注意!

 

ANTHOLOGY DRAMA CD VOL.2 TALES OF THE ABYSS

脚本:司月透/演出:鳥島和也/スペシャルサンクス:実弥島巧/フロンティアワークス

 ギャグアンソロジードラマCDの二巻目。Vol.1の翌月につつがなく発売されました。

 全く個人的な意見なんですが、今巻はジャケットイラストがイマニくらいでした。アニスとナタリアとジェイドなんですが、全員バラバラな日常動作してて、見てもどうも面白味がないのと、何よりアニスの目。なんかおかしい〜…ような? というか、ジャケットイラストを描いた方はゲームのテイルズシリーズ中で使われる絵を一手に引き受けてきたアニメーターさんで、大変人気が高いのですが、『ヴェスペリア』辺りから、絵が少し変というか、女の子キャラの目のバランスが微妙に崩れた絵を描くことがあるというか……。そんな感じしませんか? でも他にそう言ってる意見を見たことがないので、私がそう感じるだけなのかなぁ。何にしてもアニスの目がどうも変だと思えて仕方ありません。

 内容。今巻収録の六篇は、全て司月 透さんお一人の脚本。本っ当に素晴らしかったです! 交易品やら戦闘勝利セリフネタやら、ガイの「また俺かよ!?」ネタ、果てはマイナーなサブイベントネタまで。原作を知り抜いていて、きっと仕事を抜きにしても原作がお好きなんだろうなと思えました。また、これだけの人数のキャラを、各キャラの個性を引き立たせつつ偏りなく会話させ、その会話の楽しさで話を進めている。グダグダにもなってない。これって凄いことだと思うのですよ。なかなか出来ることじゃないです。

 各メインキャラクターの活躍頻度も扱われ方にも、不自然な偏りがない。(けど、前巻で活躍の少なかったアニスが少し目立っている感じで嬉しい。ミュウもいっぱい出る!)ギャグなので本来は対立キャラのアッシュやディストが幾分柔らかくなってましたけども、全体的にいびつさを感じない。

 例えば前巻では、ルークが非常に幼く感じられるエピソードが幾つかありました。特に「君にとどけ」。可愛くて保護されているルークが好きな私は萌え萌えさせていただいたんですけども、原作から見ると、やっぱ歪んではいたんですよね。ちょっと子供過ぎ。(なので、シチュエーション的には崩落編でないとおかしいのに、長髪ルークのお話のように聞こえたものでした。)で、今巻のルークは、やっぱりお馬鹿なんですが、あくまで十七歳の等身大のお馬鹿さというか。変に幼児っぽく感じなかったのです。ガイやティアも度を過ぎて保護者的ではなく、距離感が適切で、可愛かったりヘタレだったりな等身大。ああそっか、公式的にはこうでないといけないんだなーと、妄想世界から振り戻された気分。

 裏を返せば、同人的妄想のようなものを求めている人には食い足りないのかもしれません。でも原作が好きな人なら誰もが地雷を踏むことなく楽しめるのは間違いないです。そんな、晴れやかに笑える楽しいお話ばかりでした。

 

 以下は各ストーリーの感想。むっちゃネタバレですのでご注意ください。

 

正しい早起きの方法

 ルークが自分の朝寝坊癖と戦う話。六篇の中で一番長い話でもあります。

 寝汚いぎたなくて朝なかなか起きられないルーク。特に宿屋に泊まった日はひどく、仲間が何度起こしに行っても糠に釘、起きるのは昼前で、みんなの出発を遅らせてしまいます。

アニス「季節が変わるまで寝たままかもしれないよね。きっとルークは冬眠病なんだよ」
ナタリア「冬眠病?」
アニス「ねぼすけな人がかかる奇病。百年とか二百年とか寝たままになっちゃうんだって〜」
ナタリア「まあ! ではルークは、百年も眠ったままなのですか!?」
#ルークが伸びをしながら起き上がる
アニス「お、起きた」
ナタリア「ルーク……! 冬眠病ではなかったのですね。よかったですわ」←心から安堵した様子で
ガイ「当たり前だって」←苦笑して

 みんなを待たせてたのに、むしろ朝からうるさいと苦情を言って、もう昼だと聞くと「もっと早く起こしてくれればよかったのに」なんて言いだすルーク。ガイに「昨日夜ふかしでもしたのか?」と訊かれても、「別に」と、まるで悪びれた様子がありません。

ルーク(あくびして)適当に日記書いて、即行で寝たけど」
ティア「それなのに、まだ寝足りないって言うの!? 一体何時間眠るつもりだったのよ」
アニス「ルークは寝過ぎなんだよ〜。時間通りに起きてきたことなんて殆どないじゃん」
ジェイド「寝坊もここまでくると、ある種の才能ですね」
アニス「た〜いさ〜。寝坊の才能なんて、一ガルドにもなりませんよ」←「早起きは三文の得」って言うのにね
ジェイド「そうですか? 寝汚さを競うコンクールがあれば、優勝するかもしれませんよ」
ルーク「ジェイド。それ、遠回しに俺が寝汚いって言ってるだろ」
ジェイド「遠回しに言ったつもりはないのですがね」
ルーク「悪かったな!!」
ナタリア「確かに、寝坊が多いですわね」
ティア「そうね。特に、宿に泊まった時なんかはひどいわ」
ガイ「うーん……。まあ、褒められた状況じゃないなぁ」←苦笑いしつつ
アニス「迷惑もいいとこだよね」←笑って
ルーク「な、なんだよみんなして。そりゃ寝坊したのは悪かったけど、でも、誰だって寝坊くらいするだろ?」
ガイ「俺はないな。使用人が寝坊するなんて、言語道断だろ」
ナタリア「わたくしもありませんわ。王族が寝坊などしたら、執務に差し支えますもの」
ティア「私も……軍属になってからはないわ」←考えを巡らせながら、少し恥ずかしそうに
アニス「私だって経験ないし。大佐は……」
ジェイド「おや。私が寝坊するように見えますか?」←超にこやか
アニス(苦笑いして)なんか、時間の方が遠慮しそうですよね」
ジェイド「たまに寝坊するならともかく、ルークはほぼ毎日ですからね」

 生活リズムが乱れてて寝坊するってわけじゃなく、早寝してるのに朝も起きられないという。寝る子は育つとは言うけれど、ルークは眠るの大好きっ子。お屋敷時代は、朝寝坊して、昼寝して、早寝してたんでしょうか(笑)。そんでアニスは寝坊の「経験がない」。……のんびり朝寝なんてしてられない、働きづめの生活だったんですね。そう考えると、確かにルークは甘えっ子。

 ともあれ、寝坊し過ぎだとみんなに指摘されてしまい、「だーっもう分かったよ! 明日は絶対時間通りに起きる。絶対だ!」と宣言したルークでしたが。長年面倒を見てきたガイが半笑いで「絶対、ねぇ……」と呟いていた予想通り、ミュウが一生懸命起こしてくれたにもかかわらず、次の日も見事に寝坊。「おそよう」と笑うガイが憎たらしいなぁ(笑)。

 早起きにまだ慣れてないだけだと言い訳するルークに、ガイが「だったら、俺が起きる時間に起こしてやろうか?」と言ってくれました。毎日早起きして早朝稽古してるんだそうです。

 これは成る程なぁと思いました。ガイは七、八歳の頃からファブレ邸で働いている。なのに専門教育を受けている人たちと比べて引けを取らないくらい教養深いし、剣術の達人でもあります。子息の守り役であった以上、それに相応しいだけの教育の機会をファブレ側からも与えられていたでしょうが、深夜か早朝にでもプライベートタイムを捻出して鍛錬に励まなきゃ、剣術はあそこまでは難しいですよね。原作のガイの称号の中に「ガンバリスト」というのがありますが、ガイは凄い努力の人なのかも。

 ガイの提案を聞いて、早朝稽古は面白そうだと思ったルークは早速お願いした、のですが。翌朝、ガイに起こされると辺りはまだ薄暗い。時間を聞くと、五時過ぎだって。「夜中じゃねぇか!」とルーク的時間感覚で叫んだものの、そのままフ〜っと眠りの世界に引き込まれて二度寝。ガイがどんなに呼んでももう起きない。……寝坊しました。

 この日はミュウも寝坊してしまい、一人と一匹はしょんぼり。ガイはマトモな生活をしていない、もっと普通の生活サイクルの奴に頼むべきだ、とルークは言いだします。そこで標的になったのが(早朝稽古には無縁そうな)ジェイド。

