# 20 森の墓標脚本:根元歳三/コンテ:小倉宏文/演出:小倉宏文/作画監督:前澤弘美 アリエッタが可哀想で泣けました。おうおうおぉーぉおお(涙)。
殆どの雑誌用版権絵を手掛けておられる前澤さんの、久々の単独作監回。第7話の絵の印象が強かったのですが、今回はナタリアも、勿論アリエッタも、果てはオリジナルイオンも可愛くて大満足♥
『マ王』漫画版から久々に、外伝2と外伝5のエッセンスが取り込まれていました。しかしそれ以上に、SD文庫小説版の影響が強かったです。
アリエッタを発見した当時のヴァンの姿も出ました。恐らく『マ王』漫画版外伝の、二年前・七年前のヴァンを基にしたオリジナルデザインですが、服が微妙に違うのと髪がやや短くてチョンマゲぽいのと髭がマバラな以外は現在と殆ど変わってない。 ……アリエッタ発見当時のヴァンって、九年以上前のはずですから、十八歳かそこらですよね。老け過ぎだー(苦笑)。十六歳の時はあんなにイケメンだったのに。二年の間に何があったの兄さん!? 回想にオリジナルイオンも登場しましたが、髪飾りを外すことでレプリカイオンとの識別点を設けていたのは有り難かったです。 彼はシンクに近い、虚無的で皮肉な性格だったそうですが、アリエッタの回想の中ではひたすらに優しい。そうだよね、アリエッタに対しては常にこうだったんだ、互いに家族を求めていたんだよねと納得しつつ、切ない気分に襲われました。
以下は重箱の隅ツッコミです。読みたい方だけどうぞ。 アバンは前回の続き。 ルークたちが教会の入口で今後の行動について相談していると、教会の中からライガを従えたアリエッタが出現。イオンを殺したとアニスを糾弾し、決闘を申し込んで立ち去る。 ライガに乗ったアリエッタが駆け去る時、ルークとガイの驚愕した顔をぐっとズームにして映して、一瞬、二人がライガに襲われるっ? と思わせたのは面白かったです。び、びっくりしたっ(笑)。
それはそうと。 アニメ版、前回のサブタイトルは「最期の 「聖なる 原作ルークたちは、イオンが最期に詠んだこの預言を手掛かりに、キムラスカの音機関都市ベルケンドへ向かいます。…預言に頼らない世界を作ろうとしているのに、それに頼って行動する矛盾に そして、そのベルケンドで、ルークは《穢れた気を浄化する救いの術》、己の命と引き換えにした障気中和の方法を知るのです。
ところがアニメ版では。誰一人としてイオンの遺した預言について口にしませんでした。 #教会の出入り口の階段にたむろしているルークたち。 えええええええ……!(汗) 他に手掛かりもないってそんな。 「イオン様の言葉を無視するの? お願いだから、そんな事しないで」と原作アニスは泣きそうな様子で言っていましたけど。アニメ版ではイオンの預言はスルーかい! 泣けた。 ストーリー圧縮のため再構成するのはいいんですが、エピソードの繋がりをブツッと切っちゃわなくてもいいのに。ティアの台詞の後、ルークに「イオンの預言も気になるけど、今はアッシュの話を聞きたい。あいつは何か知ってる筈だ」と言わせるとか、繋がりを殺さない会話のさせようはあったのでは。
さて。前回に引き続いて、今回も怒涛のストーリー圧縮がなされています。 この辺り、原作の展開は以下の通り。複数の要素が並列進行しており、複雑です。
この長〜〜い、複雑なストーリーを、アニメ版は超圧縮・単純化。
全ての情報がジェイドからもたらされてますね。どんだけ便利キャラ扱いなのか(笑)。
そして、世界の不安とシンクロして描かれるはずの、ルークの存在意義の悩みには、相変わらず殆ど触れません。アッシュと会った後、俺はやっぱり劣化したレプリカなんだと落ち込む描写と、フェレス島のフォミクリー施設を破壊する時に(レプリカなんて……俺一人でたくさんだ)と思う描写は残してありましたが。 限られた尺の中で何を削りどれを残すのか考えれば、無くても物語の外枠は維持出来る《ルークの悩み》を消すしかないんだろーなぁ…とは理解できます。 でも、寂しい。秋のはじめに白茶けたセミの抜け殻を見つけた時のように侘しい。 勝手な意見ですが、レプリカ編冒頭の《ルークの悩み》エピソードをカットしたのが痛かったと思います。そこでしっかり語っておけば、後は、何かの折にふっと辛そうな顔をさせるだけで、ああルークはまだあの件で悩んでるんだなと、視聴者に感じさせることができたよーな気がします。
