注意!

 

TV animation『テイルズ オブ ジ アビス』ドラマCD U

脚本:岸本みゆき/構成:面出明美/監修:実弥島巧/音響監督:木村絵理子/音楽:桜庭統/ランティス

 テレビアニメ版外伝ドラマCDの二巻目。

 今巻のみ、シナリオライターさんが違います。アニメ本編では第3話「神託の盾オラクル来襲」や第10話「償いの帰還」などを書いた方ですね。

 そのためか体裁が他の巻と異なっており、巻タイトルが付いていませんし、収録された三つの話がそれぞれ完全に独立して、それらをまとめる大枠は存在していません。各話のボリュームもあり、そのままテレビアニメにしてもおかしくない内容になっています。


第一部「ティアとリグレット」

 突然、アニメ第7話デオ峠の、緊迫した場面の回想から始まるので驚かされます。

 前半は、ユリアシティのセレニアの中庭で、リグレットとの思い出『テイルズ オブ ファンダム Vol.2』ティア編に相当)をルークに語るティアの話。後半は、六神将の陣地で、ヴァンの副官になった経緯(原作サブイベント『リグレットの遺書』に相当)を回想するリグレットの話。最後に二つの流れが統合され、ビシッとまとまって終わります。

 時間も18分くらいありますし、テレビアニメが3クール以上だったなら確実にこういう回が入ってたんだろうなと思わされました。(TVアニメは一回22分くらい。)ラストシーンはアニメの映像が見えましたよ(笑)。ティアとリグレットで画面二分割でキメ台詞言って、最後にリグレットのイメージを背後に花畑から出発していくティアとルークの止め絵とか。

 そういえば、『ファンダム2』ティア編+『リグレットの遺書』という構成は、ファミ通小説版『黄金きんの祈り』ティア編と同じですね。

 デオ峠でのリグレットの会話を思い返し、一人、セレニアの中庭で思いにふけるティア。やって来たルークに、リグレットとの思い出を語ります。

 二年前、ダアトの士官学校への入学を許してもらえず、個人教師としてリグレットが派遣されてきたこと。兄との仲を阻む存在だと感じて反発し、初日の訓練を仮病ですっぽかしたこと。しかしリグレットは黙って待っており、平然と訓練を開始してティアを戸惑わせたこと。

 やがてユリアシティの共有家畜庫のブウサギが殺される事件が起こり、余所者として普段から白眼視されているティアが謝罪を強要され心折れそうになったこと。しかしリグレットが謝る必要はないと言い、黙って真犯人を捕らえてくれたこと。そんな彼女の姿が、ティアの憧れとなり理想になったこと…。

 リグレットは、自分の正義を貫く心の強さを教えてくれた。彼女のおかげで自分は変わった。彼女と会わなかったら、自分は兄の計画に加担していたかもしれない。リグレットが理想の人だからこそ、彼女の教えに恥じないためにも戦う、とティアは言うのでした。

 一方リグレットは、ヴァンの副官に取り立てられた時のことを思い返していました。弟・マルセルの部隊の全滅が秘預言クローズドスコアに詠まれていたと知り、弟を利用して死地へ送り出したヴァンを恨んで襲撃したものの、あっさり取り押さえられてしまう。ところがヴァンはリグレットを罰さず、副官になれ、殺せるものなら殺してみろと笑ったのです。預言スコアが私を消そうとしても打ち勝ってみせると。絶対に寝首をかいてやると誓ったリグレットでしたが、いつしか彼にどうしようもなく心惹かれた自分に気が付きました。しかし後悔はしていない、と心で呟きます…。

 どちらかが死ぬことになっても戦おう、後戻りはもうできないのだから。遠い空の下、ティアとリグレットはそれぞれの正義を貫くことを誓うのでした。おしまい。

 前巻のユリアシティ編では『ファンダム2』ティア編の内容を採っていませんでしたが、今回は採っています。

 

