるルーク
ルーク「……う……」
アニス「人の性格なんて、一朝一夕には変わらないもんねぇ」
#眉を下げるガイ
ガイ「おいおい……」
イオン「アニス、ジェイド。僕はあなたたちの言っていることに素直に頷けませんね」
アニス「?」
イオン「ルークは元々優しかった。ただ、それを表に出す方法をよく知らなかったのです」
ルーク「い、いいよ、イオン! (少し気まり悪げに)そう言われても当然なんだからさ」
#暖かくルークを見るナタリア
ナタリア「本当に、以前とは変わったようですわね」
ルーク「と、とにかく早く、知事の所に行こう」
#アニス、気持ちを切り替えたように屈託なく笑い
アニス「そうだね。このままだとイオン様だけじゃなくて、私も風邪引きそう」

 前回は、ジェイドやアニスに嫌味を言われると見る影もなくしゅーんとしていたものですが、今回は普通に会話してます。反省するのもムッとするのも度を超えることなく、原作どおり。

 とは言え、原作で「い、いいよ、イオン! これからの俺を見てもらえば、それでいいんだからさ」と言ってたところを「い、いいよ、イオン! そう言われても当然なんだからさ」という、やや卑屈に取れなくもない台詞回しに修正した箇所もありますけども。

 

 貴族の別荘街に至り、ピオニーの屋敷前へ。ここの会話もほぼ原作どおりでしたが、ピオニーの初恋関連のエピソードだけは全カットしてありました。ジェイドとディストの過去、ディストとアニスの関わりについては、後のシーンに移動。

「ここはその時、陛下が軟禁されていたお屋敷ですよ」

 ジェイドの言葉を聞いて、自分自身の過去に思いを馳せるルーク。原作で「俺も身を守る、って口実で軟禁されてたけど……。まったく。政治に巻き込まれたガキはいい迷惑だってーの」と台詞で語っていたものを、悲しげな音楽、ルークの思いに耽った表情と、薄暗い自室の窓から晴れた空を見上げている長髪ルークの回想カットで表現。やっぱりアニメは映像演出力が高いなぁ。また、第1話で構成を変更したため消滅していた《鳥籠の部屋》のイメージが、ついにここで見られたって感じで嬉しかったです。

 そして、そんなルークの気持ちを敏感に察して、後ろから「ルーク……」と気遣わしげに呼びかけるガイ兄さん。実際、軟禁時代のルークを一番傍で見ていたのは彼だし。原作だとナタリアとティアが気まずげな顔で黙り込むのですが。アニメ版は、全体にガイがクローズアップされてる感じで個人的に嬉しいっす。

 

ジェイド「前皇帝は、戦時中のまつりごとで敵も多くて。その息子であるピオニー陛下も命を狙われていたんですよ。それで息子の安全を守るため、やむなく」
#ジェイド、肩をすくめてみせて、軽い口調で
ジェイド「……ということだったのでしょう」

 原作ではティアの《推測》だった台詞をジェイドに言わせています。ですが、最後に「……ということだったのでしょう」と軽く言わせることで匂わせている通り、この説明って本当のことではあるけど、嘘ですよね。

 ピオニーの身を守るために都から遠ざけて軟禁していたのは本当。でも敵は皇帝の政敵ではなく、ピオニーの兄姉たち。彼らが帝位を巡って殺し合い・死に絶えて、末弟のピオニーが皇帝になると秘預言クローズドスコアによって分かっていたので、こうした措置が取られた。厳密には、最初は《ピオニーは軟禁される》という預言だけがマルクトには知らされていて、他の皇位継承者たちが死に絶えてから《軟禁の後に、生き残ったピオニーが皇帝になる》という詳細な内容が明かされたようですが。

 この辺のエピソードや、ピオニーとネフリーの恋愛に関しては、アニメ版本編では触れないんでしょうね。ドラマCDとかで補完しそう。

 この後、ピオニーはこっそり屋敷を抜け出しては街の子供たちと遊び回っていたと説明したジェイドの微笑が、明るく澄んで見えて綺麗でした。ジェイドにとっても、ピオニー達との子供時代は輝かしいものなんですね。