ジェイドの提案により、アッシュを追ってロニール雪山へ。 第17話と同じ防寒着を着ていました。でもあの時は戦闘時に脱ぎ捨ててましたし、雪崩でルークたち以外の一切が押し流されちゃったはず。ってことは、同じデザインのを新しく買ったのかな。そしてルークは今度も自分で、背中部分に剣出し用のスリット入れた、とか(笑)。 「おいルーク。また背中が寒いって騒ぐんじゃないのか?」「いーんだよ! これが俺の信念なんだから」「安い信念ですねぇ」なんつー会話をゆるりと妄想。 ミュウが、ルークの防寒着の胸の中に隠れてて、すぽっと頭を出して喋ったのが可愛かったです♥ ティアはきっと自分の胸にミュウを入れたかっただろうけど、「みゅうぅう。ティアさんお胸が大きくて苦しいですの〜」とか試したミュウに言われ、丁重に断られて涙を呑んだに違いない。
漆黒の翼とは行き会いませんでした。彼らがアッシュとナタリアの仲を揶揄するエピソードが消滅。 ルークはセフィロトの入口で、文字の刻まれた銀色のロケットを拾う。 (新暦1999年。我が娘メリルの誕生の記念に……?) あ。これは修正しないんですね。原作によればナタリアの誕生日は1月37日。ルークが親善大使としてバチカル出発したのは2018年4月3日以降。ナタリアが1999年の生まれだと、パーティ参入した時には既に19歳です。でも公式設定上、ナタリアは18歳。 インゴベルト王との対面時、原作で「お父様の傍で十七年過ごした」と言っていたのを、アニメ版は「十八年」に修正していました。だから誕生年も新暦2000年に修正するものと思ってたのに…。尤も、アニメ版では誕生月日を明かしてないので、アニメナタリアの誕生日を初夏以降に設定し直したと考えれば、ちゃんと辻褄は合います。(そっちの方が、ルークより一つ年上だと感覚的に掴み易くてイイかも。アニメ版はイオンの身長を低く設定し直してますし、これもそうした修正の一つとか。) 原作だとここでロケットの中の赤ん坊の写真を見ますが(《ルークの日記》に写真について書いてあります)、アニメ版は蓋の文字を読んだだけ。写真を見るのは次回回しかな。
パッセージリング前で、探す何かが見つからず苛立っている様子のアッシュを発見。 何だか変わった探し方をしていました。片手を伸ばしてリング周辺の宙空に触れると、そこに小さな譜陣が出る。そうして周囲のあちこちを触って回っている。 原作だと、ローレライの剣をかざして宝珠の反応を探るという方法でしたが…。ローレライの剣と宝珠が対の存在であるのを利用して。
原作の、シュレーの丘のセフィロトとロニール雪山のセフィロト、二カ所でのエピソードをまとめて語っていました。 簡素化して設定が分かり易いし、ジェイドがいるおかげで説明がスラスラ進む。おおお。イイっスね。
にしても。アニメルークは《栄光を掴む者》がヴァンのことだと、とっくの前から知っていた。それが私を捕らえると言うローレライの声も覚えていた。なのに、ここに至るまでヴァン復活の可能性に全く思い至らなかったし、仲間に相談する必要性すら感じなかったんですか。 すんごいア……ゲフン、うっかりさんですね。 しかも、自分のうっかりのせいで後手に回ったのに、その点でうしろめたそうな様子がないし、仲間の誰も怒らない。驚きすらしない。なんだろうこのメリハリの無さ。原作みたいに「どうしてもっと早く言わなかったんだ」と、一言ルークに怒ったってよかったと思うけど。ミスしたら叱られなきゃ変ですよ。原作以上のうっかりぶりなのに。 …叱らせたら、ルークが古代イスパニア語を習っていないことや教育係だったガイの後悔まで語らなければならず、尺が足りないから? そこまでセットにしないとギスギスになりますもんね。うむむ。