 ところで、『ファンダム2』ティア編と比較すると、リグレットの態度が変更されている箇所がありました。ブウサギ事件犯人逮捕のお礼をティアが言いにいった場面です。

ティア「教官!」
リグレット「ティア」
ティア「教官……私のために、ありがとうございました」
リグレット(そっけなく)……何の話だ?」
ティア「え? あの……ブウサギの件の犯人を、捕まえてくださったって……」
リグレット「私はダアトの士官学校でも教官を務めている。士官候補生は、いうなれば私の部下のようなもの。私は部下の不始末の責任を、取っただけに過ぎない」
ティア「でも」
リグレット「礼を言われることはない」
ティア「そ、そうですか……」
リグレット「……それに、最初から私は信じていたからな」
ティア「え?」
リグレット「ティア。これだけは覚えておきなさい。あなたが特別扱いを受けているのは事実よ。でも、それをどう活かすかは、あくまでもあなた自身の問題。そのことを、忘れないようにね」
ティア「教官……!」
リグレット(優しく)分かった? ――(声を厳しくして)では、訓練を始めましょう」
ティア「は、はい!」

 原作リグレットは「最初から私は信じていたからな」と口に出しはしません。ティア自身が、教官は私を信じてくれていたと感じ取るのみです。

 

 原作リグレットはティアの感謝をぴしゃりと拒絶し、礼を言われる筋合いはないとまで言います。しかし、それでティアがしょげると少し黙りこんで、特別扱いをどう活かすかはあなたの問題よと、幾分優しい口調で諭す。

 解り難いリグレットの優しさ。私はここに、ティア自身の言動と同じ匂いを感じ取りました。他者のために心を砕き骨を折って行動しながら、それを見せずに冷徹で通して、恩を売ることを嫌い、しかしやや度が過ぎて相手を傷つけてしまう不器用さがある。自分にも他人にも厳しくあらんとするばかりに。

 このドラマCDは、そこを単純化し、平易に変更しています。

 

 変更点と言えば、ティアが初日の訓練を仮病ですっぽかすエピソード。『ファンダム2』では部屋でうたた寝してしまったティアが外に出ると、リグレットがまだ待っていたという展開ですが、こちらのドラマでは、翌朝にティアが部屋から出るとリグレットが待っていた、となっていました。一晩中待っていたという方が、インパクトが強いですね。

 

 ブウサギ事件で、犯人でないなら謝罪するなと庇われたことを、《自身の正義を曲げない強さを教えられた》とみなし、《だから兄に反抗してでも自身の正義を貫けるように変われた》と繋げるのは、このシナリオライターさん独自の解釈かと思うのですが、感心しました。ティアにとってのリグレットの存在が、原作以上に際立ったと思います。



第二部「宝剣ガルディオス」

 アニスが何度も「レッツらゴー」と言うのが印象的でした。レトロちっく。

 

 この巻に収められた中で、最もボリュームのある話です。TVアニメなら一話と半くらい。実際に放映するなら、枝葉を削って一話にするのかな。

 原作のサブイベント《ガイの宝剣》と《ガイの奥義》を元に、伝承者を増やしたり、オアシスの泉の水やシュレーの丘の怪談ネタまで盛り込んで、見事なオリジナルストーリーが作り上げられています。特に、クライマックスのペールとの戦闘は素晴らしく、盛り上がって燃え燃えでした。

 味付けは非常に明るく清潔で、性善説的な、悪人がいない世界です。

 

 テレビアニメ本編とは一部状況が矛盾していて、パラレルストーリー化しています。アニメでは外殻降下後、ガイがマルクトへ帰る際にペールも一緒に帰ったことになっているのですが、このドラマでは原作設定のまま、ペールがしばらくファブレ邸に残っていたことになっている。

 ……いや。原作のイベント発生時期を無視して、平和条約締結から外殻降下の間の出来事だと考えれば辻褄は狂わない、のかな。でもそうすると今度は、ペールがガイより先に屋敷を出て行ったことになっちゃいますね。

 

 それと、「古木の木陰」というヒントから「古い木と言えば、やっぱセントビナーで合ってるよな」とその地へ向かうのですが、アニメ第4話のセントビナーの遠景にはソイルの木が見当たらなかったですよね。アニメ版ではチーグルの木が切株になってましたし、それと関係深いらしいソイルの木も存在しない設定なんだと思ってたんですが、実は普通にあった?