 

 一方、七年軟禁されっぱなしだったルークの方は、ピオニーが軟禁から抜け出しては遊んでいたと聞いて「そ、そうなのか」なんつって、ちょっと困惑してたり(笑)。『ファンダム Vol.2』ジェイド編で、ピオニーが隠し通路で軟禁破りしていたという話題になった時、アニスに「ルークが聞いたらどう思うかな?」と問われて「その方法があったのか。とか言い出しても困るがな」とガイが困った顔をしてましたけど。あがいても屋敷から抜け出すことが出来なかったルークは、要領悪かったという見方もできるのでしょーか(^_^;)。

#ピオニーとルークの境遇は似ているようでいて、軟禁の意味が異なっていたってことでもあると思いますけど。

#隠されていた秘預言が明かされるまでは、ピオニーは屋敷内では放任に近い状態だったのだと思います。何年も頻繁に、場合によっては一日以上抜け出していたのに誰にも気付かれなかったというのですから。一方ルークは、ちょっと姿が見えないと皆で大騒ぎして捜してましたよね、アニメの第1話でも。

#そして《軟禁という形を取ること》自体が目的だったピオニーと異なり、ルークは《預言通りに死ぬ時まで、逃げないよう》囚われていたわけで。

 

 知事邸へ。ネフリーがジェイドの妹だと知って驚くルークの様子が普通でした。(原作だと大仰なポーズをとって、ギャグっぽく驚いてた。)

 会話中に、ちょっとだけオリジナル部分が挿入されていました。

#「おや、私は死んだと思われているのでは?」とふざけた口調で言ったところ「お兄さんが生きていると信じていたのは、ピオニー様だけよ」とネフリーに笑って返されて、思わず真顔で黙り込むジェイド
#アニス、イオンの座る席の傍らに立って、笑って

アニス「さすがピオニー陛下の親友って言われるだけあって、信頼されてるんですね、大佐」
#ガイ、笑いながら壁に寄り掛かって両腕を組み
ガイ「いや。死霊使いネクロマンサージェイドが、そう簡単に死ぬわけないと思われているのかもしれないぞ。(ジェイドを見て)な?」
ジェイド「ガイ。余計な口は塞ぎますよ?」
#慌てて壁から身を離し、苦笑いしつつ肩をすくめてみせるガイ
ガイ「ああ! いや。冗談だって」

 どうやって口を塞ぐ気なんだか。物理的か、社会的にか。ジェイドにこう言われると色々怖い考えが浮かびますね(笑)。

 

 ともあれ、タルタロスの整備の手配はネフリーに任せることにして、ホテルに向かい始めた一行。ジェイドが「ここには温泉があるんですよ〜♥」と言ってたのがなんかオヤジ臭かった(笑)。最後に席を立ったルークをネフリーが呼び止めます。「ルーク様」と言ったので、ちょっと驚きました。確か原作ではネフリーがルークの名を呼ぶ場面がなかったと思うので、勝手に「ルークさん」と呼ぶのかなと思い込んじゃってましたし……ああ、『マ王』漫画版だと「ルークさん」と呼んでるんだ。これに関しては漫画版設定は採らなかったってことですね。

「すみませんが、お話がありますので、後ほどお一人でいらしていただけます?」

 こんな美人の人妻に、夜、後で一人で来てねと誘われてしまいました…!

