注意!

 

DRAMA CD VOL.4 TALES OF THE ABYSS

脚本:金月龍之介/音楽:関美奈子/演出:鳥島和也/スペシャルサンクス:実弥島巧/フロンティアワークス

 本編ドラマCDの四巻目です。これで完結のはずでしたが、一巻増えたのでまだ終わっていません。また、当初の予定では十二月末発売予定でしたが、延期の結果、翌年三月末の発売になりました。四月末発売予定だった最終巻も、現時点で既にそれ以降に発売延期が決まっています。
 ……なんでこんなに遅れるんだろう?

 今回、WEB上に出ているレビューを拝見した限り、あまり評判が良くない様子でした。なのでビクビクしながら聴き始めたのですが、「なんだ言われているほど酷くないじゃん、普通に面白いよ」と思い、しかし中盤(イオンの死)辺りから「?」と思い出し、仲間たちが障気中和しようとするルークを止めたり、ティアとルークが盛り上がってる辺りは、気持ちが物語から離れてしまい、イライラしたりシラけてしまったり。挙句、気が散って、本を読みながら聴いてしまいました。
 物語から気持ちが離れてしまうと様々な部分が鼻についてしまい、例えばシンクが仮面を取った時にパイプオルガン風の音楽がガガーンとかかったり、ルークとティアのラブシーンで音楽が感動的に盛り上がったり、ディストが死ぬ時に可哀想な感じの音楽が高まったりしますが、えらくシラけた気分になったり、逆に笑い出しそうになってしまったりしたのでした。(二度目以降は慣れたので平気になりましたが。)
 そうして辿り着いた今巻の結末は、聴いて唖然。
 は? なんじゃこれ??

 ううううううう〜〜む……。
 ごめんなさい。今回は楽しめませんでした。これちょっと展開が奇天烈じゃないですか?
 巷で言われていた、アッシュの性格が悪くなっている、ルークがより可哀想さを強調されている、というようなことは感じませんでした。ジェイドは酷すぎましたが。そしてガイは出番なさ過ぎ。前巻までと比べてアニスが普通になっていたこと(前巻の感想に「このドラマCDにはルークがアニスを好きになる要素がない、だからイオンの死後に原作通りルークが優しくアニスを慰める展開になったら怒る」と書きましたが、ホントにルークはアニスを慰めないことになっていました。ガイが慰めてた)、戦闘での活躍の無かったナタリアが優れた弓術の腕を披露するシーンがあること(わざわざ、前巻でナタリアもちゃんとアリエッタと戦っていたのだと説明入れてありました。戦ってないという感想書いててごめんなさい、という気分に)。交流の無かったアニスとティアがコンビになって行動するエピソードが入れられていたのは嬉しかったです。
 しかし、原作での結論を詰めてしまって、障気中和前の現段階でルークとティアに、原作での愛も自己確立も「まとめて一度に全部」言わせてるのはどーゆー了見なのか。原作の展開(そこに至るまでの心理の流れ)が破壊され、結果として、ルークが至った結論は突如理由なく悟った、リスナー置いてけぼりの「理屈」に堕ちてしまっています。何もかもが台無しだー。
 …原作での結論を踏み越え、ドラマCD完全オリジナルの更なる展開とテーマを、最終巻で語るつもりなのかな?

 どうにも釈然としないイライラ感にとらわれつつ、以下、頭から重箱の隅つつき感想をやっておきます。ネタバレ注意です。



 三巻目聴いたの去年の十一月ですから、すげー前なんですけど…。
 確かアブソーブゲートでヴァンに立ち向かったところで終わってましたっけ。今回はドコから始まってるんだ…? と、思いつつリスニング開始。

 うわ。なんかイキナリ アッシュとリグレットが戦闘してるよ?
 前巻の感想で、
「アッシュはどこ行っちゃったのか。」「さて次の最終巻でどんな説明がされますか。」
 と疑問を提示しましたが、その回答からの開始でした。そこがどこなのか不明ですが、ルークたちがヴァンと戦っていたとき、アッシュはリグレットと戦闘していましたとさ。
 原作では、アブソーブゲートでヴァンと戦うときリグレットがヴァンの援助に現れないのは、ロニール雪山の雪崩に巻き込まれて大怪我していたからなわけですが、ドラマCDにはそのエピソードがない。その辺を上手く絡めて処理してありますね。

 リグレットはアッシュを「閣下だけだ。お前を求めているのは閣下だけ。お前の居る場所は閣下の隣。そこだけだ」と諭し、アッシュは「貴様は元々、弟の仇を取るためにヴァンに近づいたと聞く。それが、今や奴の言いなり! この世界を終わらせるなんて馬鹿げた妄想に付き合っている」「愛ゆえに、か?」「理解しがたい阿呆ぶりだな」と罵倒し、嘲笑う。しかしリグレットは全く揺らぎません。

「果たしてそうかな。人は然るべき場所を――立つべき所を持たずして生きていくことが出来るのか。私には出来なかった。アッシュ、お前には出来るのか!!」

 リグレットに、両親も友も、誰もお前を必要とする者はいない、必要としているのはヴァンだけだと言われ、動揺するアッシュ。しかし、そこで唐突に高笑いを始めます。回線を通じて、ルークがヴァンを倒した様を目撃したと言うのです。
 リグレットは立ち去り、アッシュは空虚な思いを抱えて一人佇みます。脳裏に浮かぶのは、かつてシュレーの丘で聞いた、ヴァンが自分を必要とし求める声。苛立って剣を床に叩きつけた時、脳裏に響くローレライの声。鍵を渡すから栄光を掴む者から解放して欲しい、と。

 ここの部分、聴いていて状況がよく解りませんでした。「アッシュが自分の剣を床に叩きつける」→「ローレライが『今一度剣を手に取るのだ』と言う」→「アッシュが数歩歩いて、足元から剣を拾い上げる」→「それがローレライの剣」という流れなので、最初、投げ捨てた剣が元々ローレライの剣だったかと思っちゃいましたよ。でもそれだと辻褄が変なので、違う…んですよね? 投げ捨てた剣がローレライの剣に変わったのか??

 ここでアバンタイトル終了。続く本編では、外殻降下作戦が実行されたことがナレーションで語られ、グランコクマの酒場兼食堂から物語が開始されます。ヴァンを倒した後も何故かルークたちは解散せず、イオンすらダアトに帰さないままグランコクマに逗留し続けているようですが、その理由は語られず、説明なく話が進むので、かなり長い分数、状況が掴めずに困惑しました。
 それにしても、どうしてガイとティアが二人きりで酒場でカレーで食事しているのでしょう。状況が分かりません。二人を発見したアニスが「げ、お忍びデート!?」と二人の仲をからかいますし。更に、イオンを探していたはずなのに、どっかり席に座って「こちらの伯爵様のツケでね」とカレー大盛を頼むアニス。

 一方、ルークは港で一人、物思いにふけっています。ヴァンに言われた、「何かのために生まれなければ生きられないと言うのか? だからお前はただのレプリカでしかないのだ」という言葉が彼を捕らえています。そこにイオンが現れます。

イオン「海はお好きですか? 僕はあまり。ダアトから出て、初めて海を見たとき、がっかりしたんです。想像していた海というものは、もっと大きくて、綺麗で。……ううん、違うな。そう、もっと優しい場所のはずでした」
ルーク「……偶然だな。俺もそう思った」←小さく笑って
イオン「僕たち、似ているところがあるのかもしれませんね」

 原作の外殻大地編と崩落編であったルークとイオンの暖かな心の繋がり。このドラマCDシリーズではことごとくカットしてきたそれを取り戻すかのごとく、ルークが唐突にイオンに対して心を開け広げにし、腹を割って語り始めます。……原作では、レプリカ編冒頭、再会直後のルークとティアのものだった会話。そのティア(ヒロイン)役を丸々イオンにすげ替えて。

ルーク「――なあ。俺って、何なんだろうな」
イオン「あなたは『ルーク・フォン・ファブレ』です。違いますか」
ルーク「違う。俺は『ルーク・フォン・ファブレ』のレプリカだ。本当は名前もない、家族もいない。空っぽだ。……アッシュが帰ってきたら。俺の居場所は……」

 自分自身がバチカルの屋敷に帰ってない(事態が終息していない?)状態なのに、早くも「アッシュが帰ってきたら…」と心配しているルークです。

イオン「七年間、ファブレ公爵と一緒に暮らした記憶は、本物のはずです」
ルーク「理屈じゃ分かってるんだ。俺は俺だって。だけど……師匠せんせいが言ってたろ。『何かのために生まれなければ生きられないのか』って。少なくとも俺はそうだよ。不安なんだ。俺は何のために生まれたのかって」
イオン「生まれた……意味」
ルーク「……はっ。駄目だな。ちょっと余裕が出来ると、役にも立たないことを考えてる。ティアに聞かれたら、ぶん殴られちまう。ははっ」
イオン「そうやって考えながら、前へ前へと進んでいくあなたを、僕は立派だと思います」
ルーク「ありがとな。でも、買いかぶり過ぎだ。俺はなんにも変われちゃいない。師匠のあの言葉を聞いた途端、ふりだしに戻っちまったんだよ」
イオン「ルーク……」

 「師匠が言ってたろ」って、ヴァン師匠がその台詞を言ったアブソーブゲートでの戦いのとき、イオンは同行していなかったはずなんですが…。実はこっそり同行していたのでしょうか。ドラマCDだと喋らない限り居ても分かんないですもんね。
 「師匠のあの言葉を聞いた途端、ふりだしに戻っちまったんだよ」はいい台詞だと思いました。ルークの精神状態が分かり易いです。

 …と、ヒロイン(?)に弱音を吐いていたところで、唐突に激しい爆発音。城で爆発が起こったらしい。するとルークが血相変えて叫びます。

ナタリアー!!