 ファブレ邸に立ち寄ったルークたちは、屋敷に飾られた由緒ある品々を話題にします。そういえば、玄関に飾られている剣も由緒ある戦利品だと以前ガイが言っていた、と話すルークとティア。

 ペールに会いにいったガイを探すと、玄関の剣の前にいました。ガイは、ペールが間もなくファブレ邸を去ると打ち明けます。ルークやナタリアは驚き、ホド出身だと知れたためかと問いますが、ガイは、これは自分たちがこの屋敷に来て、この剣を見つけた時から決めていたことだと言うのです。

 玄関に飾られた戦利品の剣。これはガイの父の遺品であり、ガルディオス家に代々伝わる宝剣でした。この剣にガイとペールは復讐を誓っていた。けれどその恨みを捨てた今、ペールもここを出ていける。これもルークが賭けに勝ってくれたおかげだと。けれど賭けのことなど覚えていないルークは首を傾げるばかりです。

 ルークは、剣をガイに返すよう父に言いに行こうとしましたが、ガイは止め、自分はまだこの剣に相応しい男になっていないと言うのでした。

 そんなガイに、ペールが言います。ガイラルディア様が剣技を極めたいなら、ザオ砂漠のギィという男を訪ねてごらんなさいと。アルビオールを貸してくれと言うガイに、ルークは俺も付き合うと笑い、結局、全員でガイの修行の旅に同行することになったのでした。

 ザオ砂漠のオアシス、ダアト、カイツール、ベルケンド、グランコクマ、ケテルブルクと廻り、セントビナーへ。七番目の伝承者は、ホドを脱出してから幼いガイの世話をしてくれた、ペールの元部下のジンでした。そして、最後の伝承者はガイの最も近きにいる、と教えられます。

 すぐにバチカルへ戻ったガイと仲間たち。ペールはファブレ公爵にいとまを告げて出て行こうとしているところでしたが、そこに駆け込んで最後の口伝を請います。ペールは公爵に許可を得てガイを庭に誘い、名乗りを上げ合って真剣で手合わせを開始。ペールの鬼神のごとき強さにガイは一度は弾き倒されてしまう。ペールは言います。シグムント流の極意とは連撃。一撃目より二撃目を強く、一撃必殺ではなく連撃による勝利をつかむ、それがシグムント流最終奥義・閃空翔裂破だと。ガイはその教えを学び取り、ペールを倒して見事、奥義を我がものにしたのでした。

 全てを見届けた公爵はガイをねぎらい、自ら宝剣ガルディオスを与えます。ガイは幼いルークと交わした賭けについて話し、ルークが自分を変えたと語る。公爵は、ルークに永遠の友情を誓ってやってくれと言い、ガイは明るく快諾するのでした。

 俺はこの剣に相応しい男になれているか、と問いかけるガイに、ペールは頷いて感激の涙、涙。アニスは宝剣の高価さにウハウハ。ファブレ邸の庭に明るい笑いが弾けたのでした。おしまい。

 宝剣と共にガイの父の首もキムラスカへ運ばれたという原作設定は消滅しており、ガイたちとファブレ公爵の関係が優しく清潔なものになっています。公爵はペールに、このままずっと仕えていて欲しかったと言う。そしてガイの奥義伝承を見届けると自ら宝剣を授与し、「ガイラルディア」と呼ぶ。

