注意!

 

# 20 森の墓標

脚本:根元歳三/コンテ:小倉宏文/演出:小倉宏文/作画監督:前澤弘美

 アリエッタが可哀想で泣けました。おうおうおぉーぉおお(涙)。

 

 殆どの雑誌用版権絵を手掛けておられる前澤さんの、久々の単独作監回。第7話の絵の印象が強かったのですが、今回はナタリアも、勿論アリエッタも、果てはオリジナルイオンも可愛くて大満足♥

 

『マ王』漫画版から久々に、外伝2外伝5のエッセンスが取り込まれていました。しかしそれ以上に、SD文庫小説版の影響が強かったです。

 

 導師守護役フォンマスターガーディアン時代のアリエッタの衣装は、『マ王』漫画版外伝2を元にして、アレンジを加えたもの。ザッと見て、配色、袖の肩口の輪留めの有無が違いますが、最大の変更点は襟を六神将版の軍服と揃えて、首輪にしていたところ。

 アリエッタを発見した当時のヴァンの姿も出ました。恐らく『マ王』漫画版外伝の、二年前・七年前のヴァンを基にしたオリジナルデザインですが、服が微妙に違うのと髪がやや短くてチョンマゲぽいのと髭がマバラな以外は現在と殆ど変わってない。

 ……アリエッタ発見当時のヴァンって、九年以上前のはずですから、十八歳かそこらですよね。老け過ぎだー(苦笑)。十六歳の時はあんなにイケメンだったのに。二年の間に何があったの兄さん!?

 回想にオリジナルイオンも登場しましたが、髪飾りを外すことでレプリカイオンとの識別点を設けていたのは有り難かったです。

 彼はシンクに近い、虚無的で皮肉な性格だったそうですが、アリエッタの回想の中ではひたすらに優しい。そうだよね、アリエッタに対しては常にこうだったんだ、互いに家族を求めていたんだよねと納得しつつ、切ない気分に襲われました。

 

 以下は重箱の隅ツッコミです。読みたい方だけどうぞ。





 アバンは前回の続き。

 ルークたちが教会の入口で今後の行動について相談していると、教会の中からライガを従えたアリエッタが出現。イオンを殺したとアニスを糾弾し、決闘を申し込んで立ち去る。

 ライガに乗ったアリエッタが駆け去る時、ルークとガイの驚愕した顔をぐっとズームにして映して、一瞬、二人がライガに襲われるっ? と思わせたのは面白かったです。び、びっくりしたっ(笑)。

 

 それはそうと。

 アニメ版、前回のサブタイトルは「最期の預言スコア」でしたよね。死に瀕したイオンが、ほんの小さな欠片ながら、ユリアの預言になかった新たな未来の歴史…惑星預言プラネットスコアを詠みのこす。未来は変えられる、という可能性を示して。

「聖なるほむらの光はけがれし気の浄化を求め、キムラスカの音機関都市へ向かう。そこでとがとされた力をもちい、救いのすべを見いだすだろう」

 原作ルークたちは、イオンが最期に詠んだこの預言を手掛かりに、キムラスカの音機関都市ベルケンドへ向かいます。…預言に頼らない世界を作ろうとしているのに、それに頼って行動する矛盾にさいなまされながらも。

 そして、そのベルケンドで、ルークは《穢れた気を浄化する救いの術》、己の命と引き換えにした障気中和の方法を知るのです。

 

 ところがアニメ版では。誰一人としてイオンの遺した預言について口にしませんでした。

#教会の出入り口の階段にたむろしているルークたち。
#青空の下、小鳥たちがのどかに鳴き交わしている

ルーク「――で、これからどうする?」
ジェイド「アッシュが動いているようです」
#ハッとするナタリア
ナタリア「アッシュが?」
#ジェイド、傍らのナタリアに目を向けて
ジェイド「スピノザの所に、情報を求めて来たそうです。ロニール雪山に向かったとのことですが……」
ティア「何か知っているのかしら……」
ルーク「俺たちも、ロニール雪山へ行こう」
ガイ「ああ。(腰かけていた階段から立ち上がって)他に手掛かりもないしな」
#頷くルーク

 えええええええ……!(汗) 他に手掛かりもないってそんな。

イオン様の言葉を無視するの? お願いだから、そんな事しないで」と原作アニスは泣きそうな様子で言っていましたけど。アニメ版ではイオンの預言はスルーかい!

 泣けた。

 ストーリー圧縮のため再構成するのはいいんですが、エピソードの繋がりをブツッと切っちゃわなくてもいいのに。ティアの台詞の後、ルークに「イオンの預言も気になるけど、今はアッシュの話を聞きたい。あいつは何か知ってる筈だ」と言わせるとか、繋がりを殺さない会話のさせようはあったのでは。

 

 さて。前回に引き続いて、今回も怒涛のストーリー圧縮がなされています。

 この辺り、原作の展開は以下の通り。複数の要素が並列進行しており、複雑です。

  1. 世界は再び障気に覆われた。
    イオンの遺した預言スコアを手掛かりに、解決策を求めてベルケンドへ。
    街を歩いていると、通行人が目前で倒れて急死。
    • 警備兵によれば、最近、このように突然死する人間が多いのだと言う。
      また、最近、旅の預言士スコアラーが各地を巡っており、多くの人間が預言スコアを詠んでもらっている。その帰り道で死ぬ者が多いとのこと。