 あり? ナタリア? 城に確実にナタリアがいるってコトは、ここはグランコクマじゃなくてバチカルだったのか??
 と、混乱したところでトラック2が終了です。あらゆる状況がよく分かりません。


 次のトラックは、ピオニー陛下とジェイド、そしてナタリアの会話で始まります。
 ……えーと。つまり、やはりここはグランコクマで、「城」というのはグランコクマ宮殿のことなんですね。
 ナタリアに微妙にコナをかけるピオニー陛下。ジェイドに「陛下。ナタリア姫には婚約者が」とたしなめられ、「おっと。どこのどいつだ?」と訊ねると、何故かナタリアは気まずい顔に。気を遣ったジェイドが「私からご説明しましょう」と言いかけたのを「いいえ」と遮り、思い切ったように告白します。
わたくしの婚約者は、『ルーク・フォン・ファブレ』です
 ……それはそんなにも言うのが気まずいことなのか。実際、聞いたピオニーの方もなんとも決まり悪げな声音になって、オリジナルのルークから連絡はあったのか、俺に何か出来ることがあったら…などと同情的に言うのです。
 原作の方だと、ナタリアはなんだかんだで幼なじみとしての態度は崩さずにずっとルークを助けてくれていて、崩落編のラストバトル前には、ルークと話し合って「恋愛相手」としての気持ちにも一区切り付けていましたが、ドラマCDでは もうちょい葛藤を引っ張る様子です。ナタリアはまだレプリカルークを認めることが出来ないし、ピオニーやジェイドも同様で、彼女の気持ちに自然に共感している様子。……レプリカルークは、オリジナルルークの居場所を奪った「偽者」でしかないんですね、まだ。(アレかな。最終決戦前にアッシュが死んでから、「以前の私だったらあなたとアッシュを混同していたと思います。でも、あなたはあなたですものね」で落とすのかな?

 そこに、(どうやって こんな所まで入れたのか甚だ疑問ですが)キムラスカ兵の扮装をしたレプリカが侵入。自爆テロを行います。

#激しく扉を開け、ルークが駆け込んでくる。
ルーク「っ……、ナタリアぁ!!」
ナタリア「お静かに! 陛下の御前ですわよ、ルーク」←険しい声音
#安堵の息を吐くルーク
ルーク「無事だったのか……!」
ピオニー「ナタリア姫の譜術に救われたよ」
ジェイド「アクアプロテクションですね」
ピオニー「ですね、じゃないだろうが! 本気で使えない奴だな」
ジェイド「申し訳ありません。丁度あのタイミングで、持病のさしこみが。アイタタタタタ」
ピオニー「は。言ってろ」
ナタリア「見ての通りです。わたくしたちに問題はありません。むしろ問題は、我が国の兵士がこのような暴挙を……」
ルーク「よかった!」
ナタリア「っ!?」
#ルーク、ナタリアに駆け寄って抱きつく。動揺するナタリア
ルーク「俺……お前が死んじまったんじゃないかって……!」
ナタリア「ル、ルーク……」
ルーク「あ。あぁああ、悪い!」
#ルーク、慌ててナタリアから離れる。ぎこちなく笑って
ルーク「俺、こんなことする資格、ないもんな」
ナタリア「……っ」←喉を震わせる
ルーク「俺、お前の本当の婚約者じゃないから」
ナタリア「……」←苦しげな吐息

 なんだかビックリ。ドラマCDのこの時点のルークの気持ちは、まだティアよりもナタリアにやや大きく向いている感じ?
 この後、グランコクマ宮殿に乗り込んできたアリエッタの乗った飛行魔物を、ナタリアが弓で見事に撃ち落すシーン後にも二人の会話があります。

ルーク「弓の腕、相変わらずだな。すげぇよ。流石はナタリアだ」←ぎこちなく笑いながら
ナタリア「………………ルーク」
ルーク「……っ!」←ギクッ、とした感じ
ナタリア「アッシュの名を聞くのが、怖いのでしょう?」
ルーク「……」
ナタリア「ごめんなさい……! わたくし、あなたの存在を肯定してあげることが出来ません」
ルーク「……」
ナタリア「分かっているのです。あなたはあなた、アッシュはアッシュだと。でも……!」
ルーク「いいんだ。謝らなきゃいけないのは、俺の方だ。……俺さえいなければ、お前はアッシュと」
ナタリア「そんな言い方はおよしになって!」
ルーク「――……ごめん。ごめんな」


 さて。ナタリアにこんなに想われている、必要とされているアッシュですが。
 前後の脈絡なく、アッシュが港にルークを呼び出すシーンに変わります。「遅い! 来いと言ったらすぐに来い、屑が」と初っ端から不機嫌。「私が無理に付いて来たのよ。何か問題でも?」とケンカを売る もとい、ツンケンと言い返すティアを見て「女に守ってもらえるとは、いいご身分だな。屑が」と吐き捨てます。
 アッシュはローレライの宝珠を貰い受けに来たと言いますが、ルークは宝珠どころか、ローレライの声そのものすら全く聞いてもいませんでした。アッシュの話を聞いて、ルークたちは初めてヴァンが生きていること、ローレライを解放しなければ障気が湧くだろうコトを知ります。

ルーク「おい、アッシュ。待てよ、どこに行くんだ」
アッシュ「お前が取り損ねた宝珠を探す。……アテはないがな」
ルーク「なら、一緒に探そう」
アッシュ「レプリカと馴れ合うつもりはない」
ルーク「レプリカだから、お前の助けが必要なんじゃないか」
アッシュ「いい加減にしろ! お前がそんな台詞を言える立場だと、思ってるのか!」
ルーク「けど、俺は!」
アッシュ「これ以上、俺に面倒をかけるな! お前が、ローレライから宝珠を受け取っていれば、こんなことにはなっていなかったんだ。どこまで役立たずなんだ、この屑レプリカは! その上、ヒィヒィ泣き喚きやがって。さしづめ、俺が戻ったらバチカルに居場所がなくなっちまうとか、そんなことを考えて、今のうちに殊勝な振りして媚を売ってるんだろうが、安心しろ。戻らねぇよ! ハッ。脳みそだけじゃなく、根性まで徹底的に劣化して腐っちまって」
#ティアが激しくアッシュの頬を打つ。口をつぐんでティアを見るアッシュ
ティア「……腐っているのはあなただわ、アッシュ」←怒りに震える声で
アッシュ「……貴様……!」
ティア「ルークはあなたの代わりかもしれない。でも、ルークの代わりは誰もいない!」
アッシュ「……ちっ」
ルーク「アッシュ。一緒に探そう」
アッシュ「……分かったことがあったら、連絡くらいはしてやる」

 なんともはや。
 色んな意味でイヤンなシーンだと思いました。
 アッシュ、口が悪くて言い過ぎ。でもティアも最初からケンカ腰だし、アッシュに言うことがさり気に酷い。なんとかしてくれぇええ…。ルークは胃が痛くなったことでしょう。

 あと、「その上、ヒィヒィ泣き喚きやがって」ってさぁ…。
 二次創作ではこのネタ割とよく見かけるんですが…アッシュがルークの精神的な泣き声を聞いている、って奴。一応確かめておくと、原作にそんな設定ないですよね?
 どうしてここの会話でこういうネタを引いてくる必要があるのか分からないです。今巻の結末近くに出てくるルークとアッシュの会話からも分かりますが、このドラマCDでは「アッシュはいつでもどこでも、ルークに意識させないまま、ルークの持つ情報を取得できる」ってことになってるよーなんですが。原作にそんな設定ないはずだってば。ルークの耳や目を使うためには意識を接続する必要があって、それをやるとルークの方は猛烈な頭痛に襲われますんで、意識させないままなんて無理では。
 ファミ通文庫小説版もこの設定になってましたが、原作本編に現れていないだけで、実はそれが公式設定なのでしょうか。つーか、アッシュ視点になると何が何でもそうならなければならないのか。いくら話を作るのに便利だからって。アッシュはルークを使った覗き屋ピーピング・トムでなければならないのか。ルークがアッシュの「人形」で、心のプライバシーすらないっていうのは、生理的にどうにも受け付けられないので、イヤだなぁ…。

#真面目な話、アッシュがルークの心を覗き放題・心の悲鳴漏れ聞き放題だったなら、あそこまで互いに理解し合えなくて揉めに揉めたりしなかったと思う。
#二次創作のネタとして扱われている場合は全く引っかからないのに、公式二次で扱われるとこんなにもイヤだと思ってしまうのは何故なのでしょう。私は心が狭いです…。

