# 13 開戦脚本:加藤陽一/コンテ:こだま兼嗣/演出:佐藤照雄/作画監督:佐久間信一 今回で1クール終了です。ちょうど半分で崩落編中盤か…。順調ですね。 作画は文句なく。なっちゃんが可愛かったです。 《間》を詰めることはされていませんが、外殻大地編中盤以上にエピソードの切り捨てと入れ替えが行われ始めました。結果的に、ルークの心情の流れや仲間との関わりが原作とは異なってきています。
今までのカットや入れ替えは小規模なもので、展開自体はほぼ原作通りでしたが、とうとう《再構成》の開始です。最も長い崩落編、原作通りに展開する可能性は低いだろうと予想していたものの、いざ始まると複雑です。 と言うのも、変更されたアルビオール登場理由が、どうしてもどうしても納得できないからです。納得できるだけのちゃんとした説明も現時点で成されていません。 これを含め、設定的に「??」と思った部分が三箇所あり、観終わった後は前回以上のイラモヤ感に襲われました。
以下は重箱の隅ツッコミです。グダグダ言ってますので、読みたい方だけどうぞ。 久々にアバンが本編のはみ出し。 崩落を始めたセントビナー。そこに飛来した謎の飛晃艇。 ガイ「こいつはもしかして……」 原作では、(二年強しか生きていない)イオンが「確かにキムラスカと技術協力するという話に、了承印を押しました。飛行実験は始まっている筈です」と言っていましたが、台詞を修正して、アルビオールがいつ頃から開発されていたのかをぼかしています。補完かな? スピノザの設定を併せて考えると、七年以上前からシェリダンで開発が始まっていないとおかしいですもんね。ついでに、浮遊機関を発掘したのがダアトで、飛晃艇開発がキムラスカとダアトの共同事業であることもぼかしています。 これなら取り残された人々を救えるかもしれないとルークたちが勇んで飛晃艇に駆け寄ったところで、ノエルが降りて来て搭乗を促す。アバンはここまで。 ノエルが丸いと言うか、幼く見えます。声も違うし。
Aパート。ルークたちはアルビオール艇内から沈んでいくセントビナーの様子を窺う。 崩落の仕方がリアルで、まず街の中心が円く崩落し始め、次に周囲の広範囲がパックリ割れて隆起、崩れていきました。アルビオールが来なければ、ルークたち自身が地割れに呑まれて死んでいたでしょう。
ノエル「私は、当機アルビオールの専属操縦士、ノエルです。ピオニー陛下の要請で参りました」 ノエルが何者か、どうして飛来したかの説明はこれだけでした。
原作では、アルビオールはダアトとの技術協力によりキムラスカ王国の都市・シェリダンで開発されていたもの。飛行機が製造されたのは二千年前以来初めてです。操縦士のノエルはシェリダンの技師・イエモンの孫娘。当然ながらキムラスカ人。 実験段階で未だ実用化されていなかったそれを、しかも開戦直前という状況下、敵国の救助活動のために借り出すなどということができたのは、導師イオンと王女ナタリアの要請、マルクト軍人のジェイドが無償でタルタロスの部品を提供したこと、事故に遭っていたイエモンの孫息子・ギンジ(ノエルの兄)の救助をルークたちが買って出たこと、そして、人助けにマルクトもキムラスカも関係ないと言い切った、ルークの熱意の賜物でした。 なのにアニメでは、マルクト帝国皇帝の要請で来たと言うのです。 前回、皇帝の予告通りに現れたアルビオールを見て非常に驚き、てっきりアニメ版のアルビオールはマルクト船籍でノエルはマルクト人に設定変更されているのか、さもなければ、シェリダンがマルクトの都市になってるとか、自由交易都市扱いになってるなんてウルトラC的な設定変更がされてるのかと思ったのですが。TVA公式サイトのキャラクター紹介ページで、ノエルはキムラスカ王国所属として掲載されていましたし、『テイルズ オブ マガジン』Vol.5のアニメ特集ページでも、シェリダンはキムラスカ領の都市だと明記してありました。