      預言の詠み上げはイオン様が禁じたのにと、アニスは憤慨。

      ジェイドは、レプリカ情報を抜かれた人間に稀に起こる副作用の症状に似ている、預言を詠むふりをしてレプリカ情報を抜いているのではないかと推測。

      ルークは、レプリカのせいでオリジナルが死ぬことがあると知ってショック。レプリカは生まれるだけで周囲を不幸にするのか。

      旅の預言士はバチカルの方へ向かったらしい。
  2. ベルケンド音機関研究所にスピノザを訪ねる。
    ルークの超振動で障気を中和してはどうかとスピノザが提案。しかしジェイドは意図的に話題をそらす。
    ルークたちより早く、アッシュが外殻降下時の第七音素セブンスフォニムの流れを調べに訪ねて来たとのこと。ロニール雪山のセフィロトに向かったらしい。
    • 地核に沈めた振動静止装置で中和できないほど、激しく地核が振動しており、このままでは大地が再び液状化して、世界は泥に沈んで滅んでしまう。
  3. ルークは、仲間たちのいない場所で、超振動による障気中和についてジェイドを問いただす。
    障気を中和できたとしても、一万人の第七音譜術士セブンスフォニマーの命を犠牲にし、超振動の行使者も死ぬ。そんなことはとても出来ないと言われる。
    だがルークは、命と引き換えに世界を救う、その方法に取り憑かれる。
  4. アッシュを追ってロニール雪山へ。
    ルークは、セフィロトの入口で赤ん坊の頃のナタリアらしき写真の入ったロケットを拾うが、仲間たちには隠す。
    • ガイとジェイドは、ルークが何か重大なものを拾ったらしいと気付いたが、ここでは追及せず。
    • アッシュのパーティメンバーである《漆黒の翼》と遭遇。彼らはアッシュとナタリアの仲をからかう。
      ナタリアが六割、レプリカが三割、残りはヴァン。旦那の話はこれで出来てるからなぁ」。
    • 何度止めても、命と引き換えの障気中和のことばかり考えているルークに、とうとうジェイドがマジギレ。これ見よがしに大きな溜め息をついて、苛つきを隠さず「……失礼。物分かりの悪い子供は苦手なものでね」。
      他の仲間たちは事情を知らないので、あのジェイドがあからさまに不機嫌な態度を見せるなんてと驚き、ルークが怒らせることを言ったんだろうと呆れ気味。
  5. ロニール雪山のセフィロトでアッシュと(レプリカ編では二度目の)再会。
    アッシュは、ローレライはヴァンの中に封じられていると説明し、その解放にはローレライの剣とローレライの宝珠が不可欠で、世界が危機に瀕しているのは宝珠を受け取れなかったルークのせいだと怒る。
    アッシュは単独で宝珠を探し続けると言い、何か分かったら連絡ぐらいはしてやると言って立ち去る。
    • すっかり心折れて自己の存在意義を見失っているルークは、劣化している俺より能力の高いオリジナルのお前が必要だと、アッシュの同行を願う。
      その卑屈な態度に、誇り高いアッシュは激怒。ガイはアッシュが怒る理由を理解しているが、ルークは、自分が卑屈になっていることをまるで分かっていない。
  6. 宝珠の件はアッシュに任せて、《旅の預言士スコアラー》を追ってバチカルへ。
    国際手配中のモースが発見されたと騒ぎになっている。ルークたちも捜索に参加し、モースを港に追い詰めた。
    が、出現したディストがモースの額に第七音素セブンスフォニムを取り込む譜陣を刻み、音素フォニム暴走を起こしたモースは怪物化して飛び去った。
    • 人体に譜陣を刻んで音素を取り込む技術も、かつてジェイドが開発したもの。流石のジェイドも落ち込む。「時間を遡れるなら、私は生まれたばかりの自分を殺しますよ。まったく、迷惑なものばかり考え出してくれる」。
      しかしルークとアニスに、それだとルークやイオンが生まれなくなるから困ると言われ、「……そうですね。起きてしまったことは変えられない、か」と自嘲。
  7. (現時点のローレライ教団最高責任者と見なせる)テオドーロに、《旅の預言士》について報告するためユリアシティに行こうと決まるが、ルークはその前にインゴベルト陛下に挨拶に行きたいと言い出す。
    実は、ロニール雪山で拾ったロケットについて、密かに相談したかった。
    • 他の仲間、特にナタリアのいない場所で相談したいのに、嘘の下手なルークは上手く誤魔化せない。
      しどろもどろになっていると、ガイとジェイドがその場でスラスラと嘘を言いだしてナタリアを誤魔化した。
      結果的に、ナタリアには隠し通せたが、他の仲間たちにはロケットの秘密を暴かれてしまった。
  8. インゴベルト王に、ロケットの写真について相談。
    ナタリアの実の父親はラルゴではないかという疑惑が浮上。事実確認のため、ナタリアの実の祖母を訪ねて、その勤め先のケセドニア・アスター邸へ行くことに。
    • インゴベルト王は、ナタリアに真実を告げるべきか迷い、ルークに相談する。
    • インゴベルト王は、ルークが《陛下》と言って《伯父上》と呼ばないことに気づき、レプリカでもお前はわしの甥に違いないのだぞと言うが、卑屈になっているルークは、応諾はするものの伯父に目を合わせることもできない。
    • ルークがナタリアを親身に心配したり、ナタリアがルークとアッシュのどちらと結婚することになるかで揺れている様子を見て、ティアは密かに傷ついている。
  9. ナタリアには、《旅の預言士》がケセドニアに向かったらしいと嘘をついて出発。
    ところが本当に《旅の預言士》がいた。その正体は、死んだはずのシンク。
    彼は、これからはモース率いる《新生ローレライ教団》が預言を与えると言い、民衆は彼に従って、ルークたちの制止を聞かない。
    • シンクはアニスに向かってイオンの物真似をしてみせ、彼女を傷つける。
    • ルークは、イオンや自分は誰かの身代わりが嫌なのに、どうしてシンクはイオンの真似が出来るのか理解できない、と吐露する。
  10. ジェイドは、傷ついたアニスに気晴らしをさせて下さいとナタリアに頼み、街見物に行かせる。実は、ナタリア抜きでアスター邸へ行くための方便だった。
    ナタリアのいない間に、ルークたちはアスター邸でナタリアの実祖母から話を聞き、ラルゴが実の父親だとほぼ確信した。
    しかし、この事実をナタリアに告げるべきか判断がつかない。
  11. ナタリア&アニスと合流し、《新生ローレライ教団》について相談するべくユリアシティへ。
    第七音素セブンスフォニムを異常に消費している地点が二ヶ所あり、一つは海上を移動していると、テオドーロに教えられる。
  12. ルークたちはアルビオールで捜索。海上を移動する島を発見する。
    それは、十六年前にホド崩落の煽りで津波に呑まれ滅んだはずのフェレス島で、アリエッタの故郷だった。
    • アリエッタは、フォミクリーで家族や故郷を蘇らせるとヴァンが約束してくれたと言う。ティアは、レプリカは本当の家族の代わりにはならないと言うが、アリエッタは反発。
      そんなことない! そこにいるルークだって、アッシュの代わりじゃない!
    • ルークは、本物のイオンがとうに亡くなっていたことをアリエッタに教えようとしたが、アニスは遮って言わせなかった。
    • アリエッタは、決闘の場所は立会人のラルゴから知らせると告げ、ライガに乗って駆け去った。
  13. ルークたちは、フェレス島の小高い場所に大規模なフォミクリー施設を発見、破壊。
    レプリカたちが出現して、どうして我々の仲間の誕生を阻むのかと非難。
    • ルークは、望まれずに生まれるのは良くない、オリジナル無しに自分たちは生まれないのだから、彼らを尊重すべきだと言うが、レプリカたちは、オリジナルが死のうが知ったことではない、生まれた以上は生きることを遠慮しない。それに自分たちの誕生はモース様が望んでいて、必要とされている。モース様は新天地に連れて行くと約束してくれたと言う。

      ティアは、レプリカたちの自己中心な傲慢さを批判するが、反面で、ルークに「あなたは少し彼らを見習った方がいい」と言う。ガイもそれに同調。今のルークには自信が足りない。卑屈になり過ぎており、居たい場所で生きることすら遠慮して、譲るべきだと考え始めてしまっている。