ミュウ「ジェイドさんに起こしてもらうですの?」
ルーク「そんな怖いことしねーよ。ジェイドの生活をこっそり観察して……」
ジェイド「私がどうかしましたか?」
#悲鳴をあげて飛び退くルーク
ルーク「ジ、ジェイド! どこから来たんだ?」
ジェイド「廊下から扉を開けて入ってきましたが?」
ルーク「そうなのか? 全然気がつかなかった」
ジェイド「まぁー、気配を消していましたから」
ルーク「なんで気配を消す必要があるんだよ」
ジェイド「おや。私が気配を消していると、何か困ることでも?」←そういう問題じゃねー!
ルーク別に?
ジェイド「良からぬ企みでもしていたのですか?」
ルーク「そういう訳じゃ」←誤魔化し笑いして
ミュウ「ジェイドさんの生活を観察して、お手本にしようって話していたですの」
ルーク「わっ、馬鹿!」
ジェイド「ほーー。私を観察」
ルーク「べ、別に、変な意味じゃないぞ。(咳払いして)ただ、ジェイドって何時に起きるのかなーっと」
ジェイド「起床時間ですか?」
ルーク「そうそう。俺、早起きできるように工夫してるんだけど、上手くいかなくてさ。だから、早起き出来てる奴を手本にしようと思ったんだ」
ジェイド「それはそれは。殊勝な心がけですね」
ルーク「だろ? それで、ジェイドはいつも何時に起きてるんだ?」
ジェイド「うーん……。――秘密です♥」

 なんでだよ!(苦笑)

 妙なところで出てくるジェイドの秘密主義。ってより、個人主義ですかね。あまりプライベートなことに踏み込んでほしくないんだな。ともあれ、笑顔ながら断固拒否するジェイドに、人の起床時間を真似たからといって早起き出来るわけではないと誤魔化され、時間になったらミュウに火を吹いて頭を燃やしてもらえばいいなんて茶化されて、煙に巻かれてしまうのでした。……ミュウは真に受けて「ボク、頑張るですの!」なんて言っちゃうし。ジェイドはホントに だめなおとな(笑)。

 次に思いついたのは、アッシュに便利連絡網で起こしてもらおう、というアイディア。……いやなんと言うか。着眼点はある意味凄いけど、恐れを知らない奴だなぁ。普通に考えて、アッシュがそんなの引き受ける訳ないって、最初から分かりそうなものなのにね。そもそもルークは他人を使うことばっか考えてます(^_^;)。とことんお坊ちゃま気質じゃのう。

 で、アッシュを探しに行こう、とミュウを連れて部屋の扉を開けた、ら、そこにアッシュがいて「俺に用でもあるのか。レプリカ」ス、ストーカーです! おまわりさ〜ん! ……じゃなくて。アッシュ曰く、たまたまこの宿に泊まっていたそうで。それにしたって扉を開けたらそこにいるってのは怖すぎますが、「俺がどこにいようと、貴様には関係ない。探す手間を省いてやったんだ。ありがたく思え」と言われた。そ、そうだけど……。

「用がないのなら帰るぞ」と立ち去りかけたアッシュを慌てて引き止めて、朝七時に便利連絡網で起こしてくれよと頼みます。案の定、「断る」と即答されますが、しつこく食い下がって……みたらば、妙なところで激怒した二律背反アッシュくんが抜剣して本気で斬りかかってきたよ! 交渉決裂〜。

 こうして、いよいよ誰にも頼れなくなったルーク。……って。ルークは女の子たちには頼ろうとはしないんですね。そりゃやっぱ、恥ずかしいもんねぇ。原作でもティアに寝顔覗き込まれて真っ赤になってましたし。ともあれ、誰かに何とかしてもらうことをようやく諦め、自分で何とかしようと思い始めます。

ルーク「要するに、寝るから寝坊するんだよな。つまり、ずっと起きてりゃあ、寝坊なんてしないんじゃないか?」
ミュウ「ご主人様、凄いですの! 天才ですの!」
ルーク「だよなぁ? くぅ〜〜っ、俺ってあったまいい! これで俺たち、寝坊とサヨナラだぜ!」
ミュウ「はいですの!」

 ……お・バ・カ☆ ばかっちょルークとミュウはすごく可愛いけれど、個人的には痛い。あうち。

 で、その晩、一人と一匹で徹夜を始めたルークとミュウ。眠ってしまわないためにお喋りを続けます。眠らずにいられる方法はないか、とミュウに尋ねると、数を数える方法しか知らないですの、なんて。「ブウサギが一匹、ブウサギが二匹……」。ますます眠くなるじゃねーか! それじゃアップルグミを数えるですの、と言い出すミュウ。とりあえず素直に数えてみるルークは可愛いですが相当な馬鹿です(大笑)。ここの会話はコント風味というか、とにかく可愛い(笑)。

 ところが、騒がしくしていたために他のみんなが眠れず、苦情を言いに来てしまいました。みんな眠そう……で、ルークから得意げに徹夜作戦を聞かされて流石にゲンナリ顔。でも口々に諌められるとルークはむくれて屁理屈を言い募りだす。……ってところで、ティアがニッコリ笑って。

「……ルーク。もういいわ。永遠に寝ていなさい? ――イノセント・シャイン!!」

 うううーむ……。ティアは軍人になってからは寝坊したことがないと言ってましたけど、それはまさに彼女の努力のたまものであって、実はルークよりもずーっと寝起きの悪い人だったってことなのかなぁ? 低血圧そうだしねぇ。

ティア「静かになったわね。さ、寝なおしましょ」
ガイこ、こわ……
ナタリア過激ですわ
アニス私、ティアが寝てるの邪魔しないようにしよ〜っと……

#前巻の「戦士たちの肖像」にも類似エピソードがありましたが、個人的には、ティアが日常生活の中で腹を立ててルークを秘奥義でしばくネタは、あまり好きじゃないです。秘奥義がものすごく強い攻撃だという印象が自分の中にあるからなんでしょうが、子供の喧嘩にミサイルを持ち出すようなちぐはぐ感がある。もっと罪のない暴力がいいなー。でもドラマとしては派手な方がメリハリが効いてスパッと落とせるから、仕方ないんでしょうね。



 実を言いますと、この話、個人的にチクチクッと痛苦しさを感じちゃう部分がありまして、面白いのですが複雑でした。ルークが寝坊を叱られて、なら一晩中起きててやれと考えるエピソードがあるじゃないですか。あれ、同じことやったことあるんだよね…多分ルークと同じくらいの年代の頃、夏休みだったかに。案の定、夜明け近くに眠気に耐えきれずに眠ってしまい、寝坊しました(笑)。うぉおぅ。それを思い出さされて恥ずかしい。身悶えしたいくらい恥ずかしい。

 いやいやっ。似たような事やらかしたことのある人って、多分、世の中にはいっぱいいますよね? だからドラマにもなってんだよね。……と思っておきます。トホホ。

 とりあえずルークを応援しておこう。頑張れー、ルーク。

 そして夜中にどんなに騒がしくしても一人だけ起きてこないジェイド。どういう生活サイクルなのか気になって仕方がありません。

 

おまけ。ルーク寝言集

「大丈夫……レモングミは全部埋めといたし……」「いや、俺タオラーだから……」「だって俺、アビスレッドだし……」

 ティアも言ってましたが、ホントにどんな夢見てるんだか(笑)。

 

オールドラント七不思議

 以前ルークとティアがセントビナーの青年に頼まれてケセドニアから買ってきた(その後押し付けられた)、ノワールファンクラブ会報誌。当のルークはすっかり存在を忘れていたその本を、勿体ないからと読みふけっているアニス。なんか面白い記事があったのか、と尋ねたルークに「七不思議くらいかな」と答えます。

 話を聞きつけて、オカルト話大好きなナタリアはノリノリで参加。キムラスカ、マルクト、ダアトなど、各都市各地域に星の数ほど七不思議があるそうで、比べてみないかという話になりました。雑誌に載っていた『新・オールドラント七不思議』は、ありじごくにんだの砂漠の竜だのロニール雪山のすすり泣きだの、ルークたちにとっては全て実体験済みのことばかりでガッカリでしたが、アニスがダアトの新しい七不思議、《裏うち》について語り出します。パダミヤ大陸の三十三石碑のうち、特定の十か所を決められた順番で巡ると、ユリアを害する者とみなされて、ダアトの亡霊に首を切られるんだとか。でも特定の石碑とはどれのことでどんな順番なのかは、禁書に書かれていると言われているだけで詳しいことは不明だそうな。

 ここでガイが、ビビリながら「首を切られるってのは、暗示的ではあるよな」と言ってたのがなんか笑えました(笑)。何の暗示だと思ったんだろ?