 しかしドキッとするどころではなく、俄かに不安に襲われてしまうルークなのでした。

(なんだろう。話って……)

 考え込んでのろのろしていたのか、知事邸から出ると、他の皆が立ち止まって待っていました。やや離れた位置で固まっていた仲間たちとは別に、ガイとミュウだけは玄関の前に留まっていて、ルークが出てくると「どうした、ルーク」「ご主人様?」と声をかける。心配性だねぇ。でもルークは「なんでもねぇ!」と返して、他の仲間の方へ駆けて行ってしまうのでした。ミュウは追いかけて行きましたが、ガイ兄さん置いてけぼり。

 原作で、ルークがホテルのロビーから「あ、俺ネフリーさんトコに忘れ物した。行って来る」と棒読み台詞で出て行こうとすると、ガイとミュウが「俺も行こうか?」「ご主人様、ボクも行くですの」と言い出すあたりを変形させたのかな。

 ところで、原作にはここに、「ネフリーさん、女だぞ」「美人を見るのは好きだ」「ガイも男性ですものね……」という会話があるわけで。アニメではカット。何気に《女性恐怖症だけど女性自体は好き》とガイが主張する描写が、またまた消滅しています(笑)。このまま最後まで主張しないままに終わってしまうのか、男・ガイラルディア!(笑)

 

 ケテルブルクホテルへ。手続きしているのはジェイドです。原作では街の人に話しかけることで聞ける、バルフォア博士とネイス博士はこの街が輩出した自慢の天才だという言葉を、フロントの人に言わせていたのは上手いなぁと思いました。そう言われたジェイドが、何も言わずに、ただフッと息を吐いて目を上げたのが、社交辞令的に微笑んだようでもあり、少し異論があってムッとしたようでもあり、その両方から僅かに困ったようでもあり。イイ感じに印象的でした。

 

 ホテルのロビーで紅茶を飲みながらお喋り。灯りがキャンドルなのが情緒があっていいですねぇ。ここでジェイドとディストの本名と過去の関係、更に、ディストとアニスの関わりについても説明されました。ワイヨン鏡窟の名がディストの本名に因んでいることも補完。

#ティアが「では、ワイヨン鏡窟と言うのは……」と尋ねる役になってましたが、彼女は現時点でそこを訪れていないので、ナタリアに言わせた方がカッチリはまったかも。

 原作では、ジェイド幼少時代の情報は、初回ケテルブルクのネフリーの話、惑星譜術イベントでのネフリーの話、ネビリム戦後のジェイドの告白などで少しずつ明かされていくんですが、アニメ版では今回で一括して説明していて、しかも、ほぼジェイド自身の口から語らせていました。

ナタリア「まあ。今や天才と言われる博士や、ケテルブルク知事や、皇帝陛下が集まっていたなんて。その私塾には、きっと立派な先生がいらっしゃったのですね」
#ジェイド、黙りこんで手元のティーカップを見つめる
ジェイド「……」←しっかり《間》がとってありました。
#何も言わないジェイドを黙って見つめる仲間たち。ジェイド、カップを持ち上げて口に運びながら
ジェイド「……いい先生でしたよ。ネビリム先生は」

 こうして見てると、やっぱ外殻大地編はキツキツパンパンだったんだなぁ。『アビス』は心情描写の多い話なので、こんな風に《間》で語ってくれた方がシックリくる感じ。前回もドラマに余裕がありましたし、この先は恒常的に《間》を取った深い心情描写をやってくれそうで、ワクワクしてきました。

 

 この後、アニスのトクナガを改造したのはディストだという、原作フェイスチャット『天才!? ディスト』からの会話になりますが。

 原作だと「二言目には大佐の話しかしないし」とアニスが言うと、ジェイドが「……虫酸が走りますね」と言う前に、声優さんのアドリブで「フッ♥」って感じに変な含み笑いするんですよね(笑)。アニメはそれを膨らませて、かつ、ロニール雪山前ケテルブルクでのフェイスチャット『ジェイドとディスト』『なつかしの思い出』あたりのエッセンスを混ぜたアレンジになってて、遊び心満載と言うか、すっごい細かいネタまで余さず拾ってくれてるよ! と、原作ファンゴコロをくすぐられましたです。ありがとうございます! 「かぷっ」はなかったけど「フッ♥」はあった!(大笑)

