# 23 悲しき決別脚本:加藤陽一/コンテ:佐藤真人/演出:佐藤照雄/作画監督:佐久間信一 プラネットストームを停止させるお話。 原作では、アブソーブゲートとラジエイトゲートを一箇所ずつ、全員で訪れて閉じますが、設定を練り直し、二手に分かれて同時に閉じる形に再構成してありました。 この再構成は面白かったです。設定の変更も、こういう感じだとイイですね。(^−^)
ただ、残念……いや、不思議に思った部分もありました。前回のラスト、ルークは自分の死を突き付けられ、ティアはそれを知ってしまう。なのに、今回全くそれを引いたエピソードがなかったのです。 次回に関連エピソードを回しているようですが、鉄は熱いうちに打てと言いますし、今回にも是非入れてほしかったです。と言いますか、普通に入るものと思っていたので、肩透かしされて受け身なく地面に倒れた気分でした。あれ? え? ないの? と。
絵は綺麗でした。凛々しい表情のナタリアが素敵♥
以下は重箱の隅ツッコミです。読みたい方だけどうぞ。 アバンは《前回のハイライト》でした。 しかしどうせなら、この尺を使って死に怯えるルークを見せてほしかったなァ、なんてワガママなことを、観終わってから思いました。原作フェイスチャット『散り逝く運命』(死にたくない、というルークの独白)くらいなら、少し詰めれば今回のアバンの尺に充分入ったし。 また、原作フェイスチャット『生きる喜び』(ルークが空が綺麗だ、九死に一生を得て生きる喜びを知った、と幾分茶化して言い出す奴)は非常に印象的だったので、エッセンスすら採られなかったのは残念、と言うより、不思議でした。 まあ、アニメ版では空が障気に覆われることが殆どなく、ずーっと綺麗な青空でしたから、感動も半減だったでしょうけど…。
Aパートは、バチカル城の謁見の間からスタート。 インゴベルト王「ルーク。すまなかった。死にゆくそなたを私は止めることができなかった」 この短い会話で、原作の『ファブレ子爵』『宝刀ガルディオス』イベント、公爵がラルゴに「我が息子は二人とも生きている」と言う、メインシナリオ部分のニュアンスをまとめてあるのだと思います。それは素晴らしいです。 ただ、ファブレ公爵の台詞を聞いて、少しモヤッとした気分になりました。《誇りに思う》…それだけ? ルークはほぼ確実にあの場で死ぬはずで、ここで息をしているのは奇跡なんですよ。ルークはルークで無表情だし。 ファブレ公爵はお国大事で、貴族の中の貴族、軍人の中の軍人。民のために命を投げ出す行動を《誇り》と思うのも当然でしょう。だからこそ、 そんなファブレ公爵は、けれど変わったはずです。預言に逆らい、息子に正面から向き合うことに決めた。愛することから逃げまいと。 だから、「誇りに思う」だけで済ませてほしくなかった気がしました。これだけだと、民のために命を捨てる、《役に立つ》息子じゃないと、父親として誇らしく思えないのかな、なんて思えちゃう。 インゴベルト王「ルーク。障気のことはすまなかった」 みたいな感じだったら嬉しかったなぁ。原作の公爵も、子爵イベントでは嬉しそうに誇らしげにしてますが、それは息子が勲章をもらったからだけでなく、生きて帰ってきたからこそではなかろーかと。
この会話に続けて、ラルゴが新生ローレライ教団の使者として謁見の間に登場します。モースに恭順せずというキムラスカ王国の返答を得て立ち去りかけた時、ルークが呼び止めて、例のロケットを投げ渡す。 ルーク「待てよ!」 原作ではアリエッタとの決闘直後にあった《ロケットを投げ渡す》エピソードを合成しているため、会話が変形しています。
