注意!

 

# 2 聖獣の森

脚本:面出明美/コンテ:佐藤照雄/演出:綿田慎也/作画監督:しんごーやすし

 今回は、第1話に比べてキャラクターの黒目が微妙に大き目かな? という感じで、全体に絵柄が可愛くなってる気がしました。チーグルに ポッ♥ となるティアは勿論、ローズ夫人の可愛らしさは特筆もの。イオン様は原作でもアニメでもとっても可愛い。

 

 以下は重箱の隅ツッコミです。読みたい方だけどうぞ。





 OP前のアバンタイトル部分が《前回のハイライト》でした。そしてOPが流れ出すと相変わらず途中で《今回のハイライト》が流れる。ハイライトの豪華二段重ねや〜。

 

 本編は、タルタロスが譜業大砲を打ち鳴らしながら漆黒の翼を追って来るところからスタート。

 漆黒の翼の乗り物が、原作とは全く違う形だったので「へ!?」とビックリしました。原作だと馬(オールドラントの馬は、小型の二足歩行恐竜)の曳く箱型の馬車なんですが、アニメ版では流線形の自動車だったのです。

 陸艦があるのだから自動車があってもおかしくないし、ナム孤島の科学技術力を考えると漆黒の翼がこういう乗り物を所有していてもおかしくないんですけど、原作には車輪回して数人乗り程度の大きさで移動出来る車って存在しないのですよね。なので初見の時、現代劇にアダムスキー型宇宙船が出て来たくらいびびってしまった(笑)。

 アニメ版のモンスター&メカニカルデザイン担当の石垣純哉さんは、沢山のアニメ(ガンダムシリーズやマクロスシリーズ、『鋼の錬金術師』なんかも)でメカや怪物のデザインをしてきた有名な方ですが、アニメ公式サイトのスタッフコラムで

アニメには、ゲームでお馴染みのモンスターやメカ以外にも、
オリジナルのモノが登場しますが、
「あれ?これって、アニメオリジナルなの!?」と、ファンの方達に
言ってもらえる様なデザインを目指していますので、
その辺りにも注目していただけると嬉しいです。

と発言してらして、オリジナル要素を入れる意欲満々なのが窺えます。これからも色々あるんでしょうね。ワタシゃ、どこまで気付けるかのぅ。

 にしても。漆黒の翼が丸っこい自動車メカに乗って逃走…なんて様子を見ていると、その車の中には、タイムボカンシリーズ三悪メカ独特の、 ふよふよふよ… というエンジン音が響いているのかなぁーと思えてきてしまいます(笑)。「やぁーっておしまい!」「アラホラサッサー!」でポチッとなと、第五音素フィフスフォニムの爆弾を撒いてたのかなぁとか。

 橋が崩れ落ちる場面は、アニメ版は流石の迫力でした。あと、タルタロスがマルクト軍艦だということを、まずは船体に象眼されたマルクト帝国のシンボルマークを見たティアがハッとする様子を映して、続いて馭者が言葉で語るという形で説明してあったのは、原作より上手いなぁと思いました。

 

 馬車を乗り間違えたことが発覚。原作にあった、ティアが「……間違えたわ」と言った後の

ルーク「冷静に言うなっつーの! なんで間違えるんだよ」
ティア「土地勘がないから。あなたこそどうなの」
ルーク「俺は軟禁されてたんだ。外に出たことねーんだから分かるわけないだろ」
馭者「……なんか変だな。あんたらキムラスカ人なのか?」
ティア「い、いえ。マルクト人です。訳あってキムラスカのバチカルへ向かう途中だったの」
ルーク「しゃあしゃあと……」

というギスギスした言い争いはカット。代わりに、エンゲーブで馬車から降りて二人きりになってから

ルーク(ティアに食ってかかる勢いで)どーいうことだよ、マルクト帝国って!」
ティア(表面上は冷静に)相当、遠くまで飛ばされたってことね」

と短くやり取りを交わす形に縮小されていました。

 ここでティアが世界地図を取り出して広げて見るんですけど(つまりセントビナーで老マクガヴァンから地図をもらうエピソードは無しってことか)、え? 襟の内側から出してんの?? 腰の辺りとかに隠しポケットくらいないの? なんでそんなところから……。変な設定。