どうしてキムラスカ人のノエルが、マルクト帝国ピオニー皇帝の要請で飛来するんでしょうか。 確かに原作でも、シェリダン製造の陸艦がダアトを介すことでマルクトにも輸出されているとか、だから平時であればマルクト軍人がシェリダンにいても特に見咎められないとか、シェリダンにはキムラスカ人だけでなく世界各地の優秀な職人が集っているというような設定があります。でも、それとこれとは流石に訳が違うでしょう。 しかも開戦直前で、《マルクトの議会がキムラスカの陰謀を恐れるので、皇帝が自国軍さえ救援のためには殆ど動かせない》状況なんですから。なのに、皇帝は敵国の民間人を笑顔で呼びつけて使役出来るんですか? これは大問題だと思います。マルクト皇帝が敵国の都市と深く関わっていることになりますし。謁見の間では言わず私室で告げたことを考えれば、マルクトにとって不利な方向の内通さえ疑える。そしてある意味、ナタリアやルークが馬鹿にされていることにもなるかと思います。
物語を短縮するため、アルビオールの方からやって来る展開にしたかったんだなとは想像できます。 『マ王』漫画版では、アルビオール試運転中のノエルらが外殻の亀裂を発見、お人好しにも敵国領土のケテルブルクに警告に現れ、軍に逮捕されかかっていたのをジェイドが仲裁。それをきっかけにしてルークたちの《足》になったことになっています。 アニメ版のアレンジは、これを参考にしつつテオルの森のカースロットを削るまいとした結果なのかもしれません。 ですが。一応真面目に戦争を描いているはずの物語で流石にこれは。敵国所属の最新鋭機を、皇帝がプライペートで呼ぶ? 馬鹿馬鹿しい。こんなブッ飛んだアレンジにするくらいなら、まだ他に幾らでも、もう少しはマシな方法があったんじゃないでしょうか。 それこそ、『マ王』漫画版アレンジをほぼそのまま採用して、飛行実験中のノエルがセントビナー崩落に気付いて自己判断で駆けつけた、なんてのでも。オールドラントには二千年間飛行機がなかったので領空の概念が希薄ってことにしておけば、マルクトの上空を飛んでいても変じゃないと言い張れそう。 さもなきゃ、グランコクマを出発する時ガイがふと思いついた顔をしてナタリアやイオンに何か頼む描写を入れておいて、セントビナー崩落時にアルビオールが現れると「こんなこともあろうかと、飛晃艇を貸して欲しいって文書をイオンとナタリアに鳩で送ってもらっていたんだ。シェリダンで飛行実験が始まってるって話は聞いてたからな」とか言い出すとか。 こんくらい無茶展開でも、敵国の皇帝が呼ぶよりはまだマシなんじゃなかろーか。と思ってしまったくらい引っかかって納得できませんでした(涙)。
セントビナーの崩落は、原作とは異なる形で盛り上げられていました。 セフィロトツリーで支えられた外殻大地の下には、ディバイディングラインという浮力の力場が存在します。セフィロトツリーが消滅しても暫くはそれで持ちこたえられるけれど、そこを過ぎると一気に崩落するという設定です。 原作では物語進行上の方便で、《かなりの日数》はディバイディングライン上に留まっていられることになっています。その間にルークたちはタルタロスで海を渡ってキムラスカのシェリダンまで行き、飛晃艇を入手したという訳です。 が。アニメ版では数十秒でディバイディングラインを抜けることになっていました。 それはいいのですが、何故か外殻とディバイディングラインの断面構造図がアルビオールの計器に表示されていて、限界時間すらその場で計測していました。 え、えぇえええええ〜……!? シェリダンの職人達を含む外殻大地の一般人は、自分たちが空中大地に住んでることすら知らないんですよ。まして、ディバィディングラインのことなど知るはずもない。飛んでるだけで外殻の様子をリアルタイムに計測出来る超強力センサーと演算機みたいなものがあるなら、どうしてその情報が一般化してないんでしょうか。開発されたばかりの最新機器だからとか言うつもりなのかなーうーん。