 それはともかく。ティアに「ルークはあなたの代わりかもしれない。でも、ルークの代わりは誰もいない!」と言われてしまったアッシュ。ルークたちと別れた後、その言葉を反芻して「くそ。……くそっ。……くっそぉ!!」と吐き捨てます。
 そりゃそーだ。これって、「ルークは替えのきかない唯一の存在だけど(そのくらい、ティアはルークを必要としている)、アッシュは替えがきく(アッシュを必要としている人はいない)」と言ってる意味にも取れちゃいますよー。
 この台詞自体は、原作のアブソーブゲート決戦前夜のイオンの台詞の改変なのですが、レプリカであるイオンが自分自身を指して「シンクの死を目の当たりにしてやっと分かったんです。……僕はイオンの代わりだけど、僕の代わりは誰もいない」と言うのと、オリジナルのティアが第三者のルークとアッシュを指してそう言うのでは意味が違っちゃいますよー。シナリオライターさん、何故こんな角の立つ台詞運びを選ぶのか…。

 と言うか。私、ここでティアがルークに付いて来て、ルークに肩入れするあまりにアッシュをひっぱたくのって、あまり感心しないんですよ。
 エピソード自体は、原作のレプリカ編のロニール雪山で埒もなく言い争うアッシュとルークを「やめなさい! 二人とも喧嘩している場合じゃないでしょう?」とティアが叱り付けて黙らせた場面のアレンジだと思うんですが、手と口で「アッシュを攻撃する」までに膨らませなくてもよかったのではないかと。
 ルークとアッシュの問題は、この二人でどーにかするべきだと思うから。
 原作の障気中和前のダアトで、ティアがルークを罵倒するアッシュに「そんな言い方はやめて!」と言い返して、でもアッシュに「お前は引っ込んでろ!」と怒鳴りつけられて黙り込んでしまうシーンがありましたよね。
 なんかそういう感じです。アッシュとルーク、二人の男の存在や信念をかけた対立なので、女――っていうか「お母さん」が口を挟んではいけないのです、と思う。

 ティアの言葉に傷ついて悪態を吐くアッシュは、そのまま過去の回想シーンに突入しちゃいます。誘拐され、当初はヴァンを憎んで殺意を抱いていたこと。しかし師と弟子として接するうち、戦争被害者としてのヴァンの悲しみや戦争のない世界を作ろうとする理想を知ったとき、たまに優しさを受けるうち、殺意は消え、居場所のなくなった自分にとってヴァンが新たな居場所となっていたこと。
 利用されているだけなのは分かっていたが、それでもよかった。ヴァンが人間全部をレプリカにするなんて馬鹿な計画さえ立てなければ、ずっと弟子でありたかったのに…と。

#余談ですが、子供時代のアッシュの声は高めのルーク声でした。一巻で聴けるルークの子供時代の声は女性の声優さんなのに… (笑
#子アッシュ声は成長と共に次第にドスの効いたアッシュ声に変貌。ちょっと怖い。

 原作では、アッシュがヴァンへの弟子としての思慕を吐露するのはラストダンジョン突入前で、プレイヤーとしては唐突に思えて戸惑わされるので、この時点でアッシュの心情を説明してくれるのは分かり易くていいと思います。ただ、贅沢を言えば、ナタリアへの想いもアッシュに吐露して欲しかったかもです。だって原作では、アッシュの話は「ナタリアが六割、レプリカが三割、残りはヴァン」で出来てるのに。前巻もそうでしたが、どうしてただの一度もナタリアを想わないし、挙句冷たいのか。
 二巻でナタリアを助けてくれた以降、アッシュのナタリアへの想い・執着が感じられない。アッシュにとって、ナタリアは「奪われた居場所」そのもの。「陽だまりへ帰りたかった理由」だったんじゃないかなーと思うのに…。
 私は、ドラマCDのアッシュは性格的には原作からズレているとは感じないのですが、唯一、ナタリアを無視している点だけは納得できないです。
 つーか。
 小難しい理屈はどーでもよく。アシュナタ聴きたーい聴きたーいアーシューナーター!! ナタリアの片側通行だけでなく、アッシュ側からのも聴ーきーたーいー!!
 とか(笑)。
 最終巻にそういうシーンがあることを期待したいです。


 さて。アッシュから聞いたローレライの鍵の話をティアが仲間たちに報告。ここで語られたことによれば、モースは「平和条約の一件で面目を潰して大詠師職を罷免され、しかし査問会の最終決定を待たずに逃亡して行方不明」だそうです。あり? 原作ではモースはこの時点で完全に犯罪人扱いされてたと思いましたが、ここでは「面目を潰して失脚」程度なのか…。更に、ジェイドがこんなことを言います。

ジェイド「派閥抗争が終わって、これから粛清が始まる。大詠師派の人間にとっては災難でしたね。……おっと失礼」
#ジェイド、ティアを見る
ジェイド「あなたもモース直属の部下でしたか」
ティア「導師イオンが……色々と、手を打ってくださいました」←気まずげ
ジェイド「玉虫色の身の置き方、勉強になります」
ガイ「よせよ、ジェイド」
ジェイド「黒でもなく白でもなく。今はそれが賢明な選択でしょう。ただ、長くは通用しませんよ。ローレライ教団は預言を信奉するモースを罷免しておきながら、預言スコアそのものをまだ完全に否定してはいない。この矛盾はいずれ、誤魔化しきれなくなる」

 ……はぁあああ?
 と、思ってしまいました。なんじゃこのジェイド。
 第一に、ティアに対する棘が大き過ぎ。っていうかジェイドはそこまで人の心の読めない、読めても無視する人間だったか? …ああそうか、ドラマCD版ではパーティーメンバーの心の交流が乏しいから、レプリカ編になってもまだ外殻大地編なみにギスギス関係のままなのか。と思いつつも、ショックでした。
 第二に。なに思い切り他人事口調で偉そうな理屈言ってんだこの男は、と。

 原作だと、ティアは最初モースを「宗教上の師」として慕っていて、しかし思想的に相容れないことを見せ付けられ、傷つきながら対立し……。崩落編において、ルークたちと協力してモース罷免まで事態を動かしたのはティア自身でもあることは、プレイヤーにも仲間たちにも重々分かっている。なので、その見地から見るとジェイドのこの皮肉(忠告?)は的外れというか、「ハァ? 今頃何言ってんの!?」って感じなのですが。
 しかしドラマCDだと違うのか…。ああそっかティアとモースの対立エピソードはドラマCDではやってないですよね。ティアはまだ、原作でのタルタロスの尋問室の時点から精神的に変化無しの、「私は中立派よ」なキャラな訳ですか。
 ちなみに、原作でヴァン離脱・モース失脚・イオン死亡後に教団を支え続けた詠師テオドーロや詠師トリトハイムも、派閥で言えば「大詠師派」のはずですが…。

 すごく感覚的なものなのですが、ジェイドが冷たい。言ってることは正論ですが、薄っぺらくて機械みたいです。
 仲間たちと共にこれまで世界中を行き来して頑張った経験、心の繋がり。それがあったなら、同じことを言うにしても、もう少し違う言い方をするんじゃないか。「あなたもモース直属の部下でしたか」というのを、嫌味たらしい揶揄ではなく、微妙な気遣いのニュアンスで言うとか。だってレプリカ編なんだよ外殻大地編じゃないんだよ。このCDでは何故か完全無視されてるけど、ティアは唯一の肉親のヴァンを自らの手で殺し、今また殺し合わねばならない状況に陥ったトコロなんですよ。仲間ならそれが分かってるでしょ。特に気遣う言葉を掛けなくてもいいけれど、嫌味まで言うのは酷くないか?

 他人事のように教団の姿勢を批判するジェイド。(するなら帰国せずに意味無くフラフラしてるイオンを批判してくださいよ。)しかしナタリアは生真面目に「自分自身がやるべきこと」としてそれを捉え、預言をどうしていくか取り決めねば、そのためには導師の力が必要だと考える…のは素敵なんですが、何故かここで「ガイ、導師をここにお連れしなさい」と命令するのでした。…えーと。ガイがマルクトの伯爵だってことは、平和条約締結の場で聞いてたでしょ〜? 今巻の冒頭でアニスもそれに言及していたし。しかもここはマルクト帝国、それもグランコクマ宮殿です。ドラマCDではまだ爵位が正式に戻されてないという事かもしれませんが、かといってキムラスカ王女がマルクト伯爵に平気で命令するかなぁ。ぎょっとさせられましたが、ガイは普通に応対して他の誰も突っ込まず、流されてました。