 原作の公爵は、自分が今までルークに冷たく接していた理由を明かして己の弱さを懺悔し、父親失格の自分の代わりに、ガイは父のように兄のようにルークを育ててくれたと感謝して、ルークのおかげで変われたと言うなら、この宝剣を取って、永遠にルークの忠実な守護者であり友人であってくれないかと願う。つまり、宝剣返却は息子への愛情の証でもありましたが、これらのくだりは消滅していました。ドラマの公爵は、ガイが一人前の男に成長したことを認めて宝剣を渡すのです。

 ガイがルークに永遠の友情を誓う場面も、原作とは雰囲気が違います。とにかく明るくて爽やか。絵の無いドラマだからでしょうが、ガイがルークの前に騎士のように跪く描写もありませんし。

公爵「ガイ。どうかその志をもって、ルークに永遠の忠誠を……いや、友情を誓ってやってはくれまいか」
ガイ「え?」
ルーク「父上!?」
公爵「この剣と共に、ルークのかけがえのない友として」
ガイ「かけがえのない……友……。(明るく)――ええ。その通りです!」
ルーク(嬉しそうに)ガイ!」
公爵「これからもルークのことを頼むぞ、ガイ」
ガイ「はい!」

 

 その他、変更されていた点幾つか。

(原作)公爵は、幼いルーク本人から、ガイと賭けをしたことを聞いた。
(CD)公爵は、妻シュザンヌから、幼いルークがガイと賭けをしたらしいと又聞きした。

 公爵とルークの父子関係が良好ではなかった、という設定を踏まえての変更?

(原作)
奥義伝承は、オアシス、カイツール、ダアト、グランコクマ、ベルケンド、ケテルブルクの順で六ヶ所を巡り、伝承者は五人。(会ったうちの一人は伝言人。)習得する奥義は「裂空斬」「閃空翔裂破」の二種。
伝承の様子をルークたちには一切見せなかった。(流派の秘密なので)
伝承者のうち、名前が明かされたのはギィのみ。
(CD)
オアシス、ダアト、カイツール、ベルケンド、グランコクマ、ケテルブルク、セントビナー、バチカルの順で八ヶ所を巡り、「閃空翔裂破」を習得。
最後の伝承の様子のみ、ペールの判断で、ルークたちどころかファブレ公爵にも見せた。
《ペールの元部下で、ホド脱出後に幼いガイを世話してくれた、セントビナーに住む》ジンという男が、七番目の伝承者として登場。

 原作には、五歳でホドを脱出したガイが最初にかくまわれたのはセントビナー、という設定があります。しかし具体的にどんな様子だったかは語られていません。そこに肉付けしています。ただし、ジンがガイをセントビナーにかくまったと明言はしておらず、《ホド脱出後の幼いガイの世話をしてくれた》《セントビナーにいた》と、婉曲的な表現をしています。

 ちなみにファミ通文庫版小説では、幼いガイをセントビナーにかくまったのは、ペールの古い友人(元軍人)のラシムという男になっています。一緒にホドを脱出したペールの部下たちは、セントビナーに入る直前に各地に分散したと語っています。

 

 ちょっと面白かったオリジナルエピソード三つ。

◆達人ペール
ガイ「元々ペールは、ガルディオス家に仕える騎士の出で、剣の腕は一流なんだ」
全員えぇーーーっ!?
ガイ(苦笑して)だから、驚き過ぎだって」
ルーク「驚くっつーの!」
ティア「普通は物腰、態度、ふとした動作からでも、それが剣術による癖だと判ってしまうものなのだけれど……」
ジェイド「しかし彼からは、そんなものは微塵も感じられなかった。庭師という仮の姿を、完璧に演じ切っていたんでしょうねぇ」

 言われてみればそうなのか。敵地の中で暮らして、立ち居振る舞いさえ完璧に変えて爪を隠し通したペールは、ホントに凄い人だったのね。

 