      しかし、この時点のルークにはそれが理解できない。自分は所詮代用品で、望まれずに生まれて、生きているだけでアッシュもナタリアも両親も苦しめた。レプリカは誰にも必要としてもらえない存在だ。どうすれば自信が持てると言うのか。(※このルークの心境は《ルークの日記》に書いてあります。)
  14. その時、海中からエルドラント(レプリカホド)が浮上。
    • レプリカたちは、モースに置いて行かれたことに動揺。それでもモースを信じ、彼の迎えが来る約束のレムの塔へ、慌ただしく出発していく。
    • ルークたちはアルビオールでエルドラントへの侵入を試みるが、周囲をプラネットストーム状のエネルギー流に覆われているうえ、内部からの砲撃があって近づけない。
  15. ジェイドの提案でグランコクマのマルクト軍本部へ。
    レプリカの大地(エルドラント)とオリジナルの大地の間で疑似超振動が発生し、オリジナルのホド諸島の一部が消失したという報告が入る。
    このままでは、レプリカ大地の生成・拡大に反比例して、オリジナルの大地は消滅してしまう。
  16. ピオニー皇帝に報告するため軍本部を出た時、モースがエルドラントから全世界放送を行って、《新生ローレライ教団》の設立を宣言した。
    預言スコアを廃した各国を非難し、謝罪を要求。応じなければ武力を行使すると布告。
    • 全世界放送は、創世暦時代の技術を用いたもの。現代のオールドラントの技術では不可能。
    • モースは、素養のない第七音素セブンスフォニムを取り込んだため精神汚染を起こしており、間もなく完全に正気を失うだろうとジェイドが言う。
  17. すぐにピオニー皇帝のもとへ。
    疑似超振動によるオリジナル大地消失の危険を報告。レプリカ大地を生成しているフォミクリー装置を停止させるため、アルビオールでエルドラントに乗り込む作戦が提案される。
    この作戦のため各国首脳が会議を行うことになり、同時に、ナタリア懸案の、国際預言スコア会議も行われることになる。預言のない世界でどのように生きていくか、各国の足並みを揃えるのだ。
  18. 会議の開催をテオドーロに知らせようと宮殿を出たところで、ラルゴが出現。アリエッタとの決闘の場所を告げて去る。
    • ルークがアニスを親身に心配すると、アニスとガイは、ルークには他にもっと気にかけるべき人がいる、先日からとても傷つけていることに気付いていないと言う。
  19. 決闘場所のチーグルの森へ。
    アニスは一人で決闘に挑もうとするが、仲間たちは一緒に行くと説得。
    • ルークは、この森で初めてイオンと会った時のことを思い出す。
      あいつ、不思議な奴だった。俺、結構イヤな奴だったのに、あいつは俺のこと優しい優しいって……」「イオン……おまえに会えて、俺本当に嬉しかったぜ
  20. 決闘。敗北したアリエッタは死亡。
    • ルークは、アリエッタの亡骸を抱いて立ち去るラルゴにロケットを投げ渡し、彼の本名を呼ぶ。ラルゴがナタリアの実父であることが確定。
      一人だけ事情を知らないナタリアは不審がるが、いずれ説明するというルークの言葉を信じて追及しない。

 

 この長〜〜い、複雑なストーリーを、アニメ版は超圧縮・単純化。

  1. 世界は障気に覆われていない。
    ジェイドが、アッシュがロニール雪山のセフィロトに向かったとスピノザに聞いたと言い出し、そこへ向かうことに。
    そこにアリエッタが現れ、アニスに決闘を申し込んで立ち去る。
  2. ロニール雪山のセフィロト入口で、ルークは文字の刻まれたロケットを拾う。
  3. セフィロト内部でアッシュに再会。
    ヴァンがローレライを取り込んで復活したことと、解放に必要なローレライの宝珠を探していることを説明して立ち去る。
  4. ジェイドが、我々は障気問題に専念しよう、マルクト軍の情報によれば、大量の第七音素を消費している小さな島がある、と言う。
    それは津波で滅んだはずのフェレス島だった。
    地下に大規模なフォミクリー施設を発見し、破壊。レプリカたちの出現は無し。
  5. 破壊音を聞きつけて、島にいたモースが自ら出現。
    ディストが彼の額に譜石(?)を貼り付けて第七音素セブンスフォニムを取り込ませ、怪物化させる。
    モースは圧倒的な力でフェレス島の廃虚を破壊。エルドラントを浮上させる。
  6. モースの全世界放送。
  7. グランコクマの軍本部前(?)で、マルクト軍艦隊がエルドラントを砲撃したが、プラネットストームの障壁に阻まれたと話していると、魔物(ライガル)が現れてアニスに決闘状を渡す。ラルゴは現れない。
    アニスは一人で行こうとしたが、仲間たちは一緒に行くと説得。
  8. アリエッタと決闘。
    ロケットをラルゴに投げ渡すエピソードは無し。

 全ての情報がジェイドからもたらされてますね。どんだけ便利キャラ扱いなのか(笑)。

 

 預言スコアを禁じられて不安がる民衆、という要素が、現時点では完全にカットされています。

 そして、世界の不安とシンクロして描かれるはずの、ルークの存在意義の悩みには、相変わらず殆ど触れません。アッシュと会った後、俺はやっぱり劣化したレプリカなんだと落ち込む描写と、フェレス島のフォミクリー施設を破壊する時に(レプリカなんて……俺一人でたくさんだ)と思う描写は残してありましたが。

 限られた尺の中で何を削りどれを残すのか考えれば、無くても物語の外枠は維持出来る《ルークの悩み》を消すしかないんだろーなぁ…とは理解できます。

 でも、寂しい。秋のはじめに白茶けたセミの抜け殻を見つけた時のように侘しい。

 勝手な意見ですが、レプリカ編冒頭の《ルークの悩み》エピソードをカットしたのが痛かったと思います。そこでしっかり語っておけば、後は、何かの折にふっと辛そうな顔をさせるだけで、ああルークはまだあの件で悩んでるんだなと、視聴者に感じさせることができたよーな気がします。



 ジェイドの提案により、アッシュを追ってロニール雪山へ。

 第17話と同じ防寒着を着ていました。でもあの時は戦闘時に脱ぎ捨ててましたし、雪崩でルークたち以外の一切が押し流されちゃったはず。ってことは、同じデザインのを新しく買ったのかな。そしてルークは今度も自分で、背中部分に剣出し用のスリット入れた、とか(笑)。

「おいルーク。また背中が寒いって騒ぐんじゃないのか?」「いーんだよ! これが俺の信念なんだから」「安い信念ですねぇ」なんつー会話をゆるりと妄想。

 ミュウが、ルークの防寒着の胸の中に隠れてて、すぽっと頭を出して喋ったのが可愛かったです♥ ティアはきっと自分の胸にミュウを入れたかっただろうけど、「みゅうぅう。ティアさんお胸が大きくて苦しいですの〜」とか試したミュウに言われ、丁重に断られて涙を呑んだに違いない。

 

 漆黒の翼とは行き会いませんでした。彼らがアッシュとナタリアの仲を揶揄するエピソードが消滅。

 ルークはセフィロトの入口で、文字の刻まれた銀色のロケットを拾う。

(新暦1999年。我が娘メリルの誕生の記念に……?)