 そんなこんなで盛り上がっていて、ふとルークが気付くと、ドアの陰でティアがじっと硬直してました。ぎゃ。こっちの方がホラーっぽいよ(笑)。

ルーク「あれ? ティア。何やってんだよ、そんなドアの陰で」
ティア「え! (一転してクールな声で)――別に。何もしてないわ。何の話をしているのかと思って、覗いただけよ」
ルーク「なんだよ。そんなとこいないで、こっち来て話そうぜ」
アニス「それとも……七不思議の話は苦手とか」←ニヤニヤ
ティア「ば。馬鹿馬鹿しい。全然平気よ」←強張った笑いを落としながら
ナタリア「あら。ではどうしてそんな入り口近くに立っているのです?」
ティア「別に特別な意味なんてないわ。話が盛り上がっているみたいだったから、邪魔をしちゃ悪いかなって思っただけよ」
ルーク「全然邪魔じゃねぇよ。なな、ユリアシティにも七不思議ってあるのか?」
ティアある、わよ?」←えらく不自然なイントネーション
アニス「ユリアシティの七不思議ってなんかすっごそうだよね。なんといっても、魔界クリフォトだし」
ナタリア「とても興味深いですわ」
ルーク「どんなのがあるのか教えてくれよ」
ティア「え、あの。……ごめんなさい。よく知らないのよ」
アニス「えーっ。なーんでぇー? せっかく面白い話が聞けると思ったのにぃ」
ティア「あまり、興味がなかったから」←ぎこちなく笑いながら
ルーク「興味がなかったんじゃなくて、(ニヤリ)怖かったんじゃねぇの?」
ティアなっ!? 違うわよ! 全然怖くなんてないわ。譜歌を練習する方が好きだっただけよ?」
アニス「えぇ〜?」←ニヤニヤニヤ
ティア「本当よ! ホントに興味がなかっただけなのよ!」
ルーク「ふぅ〜ん?」←ニヤニヤニヤニヤ

 いつになく慌てて、見え透いた子供っぽい意地の張り方をするティアが可愛い。そしてルークは、優しくティアを仲間に誘うふりして、けっこー意地悪(笑)。ずっと口を挟まなかったガイが、ここでやっと「まあまあまあまあ」と助け船を出してくれました。ガイがいないと色々困ったことになるよね、この人たちは(笑)。さて、助け主のガイはどう話題転換してくれるのかっ。

ガイ「なあアニス、ダアトの七不思議はマルクトやキムラスカのものとは違うみたいだけど、他にはないのかい?」
ティア「ま、まだこの話題なの?」

 ガイって気が利くのか全然利かねーのか分かんねー。(^ ^;) まさか怖がってるティアをもっと見たいとかのSゴコロなのか。

 ともあれ、アニスが「帰らずの譜陣」なんて怖い話を色々始めて、ナタリアがますます怖くなる感想を述べ、ルークは目をキラキラさせて「すっげー!」と大喜び。もっと他にないかとせがみます。ガイは「おぉ……百物語ができそうだな」なーんて怖そうに声を震わしながらも笑う。あれ? ガイって怖い話結構好きなのかな? というか、キムラスカ幼なじみ組は、昔から三人で怪談話(百物語?)で盛り上がってたっぽいですね(笑)。

 ティアはと言えば「百っ!?」としゃっくりみたいな悲鳴を上げて、買い出しを頼み忘れた物があったわと、あくまで平静を装いながらそそくさと逃げ出してしまいました。わたくしが買い出し当番ですのにと気にしたナタリアは、「では、後でお話の続きを教えて差し上げますわね」と親切に約束してましたが(笑)。友人からの優しい申し出を断れないティア(笑々)。

 ティアがいなくなると、ルークは「百物語もいいけどさ、俺たちの七不思議を作るのも面白いんじゃねぇか?」と言い出します。

ルーク「たとえば……そうだな。『人類史上最悪の記録を更新し続ける料理』とか」
ナタリア「悪かったですわね」
ルーク「『マッド音機関マニア』とか」
ガイ「仕方ないだろ。好きなんだから」
ルーク「あと、『デカくなる人形』とか、(槍を出すポーズをしながら)『突然出てくる槍』とか!」
アニス「トクナガはれっきとした譜業技術だもん。科学で解明できるものは不思議って言わないよ」
ガイ「ジェイドの槍だって、物質同士が音素フォニムと元素に分離して融合するコンタミネーション現象を利用したものだって、説明されただろ?」
ルーク「あ、そっか。じゃあ、ジェイドの性格」
アニス「う。それは確かに、解明も分析もできないけど」
ルーク「だろ?」
ジェイド「楽しそうですね〜」
アニス「はぅあ! 大佐ぁ!」

 例によって気配もなく唐突に現れるジェイド。「七不思議ですか。その手の話なら、私も一つ知っていますよ」って。いつから話聞いてたんだよ!(^^;) ナタリアは全然気にせずに嬉しそうに話をせがんでましたが。

ジェイド「少し前のことになりますが、フォミクリー技術を発展させて食料品のレプリカを作成しようという計画がありました。気候に左右されない、安定した食料供給を目指したものです」
ガイ「そんな計画があったのか……!」
ナタリア「確かに、収穫量に左右されず供給が安定するのであれば、価格も安定して民の暮らしが楽になりますわね」
ジェイド「ええ、そうです。やがて計画にかかわっていた技術者の一人が、実験を成功させ、ふゆトマトが量産されたのですが。その後、不測の事態が発生したことにより、この計画は中止されました」
ルーク「なんでだ? だって、ふゆトマトは出来たんだろ?」
アニス「まさか、体に悪いものだったとか」
ジェイド「似たようなものです。レプリカは第七音素セブンスフォニムによって構成されている。つまり、作成されたふゆトマトは第七音素で出来ていた。そんなものを、素養のない人間が食べたらどうなると思いますか」
ガイ「拒絶反応が出る。……かな?」
ジェイド「その通り。実験を成功させた技術者は、ふゆトマトを食べたことによって魔物に変貌したんですよ。報告を受けた上層部は、作られたふゆトマトを回収し、シルバーナ大陸の氷の下に、廃棄しました」
ガイ「……も、もしかして、だからシルバーナ大陸の北には見慣れない魔物が多いのか!?」
ジェイド「可能性はありますね」
ルーク「シルバーナ大陸って、ケテルブルクのあるところだよな」
アニス「私たち、交易品を探すのによく掘り返しているよね」
ナタリア「確か、ふゆトマトも出てきましたわよ」
ジェイド「あぁー。そういえば、あの辺りだったかもしれません」←しれっとした態度で
ルーク「ふゆトマト……」
アニス「ああっ! 昨日、お店に売らなかったっけ!?」
ナタリア「ああ! では、あのふゆトマトが、埋められたふゆトマトなのですか?」
ルーク「ど、どーするんだよ! もし、誰かがあのふゆトマトを食べて、魔物になっちまったりしたら!」
アニス「そんなこと言っても、売れちゃってたら誰が買ったかなんて分からないよ?」
ルーク「と、とにかく、店の人に事情を話して、返してもらおう!」
ナタリア「そうですわ。今ならまだ、間に合うかもしれません!」
ルーク「よし! みんな、急ぐぞ!」
ナタリア「ええ!」
アニス「あ、ああ、待ってぇ!」
#部屋を飛び出していく王族二人。おたおたして後を追うアニス。
#残っているガイとジェイド。

ガイ「……それで、その話はどこまでが本当なんだ?」
ジェイド「勿論。全部ウソですよ」

 ちゃんちゃん♪

 交易品を売ったお店からもこの先白い目で見られることになるだろうし、ヘタすりゃパニックになるってのに。何なんだよこのおっさんはー。タチ悪過ぎ。でも流石にガイは学習したみたいですね(笑)。シュレーの丘の死体化成伝説やフィアブロンクの性別の見分け方や包丁の性能の話の時は、ルークたちと一緒に騙されて悔しがってたけど。

 というか、ふゆトマトって交易品なのに普通に一般客が買い取るんだ……。それ以前に、あれって掘ると凍土の下から出てくるものだったんですか! 単に雪原に実るトマトに似た野草の実だと思ってたので衝撃を受けました。ってことは、アレは果実に見えるけどそうじゃない、何かの結晶とか、化石とか、そういうもの? それとも凍土の中に出来るすんごい特殊な植物?

 

 にしても、レプリカ食品食べて魔物化の話、ジェイドが全部ウソだと言ってくれて安心しました。つか、経口摂取した程度で魔物化するとしたら第七音素セブンスフォニムは猛毒ってことになっちゃう。記憶粒子セルパーティクルは第七音素を含みますけど、素養のない人間がセフィロトに行って時間を過ごしただけでも魔物化するってことにもなる? 第七音素の癒しの力を当てられても魔物化するとか。そんな疑念が湧いてきちゃって落ち着かない。

『ファンダム2』ジェイド編でリース(偽の皇帝候補)が第五音素フィフスフォニムを強制的に取り込まされて音素フォニム暴走を起こし、爆弾にされかけたことがありましたよね。つまり音素暴走は第七音素でしか起こらないわけではない。本編中ではカシムが自分の目に譜眼の処置を施し、度を超えた音素を取り込んでしまって音素暴走を起こしていました。音素暴走は体内の音素が制御不能になったときに起こる。そして体内に取り込まれた音素とは、人体のフォンスロットから取り入れられたものを指すと思います。体内に第七音素を含んだ物質が入ったってレベルのことでは、音素暴走には至らない……よね? 五種の音素を含んだご飯をいっぱい食べたら五属性の譜術が使えるようになるってわけじゃないし。だって体内接触・吸収程度で暴走するなら、例えばレプリカの男性と第七音素の素養のないオリジナルの女性が子供を作ろうとした場合、オリジナルの女性が魔物化しちゃったりもしないですか? うっかりキスして体液が相手の中に入ったら魔物になるとか。それは悲劇過ぎるんで嫌過ぎる。