 その頃、アニスはイオンを連れて酒場兼食堂へ行き、両親と再会していました。アニスの両親は、アニスを「褒めてあげなくちゃと思って」「わざわざダアトから」旅費を法外な利子で借金までして駆けつけたそうです。頭を抱えて苦悶するアニスを前に「アニス。あまり お金お金と言うものじゃないよ」と父はたしなめ、「そんなことより、家族がこうして会えたことのほうが大事。でしょ?」と母は笑って言う。
 …うーん。なんか、自分の持っていたアニスの両親のイメージとは違うなぁと思いました。アニスの両親って愚かで、それは紛れもない事実なのですが。でも、「あまり お金お金と言うものじゃないよ」って、拝金主義否定みたいなことを言うのは違うんじゃないかと。
 ええと。私は、アニスの両親って「お金に固執しない方が美しい」と主張するような、そういうタイプの人間ではなくて。真性の、「清らかな愚者」だと思ってたんですよ。お金がいいとも悪いとも思ってないの。
 原作で、アニスの母はイオンを庇って瀕死の怪我を負います。でも母は他人の心配しかしない。その治療が終わった後、父は「お母さんのことはいいから、仲間の方へ行きなさい」とアニスに言ってあげる。この人たちの善人面はうわべじゃなかった。本当に、目の前の誰かのために自分の身も心の辛さも犠牲にできちゃうんだと、このシーンを見たときに思ったのです。騙され虐げられて悲しくはあっても、恨むことはないんだと。
 無論、それは社会に生きる人間、特に人の親としては欠点に過ぎません。
 でも、この人たちは愚かだけど、そのただ一点では尊敬できる程の清らかさを持っているんだ、だからアニスもこの人たちが大好きだったんだ、と思ってたので、ドラマCDで「完全な馬鹿親」として、リスナーが不快を感じるような言い回しの強調すらされて描かれたのは、分かり易いけど、ちょっと悲しかった。ついでに言うとアニスの母の喋り方、「あらあらあら」と最初に言っておっとり口調、ってのが無くなってますよ。なんか驕慢な喋り方になっちゃって。目立たない脇役だからって手を抜くなよぅ。

 WEB上ではアニスの両親を批判する意見をよく見かけますが、それと似たような事を、この後のシーンでシンクがアニスに言っていました。

「ありとあらゆる詐欺に引っかかる間抜けな家族なんて、ここらでいなくなってくれた方が、いっそせいせいするってことか」
「娘がこんなに苦しんでいるのも知らずに、あの能天気どもは今日も行きずりの貧乏人に大金を恵んでやってたよ。おめでたいねぇ」
「ま、そんな奴らの命より、イオンの命の方が大事……」

 それはともかく、このシンクのシーン、夜のグランコクマ宮殿なんですが、どう聞いても街中とは思えないけたたましい鳥(猿?)の鳴き声が響いてて気になります。ジャングルのようだ。


 話戻って、アニスの両親と別れて市街(水上公園?)を歩くイオンとアニスのシーン。

イオン「素敵なご両親ですね」
アニス「どぉ〜っこがですかぁ!!」
イオン「わざわざ、こんな遠くまで出向いてくれたじゃありませんか」
アニス「トイチの借金抱え込んでですけどぉー……」
イオン「ふふっ。……羨ましいです」
アニス「ほえ?」
イオン「僕には家族がいないので。アニスには、帰る場所があって羨ましい」
アニス「うー……。う、あ、でも、ホラ! 根暗ッタ!」
イオン「え?」
アニス「導師には、根暗ッタがいるじゃないですかぁ!」
イオン「アリエッタ……ですか」
アニス「わ、メチャクチャ脈なさげ。あははは、根暗ッタ、かーわいそう。ま、導師守護役フォンマスターガーディアンをクビにされた時点で気付くべきなんですけどね。あーいう思い込みの激しいタイプには、ガツンとはっきり言ってあげた方がいいですよ。『迷惑だ、うせやがれ』って」
イオン「……そういうことではないんです」
アニス「あれれぇ?」
#遠くから鐘の音
イオン「…………あの。アニス」
アニス「はい」
イオン「あなたは、どうなのでしょうか」
アニス「え?」
イオン「僕はあなたを信じています。あなたが何者であっても。家族のように……いえ、それ以上に」
アニス「え……」
#アニス、足を止める。続いている鐘の音
アニス「…………あ、あのぅ……」
#遠くからガイが呼びかけてくる
ガイ「お、いたいた。そこのお二人さん、ナタリアがお呼びだ。ちょっと顔を貸してくれないか」
アニス「イオン様。私……」
#イオン、微笑んで
イオン「……何でもありません、忘れて下さい。あなたの負担にはなりたくないですから。
 さ、アニス。城に戻りましょう」
#先へ行くイオン。その場に残っているアニス
アニス「イオン様……。ごめんなさい……」

 以上の会話から分かること。

  1. アニスはイオンに恋愛感情もしくはそれに準ずる独占欲を持っていない。
  2. しかし、イオンはアニスに家族以上の愛情を抱いている。
  3. アニスはイオンとアリエッタの関係を特別に親密なものだと思っていた。
  4. しかし、イオンの前でアリエッタを蔑称「根暗ッタ」と連呼しても平気。
  5. イオンはアニスがスパイだと気付いている。
  6. アニスは自分がスパイであることをイオンが気付いている事を知った。

 ……なんかモヤモヤしました。色んなことに。

 この後、シンクが伝えたモースの命令によってアニスがイオンを連れ出す。それを察知したアリエッタが阻止せんと飛行魔物に乗ってグランコクマ宮殿に飛来しますが、ナタリアの弓で魔物の翼を射抜かれ、逮捕されます。アリエッタを尋問してそれを知ったルークたちはザレッホ火山へ向かい、立ち塞がったシンクを倒してイオンの元へ駆けつけますが、時既に遅く、最終預言を詠んだイオンは音素フォニム乖離を起こして死ぬという展開になりますが。
 原作の、障気を吸ってしまったティアをイオンが助けるという要素が使えませんから、イオンの死の要因は全て別のところに結びつかなくてはなりません。
 そんな訳で、このドラマCDでは、「イオンはアニスが好きだった。だから彼女がスパイだと知っていても放置したし、彼女のために大人しく惑星預言を詠んで死んだ」というシンプルな筋付けになったようです。ドラマCDのイオン様は愛に殉じた男でした。片思いだったらしいのが気の毒ですね。

 アニスのイオンへの想いが、完全に職務上のものでしかなかったという語り口は、個人的にはショックでした。
 しかしその代わりなのか、原作にはなかった、苦しむイオンに預言を更に詠めと強要するモースに、アニスが「もうやめて! イオン様が死んじゃう!」と逆らうシーンが挿入されていました。
#ここでモースがイオンをレプリカと呼ぶのですが、アニスはそのことには全く動揺しません。…あり? ドラマCDのアニスは最初からイオンがレプリカだって知ってたのか?
#だとしたら前巻、イオンも同席していた時にレプリカルークのことを「劣化品」と言ってたのはあまりに酷すぎるぞ。


 立ち塞がるシンクとの戦闘。
 シンクがここで言う台詞は、原作での地核静止作戦とエルドラント決戦のものを混ぜてあって、つまり今後はもうシンクの出番は無いんだろうなぁと思いましたが、あと丸々一巻残ってるわけですし、もしかしたら完全オリジナルエピソードでの復活もあるのかも? どうなるんでしょう。
 シンクが延々と自分の心境を語る背後で、小さい音声で戦闘の様子(ルークとシンクのやり取り)も同時に流されていて、なかなか凝った作りになっていました。
 ここでのシンクの台詞は、前述の通り原作での二つのエピソードでの台詞を繋げたものでしたが、繋げた結果原作とはやや異なるニュアンスになっていました。

「ルーク。お前ならボクの気持ちが分かるだろう? ボクらは、生まれた意味を持たないレプリカ仲間。……いや、違うか。お前には役割があったんだっけ。アッシュの代用品っていう、ご立派な役割がさぁ! はははははは!」

 ここでのシンクは曲がりなりにも「お前ならボクの気持ちが分かるだろう?」「レプリカ仲間」と言いますが、原作のシンクは、一切の共感を拒んでいましたよね。
 イオンが「僕らは同じじゃないですか」と言っても、ルークが「レプリカだろうと俺たちは確かに生きてるのに」と言っても「必要とされてるレプリカの御託は、聞きたくないね」と跳ね除けて。イオンとルークは代用品のレプリカで、だから代用品で無い自分になりたがってもがいていた。けれどもシンクは違った。レプリカ編のケセドニアで再会したとき、平気な顔でイオンを演じた彼を見て、ルークは「俺なら誰かの代わりなんて嫌なのに、理解できない」とショックを受けていましたが。シンクはいわば、代用品になりたがっていました。代用品にすらなれなかったから。
 でも、能力が足りないから、導師イオンにはなれない。ヴァンもモースもそれを認めない。
 原作では、ルークは自ら地核に身を投げたシンクを見て「レプリカは『代用品でなければ』存在価値が無いのか?」とショックを受ける。けれど、様々なことを乗り越えて精神的に成長し、最後にエルドラントで対峙した時には、自分は生まれた価値の無い肉の塊で空っぽだから、と言って死んでいったシンクを見て、「自分が空っぽだと思いたかっただけじゃないのかな」と日記に書き残しています。
 ドラマCDのシンクは…。
 どうやら、ルークに「生まれた意味を持たないレプリカ」という楔を打ち込むための役割みたいですね。


 イオンの死。
 ドラマCDではチーグルの森へは行っていませんから、「そんなことない! 他のレプリカは俺のこと何も知らないじゃないか! 一緒に、チーグルの森に行ったイオンは、お前だけだ」というルークの名台詞は使えません。ではどういう会話になっていたか。

