注意!

 

# 12 水の都

脚本:面出明美/コンテ:綿田慎也/演出:綿田慎也/作画監督:野本正幸

 今回は……微妙な回でした。つまらなくはありません。相変わらずガイとの友情は燃え萌えですし(カースロット!)、ティアとはいい雰囲気になれましたし、幼少ホド組が見れちゃいましたし、ピオニー陛下も登場したし。でも何故なのか観終わってモヤモヤする。

 終盤にとても大きな設定変更らしきものがあったからかもしれません。もし本当にそうなら、世界観の一部が原作とは異なることになります。小さな設定変更も複数ありました。

 あと、今回は何と、尺が余ってたのです。ラストシーンが間延びしてました。うう。この余った尺を外殻大地編に回すことができたら…。ドラえも〜ん!

 

 作画はちょっと崩れ気味だった気がします。キャラクターが変な顔してるシーンが結構ありました。

 

 以下は重箱の隅ツッコミです。読みたい方だけどうぞ。





 アバンはやっぱり、最短で《前回のハイライト》。なんだか見事なまとめ方でした。

 

 Aパート。海を行くタルタロスの艦橋ブリッジで、どうやってグランコクマに入るか相談するルークたち。艦橋の窓がどうなってるのか気になってたんで、見ることが出来て興味深かったです。

 行方不明扱いの陸艦でそのまま入港するのは危険なので、何処かからか上陸して陸路で行こうと結論。具体的にローテルロー橋の地名は出ませんでした。すぐにテオルの森へ。ジェイドだけが通行を許可され、ルークたちは待機に。

 

 監督さんやシリーズ構成さんのコメントによれば、ルークが元々優しかったということを示すために、長髪時代のルークの言動をマイルドにしたとのことでしたが。結局、アニメのルークも断髪後に激変したように見えます。むしろ原作よりも極端に、精神的に完全な別人になったようにさえ感じられる。キャラデザイン的には、ちゃんと同一人物の顔に描かれているのに。

 原作では断髪後にも長髪時から地続きの言動をすることがしばしばありましたが(ブタザルだのウザいだの言ったり、アニスと他愛無い口ゲンカしたり)、アニメでは今のところ、そうしたバランス取りをしていない。むしろ拒絶しているように感じます。

 今回のテオルの森のシーンでも、原作ルークは「通してくれたっていいだろ!」と不満げに警備兵に訴え、ガイに宥められて「……ちぇっ」と子供っぽく舌打ちしていたんですけど、アニメルークはそんな駄々はこねません。「頼むな、ジェイド」と真摯な口調で声をかけ、待っている間も暢気にお喋りしたりせず、一人で自分の贖罪について暗く考え込んでいました。……あまりに急激に《好青年》に変え過ぎです。

 

 原作の時 大好きだった、ジェイドを待つ間、車座でお喋りするバチカル幼なじみ組が見られなかったのは残念でした。ナタリアの正義感溢れる台詞も削られちゃってる。あと、ルークがティアの胸をメロン呼ばわりするエピソードもありませんでした(苦笑)。人気ネタなので、余裕があったら後で出てくるのかもしれないですね。

 アニメ版では、ティア、イオン、アニス、ナタリアが並んで木陰に座り込んでました。ガイは数歩分離れて立っている。ルークだけは森の門前の木に寄りかかって、通行許可を得たジェイドが戻るのを今か今かと待っています。

 イオンがきっちり正座してたのが目を引きました。原作ヴァン師匠せんせいは最終決戦時に正座して待ってたけど、まさかローレライ教団の作法なのかしらん(笑)。

 

 なかなかジェイドは戻ってこない。苛ついた様子のルークに、ガイが近寄って声をかけます。キムラスカとマルクトが開戦間近になったのは自分のせいだと弱音を吐く彼を、「ルーク。これから俺たちで出来ることをやるんじゃなかったのか?」と励ます。

 原作のセントビナー救出前、自分のせいでルグニカ大陸が崩落するんだと落ち込むルークをアニスが励ましますが、それと戦争イベント中のエピソードからエッセンスを抽出し、再構成している感じ。この時点でもう、ルークが戦争まで自分のせいだと思い悩んじゃってます。

 ガイの励ましで元気を取り戻したルークは決意を新たに。笑顔を向け合う親友同士……ってところで、突然ガイが真顔になって、ルークの肩を掴み一気に引き寄せました。一瞬後にルークが寄り掛かっていた木が真っ二つに絶ち割られ、大鎌を構えた黒獅子ラルゴが出現する。