◆ジェイドの奥義修行
アニス「ねえねえ大佐〜」
ジェイド「ん。何ですか、アニスー」
アニス「大佐は、譜術の他に槍の使い手でもあるわけでしょ」
ジェイド「あー、そういうことになりますね」
アニス「ってことはさ。やっぱ、ガイみたいに、『奥義の伝授』とか、あったんですか?」
ナタリア「あら。それはわたくしも興味ありますわ」
ティア「そうね。大佐は槍の腕も一流だから」
ジェイド「はは。そんな大したものではありませんよ。譜術も槍も、全くの独学です」
アニス「えぇーっ!? そうなのぉ?」
ジェイド「そうですよぉ♥」
ルーク「でも、戦いの時は『天雷槍!』とか『瞬迅槍!』とか、ちゃんとした技を使ってるんじゃ」
ジェイド「ああ。あんなものはその場の雰囲気で、適当に言ってるだけです」
ルーク「て、適当って! 嘘だろおい!」
ジェイド「嘘ですけどね」
ルーク「〜〜っ。信じた俺が馬鹿だった」

 考えてみれば、ジェイドには譜術習得イベントはあっても奥義伝承イベントはなかったですね。誰かに教えを乞うているジェイドって想像しにくいですが、実際には、士官学校の教官とかに学んだんでしょうね。その頃のジェイドはとんがってたから、きっとムスッとしながら。

 

◆ルークが剣術を始めた理由
ルーク「俺が剣術を始めたのは。――やっぱ、ガイの影響かな」
ジェイド「? ヴァンではなくて……ですか?」
ルーク師匠せんせいはあくまで師匠せんせいさ。
 物心ついた時から、俺のそばにはいつもガイがいてくれたからな。あいつがいなければ、俺は言葉を話すことも、歩くことすらできなかった」
ティア「ルークは、本当にガイのことを信頼してるのね」
アニス「親友、っていうかぁ。もう殆どお母さんって感じだよね」
ルーク「はぁ!? (苦笑して)なんでそうなるんだよ」
#遠くから駆けてくるガイ
ガイ「おーい、ルーク!」
ジェイド「おや。噂をすればナントカですね」
#駆けこんできて、呼吸を整え
ガイ「はあ、はあ……。何の話だ?」
アニス「うふふ。ルークのお母さんの話」
ガイ(不思議そうに)シュザンヌ様が、どうかしたのか?」
ルーク「あー、ほっとけほっとけ」

 ルークが剣術を始めたのはガイの影響。これって、このドラマだけの解釈なのか、それとも公式見解なんでしょうか?

 まあでも、子供は物真似を好むものですから、子守役のガイが剣術やってるのを見て興味を持った、っていうのは自然な流れかもですね。「ガイみたいに剣術やりたい、とルークがねだる」→「ではヴァン謡将に再び師事を頼もう、と公爵が手配」→「ルーク、英雄ヴァンに憧れる」という流れかな。

「ガイはルークのお母さん」だと言うアニス。もしもガイ本人がこれを聞いていたなら、カクっと肩を落として、「せめてお父さんと言ってくれ……」と、トホホ顔で言った気がします(笑)。

 

 それにつけても、奥義伝承バトルでのペールの口上はカッコよかった!!

#ペール、剣を抜いて掲げ
ペール「我こそはペールギュント・サダン・ナイマッハ。ガルディオス家の盾にして左の騎士なり。汝、我が剣に宿りし魂、シグムント流最終奥義に応えられるか!」
#ガイも剣を抜いて掲げ
ガイ「我が名は、ガイラルディア・ガラン・ガルディオス! そなたの魂、この剣に刻もう!」
ペール「いざ、参る!」