つまり。最初に書いたとおり、今回はアレンジ部分が設定的に不自然。だと感じます。 設定なんて物語のスパイスで、臨機応変に誤魔化すものですけど、もうちっとキモチよく騙してほしいです……。今回は「は?」「何で?」「おかしいじゃん」と思うことばっかり。
その場でディバィディングラインを抜けて高速落下を始めたセントビナーに、必死でアルビオールを追いつかせて着陸するノエル。ルークは率先して降りて人々の避難を誘導。最後の最後まで残り、アルビオールが飛び立つギリギリで避難を完了させて自分も乗り込む。これはアニメ版オリジナルのエピソード。乗り込む直前には立ち止まって周囲を見回し、取り残されている人がいないか確認した辺り、ルークの行動が完璧過ぎでした。 にしても、原作ではセントビナーの住民は誰一人被害に遭わせずに救えたと思っていましたが、アニメではアルビオールが降り立つ前に崩落の中に消えていった人々の姿も描写されてました。そんな……………。
アルビオール内から泥海上のセントビナーを見下ろして会話。老マクガヴァンの「そうか……。これはホドの復讐なんじゃな」という伏線台詞は無し。 ルークが「分かんねーよ! アクゼリュスを滅ぼしたのは俺だ! だから何とかしてーんだよ! せめてここの街ぐらい……!」 と喚いて、ジェイドに「ルーク! いい加減にしなさい。焦るだけでは何も出来ませんよ」と怒鳴られる。アニメ版では台詞の後半の口調が優しくなってました。 そして「それとルーク。先程のあれは、まるで駄々っ子ですよ。ここにいるみんなだって、セントビナーを救いたいんです」と言い聞かせる部分がカット。これは残念。ルークの謝罪も、ナタリアやガイら幼なじみたちの慰めと励ましも無し。
さて。ここからいよいよ、物語の本格的なアニメ用脚色が始まります。細かなカットや変形なんて気にしていられないと思えてくるくらいの、怒涛の再構成です。 原作のここからの展開は、以下のようになります。
それをアニメ版は、以下のように再構成していました。
パッセージリングの操作、イオンの第六譜石預みあげは次以降に回されているようですが、細やかな心理的変遷を表現したエピソードは、ほぼ消滅しています。
救出したセントビナー住民たちを乗せて 原作ではユリアシティに向かうところを、さっさと崩落後の穴を通って外殻大地の空に帰還。なので、そのままアルビオール艇内で老マクガヴァンがルークを諌めることになっていました。 「ルーク。あまり気落ちするなよ。ジェイドは滅多なことで人を叱ったりせん。お前さんを気に入ればこそだ」 ジェイドがツンデレおじさん化し、アニスとミュウがからかう。大体原作と同じです。 #一応言っておくと、原作ではガイとアニスがからかってました。でもアニメのガイはジェイドが「元帥! 何を言い出すんですか」とツンデレ発言した時に、ぎょっとした感じで目を向けただけでした(笑)。 ところが。ルークの反応は全然、原作とは違ってたのです。 原作のルークは、よほど心に響いたようで、しばらくその場に立ち止まっていました。そして傍にいたティアにお礼を言う。「お前、最初からちゃんと俺のこと叱ってくれたよな」と。そして「変だな、俺。叱られるってずっと嫌なことだと思ってたのに」と嬉しそうにするのです。 が、アニメのルークは。ジェイドの反応を見ても全く心動かされた様子はなく。興味なさげな様子で、すぐに目を窓の外に向けていました。これで終了。 