 

 ガイの庇い方がアニメや漫画では珍しい感じで印象的でした。突き飛ばしたり抱きついて前か横に一緒に飛び退くのはよく見ますけど、引き寄せて一緒に後ろへでしたから。ガイ自身は仰向けに倒れてルークのクッションになっちゃってましたし。抜け目なく肘で受け身はとっていたようですが、かなり痛そう。

 前回のジェイドの「余計な口は塞ぎますよ?」もそうですが、ある種のファン層へのサービス的意味合いもあるのかな〜。(^ ^;)

 なお原作には、ティアが後ろからルークを突き倒してカースロットにかかったガイの刃から庇う描写がありますが、そちらはカットされていました。前述のように、アニスのルーク励ましもカットしていますし、まるで、それらをまとめてガイに代行させたようなアレンジになっています。カースロット前にルークとガイの絆を視聴者に印象付けるためなんでしょうね。

 

 戦闘は概ね原作どおりの流れで、やや短縮されていました。けれど、カースロットが発動するシーンは長く演出。(原作ではその瞬間は描写されていません。)

 ルークを引き寄せて庇った後、まだ片膝をついたままだったガイが、ハッとして痛む己の右腕を見やる。そこに赤く譜紋が浮かび上がり、彼の瞳がスッと虚ろになる。脳裏に浮かぶのは二つの情景。姉とヴァンと穏やかに過ごしていた幼少時代。キムラスカ軍に蹂躙されて燃える屋敷から、ペールに背負われて逃走したこと…。

 雑誌インタビューでシリーズ構成さんが幼少ヴァンが出ますよと発言しておられたのでドキワクしてたんですが、十一歳のヴァンは、『ファンダム Vol.2』の十六歳ヴァンを、服装もそのまま縮めたようなデザインでした。はは。

 光の消えた冷たい瞳を上げ、表情を憎しみに歪ませると、ガイは腰の剣を抜いて微塵の躊躇もなくルークに斬りかかる!

 鋭く突き出された刃先でルークの頬が浅く斬り裂かれ、血が滲む。「とっ、とととと!」とルークが慌ててバックステップして、ラルゴの胸にドンとぶつかるのが面白かった(笑)。ラルゴを見上げてキョトンとした顔してたし。なにやってんだー。

 嗤ってルークを斬り裂こうとしたラルゴをナタリアが一度に三本の矢を放って牽制。その一方でルークはガイに追い詰められ、ついに剣を弾き飛ばされてしまう。ルークめがけ、ガイの剣が振り上げられる!

ご主人様!」と叫んで飛び出そうとしたミュウをイオンが「駄目です!」と必死に抱き寄せる一方、大きな動作でスカートを払って太腿を露出させたティアがガーターベルトからナイフを抜こうとする、というオリジナル描写がありました。こっちはまた別の層へのファンサービス? ティアがガイにナイフを投げてたらどうなっていたんだろう。

 直後に地震が起こってガイの動きが止まるのは原作と同じ。ですが、その隙をついてルークが地面を転がって自分の剣を取り戻す描写はありませんでした。この結果、ガイが気を失って倒れた際の状況が変化しています。原作ルークは剣を片手にガイから少し離れて立っていて、ガイは一人でドサリと地面に倒れる。敵が逃げ去ってからルークが抱き起こしていました。アニメルークは徒手でガイのすぐ前に立っていて、倒れかかって来た彼の身体を、直接両腕で抱きとめていました。

 ところで原作版カースロットには、発動が治まると譜紋の真ん中の目をかたどった部分が、まぶたを閉じて消えるという演出があったんですが、それが再現されてなかったのはかなり残念でしたぁ〜…。アニメで見たかった。見たかったんだってばよ。

 

 騒ぎを聞きつけたマルクト軍が駆けつけて勝負は水入りに。

 シンクとラルゴの逃走描写が肉付けされてました。シンクが己の腕に突き立っていたナタリアの矢を抜き、シャッと投げつける。ティアが杖で払いのけた隙に、ラルゴが大鎌を振るってゴオッと土煙を発生させ、紛れて逃げ去ったのでした。カッコよかったです。

 

