注意!

 

# 4 隠された真実

脚本:面出明美/コンテ:こだま兼嗣/演出:佐藤照雄/作画監督:佐久間信一

 今回の作画、ガイの髪がやけに長く横に流れてました。昔の少年漫画のヒーローみたいだった(笑)。

 

 以下は重箱の隅ツッコミです。読みたい方だけどうぞ。





 今回のアバンは再び《前回のハイライト》のみ。本編のいかにも尺の足りなさげな詰め込みぶりを見ると、これ要らないなぁとつくづく思えてしまいます。

 前回、ルークを庇って二の腕を敵の剣に斬り裂かれ、倒れてしまったティア。今回は、どこかの宿のベッドに寝かされている彼女の姿からスタート。そこがどこなのか全く語られませんが、タイトル画面の背景画から判断するに、セントビナー駐留軍基地ベースの一室みたいです。(にしても、セントビナーのソイルの木は、やっぱり存在自体が消滅してるみたいですね。街の遠景の中に全然見えなかった。)

 ……うぁあーー。《野営》とルークの《人殺しの決意》イベント飛ばしちゃった……。残念。ガイの「……復讐。……なんて、な」とか、泣きそうになりながら、人を殺してでも生き延びる・生き延びさせることを誓うルークとか。あれらのエピソード、アニメで見たかったです。

 野営イベントから辛うじて、ルークとティアの会話のみは持って来てあるんですけど、ニュアンスが全然違うことになっちゃってる、ような?

 今回は、まずは原作版を見てください。

(原作)
#気まずげに目線をそらしたまま、焚き火の前に座るティアの傍らに黙って腰を下ろすルーク
ティア「もう大丈夫なの?」
#不意に声をかけられ、ルークは驚いたようにティアに目を向ける
ルーク「……え……」
ティア「戦うことがつらかったんでしょう? 私はあなたが民間人だってこと知っていたのに、理解できていなかったみたいだわ。ごめんなさい」
#ルーク、再び目線をそらす
ルーク「な……なんでおまえが謝るんだよ。怪我したのはおまえだろ」
#ティア、冷徹に、自分に言い聞かせるように
ティア「軍属である限り、民間人を護るのは義務だもの。そのために負傷したのは私が非力だったということ。それだけ」
#俯くルーク。
ルーク「……変な奴。無理して強がってる風にしか見えねーや」
ティア「そ、そんなことないわ!」
#ルーク、またも目線をそらす
ルーク「ふーん……」

 で、アニメはこれが以下のようになっていました。

(アニメ版)
#宿のベッドに横たわるティア。心配そうに見守っているイオン、ミュウ、ルーク。やがてティアが目を覚ます。笑顔になるミュウ、イオン
ミュウ「ティアさん!」
イオン「ティア。具合はどうですか?」
#半身を起こすティア。不思議そうに
ティア「あ、私…」
#ルーク、声をかけようとするが、言葉になる前に、ドアをノックしてジェイドとガイが入ってくる
ジェイド「気が付きましたか? ティア。傷はどうです。生憎ここには、治癒術を使える第七音譜術士セブンスフォニマーがいなくて」
#ティア、柔らかく微笑んで
ティア「お気遣いありがとうございます、大佐。自分で治癒できますから」
#自分の二の腕に手をかざし、譜術で治癒してしまうティア。包帯を解くと、もう傷痕すらない
ミュウ「治ったですの! 良かったですの!」
#物言いたげにティアを見つめるルーク
ルーク「あ、あの……」
#ティア、ハッとしたようにルークを見上げて
ティア「あなたは大丈夫なの?」
ルーク「えっ?」
#ティア、辛そうな顔で
ティア「私はあなたが民間人だってこと知ってたのに、理解できていなかったみたいだわ。(僅かに目を伏せて)ごめんなさい」
#ルーク、両腕を組んで、少しぶっきらぼうなポーズをとる
ルーク「なんでおまえが謝るんだよ。(ティアを見つめて)怪我したのはおまえだろ」
#ティア、静かな表情で
ティア「軍属である限り、民間人を護るのは義務だもの。そのために負傷したのは」
#治癒した傷の辺りを押さえて、悲しそうに申し訳なさそうに俯いて
ティア「私が非力だったということ。それだけ」
#ジェイド、朗らかに
ジェイド「やー。お二人仲がよろしくて、羨ましいですねぇ」
#驚いた様子のルークとティア。慌てて
ルーク「お、俺たちは別に」
ティア「そんなんじゃありません」
#ジェイド、満面の笑みで
ジェイド「おや! 息もぴったりだ」
ティア「大佐!」
#赤面するルークとティア
ミュウ「ティアさんもご主人さまも真っ赤ですの」
#ミュウを睨むルーク
ルーク「うっせー!」
ミュウ「みゅうっ」
#微笑ましそうに笑っているジェイドとガイ