細かいことですが、アッシュに「お前があの時、ローレライの宝珠を受け取っていれば、こんなことにはならなかったんだ!」と言われて、すぐにルークが『アッシュ、ルーク! 鍵を送る! その鍵で私を解放してほしい!』というローレライの言葉を連想するのは、ちょっと強引、つーか分かりづらい。 だってアニメ版では、《ローレライの鍵》が剣と宝珠からなるユリアの秘宝だということを説明したこと無いから。原作だと崩落編の時点で説明してるんですけどね。 アッシュの台詞を「お前が宝珠を、ローレライの鍵を受け取れていれば、こんなことにはならなかったんだ!」とかにしといてほしかった視聴者ゴコロ。 ちなみに原作では「おまえが! おまえがローレライから鍵を受け取っていれば、こんなことにはなっていなかったんだ!」と言ってたデス。
怒ったアッシュがルークの胸倉を掴んで剣を突き付けるという演出の強化あり。けれど、ティアもガイもナタリアも落ち着いたもので、「やめて!」と悲鳴をあげたりしない。驚いた顔すらしない。みんなアッシュをすんごく信頼してるのね。ガイがゆっくり近づいて、刃先を掴んでぐっと下ろさせてました。兄貴分が余裕でたしなめた感じ。カッコイ〜!
なお、今回もティアにヒロイン補正が掛かっていました。原作のティアは、アッシュとルークが言い争っていると「やめなさい! 二人とも喧嘩している場合じゃないでしょう?」と叱りつけて黙らせますが、アニメのティアは慎ましく黙っています。キツい言動は見せません。俺はアッシュより劣ってるんだと内心で落ち込むルークを、背後から《私にはあなたの気持ちが分かっているわ》って感じに心配げに見つめる描写が追加でした。 とは言え、本編ドラマCD版のようにアッシュを平手打ちして罵るというのもやり過ぎな気がしますんで、これでいい…。 同じ原作を基にして、それぞれほんの半歩分だけアレンジを加えて。けれど逆方向に踏み出しているため、本編ドラマCD版とTVアニメ版のティアの言動は、ところどころ別人のよう。面白いです。
ルークが、「協力しよう、一緒に来てくれ」とアッシュに要請する要素が完全カット。 …そうか。アニメルークはここでやっと《俺はアッシュより劣っている》と思ったぐらいで、《劣化した偽物の俺には存在価値がないから、本物のアッシュに来てもらった方がいい》と、卑屈を極めるには至ってないんですね。
それはそうと。アッシュがローレライの剣を受け取った時の回想イメージ。場所、ラジエイトゲートのパッセージリング前……ですね。どう見ても。アブソーブゲート決戦時、原作通りラジエイトゲートから力を送ってくれたってことですか。 でも18話のノエルの話を聞く限り、アッシュはアブソーブゲート決戦時(一ヶ月前)にはアルビオール3号機を借りてない感じ。アルビオールも使わず、あの短時間で、加えて負傷の身でありながら、 …ノエルが、一ヶ月前にアッシュが3号機を借りたことを、兄やアストンから聞きそびれていたとでも思うしかないですね。 それにしたって、アニメ版は原作と状況が違うので、アッシュがそうまでしてラジエイトゲートに行かなければならなかった理由が全然ないのですが…。謎。 アブソーブゲートはラジエイトゲートと対だから逆流を止める手助けが出来るかもと思ったとか、そういう風に考えればいいのでしょうか。
ジェイドが、宝珠探索はアッシュに任せて我々は障気問題に専念しましょうと言います。 障気を止めるか封印する方法を探すってこと? かと思いきや。 「マルクトの情報部から、報告がありました。 ……あのー。障気と《第七音素を大量消費する島》に、何の関係が(汗)。 なんか噛み合ってない。障気問題に専念しましょう、じゃなくて、逃亡したモースを探しましょうとか、六神将やヴァンの動向を探りましょうとか言う方がよかったんじゃ…。 「宝珠はアッシュに任せて、我々も出来ることをやりましょう。気になることがあるんです」「マルクト軍が、第七音素の大量消費地点を発見しました。海図にもない小さな島だそうですが」「ええ。レプリカ製造には大量の第七音素を使います」 とかいう感じで、その島に、レプリカを大量製造しているモース、もしくはレプリカ大地計画を進めるヴァンの拠点があるのでは? って感じに持って行った方が良かったんじゃないかなぁと、視聴者としては思いました。話の繋ぎ方がなんか変だった。