追記。コメントで、ティアは耳の後ろから地図を出したのでしょうというご指摘をいただきました。ちょっと、耳に赤鉛筆挟んでる競馬場のおっさんみたいですね(笑)。

 また、前回分もそうでしたが、ティアの「土地勘がない」という言葉が今回もカット。この言葉は一応彼女の生い立ちに関わる伏線でもあるんですけど、不必要と判断されちゃったのね。

 

 食料の村エンゲーブに入ります。ここら辺はルークとティアの会話が大幅に翻案・改変されていて、原作とは雰囲気がマッタク変わっていました。

 まずは、ティアが「検問所か……。旅券がないと通れないわね。困ったなぁ……」と、《十六歳の女の子》としての素の口調を漏らしてしまう描写をカット。まあこれは、ゲームの時点でも徒歩で村に入ると聞けない台詞ですけど。

 

 原作だと、ルークが深く考えずにエンゲーブのことを貶しまくるんですよね。田舎、貧乏臭い、小屋に毛の生えた程度の建物ばかり、動物がうじゃうじゃいてうざい、つまらなさそうな仕事、と。美しくて立派で清潔なものばかりの公爵家から出たことのなかったルークは、生まれて初めて市井の生活、それも農業や畜産に従事する人々を見て、無配慮に思ったままのことを放言してしまう。で、ティアがまた、この言葉を生真面目に真正面から受け取っちゃう。静かにながら本気で怒ってしまいまして、ますますルークに冷たくなるのですよ。

 原作のエンゲーブ初訪問〜タルタロス脱出までのルークとティアって、見てるこっちの胃が痛くなるくらい、心底険悪なんですが、アニメ版ではその雰囲気が全くと言っていいほどありません。

#ルーク、村を門の外側から見て
ルーク「小せぇ村だな」
ティア(微笑って)バチカルに比べればそうでしょうけど」
#村に入り、作物の実った広大な畑などを見る。ルーク、柵の中のブウサギの顔を覗き込んで
ルーク「なんだこいつら」
#近づいたブウサギがフゴッと鼻を鳴らし、鼻息がルークの前髪を煽ぐ。ルーク、「わっ!?」と跳びのいて
ルーク「なにすんだこいつ!」
#ティア、穏やかな笑顔で様子を眺めながら
ティア「このエンゲーブは農業や牧畜で有名なのよ」

 なんたる ほのぼのさ。

 つーか、いくら村でもファブレ邸よりは広いはずなんで、ルークにここで「小せぇ村だな」と言わせるのはどうなのかなぁ…。現時点のルークには、この村が大きいか小さいかなんて分からないんじゃないのかな。ファブレ邸に比べて建物が質素で汚れてて小さい(それこそ、庭師小屋なんかに毛が生えたくらい)とか、動物がやたらいるとか、そういうことは分かっても。

 

 原作では、ティアはルークが公爵家に軟禁されていたことを襲撃前から知っていたことになっています。だからタタル渓谷で目を覚ましたルークと言葉を交わしたとき「あなたも第七音譜術士セブンスフォニマーだったのね。うかつだったわ。だから王家によって匿われていたのね」と言う。恐らく、予め調べておいたからルークの名前も最初から知っていたんでしょう。けれどアニメ版では知らなかったことになってまして、市場をダラダラと見ながら「へぇーっ、すげぇなぁ」と感心するルークの様子に、内心で(どういうことかしら。彼、まるで……)と不審がる、という流れになっていました。

 ちなみに、ルークの記憶障害に関しても、原作では(障害の程度については知らなかったようですが、事情自体は)最初から知っていた感があり、エンゲーブ宿屋でのルークの日記のフェイスチャットで、ルークが記憶障害について語っても、気の毒そうに黙りこんでから「頑張って」と言うだけで説明を要求しません。が、アニメ版では誘拐されて以来記憶障害持ちになったので医者の指示で日記を書かないといけないとルーク自身が説明して、ティアは「ごめんなさい。そんな事情があったなんて……」と謝っていました。