原作ラルゴは、キムラスカの不恭順の意思を聞くとすぐ、ルークに「お前がレムの塔でレプリカを消したせいで、ユリアの預言どおりに戦争が起こり始めているぞ、預言は恐ろしいものだなぁ」という意味の皮肉を言います。が、すかさず公爵が口を挟む。「それは詭弁だ。第一、我が息子は二人とも生きている」。ルークは父の言葉に感じ入った様子を見せ、ラルゴに向かって毅然と「俺たちは生き残る未来を選び取ってみせる。世界を滅ぼさせたりしない」と言い返すのです。 アニメ版では消滅したこのやりとりが、私は好きでした。 ルークが卑屈を脱却し、真に《変わった》最大の理由は、障気中和の際に《生への執着》を強烈に感じたこと。でも父親の愛情を実感できたことも、大きな要因だったんじゃないかなと思えたからです。 設定上、《ルーク》は父親の愛情に飢えていて、故に、父性あるヴァンに強く傾倒したことになっています。人間にとって原世界たる親との関係は、やはり無視できない。父親に愛されていないという不安――足元がグラグラ揺れていたために、ヴァンや《英雄になれる また、父親の愛情を実感できるようになったのは、ルーク自身が頑張って《変わった》からでもある気がします。ルークが変わった姿を見て父親は向き直った。そしてルーク自身も、障気中和を経て《周囲に認められなくても生きたい》と悟ったことで、逆に、周囲からの感情を素直に受け入れられるようになった。んじゃないかなーなんて。
ラルゴが退出すると、インゴベルト王はナタリアとルークに、後で自分の私室に来るように命じます。キョトンとしたなっちゃんの顔が可愛かったです。そしてついに、実父がラルゴであることをナタリアに告げるのでした。 ちょっと気になったんですが、王が実父の居場所が分かったとナタリアに告げた後、原作では「生きていらっしゃいますの?」とだけ言っていたのを「本当ですの? お父様は生きていらっしゃいますの?」に変えてありました。養父の前で気安く「お父様」と呼ぶのはどうなんだろう。微妙。 原作ではパーティメンバー全員が王の私室に行きますが、アニメ版では本当に、王とナタリアとルークだけ。王とナタリアは席についていましたが、ルークは何故か、部屋に置いてある巨大地球儀になついていました(笑)。
ここ以降は、大幅な再構成が行われていました。 原作
アニメ版
原作
アニメ版
プラネットストームが止まれば無尽蔵にあった譜業や譜術のエネルギーが枯渇しますが、アニメ版ではその点には触れませんでした。原作では障気中和前に各国で会議が行われていましたが、アニメ版ではなんとなく止めることになっています。
ティアがナタリアを元気付けるエピソードは、話の内容が簡略化され、一部のみが採られていました。 ティアはナタリアに語ります。兄の計画を知った時、理解できずに物語のように感じたこと。肉親だからこそ、刺し違えてでも止めようと思ったこと。 アニメ版はここで話が終わっています。狂った肉親を討つ過酷な決意をした強く立派なティア。ナタリアもそれに倣う決意をした、という感じに見えます。スッキリ綺麗です。 原作の方は、もっと長く話が続いていて、結論が不明になっています。 ティアは続けて言うのです。でも、兄に初めて刃を向けた時の自分は、今思えば何も見えていなかった。追い詰められた獣のようなものだったと。だからナタリアは自分と同じ選択をしない方がいいと。肉親同士で戦わなくていいと気遣ってくれます。 そう言われてグッと来たものの、ナタリアは、やはりわたくしはこの世界を大切にしたい(ラルゴと戦わねば)と言い、ユリアの預言に詠まれぬレプリカ――ルークという希望に賭けたいと言う。するとティアは頷き、言うのでした。 「ええ。ルークは、人が変われることを教えてくれた。 ナタリアは、自分にはラルゴが世界を恨んだ気持ちが分かる気もすると言い出します。けれどラルゴのやることは許せない。でも…と。ティアは最後に言います。 「ナタリア。全てを理屈で考えることはないと思うの」「私が理屈でしか考えられない人間だから言うのよ。多分、流されることでしか得られない結論も……あるのだと思うわ」 結局は、幾ら考えても答えが出ない問題はあり、なるようにしかならない。ってことですかね。(^_^;) 真理だけど。何も考えないのは駄目だけど、考え過ぎても駄目なもの、か。
