注意!

 

TVA『テイルズ オブ ジ アビス』DVD/BD初回特典ドラマCD
特殊音譜盤スペシャルフォンディスク 1〜3

バンダイビジュアル

 TVアニメシリーズ放映終了前月より、毎月リリース開始されたDVD/BDの、初回特典ドラマCDです。つまり9巻あります。

 各巻ドラマの長さはバラバラですが、平均して16分前後。それとは別に、巻末に恒例となったキャストコメント(フリートークコーナー)が付属しています。こちらの長さは完全にバラバラで、10分もあるものから、なんと1分しかないものまであります。

 製作スタッフは表記されていません。ただし、2(剣を握る手)のみ、シリーズ構成の面出明美さんの脚本だと『テイルズ オブ マガジン』記事にありました。脚本は基本的に面出さんなんだと思うのですが、単独発売のドラマCDのように、一部を他の脚本家さんが担当している可能性も否定はできないですね。

 

 ドラマの内容は、基本的に、その巻に収録されている回の時期に合わせてあり、主にサブイベントから想を膨らませた、その頃にあったかもしれない番外編、になっています。

 リリース開始の頃に電撃のゲーム雑誌で小特集が組まれてましたが、アニメ版の公式外伝であり、映像がない分、キャラの言動を幾分大げさにしてある、とのことでした。

 

特殊音譜盤スペシャルフォンディスク
〜ルーク様御一行スペシャルラジオ!〜

 TVアニメ第1話「預言スコアの世界」、2話「聖獣の森」が収録された、DVD/BD Vol.1の初回特典ドラマCD。

 

 記念すべき第一巻の特典ドラマCD……なのですが、長さは最も短く10分程度。内容も、楽屋オチと言うのか、メタフィクションになっています。これはこれで面白いのですが、個人的には、DVDを買う動機になるほどの魅力は感じませんでした。

 登場するのは、ルーク、ティア、アニス、ジェイド、ミュウ、イオン、ディストのみ。ディストとミュウを除いたメンバーがラジオ番組のDJになった、という設定です。アニメ放映以前、アニメイトが無料WEB配信していた『テイルズリンク ジ アビス』の前座ドラマに、かなり似ています。

 

 本来、『アビス』の世界にはラジオも電話もありません。しかし、このドラマではバチカル特設スタジオでラジオ番組を発信し、電話相談を受け付けています。ルークだけが「大体ラジオって何なんだ」と疑問を口にしますが、他メンバーは「知らないのはあなただけだと思うわ」「私たちの世界に存在してもな〜んの不思議もありません」と言い切って、強引に推し進めます。細かいことに突っ込むと破綻するからと、全員でルークを怒鳴って黙らせていました。(ギャグですよ。)ラストには、以降の特典ドラマCDをお楽しみにと、《第一巻を買ってくれたお客様》に呼びかける。ルークだけが最後まで「第二巻? 特典CD? わかんねぇー!」と苛立っています。

 要するに、ルーク以外のメンバーは、自分が創作物の中の架空キャラに過ぎないと認識している訳です。漫画などでは珍しいことではありませんが。

 

 ラジオ番組の内容は、「自己紹介のコーナー」と「電話お悩み相談」の二つだけ。「自己紹介」は初めて『アビス』を観る人用。ここでやっとイオンが喋り、ドラマCD(ラジオ)では喋らない限り存在が認識されない、というネタが使われています。

「悩み相談」の方は、プライバシー保護のためとて相談者の声にボイスチェンジャーがかけられたのですが、喋る内容と口調で、一人目はミュウ、二人目はディストであることがバレバレなのでした。このコーナーは面白かったです。