 んで。原作だとルークは「けっ、同情なんかされたくねーっつーの」と悪態をつくギスギスぶりなんですが、アニメ版では少し困ったように頭を掻きながら「急にしおらしくなるなよ。調子狂うなー」って。マトモな人だ。ルークの穏やか過ぎぶりに私の方が調子狂うよ(苦笑)。もうここで既に、原作の連絡船キャツベルトでのティアの謝罪イベントまで話がすっ飛んでるみたいな感じですね。

 ところでこのエピソード、原作だとルークが帳面ノートを取り出してこそこそ日記を書いていてティアに見咎められたんですけど、アニメ版ではルークがティアの部屋に、日記を書くから何か書くものをくれと訪ねて来て、宿の備え付けらしいペンと紙(便箋?)数枚をもらうという状況に変わってました。(宿備え付けならルークの部屋にも同じペンと紙があっただろうに…。ルークは他人に頼り過ぎ。)

 原作では、年頃の男女なのにルークとティアは同室に泊まっている。別室にしてしまうと二人が語り合うエピソードが挿入しづらくなるからだったのかなと思えますが(おかげで、ルークの寝顔を覗き込むティアなんていう、美味しいフェイスチャットも見られました)、アニメ版ではきっちり別室にして常識を優先。このような形に構成し直しています。

 原作版では、ルークは帳面ノートの形の日記を持ち歩いているらしいのですが、アニメ版ではありあわせのペラ紙…。失くしそう。アニメでは今後は日記ネタは使われないっぽい? ……崩落編で、夜に日記を書いていたルークが、「いつか俺がもっと大人になって、この日記を見返した時に、変わったんだなって……そう思えるように頑張るよ」とティアに言ってたフェイスチャットネタくらいなら入る可能性あるのかなぁ。

 

 話戻って。エンゲーブの市場を見て回っていたルークが、食料泥棒扱いされて逮捕・連行されてしまうエピソード。原作では二段階で展開していったエピソードを、リンゴを食べた場ですぐに逮捕された形にまとめてありました。

 ちなみに原作だと、連行されるルークは腰の剣を取り上げられちゃってまして、ティアがルークの剣を抱えて、その後に付き添っていました。結構細やかな演出だと思うんですが、アニメ版ではそこは無視されちゃってたなー。

 この辺の絵面、『マ王』漫画版を参考にしてるっぽい。逮捕されたルークが髪の毛を鷲掴まれて引っ立てられていくとか、ローズ夫人の家に入るとき、原作だとケリー(宿屋の主人)が後ろからルークを蹴り込むんだけど、漫画版とアニメ版では大勢がルークを後ろ手に拘束し頭を押さえつけた状態で入ってくるとか。

 ところで、この辺の画面を見ていて「あれっ?」と思ったこと。ルークの背、別に低くないですね。村の大人の男たちに囲まれて立っているバストショット画面で、全員ほぼ同身長、むしろルークが高く見えました。原作だと、ケリーが片手でルークを猫の子みたいにブラブラぶら下げたりしていて、ルークって小柄なんだなという印象を受けるんですが、アニメ版にはそれもなかったですし。

 

 村の顔役のローズ夫人の家へ。家がグレードアップしてる…。原作だと萱葺きの素朴な農家って感じですが、アニメ版では萱葺きを模したデザインのお洒落なお屋敷、って感じ。

 ルークを連行してきた村人たちが、こいつ漆黒の翼かもしれないと訴えると、ローズがルークの顔を覗き込んで怪訝そうに「え? この子がかい?」と言うのは、なんか気に入ってしまいました。そだよね。ルークはチンピラ風ではあるけど、世界を股にかけた盗賊団なんつーサバけた感じじゃないよ(笑)。