ルーク「イオン!」
#駆け寄るルーク。乖離しながら荒い息を吐いて倒れこむイオンを、抱きかかえる
ルーク「しっかりしろ!」
イオン「……ルーク。ルークはいますか」
ルーク「ここだ。ここにいる!」
イオン「あなたに伝えたいことがあります。僕も……僕もレプリカなんです」
#ルークたちは既に仮面を外したシンクにそれを聞かされている
ルーク「そんなことはどうだっていい。喋るな。すぐに外に運んでやるからな」
イオン「ずっと思っていました。僕は代用品だ。だから死んでも問題は無いって。でも、やっと分かったんです。僕は、イオンの代わりだけど、僕の代わりは誰もいない。教えてくれたのはルーク、あなたなんですよ」
ルーク「違う。俺は、そんな立派な奴じゃ……」
イオン「オリジナルイオンは、あなたのことを何も知らない。自分の弱い心と戦い、超振動を制御し、カースロットを乗り越えた。強い、強いレプリカ……! あなたを見たのは、僕、だけだ」

 例のアブソーブゲート決戦前夜のイオンの台詞をもう一度使い、更に原作のルークの台詞をイオンに代わってもらってました。

ルーク「もういい。もういいから」
イオン「……ND2018。聖なる焔の光は、穢れし大気の浄化を求め、フェレス島へ向かう」
ルーク「え?」
イオン「そこで……咎とされた力を用い、救いの術を見い出すだろう」
#がくりと力をなくすイオン
イオン「僕が、あなたに贈る預言スコア。数あるあなたの未来の……一つの選択肢です。頼るのは、不本意かもしれませんが……僕は、これくらいしか、あなたに恩返しが出来ない」
ルーク「イオン……」
イオン「アニス……」
アニス「あぁ……あっ、あぁ!」
イオン「アリエッタを解任したのは、僕に、オリジナルイオンの、記憶が無いからです。アリエッタは、死んでしまった、オリジナルイオンの、導師守護役フォンマスターガーディアン。僕の、導師守護役は、あなただけです。……嘘をついて、すみません」
アニス「ごめんなさい、イオン様。私……私」
#泣きじゃくるアニス
イオン「アニス……泣かないで。いいんですよ。あなたは、僕の……大切、な……」
#イオン、息を引き取る
アニス「……イオン様? イオン様ぁ!」
ルーク「イオーーーーン!!!」←熱演過ぎて怖い

 そういえば、アッシュに呼び出されての会話時に挿入された回想シーンにあった、地核へ落ちていったヴァンに向けてのルークの叫び声師匠ェーーーーっ!!!も熱演過ぎて怖かったです。つーか、自分で止めを刺しておいてそんな身も世も無い声で泣き叫ばんでくれと思った。心臓にピリッと来ます。

 イオンに預言を詠ませたモースは、ディストに助けられて逃走。アニスは泣きじゃくってその場で懺悔。ティアはルークに説教。

ルーク「さよなら。イオン……」
ティア「ルーク。導師イオンの言葉を胸に刻みなさい。兄さんやアッシュが何と言おうと、あなたはあなた。導師イオンにとって、あなたは、あなただったのよ」
ルーク「分かってる。分かってるんだ。でも。……でも……!」

 ティア、どうして説教口調なんだろう…。
 言い方がキツくて、なんとなく嬉しく思えません。
 とりあえずドラマCD4のティアが常にルークのことを最優先させ、ルーク至上主義者として存在していることは了解しました。
 そんで、前巻まではこういう台詞のときは必ずティアと一緒にガイも同じような台詞を言ってくれてたのに、今巻は全くそれが無いので、何なんだろうこれはと思いました。あれ? ガイ兄さんはルークのことどーでもよくなっちゃったのか? 寂しい…。


 ここで物語的には前半終了、という感じになります。
 話はイキナリ数週間後にジャンプ。その間に各所に障気が湧き出し、レプリカによる自爆テロは続き、世界は荒れている。ティアはアニスと組んで、イオンが遺した預言に従い、世界各地を巡り、やっと発見したフェレス島を調査中。そしてルークは……自分の存在意義に悩み、バチカルの屋敷に戻って自室に引きこもっていましたとさ。

 ……え、えぇええええ。
 このタイミングで引きこもるかなぁ〜……。

 ちなみにナタリアもバチカルに戻ってましたが。な、何故…。事態が仮にも終息していた間は解散せずに、意味無く仲間全員でグランコクマでぶらぶらしてたのに、事態が緊迫してきたら解散?
 イオンの死がルークに相当な衝撃を与えた、ということですか。
 でもイオンが苦しい息の下から遺してくれた預言は、「聖なる焔の光(ルーク)がフェレス島へ行く」ってものだったのに。つまり「緊急にやるべきこと(やらないと世界が滅亡するレベル)」が目の前にぶら下がってて、しかも友達の遺言なのに、それを無視して引きこもるなんて…。
 ルークってばだめっこさん!

 ともあれ、ジェイドが直接ナタリアに連絡を取り、密かにキムラスカを来訪したところから話が始まります。彼の目的は、引きこもっているルークと面会すること。

#不安に騒ぐバチカルの市民たち。その市街を走る馬車の中
ジェイド「やれやれ。バチカルも同じようなものでしたか」
ナタリア「無理もありませんわ」
ジェイド「不安と恐怖。怒りの矛先は平和条約にも向かいつつあります。マルクトの軍人がこんなところにいると知れたら、大変なことになりそうですね」
ナタリア「驚きましたわ。お父様を通さず、わたくしに直接連絡をよこすなんて」
ジェイド「お手数をおかけします」
ナタリア「ルークに……何の御用ですの?」
ジェイド「訊かないで下さい。嘘をつかなくてはいけなくなる」
ナタリア「あれからルークはずっと部屋に引きこもっています」
ジェイド「そうですか」
ナタリア「ヴァンの言葉。シンクの言葉。導師イオンの言葉。……ルークの心は揺れています。これ以上苦しめたくはありません」
ジェイド「生まれた意味。自分探しという奴ですか。若いですねぇ」
#カッとなるナタリア
ナタリア「そもそもあなたがフォミクリー技術など!」
#ハッとして口ごもる
ナタリア「……ごめんなさい」
ジェイド「いいえ。事実ですから」
ナタリア「わたくしもルークを苦しめている原因なのです。父上は、本当の娘ではないわたくしを認めて下さった。それなのにわたくしはルークを……。あなたを責める資格など、わたくしにはない」
ジェイド「申し訳ありません。お気遣いはありがたいのですが、傷の舐め合いは趣味ではありませんので」
ナタリア「……残酷ですわね」
ジェイド「よく言われます」

 うーむ。ここで「傷の舐め合いは趣味じゃない」と、ナタリア(仲間)に向かって言うかなぁ…。言ってもいいけど、レプリカ編なのになぁ。(しつこい)
 ジェイドが冷たい。外殻大地編〜崩落編序盤から変化してない感じです。うぅー。
 さて、ジェイドはルークの部屋へ。

ルーク「話って、なんだよ」←不機嫌そうに
ジェイド「単刀直入に言いましょう。あなたの超振動で、障気を消すことが出来ます」
ルーク「!? ……い、今なんて言ったんだ」
ジェイド「超振動には、あらゆる物質を原子レベルにまで分解する力があります。その力を使って、世界を覆う障気を消滅させられるんですよ」
ルーク「本当か!? ……や、でも、何でもっと早く言わなかったんだよ!」
ジェイド「解決できない問題がありましたので。いいですか? 障気は既に惑星全体を覆うほどの量に増えています。レプリカのあなたには――失礼。たとえオリジナルであろうとも、それだけの障気を消滅させるような超振動は起こせません。力を増幅させるために大量の第七音素セブンスフォニムが必要になるんです」
ルーク「大量って……」
ジェイド第七音譜術士セブンスフォニマーをざっと一万人ほど集めて、同時に殺す。そうすれば集められます」
ルーク「そんなの!」
ジェイド「ええ、無理です。だから話す必要もないかと。ところが状況が変わりました。昨日ティアから鳩を受け取りまして」
#回想シーン。ティアとアニスは沈んだはずのフェレス島を発見し、調査を開始した
ジェイド「ティアたちは、何を発見したと思います?」
ルーク「な、なんだ」
ジェイド「数万人のレプリカですよ」
ルーク「!!」
ジェイド「恐らく、ホドの住人の情報を使って作られたレプリカでしょう。あの島では、我が軍によるレプリカ実験が行われていましたから、データが残っていてもおかしくはありません。ローレライ教団が密かに回収したものをモースが利用し、レプリカ兵を作り出し、秘密の島に匿っていたのでしょうね。
 ――さて、問題です。レプリカは原子の結合に第七音素が使われています。彼らの命を一万人分使えば――」
ルーク「待てよ!」
ジェイド「何か」
ルーク「本気で言ってるんじゃないよな? だろ?」←引きつった笑いを浮かべて
ジェイド「一万人の犠牲で障気は消える。安いものだという考え方もあるでしょう」
ルーク「ふざけるな!! レプリカだって生きてるんだ。そんな簡単に」
ジェイド「せっかちな人だ。話は最後まで聞いて下さい」
ルーク「なんだよ」
ジェイド「超振動を使う人間も、反動で音素フォニムの乖離を起こして死にます」
ルーク「……それって。
 ――……ジェイド。あんたは俺に」
ジェイド「死んで下さい。と言っています」