ルーク「おう。こちら電話相談だ」
??モシモシデスノー
ティア/ジェイド「ん?」
ジェイドボイスチェンジャーの意味がないような
アニス(苦笑)い、一瞬で誰だか判ってしまったような……
ルーク「そうか? ――お前、悩みがあるんだろ。どんな悩みだ?」
??毎日幸セスギテ……困ル〜ノデスノ
ルーク「ふーん? どんなふうに幸せなんだよ」
??昨日ハ、ゴ主人様ガ足デ蹴ッテ、遠クマデ飛バシテクレタンデスノ
ルーク「……ふーん」
ティアそれって……
アニス苛められてるんじゃ……
??ソレデ、ゴ主人様ガ最近、素敵ナにっくねーむヲ付ケテクレタンデスノ
ルーク「……ほ〜お。どんな名前なんだ?」
??ぶ・た・ざ・る♥ デスノ〜!
ルーク「ブタザル? ってお前、ミュウだろ!」
ミュウハイデスノ
ジェイド「あー、ボイスチェンジャー切らせてもらいますよ」
#ジェイド、ボイスチェンジャーを切る
ミュウ『ミュウ、ご主人様と一緒にいると、幸せすぎてなんだか困っちゃうんですの〜♥』
ルーク「うっせぇブタザル! 無駄な電話かけてくるんじゃねぇコラ!!」
#ルーク、電話を叩き切る

ルーク「おう。こちら電話相談」
??ハーッハッハッハッハッハ
ルーク(薄気味悪げに)なんだ。誰だよお前」
ジェイド(うんざりしたように)これはもしや」
アニス「そんなに高笑いして。ホントに悩みなんてあるの?」
??アリマス。トッテオキノ悩ミヲ相談シテ差シ上ゲマショウ。実ハ、周リノ人間タチガ、私ノ素晴ラシイ頭脳、類マレナル美貌ニ気後レシテ、私ニ、全ク! 話シカケテコナイノデス
ルーク「ふーん」
アニス(苦笑)それって友達いないだけなんじゃ……
??コノ私ニハ カツテ、ろん毛眼鏡ノ友人ガイマシタ
ティアロン毛眼鏡?
??デモ、アノ鬼畜ろん毛眼鏡ハ、カツテノ親友ニ対スル態度ガナッテイナイノデス! イクラ、私ノ輝カシサニ嫉妬シテイルカラト言ッテモ、ヒドイノデス!
ジェイド「あなたと友達になる物好きなんて、どこにいるのでしょうね」
??――! ソ、ソ、ソノ声ハ
ジェイド「私ですよ。鼻垂れディスト」
#ジェイド、ボイスチェンジャーを切る
ディスト『ジェイド! なんでお前がそこにいるんです!』
ジェイド「ほらほら。怒るとまた鼻水が出ますよ」
ディスト『出ませんよ!』
ルーク「あ〜あ。アホらし……」
#ルーク、電話を切る

 ディストの方は、喋り方のせいか声が変わっていてもあまり違和感がなかったのですが、ミュウの方は、ボイスチェンジャー時はかなり不気味な声になっていて、チェンジャーを切った後の可愛い声とのギャップが凄くて、その点でも面白かったです♥

 

 最初に書いたように、特典ドラマCDの内容は、その特典が付いたDVD/BDの収録回に合わせた設定になっているのが基本です。ですからこの特典でも、ルークは呑気であまり物事を考えていないおぼっちゃまですし、ティアの物言いはかなりキツいし、アニスはルークを様付けしていて、最初期の設定になっています。ついでに、ルークだけがつんぼ桟敷にいて苛立つ、というのも最初期設定的かな。とは言え、この巻の時点でまだ本編に登場していないディストがいたり、そう厳密ではありません。

 

 この感想を書いている時点でまだ入手は出来ませんが、DVD/BD最終巻の特典ドラマCDは、再びルーク様御一行スペシャルラジオです。感動の最終回だそうです。またまた電話相談とかやって、最後は「ファンディスクでお会いしましょう」とかメタ的なことを言うんですかね。短髪ルークはもう、架空キャラな自分を認識してるのでしょーか。

 