 

 原作の時点で私が解釈していた、このシーンのティア像は、《強くあろうと頑なに気を張っている少女》でした。

 理想の軍人、憧れのリグレットのような冷徹な女戦士であろうとして、義務と責任でぎゅっと身を固めながらも背筋を伸ばそうとしている。内面は年相応で、慣れない外殻での旅、戦いへの恐れ、兄のこと、ルークを連れ出してしまったという責任、色んな不安に揺れているけれど、それを決しておもてに出そうとしない。絶対に泣かない。それだけの強さがある反面、ルークの直観的な言葉で大きな揺らぎを見せるほどには、少女らしい未熟さも持っている。

 …なーんて思ってたんです。はい、考えすぎ・こだわりすぎでしたねチクショー(笑)。

 初期ティアは原作のままだと(内面を見せまいとしてる分)偉そうで冷たく見えちゃうから、後期ティア並みに優しく柔らかく変えるのが無難だというのは理解できますけど、個人的には、最初からここまで立派にしなくてもよかったと思いました。不器用で未熟なティアとルークがだんだん歩み寄っていくのが好きだったんです。折角の萌えポイントが潰されちゃった…。ティアの成長物語も扱ってほしかったな。

 そしてルークが「無理して強がってる風にしか見えねーや」と言わなかったのも、かなり残念でした。このルーク、好きだったのに。

 

 というか、大佐がルークとティアの仲をからかうのは、第2話でライガの女王を倒した後にやったんですから、他のエピソードを削ってまで同じネタを繰り返さなくてもよかったのでは。なんで繰り返したんだろ?

 自分的には、時期尚早な萌え萌えラブコメを挿入する前に、《生きるという原罪》…《人殺しの決意》についてシリアスに語っておいてほしかった。私にとってはそっちの方が魅力的で重要でした。しかしアニメ版スタッフさんたちの考えではラブコメ優先だったのでした…。あぁああ。

 

 アニスからの伝言だという手紙を読む。原作では一読したジェイドが「どうやら半分はあなた宛のようです」と渡してきたので「イオンならともかく、なんで俺宛なんだよ」と言いつつルークが読んでましたが、アニメ版では最初からイオンが渡されて読んでました。

 それはともかく、アニスの手紙のシーン、聞きながら可愛い内容にティアが微笑み、『だ〜い好きな(うわ、恥ずかしい〜☆ 告っちゃったよぅ♥)ルーク様♥』という部分に共感したミュウが嬉しそうに鳴いてウンウンウンと頷き、《ぽわぽわぽわ〜ん…》だの《キラッ♥》だのアニスのイメージ映像に合わせて効果音が入ってて愉快でした。ここ、ミュウがちょこんと立って耳をゆらゆら揺らす動きが再現されてたのも可愛かったな。

 あと、アニスの手紙にアニス自身の顔やトクナガのイラストが描かれていて面白かった。アニスってイラスト上手なんですね。多芸で羨ましい。他のパーティーメンバーの似顔絵も描いてほしー。

 

 原作ではセントビナーに入る前後にあった、《キムラスカ人なのにマルクトの地理に詳しいとジェイドに指摘されたガイが、卓上旅行が趣味だと誤魔化す》エピソードがここに挿入。原作ではガイは笑顔を崩さないままサラッと答えていて、《意外に食わせ者》な様子を感じさせてましたが、アニメ版ではジェイドに指摘されて一瞬言葉に詰まり、次いでニッコリと柔和に笑って「卓上旅行が趣味なんだ」と言っており、例によって《表情の伏線》が張られていました。

 ホント、ガイの復讐関連に関してはすんごく丁寧ですね。ガイ好きなので嬉しいです。

 