 とかいう風に考えていくと、譜術士のくせに騙されたナタリアとアニスはうっかり過ぎるのかも(笑)。

 レプリカ作成した食料品。もしかしたら、栄養になる前に胃の中で乖離して消えちゃう率の方が高いかもしれませんね。本当に計画があったとしても、乖離しないレプリカを作るのに手間取っているうちにピオニーの命で研究中止、とかだったり。

 個人的に、生命のない《物体》のレプリカは消えにくいんじゃないかなとは思ってるんですが。だって、ルークは七年間、屋敷の人たちにはレプリカだとばれずに過ごしてきた。切った髪の毛や爪、流れた血みたいな、ルークの身体から分離した《物体》がイキナリ消え去るみたいなことは起きなかったってことですよね。
#音素は同種の音素に引かれるそうですが、本編中、死者の魂は音譜帯に引かれると言われている。生命力は音素に近いものなのかもしれない。《死》の際にそれが音譜帯に引き寄せられていくなら、それに引きずられて肉体の音素構成が総崩れすることもありかなとか。レプリカでなくともラルゴやアヴァドン、ティランピオンの死体が、死んですぐに消えちゃいましたし。レプリカは、より消えやすいってだけで、消える仕組み自体は特殊ではないのかも、なんて。

 ……お腹の中で消える食べ物は、ダイエット食品には向いているのかもなー。ああ、でもオールドラントは決して飽食の世界じゃないし、儲け話になるとしても食を大事にするアニスは案外ムッとするのかも。ご飯はちゃんと食べて栄養を取る! ダイエットは運動! なんてね。……それ以前に、消えないよう調理するのが難しいのかしらん?

 

#ところで、『新・オールドラント七不思議』の最後のひとつ、なんて言ってるのかどうしても聞き取れないです。「消えたタイル」? んむ? 何のことかな。誰か正解を教えてください…。なんか気になってきた(苦笑)。

追記。「消えた大陸」ではないかとのコメントをいただきました。ありがとうございました。

 

キノコ狩りに行こう

 敵味方それぞれの思惑で特殊なキノコ争奪戦をし、挙句、毒キノコでラリる。という、ネタとしてはオーソドックスめな話。でも面白かったです! リグレットが。

 

 時期的にはレプリカ編のナタリア合流後すぐの、キノコロードイベント直後。まだイオンが亡くなっていない頃かな?

 ケセドニア、ディンの店。原作では声のつかなかったディンが喋ってます。おー。こんな声でイントネーションだったんかー。というか、ディンの喋り口調ってものすごく難しいと思うんですが、挑戦した脚本家さんを尊敬しました。(いや他にも沢山尊敬すべき点はありますけども。)ともあれ、ディンから《ユリアヒトヨタケ》を探さないかと持ちかけられたルークたち。すごく希少なキノコらしい。

ルーク「ユリアヒトヨタケって何だ? キノコか?」
アニス「私知ってる! 五百年に一回、一晩だけ生えるっていう、幻のキノコだよ!」
ティア「確か、第七音素セブンスフォニムの結晶体かもしれないって言われているものよね」
ナタリア「図鑑で読んだことがありますわ。写真はありませんでしたけど」
ガイ「あれは探しても見つかるもんじゃないだろう。五百年に一回だし」
ディン「職人の間で、今年がその五百年目だって話題になってるっぷよ〜!」
アニス「それって、もしかしなくても、メチャメチャ高値で取り引き出来るんじゃあ」
ディン「百万ガルドは下らないでしゅ」
アニス「ひゃ、百万ガルドぉ!?」
ルーク「マジかよ! だって、いくら珍しいって言っても、たかがキノコだろ?」
ジェイド「希少価値のキノコです。第七音素には、まだ未知の部分が多い。もしそのキノコが本当に第七音素の結晶なら、一部の科学者たちは金に糸目をつけませんよ」
ガイ「そうだな。百万ガルドって話は聞いたことがないが、確かにそのくらいの金額をつける奴もいるかもしれないな」
アニスルークさまぁ〜〜♥
ルーク「な、何だよ急に」
アニスアニスちゃん、ユリアヒトヨタケが見てみたいですぅ〜〜♥」
ルーク「知るか! 俺たちにはやらなきゃいけないことがあるだろう!?」
アニス「百万ガルドだよぉ!?」
ティア「でも、特に私たちに必要なものというわけではないわ」
アニス「ぶーぶー。ガ〜イ〜〜♥」
ガイ「へ!? 〜〜あー、そーだなぁ。どこに生えてるか、よく分からないからなぁ」
ミュウ「ボク、知ってるですの」
#(ジェイドを除く)全員、ミュウを見て『ええ!?』
ミュウ「長老に聞いたことがあるですの。ユリアヒトヨタケは、お喋りをするキノコさんですの」
ルーク「喋るキノコ? キノコが『おはよー』とか『うぜー』とか言うのか?」←馬鹿にした口調で
ミュウ「はいですの」←無邪気に
ティア「喋るキノコ……。可愛いかも♥
アニス「それでそれで? それってどこにあるの?」
ミュウ「キノコがい〜っぱい生えてる場所ですの。みなさんも行ったことがあるですの」
ナタリア「もしかして、ルグニカ紅テングダケを取りに行った場所のことですの?」
ガイ「キノコロードか。あそこは未開の場所だからな。探しに行くには、リスクが……」
ミュウ「ユリアヒトヨタケは、昔はい〜っぱいあったキノコだって聞いてるですの。お仕事をするお人形さんの電池にするために、沢山採ったから数が少なくなったですの」
ガイ「……し、仕事をする、人形? 創世暦時代の機械人形のことか!? あれの動力だったのか!!?」
#ガイ、ミュウに詰め寄る。ちょっと怯えるミュウ
ミュウ「ボクにはよく分からな」
#ガイ、構わずに興奮した様子でルークに駆けよって
ガイ「ルーク!! 行ってみようぜ!!」
ナタリア「ガイ。あなた先程までと言っていることが違っていてよ?」←呆れた様子で
ガイ「そ、そんなことはないさ。創世暦時代の機械が使っていた動力なら、この先の旅でも、役に立つかもしれないじゃないか」
ティア「一理あるわね」←クールに
ナタリア「ティアまで!」
ルーク「喋るキノコは可愛い♥ とか思ったんじゃねぇの?」←よく分かってらっしゃる(笑)
ティア「ち、違うわよ」
アニス「じゃあ決まりだね」
ルーク「決まってねぇって!」

 結局、ユリアヒトヨダケを探しにキノコロードへ行くことになってしまいました。アニスはともかく、行く気満々のガイとティアに押し切られ引きずられちゃうルークやナタリア。なんだかいつもと逆っぽい(笑)。

 一方リグレットは、アリエッタと共に部下たちを率い、キノコロードで《ユリアヒトヨタケ》を探していました。なんと、ヴァンがそれを欲しているのだそうです。鉢合わせたルークたちは「百万ガルドは渡さないんだから!」「機械人形の動力を悪用されたらたまらないからな」といきりたちますが、リグレットは鼻で笑って。

「何を言っている。ユリアヒトヨタケは五百年に一度見つかる、育毛効果を持つ特殊なキノコだ。そんなことも知らずにこんな場所まで来るとは、フッ、愚かだな」

 ええええ。育毛効果ぁ!? えらく話が違いますが……。っていうか、何故それをヴァンが(笑)。

アニス「い、育毛剤?」
ガイ「育毛剤……」←ショックを受けている様子。っていうか、欲しいと思ったんだったりして(笑)
ナタリア「髪の毛を生やす薬ですわね」
アニス「ユリアヒトヨタケって、そうなの?」
ミュウ「分からないですの。ボクは、お人形さんの電池だって聞いたですの」
ガイ「そうだよなぁ!」
ルーク「でもよ。育毛剤ってことは……(ボソッと)誰かハゲたのか?」
ティア「教官。まさか!」
ジェイド「苦労が多そうですからね」
リグレット「違う! 私ではない!!」
アニス「げげ。まさか。総長がぁ!?」
ルーク「えぇ!? ヴァン師匠せんせいが!?」
ジェイド「苦労が多そうですからねぇ」
ティア「兄さんが!?」←悲痛な声で(笑)
リグレット「ち、ち、違ぁうっ!! 我々は、ユリアヒトヨタケの持つ育毛効果を促進している、第七音素セブンスフォニム音素フォニム振動数を」
ジェイド「確認して、危険な生え際に応用しようとしたわけですね。お役目、御苦労さまです」←ジェイドの本領発揮だなー(笑)
リグレット「違うと言っている!」←すごく動揺してる(笑)
アリエッタ「え。リグレット、アリエッタに、ヴァン総長がユリアヒトヨタケを欲しがってるって言った。アリエッタに、嘘ついたの?」
リグレット「アリエッタ! (声を潜めて)少しは空気を読め!」
ナタリア「本当に……苦労が多そうですわ」
ティア「やっぱり、教官が……」
ルーク「ハゲたのか」
ティア「ルーク! 直接的な表現は失礼よ」
ナタリア「そ、そうですわ。いくら敵とは言っても、これはデリケートな問題です。せめて、薄くなったとか後退したとか、間接的な言葉で表現しなくては失礼ですわ」
#リグレットが譜銃を連射し、ナタリアが悲鳴を上げる。
ガイ「ナタリア!」
リグレット「お前たち、全員失礼すぎるぞ!!」