 ジェイドちょっぱや。
 昨日鳩を受け取ったって。ケセドニア辺りに逗留していたとしても、そこから砂漠越えか海を回ってバチカルまで移動して、ナタリアと連絡とって、面会の算段つけてもらって。アルビオールもないのにちょっぱやです。
 詰まるところティアからの連絡を受け取って即座に、微塵の躊躇もなく行動したのだと考えられます。前々から、第七音譜術士一万人とルーク一人を殺せば障気は消せると考えていて、でも「第七音譜術士一万人を殺すのは無理だから」行動に移さなかった。しかし第七音譜術士の代用品であるレプリカ一万人のアテがついたら、即行動。レプリカたちの意志を確認することもなく、まっすぐルークのところに行って「死んで下さい」。

 ……前巻で、民間人の母子を助けようとしたルークの頑張りを認めてくれたジェイドは、どこに消えてしまったんでしょう。
 原作で、ルークには自分にない人間らしい資質がある、色々と教えられていると言ったジェイドは。ルークを友人と呼んで、障気を消すためにルークを死なせることを提案した後で、背を向けて「すみません」と謝ったジェイドは、どこに消えたんでしょう。

 今巻のナタリアとの馬車の中の会話で、フォミクリーの責任を糾弾されて「傷の舐め合い」と言ったことから、ドラマCDのジェイドもどうやらフォミクリーに関する罪の意識があるらしいと思った直後でしたが。
 違ったみたいです…。
 もしくは、その罪の意識は「オリジナル」へ対するだけのもの。
 このジェイドは、レプリカを「人間」だとは思っていないんだ。
 ルークのことも「人間」だとは思っていなかったんだ。
 迷いもせず即座に使い捨てることが出来るんだ。面と向かって死ねと言えるんだ。
 っていうか、ルークはレプリカではあるけどキムラスカの公爵子息で王位継承権所持者なのですが、なんでマルクトの大佐がキムラスカ国王に話も通さず密かに面会して「死んで下さい」つってんの? 実はマルクトの陰謀ですか?
 一気に冷めました。
 ここまで積み上げられてきた物語が全て無意味になりました。
 このドラマCDには「仲間」なんて存在しなーい。
 長い苦難を共にしたことによる心の繋がりも、ルークを中心にした仲間たち一人一人の変化や成長も存在しなーい。
 次巻になって今更のように実はジェイドは辛い気持ちも持っていましたとかフォローしないで下さいよ? そういうつもりがあるならこの時点で語ればいいし。ここまで酷い描き方しておいて、そんな後付け処置でナアナアにしようとしたら、シナリオライターさんを呪う。一秒くらい。


 ここから後の展開はグチャグチャです。
 そもそも今巻は、原作をハンマーで叩いて粉々にしてからパーツを並べ直したみたいになってたんですが、これ以降は、もっと細かく割れた欠片を、とりあえず似た奴をまとめてザーッと袋に詰めた感じ。粗い。とにかく粗い。

#場所不明。フェレス島へ向かうタルタロスか? 聞こえるのは雨音にしか思えないが、海を走るタルタロスの音??
#室内。ガイに殴られて吹っ飛ぶルーク

ルーク「ってぇー……。いきなり殴るかよ、普通」
ガイ「死ねば殴られる感触も味わえない。馬鹿なことを考えるのはやめろ!」
ルーク「もう決めたんだ。怖いけど、だけど決めたんだ!」
ガイ「お前はまだ七年しか生きてない! たった七年で、悟ったような口をきくな!」
アニス「イオン様といいルークといい、どうしてそうあっさり命を捨てられるの? ルークが死んだら、障気は消えるかもしれないけど、ルークを知ってる人たちはずっと苦しむんだよ? もう、誰かが消えていくのは見たくない。もう、いやだよ……」
#歩き始めるジェイド
ジェイド「失礼しますよ」
ガイ「どこへ行く」←剣呑
ジェイド「外で待ちます。家族会議が終わったら、声を掛けて下さい」←飄々
ガイ「てめぇが焚きつけたんだろうが!」
ジェイド「提案したのは私ですが、決定したのはルークです」
ナタリア「ルークが自分自身に価値を求めていることを知っていて、追い詰めて、安易な選択をさせて! 大佐、卑怯ですわよ!!」
ルーク「もういい!!」
#全員が黙る。ルーク、数歩歩いて
ルーク「『ND2018。聖なる焔の光は、穢れし大気の浄化を求め、フェレス島へ向かう。そこで咎とされた力を用い、救いの術を見い出すだろう』。……これが答えなんだよ」
ガイ「ルーク……!」
ルーク「俺、ずっと考えてきたんだ。俺はどうして生まれたんだろう、何のために生きてるんだろうって。答えは、見つからなかった。……俺は、レプリカは、ここにいちゃいけない存在なんだ」
ガイ「いいかげんにしろ!!」
ルーク「でも!! 障気を止めるにはローレライを解放しなくちゃいけないんだぜ。そのためには、宝珠を預かることも出来なかった俺じゃなくて、アッシュが必要だ。アッシュは必要な奴なんだ。そうだろ、ガイ!」
ガイ「――っ」←咄嗟に言い返せない
ルーク「死ぬのは……要らない方の、レプリカの俺で充分だ」
#長い沈黙が落ちる
ティア「……あなたって本当に馬鹿だわ」
ルーク「ティア……」
ティア「何週間も考えて、そんな結論にしか辿り着けなかったの? みんながあなたを認めて、引き止めてくれてる。それなのに、『要らない方のレプリカ』だなんて」
ルーク「俺は」
#ティア、言いかけたルークを遮るように
ティア「私は止めないわ」
ルーク「――!」
ティア「あなたの言う通り方法はこれしかない。死を決意したんだもの。それだけの考えがあるということだわ。でも。あなたのすることを認めたわけじゃない。あなたがその選択をして、そして障気が消えたとしても、私はあなたを憎むわ。世界中の人たちがあなたを賛美して、英雄として認めたとしても……私は認めないから!」
ルーク「……泣いてる、のか」
#ティア、声を震わせながらも気丈に
ティア「私は泣かないわ。泣いても何も変わらない。感情を律することが出来なければ、兵士として失格よ」
ルーク「ティア……」

 この先はさっぱり分からないです。唐突に、ファブレ邸に押し入って来た時のティアから始まって、延々と過去のティアの台詞が流れ、ルークが「あいつ、俺に涙を見せたことなんて、なかった。――いつも。いつだって。いつだって俺のこと、見てくれてた」とポエムを独白し始め(ティアの回想声のせいで何言ってるのかすごく聞き取りづらい。何事かと思った)、そうして盛り上がったらしいルークの心の流れのままなし崩しに場面が変わって、「自ら死を選んだルークにみんなが怒っていた」場面はスコーンとどこかに飛んで綺麗に消えてしまいます。え? ちょっ……。(オロオロ)
 時間が経過しているらしく、一人でいたティアの所に行って二人きりで話し始めるルーク。(相変わらず場所がどこなのかさっぱり分かりません。水音が聞こえるのでタルタロスの甲板?)そして原作でのエルドラント決戦前夜に当たるエピソードが何故かここに入ってきます。

ルーク「あの、さ」
#切り出しかけたルークを遮るように
ティア「ごめんなさい」
ルーク「なんでいっつもお前が、謝るんだよ」←苦笑
ティア「一番辛いのはあなたなのに、酷いこと言って」
ルーク「叱るって事は、俺に価値を見い出してくれたって事だろ」
ティア「……」
ルーク「ティア……」
#再び遮るように話すティア
ティア「それに。軍属である限り、民間人を守るのは義務だわ。それなのに、私は何もしてあげることが出来ない。あなたに死を選ばせることしか出来ない。
 …………ごめんなさい。風邪を引くわ。戻りましょう」
ルーク「ああ……」
#立ち去っていくティアを見つめるルーク。咄嗟に呼び止める
ルーク「ティア!」
ティア「なに?」
#じわじわ音楽が盛り上がってきます
ルーク「ごめん。――ありがとう」
#ババーン。ここで音楽が最高潮に盛り上がります
ティア「ルーク……っ!」←感極まって
ルーク「ごめん。ありがとうって言わなきゃいけない時が沢山あったのに、俺、全然言えてなかった」
#ルーク、勢いよく頭さげる
ルーク「ごめん! いつまでも手のかかる奴で。――ありがとう! 俺のことずっと見ててくれて」
ティア「馬鹿ね。この後もずっと見てるわ」←泣き笑い
ルーク「馬鹿なのはお前じゃん。俺、死んじまうんだ」
#駆け寄ったティア、ルークの口を指先で(え? 口でですか?)塞ぐ
ティア「……いいの。ずっと見てるっ……。明日も、明後日も、しあさっても、ずっと」←震える声で
ルーク「ティア……。
 なんだかさ。妙な感じだよ。すごく幸せだなって思うんだ。ティアがいて、俺が俺だって、今なら思える。今が俺の人生で一番幸せな時なのかもな。……今が一番幸せなんじゃないって、思えればいいのに」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(゜□゜)