 あ。これは修正しないんですね。原作によればナタリアの誕生日は1月37日。ルークが親善大使としてバチカル出発したのは2018年4月3日以降。ナタリアが1999年の生まれだと、パーティ参入した時には既に19歳です。でも公式設定上、ナタリアは18歳。

 インゴベルト王との対面時、原作で「お父様の傍で十七年過ごした」と言っていたのを、アニメ版は「十八年」に修正していました。だから誕生年も新暦2000年に修正するものと思ってたのに…。尤も、アニメ版では誕生月日を明かしてないので、アニメナタリアの誕生日を初夏以降に設定し直したと考えれば、ちゃんと辻褄は合います。(そっちの方が、ルークより一つ年上だと感覚的に掴み易くてイイかも。アニメ版はイオンの身長を低く設定し直してますし、これもそうした修正の一つとか。)

 原作だとここでロケットの中の赤ん坊の写真を見ますが(《ルークの日記》に写真について書いてあります)、アニメ版は蓋の文字を読んだだけ。写真を見るのは次回回しかな。

 

 パッセージリング前で、探す何かが見つからず苛立っている様子のアッシュを発見。

 何だか変わった探し方をしていました。片手を伸ばしてリング周辺の宙空に触れると、そこに小さな譜陣が出る。そうして周囲のあちこちを触って回っている。

 原作だと、ローレライの剣をかざして宝珠の反応を探るという方法でしたが…。ローレライの剣と宝珠が対の存在であるのを利用して。

 

 原作の、シュレーの丘のセフィロトとロニール雪山のセフィロト、二カ所でのエピソードをまとめて語っていました。

 簡素化して設定が分かり易いし、ジェイドがいるおかげで説明がスラスラ進む。おおお。イイっスね。

 

 にしても。アニメルークは《栄光を掴む者》がヴァンのことだと、とっくの前から知っていた。それが私を捕らえると言うローレライの声も覚えていた。なのに、ここに至るまでヴァン復活の可能性に全く思い至らなかったし、仲間に相談する必要性すら感じなかったんですか。

 すんごいア……ゲフン、うっかりさんですね。

 しかも、自分のうっかりのせいで後手に回ったのに、その点でうしろめたそうな様子がないし、仲間の誰も怒らない。驚きすらしない。なんだろうこのメリハリの無さ。原作みたいに「どうしてもっと早く言わなかったんだ」と、一言ルークに怒ったってよかったと思うけど。ミスしたら叱られなきゃ変ですよ。原作以上のうっかりぶりなのに。

 …叱らせたら、ルークが古代イスパニア語を習っていないことや教育係だったガイの後悔まで語らなければならず、尺が足りないから? そこまでセットにしないとギスギスになりますもんね。うむむ。

 

 細かいことですが、アッシュに「お前があの時、ローレライの宝珠を受け取っていれば、こんなことにはならなかったんだ!」と言われて、すぐにルークが『アッシュ、ルーク! 鍵を送る! その鍵で私を解放してほしい!』というローレライの言葉を連想するのは、ちょっと強引、つーか分かりづらい。

 だってアニメ版では、《ローレライの鍵》が剣と宝珠からなるユリアの秘宝だということを説明したこと無いから。原作だと崩落編の時点で説明してるんですけどね。

 アッシュの台詞を「お前が宝珠を、ローレライの鍵を受け取れていれば、こんなことにはならなかったんだ!」とかにしといてほしかった視聴者ゴコロ。

 ちなみに原作では「おまえが! おまえがローレライから鍵を受け取っていれば、こんなことにはなっていなかったんだ!」と言ってたデス。

 

 怒ったアッシュがルークの胸倉を掴んで剣を突き付けるという演出の強化あり。けれど、ティアもガイもナタリアも落ち着いたもので、「やめて!」と悲鳴をあげたりしない。驚いた顔すらしない。みんなアッシュをすんごく信頼してるのね。ガイがゆっくり近づいて、刃先を掴んでぐっと下ろさせてました。兄貴分が余裕でたしなめた感じ。カッコイ〜!

 

 なお、今回もティアにヒロイン補正が掛かっていました。原作のティアは、アッシュとルークが言い争っていると「やめなさい! 二人とも喧嘩している場合じゃないでしょう?」と叱りつけて黙らせますが、アニメのティアは慎ましく黙っています。キツい言動は見せません。俺はアッシュより劣ってるんだと内心で落ち込むルークを、背後から《私にはあなたの気持ちが分かっているわ》って感じに心配げに見つめる描写が追加でした。

 とは言え、本編ドラマCD版のようにアッシュを平手打ちして罵るというのもやり過ぎな気がしますんで、これでいい…。

 同じ原作を基にして、それぞれほんの半歩分だけアレンジを加えて。けれど逆方向に踏み出しているため、本編ドラマCD版とTVアニメ版のティアの言動は、ところどころ別人のよう。面白いです。

 

 ルークが、「協力しよう、一緒に来てくれ」とアッシュに要請する要素が完全カット。

 …そうか。アニメルークはここでやっと《俺はアッシュより劣っている》と思ったぐらいで、《劣化した偽物の俺には存在価値がないから、本物のアッシュに来てもらった方がいい》と、卑屈を極めるには至ってないんですね。

 

 それはそうと。アッシュがローレライの剣を受け取った時の回想イメージ。場所、ラジエイトゲートのパッセージリング前……ですね。どう見ても。アブソーブゲート決戦時、原作通りラジエイトゲートから力を送ってくれたってことですか。

 でも18話のノエルの話を聞く限り、アッシュはアブソーブゲート決戦時(一ヶ月前)にはアルビオール3号機を借りてない感じ。アルビオールも使わず、あの短時間で、加えて負傷の身でありながら、北極アブソーブゲート近くから南極ラジエイトゲートまで、一体どうやって移動したと言うのでしょうか。

 …ノエルが、一ヶ月前にアッシュが3号機を借りたことを、兄やアストンから聞きそびれていたとでも思うしかないですね。

 それにしたって、アニメ版は原作と状況が違うので、アッシュがそうまでしてラジエイトゲートに行かなければならなかった理由が全然ないのですが…。謎。

 アブソーブゲートはラジエイトゲートと対だから逆流を止める手助けが出来るかもと思ったとか、そういう風に考えればいいのでしょうか。

 

 ジェイドが、宝珠探索はアッシュに任せて我々は障気問題に専念しましょうと言います。

 障気を止めるか封印する方法を探すってこと? かと思いきや。

「マルクトの情報部から、報告がありました。第七音素セブンスフォニムが大量に消費されている地点があるそうです。そこは、海図にも載っていない、小さな島だと言うのですが」

 ……あのー。障気と《第七音素を大量消費する島》に、何の関係が(汗)。

 なんか噛み合ってない。障気問題に専念しましょう、じゃなくて、逃亡したモースを探しましょうとか、六神将やヴァンの動向を探りましょうとか言う方がよかったんじゃ…。

「宝珠はアッシュに任せて、我々も出来ることをやりましょう。気になることがあるんです」「マルクト軍が、第七音素の大量消費地点を発見しました。海図にもない小さな島だそうですが」「ええ。レプリカ製造には大量の第七音素を使います」

とかいう感じで、その島に、レプリカを大量製造しているモース、もしくはレプリカ大地計画を進めるヴァンの拠点があるのでは? って感じに持って行った方が良かったんじゃないかなぁと、視聴者としては思いました。話の繋ぎ方がなんか変だった。

 

 フェレス島に移動します。

 全体的に紫がかった暗い画面だったんですが、夕方……ってことなんですよ、ね? ここにだけ障気が出てるのかと思って困惑しました。

 原作でルークたちが訪れたフェレス島は、推進装置によって中央大海を自在に移動していました。『エピソードバイブル』で明かされた情報によれば、この《移動するフェレス島》はヴァンが作ったレプリカなのだそうです。本物のフェレス島は、十六年前のホド崩落の際、津波に蹂躙され《沈みかけていた》そうで。ホド崩落の影響で地殻に変動が起こり、沈下していたということなのでしょう。

 一方、アニメ版は設定が違うようでした。移動していません。なのに《海図に載っていない》と言うことは……ホド崩落で地核が変動して、別の位置に地滑り移動していたってことなのかな。それとも海に沈んでたのが、何かの原因で海面が下がって現れた? アニスは「今はもう無い島。海に沈んだフェレス島」と言ってますね。