フェレス島に移動します。 全体的に紫がかった暗い画面だったんですが、夕方……ってことなんですよ、ね? ここにだけ障気が出てるのかと思って困惑しました。 原作でルークたちが訪れたフェレス島は、推進装置によって中央大海を自在に移動していました。『エピソードバイブル』で明かされた情報によれば、この《移動するフェレス島》はヴァンが作ったレプリカなのだそうです。本物のフェレス島は、十六年前のホド崩落の際、津波に蹂躙され《沈みかけていた》そうで。ホド崩落の影響で地殻に変動が起こり、沈下していたということなのでしょう。 一方、アニメ版は設定が違うようでした。移動していません。なのに《海図に載っていない》と言うことは……ホド崩落で地核が変動して、別の位置に地滑り移動していたってことなのかな。それとも海に沈んでたのが、何かの原因で海面が下がって現れた? アニスは「今はもう無い島。海に沈んだフェレス島」と言ってますね。
原作ファンの間で物議をかもした(笑)、ルークの《
原作だと、この島でアリエッタと再会します。潮風の響く廃虚の街の奥、魔物だけを友に泣いていた様子には胸締めつけられたものですが、アニメ版は登場自体がカット。アニスがアリエッタの生い立ちについて語るエピソードは残っていましたが。 よって、アリエッタがルークはアッシュの代わりだと悪意なく言い放つ、ルークにとって残酷なシーンも消滅していました。
私は、赤ん坊時に津波を生き延びたアリエッタは、《沈みかけたフェレス島で》ライガに育てられていたと考えていたのですが、アニメの絵を見るに、揺り籠ごと小舟で海を漂って、どこかの浜辺に漂着し、そこでライガに育てられていました。 そっか。確かにあんな荒れた廃虚の島で、ライガが人間の赤ん坊を食べずに育てるのも変な話ですし、別の土地で育てられたと考えるのが順当なのかな。 うーん。でもフェレス島で発見されたんじゃないと、フェレス島の生き残りだってことが分からないんじゃ…。まあどーでもいいことですね。
保護された(七歳頃の)野生剥き出しのアリエッタが、(五歳頃の)オリジナルイオンに引き会わされる場面の絵は、『マ王』漫画版外伝2を参考したもの。でもオリジナルイオンがやけに大きかった。五歳に見えないですね(苦笑)。
ジェイドが地下への入口を発見。その中には巨大なフォミクリー施設が。 これはSD文庫小説版から採られたアレンジです。モース怪物化時のアレンジと併せて考えるに、偶然似た訳ではない。参考にしたと断定していいと思います。 原作では島で最も高い場所に建つ大きな屋敷の中にあったフォミクリー施設を、地下に変更。……このアレンジを採用したのは、施設の外観を描く手間が省けるからなのかなぁ。その分、尺も稼げるし。
フォミクリー施設は空っぽで、レプリカたちとの問答はありませんでした。とても残念です。
ジェイドがフォミクリー施設を派手に破壊。 するとカメラは突然、廃虚の街にいたモースに移り、爆発音を聞きつけて「何事だ!」と駆けて行く。彼に気付いていなかったルークたちに「貴様ら、何故ここに!」と呼びかけて注目を集め、一方的に喋り。飛んできたディストに、いかにも浅ましく導師の力を求めて、怪物化して廃虚の街を破壊すると、浮上したエルドラントに飛び去ったのでした。 ……何かが変な感じでした。確かにシリアスシーンなのに…笑える、ような? 怪物化したモースがユーモラスな姿だから、空中に恰幅のいいおっさんが張り付けにされるオリジナル演出が愉快だったから、と言うだけじゃなく。 考えてみるに、モース自ら単独で駆け付けてくるうえ、わざわざルークたちに怒鳴って存在を知らしめたからかな、と思いました。だってこの人、国際指名手配されて逃亡中なのに。(^_^;) 隠れているか、大勢の手下に攻撃させるかが普通の悪役ですよね。