アニス「悪い奴じゃないんだけど、いい奴でもないんだよねぇー。二言目には大佐の話しかしないし」
#眼鏡のブリッジを押し上げるジェイド
ジェイド「虫唾が走りますねぇ」
#隣のテーブルから からかう(命知らずの)ガイ
ガイ「そんなに話題にされるなんて旦那。実はすごく好かれてるんだな」
#ジェイド、ガイを見て
ジェイドフッ♥」
ガイフッ? …〜〜(汗)」
#ぎょっとして、薄気味悪そうに顔を背けるガイ(笑)

 知事邸での「余計な口は塞ぎますよ?」に引き続き、ジェイドをからかって軽く逆襲されちゃうガイでした。まだ付き合い浅いから、大佐の恐ろしさが身に染みてないんだろーか(笑)。

 一連の会話を少し面白そうに、けれど黙って聞いているルーク。ふと表情を硬くして視線を流します。ネフリーとの約束への不安が消えないのか、一度も会話に混ざりませんでした。ここでAパート終了です。

 

 Bパート。宿の個室のライティングデスクについて、何か書いているらしきルーク。日記をつけてるのかな。書き終わったようで立ち上がり、いよいよ知事邸へ。ちなみに剣は置いて行きました。流石リゾート地だけあって、ケテルブルクは治安のいい街なのね。ベッドの上でうたたねしていたミュウが目を覚まし、慌てて付いていきます。

 原作ではミュウがルークにくっついて知事邸に行ったことが分かりにくいんですけど、アニメははっきり見せましたね。これも補完?

 原作のルークと違って、(ミュウ以外の)誰にも知られずに上手に出かけることが出来た……かと思いきや、ジェイドが自室の窓から、出かけるルークとミュウの姿をじっと見ていました。

 

 知事邸で、ネフリーからネビリム先生とジェイドの過去について聞く。

 幼少時代のネフリーのデザインは『マ王』漫画版を元にしつつアレンジされたもの。ネフリーの壊れた人形のデザインは漫画版そのまま。アニメ版オリジナル要素として《ミリーちゃん》という名前が付けられていました。

 原作のルークは、ネフリーが子供の頃のジェイドについて「発想が普通じゃない」「生き物の死が理解できなかった」と言うと、ごく控え目に「そんな言い方……」「そんな風には見えないけど……」と反論します。普通な感じ。『マ王』漫画版はそれを膨らませて、大声で強く「ジェイドはそんな奴じゃない」という意味合いで反論させていました。でも個人的に、まだ付き合いが浅く打ち解けていないはずのルークが、ジェイドの何もかもを知っているような口ぶりで強く否定するのはどうかなぁと思ってたんだったり。で、アニメのルークはどうかと言うと、「兄には、生き物の死が理解できなかったんです」と聞いて何か言いたげにはしたものの、結局黙ってネフリーの言葉を聞いていました。うん。

 ルークの足元にしがみついて、ミュウは怯えています。害のない魔物を惨殺して楽しんでいたなんて聞かされちゃあねぇ。

 

 原作ではこの後、ジェイドが第七音素セブンスフォニムの暴走でネビリム先生を殺したこと、レプリカを作ったが失敗したこと、完全なレプリカを作るためにカーティス家の養子になって研究を続けたが、ピオニーのおかげでフォミクリーから手を引いたことまでネフリーが説明し、でも兄はまだネビリム先生を復活させたがっている気がする、杞憂かもしれないが、レプリカのあなたに抑止力になってほしいと語ります。

 んが。アニメではそれらの説明はこの後のシーンでジェイド自身の口から語らせましたので、ネフリーは思わせぶりなことを言うだけで核心を語らず、ルークにジェイドの何を止めてもらいたいのかが分からなくなっていました。むむ?