 セントビナーのエピソードはほぼ丸々カット。アニメ版が参考資料として重視しているらしい『マ王』漫画版でも全カットでしたし、実際、ここは省略しても進行にさして差し支えない部分なんですけど。

 ただ、例によってセフィロトに関する説明までもがカットされてしまいました。きっと、実際にセフィロトに行く時に、まとめて説明するんでしょうけど。あと、イオンの正体、イオンとルークが《同じ》なのではないかとジェイドが怪しむ伏線も取り扱わず。

 個人的には、体調を崩したイオンを見てルークがすぐさまセントビナーの宿に戻ることを決める、あのエピソードが削られたのは残念でした。ジェイドが案外優しいところがあるんですねと言うと、ガイが「それがルークのいいところってやつさ。使用人にもお偉いさんにも分け隔てなく横暴だしな」と、からかい混じりにながら誇らしげに言ってた、あれ。仕方ないけど残念。

 あと、原作だとこの辺でルークとティアが《戦争を起こそうとしているのはモースか、ヴァンか》で激しく対立し、それまでとは少し違う感じで険悪になるんですけど、それはカイツールの宿泊施設でヴァンと話すシーンにまとめられていました。

 

 フーブラス川へ。フーブラス橋が落ちた、という辺りは語られず。

 ここは戦闘パートになっていて、戦うみんながカッコ良かった。特に、ガイのカッコ良さは突出してました。浅い川の中を、水を蹴立てて素早く走りながら次々と魔物を斬り伏せる。鮮やかー! 止め絵の美しさとかじゃなく、とにかく動きがカッコイイっ。アニメは凄いなと思う瞬間でした。

 …ところで、前回の《次回予告》映像と比べて、実際に流れた戦闘映像が短くなってたのが気になりました。一、二秒ほどですがカットされてる。予告映像ではガイが亀型の大型魔物の甲羅に飛び乗って両手で剣を突き立てるところまで絵がありましたが、本放送分では飛び乗る直前で切り替えられる。うーん。やっぱり尺がキツキツなんですね。DVDやBDでは足されるのかな。と言うか、本編でカットされた映像も次回予告じゃ見られるよーん、ってサービスなんかなこれ。

 あと、何気に登場魔物がアレンジされてる(苦笑)。ゲコゲコ(蛙)やトータス(大亀)は、デザインはそのままで、色だけ同系統の上位魔物のに変えてありますね。けど見慣れた感じの魔物が見れて嬉しかったです。ザコ魔物の中で一番好きなオタオタ(青いオタマジャクシ)がいたし! オタオタ! オタオタ!(私 大興奮) ゲームのポリゴンキャラだと分からなかったけど尾の先が二股になってたのか。つか、オタオタでけぇな! これが襲ってきたら私なら体当たり一発で死ぬ。って、あれっ? ガイが斬ってたオタオタとルークが斬ってたオタオタ、サイズが違い過ぎない? …ここは個体差だと思っておこう。

 ルークが斬ってた黄色くて耳の大きい、凶暴化したグレムリンみたいな魔物と、ルークを襲ってたのをジェイドが倒した、顔が白いおめんぽくて悪魔系の角が生えてて身体は赤い全身タイツの変質者みたいな魔物は、なんだかよく分かりませんでした。多分、アニメ版のオリジナルデザインなんだと思うんですが…。見覚えがないので、原作にいたとしても、結構奥地の、あまり頻繁に行かない場所にいるんだろうな。

 ティアの第一音素譜歌ナイトメアの演出が、原作ゲームともアニメ第1話とも違う。…結局、何にも囚われずに自由にやるってことなのかな。今回の絵コンテもやってる監督さんは、「技や譜術の動作についての資料も貰っているからゲーム経験者も違和感なく楽しめる」と、インタビュー記事で豪語してらしたのに。ジェイドの天雷槍にいたっては、離れた位置から放つ譜術になってました。魔物の足元に譜陣が広がって、そこから雷がドドッと立ち昇るという。オイオイ。天雷槍は槍で敵を突きあげて上から雷を落とす、近接技ですよ。

 