#ペールとの打ち合いに負け、地に弾き倒されてしまうガイ。
ルーク「ガイ!」
#観戦していたルーク、思わず駆け寄ろうとする
ガイ「来るな!」
ルーク「け、けど」
ガイ「男と男の勝負だ。黙って見てろ!」
ルーク「ガイ…!」
ティア「ルーク。信じましょう」←ティアさん、男前過ぎですの
ルーク「ああ…」
ペール「ガイラルディア様。このペールめとガイラルディア様の剣技の決定的な違いが、お分かりですかな?」
ガイ「はあ、はあ……。決定的な違いだと?」
ペール「左様。ガイラルディア様の剣の速度、まさに達人の域と申し上げても過言ではありますまい。しかしながら、その最初の一撃さえ止めれば、返す刀の軌道を読むことはたやすい。敵に剣の送り出しを悟られてはいけないのでございます」
ガイ「じゃあ……、ペールは!」
ペール「シグムント流剣技の真髄は、連撃にあり!
 一の太刀より二の太刀を、二の太刀より三の太刀を。踏み込みはより深く、強く! 一撃必殺ではなく、連撃によって敵を仕留める。即ち、奥義・閃空翔裂破!」
ガイ「閃空……翔裂破?」
ペール「恐らく次が最後の剣となりましょう。この老骨の前に、地にまみれるか、それとも見事、奥義を受け継がれるか。お覚悟は宜しいか!」
#よろよろと立ち上がるガイ。荒い息をつきながら
ガイ「――ああ。(剣を構え直す)行くぞ、ペール!」
ペール「来られませい! ガイラルディア様!」
ガイ「うおおおおおお!」
#打ち合う
ガイ(一の太刀より、二の太刀を)
#更に打ち込む
ガイ(二の太刀より、三の太刀を!)
ペール「遅い!」
#斬り込むペール。しかし剣は空を斬る
ペール「なに!?」
ガイ「ここだ、ペール!」
#跳んで移動しているガイを見出すペール
ペール「いつの間に」
ガイ「奥義・閃空翔裂破ぁーー!」
ペール「ぐあっ!」
#弾き倒されるペール
ファブレ公爵「そこまで!」

 こんなに正統的で熱いバトルが聴けるとは思いませんでした。かかか・カッコいい〜!!

 ペールの剣技解説は結構な長台詞なのですが、その場面の音楽を神秘的にして、ガイが再挑戦する場面からカッコイイ戦闘音楽に切り替える音楽の付け方も、とってもよかったです。映像がないのにダレることなく、ワクワクと聴けました。



第三部「理想の男」

 このドラマCDには巻タイトルがないのですが、一部の販売サイトでは「ティア、ガイ、アニス編」と紹介されていました。つまり、最後に残ったこの話はアニス編と言うことらしいです。でも、特にアニス中心という訳ではありません。前半はアニスがよく喋りはしますが、後半はオールキャラになり、オチはガイ&ルークになってますし。そもそも、ガイに始まりガイに終わってますので、真の主役は彼なのかも?

 原作のスパイベント(称号取得ネタ)のかなり忠実なドラマ化を中心に、ジェイドのデッキブラシ、ティアの理想はヴァン? などの小ネタも投入。それらの間を《女性陣が理想の男性像を話し合う》《男性陣が、くしゃみの回数で噂の内容を判定する》というオリジナルエピソードで繋いでありますが、核となるような話はなく、ショート・コント集とか、四コマの連続で漠然とストーリーを作ってる ゆる漫画みたいな感じ。長さは18分強で、またまたTVアニメ一話分くらいです。

 貴族御用達の高級リゾート施設、メガロフレデリカ・スパの会員証をピオニー陛下にもらったアニスは大喜び。食事も掻き込む勢いで済ませて、早く早くと仲間たちを急かします。年相応で可愛いです。

 いよいよスパに向かい、男性と女性に別れて更衣室へ。着替えながら、あまりに玉の輿を連呼するアニスをたしなめ、愛があればいいと言うナタリアでしたが、アニスはお金がないと人の心は荒むものだと指摘します。その点でルークは合格だけれど、性格に難がある。するとティアが、ルークは頑張って変わっていると思うわと口を挟み、庇うなんてやっぱそうだったんだとアニスはニヤニヤ。そんなんじゃないわ、と過敏に否定するティアなのです。