 一触即発の空気になりましたが、ジェイドが「待ちなさい。ここは未知の胞子が散乱する未開の場所。いたずらに戦闘を行うのは、感心出来る行動とは言えません」と双方を止めます。え、そうだったん? ゲームでキノコロードにきたとき、戦闘しまくっていたよ……。ともあれ、ヘタに戦闘して目的が塵になってしまっては元も子もないと、一時休戦してそれぞれ《ユリアヒトヨタケ》探しを始めたのですが。そもそも、どんな見かけなのか全く分からないキノコを、キノコだらけの場所で探すということ自体に無理がある。アリエッタは最初から魔物情報による《食べられるキノコ》集めばかりをしていて、ルークもそれを真似して食用のキノコ狩りを開始。つーかアンタ、キノコ嫌いなくせに(笑)。他のみんなに食べさせる気満々だなー。んで、まるで知識のないルークが集めるキノコは、見かけこそアリエッタの集める物には似ていても、実に怪しいものばかり。そこで、待機組のジェイドのところに持って行って毒キノコかどうか選別してもらおうとしたところ、いきなりリグレットが銃で攻撃してきました。

「毒キノコの中にユリアヒトヨタケを紛れ込ませるとは、姑息な手段だな。誤魔化せると思ったのか」

 運び出そうとしたのがその証拠だ、と聞く耳を持たずに銃を乱射。すると、流れ弾の一つがルークが集めていたキノコの山に命中。途端に白い煙が爆発的に噴き上がり、辺りはまるで霧に包まれたかのようになってしまいました。状況がつかめずにうろたえるルークとティア。そこに、状況の説明をしてくれるガイの声が聞こえてきましたが……。

ガイ「ひのほが。ひのほが爆発したんら。胞子がぶわぁーっと! うへっへっへっへっへへへへ」
ルーク「……ガイ。おい。どうしたんだ?」
ガイ(笑い続けながら)分はらん。痺れるのに、ヒッヒッヒ、笑いが、ヒヒ、止まらない〜、ヘヘヘヘ」
ルーク「お、おぉおおい、ガイ!」←うろたえてる
ナタリア「だか、アハハハ、だから、見た目だけで判断する、ウフフフハハ」
ルーク「ああ……ナタリアまで」
ティア「これは。ルグニカワライタケとテオルヒラタケの中毒症状だわ」
ルーク「ルグニカ……、何?」
ジェイド「ルグニカワライタケと、テオルヒラタケ。どちらも神経に影響を与える毒キノコですよ。どうやら、ルークの集めたキノコの中に混ざっていたようですね」
ルーク「ジェイド!」
ジェイド「爆発したのは、フォニックマッシュルームですか。全く。戦闘行為は禁止だと言ったはずですよ」
ルーク「俺は何もしてねぇって。リグレットが勝手に……、ん、そういえば、リグレットは」
#大口開けて豪快に笑っているリグレット。
リグレット「はははははははは! お前たち、よくもっはははははは!」
ティア教官……←悲しそう。憧れの人のこんな姿は見たく無かったよね
#アリエッタとアニスには幻覚が見えているらしい。
アリエッタ「えへへっ。イオン様が、へっ、へへっ、沢山飛んでる。ふふっ。待って、イオン様、待って、へへへっ、へへっ、へへへ」
アニス「あははは、はははは、はは、ね、根暗ッタが、根暗な踊りしてぇ、あひゃ、あはははは」
#いつまでも笑い続けている人々
ルーク「ああ……なんか、みんな笑ってんのに地獄絵図に見える」

 まさに「テイルズ オブ ジ アビス(地獄の物語)」ですか(笑)。

 もうキノコ探しをしている場合ではないと、ルークたちは引き上げることにします。……折角ミュウが《ユリアヒトヨタケ》を連れて来てくれていたというのに、気付かずに出会うことなく。

 

 オールドラントのキノコに詳しくなれた一篇でした(笑)。

 地球の毒キノコは胞子を吸ったくらいじゃ中毒を起こしたりはしないはずですが、オールドラントのキノコ怖ぇえ。あんな巨大キノコが生えるくらいだもんなァ……。(いや。譜銃のエネルギー弾によってキノコが一気に蒸発して、成分が気化したとかなのか?) ルグニカ紅テングダケを探しにきたとき中毒を起こさなかったのは僥倖だったみたいです。

 それにしても、《ユリアヒトヨタケ》って何なんでしょうね。キノコ型の魔物、というのが正体のようですが、ホントに古代には電池の原材料だったの? 第七音素の結晶という説は間違いだとして、育毛効果ってのは? つーか、そもそもなんでヴァンは欲しがってたんでしょう。育毛を促進する第七音素の音素振動数って、意味不明ですよね(笑)。この頃のヴァンは肉体が音素化していて地核から外に出られなかった。肉体を再構築するのに役立ちそうなものを手当たり次第に集めてたってことか。

 えらく礼儀正しい上に語尾には「〜ダケ」と付いてて、キャラクター付けもばっちりな《ユリアヒトヨダケ》ですが、ソーサラーリングなしで人語を喋る魔物って怖すぎる気がする。
#エルフと人間みたいな関係になりはしないかと思ってしまいますが、チーグル族の伝承が本当なら《ユリアヒトヨタケ》は人間に乱獲されて絶滅しかかっているんですよね。知能は高いけど、とても弱い存在なのかな。

 

大きくなりたい、ですの

 ミュウが主役の話!(おぉー!)

 もっと大きくなりたい。アニスのヌイグルミのトクナガみたいに大きくなって、戦闘でもルークの役に立ちたい。そんな悩みを抱える小さなミュウ。トクナガに向かって切々と思いを訴えていたところ、ジェイドに「おやミュウ。トクナガで人形遊びですか?」と声をかけられます。「違うですの! ボクは今、トクナガさんに人生相談をしていたんですの」とムキになって返したところ、ジェイドはにこやかに「それはそれは。ガイ、後は任せましたよ」。何でこの人は面倒臭いことになったなと思った途端、ガイに丸投げするのか(笑)。

ガイ「え。おおお、俺に振るなよ」
ミュウ「みゅ?」
ガイ「あ。ははっ。あ、え、えーと。ミュウは、何か悩んでるのか? その、トクナガに相談するくらい」
ミュウ「ボク、ご主人さまのお役に立ちたいですの」
ガイ「今だって活躍してるじゃないか」
ミュウ「でも、戦闘になると道具袋に隠れているですの。ボク、トクナガさんみたいに、大きくなってご主人様を乗せて戦いたいですの」
ガイ「……それは。想像すると凄い構図だな」←苦笑いしながら独り言のように呟く
ミュウ「ミュウ、凄くなりたいですの!」
ガイ「あ、いや。そういう意味じゃなくて」
ミュウ「ガイさんの得意な音機関で、ミュウを大きくすることはできないですの?」
ガイ「うーん……。音機関で生き物の大きさを変える方法っていうのは、ちょっと分からないなぁ」
ミュウ「みゅうぅ……。トクナガさんは大きくなれて、うらやましいですの」←しょんぼり……
ガイ「あー……。は、ははっ。そういうのは、ジェイドの方が得意だと思うよ。なあ!」←おいおい!
ジェイド「ほーう。私に話を振りますかね」←全くだ
ガイ「あ」
ジェイド「いえ、いいんですよ。たまには私も、生きた人間で実験をしなくては、腕が鈍ってしまいますから」
ガイ「いや! 人間じゃなくて、チーグルなんだけど」
ジェイド「勿論、ミュウのことも責任を持って、大きくなれるよう《改造》して差し上げます」
ミュウ「ホントですの!? ボク、大きくなれるですの?」
ジェイド「ええ」
ミュウ「うれしいですの! うれしいですの! ガイさん、一緒に大きくなるですの」
#ガイ、バタバタッと後ずさって
ガイ「おおおお、俺は嬉しくないぞ! ミュウ、駄っ、こっ、断われ! 今すぐ断るんだ! 危険すぎる!」
ミュウ「みゅう?」
ガイ「ジェイドに任せたらどんな実験に使われるか分かったもんじゃない!」
ジェイド「おや。心外ですね。傷つきますよ?」
ガイ「嘘つくな! とにかくミュウ。ジェイドは駄目だ! 相談するなら、ティアかナタリアにするんだ。いいな?」
ミュウ「でも、今、ガイさんと一緒に大きくしてくれるって」
ガイ「俺は大きくなりたくない!」
ジェイド「まあそう遠慮をなさらずに」
ガイ「いや。遠慮させていただきます。行くぞ、ミュウ」
#ガイ、ミュウを抱えあげる
ミュウ「みゅっ? みゅうみゅうみゅう」
#有無を言わさず部屋から連れ去るガイ
ジェイド「……ふむ。逃げられてしまいましたか」