 シリーズ構成さんが、場面転換させ過ぎないよう原作をまとめ直したとインタビューで仰っていましたが、ここでもうフリングス少将が登場。ジェイドとも合流しちゃいます。ルークは目を覚まさないガイの治療をジェイドに訴えていました。

 ティアとナタリアが駆け寄ってガイに治癒術をかけようとすると、イオンが第七音素セブンスフォニムではカースロットは解けないと止めるオリジナル描写あり。

イオン「というより、僕にしか解けないでしょう。これは本来、導師にしか伝えられていないダアト式譜術の一つですから」
ジェイド「……」
#眼鏡の片側のレンズを光らせつつ、鋭い目でイオンを見つめるジェイド。《キーーン…!》みたいな効果音入りでした
アニス「でも、イオン様……」
イオン「心配はいりません、アニス。(笑顔で向き直って)これは、僕の《役目》なのですから」

 イオンがレプリカであり、導師の代用品として相応しく生きることを己に課しているという伏線が、これでもかと張ってありますね。

 どうでもいいけどこのシーン、イオンに抱かれているミュウが、場にそぐわない のーてんき顔してて気になる。(^_^;)

 

 グランコクマホテルへガイを運び込む。原作では兵士二人が両脇からガイの肩を支えて運んで行きましたが、アニメではちゃんと担架に乗せてました。既に夕方で、赤い光が低く差し込んでいます。

 ルークが付いていこうとするとイオンが止め、ガイにはルークへの強い殺意があると明かす。

 ショックを受けたルークは、夜の街の水道橋の上で独り、過去を思い浮かべます。原作はルークの独白で気持ちを綴っていたものですが、アニメはやっぱり映像で見せる。

 幼い頃、剣が飾られた柱の前に一人で立っているガイを見つけた。喜んで声をかけたのに、振り向いた彼の目はハッとするほど冷たかった。……あの時の目は、カースロットで斬りかかって来た時のものと同じではなかったろうか。だとしたら……。

 ちなみに、今回の幼少ルークは一人でスタスタ歩いてたので、前々回の歩行訓練より後日、ってことになりますね。

 

 誰かが近づいてきて、人差し指の先に治癒の光を発動させると、ルークの頬のガイに付けられた傷を癒す。面白い映像でした。驚いて顔を上げたルークは、傍らに佇むティアとミュウを見出します。

ティア「約束したわ。あなたをいつも見ているって」
ミュウ「ボクは、ご主人様に付いて行くですの」

 以下の会話は大体原作どおりですが、次の部分は削ってありました。

ティア「……放っておいたら、あなた勝手なこと考えそうだから」
ルーク「勝手なことって何だよ!」
#ルーク、ティアに食ってかかる
ティア「ガイは自分のことを憎んでるって」
#ティアまるで怯まずに両腕を組んでルークをねめつけて
ルーク「だって憎んでるんだろ。だから……」

 また、以下のティアの台詞を修正。

(原作)
「ガイはあなたのこと……殺したいほど憎んだ時期があった。それでもあなたが立ち直ると信じてくれたんだわ。そうでしょう」

(アニメ版)
「ガイはあなたのこと、殺したいほど憎んだ時期があった。それは本当なんだと思うわ。でもあの時、あなたが立ち直ると信じてくれたのも本当でしょう?」

 それは本当。でもこっちも本当。こういう言い回しと論法、好きです。自分でもよく使う。なのでアニメのティアさんに親近感が湧きました(笑)。(こんなところでかい。)

 

でも……俺、へたれだからな。それぐらい言ってもらった方がいいのかも」「馬鹿だな、俺。落ち込んでる暇はないんだった。皇帝に会わないとな」という台詞はカット。代わりに、ティアに治癒してもらった頬に指先で触れて笑い、「でも、ありがとう」と言ってました。全体に可愛い恋物語な雰囲気。「ミュウも……ありがとう」「いいんですの!」という会話も消滅。アニメルークはティアしか見えてません。いい雰囲気になった二人を見比べてミュウが嬉しそうに鳴いたところでAパート終了となりました。

 うーん。ホントに、崩落編に入ってから尺が余裕たっぷりになりましたねぇ。《間》が適切。

 