多分、原作でフォミクリー機器を破壊するとレプリカたちが出てくるのを、モースが出てくる形に配置変換したってことなんでしょうが。少し強引な感じで違和感があったので、もう少し消化に良く咀嚼してくれてたら有り難かったかもなぁと思いました。 ルークたちがフォミクリー施設に踏み込んだらモースが隠れてて、怪物化してから「もはやレプリカどもなど必要ないわ!」なんてフォミクリー施設ごと廃墟の街を破壊してエルドラントに飛び去るとか。…ますます変ですね。すんません…。
ディストがモースに 原作では、ディストはモースの額に手をかざして、発した微弱な光線で譜陣を刻み込んでいきます。 肉体に譜陣を刻んで それをSD文庫小説版は、ディストが石のようなものをモースの額に貼って押しつけた、という独特な形にアレンジ。アニメ版はこれを完全に踏襲して、青い譜石の欠片のようなものを貼り付けていました。 また、アニメオリジナル演出として、ディストが派手な動作で輝く四つの環を投げつけ、それがモースの四肢を拘束して空中に張り付けにする描写あり。…こういうシーンは美少女で見たいものですね。(^_^;)
怪物化したモースの台詞。『なんだ、この醜い姿は!?』と言っていたのを『なんだこの、体は〜ッ!?』に修正。元人間の怪物を醜いと言わせるのは、イマドキのTV番組ではタブーなのかしら。
モースとディストが飛び去ってすぐに、海中からエルドラントが浮上。恐ろしいことに、フェレス島の真横からヌーッと出てきました。でもアニメですから津波は起こりません。 エルドラントの周囲に付いている爪のような外骨格は、ヴァンが海中で取り付けさせていた対空兵器だと、原作では説明されています。つまり、オリジナルのホドには、あんなの付いていなかった。 原作のガイは、レプリカたちがそれを「新生ホド」と呼ぶのを聞いても、ホドであることをなかなか信じられませんでした。けれどアニメのガイは一目見るなり、「ホドだ。あれはホドだ! あいつらレプリカで、ホドを復活させたんだ!」と断言。尺がないから話も早い。とても分かり易いです。 ここでAパート終了。
Bパートは、モースの全世界放送から。どうも、Aパートから少なくとも半日、下手すれば数日開いているみたいです。 ちょこちょこ削除・短縮化されていますが、演説の内容は原作どおり。 ただ、『栄光の大地エルドラント』を『栄光のエルドラント』に略してたのはどうかと思いました。(^_^;) 色んな意味で。
精神汚染の進んだモースの演技は、原作版の声優さんの方がエキセントリックで好きだったかも。
マルクト軍の艦隊が、モースの演説を無視してエルドラントを砲撃、というアニメオリジナルエピソードが入れられていました。いきなり宣戦布告か。実際、預言に従うならマルクト帝国は今年で滅亡ですもんね。でも砲弾はプラネットストーム状の障壁に阻まれて効果をなくしてしまう。
グランコクマのどこか……マルクト軍本部前? で、その報告をルークたちがジェイドから聞いていると、アリエッタの魔物(ライガル)が出現。アニスに決闘状を渡す。 この辺のエピソードの短縮は、とても上手いと思いました。サクサク進みます。
原作ではチーグルの森に着いてからだった、一人で行こうとするアニスを仲間たちが止めて一緒に行くエピソードが、グランコクマの時点で挿入。うんうん。 会話は、語句の微修正と多少の台詞カットがあるだけで原作どおり。ミュウの台詞は、フェイスチャットからエッセンスを採って追加されてました。アニスの演技は、振り向くタイミング等が変更。アニメは泣き笑い等の繊細な表情が自然に表現できるのがいいですよね。原作より感動的でした。
チーグルの森へ。ルークがイオンとの出会いを思い出したり、ミュウがライガの女王を殺した件の罪悪感を口にするエピソードはカット。でもその方がスッキリしていいのでしょう。
待ち受けていたアリエッタと対峙。 アリエッタの連れている魔物が……ひいふうみい、八匹!? アリエッタ自身を加えると九! ルークたちの戦力は六人なのに。アニス一人で来てたら確実に 原作アリエッタが連れていた魔物は、ライガとフレスベルグ一匹ずつ。アニメ版の方は、ライガ一匹、フレスベルグ三匹、ステレオティス四匹でした。 ……ステレオティスばっか。ライガクイーンの仇討ち戦でもあるのに、ライガは一匹だけなんだ…。決闘状を持ってきたライガルすら不参加。ステレオティス族は義に厚く、ライガ族は意外に個人主義なのだろーか。