 思わぬところで身の危険に迫られたガイは、ミュウを抱えて部屋から逃走。「ジェイドに頼んだら、大きくなったときに足が八本になってるかもしれないぞ」「足が八本? タコさんみたいですの。ボクはタコさんにされてしまうですの?」なんて廊下で立ち話をしていたところで、ティアとナタリアが連れ立って歩いてきたのに出会いました。目に見えてホッとするガイ。ここで「あら、珍しい組み合わせですわね」とナタリアが言うのに少し くすっとしました。ミュウはいつもルークと一緒ですもんね。ティアもアニスも、ミュウがしょんぼりしている様子を見ると真っ先に「ルークに何か言われたの?」みたいなことを訊くくらい(笑)。

 ミュウの訴えを聞いて、ナタリアはガイが期待したとおり、戦闘に参加などしなくとも、ミュウが今のミュウだから出来ることも沢山あると優しく諭してくれたのですが。ミュウの「ボクもトクナガさんみたいに大きくなれたら、もっとお役に立てるですの!」という言葉で妄想の世界に旅立っていたティアが、うっかり「でも……。大きくなったミュウも、きっと可愛いわ♥」と漏らしてしまったからさあ大変。「やっぱり……、やっぱりボクは大きくなりたいですの!」と、ミュウはどこかに駆けて行ってしまったのでした。

ガイ「……行っちまったな」
ティア「ご、ごめんなさい。私、失言をしたみたい」
ナタリア「あなたのせいではなくてよ、ティア。これというのも、ルークがミュウときちんとした対話をしないのがいけないのですわ」
ガイ(苦笑して)いや。ルークのせいでもないと思うぞ?」

 ルークと違って素直で健気だけど、意外に素っ頓狂で思い込みの激しいミュウ。そんな面は《ペットは飼い主に似る》を地でやっ……ゲフン。小さな足でミュウが駆けて行った先は、アニスの部屋でした。今度はアニスに相談です。

アニス「うーん……。難しいなぁ。トクナガが大きくなるのは、ディストがそういう風に作ってくれたからだけど」
ミュウ「みゅう?」
アニス「私も仕組みはよく分からないし。大体、生き物の大きさを変えることができる人なんて、大佐ぐらいしか……。あれ? ミュウ?」

 堂々巡りかよ! と思ったんですが、ミュウはアニスの話を最後まで聞いていなかったみたいです。トクナガを大きくするように作ったのはディスト。それだけを聞いて、ディストに頼みに行こうと宿を飛び出してしまっていたのでした。ええええ。ディストは間が抜けたところもあるけど敵なんだよ? しかもジェイドに負けず劣らずのマッドサイエンティストだよ。ヤバい、ヤバいって。ってか、変なところの行動力だけは無駄にありますねこのチーグルは。

 けれど幸いにして、町から出る直前にアッシュに(文字通り)ぶつかりました。ご主人さまのお役に立ちたいですの、というミュウの健気な主張を一通り聞いたアッシュは……。

アッシュ「……なんだこのチーグル。気のせいか妙にウザい感じが……。それに《チーグル》と言うよりこれは、《ブ》」
ミュウ「みゅ?」
アッシュ「《ブタザル》?」
ミュウ「す、凄いですの! どうしてボクの名前が分かったですの?」
アッシュ「名前? お前、ブタザルという名前なのか」
ミュウ「はいですの。ボクは、ミュウですけど、ご主人さまがブタザルって名前を付けてくれたですの。だから、ブタザルはミュウの名前ですの」
アッシュ「待て。ブタザルが名前なんだな? それじゃ、ミュウというのは何だ」
ミュウ「ミュウは、ボクの名前ですの。ミュウは、ブタザルでミュウですの。ミュウは、ご主人さまが付けてくれたブタザルって名前も、……アッシュさん? 黙ってしまってどうしたんですの? お腹痛いですの?」
アッシュ「………何でもない」←苛立ちを抑えた声で
ミュウ「もしかして何か怒ってるですの? ボク、何か変なこと言ったですの?」

 うぜぇ(笑)。

 そしてこんなところで完全同位体ぶりを露呈するアッシュさん(笑々)。いや、これって《ファブレの遺伝子》と言うべきなのかな。父上にもミュウのネーミングを試してもらいたい気がしてきました。

 この後、ミュウを探す(?)ルークが駆けてきて、「アッシュ、お前チーグル相手に何やってたんだよ」と剣呑な様子で睨み、アッシュはアッシュで「フン。ペットの面倒もマトモに見られない奴に、話すことはないな」なんて悪態をつきますが、ミュウがボクが悪かったんですのとウザ……健気な様子で謝って仲裁します。アッシュは「そいつは大きくなりたくて、ディストに相談に行くつもりだったそうだ。ペットが大事なら、首に縄でもつけておくんだな」と言い捨てて立ち去り、やっとルークとミュウの対話に。もっとお役に立ちたいと言うミュウの訴えを聞いたルークは。

ルーク「別に、大きくならなくてもいいだろ」
ミュウ「みゅう?」
ルーク「火を吹いたり、岩を壊したり、お前は充分役に立ってるよ。それに。お前が大きかったら、多分一緒に旅してないと思うし」
ミュウ「大きいボクは駄目ですの?」
ルーク(プッ、と小さく笑って)デカい図体で跳ね回ってたら、ウザくてしょうがねぇからな」
ミュウ「ボク、小さくてよかったですの! これからも小さいボクで頑張るですの。ですのー♪ ですのー♪ で〜す〜のー♪」
#跳ね回るミュウ。(ここ、ミュウが跳ね回る効果音が入ってないんですが、原作を鑑みれば跳ね回ってた方がしっくりくるなあ。)
ルーク「……訂正する。小さくてもウゼェ!!」
ミュウ「みゅうぅ〜〜」

 いつものやり取りでオチでした。可愛いなぁあ……♥♥

 やっぱミュウは、ルークとお喋りしてるのが一番いいですね。

 ガイやナタリアやアニスにどんなに諭されても、やっぱり大きくなりたいと頑固に言い続けたミュウが、ルークに言われると一発で納得する。しかも嬉しそうに。ミュウは本当にルークが大好きなんだなぁと思いました。

 

風邪にご用心

 鬼の霍乱かくらん……ゲフン、アニスが風邪をひいて寝込んじゃう話。ちなみに場所はケセドニアです。

#ベッドで苦しそうに唸っているアニス
ティア「アニス、大丈夫?」
アニス「うん。ちょっと熱っぽいけど、寝てれば治ると思うんだ」
ルーク「アニスが風邪をひくって、意外な感じだな」
ジェイド「根性のあるウイルスもいたものですね」
アニス「どういう意味ですか大佐、コホッコホッ」
ジェイド「そのままの意味です」
アニス「ぶーぶー」
ティア「大佐。病人をからかわないでください」
ジェイド「そうですよ、ルーク」←真面目な顔で
ルーク「俺じゃないだろ」←少し焦って
ティア(ふう、とため息を一つついてから、優しい声音でアニスに)少し眠るといいわ。ナタリアとガイに、栄養のあるものを頼んであるから。目が覚めたら食事にしましょう」
アニス「うん。あのさ……」
ティア「何?」
アニス「今日は、料理を作るのティアかガイにお願いしたいな」
ティア「ふふっ。大丈夫よ。ちゃんと食べられるものを用意するわ」
ルーク「その会話はなんか、納得いかねー」
ジェイド「まあ確かに、あなたやナタリアの料理は、病人には刺激が強すぎますからね」
ルーク「むっ。ジェイドだって外されてるじゃねぇか」
アニス「大佐に頼んだら変な薬を仕込まれそうなんだもん」
ジェイド「妥当な人選だと思いますよ?」
ルーク「信用がないって言わないか?」

 ジェイドの「妥当な人選だと思いますよ?」というセリフ、イマイチ意味が分からないです。アニスがジェイドを調理人から除外したのが妥当ってこと?? ああいや、自分に料理を任せるのは妥当な人選だ、とうそぶいてんのかな。