 フリートークコーナーは、単独発売のドラマCDのキャストコメントと同じ雰囲気です。和やか賑やか。映像がないのでアドリブ満載だったそうです。イオン様以外は(笑)。

 ディスト役の声優さんは、今後の特典ドラマCDにも出るぞと叫んでましたけど……(笑)。


特殊音譜盤スペシャルフォンディスク
〜剣を握る手〜

 TVアニメ第3話「神託の盾オラクル来襲」、4話「隠された真実」、5話「選ばれし英雄」が収録された、DVD/BD Vol.2の初回特典ドラマCD。

 とてもいい話で、色々考えさせられる部分もあります。が、巻末のフリートークコーナーが全てを台無しに……してるかも?(^_^;)

 

 第4話Aパートのフーブラス川辺りに《あったかもしれない》話。なので、ルーク、ティア、ジェイド、ガイ、イオン、ミュウの五人と一匹パーティで、アニスとナタリアはいません。

 アニメ本編で語られたフーブラス川関連エピソードは《川を魔物と戦闘しながら渡り、戦闘終了後、河岸でしばしお喋り》というものでしたが、このドラマでは《フーブラス川を渡りながらの会話》と《川を渡った直後の野営》が語られています。よって、アニメにはめ込むなら、《ドラマCD前半》→《アニメ本編のフーブラス川エピソード》→《ドラマCD後半》ということになるでしょうか。

(ただし、単純にアニメ本編の隙間を埋める話だとは言えない点もあります。《ミュウに八つ当たりするルーク》参照。)

 

 内容は、アニメ本編ではティアとの会話以外カットされた《野営》イベントの、ガイとの会話部分を核にしたもので、やはりカットされたフーブラス川エリア到達時のイベントや、取りこぼされた《ルークのキノコ嫌い》《ミュウは匂いでキノコを探す》などの小ネタをも盛り込んでいます。

 ただし、原作の《野営》イベントが、普段は柔和なガイが垣間見せた闇…《復讐者のガイ》の伏線として働くエピソードであったのに対し、こちらは《ルークの保護者・理解者としてのガイ》の要素をクローズアップし、ガイとルークの絆を抒情的に語る、《泣けるいい話》に仕上げられていました。

 フーブラス川を渡りながらルークは不満タラタラ。ティアに厳しくたしなめられてギャンギャン喚き、ガイに優しくなだめられて気を鎮めたものの、ミュウの励ましに逆ギレして追い回し、ジェイドの洒落にならない冗談でやっとうるさい口を閉じる状態です。

 川を渡り終えて(?)、これでカイツールだ、ゆっくり休むぞと喜びますが、近いとは言っても今日中に辿り着ける距離ではないと聞かされ、またも喚き散らすのでした。

 野営に適した場所を見つけましたが、ルークは相変わらず不満ばかりの棒立ち状態。
 見かねたティアに、私は水を汲んでくるからあなたは薪を拾ってきてと指示されて、「なんで俺が」とぷうぷう。一方、自主的に手伝おうとしたイオンは、ティアとジェイドに休んでいるようにと断られます。体が弱いぶん体力を温存してほしいと言うのです。「なんだよ、俺には働けって言っておいて」と不満げなルークでしたが、イオンに申し訳なさそうにされると、少し気まずげに「本気で手伝えって言ったわけじゃない。体力ないのはしょうがないからな」と言い、イオンにお礼を言われて「べ、別に礼を言われるようなことじゃない」と赤面するのでした。

 キノコを採ってくると健気に言うミュウにさえトゲトゲした言葉を浴びせ、またもティアとギスギスしてしまうルークでしたが、ガイが笑いながら話をそらし、イオンの取り成しもあって、気を取り直してミュウとも仲直り。薪拾いにはガイが同行しました。