#ルークの不意を突いて襲いかかった 赤全身タイツの変質者 魔物をジェイドが天雷槍で倒し、戦闘終了
ルーク「助かったぜ」
ジェイド「どういたしまして。一応、戦力になっていますね」
ルーク「戦うって言っただろ。(立ち上がり、剣を腰に収める)相手が魔物なら、まだ……」
#言いかけたルーク、ハッとしたように言葉を止め、俯く。すぐに誤魔化すように辺りを見回して
ルーク「しっかし、なんでこんなに魔物が多いんだ? うっぜぇ」
#岩の上に立ったミュウ、笑顔で
ミュウ「ご主人様、頑張ってくださいですの!」
#ルーク、カチンときた様子で、ヒステリックに怒鳴りつける
ルーク「なんにもしない奴が、うぜぇー!!」
ミュウ「みゅうぅ〜…」
#じわっと涙目になって しおれたミュウを抱き上げて、イオンがルークに微笑みかける
イオン「僕も、お役に立てなくて済みません」
#気まずそうに目線をそらすルーク。ティアがジェイドに駆け寄る
ティア「大佐。封印術アンチフォンスロットの影響は大丈夫なのですか?」
ジェイド「譜術の大きさが、かなり落ちていますねぇ」
ルーク「あれでか」
#魔物の死体に目をやって呟くルーク
ジェイド「基本能力が違いますから」
#ルーク、ムッとしてジェイドを睨む
ジェイド「ただ、全解除には時間がかかります」
#ジェイド、ミュウを抱いたイオンの隣に歩いて行って並び、ルークに向かって朗らかに
ジェイド「その間、しっかり私たちを守ってくださいね♥」
#憮然となるルーク
ルーク「あんたなぁ……」

 これはアニメオリジナルシーン。(原作のフーブラス川を渡る前の会話シーンと、FOF説明イベントから微妙に台詞を採ってるっぽいですけど。あとセントビナーの宿屋での封印術に関する会話とか。)相変わらず、この時期としては、原作に比べてパーティー内の空気が柔らかい。そしてルークのヤな奴ぶりは縮小されています。

 

 原作『アビス』の基本コンセプトの一つは《仲の良くないパーティー》だったそうです。実際、《主人公とは気が合いそうにないタイプ》を狙って仲間キャラを設定していったと、インタビューで語られていました。

 これには、《普通なら気が合わないタイプの人間同士を団体行動させて、最終的に何にも代えがたい生涯の友にする》という、実験的な目論見があったのだと思っています。恋愛シミュレーションゲーム的に言うなら、好感度マイナスから始めてラブラブエンディングを目指す感じ。

 ですがアニメ版は、その目論見は受け継いでいない感じですよね。最初から無難な関係で。

 

 ここでルークに「相手が魔物なら、まだ……」と言わせて、かつ、ハッと何かに気づいたように口を閉ざして苦しそうに俯くという演技をさせたのは、この後にアリエッタが登場してライガ・クイーンを殺したことを断罪してくる布石なのかなと思いつつ。ちょっと釈然としませんでした。

 いえ。ルークが押し黙るのは、単純に《人間を殺したことを思い出して苦しくなった》というだけの意味なのかもしれないけど。パッと見たとき、《魔物(動物)を殺すのも人を殺すことと変わらないのではないか?》ってことにルークが思い当たって苦しくなった、かのように見えちゃったからです。

 確かに原作でも、アリエッタの仇討ちエピソードや戦争イベントのナタリアルートで、その問いかけがなされています。でもそれはあくまで枝葉末節。メインテーマではない。戦争イベントではアニスが「ぶうさぎは可愛いけど、食べなきゃ自分が死んじゃうでしょ。極論反対っ!」と言って話を終わらせちゃいますし。

 自分的には、ルークが途中でハッと気付いて苦しそうに黙る、という演技ではなく、最初から苦しそうに「相手が魔物なら、まだ……」と言ってる感じの方がよかったなー…。つまり、ルークが普通に《人間を斬るよりマシ》と思ってる演技にしてほしかったです。そんで「さっきの盗賊連中を斬ったのに比べれば」なんて台詞を付け加えるとかで、セントビナーからこの戦闘までの間に、既にルークが人間を斬っている、なんて風に視聴者に提示してほしかったです。