決闘前にナタリアの、大体原作どおりの台詞。 「あなたはわたくしたちのことを、助けてくれたではありませんか」 原作アリエッタはルークたちに代わってリグレットと戦ってくれたのですが、アニメ版だとイオン様を助けてと呼びに来ただけなので、助けたと言われるとちょっと不思議な感じかも。
さて。決闘前のアリエッタとの会話には、大幅な変更が行われていました。 一つ。フェレス島で会うエピソードがカットされていた分、ここに《アリエッタにイオンの真実を告げようとすると、アニスが遮って言わせない》というやり取りを挿入。原作では告げようとしたのはルークでしたが、アニメ版ではティアに変更していました。 二つ。アリエッタの持つ《義、正当性》の部分のみを示し、彼女の《罪、視野の狭さ》の一切に触れない。この脚色はSD文庫小説版と同方向。 具体的に言えば、アニスの台詞「自分は虫も殺さないようなこと言わないでよ。ヴァン総長の命令でタルタロスのみんなを殺したくせに。私だって、みんなの仇討ちだよ!」をカットし、戦闘中のジェイドやティアの台詞「私にしてみれば、あなたこそ我が部下たちの仇」「あなたも軍人なら、それが仕事だということを理解なさい!」を採っていません。 スッキリ枝葉を落として、《アリエッタの悲劇的な復讐劇》の要素のみ扱った方が、ずっと分かり易いし後味もいい。原作は含まれる要素が多すぎたとは思うので、これで正解なんだろうと思います。 ただ、原作の方は、アリエッタを一方的な被害者にしていなかった。わざわざ別視点を提示して、いわば混ぜ返していました。
アリエッタは依頼心が強く、物事を殆ど自分の頭で考えていません。ヴァンの計画も《総長は星を変えて救ってくれる》《滅んだ故郷や死んだ家族をフォミクリーで蘇らせてくれる》程度の理解。ヴァンが望むから軍に入り、命じられるまま大勢殺す。親のようなヴァンの言葉に疑問すら感じたことがありません。 イオンを死に追いやった本当の犯人はモース。モースはヴァンに利用されており、アリエッタはモースの命でも動いていました。しかし彼女の憎しみがモースに向くことはなく、ヴァンやモースに協力してきた自身への疑問にも辿り着かない。あるのは、 自分が誰かの仇であり、人殺しの罪を背負っているのであり、ルークたちもその責を負い、自分や周囲を生かすためライガクイーンを殺したということを、知ってはいるけれど考えてはいない。アニスやルークたちを手酷く糾弾します。かつてルークが、ライガクイーンを殺した後でティアを冷血女と罵ったように。自分だけは綺麗な場所にいるような顔で。 これらの点で彼女は、かつてのルークに近い。ただし、ルークが責を負い視野を広げて成長したのに対し、アリエッタは最期まで変わらなかった。《成長しなかったルーク》と言えるのではないでしょうか。 彼女が発露した自主性は、仇討ちという憎しみだけ。原作アニスは、だから決闘を受けたと言っていました。「あいつは生まれてからずっと、ヴァン総長の 私はこのように感じていたので、『テイルズ オブ マガジン Vol.7』の記事に、「大切な人のため、仲間のため、戦い抜いたひとりの少女。その短い人生は、誇り高いものだった。」と書いてあって少し驚きました。誇り高い…。そうか。確かにそういう解釈ができて、きっと間違ってないんですね。