 

 原作ファンの間で物議をかもした(笑)、ルークの《無辜むこの島》発言はありませんでした。ミュウが、ご主人様ボクは泳げないですのと訴えるシリーズ最終回(笑)もありませんでした。

 

 原作だと、この島でアリエッタと再会します。潮風の響く廃虚の街の奥、魔物だけを友に泣いていた様子には胸締めつけられたものですが、アニメ版は登場自体がカット。アニスがアリエッタの生い立ちについて語るエピソードは残っていましたが。

 よって、アリエッタがルークはアッシュの代わりだと悪意なく言い放つ、ルークにとって残酷なシーンも消滅していました。

 

 私は、赤ん坊時に津波を生き延びたアリエッタは、《沈みかけたフェレス島で》ライガに育てられていたと考えていたのですが、アニメの絵を見るに、揺り籠ごと小舟で海を漂って、どこかの浜辺に漂着し、そこでライガに育てられていました。

 そっか。確かにあんな荒れた廃虚の島で、ライガが人間の赤ん坊を食べずに育てるのも変な話ですし、別の土地で育てられたと考えるのが順当なのかな。

 うーん。でもフェレス島で発見されたんじゃないと、フェレス島の生き残りだってことが分からないんじゃ…。まあどーでもいいことですね。

 

 保護された(七歳頃の)野生剥き出しのアリエッタが、(五歳頃の)オリジナルイオンに引き会わされる場面の絵は、『マ王』漫画版外伝2を参考したもの。でもオリジナルイオンがやけに大きかった。五歳に見えないですね(苦笑)。

 

 ジェイドが地下への入口を発見。その中には巨大なフォミクリー施設が。

 これはSD文庫小説版から採られたアレンジです。モース怪物化時のアレンジと併せて考えるに、偶然似た訳ではない。参考にしたと断定していいと思います。

 原作では島で最も高い場所に建つ大きな屋敷の中にあったフォミクリー施設を、地下に変更。……このアレンジを採用したのは、施設の外観を描く手間が省けるからなのかなぁ。その分、尺も稼げるし。

 

 フォミクリー施設は空っぽで、レプリカたちとの問答はありませんでした。とても残念です。

 

 ジェイドがフォミクリー施設を派手に破壊。

 するとカメラは突然、廃虚の街にいたモースに移り、爆発音を聞きつけて「何事だ!」と駆けて行く。彼に気付いていなかったルークたちに「貴様ら、何故ここに!」と呼びかけて注目を集め、一方的に喋り。飛んできたディストに、いかにも浅ましく導師の力を求めて、怪物化して廃虚の街を破壊すると、浮上したエルドラントに飛び去ったのでした。

 ……何かが変な感じでした。確かにシリアスシーンなのに…笑える、ような? 怪物化したモースがユーモラスな姿だから、空中に恰幅のいいおっさんが張り付けにされるオリジナル演出が愉快だったから、と言うだけじゃなく。

 考えてみるに、モース自ら単独で駆け付けてくるうえ、わざわざルークたちに怒鳴って存在を知らしめたからかな、と思いました。だってこの人、国際指名手配されて逃亡中なのに。(^_^;) 隠れているか、大勢の手下に攻撃させるかが普通の悪役ですよね。

 

 多分、原作でフォミクリー機器を破壊するとレプリカたちが出てくるのを、モースが出てくる形に配置変換したってことなんでしょうが。少し強引な感じで違和感があったので、もう少し消化に良く咀嚼してくれてたら有り難かったかもなぁと思いました。

 ルークたちがフォミクリー施設に踏み込んだらモースが隠れてて、怪物化してから「もはやレプリカどもなど必要ないわ!」なんてフォミクリー施設ごと廃墟の街を破壊してエルドラントに飛び去るとか。…ますます変ですね。すんません…。

 

 ディストがモースに第七音素セブンスフォニムを注入する方法。SD文庫小説版のオリジナルアレンジをそのまま採用してます。

 原作では、ディストはモースの額に手をかざして、発した微弱な光線で譜陣を刻み込んでいきます。

 肉体に譜陣を刻んで音素フォニムを取り込む技術は、幼き日にジェイドが開発したもので、彼は自身の両目にそれを施しています。だから彼の両目は赤く、強力無比な譜術を使えます。ただし暴走の危険もあるので、眼鏡型の譜業で制御している。

 それをSD文庫小説版は、ディストが石のようなものをモースの額に貼って押しつけた、という独特な形にアレンジ。アニメ版はこれを完全に踏襲して、青い譜石の欠片のようなものを貼り付けていました。

 また、アニメオリジナル演出として、ディストが派手な動作で輝く四つの環を投げつけ、それがモースの四肢を拘束して空中に張り付けにする描写あり。…こういうシーンは美少女で見たいものですね。(^_^;)

 

 怪物化したモースの台詞。『なんだ、この醜い姿は!?』と言っていたのを『なんだこの、体は〜ッ!?』に修正。元人間の怪物を醜いと言わせるのは、イマドキのTV番組ではタブーなのかしら。

 

 モースとディストが飛び去ってすぐに、海中からエルドラントが浮上。恐ろしいことに、フェレス島の真横からヌーッと出てきました。でもアニメですから津波は起こりません。

 エルドラントの周囲に付いている爪のような外骨格は、ヴァンが海中で取り付けさせていた対空兵器だと、原作では説明されています。つまり、オリジナルのホドには、あんなの付いていなかった。

 原作のガイは、レプリカたちがそれを「新生ホド」と呼ぶのを聞いても、ホドであることをなかなか信じられませんでした。けれどアニメのガイは一目見るなり、「ホドだ。あれはホドだ! あいつらレプリカで、ホドを復活させたんだ!」と断言。尺がないから話も早い。とても分かり易いです。

 ここでAパート終了。

 

 Bパートは、モースの全世界放送から。どうも、Aパートから少なくとも半日、下手すれば数日開いているみたいです。

 ちょこちょこ削除・短縮化されていますが、演説の内容は原作どおり。

 ただ、『栄光の大地エルドラント』を『栄光のエルドラント』に略してたのはどうかと思いました。(^_^;) 色んな意味で。

 

 精神汚染の進んだモースの演技は、原作版の声優さんの方がエキセントリックで好きだったかも。

 

 マルクト軍の艦隊が、モースの演説を無視してエルドラントを砲撃、というアニメオリジナルエピソードが入れられていました。いきなり宣戦布告か。実際、預言に従うならマルクト帝国は今年で滅亡ですもんね。でも砲弾はプラネットストーム状の障壁に阻まれて効果をなくしてしまう。

 

 グランコクマのどこか……マルクト軍本部前? で、その報告をルークたちがジェイドから聞いていると、アリエッタの魔物(ライガル)が出現。アニスに決闘状を渡す。

 この辺のエピソードの短縮は、とても上手いと思いました。サクサク進みます。

 

 原作ではチーグルの森に着いてからだった、一人で行こうとするアニスを仲間たちが止めて一緒に行くエピソードが、グランコクマの時点で挿入。うんうん。

 会話は、語句の微修正と多少の台詞カットがあるだけで原作どおり。ミュウの台詞は、フェイスチャットからエッセンスを採って追加されてました。アニスの演技は、振り向くタイミング等が変更。アニメは泣き笑い等の繊細な表情が自然に表現できるのがいいですよね。原作より感動的でした。