 なんでかっつーと、アニメ版ではルークの《人殺しの決意》のイベントをカットした上にラブコメで紛らわしちゃってて、そこんとこをぼかしたままになってるから。このテーマは誤魔化さずに正面から描いてほしかったのでした。それが『アビス』だと、私は思っていたので。

 結局、TVアニメである以上、主人公が苦悩しながらも人殺しを受け入れて手を染める、ということを明瞭に描くのは、はばかられたってことなんでしょうか。もっと過激なアニメは、明るい時間から普通に放映されてんのに…。

 

 関係ないけど、ティアがジェイドに駆け寄る時、ガイが気圧されたように後ろに数歩下がって道を開けてたのが、ガイの女性恐怖症を表しているようでもあり、ゲームのポリゴンキャラの動きの再現のようでもあり、なんか可笑しかったです。

 フーブラス川を渡った後のアリエッタの襲撃、地震と障気の噴出(アクゼリュス災害の伏線)、ティアの譜歌がユリアの譜歌で、ティアがユリアの子孫だという説明、ユリアの大譜歌の説明(ガイの生い立ちの伏線)は、全てカット。ガンガンとカッ飛ばしまくりです。

 

 カイツールへ。アニスが「月夜ばかりと思うなよ」と言う時、顔に真っ黒い影が落ちてて面白かった♥ ルークの前で愛らしく豹変したアニスに怯えるガイは、アニメで見ても面白い(笑)。

 親書は無事ですね、とジェイドに問われて、「勿論です♥ ここに」と自身を指さすアニス。えっ。ツインテールの中に親書を収納してるのかっ!? ……なんて。背負ったトクナガを指さしてたんですね。あの中に収納してるってことでしょうか? トクナガには物入れも付いてるのかな。

 それにしても、原作ではルークは何度かアニスを心配する台詞を口にするんですけど、アニメ版では全カット、もしくはガイに代行させてました。今のところ、アニメ版のルークはティア以外の女の子にはとことん冷たいなぁ。

 アッシュの襲撃からヴァンがカッコ良くルークを救うエピソードがカットされ、ヴァンは鷹揚に国境を歩いて登場してました。そのため「苦労したようだな、ルーク。しかし、よく頑張った。流石は我が弟子だ」という台詞も消滅。尺が足りないって悲しい。

 ここで、ヴァンを見たルークが前にいたアニスを突き飛ばすようにして駆け寄っていったのは、すごく良かったです。第1話ではルークのヴァンへの思慕が薄くしか感じられなかったんですけど、年下の女の子たるアニスを乱暴に押しのけた動作だけで、ルークが度を超えるほどヴァンが好きだってことが、問答無用で伝わってきました。

 

 カイツールの宿泊施設で会談。原作ではベッドしかない大部屋に全員で突っ立って会話なんですが、アニメ版ではちゃんと、大きなテーブルがありました。そりゃそうだよなー。個人的に、ティアがテーブルにつかずに壁際に立ってて、ガイは普通にテーブルについてたのが、あれっと思いました。

 ユリアの第七譜石に関する説明。これは流石にカットしないんですね。会話の間、ミュウがふよふよ宙を泳いで部屋を横切ってたり、ベッドからベッドへぴょんぴょん飛び移ってたのが可愛かった♥

追記。こういうのは絵コンテを描いた監督さんの指示ではなく、作画スタッフさんたちの遊び心のサービスなんだそうです。

 にしても。突然、ルークとティアの仲が原作どおりにギスギスしたものに豹変。ヴァン師匠せんせいが絡むとルークもティアも性格変わっちゃうってことかしらん。世界の中心にいるよなぁ、ヴァン。

 

 次はアニメオリジナルエピソードです。例によって《原作では言葉だけで説明されていたシーンを映像化》ってやつ。アッシュがディストとアリエッタに命じて、ルークをコーラル城に誘い出して同調フォンスロットを開かせようと目論む。

 …んんっ!? ディストが「だが、あなたは何故それを知りたいのですか? アッシュ」と言ってる。あれ、おかしいな。これだとアッシュが、ルークと自分が完全同位体かどうかを知りたがってるみたいに思える。ここでアッシュがやろうとしてたのはルークの同調フォンスロットを開いて自分と繋げさせるってことで、ルークに関して何か知ろうとしてたんじゃない…ですよね? 彼が自分のレプリカだってことはとうに知ってたんですもん。あれ? …《同調フォンスロットでレプリカを操れるかどうか知りたい》とか《レプリカも超振動が使えるかどうか知りたい》ってことなのかな??