 ルークの言動はここでもやっぱりマイルド。原作で「俺は泥棒なんかじゃねえっつってんだろ。食いモンに困るような生活は送ってねーからな!」 とふてぶてしく悪態つくのがカットされてます。

 で、ジェイドと初対面。ティアが正論でルークの弁護をしたところでイオン様が登場。原作版での声優、大谷育江さんが体調不良から仕事量をセーブしているため、小林由美子さんに声優変更になったんですが、雰囲気は似ていて違和感なく聴けました。良かったです。ドラマCD版では釘宮理恵さんでしたが、こちらは可愛くて甲高い女の子声で全然感じが違いましたんで、慣れるのに結構かかりましたしね。

 イオンが持ってるチーグルの毛が大きくてフサフサでした。もしかしてイオンの頭飾りの両端についてる飾り房は、チーグルの毛で作ってあったりするのかなぁ、なんて妄想。教団の聖獣だし。原作によればイオンはチーグルの姿を見たことがなかったそうなのに、毛は見ただけでチーグルのものだと分かってた。ということは、毛を見たことはあるってことですもんね。

 

 イオンのおかげでルークの容疑も完璧に晴れます。この後の展開は、原作と微妙に流れが違っています。

(アニメ版)
ルーク「ほら見ろ! 俺じゃねぇっつったんだよ!」
#気まずそうに頭を掻く露店主
ローズ(手をパンパンと打ち鳴らして)さあさあさあ! 真相は分かったんだ。みんなは仕事に戻りなよ」
露店主「ああ、そうだな」
#笑って立ち去りかける村人たち。ティア、慌てて露店主を呼びとめる
ティア「あ……。あの! (何かを手渡す)これ……」
#ハッとする露店主
ティア「リンゴ代です。(頭を下げて、申し訳なさそうに)済みませんでした」
#ティア、ルークを母親のような厳しい目で見て
ティア「ルークも謝りなさい」
ルーク「い!? (ふてくされてそっぽ向く)なんで俺が」
露店主「ああ、いや。(機嫌よくもらった代金を握り込んで)こっちも悪かったし。じゃ」
#露店主、立ち去る
ローズ「悪かったね坊やたち。食料はあたしたちの唯一の財産だから、みんなピリピリしててねえ」

(原作)
ルーク「ほら見ろ! だから泥棒じゃねぇっつったんだよ!」
#気まずそうに頭を掻くケリー。ティアがそっぽを向きながら冷たく指摘
ティア「でも、お金を払う前にリンゴを食べたのは事実よ。疑われる行動を取ったことを反省するべきだわ」
ルーク「仕方ねぇだろ。金払うなんて知らなかったんだから」
ローズ「どうやら一件落着のようだね。あんたたち、この坊やたちに言うことがあるんじゃないのかい?」
ケリー「……すまない。このところ盗難騒ぎが続いて気が立っててな」
露店主「疑って悪かった」
村人「騒ぎを大きくしたことは謝るよ」
ローズ「坊やたちも、それで許してくれるかい?」
ルーク「俺は坊やじゃない」
#ローズ、可笑しそうに笑って
ローズ「ああ、ごめんよルークさん。どうだい、水に流してくれるかねぇ」
ルーク「……別にどうでもいいさ」
ローズ「そいつはよかった」

 アニメ版の方が和やかな感じですね。原作版の方が理屈先行型かな?

 

 ローズ夫人の家を出たところでアニスと遭遇。アニスはギャグ担当か。チョコマカよく動いて、ロングショットでコケッと転んでみたり、可愛かったです。

 

 宿に一泊してからチーグルの森へ。

 原作ではルークは苛立ちを燻らせていて、しかもローズ夫人の家を出たところでまたもティアと深刻な喧嘩。宿でアニスと出会って《導師が行方不明》という情報が誤報だったかもしれないと知って更にムカムカ。夜になってもイライラは治まらず、「そいつらが泥棒だって証拠を探すんだよ。このままじゃ帰るに帰れねぇ!」 「バカにされたまま放っておけるかよ」と、チーグルの森行きを宣言。段階を踏んでルークがチーグルを捕まえようとした精神的動機を説明し、かつ、ルークの精神的未熟さ(プライドの無駄な高さ)をも強烈に見せていましたが、アニメ版ではやっぱりシンプル&マイルド。さほどルークの性格が悪く見えません。サクサクと軽快に流れていきます。