アニスとアリエッタの決闘。 トクナガに乗ったアニスと、ライガに乗ったアリエッタの肉弾戦は、大迫力でした! WEB上のどこの感想を拝見しても絶賛されていた部分です。 実際、今までの戦闘シーンで一、二を争う燃え度だと思いました。アニスとアリエッタのぶつかり合いの合間に、最初は仲間たちの戦闘という周囲の状況が入り。次第にアニスたちの内面に入って行って、それぞれのイオンとの交流や別れを回想。アニスはルークたち一人一人の顔をも思い浮かべるけれど、アリエッタに浮かぶのはどこまでもイオンだけ。二人の少女のイオンを呼ぶ内心の声が高まっていき、ついに口に出してその名を絶叫、秘奥義で激突する! 音楽との相乗効果も良くて、グイグイ惹き込まれて高揚しました。 戦闘の演出は、原作ゲームを意識したものになっていました。ナタリアが矢を放つと、ティアが譜陣を出して威力を強化したり。 そしてアニスの譜術・ネガティブゲイト。譜こそ唱えなかったものの、エフェクトが原作そっくりに作ってありました。おー! でもイービルライトは、掲げたヌイグルミからではなく、アリエッタの全身から(…口から?)光線発してた(笑)。激しく動くライガにまたがりつつヌイグルミを持たせ続けるのが、絵的に難しかったからなんでしょうね。差し伸ばした片手から発する、とかなら出来た気もするけど、何かが無理だったのか。
#トクナガに乗ったアニス、アリエッタめがけ疾駆しながら片手を差し伸ばし、譜術を放つ
アニメ版には、死に瀕したアリエッタが亡き親者たちの幻を見て救われるという、原作にないエピソードが挿入されています。原作とアニメ版の方向性の違いが、今までで最も明瞭に示されていると感じました。
アニメ版の脚色には泣かされて、とっても良かった。アリエッタの悲劇を強調し、美しい幻を用意して無残な死を和らげる。多くの人が期待する王道的脚色でしょう。幻の光景があまりに美しくて、故に現実のアリエッタが哀れ過ぎて、泣きの涙でした。 原作には、そのような救いは用意されていません。アリエッタはヴァンや魔物たちに無念を詫び、「痛いよぅ……」と泣き声を漏らし、暗闇の中で探すように、もういないイオンの名を呼びながら死んでいくのです。 アニメ版は本当に美しかった。けれど過酷な現実を淡々と描写していた原作の描き方も、私は好きかもな、と思いました。アリエッタは可哀想だけれど、愚かでもあった。そして死は、哀れな子供であっても容赦せず、冷酷に平等にもたらされる。
原作は、一つの視点に没入し過ぎることを忌避しているように思います。 それは、敵であるヴァンやモースにもそれぞれの正義・信念がある点にも現れていますし、ナタリアが王族として頑張ろうと決意を新たにしている背後でジェイドに王制批判させる点にも現れている。レプリカに居場所はないと落ち込むルークを、ティアがレプリカを受け入れない世界の方がおかしいと励ますと、ガイが、けれどレプリカのために命を落とすオリジナルがいるのも確かだ、と言ってしまう。 アリエッタは可哀想です。特殊な生い立ちゆえ、ああならざるを得なかった。けれど原作は、彼女の《狭さ》を指摘することを躊躇しません。 そしてまた、下手な救いをもたらさない。……根の部分が優しいので、それでも凄惨にはならないのですが。
世の中には複数の価値観があり、人によって見方によって正解は異なる。だからあれも正しいしこれも正しい。実はこれは間違いかもしれない。 原作のこの揺さぶりが、作品テーマを分かりにくくし、作中の価値観をぼやけさせているのも確かです。主張があっちに行ったりこっちに行ったり、肯定したと思えばチラリと裏返したり。いちいち混ぜ返されて落ち着かない。アニメ版がそこを整理して、分かり易くスッキリさせたのは当然だろーなぁとも思います。 尤も、世の中に面白い物語は沢山あるのに、私が『アビス』にこれだけ魅了されてしまったのは、このモヤザラ感があるからこそなのかもな、と今回のアニメを見て思いました。いやに考えさせられてしまうんですよね、原作は。(^_^;)
アリエッタの死後、原作アニスはその場にへたり込んでしまい、アリエッタの亡骸にすがるようにして「アリエッタ……。ごめんね。……あんたのこと大嫌いだったけど……だけど……ごめんね……」と謝ります。ラルゴは「敵の死体に泣いて謝るなんてのはやめるんだ、アニス」「敵に情けをかけられては侮辱されたも同じだ」と言う。アニスは「……うん……」と、泣くことをこらえます。 アニメ版はニュアンスが違っていました。 アニスはアリエッタに何も言わない。ラルゴがアリエッタの亡骸を抱いて立ち去ろうとすると、追い縋るように駆け寄って「アリエッター!」と呼んだだけ。するとラルゴがギッと睨んで、苛烈な口調で言うのです。