 さて、バザールに病人用の食材を買いに出たナタリアとガイ。でもナタリアは、病人のために何を買えばいいのかよく分かりません。迷っていると、偶然にもアッシュに遭遇。

アッシュ「誰か具合でも悪いのか?」
ナタリア「アッシュ! どうしてケセドニアに、――この町に用事でしたの?」
アッシュ「アイテムの補充に立ち寄ったんだ。お前は?」
ナタリア「アニスが風邪をひいてしまって……」
アッシュ「アニスが?」←流石に「あのガキが?」とかは言わないか(笑)。相手は病人だもんね。
ナタリア「ええ。それで、栄養のあるものを食べさせてあげたいのですけど……わたくしは料理が下手ですから、何を作ればよいのか」
ガイ(っ!? ナタリア、自分で作る気だったのか!)
#アッシュ、しばらく考え込んでから
アッシュ「リンゴがいい」
ナタリア「リンゴ?」
アッシュ「そのままで、充分栄養がある。すりおろせば、病人にも食べやすい」
ナタリア「わたくしに作れるでしょうか」
アッシュ「大丈夫だ。ナタリア」←すっごく優しい声です♥
ナタリア「アッシュ……!」←周囲がキラキラと輝いていそうな勢い
アッシュ「すりおろすだけだ。お前でも作れる!」←絶対ナタリアしか見えてない
ガイ「おおお〜い。何気にひどいこと言ってるぞ?」←無粋なガイ様
ナタリア「え?」←二人の世界から戻ってきた
アッシュ「なっ。何かひどかったか?」
ガイ(苦笑して)ひどかったかって……」
ナタリア「何もひどくなんてありませんわ。あなたはわたくしにも出来る料理を教えてくれただけですもの」
アッシュ「ナタリア……」←また二人の世界に入っちゃった
ガイ(リンゴのすりおろしって、料理だったのか……)
アッシュ「一つだけ、注意しておく」
ナタリア「何ですの?」
アッシュ「指まですりおろさないように、気をつけろ」←大真面目。経験から出た言葉だな、これ。
ガイ「おいおい」←正統突っ込みの会 理事着任
ナタリア「アッシュ……。ええ、アッシュ! わたくし、頑張りますわ!」

 やはし、アッシュとナタリアって割れ鍋に綴じ蓋。いわゆるベストカップルだと思う。誰もこの二人の間には割りこめぬぅ〜。アッシュの言葉に感激するナタリアは、このまま愛の歌でも高らかに歌ってミュージカルに突入しそうな勢いでした。(でもこのシーン、アッシュがちょっと優しすぎるかな? 原作のアッシュだともう少しカリカリしていて、その場にいるナタリア以外の人間…ここではガイ…の突っ込みにいちいち噛みついて、しまいに逆切れをかましそう。)

 元気百倍になったナタリアは、お店にあった全てのリンゴを買い取ります。驚いて「そんなに沢山買う必要は」と止めかけたガイでしたが、「何を言っているのです、ガイ。沢山買っておかなければ、失敗したときに困るではありませんか」と堂々たる態度で言われてしまうとよく分からなくなってしまい、本当に大量のリンゴを買ってしまったのでした。うーむ。常識さえ歪ませてしまうナタリアの王族パワー、侮りがたし!(そして、退場シーンのなかったアッシュはどこに消えうせちゃったんだろう……。最後のセリフを残して立ち去った、ってことだったんかな?)

 さて。こんなナタリア達の様子をこっそり窺っていたのは、ディスト。裏切り者のアッシュのことは全然問題視せず、アニスが寝込んでいるという情報だけを気にして、すぐさま、なんと宿屋に密かに様子を見にやってきました!

 これ、原作ゲームだけしか知らない人は「えっ?」と思うかもしれない展開ですね。原作でも、アニスのトクナガを作ったのはディストだとか、食堂で一人ぼっちだったディストの隣にアニスが座ったことがきっかけでそこそこの親交があったなんてことは分かるんですが、病気のお見舞いに来るほどディストがアニスに親愛の情を持っているという様子は、ゲーム本編からは読み取れないので。でも『電撃マ王』の公式外伝漫画4「dance! dance!! dance!!!」を読んでいると、なるほどという感じです。

 窓の外から眠っているアニスの様子をじーーっと窺って、ベラベラベラベラと独り言を言いまくります。

「私としたことが。ナタリアが店中のリンゴを買い占めるほどアニスの具合が悪いと聞いて、つい様子を見に来てしまいましたが。……よ〜く眠っていますねぇ〜」「(心配そうに)少し、顔が赤いようです。熱があるのでしょうか。……おや? あれは! 枕元にあるあの人形は、私があげたトクナガではありませんか! アニス! 私があげた人形を、片時も離さず持っているなんて。(感激した様子で息を吸って)大丈夫ですよアニス。私の親友の座は、永遠にジェイドのものですが、あなたの名前だって、私のお友達リストには、きちーんと書いてありますからねぇ!」

 キモい。キモいよおっさんんん(苦笑)。しかしホントにこの人は(一人の時も誰かと話す時も)一方的に喋るのが好きだなぁ。

 騒がしさに眠っていたアニスが目を覚まし、窓の外に人影があるのを見て、「ど、どろぼーー!!」と悲鳴を上げます。すぐさま駆け込んでくるルーク、そしてジェイド。ところが、そこにいたのは泥棒ではなくディスト。……だと確認しても、「いいえ違います。これは泥棒です」と言い張るジェイド。

ディスト「ジェイド! 会いたかったですよ」
ジェイド「泥棒に知り合いはいません」
ディスト「アニスの様子を見に来て、あなたに会えるなんて、なんという運命のいたずら!」
アニス「へ。私?」
ディスト「ええ。そうです。あなたが危篤だと聞いたもので、少し心配で」
ルーク「誰が危篤?」
アニス「あれ? ということはぁー。もしかして、ディストー。お見舞い金を持って来てくれたとかぁ?」←嬉しそうに
ルーク「流石アニスだ」
ジェイド「お金に貴賎はないということですね」
ディスト「生憎と、お金は持って来ていませんが、お見舞いは持ってきていますよ。ほら!」
#人形を取り出し、アニスに渡すディスト
アニス「これっ、て……」
ディスト「トクナガのお友達、サフィール人形です」
アニス「サフィール人、形?」
ルーク「サフィールって……。確か、ディストの本名だよな?」
ジェイド「ええ」
ルーク「人形に自分の名前を付けてんのかよ」
ジェイド「馬鹿ですから」
ディスト「誰が馬鹿ですか! このサフィール人形は、なんと、言葉を覚える自己学習機能付き。この私の、最高〜〜傑作なんですよ!」
ジェイド「ぽいっ」
#サフィール人形を無造作に窓の外に投げ捨てるジェイド。
アニス「あ」
#サフィール人形、空の星になる
ディスト「あーーー!! サフィール人形がぁ!」
ジェイド「あぁーすみませーん。つい手が滑って」
ルーク「どう滑ったんだよ」
ディスト「さてはジェイド。あなた、私がアニスを心配したことに嫉妬してますね? 心配しなくとも大丈夫です。あなたが寝込んだ時には、窓からこっそり来るのではなく、正面から、堂々と見舞いますよ!」
ジェイド「お断りします」
ディスト「ムッキー! どうしてあなたは、そういつもいつも素直じゃないんですか!」
ルーク(苦笑して)素直じゃないって」←ガイがいないとルークがひたすら突っ込み役になるんですね(笑)
ジェイド「殺意を覚えますねぇ」←表面上はにこやかに

 こんなやり取りをした後で、アニスがディストを上手く丸めこんで帰らせちゃいました。サフィール人形も柔らかく辞退して。アニス、ディストあしらいが上手ぇ。譜術で撃退するばかりなジェイドより上手いかもですよね。私にはトクナガがあるからサフィール人形はディストが持っているといいと思うよ、なんて言われて「アニスは、遠慮深いですねぇ……」と感激した様子のディスト。ルークは「どんなフィルターだよ! ガルドだったら絶対受け取ってるぞ!」と突っこんでましたが。ともあれ、丸めこまれてディストが帰っちゃうと、「ちょっと、可哀想だったかな」なんて呟く辺りがアニスのアニスたる由縁。だからディストにも気に入られちゃってる気がする。(アニスの年齢がもう少し高かったら、この二人の関係って傍からはちょっと微妙な感じに見えたかもなーと思えた。むむ。)

 その後、ようやくナタリアとガイが買い物から帰還。抱えた大量のリンゴにルークたちが呆れ果てるというテンポのいいやり取りの後、今度はルークが風邪をひいたことが発覚しちゃいました。今年の風邪は、アニスでも《馬鹿》でもひくほど強力らしい。冒頭と同じく「ぶーぶー。どういう意味ですか、大佐ぁー」とアニスに問われて「今年の風邪は強力だという意味ですよぉ」とジェイドがおちゃらけて答えるんですが、ここの発音は、実際に聴いてもらわないと面白さが分からないですね(笑)。お馬鹿なルークも感染っちゃった風邪。では、もしかしたらもう一人の《馬鹿》も今頃……? なんて失笑するジェイド。この話のオチはするするっと流れていてテンポよく、形がきれいで気持ちいい感じでした。

 

戦え! 音素フォニム戦隊アビスマン

 おまけ。…と言っちゃっても間違いじゃない、ですよね? 一番短い話ですし、明らかに毛色が違うし。なんとなく、お弁当箱の隙間に美味しいおまけがこっそり詰められていた、という印象。