 二人になると、ガイはルークが敵国に飛ばされたのに思っていたより落ち着いていたことや、イオンを気遣ったことを褒め、ルークが飛ばされた後の屋敷の様子を話しました。ルークの生死も分からずみんな騒然としていたこと、公爵がすぐにルーク捜索をヴァンとガイに命じたこと、ヴァンはイオン捜索を後回しにしてルークを捜してくれていること。「母上にまた心配かけてるんだろうな……」と暗く呟くルークを、「心配するな。すぐにお屋敷に帰れるさ」と励まします。

 ルークの手の豆は潰れ、痛みました。屋敷では稽古でしか振るったことのない剣を、今は魔物や人を斬るために使っているからです。剣で人を殺す。その覚悟と葛藤をガイから聞き出し、ガイ、そしてティアも、恐れを抱きつつ、その道を自分で選んでいるのだと気付くルーク。

 それでもルークは、人を傷つけることを恐れる心を吐露しました。けれど生きるために戦わなければならない、出口のない苦しさを。
 泣いて気持ちを吐き出せばいい、笑わないしティア達にも言わない。そう言ってくれたガイにすがると、ルークはこらえきれない嗚咽を漏らし、そのひと時、苦しみを涙に溶かしたのでした。おしまい。

 

 面白かった・考えさせられた点を以下に挙げます。

◆ルークとティアのギスギス関係

 アニメ版では、序盤のルークやティアの言動の辛辣さをマイルド化していたものですが、このドラマでは(特にティアが)原作そのままにキツく、二人は何度も激しく衝突し合っています。むむむ?

 どういうことなんでしょう。せめてドラマでは原作ママにというサービスなのか。単に、絵コンテ・演出・作画という過程を経なければ脚本はこんな感じだったのか。

 原作ではエンゲーブ初回到着時にあった、でもアニメ版では無かったことにされた「あなた文句ばかりね」という台詞がわざわざここに入れられていましたので、前者でしょうか。

◆ミュウに八つ当たりするルーク

 一方、ミュウの励ましにルークが逆ギレするエピソードは、《ミュウが空を飛ぶ》アニメオリジナル設定を上手く使って、救いがないほどギスギスしていた原作を、罪のない、コミカルで楽しいものに昇華させてありました。

(原作)ミュウが「ご主人様、頑張るですの。元気だすですの」と励ます→ルーク、「おめーはうぜーから、しゃべるなっつーの!」と逆ギレして踏みつけ、蹴飛ばす。「みゅう……」としおれるミュウ→ティアが「八つ当たりはやめて。ミュウが可哀想だわ」と怒る
(特典ドラマ)ミュウが「ご主人様、頑張ってくださいですの」と励ます→ルーク、「おめーはいちいちうぜー!」と逆ギレ、「一人だけ飛んで渡れる奴に言われたくねーってーの。お前も泳いで渡らせてやる!」と追い回すが捕まえられない→ティアが「やめなさいルーク。ミュウが可哀想でしょう?」と怒る

 ルークとミュウの追いかけっこは、とっても可愛かった♥ 巻末フリートークによると追いかけっこ時の台詞はアドリブで、でも尺にピタリとはまったんだそうです。声優ってすごいなぁ。

 

 ところで、実は原作の該当シーンのアレンジはアニメ本編の方にもあったりします。魔物を倒しながらフーブラス川を渡り終えた後、河岸で会話している時のもの。

(アニメ)ミュウが「ご主人様、頑張ってくださいですの!」と励ます→ルークが「なんにもしない奴が、うぜぇー!」と逆ギレして怒鳴る。「みゅうぅ〜…」としおれるミュウ→ティアの怒り台詞は無し

 あ、あれぇ? 重複しちゃってる…。

◆生真面目なティア

 ルークがミュウを追い回してバシャバシャ川の中を駆け回っていると、ジェイドがあまり大きな声は出さない方がいい、また魔物が寄ってくるかもしれない、ほら、水の中から、あなたたちを引きずり込もうと狙っていると脅し、場が緊張します。(ガイがすかさず「ルーク!」と叫ぶのは、護衛剣士ならではですね。)けれど、それは嘘でした。これにはルークだけでなく、ガイとティアも少し非難の目に。が、静かにしてほしいのは本当、魔物だけでなく、神託の盾オラクルの追手に気付かれる可能性もあると言われてハッとする。