 場所が、暗い屋敷のような感じでした。どこ? この時点では六神将は全員がイオン捜索に駆り出されてルグニカ大陸に来ていたはずなので、神託の盾オラクル本部じゃないことは確かですよね。

 で。何故か、アッシュがディストとアリエッタに依頼する様子を、離れた場所に隠れて見張っているシンクなのでした。

 ……そっか。原作ではシンクがコーラル城から撤退する際に「今回の件は正規の任務じゃないんでね」と言っていたので、てっきり彼もアッシュに依頼されて個人作戦に協力していたんだと思ってたんですが、あの台詞はそういう意味じゃなかったのか。かねてからのヴァンとリグレットの命により、シンクはず〜っとアッシュの動向を監視していたってことなんだ。シンクがコーラル城にいたのは監視者としてアッシュの独断行動の尻ぬぐい(ルークのレプリカ情報隠滅)をするためで、アッシュ以外の六神将(少なくともディスト)は、シンクがアッシュを見張っていることを承知してたと。ふむふむですの。

 

 国境を越えてカイツールの軍港へ。別行動はせずヴァンも一緒。

 軍港がアリエッタの襲撃を受ける。ガイがまだ息のある兵士を抱え起こすと、ヘルメットが落ちて普通の若者の顔があらわになる演出は良かったです。物語の中で虫けらのように殺されていった無名の兵士たちも、一人一人、自分の世界の中心で自分の人生を歩んできた人間なんですよね。

 整備士がアリエッタに誘拐され、ルークとイオンがコーラル城に呼び出される。

 ここでやっとAパート終了。十分程度の尺にこれだけ詰めたのか。信じられない密度の濃さですね。

 

 Bパート。ヴァンがコーラル城へ行くことを止め、ルークもそれに同調するが、その他の仲間たち全員が人質を救うためにコーラル城へ行こうと主張。

 ここ、原作でイオンに言ってた「もういいよ。戦えないお前が行くっつってんのに、俺が行かないわけにもいかねーし。魔物が出たら、お前は下がってろよ」が無かったのはちょっと残念でした。ヴァンにイオンの保護を任されて舞い上がってたくだりとか。(だからコーラル城へ行くのをかなり渋ったのである。)

 コーラル城へ行くと言うティアに、ルークが原作どおり「冷血女が珍しいこと言って……」と嫌味を言う。アニメ版のティアは分かり易い優しさ全開の女の子で、今回既にルークと萌え萌えラブコメまでこなした仲なので、こんなこと言われると少し違和感あるかも。結局、ティアが優しかろうとラヴラヴだろうと、この時期のルーク的には ヴァン師匠 > ティア ってことなのか。

 

 コーラル城へ。ガイがルークに向かって幾分声をひそめて「お前まで来なくてもよかったのに」と言ってたのが、ちょっとトキメキでした(笑)。アニメ版のガイは、出来る限りルークを危険な場所に連れて来たくなかったのかな。

 ここ、ルークとガイの《失われた記憶》に対する態度が、原作とは真逆ぽくなっているのが面白かったです。原作だと、ガイはルークの記憶が戻ることを期待して、むしろルークの同行を望んでた風で。対してルークの方は、興味を持ちながらもそれを積極的にはおもてに出さないようにしている感じ。何も思い出せないという結果が出ると、「別にどうでもいいけどな。困ってねーし」なんてルークはうそぶき、ガイは「普通気になると思うけどなぁ。おまえのそういうところは感心するよ」と苦笑しつつ、陰で「ナタリア様も可哀想に……」と気の毒そうに呟いておりました。原作のガイがルークの記憶を取り戻そうとしてたのはナタリアのためだったんですね。ガイ自身は…どうだったんだろう。ぐらぐら揺れつつ半々かな。記憶が戻って復讐街道まっしぐら、になるのは嬉しいのか辛いのか。半々。

 けれどアニメ版では、ガイは前述のように「お前まで来なくてもよかったのに」と言い、ルークは「いいだろ。実際に見てみたら、何か思い出すかもしれないじゃんか」と返す。アニメのルークは素直に記憶を欲していて、ガイの方は、あまりルークに記憶を取り戻してほしくなかったのかもしれない。