 Bパートは半裸のガイからスタート。カースロットの紋様が消えているのを自分の目で確認しています。

 ちなみにAパートから殆ど時間が経っていないようで、窓の外は漆黒の夜。

 イオンの「終わりました。もう大丈夫です」という声が聞こえてカメラが切り替わるとすぐに、傍にいたルークがガイに謝罪を始める。既に部屋の中に仲間全員が揃っています。すんごく場面をまとめてありますね。(今回は少し尺が余ってましたし、ルークたちが部屋に入ってくるカットがあってもよかったのになぁ。)

 

 ガイが身の上を語り、ルークと和解する。

「お前が俺に付いてこられるのが嫌だってんなら、すっぱり離れるさ。そうでないなら、もう少し一緒にいさせてもらえないか? 確認したいことがあるんだ」

 この台詞を言う時、原作とは正反対に、ガイが笑顔になっていました。グズグズ言うルークの胸を拳で軽くノックして、言葉を止めさせるという動作付き。

 多分、兄貴分として優しくたしなめた、ガイはとっくにルークのこと広い心で許してるよ、みたいな意味付けなのでしょう。『マ王』漫画版の該当シーンと同方向の演出です。

 でも私はやっぱ、原作の(声優さんの)解釈の方が好きだったなぁ…。

 この台詞を、原作ガイは険しい声音で言います。(後ろ姿なので表情は見えない。)裏切り者の自分を信じられないと言うなら離れる。だけど、そうじゃないなら一緒に旅をさせてくれと。

 アニメや『マ王』漫画版では《ルークがガイに許される》という側面を強めています。彼は明るくていい奴だから屈託なくルークを許したのさ、という感じで。

 確かに、ガイがルークをもはや復讐の対象として見ていないのは本当のこと。…でも何年も命を狙っていて、ついさっき、カースロットに刺激されてルークを殺そうとしたのも本当のことですよね。

 ルークはガイに許されたいとしか思っていない。ですが、ルークこそガイを恐れ疑って忌避したとしてもおかしくはない状況です。だからガイは「お前が俺に付いてこられるのが嫌だってんなら、すっぱり離れるさ」と言った。そう言いながら、一緒に行かせてくれないかと請うた。ガイの方も《許されたい》んだ、ルークの親友・仲間であり続けることを。私はそう思ってました。

 だからルークは《ガイを許す》意味で「わかった。ガイを信じる」と言い、同時に《ガイに許してほしい》という意味で「いや……ガイ、信じてくれ……かな」と言ったんじゃないかなーと。ガイもそれが解って、二人一緒に懺悔と寛容を差し出している状況に「いいじゃねぇか、どっちだって」と笑ったんじゃないかなぁとか。

 

 ところで、アニメルークはガイに「もう少し一緒にいさせてもらえないか?」と言われると、何故かティアの方を振り向いて、(ティアはどう思ってるかな?)と言わんばかりに見つめるのでした。彼女が(信じていいのよ)または(良かったわね)と言いたげに微笑んでやると、やっとガイの方を向いて彼の手を握り、「分かった。ガイを信じる」と笑う。アニメオリジナルの描写です。

 前々回でも、アニスに嫌味を言われると困ったようにティアの方を振り向いてたものでしたが。うーん。

 これルークとティアの絆を示す意図なんですよね多分。水道橋の上でティアにガイを信じなさいみたいに励まされたから、ここでもティアにお伺いを立てる。ルークはそれだけ彼女のことを頼りにしてるんですよみたいな。

 …申し訳ないけど、個人的には好みじゃないです。友達を信じるかどうかくらい、カノジョにお伺いを立てずに自分の心で決めろよバカたれ。(暴言失礼)

 ティアの方を見るにしても、(お前が言ってくれたとおりだった。ありがとう!)みたいな表情だったら素敵だったのにぃい。うーうー。

 

 それはさておいて。ガイの言う「確認したいこと」って何なのでしょうか。

 原作の時点では、マルクト人の父とキムラスカ人の母の間に生まれた和平の子として、両国間の戦争で滅ぼされたホドの生き残りとして、両国が真に平和を作れるか確認したかったんだと解釈してたんですが(だから、自分自身も尽力してやっと漕ぎつけた平和条約締結の場で、インゴベルト王に剣を突き付けて真意を問うたんだと)、アニメガイは笑って明るく言ってるので、そこまで重く感じられません。

 単純に、ルークが自分の忠誠に足る人間に成長するか賭けの結果を確かめたいとか、そういう意味だったんでしょうか? 「もう少し一緒に旅させてもらえないか」と原作で言ってるのが「もう少し一緒にいさせてもらえないか」に修正されてて、ルーク含む仲間たちと平和を作る旅を続けたいと言うより、ルークと一緒にいたい、というのが強調されてるようにも感じられますし。でもアラミスにルークを迎えに行った時点で、決定自体はしている気もするしなぁ。