 その頃、男性更衣室で大きなくしゃみをするルーク。ジェイドが、くしゃみは噂されていると出る、回数で噂の内容を判断する俗信があると話します。「一に褒められ、二に振られ、三に惚れられ、四に風邪」。くしゃみ一回のルークは誰かに「褒められている」? ……が、直後にもう一回くしゃみしちゃうルーク。「振られた」みたいです。

 再び女子更衣室。それではティアの理想の男性はと尋ねられ、そんなこと考えたこともなかったけど……と言いながら、殆どユリアシティから出たことがなかったからあちこち旅に連れて行ってくれる人、見た目は髭の似合う人がいいと答えます。ルーク、頑張れ。

 アニスは更に、ガイはどうかと言いだします。見た目も家柄も性格も、たぶん経済力も問題なし。女性恐怖症なのが玉にキズだけど、だましだましやっていけば……。そんな簡単なものかしらとティアは呆れますが、アニスちゃんの魅力をもってすれば克服できる、というポジティブな言葉を聞くと、ガイも過去を受け入れながら変わってきているものねと微笑むのでした。アニスはガイをキープする発言。

 その頃、更衣室を出たガイは大きなくしゃみを一回。「褒められてる」のかな?
 ルークはスパを見て、風呂っていうより水練場だぜと大喜び。
 それはともかくとして、プールサイドで合流したジェイドは、何故かロッカーに入っていたというデッキブラシを装備しているのでした。達人は武器を選ばない?

 次に、ティアが大佐はどうかしらと言いだします。ところがアニスは「えぇ〜、大佐ぁ? ないよ。ないない」と嫌そうに否定。ドSだし鬼畜眼鏡だし年が離れ過ぎているから無理だと言います。大佐も随分優しくなったと思うけど、とティアは不思議そうにしますが、じゃあティアは大佐を結婚相手に出来るのかと問われると、苦笑して言葉を濁してしまうのでした。一方でナタリアが、ジェイドのような殿方を理想とする方も大勢いるはずですとフォロー。

 その頃、ルークにデッキブラシの片づけを押し付けて単独行動していたジェイドは、大きなくしゃみを……しそうになりましたが引っ込めて、「ふふ。私はそう簡単には落ちませんよ?」と独りごちたのでありました。もしくしゃみしてたら、何回だったんでしょうね。

 女性陣は、完璧な理想の男性なんていない、自分たちだって不完全だし、むしろ互いの欠点を認め合い、補い合える関係が素敵なのだと結論。アニスは、いつか私にもそんな相手が現れるかな、その日を迎えて玉の輿に乗るためにも頑張ろう、と明るく決意するのでした。

 やっと更衣室から出てきた女性陣。プールサイドに駆け込んだアニスが、滑って風呂の中に落ちてしまうハプニングもありましたが、大事に至らず、互いの水着姿を評価し合います。(原作の称号名を全て台詞内に入れ込んでありました。)

 バスロープ姿で再登場したジェイドは、先にサウナを堪能していたと話します。何故かサウナの音機関について考え始め、嬉しそうに専門用語を口走るガイをルークが一喝。ここだけ見てるとガイってかなりの変人だよなぁ。

 さて。女性陣の水着姿を堪能して、実に嬉しそうなガイです。ところが、ルークとジェイドの悪戯で女性陣の中に突き飛ばされて、《スケベ大魔王》の称号を頂戴してしまいます。女性陣に見捨てられ、怒りに震える彼は「ルークとジェイドめ。覚えてろよ〜〜っ!」と叫ぶ。

 その頃ルークは大きなくしゃみ三回。「惚れられている」? 嬉々としてそう判定するミュウとジェイドに向かい、「誰にだよ」と憮然とするルークなのでありました。おしまい。