えぇええええええ……(汗)。 まあ……。ここでルークがジェイドに向かって嬉しそうにしたら、それはそれで気持ち悪い気もしますし、と言って原作のように《ティアへの感謝》を通して喜びを表現するわけにもいかないのか。アニメのティアさんは分かり易く優しくて、数えるほどしかルークを叱ってないですもんね。 でもなんか、アニメのルークって冷たい……ってより、感受性に乏しい奴だなぁ〜という印象を受けました。(^_^;) 打てども響かない、と言うか。 こういう場面でこそ、《戸惑ったようにティアを見て、ティアが微笑んでやると安心。笑ってジェイドにお礼を言う》みたいな演出にすればよかったんじゃないでしょうか。前回のガイとの和解場面でやってた奴。あの場面より、こっちでやってくれた方がピタッときたと思うなぁ。
窓の外を見たルークは、ルグニカ平野でキムラスカ・マルクト両軍が戦っているのに気づく。 戦争シーンは原作のアニメムービーのオマージュ的な感じでした。陸艦、歩兵、騎兵。……陸上装甲車はいませんね。第6話に出てた奴は何だったんでしょう。
二手に分かれて両国に停戦を訴えることに。 ナタリアがキムラスカ本陣に出向いて直接停戦させると言った後、では二手に分かれようと提案するのは、原作ではルークです。しかしアニメではジェイドが提案していました。 原作ルークはこの辺りから自然にリーダーシップを発揮し始め、アニスやジェイドも嫌味を言うことなく普通に従うようになるんですが、アニメルークはその段階からはほど遠いみたい。まあ、現実的に考えれば年長者のジェイドが主導して当然ですけども。アニメ版はルークの主人公補正が希薄な感じです。
ナタリアとルーク・ティア・ガイ・ミュウはカイツールのキムラスカ軍基地に押し入り、作戦会議中だったアルマンダイン大将に停戦を命じます。 原作では、カイツールに行くとアルマンダイン大将はケセドニアに向かったと言われます。この戦争が《仇討ち》であるというお墨付きを得るため、モースと会談しに行ったと言うのです。 しかしアニメ版では、何故かモースの方がカイツールのキムラスカ軍基地にいました。
まずはナタリアがアルマンダインに声をかけ、次に後ろからルークやティアたちが姿を現す。 原作では、長髪時代のルークが屋敷への帰還の旅をしていた時、アルマンダインと対面しています。その時、アルマンダインは小さい頃のルークに会ったことがあると親しげに話しかけ、ルークの方は覚えてねーやと返していたものです。この頃のルークは傲岸不遜で、ルークのために様々な手配をしてくれたアルマンダインにお礼を言うことすらありませんでした。 だからこそ、原作ルークはアルマンダインの前に歩み出た時、知人として「アルマンダイン伯爵。ルークです」と呼びかける。以前とは打って変わった、王族らしい丁寧で凛とした物腰で。 原作のアルマンダインは、まずはナタリアの顔を見て「ナタリア殿下!?」と驚き、暫く会話します。その後でルークが歩み出ると、「生きて……おられたのか……!」と、ナタリアの時とは違う、まるで亡霊を見たかのような愕然とした様子で声を落とす。 この驚き方から、彼が《ルークの死》を確定視していたことが分かり、つまりユリアの しかしアニメ版は会話の順番を入れ替えていて、そのニュアンスが消滅させられていました。ナタリアが「アルマンダイン伯爵! どういうことですの?」と呼びかけてすぐにルークも姿を現しており、アルマンダインは「ナタリア殿下!? (後ろのルークにも気づき、二、三歩よろめき出て)生きて……おられたのか……!」と言っていて、ナタリアとルーク二人の生存に、ただ驚いた感じになってます。