 

 どうでもいいことだけど、普段は隠れているガイのシャツの裾の長さや袖口の形が明かされましたね(笑)。シャツの裾丈は妙に短い。

 つまり、このシャツは上に着ているベストと同じくらいの丈で、タイツの方がへそ上 十センチくらいあるのかな。激しく動いてベストが上がっても、ガイの腰にシャツも地肌も見えたこと無くて、茶色のベルトの上にも黒いタイツ地が続いてるし。なんて思ったんですが、このシーンで同時に見えるガイのタイツは、茶色いベルトの上はすぐ地肌になってて、へそ下でした…。

 ……普段は黒腹巻きで腰を隠していると解釈してよろしいか。それともこのシーンのガイのタイツがずり下がってたのか。(後者…なんだろうなぁ…。実はかなりのお色気シーンだったのかも・苦笑)

 

 話がまとまったところで、タイミングよくフリングス少将が出現。やっと自己紹介をして、皇帝との明日の謁見許可が出たので連絡に来たと告げます。

 すっごく若く見えますねぇ、フリングス将軍。それと、原作では肌色が濃い目だという印象があったので、あー普通の肌色なんだ…と、妙なところに感心(笑)。

 

 グランコクマ宮殿へ。背景画がものすっごく綺麗でした。すげー、広ーい!

 原作では謁見はガイがカースロットで倒れている間に行われました。なので、ガイ、イオン、アニスは、この時はピオニーと対面していなかった。が、アニメでは全員で会っています。

 謁見の間にて、ジェイドとイオンはルークたちに顔を向けて皇帝側に立っていました。ジェイドはマルクト臣下だからいいとして、イオン様をそこに立たせたのはどういう意味なんでしょう。キムラスカ王に謁見した際は、今回のルークたちと同じように王と向き合って立ってたし…。

 

 カットされるかもと思っていたピオニーの台詞、「よう、あんたたちか。俺のジェイドを連れ回して帰しちゃくれなかったのは」がしっかり残っていて愉快でした。

 ここでの会話、原作に比べてナタリアの影が薄くなっていて残念でした。彼女がルークと並んで「敵国ではありません! 少なくとも、庶民たちは当たり前のように行き来していますわ。それに、困っている民を救うのが、王族に生まれた者の義務です」とピオニーに訴える部分が削られていたせいですね。

 真摯に訴えるルークは迫力があって良かったです。……うーん。これだけルークの《セントビナーを救いたい》という気持ちを強調するなら、やっぱ前々回で、テオドーロ市長に崩落否定されたらすぐにやる気削がれて「とにかく一旦、上の世界に帰らないか?」なんて軽く言う形に変えては欲しくなかったなー…。

 

 それはともかく、この辺りの気合いの入ったルークを見ていると、なんだか恥ずかしくて身悶えしたくなって仕方がありませんでした(笑)。

 原作ルークは、マルクト側に自分の思いを訴える際、思わず素の汚い口調で喋ってしまい、慌ててぎこちなく丁寧語で言い直すんですが、それが削られていたせいもあるかもしれません。ルークが急に、あまりにも完璧な《好青年》になってて。立派すぎて、て、照れる!

 

 次に全員でピオニーの個室へ。謁見の後、ピオニーは議会を招集すると言って出て行った訳ですから、結構な時間が経過しているはずですよね。それとも、召集の前の空き時間なのかな?

 部屋に入る前に、先導したジェイドが真顔で「……驚かないでくださいね」と言う。で、中に入ると汚部屋にブウサギたちが闊歩していたわけですが。

《散らかってる》要素の方は薄かったです。一応、書類や本が散らばっていたけれど、原作よりず〜〜っと綺麗な部屋に見えました。もっとぐっちゃぐちゃの部屋にして欲しかった〜。

 で。ブウサギが変でした………。

 豚の骨格じゃ無理な、あからさまに擬人化された動き(椅子に両手で掴まって片足をひっかけてよじ登る)をしていましたし。何より、原作と比較してすごく小さい。第2話のエンゲーブで出てきたブウサギは違和感のない大きさでしたし、仔ブタなのかなぁ? それとも、ペット用のミニブタで食用のブウサギとは違うという設定に変更されたのか。でも豚と言うよりウサギっぽくもあり、ピオニーの抱っこのやり方がウサギ式な感じでした。