 ここでティアが「……すみません」と悄然と謝っていたのが印象的でした。謝るほどのことなんて言ってないのになぁ。(「大佐!」と少し非難のニュアンスで呼びかけただけ。)ジェイドの真意を酌み取れなかった自分自身が不甲斐ないと思ったんでしょうね。真面目過ぎるよティアさん。

 ちなみにガイは謝ったりなどせず、「そうだったな」と流して、普通にジェイドと会話を続けていました(笑)。

◆ガイとティア

 前述したように、このドラマのガイは《ルークの理解者・保護者》としての面が強調されています。まだルークがティアや他の仲間たちと信頼関係を築くに至っていない時期なので、尚更そんな感じ。

 ルークがワガママな放言→ティアが怒ってキツく叱る→ガイがやんわりと宥めるというサイクルが三回繰り返されるのですが、なかなか面白い。この頃のティアはガチガチの委員長頭で、常に真正面からルークの言動そのものを非難するんですけど、ガイは笑顔で少しズラした言い方をするんですよね。

ルーク、川を渡るなんて嫌だ、橋や道はないのかと文句を言い続ける
ティア→ないものは仕方がない、バチカルのように舗装された道ばかりではない、あなたは文句ばかりね
ガイ→川を渡ればカイツールまでもう少しだから我慢してくれよ

ルーク、ミュウに八つ当たりして追いかけ回す
ティア→やめなさい、ミュウが可哀想でしょ
ガイ→あーあー、服までびしょ濡れになるぞ

ルーク、キノコを採ってくると言うミュウに嫌味を言い、キノコなんて嫌いだと駄目出し
ティア→せっかく採ってきてくれるというのにそんな言い方はないわ、それに旅では食べられる時に食べておくものよ
ガイ→ははは。だから好き嫌いはなくせって言ってたのにな、ルーク

 実はガイはティアと同じことを言っているのですが(文句ばかり言うな、追いかけっこやめろ、偏食は駄目)、ルークをカッとさせない言い方を心得ている感じ。同時に、ティアと軋轢を起こすことも避けています。上手いなぁ。

 逆に言うと、ティアは叱り方が下手で、ちょっと子供っぽいのかもですね。従者(保護者)のガイの前でルークをガンガン叱ることも、少しも遠慮しないもんなぁ。(反面、身を呈してでもルークを守ってくれてるんで、ガイとしても彼女に悪印象は抱かないのでしょうが。原作ガイは、ティアに叱られ指示されるルークを見て「なんだ? 尻にしかれてるな、ルーク。ナタリア姫が妬くぞ」とからかってましたっけ。)

◆ルークの口が悪い理由

 ルークは公爵家の御曹司で、物心つく前から軟禁されていて、この世界にはテレビもラジオもインターネットもない。なのに、かなり崩れた、チンピラ風とさえ言える若者言葉を使います。

 原作プレイヤーの間にはガイの影響だろうという説があり、私自身も感想にそう書いていたものですが、それがエピソードとして語られ、いわば公式化されていました。

ジェイド「少し気になっていたのですが」
ガイ「ん?」
ジェイド「あなたは、ファブレ公爵家の使用人にしては、主君のご子息に対して随分と気安く接しているのですね」
ガイ(少し気まずげに)ああ……。これはもう、癖でね。(笑って)と言うか、その坊っちゃんのたっての願いで」
ジェイド「ほう?」
ガイ「な、ルーク」
ルーク「ガイは他の使用人とは違うんだよ! ……ガイにまで、よそよそしくされたら、息が詰まる」
ティア「どういうことかしら」
ガイ「俺は、屋敷の中でルークと一番 歳が近くてね。遊び相手兼教育係と言うか……」
ジェイド「要するに、お守りなわけですね」
ルーク「おい!」
ガイ「とにかく。四六時中一緒にいる相手に、慇懃な態度を取られるのが厭だって言って。敬語で喋るな、ルーク様って呼ぶなって、無理難題をふっかけられて」
ジェイド「使用人としては困りますね」
ガイ「そう。だから二人の時だけ、こういう話し方にしてたんだけど。そのうち俺の口調を真似して、すっかり坊ちゃんの口が悪くなっちまって」
ジェイド「教育係失格ですね」
ガイ「だな(笑)
ルーク「ガイは悪くねぇ! 俺は、堅苦しいのは嫌いなんだよっ」