 最高潮に盛り上がる感動的な音楽、声優さんの熱烈な演技。
 …すんません、思いっきり置いてけぼりになってました。

 え? ちょ、待っ……。ルークが自ら死ぬのはもう確定事項?
ありがとう」って、は? なに、遺言?
ずっと見てるっ……。明日も、明後日も、しあさっても、ずっと」って、はぁぁ? ティアさんさっき止めないわとか言ってたじゃん。それは、ルークが自ら死にに行くのをやっぱり許さないって事ですか? 絶対止めるって事??
すごく幸せだなって思うんだ。ティアがいて、俺が俺だって、今なら思える。今が俺の人生で一番幸せな時なのかもな。……今が一番幸せなんじゃないって、思えればいいのに」って。世界のために死んで役に立てるから自分が自分だと思えて一番幸せなわけ? それともティアとラブラブになれたら存在の悩みなんて吹っ飛びましたか。つーかあんた周囲に止められてるのを振り切って自ら死ににいくところなのに「今が一番幸せなんじゃないって、思えればいいのに」って何事ですか。なら死ぬのやめろ。

 あ、あのさぁあああ。
 この辺の台詞は、原作の、ルークが身体を致命的に壊しちゃって、もう絶対助からないことが確定してた場面のものだったからこそ感動的だったものでしょ。
 自己犠牲に自分の価値を見出す、それを乗り越えて本当に自己を確立したルークだからこそ「仲間がいて……ティアもいて、俺は俺だって……やっとそう思えるようになって……。……今が、俺の人生で一番幸せな時なのかもな」って言えたんでしょ。なのにどうしても目前の死から逃れられなかったから「『今』が一番幸せなんじゃないって……思えればいいのに」と呟いたんでしょ?

 なんだこれ。なにこれ。
 障気中和前にルークがイキナリ過程を飛び越えて悟ってる。
 悟ったんなら自己犠牲やめろよ。
 そして「自ら選ぶ死」と「逃れられない死」が同一視されてしまってる。酷い。
 ティアも何イキナリ陶酔してるんだよ。ムードだけで押し流そうとするなよ。
 なんだこのグチャグチャのムチャクチャ。
 ここまで酷い展開ってアリですか?
 どうしろと……。
 一体どーしろとぉおーーー!!!




 場面変わってフェレス島。何故かアッシュが先回りしていて、レプリカたちに障気中和の犠牲になれ、自分も死ぬからと持ちかけています。

「この浮島は既に、キムラスカとマルクトに知られている。一人残さず、皆殺しにされるぞ! 国の権威とぶっ壊れかかった平和条約を保つためにも、納得のいく犠牲が必要なんだよ。……オリジナルの人間が、貴様らレプリカに情けをかけるなんて思うなよ!
 ――ただし! 一万人分の命をくれると言うのなら、俺がキムラスカ王家に話を付けてやると言っている。残りのレプリカの身の安全と住む場所を保障させよう」

 しかしレプリカたちは「モース様が救って下さる」と断ります。
 原作の「子供」であり「人形」であったレプリカたちとは違い、いやに饒舌でペラペラペラペラ喋ります。「オリジナルたちは我々が行った殺戮を責めるだろう」とまで言う。ありゃー…罪の自覚があって、応報まで分かっててやってたのね、ドラマCDのレプリカたちは。

レプリカ「我々にも居場所が必要なのだ。このような島に息を潜めて隠れ住むのではなく、日の当たる場所で、胸を張って生きていく。それが、この世界に生を受けた者の当然の権利ではないのか。――もっとも、オリジナルのお前にこんなことを言っても、理解できないだろうがな」
アッシュ「……知らねぇくせに」←小さく呟く
レプリカ「?」
アッシュ「当然の権利? 笑わせるな! 勝ち取れねぇ奴に居場所なんかねぇんだ! 貴様らは、負け犬の屑だ! 貴様も、貴様も、貴様もだ!」
#抜いた剣で周囲のレプリカたちを指し示すアッシュ
アッシュ「間違いねぇ。クッ。同じ負け犬の俺が言うんだから間違いねぇんだよ! 情けねぇ……。反吐が出るほど情けねぇ!」

 そこにディストが空を飛ぶ巨大ロボット(カイザーディストRX)に乗って出現。モースはレプリカを救うことなどないと、高笑いしながらレプリカたちの殺戮を開始します。
 …あー成る程。今回のディストの台詞でようやくハッキリ分かりました。二巻目で初めて出てきた(ヴァン師匠を迎えに来た)カイザーディストは、海中仕様だったんですね。空は飛ばなかったんだ。
 ともあれ、空を飛ぶカイザーディストにアッシュは攻撃できない。しかし近づいてきたタルタロスの砲撃が直撃。指揮しているのは勿論ジェイド。

兵士「命中を確認しました」
兵士「師団長、ご命令を」
ジェイド「タルタロス、全砲門開放。目標、カイザーディスト。沈めろ!」
兵士「撃てぇ!」
#艦橋からカイザーディストに降り注ぐ砲弾の雨を見ながら
ジェイド「今まで見逃してきた私が甘かったようですね」
#警告音の鳴り響くカイザーディストの中
ディスト「やめなさい! やめて下さい、ジェイド。モースが隠し持っている、ホドの実験データがあれば。私たちの、ネビリム先生を生き返らせることが出来るんですよ! そうすれば……昔のように三人で楽しく暮らせるんです。私は、そのために、あなたのために! うわぁあああ!」
#破壊されていくカイザーディスト
ディスト「……そうですか。ジェイド。本当に、私を見捨てるんですね。ふっ、ふふ……。あなたは、もう覚えていないんでしょうね。『カイザーディスト』。私が描いた、一枚の、落書き……」
#回想シーン。落書きの描かれた一枚の紙を取り上げて見つめる、幼少時代のジェイド
幼少ジェイド「へぇ。すごいね」
幼少ディスト「ほ、ほんと!?」
幼少ジェイド「ああ。すごい悪趣味。強いて評せば、独創的と言えなくもないけど。――で、名前は?」
幼少ディスト「名前?」
幼少ジェイド「この譜業兵器の名前」
幼少ディスト「え! えーとぉ……。『カイザーディスト』!」
幼少ジェイド「……『ディスト』?」
幼少ディスト「今、適当に考えたんだ。なんか響きがかっこいいかなぁーって」
幼少ジェイド「ふん。やっぱりサフィールはサフィールか」
幼少ディスト「……褒めてくれるの?」
幼少ジェイド「悪趣味な名前に悪趣味な姿。サフィールの作ったものらしくていいんじゃない? それより僕は、ネビリム先生のところに行くよ」
幼少ディスト「あ! 待ってよジェイド」
#幼少ディスト、ジェイドの置いていった落書きの紙を取り上げて
幼少ディスト「ふふ。『すごい』……か」
#回想シーン終わり。破壊されつつあるカイザーディスト内部のディスト
ディスト「もう一度……あなたに、褒めてもらいたかった」
#ディスト、自爆装置を作動させる。「脱出して下さい」と警告メッセージが響くが無視する
ディスト「ネビリム先生……! 今、そちらに向かいまーす!!」
#自爆するカイザーディスト。兵士たちが沸くタルタロスの艦橋
ジェイド「さようなら。サフィール」

 ……ゴメン。引きました。
 幼少時代のジェイドとディストのエピソード自体は、いい話なんですよ。萌え。ディストの由来ってそうなんだ、と感心もしました。
 でも、ディストは敵キャラなのです。
 確かに、どんな悪人にもその人なりの事情やドラマがあるでしょう。それを知れば物語に深味を出すことも出来るでしょう。ですが、本筋で語るものではないと思いました。
 たとえば『テイルズ オブ ファンタジア』のラスボスのダオスは、派生作品では「可哀想、彼には彼の正義があった」と語られることが多いですが、もし本筋でそんなことが語られてしまったら困ります。主人公たちがダオスのために親兄弟や友人を殺され、苦難の果てについにダオスとの最後の戦いに挑み、倒した。その時に突然物語の主観がダオスに移り、彼の過去が情感たっぷりに回想され、悲劇的な音楽がガガーンと盛り上がったらどうでしょうか。物語は着地点を失ってしまいます。最初から変則を狙ったならともかく、そうでない場合には避けるべき脱線だと感じます。

 原作では、リグレットの過去は「ティアが」リグレットの手紙を読むという形で知らされますし、ラルゴの過去は「ナタリアが」ラルゴや乳母から話を聞くことで分かります。このように、物語の主観は主人公側にあってほしい。敵側にフラフラとさまよわれると、私は馬鹿なので、混乱してしまいます。

 ここでこのような展開にしたのは、ジェイドとディストの因縁を示すためでしょうが、ならば主人公側のキャラであるジェイドの主観で、(彼の性格に合わせて)情感抑え目の感じに語って欲しかったです。つまり原作でやっていたようにと言うことですが。「可哀想なディスト」は外伝でやって、本筋では「幼なじみと袂を分かち、ついに殺すことになってしまったジェイド」を強く見せて欲しかったです。(原作では、この辺は「ルークの視点」で語っていましたよね。ルークはジェイドが辛いに違いないと感じるけれど、ジェイドは何としてもそれを見せないです。)