 

 チーグルの森探索はBパートから。イオンとの再会の辺りは原作どおり。

 ですが、森でのルークとイオンの会話は、個人的には割と残念でした。

 原作だと、ルークは導師であるイオンに「はあ? 何言ってんのお前? お前には関係ないじゃんかよ」だの「魔物のことなんて、放っときゃいいだろ」だのと、常識ではありえない暴言の数々を吐く。けれど、僅かに傷ついた様子を見せながらも(この辺は声優さんの演技が素晴らしい)イオンが頑固に《チーグルの食料品泥棒》の真相が知りたいと言い募ると、仕方ねぇ付いて来いと言い、驚いて反対したティアに「だったらこいつをどーすんだ。村に送って行ったトコで、また一人でノコノコ森へ来るに決まってる」「それにこんな青白い顔で今にもぶっ倒れそうな奴、ほっとく訳にもいかねーだろーが」「あ。あと、あの変な術は使うなよ。お前、それでぶっ倒れたんだろ。魔物と戦うのはこっちでやる」と言って、イオンを感激させ、ティアを驚かせる。この一連の会話がアニメ版ではカットされちゃってたからです。

 これはホントに残念…。ずっと酷いワガママばかり言って気遣いに乏しくて、どうしようもない嫌な奴に見えてたルークが、ここでアッサリとイオンの自由意思を尊重し、かつ、当たり前のように身体を張って守ってやる。何の打算もない。良くも悪くも分け隔てがないだけなんだってことが、これらのエピソードがカットされていなかったらよく分かったのに。

 

 あと、声優さんの解釈の問題なんでしょうが、同行の許可をもらったイオンが「あ、ありがとうございます! ルーク殿は優しいんですね!」 とお礼を言うところと、ルークに名前は呼び捨てでいいと言われて「はい! ルーク!」と返事するところ。原作みたいに、もっと強い調子で嬉しそうに演技してもらえたら良かったなぁ。彼の生い立ちにも繋がることですから。

 

 チーグルの巣へ。チーグルの木が切り株になってしまっています。これは、セントビナーのソイルの木との関わりはアニメでは一切語りません、つーかあの設定はなかったことにしてくださいというサインなんでしょうか。

 さて。

 実は、今回分で一番ショックを受けたシーンがここでした。

 っひ。ひぃいいいいいいいいっ!?

 チーグルが、四足走行してるぅううっ!!

 チーグル族が揃って四つ足で走ってる。立ち止まる時だけ二本足で立ってる。なんで!? 原作では常に二足歩行・二足走行でしたよね。えええええっ。

 は。そういえば『マ王』漫画版で何回か、ミュウが四つ足で走ってるように描かれてたことがありましたね。五巻P33とかP166とか。もしやそれを参考にしたんでしょうか。も、もしもそうだったなら、『マ王』漫画版を恨む。恨むぞぉおお〜〜〜っ!!

(こんな訳のわからないところで逆恨みされては、漫画版スタッフさんたちもいい迷惑です)(すみません)(でもでも、四つ足チーグルは、なんというか、こう、理屈抜きに、生理的に嫌っ)(漫画版で見た時もすげーヤだったのに、アニメじゃそのうえ動くぅうう)(骨格違う感じじゃん。もうアレは違う生物じゃん)(ルークがウザいウザい言った気持ちが初めて心底分かった)(ウザいどころかキモイよぉおお)(言い過ぎだよ自分)(まさかアニメスタッフさんたちもこんなどーでもいい所に引っ掛かる視聴者がいるとは想像もしなかったに違いない)(実際、どの感想ブログを読んでもこの点に言及してる人は誰もいなかった。みんなチーグル可愛いと喜んでた)(私もこんな所に引っ掛かりたくなかったです)(でも生理的に以下略)(我が儘言うなよアニメじゃそういう設定になっちゃったんだからもーしょうがないじゃん)(それは分かっているけど、でもでも以下略)