原作アルマンダインは 預言どおりにマルクトとの間に戦争を起こすことが重要。これによりキムラスカが勝利し、人類に未曽有の大繁栄が訪れるというのですから。ナタリアやルークが生きていようと、戦争を止める理由にはなりません。が、秘預言がらみの事情は公言できない。しかしナタリアが生きて目の前にいる以上、無下にもできません。そして消えるはずのルークが生きているのは異常な事態です。だからナタリアとルークに停戦を訴えられると、困り果てて言葉をなくす。 原作では、ナタリアとルークの言葉に心動かされたのは周囲で聞いていた一般兵たちでした。彼らは秘預言のことなど全く知らないので、戦争する必要などない、と言われれば素直に感じ入ることができる。 一方アニメ版では、アルマンダインと作戦会議していた三人の上級士官たちが動揺しつつ受け入れそうな態度を見せる。加えて、なんとアルマンダイン自身も真面目に検討する様子を見せていました。原作とは背景事情が違うみたいですね。 ちなみに、原作アルマンダインが停戦を受け入れるようになるのは、ルグニカ大陸降下という預言に詠まれぬ異常事態が起こり、戦争どころではなくなってから。
突然モースが「その者らを捕らえよ!」と言いながら現れ、「御一同。この女に遠慮をする必要はありませんぞ。この者は偽の姫ですからな」と告げる。ここでAパート終了です。
Bパート。 ジェイド達はピオニーに謁見してルグニカ平野崩落の危険を報せ、停戦を進言しましたが、けんもほろろに断られました。 「セントビナーの救出に尽くしてくれたことには感謝している。だが停戦させるわけにはいかん」「キムラスカが退けば停戦もあり得るが。もはやこちらだけが兵を引ける状況じゃないんだ」 正論なんですが、これって、事実上停戦は不可能ってことですよね。
場面戻り、カイツール基地でナタリアを偽の姫だと糾弾するモース。 「私はかねてより、敬虔な信者から悲痛な懺悔を受けていた。曰く、その者は、自分の孫を、恐れ多くも王女殿下とすり替えたというのだ」 台詞が修正されています。原作では 「私はかねてより、敬虔な信者から悲痛な懺悔を受けていた。曰く、その男は、王妃のお側役と自分の間に生まれた女児を、恐れ多くも王女殿下とすり替えたというのだ」 でした。つまり、モースがラルゴの過去を知っていて、事実と混ぜた嘘の発言をしたのだと思われます。実際にすり替えたのは乳母(ナタリアの実の祖母)ですもんね。分かりにくいので、乳母が懺悔したという形に修正したのかな。でもこれだと、全ての責任が乳母に行ってしまいますね。哀れ。
ルークが反論すると、モースは悠々と指摘します。 「でたらめではない。ではあの者の髪と目の色を何とする。いにしえより、ランバルディア王家に連なる者は赤い髪と緑の瞳であった。しかしあの者は金の髪に蒼の瞳。亡き王妃様は夜のような黒髪でございましたな」 …………。 一年半くらい前に『キャラクターエピソードパイブル』のナタリア小説の感想で書いたことを、また繰り返さねばならなくなったようです。 ナタリアの瞳は緑色です。 原作ゲームの該当シーンでは、この台詞は以下のようになっています。 「でたらめではない。ではあの者の髪の色を何とする。いにしえより、ランバルディア王家に連なる者は赤い髪と緑の瞳であった。しかしあの者の髪は 原作のメインシナリオライターさん自身の手によるバイブル小説で、ナタリアの瞳が蒼だと繰り返し書かれていました。けれどキャラデザイン上、ナタリアの瞳の色は緑です。 原作インタビュー記事によれば、《キムラスカ王族は赤い髪と緑の瞳をもつ》という設定は、制作初期段階では存在していなかったそうです。だからこそナタリアの瞳は緑にデザインされているのだと思います。 メインシナリオライターさんは、ナタリアの瞳を蒼だと思い込んでおられるっぽい。元々のイメージがそうだったのかもしれません。多分、原作ゲームのシナリオには「あの者は金の髪に蒼の瞳」と書かれてあるのだと思います。けれど制作過程でスタッフの誰かが矛盾に気づいて、実際のゲームでは「あの者の髪は金色」に修正していたのではないでしょうか。