ネフリー「でも、ネビリム先生はそんな兄をいい方向へ導こうとしていました。そして、兄も少しずつ変わっていった。でも先生が亡くなってから、兄は元に戻ってしまいました。そしてサフィールと一緒に、もっと恐ろしいことを……」
ルーク「恐ろしいことって」
ネフリー「お願いです。あなたなら……フォミクリーが生み出したレプリカのあなたなら、兄を止めることができるかもしれません。再び、あんな悲劇が起きてはいけないのです」
ルーク「……」

 アニメのネフリーは、十三年前にピオニーの抑止によってジェイドがフォミクリー研究の一切から手を引いたことを、未だに知らないままみたいですね。

 

 ホテルのロビーに帰ると、片隅の椅子に座って待ち受けていたジェイドが「夜遊びとは感心しませんねぇ、ルーク」と声をかけてくる。ルークの棒読みの誤魔化し台詞がカットされてなくて嬉しかったです。目を泳がせるのは『マ王』漫画版から採った演出かな。ルークに細かい説明をせがまれ、「知れば、後悔するかもしれませんよ?」と言いながらも、ジェイドは自分の過去を語り始める。「それでも、俺は知りたい!」と迫ったルークに「そうですね。あなたには知る権利がある」と返して。

 回想として、アニメーションで幼いジェイドやディスト、ネビリム先生の姿が見られました。

#雪原をまっすぐに歩いて行く十一歳頃のジェイド。その背後、かなり遅れてジタバタ追っているサフィール。走っているのに歩くジェイドに追いつけない
サフィール『ジェイド、どこに行くの? 僕も連れて行って!』
#ジェイドは全く歩を緩めず、振り向くことすらしない。
#やがてサフィールは勢いよく転び、膝から血がにじむのを見て大声で泣き始める

サフィール『うわぁ〜ん、痛いよジェイドぉ〜』
#その声を聞いて微かに眉根を寄せ、やっと立ち止まって振り向くジェイド。淡々と

幼少ジェイド『サフィール。お前はもう来なくていいから』
#ますます激しく泣き喚くサフィール
サフィール『うわぁああん、ジェイドぉお〜!』
#鼻水すら垂らして、みっともなく泣き続けるサフィールの傍に歩み寄る人影。彼女に気付いて、ジェイドはハッと息をのむ。
#泣き続けていたサフィールの血のにじんだ膝に手をかざし、治癒術で癒すネビリム

サフィール『あー!』
#傷が跡形もなく消えたのを見てサフィールは泣きやむ
ネビリム『さあ、これでいいわ』
#力強く微笑んだネビリムを見上げて、サフィールの頬はリンゴのように赤く染まる
サフィール『えへへ』
#無邪気な笑顔。
幼少ジェイド第七音譜術士セブンスフォニマー……』
#離れた位置に立ったまま、横目でネビリムを見つつ呟くジェイド

 サフィールはいつも、立ち止まってくれないジェイドを追いかけている。大人になってからは夢で見てうなされるくらい。

 おー! サフィール可愛い〜。しかし改めてアニメで見ると、雪国で胸をはだけてて寒くないのかねと気になります(^_^;)。おまけに半ズボンだし。子供は風の子か。しっかり洟を垂らすサービス(笑)あり。ネビリム先生が、女性らしい細身の姿ながら、声に張りがあって、立ち居振る舞いもどこか男性的で、なるほど、確かに『シンフォニア』のリフィルに似てるかもと感じました。素敵な人です。

 そういえば、ジェイドが譜眼封じの眼鏡をかけるようになるのって、何歳頃からなんだろう。譜術の暴走で先生を殺したトラウマが少しは影響してるんでしょうか。それなら十二、三歳頃からかな?

 この回想、ワンシーンのみで、幼少時代のディストとジェイドの性格と関係、ネビリム先生の人となり、ジェイドが彼女の第七音譜術士セブンスフォニマーとしての資質に惹かれていたことまで全てを自然に表現していました。凄いです。

 

ジェイド「私は、どんな譜術も使える自信はありましたが、第七音素セブンスフォニムの素養だけは全くなくて。初めて人を尊敬しました」
#淡々と語るジェイド。伏せていた視線を上げ、怖いほどに真剣な顔で話し続ける
ジェイド「ネビリム先生はそれだけでなく、あらゆることを私たちに教えてくれましたしね」