 チーグル族は、デカ頭で手足短い生き物が二足直立して、やっと立って歩き始めた時期の赤ちゃんみたいなシルエットでチョコチョコ歩いたり走ったりするところが可愛いのに…。ホントになんでかなぁ。どーぶつであるからには四つ足で走るべきだというこだわりなのかなぁ。『ガンバの冒険』かなぁ。架空の生き物なんですから、そんな固定概念を適用しなくてもよかったよぉお…。しおしおめそめそぐすぐす。

 

 そういえば、《チーグルの巣の中に入ると真っ暗な中に無数の目が光り、画面が明るくなってチーグル族に取り囲まれている様子が描写される》という演出は、『マ王』漫画版とそっくりでした。ライガについて説明するシーンの、燃える森の中のライガたちの横顔のシルエットというイメージ画もそっくりでしたし。ありがちと言えばそうですが、これもルーク逮捕シーンや四つ足チーグルと同じく、漫画版を参考にして作ったのかな。

 あと、ライガの女王を倒した後、チーグル長老が眉毛の下からつぶらな瞳を見せるシーンがあって、その愛らしさに笑ったんですけど、考えてみたらこれも『マ王』漫画版が元になってるのかも。漫画版の長老が眉毛の下から丸く目を光らせる画と少し似てるから。

 

 ミュウは火事を起こして北の森を焼いてしまったと言います。ところが原作では、「ミュウはまだ仔どもだからホントは炎なんて吐けないですの。ところが!」「ソーサラーリングですの! これのおかげで、炎を吐けるですの!」とミュウ自らが言うのです。それでは北の森にいた頃のミュウは、どのようにして火事を起こしたのかと、原作ファンの間ではよく取り沙汰されていました。それがアニメ版では練り直され、補完されています。

チーグル長老「我らチーグルは炎を吹き出すことが出来る。だが、普通は大人になってからだ。この仔はこの歳で出来るようになってしまってな。加減ができずに、森に火をつけてしまった」

 ミュウがリング無しでも火が吐ける設定に変更。ミュウは早熟っ仔だった…! んで、ライガの女王との通訳の任務を与えたのは、火事を起こした責任を取らせるためだと明言されていました。「仔どもとはいえ、起こしたことの責任はとらねばならん。これを連れて行ってほしい」って。早くもテーマに触れてて分かり易い。

 

 OPやEDで描かれていたので分かっていたことでしたが、ソーサラーリングを装備したミュウが、浮輪で泳ぐみたいにスイスイと宙を飛ぶ。

 原作既知の方の感想を読むと、みなさん、ミュウをフレーム内に収めるための工夫だろうと推測しておられました。私もそう思います。

 ルークのミュウへの暴力はかなりマイルドに。殴るの中心で蹴りは今のところなし。やっぱTVで小動物を踏みにじるのはマズいですよね(苦笑)。ミュウの頭を殴ると炎が吹き出されてルークが黒焦げになるという、『うる星やつら』のテンちゃんとあたるぽいギャグは可愛かった♥ あと、今回は「ブタザル」と呼ばなかったんですが、他の方の感想を拝見するに次回で呼ぶんですね。

 