 原作のでっかいブウサギの方が好きでした……。声も擬人化されてない、あくまで《動物》のやつ。

 あと、首輪が描かれておらず、更には八匹もいました。

 原作だと、この時点でピオニーが飼っていたのは、ジェイド、ネフリー、サフィール、ゲルダ、アスランの五頭で、名前の書いてある首輪をしてるんですよね。(ポリゴンキャラのブウサギは首輪をしてないんですが、物語上はしていることになっています。アニメではその点を補完して首輪をつけてくれるだろうと思ってたので残念。)この後にもう一頭飼い始めて、ルークと名付ける。つまり最大でも六頭しかいなかったのに。

 現時点で八匹いるってことは、残り三匹は何て名前なんでしょう。ゼーゼマン、ノルドハイム、マクガヴァンのファーストネームかな? レプリカ編では《ルーク》が増えて九匹になってるのでしょうか。

 

 ティアが、可愛いブウサギに うずうずするという可愛らしさをアピール。眠っている《サフィール》にそっと触れようとして、ピオニーが話しながら目を向けるとパッと離れてました。

 

 謁見の間を出る時にピオニーが声をかけたのはジェイドだけ。でもジェイドは全員をピオニーの私室に案内し、「俺たちも行っていいのか?」と尋ねたルークに「ええ。皆さんにもお話があるそうです」と答えていたものでしたが。ピオニーの話があったのはガイだけでした。オイ。

ジェイド「ペット自慢のために呼ばれたのではないでしょう?」
ピオニー「おお、そうだ。お前に話があってな。ガイラルディア」
#驚くルークたち。ガイに注目する
ピオニー「ホド島が沈んだ時、ガルディオス伯爵家の者もみな死んだことになっていたんだが」
#硬い表情になったガイ、前に出ると皇帝にひざまずいて軽く頭を下げる
ガイ「申し訳ありません。本来なら、領地を預かる伯爵家の者として、皇帝陛下のもとへ馳せ参じるべきところを私情に走り、長く職務を放棄したこと、どのような責めも覚悟しております」
ルーク「ガイ!」
#ピオニー、ブウサギを抱っこしたまま可笑しそうに
ピオニー「責めてる訳じゃねぇさ。お前にも色々《事情》があったんだろう?」
ルーク「……!」←ルークの顔が可愛かったです
#ひざまずくガイを呆然と見下ろしていたルーク、ハッとしたようにピオニーを見る
ピオニー「ハハッ。それにガルディオス伯爵家の財産や権利は国庫に預けられていてな。お前が望むならすぐにも爵位を戻すが?」
アニス「ええ〜っ♥ ガイが伯爵さまに?」
#はしゃぐアニスにイオンとティアが注目
#ガイ、目を伏せると首を左右に振る

ガイ「いえ。(目をあげて)勝手であることは十分承知しておりますが、今の俺にはやるべきことがあります。ルークたちと一緒に」
ルーク「ガイ」
アニス「えー。勿体なーい」
ティア「アニス」
#やれやれという感じでたしなめるティア。イオンも可笑しそうに微笑む
#面白そうな笑みを消さないピオニー

ピオニー「まあ、お前がそれでいいんなら、今はいいさ。その代わりと言っちゃなんだが、セントビナーの避難誘導任務に強力な助っ人を呼んでやる」
ルーク「助っ人?」
#少し呆れた様子のジェイド
ジェイド「また何を考えておいでですか? 陛下」
ピオニー「まあ楽しみにしてろって」
#抱いていたブウサギをジェイドに向かって両手で突き出してみせるピオニー

 この時点でガルディオスの爵位返還を提示。……ホド崩落の真相を隠したまま、か。

 ここでガイが承諾してたら、平和条約締結の場でああいう立ち回りは出来にくかったでしょうし、そうすると、ホド崩落の真相はずっと隠されたままになってたのかなぁ。

 

 ところで、原作によればガイはホドから脱出してから二年間、セントビナーを起点にしてマルクト国内を転々として身を隠していたらしく。ファブレ家に潜り込んだのはホド崩落の二年後、ホド戦争終結の一年後になります。そんなに時間があって皇帝の前に名乗り出なかったのは流石に不自然な感じ。そしてホドとガルディオス家を見捨てたのは実は先代皇帝。どことなくきな臭さが漂う感があると思ってたんですが。今回のアニメで見る限り、名乗り出なかったのはガイが復讐を望んだから、というだけみたいですね。色々妄想していただけに肩透かしでした。かくん。