 それはそうと、ドラマCDではネビリム先生が何者かも、彼女を殺したのはジェイドであることも説明しなかったですよね。その必要もないんでしょうが。


 モースに見捨てられ、同胞をディストに殺されて気弱になったレプリカたちは、一万人を障気中和のいけにえに差し出すことを承諾します。
 引き換えに生き残ったレプリカたちに居場所を与えてくれと言うレプリカに、ナタリアとガイとアニスが原作通りの台詞で約束する。のですが。アニス役の声優さんはどうにかしちゃったのでしょうか? ゲームの方ではちゃんと場にそぐったシリアスなイントネーションで言ってたのに、ここでは「私だって♥ あなたたちとイオン様は、同じだもん♪」って感じで発音してました。

 ルークはアッシュと対峙します。
 珍しくも、ルークがアッシュに説教(?)です。

ルーク「アッシュ。また俺の中に入り込んで、情報を盗みやがったのか」
アッシュ「……」
ルーク「誰がお前に死んでくれって頼んだ」
アッシュ「……」
ルーク「アッシュ!」
アッシュ「……セフィロトを回ってみた。どこにも宝珠は見当たらない」
ルーク「! そうか。ごめん」
アッシュ「フン」
ルーク「なあ、アッシュ。お前には……ローレライを解放してもらわなくちゃならないんだ。後は頼む。その代わり、障気は俺が責任を持って消してみせる。――俺が死ぬ!」
アッシュ「フン。レプリカは気楽だな。簡単に死ぬなんて言えるんだから」
ルーク「……」
アッシュ「お前は、お前の全てを捨てると言う。命も、国も、友も女も家族も。だがな、元々全部俺のものだったってことを忘れんなよ。捨てるの捨てないの、お前が勝手に決めていいものじゃねぇんだ!」
ルーク「分かってる。俺、お前の居場所を奪っちまったんだよな」
アッシュ「ああ、そうだ。おかげで俺は空っぽだ」
ルーク「その気持ち――」
アッシュ「ハンッ! それ以上言ったら殺すぞ! 劣化レプリカ崩れに。過去も未来も奪われた俺の気持ちが、お前に分かってたまるか!」
ルーク「――……ああ。分からないよ」
アッシュ「なに?」
ルーク「分からねぇよ! 俺には今しかねぇんだ!」
アッシュ「……っ」
ルーク「お前の言う通り、少し前までの俺は、簡単に死ぬって言えたさ。アクゼリュスの人たちを殺しちまったときには、自分が死んでアクゼリュスが復活するんなら死ぬって思った。もう今は……怖いんだ。見ろよ。こんなに震えてる。死にたくないんだ! 自分に今しかないって事が、未来がないって事が、怖くて怖くてたまらねぇ。……今、俺はここにいたい。俺は生きたいんだよ!」
アッシュ「だから俺が死んでやると言ってる! お前は『ルーク・フォン・ファブレ』。俺だ。お前は俺の偽者として、責任を持って俺の居場所を守り抜きやがれ!」
ルーク「……俺は、お前のレプリカだ。でも俺は、ここにいる俺はお前とは違う!」
アッシュ「!?」
ルーク「違うんだ! 考え方も、記憶も生き方も!」
アッシュ「ふざけるな……俺は認めねぇぞ!」
ルーク「お前が認めようと認めまいと関係ない。俺は、お前の付属品でも代替品でもない!」
アッシュ「面白い。ならば……はっきりさせようじゃねぇか!」
#アッシュ、剣を抜く
ルーク「アッシュ!」
アッシュ「お前はお前なんだろ。剣で証明してみせろ。でなければ、俺はお前を認めない! 認めないからな!」
ルーク「……っ、言ってることがメチャクチャだ!」
アッシュ「黙れ! 理屈じゃねぇんだよ! 抜け! 屑!」
ルーク「やめろぉ!!」
アッシュ「うるせぇ!! でやぁあああ!」
#斬りかかるアッシュ。剣を抜くルーク
ルーク「馬っ鹿野郎ーー!!」
#斬り結ぶ
ルーク「どっちも本物だろう! 俺とお前は、違うんだ!」
アッシュ「同じだ! お前がいるから! お前のせいで! 俺はこんなにも惨めに!」
ルーク「お前が、どう思ったとしても、俺はここにいる! 俺は、俺であると決めたんだ! それが、お前の言う強さにつながるんなら、俺は負けない!」
アッシュ「うるせぇーー!!」
ルーク「お前こそーー!!」
#二人の間に超振動発生
アッシュ「何だ? この光は!」
ルーク「ティアの時と同じだ。第七音素が反応し合って……!」
#互いに悲鳴を上げるルークとアッシュ

 ……というところで最終巻へ続く、です。
 ええええーとぉ。
 最後の「うわーー!」は、どう解釈すればいいのやら。次巻はどんなシーンから始まるのでしょう。

  1. ジェイドが「やめなさい、消すのはフェレス島ではない!」と叱って以降は普通に話が続く
  2. 擬似超振動でどこか別の場所に飛ばされて新展開
  3. 二人の間に発動した超振動で突発的に障気中和(そしてルークとアッシュ双方が音素乖離開始とか。)

 さてさて。

 それはそうと、ドラマCDのアッシュにはどうも同位体のコンタミネーション現象は起きていないようで、つまり「自分がもうすぐ死ぬと勘違いしていて自暴自棄になっている」という原作の行動原理が存在しません。なので、どうしてここでわざわざ自ら押しかけてきてまで障気中和して死のうとするのか意味が分かりません。
 もしや、「居場所を奪われた可哀想な俺は、もはや死んでレプリカに全部くれてやるしかない」というあてつけなんですか。
 だとしたら、「レプリカは気楽だな。簡単に死ぬなんて言えるんだから」と彼がルークに言うのはちゃんちゃらおかしい、「お前が言うな!」って話になっちゃいますが。ルークの言う通り「言ってることがメチャクチャだ!」状態ですね。
 反対に、ルークがなんだか聖人君子みたいになってますが…。
 なんなんでしょう。ドラマCDでは自己犠牲礼賛? ルークはアッシュと自分が違う存在で「俺は俺」と思って自己確立しているけどそれでも「要らないレプリカの俺」の方が死ぬべきだと思ってる訳ですか。
 破綻してますが。
 それともタルタロスでティアとラブラブありがとう大会を繰り広げてから、唐突にホトケのように解脱して、今はもう「要らないレプリカだから俺が死ぬ」とも「自己犠牲で世界を救うことに生まれた意味を見出す」ことも全く考えていない、ただ美しい自己犠牲精神によって世界の人々のために殉じようとしているのですか。
 俺には分かんヌェー。


 唐突ですが。
 『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子/講談社)って漫画がありますよね。アレの中に『プリごろ太』という劇中アニメが出てきます。

  1. 主人公、ごろ太はいつも乱暴者のカズオに苛められている
  2. 宇宙に冒険に行ったとき、カズオが舐め忘れると命の危機に陥る「宇宙アメ」を、忘れていたごろ太に渡してくれる
  3. 事故が起き、カズオが命の危機に。他の仲間はカズオの救助に消極的
  4. ごろ太は身の危険を押して救助に行く。理由は、カズオに宇宙アメで助けてもらったから。「人は一人じゃ生きていけない」と手を握り合って感動的なラスト

って感じなんですが。
 このドラマCDは、私の目から見ると、「2」の時点でイキナリ ごろ太がカズオの手を握り締めて「人は一人じゃ生きていけないんだ!」と言い放ったも同然な展開なんですよ。電波だ。



 障気中和前の時点で、物語全体の締めに属し、一番美味しいトコロであるはずの「ティアとの決戦前イベント」や「アッシュとの最終決戦イベント」を既に終わらせてしまっている。残り一巻、一体何をするつもりなのか本気で予想できないです。
 確かにまだ語り残したエピソードは幾つかありますが……。ぶっちゃけ、ルークの結論が語られてしまった後では色褪せている感じが。
 とりあえず予測できるのは以下な感じ?

  • フェレス島に唐突にアリエッタ出現。アニスに決闘申し込み
  • ラルゴがナタリアと父娘対決
  • モース怪物化してその場で自滅
  • ヴァン復活してその場で最終決戦
  • ティア「ルークは必ず帰ってくるわ」で終了

 しかしもっと斜め上、私の安易な予想など飛び越えた完全オリジナル展開になるような気も、今巻の結末を聴くとしてきます。ホントに予想できないです。もうテーマ語り(ルークの成長)は終了しているようなので、後はもう、キャラクターさえ生き生きしていればそれでいいんですが、こんな懸念など素人の浅はかさだったと泣いて感動出来るような高みで完成するのかもしれない。そうなったら最高ですね。

 最終巻は、ガイ兄さんの出番が沢山あると嬉しいです。…ちゃんとエルドラントへ行くのでしょうか。アルビオールもないし、フェレス島で全てを終わらせそうな気さえしてきました。(あるいはエルドラントが飛ばずに海上に普通の島としてあるとか。)

 



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