#回想シーン。
#昼のネビリム宅。テーブルの上に置かれた、ネフリーの人形のレプリカ

ネビリム『いい? ジェイド。強い力は人を不幸にすることもあるの』
#ベランダの開いた戸の前にネビリムと並んで立ち、無表情に話を聞いている幼少ジェイド
ネビリム『あなたは必要以上のことを求め過ぎる。それは、いつかあなたの身を滅ぼすかもしれない』
幼少ジェイド『でも、僕は全てを知りたい。第七音素だって、扱えるようになるはずだ』
#ネビリム振り向いて、悲しそうに
ネビリム『ジェイド』
#仮面のような表情を揺るがすことのない少年。
#回想終わり


ジェイド「いくら先生に止められても、私はどうしても、第七音素を使いこなしたかった。(顔と目を伏せて)だが誤って、制御不能の譜術を発動させた」
#顔は伏せたまま、僅かに険を込めて目線だけ上げる

#再び回想。
#夜のネビリム宅。突然内部で大爆発が起こり、燃え上がる邸宅。
#炎の中から、苦悶の表情でぐったりしたネビリムの肩を左右で支えたジェイドとサフィールが出てくる。
#なんとか運び出したネビリムを、ドサリと雪の上に投げだす子供たち。ネビリムの体の下から血がどんどんにじみ出して雪の上に広がっていく

サフィール(半泣きで)ねぇジェイド。このままじゃ先生が死んじゃうよ!』
幼少ジェイド(訴えるように見上げるサフィールと横たわるネビリムを視界から外すように身を背けて、感情薄い声音で)分かってる。これは僕の責任だ。先生は必ず助ける』
サフィール『どうやってぇえ!』
幼少ジェイド『フォミクリーだ。先生のレプリカを作成する』
サフィール『……!』←目に涙をためて見上げた表情が可愛かったです
#回想終わり

ルーク「……それで、ネビリムさんは」
#眼鏡を軽く押し上げてから、ルークの方に顔を向けないまま目をあげて
ジェイド「失敗でした。レプリカは不完全で暴走し、本物の先生は亡くなった」

 インタビューやバイブル小説で語られていた情報も補完しつつ、原作を再構成して殆どオリジナルに仕立て直しています。ちなみに原作のこの回想シーンに相当する部分は、次のようなものでした。

(原作)
#ネビリム・レプリカを倒した後、報告に行ったピオニー皇帝の私室にて。アニスに促されて過去を話し始めるジェイド
ジェイド「……始まりは、私の好奇心です。素養のない者が第七音素を使ってみたらどうなるか、自分自身で実験をしたんですよ。結果、私の譜術が大暴走してネビリム先生の家を燃やしてしまいました」
#「!」と驚くガイ、ナタリア、ティア、アニス。事情をある程度知っていたルークは驚かない
ジェイド「ネビリム先生も瀕死でした。私はディストに手伝わせて先生を街外れに運びました」

#回想シーン。
#恐らく夜。降りしきる雪の中、一面に積もった雪の上にぐったり横たわっているネビリムと、その傍に立っている幼いディスト(サフィール)とジェイド

サフィール(涙声で)ジェイド。先生が死んじゃうよ!』
幼少ジェイド(感情薄く)ああ。ボクのせいだ。このままだと先生は助からない。だけどフォミクリーなら……』
サフィール『そうか! 先生のレプリカを作るんだね! だけどここにフォミクリーの音機関は………』
幼少ジェイド『僕の譜術でやる。ネフリーの人形で一度成功してるから、できる筈だ』
#横たわるネビリムに歩み寄り、譜術を行使するジェイド。軽い爆発が起こり、ネビリムのレプリカが立っている
ネビリム・レプリカ『……う……ううぅ……』
サフィール『凄い! ジェイドはやっぱり凄いや! 大成功だ!』
#マルクト兵が一人、駆け寄ってくる
マルクト兵『何の騒ぎだ!』
ネビリム・レプリカ『……!』
#素早くマルクト兵に襲いかかるネビリム・レプリカ。マルクト兵を殺害してしまう
サフィール『う……うわぁっ!?』
#回想終わり