アルビオールはアブソーブゲートに到着。降りたティア、ジェイド、アニスを見送ってから、ルーク、ナタリア、ガイ、ミュウはラジエイトゲートへ向かいました。ここでAパート終了です。 この先は、アブソーブゲートのティアチームと、ラジエイトゲートのルークチームに、交互に話が切り替わって進みます。 原作では、ラルゴ戦はアブソーブゲート、モース戦はラジエイトゲートで行われますが、アニメ版では逆になりました。
Bパート。まずはティアチームからスタートです。 以前ヴァンと戦った場所に到達すると、イオンのレプリカ(フローリアン)と怪物化したモースがいました。 原作のフローリアンは、初出時はボロ服で裸足で髪もボサボサな感じでしたが、アニメ版は小奇麗な格好をしてました。ちゃんと靴を履いていましたし。
モースはティア達を見ると哄笑し、ちょうど面白い奴が来る、と言います。果たして、地核の底から金の光が立ち昇り、ヴァンが姿を現しました。 久々のヴァン 原作のヴァン復活は、出現の際に凄い衝撃波みたいなのが出て派手なんですけど、アニメ版はかな〜り地味でした。 原作では、復活したヴァンを、リグレット、ラルゴ、シンクが出迎えに来ていましたが、アニメ版では誰も来てません。ちょっと可哀想。(^_^;)
モースの居丈高な態度にあからさまにムスッとしつつ、ヴァンは我が身に モースは第七譜石を入手すると、フローリアンを鷲掴みにしていそいそと外へ。後を追おうとしたティア達の前にヴァンが立ち塞がる。…何故か横向きで立ち止まってニヒルに笑うのでした。ぷぷぷ。 原作だと、まずモース、次にヴァンが外に出て行って、追おうとしたルークたちをリグレットやラルゴが足止めするんですけどね。部下が来てないのでラスボス自ら足止めか。大変だ。
ヴァンは自分が復活した理由を語ります。……と思ったら、突然右手が透けて全身発光しつつ悶え苦しみ始めました。おいおいどーした。たぶん視聴者と同じ気持ちで困惑するティア達をギッと睨むと、手をかざして衝撃波を放ってなぎ倒す。 どーでもいいけど、衝撃になぎ倒されるシーン、ティアとアニスは大きく悲鳴やうめき声を出してたけど、ジェイドは吹っ飛ばされても叩きつけられてもひと声もなかったです。…ジェイドは悲鳴や苦鳴はあげちゃいけないキャラだったっけ? と、急に気になったり。どうでしたっけ。 イキナリ衝撃波を放ったと思ったら、またイキナリ静かになって、横向きのままじっと佇んでいるヴァン兄さん。ぷぷぷぷ。目だけ動かして、ティアに次に会ったら容赦しないと言い残すと、ゆっくり歩いて立ち去ったのでした。流石のジェイドもその ヴァンが殆ど横顔しか見せようとしないのが、なんとも奇妙で愉快でした。顔の片側だけメイクし忘れてるとか寝癖がついてるとか、何かそういう秘密でもあったのでしょうか。それとも、鏡の前で《妹に見せるカッコイイ角度》を研究した成果かな。ぷぷぷぷぷ。
ちなみに原作では、ヴァンの右手が
原作のこのエピソードでは、アッシュが活躍します。 アッシュはヴァンの居場所を捜索していました。ルークたちがゲートを閉じに来た時、偶然にもヴァンが地核から戻ってきていた。彼を迎えに六神将が集結しており、動きを追うアッシュも来ていたのです。 ルークたちがアブソーブゲート深部に入ると、アッシュがラルゴと戦っていました。彼は復活したヴァンを追ってゲートの外へ向かい、ラルゴはルークが引き受けます。 ルークたちはラルゴを倒し、制御譜陣に降りてゲートを閉鎖。その瞬間、ルークの意識はプラネットストームに吸い込まれ、過去の星の記憶らしきものを見ます。アッシュとシンクの戦闘という現在の情景をも。ルークが呼びかけるとアッシュに頭痛が起こり、声が通じました。今まではルークから通信はできなかったのに。アッシュは俺に指図するなと激怒し、ルークの意識を跳ね飛ばして拒絶します。 ルークは気を取り戻し、仲間たちと共にゲートの外へ向かう。ルークの持つローレライの宝珠の影響で、モースは精神汚染を悪化させて飛び去り、ヴァンは体が分解しかけて退散しました。 ヴァンはこれまではアッシュにしか誘いの声をかけることはありませんでしたが、今回はルークにも声をかけました。 ヴァンが去った後、アッシュはいつもと違ってルークにキツい態度をとらず、けれどどこか哀しそうな様子で立ち去ったのでした。