 ライガの巣へ。ここでの会話も相当に翻案されていて、結果、ルークが常識人、かつ、好戦的で冷徹に見えました。

(アニメ版)
#ライガ・クイーンが吠えると、通訳していたミュウは泣きながら悲鳴をあげて、ジタバタと宙を泳いで逃げてくる
ミュウ「卵が孵るところだから来るなって!」
ティア「まずいわ。卵を守るライガは凶暴性を増しているはずよ」
ミュウ「ライガさん、すっごく怒ってるですの。ボクがライガさんのお家、火事にしちゃったから」
ルーク「一旦、出直した方がいいんじゃねぇか?」
イオン「ですが、卵が孵れば、生まれた仔どもたちは食料を求めて街を襲うでしょう」
ルーク(軽くため息ついて)じゃ、どーすんだよ」
#ライガ・クイーンが近づいてくる。ルーク、ティア、イオン、サッと臨戦態勢を取る。上からミュウめがけて木片が降ってくる
ミュウ「みゅっ? みゅ〜〜っ!?」
#ルークが飛び出して剣で木片を砕く
ミュウ「あ、ありがとうですの!」
ルーク(そっぽを向いて)勘違いすんなよ。おめーをかばったんじゃなくて、イオンをかばったんだからな」
#ライガ・クイーンが唸る
ミュウ「え、そんな!」
ルーク「なんて言ってんだ」
ミュウ「ボクたちを殺して、仔どもの餌にすると言ってるですの……!」
ルーク「交渉決裂かよ」
ティア「導師イオン。さがって下さい!」
#ティアが前に出て臨戦態勢を取る。そのまま戦闘突入

 ライガ・クイーンとの戦いは、ただ魔物との戦闘ということではなく、《生きるという原罪》の観念、この作品のテーマに繋がる、シリアスで重い問題をはらんでいます。ですから、出来ればこの場面では、ミュウにギャグっぽい演技をつけないでほしかったなぁ…。なにしろミュウは罪人なのよ。

 それにしてもルークの態度が原作版とは全然違うのには驚かされます。なーんの葛藤も躊躇もありゃしない。また、「どーすんだよ」「交渉決裂」などの台詞が入ってるのは『マ王』漫画版の影響っぽい。

 なお、原作のこのシーンは以下のような感じ。

(原作)
#ライガ・クイーンが吠え、通訳していたミュウは衝撃波に弾き飛ばされたようにコロコロ転がる
ミュウ「卵が孵化するところだから……来るな……と言ってるですの。ボクがライガさんたちのお家を間違って火事にしちゃったから、女王様、すごく怒ってるですの……」
ルーク「卵ぉ!? ライガって卵生なのかよ!」
ミュウ「ミュウも卵から生まれたですの。魔物は卵から生まれることが多いですの」
ティア「まずいわ。卵を守るライガは凶暴性を増しているはずよ」
ルーク「じゃ、出直すってのか」
イオン「ですが、ライガの卵が孵れば生まれた仔たちは食料を求めて街へ大挙するでしょう」
ルーク「はあ?」
ティア「ライガの仔どもは人を好むの。だから街の近くに棲むライガは繁殖期前に狩り尽くすのよ」
イオン「彼らにこの土地から立ち去るように言ってくれませんか?」
ミュウ「は、はいですの」
#ミュウがライガ・クイーンに話しかける。ライガ・クイーンが吼え、上からミュウめがけて木片が降ってくる。ルークが飛び出して剣で木片を砕く
ミュウ「あ、ありがとうですの!」
ルーク(そっぽを向いて)か、勘違いすんなよ。おめーをかばったんじゃなくてイオンをかばっただけだからな!」
#ライガ・クイーンが近づいてくる
ミュウ「ボクたちを殺して、孵化した仔どもの餌にすると言ってるですの……!」
ティア「来るわ。……導師イオン、ミュウと一緒におさがり下さい」
#ティアが前に出て臨戦態勢を取る
ルーク「お、おい……ここで戦ったら卵が割れちまうんじゃ……」
ティア「残酷かもしれないけど、その方が好都合よ。卵を残して、もし孵化したら、ライガの仔どもがエンゲーブを襲って消滅させてしまうでしょうから」
イオン「二人とも! ライガ・クイーンが!」
ルーク「く、くそ……!」
#ルーク、剣を抜いてティアの前に駆け出し、ライガ・クイーンに立ち向かう

 