 もっとも、単にアニメ版オリジナル解釈なのかもしれません。

 中を取って想像をたくましくするなら、実際はペールたちホド生き残りの大人組は先代皇帝を恐れてガイを匿っていたけれど、幼かったガイはよく分かっていない。ピオニーの方は概ね事情を悟っているけどあえて口にしない。とかはどうでしょう。

 

 それはそうと。「セントビナーの避難誘導任務に強力な助っ人を呼んでやる」と笑って仰る陛下。強力な助っ人なんてものを呼べるなら、どうして謁見の間で会談した時は「議会が反対するから自分側からは救助隊を出せない、そちらで頼む」と断ったんですか。その段階で助っ人の話を出すべきでは。しかも勿体ぶって「まあ楽しみにしてろって」。サプライズパーティーやってんじゃないですよ。一刻を争って人命に関わる問題ですよ。

 ピオニーの私室のシーンだけ切り取って見れば、ピオニー陛下らしさのよく出た素敵なエピソードと言えるでしょう。しかし全体を繋げて見ると、情況にそぐってないし筋が通ってない。と思います。

 

 以降のエピソードは、超圧縮でした。

 セントビナーへ向かう道中はカット。前述したように、落ち込むルークをアニスが励ますエピソードが消滅。か〜な〜り〜残念でした。アニスが嫌味を言っていた時期だからこそ意味があり、アレが有ると無いとでは彼女の印象が全然違うのに。

 ジェイドのルークへの嫌味は、わざわざエピソードアレンジまでして《本当は優しいんですよ》とフォローしたのに、アニスの方は嫌味言わせっぱなし。それどころか原作にあったフォローエピソードを消してしまう。何故でしょうか。

 アニメのアニスは今の所、主人公のルークとちゃんとした交流をしてません。レプリカ編までお預けということかもしれませんが、かなり偏った描かれ方になっていると思います。流石に気になってきました。

 せめて今回、冒頭のガイがルークを励ますシーンを、ガイと一緒にアニスが励ます形にしてほしかったです。尺が足りないと言うなら、ピオニーの私室のオリジナルエピソードを削ってくれてよかったと思います。おやつは美味しいし沢山欲しくなるけど、正しい成長のためには、おやつよりご飯重視だと思う派です、私は。美形皇帝とウフフより、パーティメンバーとの基本的な交流固めを大事にしてほしかった。

 

 セントビナーでのルークの頑張りを見たアニス始めとする仲間たちが、彼を認め信頼するようになるエピソードもカットでした。『マ王』漫画版みたいに後で代替エピソードを入れるのかもしれませんけど。セントビナーをディストが襲うエピソードも無し。

 老マクガヴァンとグレン将軍が初登場。この構成は『マ王』漫画版に近い。老マクガヴァンがちゃんと「ジェイド坊や」なんて言ってて嬉しかったです。

 グレン将軍のベルトってあんななってたんだ……と、今頃感心。

 

 ディストの襲撃がなかったので、いささか都合良い感じでルークたちとマクガヴァン達の間を地割れが隔てて街の真ん中だけ崩落開始。崩落の揺れに耐えるジェイドが凄いポーズしてました。咄嗟に崩落側に飛び降りようとしたルークの手をジェイドが掴んで止める。

 崩落開始してすぐ、ルークたちの頭上にノエルの操縦するアルビオールが出現。アニメのアルビオールの駆動音はやたらとけたたましいです。驚いて見上げるルークと浮かぶアルビオールを何度もカット割りして映して、やっと終了でした。

 

《ディバイディングライン》や《現代の譜業技術では空は飛べない》という設定は消滅しているのでしょうか? それに、ピオニーが言っていた強力な助っ人がノエルの事なら、アニメのアルビオールはマルクト船籍という可能性が高い。

 うーん…。これからどうなるんでしょうね、アニメ。

 

今回の総論。

  • 設定が原作と乖離し始めた…? このままパラレルストーリーになってしまうのかな。
  • EDクレジットで、ラルゴが《ラルゴー》になってたゴー。

 

 ではまた次回。

 



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