アッシュはヴァンと対立しながらも、この時点ではまだ、養父とも言える彼への依存から脱却しきれていません。ですからヴァンの誘いを激しく拒絶しつつも、レプリカが決して必要とされないことに優越感を感じていたはずです。 ところが、ヴァンがレプリカをも誘いました。今までは、レプリカでは駄目だ、私に必要なのはオリジナルのお前だけだと言っていたのに。 ルークとしての居場所。そしてアッシュとしての居場所さえも、全て取られた。このレプリカに。 加えて、アッシュは自分がもうすぐ 俺は、全てをレプリカに譲って消えるしかない。
完全同位体のアッシュとルークですが、結局は殆ど付き合いのない別個の存在。ルークはアッシュの悲しみに気付けません。 ガイ「アッシュの奴……なんかおまえに優しくなったな」 アッシュの内心の異変に気付き、怪しんだり心配したりしたのは、彼の幼なじみであるガイとナタリアなのでした。 ……ルークとアッシュは別の人生を歩んでて、周囲の人々とも、それぞれ違う関わりを持っている。同じじゃない。ちゃんと自分の立ち位置を持ってるのですよね。
以上の流れはアニメ版ではゴソッとカットです。 ティア達が立ち去るヴァンを見送ったところで、場面はルークチームに切り替わります。でも、ゲート内に降りていく姿をチラッと映しただけで、すぐにティアチームに戻る。
ティア達はゲートの外に駆け戻り(オイ、ゲート閉鎖補助の仕事は!?)、フローリアンが第七譜石から アニスがフローリアンを庇い、ティアはモースに正気に返って下さいと呼びかけますが、逆に『しねぇーーー!?』と襲いかかられ……。 ってところで、またルークチームに切り替わります。せわしないですね。(^_^;)
ルークたちがパッセージリングに到達すると、ラルゴが待っていました。ナタリアは素早く矢をつがえ、その真意を問いただす。 ナタリア「……お前は……! ……お前は……ラルゴ!(弓矢を構える) ……お前は、何故ヴァンに協力しているのです」 ラルゴは、妻を失い娘を奪われた過去を語りました。原作ではラルゴの語りのみでしたが、アニメ版では回想イメージで若き日(30歳)のラルゴが見られました。 おおっ! 若ラルゴ結構カッコいいじゃん! 頭のてっぺんにはアホ毛まであるじゃん! そしてヴァンは、相変わらず老け過ぎだと思いました(笑)。ラルゴはヴァンの最初の仲間だと思われるので、出会った頃はまだ、ヴァンは十代後半か、せいぜい二十代になったばかりかと思うんですが。服装が微妙に違うくらいで今と変わらヌェー。
ラルゴは、ヴァンはローレライ――星の記憶を消すことで人類を 「……そうだ。俺はレプリカの命を喰らって、 原作のこのやりとりは、《ルークが卑屈から脱却している》ことを明示する意味を持っています。 少し前のルークなら、こんなことを言われたら大きく動揺し、罪悪感に苛まれて、しゅんとしてしまっていたことでしょう。俺なんか堂々と生きてちゃいけないんだと卑屈に縮こまっていたことでしょう。けれど今のルークは違う。自分の罪や責任を認めつつ、顔を伏せない。揺らがず立てるようになった。 だからこそラルゴも、満足げに「よく言った。それでこそ倒しがいがあるというものだ」と言ったのだと思います。
ただ。それを前提にしたうえで、ではこの時ルークは何を考えてこう言ったのかという解釈は、人によって結構違っている気がします。 例えば。ルークは、レプリカは存在自体が罪だと結論した。ヴァンに立ち向かったのは、レプリカ世界そのものに正当性がないと思ったから。正当性のあるオリジナルの世界を選び、同胞たるレプリカたちを殺したことを、開き直って宣言している。とか。
私はそう思いません。でも、ルークが障気中和後もずっと《レプリカは存在してはいけないと思っていた》という解釈は、SD文庫小説版をはじめ各所で見られる、根強いものであるように思います。 実はTVアニメ版スタッフさん(の一部?)もそう解釈してらしたのでは、と疑っています。次々回の第25話、アッシュとの対決時に、ルークに「レプリカだけの世界なんて、間違ってる。――俺みたいな思いをする奴は、もう作り出してはいけないんだ!」と泣きそうな声でのオリジナル台詞を言わせていたからです。ギャっ! と思ったのですが、それに関しては25話の感想に書きます。