それにしても、どうしてTVA版の台詞が、あからさまに矛盾している「あの者は金の髪に蒼の瞳」に戻ってしまったのか。幾つか理由を考えてみました。
個人的には、《C》なんじゃないかなぁと思ったり。 例えば《B》の理由だとしたら、最初からアニメ版ナタリアのデザインを変更して、瞳の色を蒼くしておくものだと思いますし。でもアニメのナタリアの瞳の色は緑。原作と同じです。
この件で私が思ったことは二つです。 一つは、アニメの脚本家・演出家さんたちは実際のゲーム画面をあまり見ないで作業してるのかな、ということ。(第11話は、あ、ゲーム画面見て作ったんだなと感じましたけど。元ネタのフェイスチャットにちゃんと合わせた表情の付け方してる部分があった。) もう一つは、アニメ制作は大勢の人の手を経て行われるものなのに、誰もこの単純な矛盾に気づかなかったのか? という疑問。脚本、演出、声入れ、様々なチェック。沢山の作業があったと思いますが、ただの一人も「ナタリアの瞳の色って緑でしょ?」と言わなかったんでしょうか。 ……って。あれ? 私がおかしいのかな。自覚がないだけで、実は私には色覚障害があるんでしょうか。結構本気で不安になってきました。えええ。 で、でも、ルークやアッシュの目の色はナタリアと同じ感じに見えますよ。ナタリアはやや黄系の混じった緑で、ルークたちは印刷によってビリジアンかエメラルドグリーンに見える感じで。だからナタリアの瞳は緑の範囲に入る色ですよね? 蒼いのはガイやティアですよね? ああもう。
モースに、インゴベルト陛下はそなたを国を 本来は部外者であるはずのモースがキムラスカの騎士たちに命令し、彼らによってナタリア達は逮捕。バチカルに連行されます。
場面は、ごく短くながらグランコクマ宮殿の、謁見室を出た後のジェイド達に移ります。が、特に実のある会話はしていませんでした。戦争はイオンでも止められない、ナタリア達に期待するしかない、というような感じ。
場面は再びルークたち側に。護送船代わりの連絡船内での会話。原作の該当シーンとは、雰囲気も意味も、ついでにキャラの立つ位置も(笑)全く異なるものでした。 #テーブルを挟んで椅子に座っているルークとナタリア。ミュウはルークの傍に浮かび、ティアとガイは険しい顔で扉の両脇に立っている バチカルに到着。ティアとガイは罪人部屋(地下牢)に閉じ込められます。《原作では台詞のみで語っていたシーンの映像化》です。 #背後でガシャンと閉じられた鉄格子の扉に慌てて駆け寄り、ガイが格子を掴んで憤った様子で訴える 一方、ナタリアとルークとミュウは、ナタリアの私室に。ミュウは暢気に「みゅう。素敵なお部屋ですの」と喜んでいます。 ……ナタリアの部屋、原作と違いますねぇ。家具の配置等は全く同じですが、色が違うんで印象が異なります。 原作版は、壁紙は他の部屋同様のキムラスカカラーで赤いけど、絨毯やカーテンやソファーなんかが水色なのが、青系の服を好むナタリアっぽくて気に入ってたのに。アニメではカーテンもソファーも赤になっちゃってました。絨毯も、原作では丸くて模様が入ってて可愛かったのに、緑の四角いシンプルなものに。それにソファーに熊のぬいぐるみが置いてないよー(これ結構ガッカリ)。ただ、壁紙はうっすらと細かい模様が描いてあって、原作以上に凝ってます。 アルバイン内務大臣が兵士二人を連れて入ってきて、毒ワインでの自決を促す。原作ではグラスが一人分しか用意されていないのですが、アニメではちゃんとルークの分もありました。 原作では、ワイングラスを見たナタリアが「毒……!」と言ったところでティア達が助けに来ますが、アニメ版は少しシーンの追加がありました。 ルーク「……ハンっ、ふっざけんじゃヌェー!」 ルークがちゃんとナタリアを庇ってくれて嬉しかったです。 ティアが助けに来ますが、原作と違ってルークと喧嘩自体していないので、「船で馬鹿なこと言ったから、見捨てられたと思ってた。来てくれてありがとう」「……ば、ばか」の会話もありません。