 ルークたち+アッシュ+ディストが『音素フォニム戦隊アビスマン』という特撮番組風のお芝居をしている、という感じの話。ですが、どうしてそんなお芝居をしているのかの説明はありません。や、理由なんて最初からなく、単純に『アビス』と「特撮もの」のダブルパロディというだけのことかな。トクナガがいつもの五十倍だし(笑)。

「人間は」と言うべきか「オタクという人種は」と言うべきなのかは分かりませんが、既存キャラを特定カテゴリにあてはめる遊びを好むものですよね。学園もの、魔法少女もの、ロボットもの、特撮。あるいは童話。

 あくまで本編のルークたちがお芝居としてアビスマンに扮している、と考えた場合、ルークが「これ、戦隊ものなんだろ? こっちもロボット呼び出せるんじゃないかと思って」と言ったのに妄想を刺激されました(笑)。テレビのないオールドラントでは『アビスマン』は子供向けの大衆演劇として広まっており、軟禁お坊ちゃまのルークはピオニー皇帝にアビスマンの衣装をもらうまで存在すら知らなかった、というのが原作での設定でしたので、そんなルークが「戦隊もののお約束」まで熟知しているということになると、衣装をもらった後で「実際に『アビスマン』の演劇を見に行った」か「ガイやピオニー陛下に詳細に教えてもらった」ということになるんかなーとか。

 

『音素戦隊アビスマン』第81話「死神博士を倒せ」(何気に二年近く放映続いてるのね。話の内容的に最終回間近っぽいですが)
前回までのあらすじ。(ナレーション:アビスオレンジ)
「アビスマンたちは妖獣プリンセス(アリエッタ?)の罠にはまり、絶体絶命の危機に陥った。そんな彼らを助けたのは、悪の貴公子ことアビスシルバーであった。ブラック魔界クリフォト団に洗脳されていた彼は、戦いの中で、レッドの兄・アビスシルバーとしての記憶を取り戻したのだ。今、世界を救うため、七人のアビスマンがブラック魔界団に挑む!」

 って感じで始まります。アビスマンたちは元々、悪の組織ブラック魔界団が作りだした改造人間イビルマンで、そこから正義の心に目覚め、アビスマンとして組織と戦う道を自ら選んだんだそうな。で、イビルマン改造を行ったのが死神博士ことディストなんだそうです。つまり改造人間としての生みの親。……が、この設定を「却下します」の一言で切り捨てるジェ……アビスブルー(笑)。お芝居をぶっ壊す勢いで断固拒否。

アビルブルー「冗談ではない。断固として却下します」
死神博士「あの……、もう、私の出番なんですが」
アビスブルー「少しは空気を読みなさい! 今は重要な話をしているんです」
死神博士はい
アビスブラック「横暴です、ブルー!」
アビスブルー「横暴でも何でも構いません。とにかく、死神博士が生みの親だ、などという馬鹿げた設定は、断固として拒否します」
アビスオレンジ「無茶言うなよ……」←苦笑しつつ

 一方、アビスレッドは「主役は俺」ってのが拠り所な模様。最初から終わりまで、何度も何度もこの言葉を口にします。

アビスレッド「なあ〜、なんか俺、主人公なのに影が薄くないか?」
アビスブラック「レッド。この作品は、《アビスマン全員》が主人公なのよ」
アビスレッド「えっ、マジ!?」
アビスシルバー「屑め。自分が目立つことだけ考えるとは、協調性のない奴だ」
アビスレッド「なんだよシルバー。お前一応、俺の兄貴なんだぞ。弟のこと、屑とか言うなっつーの」
アビスシルバー「こんな弟を持った覚えはない」
アビスレッドしるばーにいさんっ!←芝居がかった様子で
アビスシルバー「〜〜っ、気色の悪い呼び方をするな、劣化レッド!」
アビスレッド「れ、劣化レッドぉ!?」
アビスオレンジ「劣化レッドって……」←苦笑して
アビスブラック「新しい響きね」
アビスピンク「あはは〜もうぐちゃぐちゃだよぉ〜」←疲れた声で
アビルブルー「全て死神博士の責任です」←真顔
アビスオレンジ「おいおい」←正統突っ込みの会 常任理事

 ここでアビスブラックに「《アビスマン全員》が主人公」とたしなめられたわけですが、ラストではまた「俺は主役だからいいとして」とサラッと言ってました(笑)。どうでも主役でありたいようです。

 にしても「劣化レッド」か。音が韻踏んでて語呂がいいですね(笑)。

 そしてこの話で一番笑ったかもしれないシーン。↓

死神博士「ムッキー! 黙って聞いていれば言いたい放題のことを。もう許しません。カイザーディストハイパーDX.、やぁっておしまい!」
#巨大ロボットが出現
アビスレッド「おわっ、いきなりロボットかよ」
アビスオレンジ「まずいぞ。かなり本格的な譜業ロボだ。きちんと連携を取らないと。――って、何やってるんだレッド! 壁画みたいなカッコして!」
#「ハッ、ホッ」などと言いながらビシバシッと動いては次々とポーズをキメているアビスレッド
アビスレッド「なにって、これ、戦隊ものなんだろ? こっちもロボットを呼び出せるんじゃねぇかと思って。ほっ、ハッ、ふんっ! 色々ポージングしてるんだけど」
アビスオレンジ「え〜、そんな設定あったかな……」
#動きを止めて
アビスレッド「ないのか?」

 壁画みたいなポーズって(笑)。オールドラントの壁画がどんなものかは分かりませんが、とりあえず私の脳裏に浮かぶのはエジプトの壁画でした。あのポーズを次々と高速で……。色々と器用だよなルー……アビスレッド。

 この後はサプライズ(?)的クライマックスがあって、ギャグアニメお約束風決着。でも戦隊ものならホントの連携技で倒してくれたら面白かったかな。由緒正しく爆弾ボールをみんなで蹴るとか(笑)。ともあれ、みんな楽しそうで、聴いていても楽しかったです。

(ナレーション:アビスオレンジ)
「こうして、アビスマンたちは死神博士の撃退に成功した。しかし、油断はできない。この先にはブラック魔界クリフォト団団長、悪の譜術使いが待ち受けているのだ。世界の平和を守るため、戦え、アビスマン。がんばれ、音素フォニム戦隊!」(ジャジャ〜ン、と音楽盛り上がって終了。)

 ……え。《悪の譜術使い》? ラスボスはジェイドかよ!!(爆笑) っていうオチ(笑)。お見事でした。





 各ストーリーの感想は以上です。

 この他、前巻に引き続き、冒頭のタイトルコールがレプリカルークとアッシュのショートコント仕立てでした。レプリカルークを出し抜いてアッシュがタイトルコールを読んじゃう、と言う。

 巻末のボーナストラックには、ジェイド役の声優さんとアニス役の声優さんの対談。前巻のルーク役とガイ役の声優さんたちの対談が、声優さんたちご自身の対談だったのに対し、こちらは役柄の仮面を半ばかぶったままでした。役の声色のままで終始喋ってた。そもそも、役柄名のみで声優名を名乗らないんですもん。おかげでか(?)声がはっきりしていて聞き取りやすかったです。あと、話す内容が今回のドラマの脚本への感想になっていて、《『アビス』ファン》には嬉しかったかと。(声優さんご自身のファンは少し物足りなかったりしたのかな?)

 印象深かった会話。↓

桃井「でも大佐の毒も凄かったですね今回。びっくりしました」
子安「そうですか? え、何かありましたっけ?」
桃井「台本読んで最後に、(吹き出して、素の声になって)全部嘘だったって」
子安「ああ〜。あの人ホントひどいんですよね。まあ、あの〜、大事なー…ことを、さえ、もしあるならば、そこさえ言ってれば、あと何を言ってもいいんで。ただ、あんまり言い過ぎてると、大事なことも誰も信用してくれなくなるけどね(笑)」
桃井「(笑)ホントにぃ〜? なんて」
子安「とても悲しいことになるんですけど。そのへんのバランスすごく難しいっちゃ難しいんですけど、僕そんなこと考えてません」
桃井「(笑)」

 雑誌『電撃マ王』08年9月号にこのドラマCDの声優インタビューが載っていましたが、ガイ役の声優さんのコメントが「ガイは常識人なキャラだったんですが、もっとハミ出したいなぁ、と思いました(笑)」というもので。以前WEBラジオにて似たようなことを仰っていてたんですよね。ゲームの声の収録の時、ジェイド役の人などは色々とアドリブを入れていたのに、自分がやると「ガイなので」と止められてしまった、とか何とか。やっぱジェイドはかなり自由にアドリブ入れられるキャラなのかぁ。大事なことをちゃんと言いさえすれば。

 しかし確かに、あんまり嘘ついて人をからかってばかりだと、何かの折に信用されなくなって窮地に陥るってこともありそうです。狼少年ならぬ狼中年(笑)。そういう外伝小説か二次創作が出ないかなぁ。どこかにもうあるのかな?

 



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