 アニメのルークは、第1話から「俺はガイのこと、ただの使用人だなんて思ってない!」と言っていたものでしたが、ここでも「ガイは他の使用人とは違うんだよ!」と言っています。

 それらの台詞を言う時も、今回「ガイは悪くねぇ!」と庇う時も、いやに語気が荒いと言いますか、いっそ必死にさえ聞こえるのが印象的でした。

 なんとなく、屋敷時代が推し量れる感じ。

(ナタリアは従姉で婚約者なので、少し違いますから)ガイはルークにとって、たった一人の友達だったんですもんね。遠ざかってほしくないし、周囲に非難してほしくないし、まして、それを理由にガイが首にでもなったら耐えられないんでしょう。

 寂しいんだな、と感じました。

◆イオンのルーク評

イオン「僕は、今のルークが好きですよ。自分に正直で、言いたいことを言える強さがある」

 自分が導師のレプリカだと自覚しているイオンは、正直な自分を出すことが出来ないし、言いたいこともあまり言えない。だからこそ、傍若無人ながら天衣無縫なルークに憧れていたのかな。

◆世間では ささやかなことでも

 仲間たちから離れて薪拾いに行き、二人きりになると、ガイがルークを褒めはじめます。

ガイ「それにしても、意外だったな」
ルーク「? 何がだよ」
ガイ「思いがけず屋敷から出て、敵国のど真ん中に放り出されたんだぜ。俺はお前がもっと、オロオロしているかと思ってたよ」
#どこか気まずげに口ごもるルーク
ルーク「それは……」
#ガイ、明るく、からかう口調で
ガイ「昔みたいに、泣いてるんじゃないかとかな」
ルーク「泣くわけないだろ! ガキじゃあるまいし」
ガイ「ああ。実際 再会して驚いたよ。泣くどころか、導師イオンを気遣ったりして」
ルーク「〜〜っ。あれは、別に」
ガイ「ははっ。照れなさんな。とにかく、お前の無事な姿を見て安心したんだ」

 泣かずに剣を振るった、暴言でイオンを傷つけた後で少し気遣った。世間一般的には、それらは強いて褒めるようなことではありません。十七歳の青年としては拙過ぎるくらい。ルークよりずっと幼くて体力のないアニスやイオンでも、もっと配慮のある発言をし、文句を言い過ぎずに荒れ地を歩き、血みどろの戦いに耐え、大人と同等に働いている、そんな世界ですから。だから、ティアやジェイドはこうした点でルークを評価することはありません。

 けれどガイは褒めます。ルークの肉体と精神の年齢が吊り合っていないことをよく知っているからこそ、どんなに頑張っているのか理解できるから。父代わり・兄代わりとしては、誇らしくもあり、不憫でもあるのでしょう。

 

俺はお前がもっと、オロオロしているかと思ってたよ」とガイに褒められたルークが、「当たり前だっつーの!」などと胸を張るようなことはせず、少し気まずげに口ごもったのも印象的でした。ティアがいてくれたから何とかなったんですが、実際は、結構オロオロしてましたよね。

 オロオロして人質になってジェイドを危地におとしいれ。オロオロして人を殺してしまい、それで更にオロオロしてティアに怪我を負わせたし。

 ガイはそれらの経緯を概ね知っていると思いますが、ここでもからかって話をずらし、ルークの気持ちを引き上げようとしている……のかな、と思いました。

◆ガイが初めて人を殺したのは

 原作では、ルークに「おまえ、今までどれぐらい斬った?」と訊かれたガイは「さあな」とぼかしつつ、「あそこの軍人さん(ジェイド)よりは少ないだろうよ」と、民間人としてはかなり斬った経験があるらしいことを匂わせてきます。

 でも、少し不思議ではあります。ガイはルーク付きの使用人ですから、基本的にバチカルを出られないはず。しかも七歳の時から仕えています。一体いつ、そんなに人を斬ったのか?