謁見の間へ。会話や流れは原作とほぼ同じです。 回想シーンにて、小さくですがシルヴィア(ナタリアの生母)や、今は亡きキムラスカ王妃(ナタリアの養母)の姿が描かれてますね。これが初出になるんでしょうか。細かいことを言うと、ゲーム中インゴベルト王の私室に飾られている絵の中に、王妃の肖像画がありますが。 会話は原作と同じなのに、インゴベルトが非情で冷たい人間に感じられました。原作の彼はもっと動揺し怯え苦しんでいる印象でしたが、アニメ版の声優さんの演技がえらく落ち着いていたもので。 モースの「ふん。まるで他人事のような口調ですな。貴公もここで死ぬのですよ。アクゼリュス消滅の首謀者として」という台詞の後に、ルークのオリジナル台詞「伯父上! こんな奴の言うことを聞かないでください。伯父上!」が追加。 インゴベルトが「そちたちの死を以って、我々はマルクトとの交戦を正式なものとする」と決定を下す前に、ルークの訴えを聞いて不安そうにモースを見る描写が追加されていました。 けれども、ちょっと迷っただけで、後は苦しまずスッパリ決定したみたいに見えたので、やっぱり彼が冷たく見えました。出来れば、決定の言葉を述べるインゴベルトの表情に、どことなく苦しそうな雰囲気を出していてくれてたらよかったなぁ。原作のインゴベルトには、繁栄の預言に目が眩んではいたけれど穏やかで身内に対しては情の深い人、という印象があったのに…。
モースが勝ち誇った笑みを浮かべ、ラルゴとディストを呼んで二人を殺せと命じる。ここでまたルークが、片手をナタリアの前に伸ばして庇ったのが良かったです。うんうん。《お姉ちゃん》を守っておくれ。ちなみに原作では、ラルゴとディストが出てきた時点で、ルークたちは脱兎のごとく出口の方へ逃げ始めるんですが。 ラルゴとディストの会話は、省略や微修正はありますがほぼ原作どおり。ディストの「何をしているのです! ラルゴ! 他の者の手にかかってもよいのですか?」という台詞がカットされた代わりに、ラルゴが怯えるナタリアを見下ろしながら内心で(ナタリア……)と呟くことになってました。……こういう構成にしたんなら、(メリル……)と呟かせるべきだったんじゃないかなぁ。
アッシュが駆け込んできて、ガイたちを牢から出したのが彼であることが判明。足止めとなってナタリア達を逃がしてくれます。 原作のナタリアは、ここで「ル……」と言いかけますが、結局「アッシュ……」と呼び直します。以前一緒に行動した時、ルークと呼ぶと彼がひどく嫌がったからです。けれども、市街脱出の際に再びアッシュが助けに来て、《約束の言葉》を覚えていることを告げてナタリアを励ますと、そこでやっと「アッシュ……ルーク!」と嬉しそうに呼ぶのでした。けれどもアニメ版ではアッシュが市街に助けに来てくれるエピソードがありません。そのせいか、ここでもう、迷いなく「ルーク!」と呼んでいました。