場面は再び切り替わり、ティアチーム。 前のシーンではモースに攻撃されたティアが悲鳴をあげてたのに、平然とモースを説得しているシーンから再スタート。あれ?(汗) もう話は通じないと、ジェイドが譜術・タービュランスで攻撃。第18話の絵の でもモース様にヒョイっと避けられちゃった! 続いてアニスがトクナガに乗って突進。秘奥義・ でもこれもモース様は軽く受け流しちゃう。『殺してくれるぅうう!』なんて嘲笑いながら強力な譜術で反撃してきます。 無敵な感じのモースを前に、ティアは表情を鋭くすると叫ぶ。 「ごめんなさい……モース様!」
……何かが…何かが釈然としない感じだったのは、ジェイドやアニスの攻撃が蚊の刺すほどにも効果がなかった(当たらなかった)のに、ティアだけ、一撃でモースを倒しちゃったからですね。クリティカル率半端無い。どんだけ神様に愛されてるのティアさん。 ハズレ・ハズレ・大当たりブチッ! なリズムで、やけに呆気なく見えてしまったので、ジェイドやアニスの攻撃もちゃんと当たってた方が良かったんじゃないかなぁという気がしました。 攻撃されボロボロになっても、精神汚染の進んだモースは哄笑しながら攻撃を続ける。で、ティアが耐えきれなくなって「お許しください」ととどめを刺してやる…とか。はは。これじゃ尺に入らないですね。(^_^;)
原作モースは、融けたアイスクリームみたいにどろっと床に広がって蒸発し、醜悪に消えていくんですけど、アニメ版ではちゃんと
原作では、モースの死後、ティアが、許し難い人だけど憎みきれない、この人が信じていた価値観は教団のもので、自分たち教団兵は彼と同罪だからと言います。ルークも頷き、彼が別の時代の大詠師なら、偉人として名を残したかもしれないと言う。 ここでも、複数の価値観が提示されています。 原作ルークは言います。 「モースのやり方が間違っていたことを証明するためにも……。いや、違うな。俺たちなりの未来を掴むためにも、ヴァン モースのやり方をルークたちは認めることができない。でも、間違いだと言い切ることはしないんですね。 アニメ版ではその流れは簡略化され、ティアが「モース様は、ユリアの
原作では、モースを憎んでいただろうアニスが、それでも哀れな死を見て泣いてしまうのですが、アニメ版にはなし。即座にフローリアンに駆け寄って保護していました。
場面はルークチームに切り替わります。 ラルゴとの戦闘は、原作とは流れが変えられてありました。 原作ではアブソーブゲートで戦ったので、床がヴァンが落ちた時のまま大きく割れています。戦いの果てに致命傷を負わされた(兜が砕け、髪が垂れている)ラルゴは、ルークを割れた床から落として道連れにしようとする。危機を見て駆け寄ったガイとアニスより早く、ナタリアの矢がラルゴの背から胸を射抜き、戦いは終わったのでした。 でもアニメ版は、ラルゴの兜が割れなかったです〜。垂れ髪は若ラルゴで見せたからってことかしら。ちょっとがっかり。兜が割れる瞬間を、ケレン味たっぷりなアニメーションで見たかったなぁ。 そして、床が割れてないのでルークが落とされそうになるエピソードもありませんでした。ただ、ラルゴが大鎌の柄の、刃の付いた末端(
これはどうも、SD文庫小説版の脚色を元にしているなと思いました。この小説では、ガイの秘奥義で全身を炎に焼かれ、酷い火傷を負ったラルゴが、ルークを床に叩きつけます。ルークの背中で床に亀裂が走り、床を割って落とす気だと悟ったルークは必死に抵抗しますが効かず。その時、ナタリアの放った矢がラルゴの延髄を射抜き、戦いを終わらせたことになっています。 アニメ版では、ラルゴがルークの足元に亀裂を走らせた後、ガイが放った技でラルゴが全身を炎に焼かれていました。順番は違いますが、これらは原作にはない独特な展開なので、参考にしているのはほぼ間違いないと思います。