 多くの同人二次創作で、それぞれの解釈でその辺が語られていますけど、その中でも見たような説明がここでなされていました。

#ルーク、潰れた手の豆をガイに診てもらいながら
ルーク「ガイは……」
ガイ「ん?」
ルーク「ガイは、人を斬ったことがあるのか?」
ガイ「ある」
ルーク「!」
#数歩後ろに退すさってしまうルーク
ガイ「厳重に守られたバチカルから一歩出れば、自分の身は自分で守るしかないんだ。魔物もそうだが、盗賊に襲われることもある。俺も何度か、屋敷の使いで外に出たりしていたからな。そういう場面に遭遇したことがあるよ」
ルーク「……それで、斬った」
ガイ「ああ。そうするしか、自分の身を守れないからな」

 なるほどなぁ。

 単独発売アニメドラマCDの《海が見たいと駄々をこねる幼少ルーク》《成人したらどこへでも連れて行ってやると約束しながら、心苦しげなガイ》もそうでしたが、ファンの間で似た感じに妄想されていたものが公式作品で明確化…いわば肯定されるのは、なかなか嬉しいものですね。読みが間違ってなかったということですから。

 

 ところで、ガイが人殺しをしたことがあると言って、ルークが息を飲んだ後。どういう状況なのかイマイチ判らないです。一、二歩素早くステップしたような音がして、すぐにパチ、と手で肌を軽くはたいたような音がします。最初のは反射的にルークが後ずさった音でしょうが、次の《パチッ》は何なのか。ルークが思わずガイの手を振り払ったのか、それとも、逃げようとしたルークの手をガイが掴んだ音なのか。うーん?

 この後の《泣き》のシーンでは、ルークは二、三歩くらい歩いてからガイに縋りついているので、前者でいいのかな。でもそれなら、まず《パチッ》と振り払う音がして数歩後ずさらないと変な感じ。(ルークはガイに潰れた豆を診てもらっていて、手を取られている状態だったから。)じゃあやっぱり掴んだ音…? だとすれば、ルークを逃がさないようにして「怖いか、俺が」と尋ねたことになるので、ガイ様ちょっと怖いかもですね。

 いやいや。ルークが後ずさって、ガイが手を伸ばして、ルークがそれを撥ね退けたのかな?

 

 それはそうと、ここの台詞、少しおかしいと思います。どうしてルークは今更、「ガイは、人を斬ったことがあるのか?」と尋ねるのでしょう。

 アニメ版では、タルタロスに華麗に参上した時点で、ガイはイオンを捕らえていた神託の盾オラクル兵たちを斬り捨てています。更に、原作でもアニメ版でも、ルークを庇ってティアが斬られた時、その神託の盾兵を斬殺したのはガイでした。ルークの目の前でのことです。

 原作通りの「おまえ、今までどれぐらい斬った?」なら何の矛盾もないのに、どうして辻褄の合わない台詞回しに変えたのでしょうか。不思議です。

◆他者を傷つけてでも生き抜く覚悟

#ガイ、黙っているルークに苦い笑いを向け
ガイ「……怖いか、俺が」
#ルーク、ハッとして
ルーク「違う、ガイが怖いんじゃなくて」
ガイ「俺だって怖いさ」
ルーク「え?」
ガイ「いつだって、剣を抜くのは怖い。自分が斬られることもあるし、人を傷つけることもある。それが怖いんだ」
ルーク「……ガイも」
ガイ「誰だってそうだ。たとえ軍人でもな」