原作では、城門を出ると(アッシュの手配で)白光騎士団とペールが助けに来てくれて、貴族街から一般街までの道を開いてくれます。とてもかっこいいですし、庭師のペールが実はガイの剣の師だとか、国軍よりは自由ながら国家権力側に属する白光騎士団がルークやナタリアの味方をしてくれるとか、非常に高揚できるところなんですけれど。アニメ版では全カットでした……。すごく残念でした。 一般街に降りると、市民たちが軍の追手を足止めしてくれます。 市民の男「ナタリア様、お逃げ下さい!」 原作では「サーカスの連中から聞いたんです!」と市民が言うだけで、実際に彼らの姿を見ることはできません。しかしプレイヤーは今までの物語の積み重ねから、それは漆黒の翼のことだろう、きっとアッシュに雇われたんだと想像できます。 それはともかく、アニメ版ではルークもガイも、現時点で漆黒の翼のことを知らない筈なんですけどね。ルークは長髪時代にケセドニアで顔を合わせたことはあるんですが、彼らが漆黒の翼で、時々アッシュに雇われていることを知らないまま終わっているのです。 こじつけるなら、以前顔を合わせた時にアッシュと間違われ、「また仕事があったら呼んで下さいでやんすよ」と言われたので、彼らはアッシュに雇われている、今回もそうだろうと閃いた、ってことなのかな。アニメ版のルークは頭がすごくいいですよね。 アニメ版のルークたちが、この三人組が盗賊団《漆黒の翼》であると知るのはいつのことなんでしょうか? ……最後まで知らないまま、顔なじみになっただけで終わりそう。(^_^;)
原作では、街の出口近くになってからゴールドバーグ将軍(長髪ルークがバチカルに帰還した時、港で出迎えてくれた男性軍人)が追い付いてきて、「待て! その者は王女の名を騙った大罪人だ! 即刻捕らえて引き渡せ!」 と言うのですが、アニメ版では甲冑で顔を覆った名もなき兵士の一人が「その者は王女の名を騙った大罪人だ! どけ!」と言ってました。 市民たちが、ナタリア様が王家の血を引こうが引くまいがどうでもいい、職に追われた自分たちを雇ってくださったのもナタリア様だと口々に訴えます。
原作ではこの後にもうひと山あります。ゴールドバーグ将軍が業を煮やし、周囲を取り囲んで足止めしていた市民のうちの一人、老婆を突き飛ばす。 その時に至るまで、ルークはずっと腰の剣を抜くことがありませんでした。しかしそれを見た途端、一人、市街に駆け戻っていき、剣を抜き放つのです。その後ろにナタリアが従います。 直後にアッシュが来てゴールドバーグを叩き伏せるので目立ちませんが、私はこのシーンのルークがかなり好きです。ルークは王族の資質がないように言われることがありますが、こういう面を見ていると、そういう方面の資質も持っていたんじゃないかなと思えます。
原作アッシュは「キムラスカの市民を守るのがお前ら軍人の仕事だろうが!」とゴールドバーグを怒鳴りつけ、ナタリアには「お前は約束を果たしたんだな」「そんなしけたツラしてる奴とは一緒に国を変えられないだろうが!」と微笑んで「行け!」と促し、ルークへは「ルーク! ドジを踏んだら俺がお前を殺すっ!」と焚きつけます。 アッシュの大きな見せ場なのですが、全カットでした。 多分、夜明けのシェリダンでの《約束》のエピソードでまとめられると踏んでのことなんでしょう。でも、結構残念。 シリーズ構成さんのインタビューによれば、アニメ版ではアッシュの人柄がより分かるように、彼に関するエピソードを色々追加する…ってことなのに、原作にあったエピソードがカットされているという。うーん。 謁見の間にアッシュが助けに来る方をカットして、街に助けに来る方を採ったらよかったんじゃないかなー。謁見の間から逃げる時に足止めになってくれるのは乳母ってことにして(笑)。「ナタリア様、お逃げください!」とか言ってなりふり構わずラルゴにしがみつくとか。一応義母だから、ラルゴは彼女を殺すのをためらうんですよ。すみません酷い妄想です。(^ ^;)
市民男「早く逃げてください!」 それぞれ走ってバチカルを脱出するルークたちの止め絵で、今回は終了です。
面白くないとは言いませんが、モヤモヤした回でした……。設定がなぁ……。うーむむむ……。
今回の総論。
ではまた次回。 |