ただ、SD文庫小説版のナタリアは容赦なくラルゴを攻撃し、目を射抜いたりして怖い。対してファミ通文庫版小説の方では、仲間たちが戦っている中で一人だけ攻撃できずにいて、最後にルークがピンチになった時、ハッと我に返ってラルゴを仕留めたことになっています。ナタリアの行動に関しては、ファミ通版の方が近いですね。
(原作) (アニメ版)
個人的に、非常に不満だった脚色があります。 ラルゴに剣を弾き飛ばされた後、ルークが観念したように目を閉じる部分です。 どうして? どうして足掻かせなかったんでしょうか。せめてラルゴを睨ませなかったんでしょうか。カッコ悪いから? まさか、 私はそう思いません。命が短いことを悟ったからこそ、強く、死にたくないと思っていると思います。そりゃ、SD文庫小説版のルークは、もう生きることを諦めてるみたいなことを独白してましたが。アレは小説独自の解釈だと思ってます。つか、その小説のルークだって、ラルゴに床に叩きつけられた時は必死に抵抗してたのに。 障気中和後なのに、生を諦めているルークを見せつけられて、とても嫌な気分でした。しょぼしょぼ〜ん…。
原作では、ゲート制御の譜陣はパッセージリングの下にあるのですが、アニメ版ではリングの前で閉鎖作業を行ってました。 アブソーブゲートのリングの前で、遅い、何の反応もないと話し合っているティアチーム。その時、立ち昇り続けていた ……第18話での間違いを適用したまま、ですか。 今回Aパート、台詞と図解では、「記憶粒子を放出するラジエイトゲートと、吸収するアブソーブゲートは、対になって機能しておる」と、ちゃんと説明してたくせに。 申し訳ないですが、設定面に関してTVA版『アビス』は、とてもだらしがないと思います。何回こんなミスを続けたのかな。どうしてこんなにいい加減なんだろう。
ティアは譜歌を詠い始める。一方ラジエイトゲートでは、ルークがリングの前で宝珠を掲げておりました。画面を二つに分割して、作業の様子をステレオ中継でございます。 アブソーブゲートとラジエイトゲートに別れての、惑星規模のシンクロ大作業。なんだかデジャヴです。第18話の、ルークとアッシュの
記憶粒子の流れが停止。遠くエルドラントを包んでいたプラネットストームも消滅。 突然ミュウが喜びの声を上げたので驚きました。いたんだミュウ。てっきりアルビオールでノエルとお留守番してたんだと思ってた…。(巻き戻して確認したら、確かに途中のシーンにもいました 笑) 喜びながらも、ナタリアを気遣うルークとガイ。無理しなくていいと言いますが。 #俯いていた顔を上げ 毅然と言いきった、凛々しいナタリアのアップで今回は終了でした。
今回の総論。
アニメルークは、ヴァンと再会できませんでしたね。 思えば、崩落編ベルケンドでのヴァンとの再会がなかったのにも驚いたものでした。要素をバラバラにして他のシーンでチョコチョコ流用して再構成したから問題ない、ということなのでしょうけど。自分的には分解してほしくない部分だったなぁ。 ルークの物語にとって核となる、重要な部分だったと思うから。 ルークのヴァンとの再会を削ってガイとヴァンの密会を入れ、そのうえジェイドが覗き見する形に変えてた点には、今でも疑問を禁じ得なかったりします(苦笑)。 と言いますか、ぶっちゃけ15話くらいまで、実質の主人公がガイになってると思ってた。(^_^;)
今回ヴァンとルークの再会がなかったのはそれこそ尺の問題で、ヴァンとのやり取りはエルドラント決戦時にまとめられるから、ということだと思います。確かに問題ないけど。ただ、原作ヴァンがルークを仲間に誘って断られた際に「そうでなくてはな」と満足げにする点と、ヴァンが去り際にルークとアッシュに言った台詞、 「全ての屍を踏み越え、我が元へ辿り着け。アッシュ、そしてルークよ。その時、今一度おまえたちに問いかけよう」 が消えちゃったのは、ちょっと残念でした。
ではまた次回。 |