 

 ここでようやく、六神将に関する説明。原作ではセントビナーでガイが説明していたのですが、アニメ版ではジェイドが説明。アッシュについて説明するときは眼鏡のブリッジを押し上げてレンズを光らせ、目の表情を隠すという例の演出。ふむふむ。

 コーラル城の玄関ホールに入ったところで、アニスがネズミに驚いたふりをしてルークに抱きつこうとし、誤ってガイに抱きつく事故発生。一応書いておくと、原作のアニスは本気でネズミに驚いて咄嗟にガイにしがみついており、故意じゃなかったです。ガイの脳裏に、マリィベル・ラダンの死の瞬間の映像が、モノクロの古いフィルム映画みたいな演出でフラッシュバック。

 アニスを背中にぶら下げたガイは奇妙なダンスを披露。

 ゴメン。笑えて仕方なかった。深刻なシーンなのにゴメンよガイ。(でも思い出すと……やっぱり横隔膜が震えて……っ。ぷぷ、うぷぷぷ)

 ガイの家族は過去に亡くなっていて、その死の瞬間の記憶が欠けていると明かされる。ルークがガイに何か言おうと近づきかけた時、鳥型魔物のフレスベルグが襲いかかってきて彼を掠めさらう。このシーンのルークの顔のアップが、やけに可愛かったです。

 さすが護衛剣士、さらわれていくルークをガイが真っ先に追う。けれどその前にライガに乗ったアリエッタが立ち塞がります。アニスの巨大化トクナガの披露。むくむく大きくなーる。アニスが人形士パペッターで、巨大化するトクナガは音機関(機械)仕掛けだということがさり気に説明される。ここは上手いなぁー。

 屋上にも地下にも行くことなく、玄関ホールで戦闘開始。ライガの女王がアリエッタの育ての母だと明かされ、アリエッタが元は導師守護役フォンマスターガーディアンだったが遠ざけられたのでアニスを逆恨みしていることも語られる。にしてもアニメのアリエッタは犯罪的に可愛いなー。

 アリエッタの連れている魔物の種類が変わっています。何故かステレオティスと、プチプリ系二種、そして、多分アニメ版オリジナルデザインの、三尾の狐って感じのデカい四足猛獣。

 …もしかしなくても、魔物のデザイン設定はあまり沢山は用意されてないんですね。コーラル城なのにポルターガイストやブロクンチェアは出ないんだ…。つか、なんでステレオティス?(原作では闘技場上級戦のみに出てくる魔物です。)

 

 第2話に引き続き、ティアが年相応の素の口調を漏らす描写はカット。「もう……ドジね……!」とか「大丈夫かなぁ……もう……」とか。

 

 フォミクリー機器の中で目覚めるルーク。シンクとディストの会話は微省略されてるくらいでほぼ原作どおり。制御板を叩くディストの指使いがクネクネしてて大仰で素敵でした。

 

 アリエッタとの戦闘に場面戻る。ジェイドが「ガイ! 先に」と言ってくれたのでガイがルークが連れ去られた方へ駆け出す。例によって立ち塞がろうとしたアリエッタを、アニスがトクナガでライガごとぶん殴ってふっ飛ばし、アリエッタは気絶。ジェイドが槍で殺そうとしたのをイオンが止める。

 この場にルークがいないから仕方ないですが、原作ではフーブラス川で気絶したアリエッタをジェイドが殺そうとした時、イオンより先にルークがうろたえて止めた。アレが結構好きだったので、エピソードが完全消滅しちゃったのは少し残念でした。

 あと、ここニュアンスが全く原作と変わっています。原作のジェイドはフーブラス川で本気でアリエッタを殺そうとしていた。ルークと、何よりイオンが止めたので見逃しましたが、アリエッタがすぐにカイツールを襲って大勢殺したのを見て「こうなることは分かってたんですが、過ぎたことですし、その件はもういいでしょう」と言う。そしてコーラル城でアリエッタと再戦した時、戦闘中には「あの時、殺しておくべきでしたか」と言い、戦闘後は「やはり見逃したのがあだになりましたね」と、アリエッタを殺そうとする。