ジェイド「ネビリム先生のレプリカは、破壊衝動の塊でした。私は彼女を処分――いえ、殺そうとしましたが、その前に彼女は姿を消した」
ガイ「――それで今回の一件に繋がるって訳か」
#ルーク、仲間たちに顔を向けて
ルーク「だけどジェイドはすごく後悔してる。だから生物レプリカを禁忌にしたんだ。
 ジェイドを責めないでくれ!」
ジェイド「ルーク……」
#ガイ、可笑しそうに
ガイ「――バーカ。そんなことするかよ。ジェイドが生物レプリカの復活を許そうとしなかったのは俺たちもちゃんと見てきたんだぜ」
ナタリア「そうですわ。(ジェイドに向かって微笑んで)大佐、つらい事件でしたのに、話して下さってありがとうございます」
ジェイド「……いえ。責められて当然の過去ですから、逆に心苦しいですよ」

 

 原作では、ネビリムの死後にジェイドとサフィールがケテルブルク広場で、完全なネビリムのレプリカを作ることを誓い合ったらしいことが語られています。が、幾つかの台詞によって匂わされている程度で具体的な状況は分かりません。それを一応、アニメ版が映像化していました。

#地面にがっくりと座り込んだまま、半泣きで言い続けているサフィール
サフィール『僕たちの手で、ネビリム先生を生き返らせるんだ。ジェイドと僕なら、きっと完全なレプリカを作れる……!』
#今までになくサフィールのすぐ傍に立って、黙って見下ろしているジェイド

 失敗後に先生を復活させようと最初に言い出したのがサフィールの方だったのは、少し意外な気がしました。原作やバイブル小説、漫画版や小説版を見ていると、ネビリムに執着していたのはジェイドの方で、サフィールはあくまでジェイドのために協力していたように思えていたからです。

 でもアニメ版を見る限り、サフィールも(生徒として純粋に)ネビリム先生が大好きだったみたいですね。

 にしても。もしかしたらケテルブルク広場って、ネビリムの家が燃えた跡地、もしくはその近所だったりするのかな?

 

ジェイド「私は、私の才能を買ってくれた、軍の名家であるカーティス家に養子に入り、軍人になってからは、戦場で戦死者のレプリカ情報を抜き出して、死霊使いネクロマンサーなどと呼ばれるようになった」
ルーク「気持ちは分かる。俺だってきっと、大切な人がそんなことになって、レプリカが作れるんなら……」
#ジロリとルークを見やるジェイド。しかし何も言わない

 原作のジェイドは「俺……俺だって、レプリカを作れる力があったら、同じことしたと思う……」 とルークに言われて「やれやれ。慰めようとしていますか? いささか的外れですが、まあ……気持ちだけいただいておきます」と苦笑しますが、アニメのジェイドは黙ってルークを見やる。睨んでいるようにも見えます。ルークの《共感》が《的外れ》だから……なんでしょうね。

 アニメではスル―するんだろうと思っていた、《死霊使いネクロマンサー》の呼び名の由来が説明されました。おぉー。ホントに、設定の多くを取りこぼさずに語ってくれるなぁ。ありがたいです。

 

#ルーク、両腕を組んで、ぐっと身を乗り出す
ルーク「でも、それならどうして、生物レプリカの製造を禁止したんだ?」
ジェイド「……何度目かの実験が失敗して、私が死にかけた時」

#回想シーン。若きジェイド。胸から腹に包帯を巻いてベッドに横たわる彼をベッドサイドに立って見下ろす若きピオニー。
#半身を起こしたジェイドの顔を、ピオニーが容赦なく拳で殴る

ピオニー『いい加減にしろ! 死んだ者はどうやったって生き返りはしないんだぞ。それに、お前が死んだら、俺やネフリーやサフィールがどんな思いをするか、少しは考えろ!』
#回想シーン終わり