 原作にもアニメ版にも、

ルーク「ふん、知ったことか。弱いモンが食われるのは当たり前だろ」

ティア「そうしたら今度は、餌を求めてライガがエンゲーブを襲うでしょうね」
ルーク「あんな村どうなろうと知ったことか」

というルークの台詞があります。原作では、こんな割り切った残酷なことを言っていたルークが、いざライガと戦うことになると「ここで戦ったら卵が割れちまうんじゃ……」と躊躇する。それでも、イオンやティア達を守るため、自分自身が死なないために戦う。ここが重要点だと私は思ってます。だからこそ、戦闘終了後に割れてしまった卵を見たルークが座り込んで「……なんか後味悪いな」と呟くのが胸に響きますし、その言葉に「優しいのね。それとも、甘いのかしら」とティアが言うのも、ルークが「……冷血な女だな!」と睨むのも納得できる。ルークのこの性質は、今後の展開にずっと響いてくる、『アビス』のテーマの一つに関わる大切なものだと思うわけです。

 ところがアニメ版では、ライガ・クイーンと戦う時、ルークに全く躊躇をさせませんでした。なんでだろ…。全ては尺の問題なのかもしれませんが、「ここで戦ったら卵が割れちまうんじゃ……」くらいは押し込めて欲しかったナリ。無理か…。

 もっとも、原作未見の方の感想を見ると、「なんか後味悪いな」の台詞だけで普通に問題を読み取っておられましたから、私が原作にこだわり過ぎてるだけなんだなあ。

 

 戦闘開始。ティアのピンチ、って時にジェイドが歩きながら現れて、イキナリ第二秘奥義のインディグネイションをぶちかましてライガ・クイーンを瞬殺。カッコよかったです。

 ルークの様子が原作と全く違う。原作ではその場に座り込んでしまって、潰れた卵を見て、じっと俯いているのです。あまり多くを語らなかったけど、棲み処を失ったライガを殺して卵まで潰してしまったことが、彼にとってはかなりの精神的ダメージだったことが伝わってきて。

 でもアニメ版では立っていて、ジェイドにティアとの仲をからかわれるとガニマタで元気よく反論してました。一瞬で立ち直ったって感じでした。ルークが傷ついている感じが伝わってこないので、ジェイドに叱られるイオンを庇う辺りも、あまり響いてこなかったなぁ。(原作だと座り込んで背を向けたまま言うんですけど、アニメ版では横から大声で意見してる感じでした。)

 

 以下の、ルークとジェイドのギスギスしたやり取りはカット。ジェイドにすらマイルド補正? いやこれも尺の問題が第一でしょうけど。

ルーク「へっ。こいつに頼らなくても俺だけで何とかなったんだよ。余計なことしやがって」
ジェイド「差し出がましいとは思いましたが、見ていられなかったですから。以後はあなたの邪魔はしません。その代わり、私の邪魔もしないようにお願いしますよ」
ルーク「けっ。やな奴!」

 また、イオンたちがエンゲーブに立ち寄っていたのは親書を受け取るためだったという事情は語らず。

 ジェイドがアニスに指示をして、タルタロスを呼びに行かせる。イオンを追いかけていこうとしてジェイドに呼び止められ振り向いた瞬間の、アニスの横顔の口と頬の線が、ぷっくりして子供らしくて凄く可愛かったです。ちょいちょいと手で呼ばれて、トットットと後ろ向きに走ってジェイドの傍に行くのも、むっちゃ可愛かったですね。

 

 ミュウに仕えられることになり、ウザがるルーク。ティアは内心で(もう……! 私が替わりたいくらいだわ)と羨ましがる。森の出口に至ったところでアニスがジェイドの指示で呼んできたマルクト軍が現れ、ルークとティアを拘束。ってところで今回は終わり。

 今回はキリのいいところで終わりましたね。



 今回の総論。

  • ルーク、ティアの嫌な面・汚い面を極力表現しないようにしている
  • 反面、良い面も際立たなくなってしまっていないか?
  • 『マ王』漫画版大人気
  • 四つ足のアレは忘れたい今後四つ足で走りませんように

 

 ではまた次回。 

 



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