 勿論、ジェイドは好きで気絶した少女を殺そうとしているのではなく、見逃せば後でこちらが殺されかねないと知っているから、禍根を断つためにそうしようとした。そして実際、アリエッタは見逃されたことを感謝することなどなく、すぐに再び襲ってきたわけです。親の仇だと言って立ち向かってくる少女が、一方で多くの人々を…誰かの親兄弟を、容易く殺している。見逃してやっても和解できるわけじゃなく、執念深く命を狙い続けてくる。そんな何ともやりきれない問題を扱ったエピソード。

 ところがアニメ版では。イオンが止めると、ジェイドは笑って「そう仰るだろうと思いました」と言うのでした。つまり、アリエッタを殺そうとしていたのはポーズで、イオンが止めるのを見越して、わざとふりだけして試してみた、みたいにも思える感じになってるのです。

 え・え・えぇ〜〜。これじゃもう、意味が全然違うよ。

 

 フォミクリー機器の前からディストが立ち去り、シンクも音譜盤フォンディスクを持って立ち去ろうとしたところにガイが駆け込んでくる。戦闘が原作より短縮化されていました。残念。ここは原作の方が、ずっとずっとカッコ良かったなぁ。

 ガイがシンクの素顔を見る。原作にあった、シンクが逃げ去った後でガイがイオンの顔をちらっと見て沈黙するという伏線が消えた代わりに、駆け込んできたイオンたちをシンクが見て「くそ。奴との接触は禁じられている」と呟き、顔を手で隠しながら逃げ去る、という形に作りかえられていました。

 フォミクリー機器を見たジェイドが驚愕し、ガイに「珍しいな。あんたがうろたえるなんて。これが何か、知っているのかい?」と問われて「……いえ……確信が持てないと……」(いや、確信できたとしても……) と俯く。しかし原作にあった、そう言うジェイドにじっと見つめられたルークが不安に襲われるという描写はなし。ガイはここでジェイドに音譜盤を渡す。

 ところで、原作ではフォミクリー機器は城の地下に隠されてたんですが、アニメ版ではガイは階段を駆け上ってルークのもとへ行ってましたよね。ドラマCD版ではフォミクリー機器は階段をかなり上った先にあることになってましたが、アニメ版でも、城の上の方にあったのかな? それとも、一度階段上がってから、そこに地下への入口を見つけて降りたとかなんだろーか。

 

 再びカイツール軍港。アリエッタはライガと共に檻に入れられてどこか(恐らくダアト)に連行されていく。

 キムラスカ軍カイツール基地司令官のアルマンダイン伯爵は登場せず。キャツベルトの停泊する船着き場にイオンと並んで、ヴァンに「無茶をしましたな、イオン様。ルークもだ。どれだけ心配したと思ってる」と叱られたルークは、「ごめん。師匠せんせい」とえらくしょんぼり。しかし、ヴァンにポンと肩を叩かれ、「では帰ろうか。ルーク」と優しく言われると、(師匠せんせい、もう怒ってないんだ!)と言わんばかりにパーッと笑顔になって「はい!」と大きな声で言う。可愛いです。

 そんなルークの一方で、何事か考え込むジェイド。ルークとヴァンの様子を見てか、フッと俯くガイ。好人物そうな笑みを浮かべている兄を疑わしげに見つめるティア。

 そんで最終場面、キャツベルトと青い海を背景にして、登場人物たちがそれぞれの立ち位置と表情を見せている集合一枚絵が表示されて、BGMがダダダンダン! と収束して終了でした。『名探偵コナン』みたい(苦笑)。次回は《連絡船キャツベルト殺人事件》解決編ですよ誰が犯人なのか推理してくださいネ、みたいな。

 

 今回の総論。

  • 身体は大人、頭脳は子供!
  • グレン将軍も老マクガヴァンもアルマンダイン伯爵も未だ登場せず。
    TVA『アビス』はおっさん成分が減少しています。
  • ティアは《柔和》なのか《キツい》のか、ルークと《ラブラブ》なのか《ギスギス》なのか、改変された部分と原作そのままの部分が入り混じって、コロコロ変わり続けてる。
  • 《人殺しの決意》から逃げた。制作者が。

 

 ではまた次回。

 



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