 

 チーグルの森へ。ルークがイオンとの出会いを思い出したり、ミュウがライガの女王を殺した件の罪悪感を口にするエピソードはカット。でもその方がスッキリしていいのでしょう。

 

 待ち受けていたアリエッタと対峙。

 アリエッタの連れている魔物が……ひいふうみい、八匹!? アリエッタ自身を加えると九! ルークたちの戦力は六人なのに。アニス一人で来てたら確実になぶり殺されてましたよ。流石に、アリエッタの殺意は真剣ですね。

 原作アリエッタが連れていた魔物は、ライガとフレスベルグ一匹ずつ。アニメ版の方は、ライガ一匹、フレスベルグ三匹、ステレオティス四匹でした。

 ……ステレオティスばっか。ライガクイーンの仇討ち戦でもあるのに、ライガは一匹だけなんだ…。決闘状を持ってきたライガルすら不参加。ステレオティス族は義に厚く、ライガ族は意外に個人主義なのだろーか。

 

 決闘前にナタリアの、大体原作どおりの台詞。

「あなたはわたくしたちのことを、助けてくれたではありませんか」

 原作アリエッタはルークたちに代わってリグレットと戦ってくれたのですが、アニメ版だとイオン様を助けてと呼びに来ただけなので、助けたと言われるとちょっと不思議な感じかも。

 

 さて。決闘前のアリエッタとの会話には、大幅な変更が行われていました。

 一つ。フェレス島で会うエピソードがカットされていた分、ここに《アリエッタにイオンの真実を告げようとすると、アニスが遮って言わせない》というやり取りを挿入。原作では告げようとしたのはルークでしたが、アニメ版ではティアに変更していました。

 二つ。アリエッタの持つ《義、正当性》の部分のみを示し、彼女の《罪、視野の狭さ》の一切に触れない。この脚色はSD文庫小説版と同方向。

 具体的に言えば、アニスの台詞「自分は虫も殺さないようなこと言わないでよ。ヴァン総長の命令でタルタロスのみんなを殺したくせに。私だって、みんなの仇討ちだよ!」をカットし、戦闘中のジェイドやティアの台詞「私にしてみれば、あなたこそ我が部下たちの仇」「あなたも軍人なら、それが仕事だということを理解なさい!」を採っていません。

 スッキリ枝葉を落として、《アリエッタの悲劇的な復讐劇》の要素のみ扱った方が、ずっと分かり易いし後味もいい。原作は含まれる要素が多すぎたとは思うので、これで正解なんだろうと思います。

 ただ、原作の方は、アリエッタを一方的な被害者にしていなかった。わざわざ別視点を提示して、いわば混ぜ返していました。

 

 アリエッタは依頼心が強く、物事を殆ど自分の頭で考えていません。ヴァンの計画も《総長は星を変えて救ってくれる》《滅んだ故郷や死んだ家族をフォミクリーで蘇らせてくれる》程度の理解。ヴァンが望むから軍に入り、命じられるまま大勢殺す。親のようなヴァンの言葉に疑問すら感じたことがありません。

 イオンを死に追いやった本当の犯人はモース。モースはヴァンに利用されており、アリエッタはモースの命でも動いていました。しかし彼女の憎しみがモースに向くことはなく、ヴァンやモースに協力してきた自身への疑問にも辿り着かない。あるのは、導師守護役フォンマスターガーディアンだった自分の居場所を奪い、イオンの寵愛を奪ったアニスへの嫉妬だけ。

 自分が誰かの仇であり、人殺しの罪を背負っているのであり、ルークたちもその責を負い、自分や周囲を生かすためライガクイーンを殺したということを、知ってはいるけれど考えてはいない。アニスやルークたちを手酷く糾弾します。かつてルークが、ライガクイーンを殺した後でティアを冷血女と罵ったように。自分だけは綺麗な場所にいるような顔で。

 これらの点で彼女は、かつてのルークに近い。ただし、ルークが責を負い視野を広げて成長したのに対し、アリエッタは最期まで変わらなかった。《成長しなかったルーク》と言えるのではないでしょうか。

 彼女が発露した自主性は、仇討ちという憎しみだけ。原作アニスは、だから決闘を受けたと言っていました。「あいつは生まれてからずっと、ヴァン総長のてのひらで踊らされてきたんだもん。でも今回のことは、ヴァン総長とは関係なく、あいつ自身が決めたことだと思うから……受けてやる」と。

 私はこのように感じていたので、『テイルズ オブ マガジン Vol.7』の記事に、「大切な人のため、仲間のため、戦い抜いたひとりの少女。その短い人生は、誇り高いものだった。」と書いてあって少し驚きました。誇り高い…。そうか。確かにそういう解釈ができて、きっと間違ってないんですね。

 

 アニスとアリエッタの決闘。

 トクナガに乗ったアニスと、ライガに乗ったアリエッタの肉弾戦は、大迫力でした! WEB上のどこの感想を拝見しても絶賛されていた部分です。

 実際、今までの戦闘シーンで一、二を争う燃え度だと思いました。アニスとアリエッタのぶつかり合いの合間に、最初は仲間たちの戦闘という周囲の状況が入り。次第にアニスたちの内面に入って行って、それぞれのイオンとの交流や別れを回想。アニスはルークたち一人一人の顔をも思い浮かべるけれど、アリエッタに浮かぶのはどこまでもイオンだけ。二人の少女のイオンを呼ぶ内心の声が高まっていき、ついに口に出してその名を絶叫、秘奥義で激突する! 音楽との相乗効果も良くて、グイグイ惹き込まれて高揚しました。

 戦闘の演出は、原作ゲームを意識したものになっていました。ナタリアが矢を放つと、ティアが譜陣を出して威力を強化したり。FOFフィールド オブ フォニムスを出現させるアピアース系譜術のイメージなのかな。矢が光をまとって魔物を貫通してたので、アピアース・ゲイル+ピアシスライン=ヴォルテックライン? 女の子同士の阿吽の呼吸の協力技ってのが、なんだか印象的でした。ガイとジェイドの戦いぶりも良かったです。ガイがジェイドの譜術に助けられるけど、お互い言葉をかけることもなく、すぐに背を向けてそれぞれ次の攻撃に向かう。それが逆に、阿吽の呼吸って感じ。

 そしてアニスの譜術・ネガティブゲイト。譜こそ唱えなかったものの、エフェクトが原作そっくりに作ってありました。おー! でもイービルライトは、掲げたヌイグルミからではなく、アリエッタの全身から(…口から?)光線発してた(笑)。激しく動くライガにまたがりつつヌイグルミを持たせ続けるのが、絵的に難しかったからなんでしょうね。差し伸ばした片手から発する、とかなら出来た気もするけど、何かが無理だったのか。

 

#トクナガに乗ったアニス、アリエッタめがけ疾駆しながら片手を差し伸ばし、譜術を放つ
アニス「ネガティブゲイト!」
#円く発生した闇の力場を悠然と避ける、アリエッタを乗せたライガ。
#トクナガに襲いかかり、爪でその腕を切り裂く。飛び出すヌイグルミの中綿。
#すれ違う刹那、顔を見合わせる二人の少女。

#アニスの脳裏に浮かぶ回想。
#ダアトの街を歩き回り、人々と気さくに交流するレプリカイオンを見つめ、少し困り顔のアニス。しかしやがて、認めたように晴れ晴れとした笑顔が浮かぶ。