「やめろアニス! 敵に情けをかけられては、侮辱されたも同然だ」。アニスは何も言えず、殆ど泣き顔で悲しそうにしていました。 原作ラルゴは、敵のアニスに対してもどこか年長者的な、戦士の心得を説くような雰囲気がありましたが(他のエピソードも参照するに、アニスとラルゴは教団である程度同僚としての付き合いがあったらしいのです)、アニメラルゴは敵意が強めな感じ。原作アニスはラルゴの言葉を素直に聞いて懺悔を…言い訳をやめる、痛々しいほどの強さを見せていましたが、アニメのアニスは普通の子供って感じですね。
角が立ちそうなところは沈黙で曖昧化した、という感じでした。原作アニスの「あんたのこと大嫌いだったけど……だけど……ごめんね……」という台詞、私はとても納得できたのですが、SD文庫小説版では《そんなことはない。アニスは本当はアリエッタが好きで、大事に思っていたはずだ》と強いて語り直していましたし。そうか、人によっては全く共感し難いのだろうと思いました。
アリエッタは自分の目的のために命をかけて死んだ、だから同情は侮辱だとラルゴは言います。 この台詞を受けた原作フェイスチャット『それぞれの想い、かなえたい願い』は、ガイというキャラクターを知る上で重要で、原作のレムの塔前や最終決戦前の彼の言動にも繋がると思っています。なので、カットは妥当で予想通りでしたけど、やっぱり少し残念だなと思いました。 (原作・フェイスチャット『それぞれの想い、かなえたい願い』) ヴァンやラルゴ、リグレット。結果的にアリエッタも、目的のために身を捨てていました。ヴァンはレプリカ世界を作って《人類》を救い、引き換えに、自分含むオリジナルの人類全てを犠牲にしようとしていた。また、そこに至る過程で自身の命を削ることも アニメで採られるのか分かりませんが、原作の最終決戦直前、ガイはルークにこう言います。 「俺は酷なことを言ってる。生きて生きて生き抜いて、恨み、憎しみ、悲しみ、怒り……全部しょいこまなけりゃならないってな。でも、おまえだけに背負わせたりはしないぜ。俺もおまえと同じだ。世界中がおまえのやってきたことを非難しても、俺はおまえの味方だ。俺はヴァンの六神将とは違うぜ。自分も生き抜いた上におまえも助けてやる」 ラルゴはアリエッタの決闘を止めず、イオンの真実も告げず、その結果の死も、命をかけたのだから哀れむなと矜持高く言い切りました。目的のために命をかけるべきと考え、死してもそれを誇りとすら思う。それがラルゴたちの信念。 けれどガイは違う信念を持っている。命を捨てても目的を果たすのではなく、目的を果たして、石にかじりついてでも生きるのだと。
ラルゴは、アリエッタにイオンの真実を告げなかったのはヴァンの優しさだと言います。真実を知れば彼女は自殺していただろうから、と。『マ王』漫画版外伝2によれば、亡くなったオリジナルイオン自身が、可哀想だから自分の死をアリエッタに告げないようにとヴァンに言い遺しています。 確かにアリエッタは自殺したのかもしれない。でも、死ななかったのかもしれません。残酷な現実が死ぬほどの苦しみをもたらすとしても、踏み越えて、どう《生きる》かを自分の頭で考えるようになったのかもしれない。ルークのように。 私はそう思うので、アリエッタが真相を知らないまま、狭い世界の中で死んでいったことは、やはり残念で、理不尽だと思いました。
アリエッタの亡骸を抱いたラルゴは、「次に会うのはお前たちの死ぬ時だ。アリエッタの仇、取らせてもらう」と言い残して立ち去ります。 原作では「次に会う時はおまえたちを殺す時だ」と言ってたんですが、どうも、TVアニメでは「殺す」という表現がタブーっぽいですね。 ナタリアの実父関連のエピソードは、ここでは全く発生しません。ルークは黙ってラルゴを見送る。ナタリアとラルゴの会話も一切発生せず。 ルークの肩にしがみついたミュウの、恐ろしそうな深刻な表情が可愛かったです。 そんな感じで、立ち去るラルゴのバックに微笑むイオンの顔をオーバーラップさせつつ、今回は終了でした。
今回の総論。
ではまた次回。 |