 ガイは「ルークとジェイドめ」と言ってるのにルークだけが、しかも三回くしゃみしちゃうのがミソなのでしょうか(笑)。永遠の友情(忠誠)を誓ったガイは、その意味で確かにルークに男惚れしてるんでしょうけど、彼のルークへの愛は常に恨みと隣り合わせなのだろーか(笑)。とりあえず、くしゃみ三回ルル三錠だよルーク。(キミは風邪をひきかけていると思うぞ。)

 

 微量に気になったこと幾つか。(いちいち気にするまでのないこととも言う。)

  1. 物語時期がイオン死亡後だと思われますが、その時期でもアニスが明るく玉の輿を狙ってるんだなぁ…。
    アニスが玉の輿を諦めて教団改革に献身することを誓ったのは、本当に最終決戦直前?
  2. アニスが、ジェイドは結婚相手にならないと激しく否定しますが、原作アニスは普通にジェイドを玉の輿候補に入れています。
  3. アニスとティアが理想の男性について話すたび、ナタリアが常にアッシュの話に変えて「わたくしはアッシュ一筋ですわ」と締めるのは、ギャグとして面白かったし微笑ましくてニコニコ聴けたんですけど、ちょっとだけ複雑な気分にもなりました。
    ナタリアがアッシュ一筋なのは事実ですし、だからこそ単純化した方があらゆる意味で都合がよいことも分かってますが、本当はもう少し複雑ですよね。
  4. ルークとガイは女性陣と合流する前にプールサイドでジェイドと話す。その後、全員集合した際に、ジェイドがバスロープを着ていることが話題になって、待っている間にサウナを堪能したからだと説明される。
    ……もしかしてジェイド、最初はバスロープなしの水着姿でしたか? 緑のブーメランパンツ。映像が見たかったなあ〜。

 

 冒頭、ガイ様の華麗なダジャレが聴けちゃいます。

アニス「ねぇ、早く行こう」
ガイ「え。おいおい。俺、まだサラダしか食ってないし。って言うか、メインのシーフードカレーがまだ来てないんだよな」
アニス「もぉ〜。カレーなんてどうでもいいでしょ」
ガイ「カレーを食って、ガイ様華麗に参上! なんつってな。ははははは」
ジェイド「さて。行きましょうか」
#席を立つ
ルーク「だな」
ガイ「お、おおい!」

 次のシーンでは、ガイ含めた全員でスパにいましたけど、ガイはちゃんとシーフードカレー食べられたんでしょうか?(笑)

 このように、この話のガイは全編でトホホな感じです。スケベ大魔王襲名したり、音機関マニア丸出しでルークに叱られたり。第二部『宝剣ガルディオス』とのギャップが楽しいかも。



キャストコメント

 今回は普段と空気が違っていました。

 まず、喋ってる時に野次が飛ばない。背後でキャーキャー笑わない。

 次に。何を喋るか予めテーマが決められてある。(今回は「好きなもの、または特技」。)ダラダラ無駄話しない。簡潔で、度を超えた悪ノリ発言がない。

 おかげで、とても聴き易かったです。いつものハイテンションな雑談ノリも楽しいですが、こういう感じもいいですね。

 あと、仕込みなのかたまたまなのか、最後にオチまで付いていました。スパ受付嬢役のうえだ星子さん(『アビス』アニメ本編ではメイドなどをされている方)が、今日は松本保典さん(ガイ役の声優さん)が髪を切ってて素敵でしたと発言。ルーク役の声優さんの司会で、少し照れくさそうに松本さんがコメントを返して終了、と。

 今回のドラマCDはガイがシリアス・ギャグの両面で大活躍でしたが、図らずも、キャストコメントもガイ役の声優さんで締めになったのでした。

 

 それはそうと、ギィ役の多田野 曜平さんが名乗られたのを「ギィ、ただの傭兵」と言っているのかと思って、「名乗らずにキャラ紹介?? ギィって傭兵?」と、聴き返すまで不思議に思ってました。アホです。


 



inserted by FC2 system