アニス「はぁっ!」
#アニス、トクナガの腕から次々と光弾を投げつける。弾き飛ばされたライガの背で、ギュッと目を閉じて耐えるアリエッタ。

#アリエッタの脳裏に浮かぶ回想。
#恐らく、導師守護役フォンマスターガーディアンに任命された日。導師の執務室で、制服を着て所在なさげな様子のアリエッタ。ドアが開き、ヴァンとオリジナルイオンが入ってくる。やや俯いて上目遣いになった彼女に向かい、安心させるように優しく微笑みかけるオリジナルイオン。

#上空から放たれるアニスの譜術を、地を駆けて避け続けるライガとアリエッタ。
#アリエッタの脳裏には更に思い出が浮かぶ。
#文字の書き方を教えてくれた、優しいオリジナルイオン…。

#一方アニスも、懸命にトクナガを操ってライガに突進。しかし、今度は反対側の片腕を食いちぎられてしまう。
#アニスの脳裏に浮かぶのは、仲間たち一人一人の顔。ミュウ、ティア、大佐、ナタリア、ガイ。そしてルーク。


アリエッタ「だぁーーーっ!」
#アリエッタの脳裏に浮かぶ、オリジナルイオンとの別れのイメージ。振り向かずに暗い扉の向こうへ消えていく彼と、床に座り込んで、閉ざされる扉を呆然と見ているアリエッタ。
アニス「ネガティブゲイトー!」
#アニスの譜術をまともに食らって吹き飛ばされるライガとアリエッタ。激しく叩きつけられて地を滑る。ライガにしがみついて耐えるアリエッタ。
アリエッタ「くうっ。うっ、く……」

#間断入れず、トクナガに乗ったアニスがその前に飛び降りていく。

アニス(イオン様……!)
#アニスの脳裏に浮かぶ、レプリカイオンとの別れの場面。
#アニスに微笑みかけてから力を無くし、光になるイオン。ルークの腕の中で消えてしまった。

#対峙するトクナガの前で、よろめきながらも立ち上がるライガ。ガクリと膝が砕け、しかしぐぐっと起き上がる。
#ライガの腹を優しく撫でてから、アリエッタはキッと顔を上げる。

アリエッタ(イオン様……!)
#アリエッタの脳裏に浮かぶ回想。
#新しく導師守護役フォンマスターガーディアンになったアニスと、楽しそうに話しながら街を歩いているイオンを、恨めしい思いで物陰から見ていたあの日。

#満身創痍のアニス、ついに再び向かっていく。

アニス「イオン様ァーーっ!」
#同じく満身創痍のアリエッタ、立ち向かう。
アリエッタ「イオン様ァーーっ!」
#空中で正面から激突する、ライガに乗るアリエッタとトクナガに乗るアニス。
アリエッタ「イービルライトーーッ!!」
アニス殺劇舞荒拳サツゲキ ブコウケン!」

#片腕のみのトクナガが、無数の拳を打ち込む
アリエッタ「あぁ〜〜〜〜ッ!!」
#長く悲鳴の尾を引いて地へ落下するアリエッタ。
アリエッタ「あうっ!」
#彼女が叩きつけられたすぐ傍に、ライガも同じように落ちてくる。
#トクナガに乗って着地し、ハッとしたようにアリエッタを返り見るアニス。

アニス「っ!」
アリエッタ「はあッ、はあッ、はあッ……」
#大の字に転がったまま、激しく浅い呼吸を繰り返すアリエッタ。涙の浮かんだ目はうつろになっている。
#ライガはもがき、なんとか立ちあがってアリエッタに歩み寄ろうとしたが、ガクッと崩れ落ちて息絶えた。
アリエッタ「ヴァン総長……アリエッタ……負けちゃった……。ごめんなさい……」
#首を動かして、魔物たちの亡骸を視界に入れる。
アリエッタ「ママ……みんな……ごめんね……。仇を討てなくて……」
#黙ってその言葉を聞いているアニス。俯いた顔には影が落ちて表情が見えないが、頬を涙が伝い落ちる。トクナガは大きいまま背を向けている。
アリエッタ「……イオン様、どこ……? イオン様……イオン様……」
#虚ろな目のまま、辺りを見回す様子のアリエッタ。

#辺りに不思議な光が満ち、アリエッタの瞳に光が戻る。

アリエッタ『あ……?』
#ライガの妖獣…アリエッタの弟妹たちが現れ彼女の頬を舐める。その後ろからゆっくり歩み寄ってくる、ライガクイーンとイオン。
アリエッタ『っ!?』
#身軽に跳ね起きるアリエッタ。
アリエッタ『イオン様!』
#不思議な光に照らされたその空間で、イオンはアリエッタだけに優しく微笑んで、片手を差し伸べる。
アリエッタ『……!』
#喜びに輝いて、頬を紅潮させるアリエッタ。


アリエッタ「イオンさ……ま……」
#虚ろな目で横たわったまま、わなわなと震える右手を差し伸ばしているアリエッタ。
#そんな彼女の姿を、やるせない思いで見つめているルークたち。
#アニスも目に涙を浮かべている。


#伸ばした手は、幻のイオンの手に届いた。アリエッタの虚ろな顔に満足げな微笑み。
アリエッタ「イ、オン、さ」
#幻は終わり、アリエッタの手は落ちる。彼女は息絶えた。
アニス「アリエッタ……」
#こぼれ落ちそうな涙をたたえて呟くアニス。

 

 アニメ版には、死に瀕したアリエッタが亡き親者たちの幻を見て救われるという、原作にないエピソードが挿入されています。原作とアニメ版の方向性の違いが、今までで最も明瞭に示されていると感じました。

 

 アニメ版の脚色には泣かされて、とっても良かった。アリエッタの悲劇を強調し、美しい幻を用意して無残な死を和らげる。多くの人が期待する王道的脚色でしょう。幻の光景があまりに美しくて、故に現実のアリエッタが哀れ過ぎて、泣きの涙でした。

 原作には、そのような救いは用意されていません。アリエッタはヴァンや魔物たちに無念を詫び、「痛いよぅ……」と泣き声を漏らし、暗闇の中で探すように、もういないイオンの名を呼びながら死んでいくのです。

 アニメ版は本当に美しかった。けれど過酷な現実を淡々と描写していた原作の描き方も、私は好きかもな、と思いました。アリエッタは可哀想だけれど、愚かでもあった。そして死は、哀れな子供であっても容赦せず、冷酷に平等にもたらされる。

 

 原作は、一つの視点に没入し過ぎることを忌避しているように思います。

 それは、敵であるヴァンやモースにもそれぞれの正義・信念がある点にも現れていますし、ナタリアが王族として頑張ろうと決意を新たにしている背後でジェイドに王制批判させる点にも現れている。レプリカに居場所はないと落ち込むルークを、ティアがレプリカを受け入れない世界の方がおかしいと励ますと、ガイが、けれどレプリカのために命を落とすオリジナルがいるのも確かだ、と言ってしまう。

 アリエッタは可哀想です。特殊な生い立ちゆえ、ああならざるを得なかった。けれど原作は、彼女の《狭さ》を指摘することを躊躇しません。

 そしてまた、下手な救いをもたらさない。……根の部分が優しいので、それでも凄惨にはならないのですが。

 