ルーク「ピオニー陛下が?」
#ルークの方に目を向けないまま、厳しい顔で語り続けるジェイド
ジェイド「薄々気づいていたんです。(目を伏せる)レプリカは過去の記憶がない。それはけして、ネビリム先生ではないのだと。(目をあげて)私は、ネビリム先生に許しを請いたかった。自分が楽になるために」
ルーク「ジェイド……」
ジェイド「私は一生、過去の罪にさいなまれて生きるんです」

 この回想は、『マ王』漫画版外伝3で触れられていた、ピオニーがこっそりグランコクマへ行ってジェイドの様子を確かめた際のエピソードなんでしょうか? ピオニーの衣装デザインもそれをアレンジしたものになっています。それなら、ジェイドが実際にフォミクリーから手を引くのは、この三年後なんですね。三年も迷っているとは、頑固と言うか頑なと言うか。自分の非を認めるのにそんだけかかってしまった。身につまされます。

追記。

 アニメ放送の翌年、『月刊Asuka』でアニメ版コミカライズ『追憶のジェイド』が連載され、この辺りのエピソードが詳しく語られましたが、結論から言えば、『マ王』漫画版外伝3は全く関係ありませんでした。(^_^;)
 これはND2003末の出来事だそうです。つまり、この時のジェイドは21歳になったばかり。

 

 以下の会話はカットされていました。

ルーク「罪って……ネビリムさんを殺しちまったことか?」
ジェイド「そうですね。……人が死ぬなんて大したことではないと思っていた自分、かもしれません」

 

 原作ではロビーに他の誰もいませんが、アニメではホテルの従業員がフロント内を横切ったのを契機にしてジェイドは話を切り上げます。

#ルークに目を向けて笑みを浮かべ、軽く息を吐きながら
ジェイド「喋りすぎましたかねぇ。もう眠りなさい、ルーク」
ルーク「あ、うん。ありがとう、ジェイド」
#ルークから目線を戻し、僅かに苦笑しつつ
ジェイド「できれば、ここには来たくはなかったのですが」
ルーク「ジェイド……」
#ルーク、フッと表情を明るくし、きびすを返す。明るい声で
ルーク「もう寝る。話してくれてありがとう。初めてあんたに少し、近付けた気がするよ」
#立ち去るルークの後にミュウが付いていく
#少し驚いたようにその背を見送ったジェイド、フッと笑みを浮かべ、肩の力を抜いたように息を落とす

 

 ジェイドがルークに口止めをする要素は全カットでした。「もし話した時にはきつーい、お仕置き。これも分かりますね?」も無し。アニメでは口止めする必要がないってことでしょうか。

 にしても、ルークの「話してくれてありがとう。初めてあんたに少し、近付けた気がするよ」というオリジナル台詞。ユリアシティでティアに向かって言った台詞「話してくれてありがとう。お前のこと、少しだけ分かった気がする」の焼き直しですよね。

 メインカップルの萌え台詞を、おっさんとの会話で中古利用しなくてもいいのに〜。何の意図なのか気になります。単に、ルークの語彙が極端に少ないってことなんでしょうか。まさかアニメのルークは、今後仲間と分かり合うごとに似た台詞を言うとか(苦笑)。

 

 ネフリーとケテルブルク駐留軍に見送られ、出港するタルタロス。ルークはミュウを供に甲板に立ち、ネフリーに手を振っていました。目指すはマルクトの帝都・グランコクマ。宮殿で待ち受けるはピオニー皇帝。…ってところで今回は終わりです。

 ピオニー陛下の顔は、回想シーンでもラストシーンでも影が落としてあって見えなくされてましたが、次回予告では思いっきり顔出ししていました。隠す気あるのかないのかどっちですか。

 それはそうと、ピオニーのキャラクターデザインが華奢過ぎてビックリ。原作のキャラグッズ絵や『ファンダム Vol.2』だともっとガッシリしてたよーな。

 

今回の総論。

  • 絵が綺麗だった〜!
  • 《間》がしっかりあって、しっとりしんみりしていい雰囲気でした。

 

 ではまた次回。

 



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