 世の中には複数の価値観があり、人によって見方によって正解は異なる。だからあれも正しいしこれも正しい。実はこれは間違いかもしれない。

 原作のこの揺さぶりが、作品テーマを分かりにくくし、作中の価値観をぼやけさせているのも確かです。主張があっちに行ったりこっちに行ったり、肯定したと思えばチラリと裏返したり。いちいち混ぜ返されて落ち着かない。アニメ版がそこを整理して、分かり易くスッキリさせたのは当然だろーなぁとも思います。

 尤も、世の中に面白い物語は沢山あるのに、私が『アビス』にこれだけ魅了されてしまったのは、このモヤザラ感があるからこそなのかもな、と今回のアニメを見て思いました。いやに考えさせられてしまうんですよね、原作は。(^_^;)

 

 アリエッタの死後、原作アニスはその場にへたり込んでしまい、アリエッタの亡骸にすがるようにして「アリエッタ……。ごめんね。……あんたのこと大嫌いだったけど……だけど……ごめんね……」と謝ります。ラルゴは「敵の死体に泣いて謝るなんてのはやめるんだ、アニス」「敵に情けをかけられては侮辱されたも同じだ」と言う。アニスは「……うん……」と、泣くことをこらえます。

 アニメ版はニュアンスが違っていました。

 アニスはアリエッタに何も言わない。ラルゴがアリエッタの亡骸を抱いて立ち去ろうとすると、追い縋るように駆け寄って「アリエッター!」と呼んだだけ。するとラルゴがギッと睨んで、苛烈な口調で言うのです。「やめろアニス! 敵に情けをかけられては、侮辱されたも同然だ」。アニスは何も言えず、殆ど泣き顔で悲しそうにしていました。

 原作ラルゴは、敵のアニスに対してもどこか年長者的な、戦士の心得を説くような雰囲気がありましたが(他のエピソードも参照するに、アニスとラルゴは教団である程度同僚としての付き合いがあったらしいのです)、アニメラルゴは敵意が強めな感じ。原作アニスはラルゴの言葉を素直に聞いて懺悔を…言い訳をやめる、痛々しいほどの強さを見せていましたが、アニメのアニスは普通の子供って感じですね。

 

 角が立ちそうなところは沈黙で曖昧化した、という感じでした。原作アニスの「あんたのこと大嫌いだったけど……だけど……ごめんね……」という台詞、私はとても納得できたのですが、SD文庫小説版では《そんなことはない。アニスは本当はアリエッタが好きで、大事に思っていたはずだ》と強いて語り直していましたし。そうか、人によっては全く共感し難いのだろうと思いました。

 

 アリエッタは自分の目的のために命をかけて死んだ、だから同情は侮辱だとラルゴは言います。

 この台詞を受けた原作フェイスチャット『それぞれの想い、かなえたい願い』は、ガイというキャラクターを知る上で重要で、原作のレムの塔前や最終決戦前の彼の言動にも繋がると思っています。なので、カットは妥当で予想通りでしたけど、やっぱり少し残念だなと思いました。

(原作・フェイスチャット『それぞれの想い、かなえたい願い』)
ティア「六神将はみんな、自分の命と引き替えにしてでも叶えたい想いがあるのかしら……」
ルーク預言スコアの消滅……か?」
ガイ「ヴァンの理想に従っているんだから、そういうことだろうな。もっとも、預言を消したいからなのか、ヴァンに協力したいからなのかは、人によって違うんだろう」
ルーク「命と……引き替えにしても……か」
#ティア、目を伏せて
ティア「……私も以前はそうだった。そうであるべきだと思ったし、そのことに何の疑いももたなかった」
#ガイ、笑って
ガイ「今は違うのかい?」
ティア「命をかけることだけが、本気である証なの? 私は……揺れてきている……」
ガイ「へぇ。ならティアは、俺の考え方に近くなってきたんだな」
ルーク「ガイは命をかけることが本気じゃないっていうのか?」
ガイ「人それぞれだろ。俺は、生きることに執着するからこそ、世界を変えたいと強く思うんじゃないかって考える。良い悪いじゃない、そういう『信念』かな?」
ルーク「生きることへの執着……命をかけても叶えたい想い……」
ティア「そう……多分どちらも正解だから、私は揺れるのね」
ガイ「この世には正解なんてない。その代わり間違いも多分ないのさ。決めるのは自分自身だ」

 ヴァンやラルゴ、リグレット。結果的にアリエッタも、目的のために身を捨てていました。ヴァンはレプリカ世界を作って《人類》を救い、引き換えに、自分含むオリジナルの人類全てを犠牲にしようとしていた。また、そこに至る過程で自身の命を削ることもいとわない。パッセージリングの操作で障気に侵されても、目的のためには取るに足らないことだと言い切っていました。壮大な自己犠牲です。

 アニメで採られるのか分かりませんが、原作の最終決戦直前、ガイはルークにこう言います。

「俺は酷なことを言ってる。生きて生きて生き抜いて、恨み、憎しみ、悲しみ、怒り……全部しょいこまなけりゃならないってな。でも、おまえだけに背負わせたりはしないぜ。俺もおまえと同じだ。世界中がおまえのやってきたことを非難しても、俺はおまえの味方だ。俺はヴァンの六神将とは違うぜ。自分も生き抜いた上におまえも助けてやる」 

 ラルゴはアリエッタの決闘を止めず、イオンの真実も告げず、その結果の死も、命をかけたのだから哀れむなと矜持高く言い切りました。目的のために命をかけるべきと考え、死してもそれを誇りとすら思う。それがラルゴたちの信念。

 けれどガイは違う信念を持っている。命を捨てても目的を果たすのではなく、目的を果たして、石にかじりついてでも生きるのだと。

 

 ラルゴは、アリエッタにイオンの真実を告げなかったのはヴァンの優しさだと言います。真実を知れば彼女は自殺していただろうから、と。『マ王』漫画版外伝2によれば、亡くなったオリジナルイオン自身が、可哀想だから自分の死をアリエッタに告げないようにとヴァンに言い遺しています。

 確かにアリエッタは自殺したのかもしれない。でも、死ななかったのかもしれません。残酷な現実が死ぬほどの苦しみをもたらすとしても、踏み越えて、どう《生きる》かを自分の頭で考えるようになったのかもしれない。ルークのように。

 私はそう思うので、アリエッタが真相を知らないまま、狭い世界の中で死んでいったことは、やはり残念で、理不尽だと思いました。

 

 アリエッタの亡骸を抱いたラルゴは、「次に会うのはお前たちの死ぬ時だ。アリエッタの仇、取らせてもらう」と言い残して立ち去ります。

 原作では「次に会う時はおまえたちを殺す時だ」と言ってたんですが、どうも、TVアニメでは「殺す」という表現がタブーっぽいですね。

 ナタリアの実父関連のエピソードは、ここでは全く発生しません。ルークは黙ってラルゴを見送る。ナタリアとラルゴの会話も一切発生せず。

 ルークの肩にしがみついたミュウの、恐ろしそうな深刻な表情が可愛かったです。

 そんな感じで、立ち去るラルゴのバックに微笑むイオンの顔をオーバーラップさせつつ、今回は終了でした。



今回の総論。

  • さつげきぶこぉーけん!」 ぽすぽすぽすぽすぽす ぽすぽすぽすぽすぽす ぽすーーん!

 

 ではまた次回。

 



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