#ルークの脳裏に瞬く、タルタロスの牢で聞いたティアの声
ティア『私だって、好きで殺しているんじゃないわ』

ルーク「――!」
ガイ「でも。剣を取ることを俺は選んだ。だから、それを抜く覚悟も持っているつもりだ。後悔もしていない。これが俺の道だからな」
ルーク「俺は……」
ガイ「ルーク」
ルーク「俺は、剣が人を傷つけるためのものだって、知らなかった。ヴァン師匠せんせいは、そんなことは教えてくれなかった」
ガイ「ああ」
ルーク「でも、俺も剣を抜いて、………人を殺した」
ガイ「ルーク……」
ルーク「解ってる。戦わなきゃいけないんだって。でも……俺はほんとは、誰も傷つけたくなんかないよ」

 原作のガイは、「怖いさ。怖いから戦うんだ。しにたくねぇからな。俺にはまだやることがある」という台詞で《他者を殺してでも生き抜く覚悟》を示し、(ティアの「人を殺すということは相手の可能性を奪うことよ。それが身を守るためでも」という台詞に続けての)……恨みを買うことだってある」という台詞で人殺しの罪の自覚(と同時に、復讐者でもある自己)を示していて、ハードボイルドと言うのか、女々しさはありません。

 それに比べると、こちらのガイは「人を傷つけることもある。それが怖いんだ」と平たく気持ちを述べていて、繊細な感じですね。

 ルークも原作より繊細と言うか、素直な感じ。この時期で「俺はほんとは、誰も傷つけたくなんかないよ」と心の奥底を口に出して言ってます。

 

 個人的には「誰も殺したくなんかないよ」か「誰も斬りたくなんかないよ」という台詞回しの方がよかったかもです。「傷つける」という柔らかい言い回しでは、意味がぼけると言うかずれると言うか。だってこの時期のルーク、ひどい暴言ガンガン吐いていて、ティアもイオンもミュウも精神的には傷つけまくってますから。ミュウには物理的な暴力も振るいますし。そういう状態なのに「誰も傷つけたくなんかないよ」と、絵に描いた虫すら殺さぬみたいなこと言われても、んんん…という感じがしてしまって。間違ってないんですけど、ちょっとズレてるよーな。

 ルークが本当に忌避しているのは《誰かを傷つけること》以上に、《人の命を奪うこと》ですよね。

◆復讐者の闇

ガイ「ルーク。お前、やっぱり泣いてたんだろ」
ルーク「なっ……!? 俺は!」
ガイ「いいさ。そういう時は、泣いてスッキリしちまえばいい。俺はお前の泣き顔なんて見慣れてるからな。笑ったりしない。ティア達にも、内緒にしておいてやるよ」
ルーク「ガイ……」
#歩み寄り、しがみついて、押し殺した嗚咽を漏らし始めるルーク。
#ガイ、ぽんぽんとルークの背(頭?)を撫で叩いて
ガイ「辛かったな、ルーク。屋敷に帰れば、お前はもう剣を取らなくていい」
#子供のように泣き続けているルーク
ガイ「――あそこに帰れば、二度と」

 本当言うと、この時点でガイがこれほどまでにルークの心のおりを溶かしてやることができ、ルークにこれほど心を開け広げることのできる素直さがあったのなら、アクゼリュス崩落は起きなかったんじゃないかとも思います。

『アビス』のキャラクター達は不器用で強がりで、仲間同士でも心を開け広げて噛み合うまでに時間がかかったという印象があります。原作のルークは正面から「人を傷つけたくない」と言いはしなかった。選んだのは、(ティアやジェイド達には秘密の)真夜中の剣術特訓で迷いをふっ切ること。ガイも、ルークの意地を受け入れて特訓に付き合いました。最初に「無理するなよ」とは言いましたが、ルークの覚悟を見ると、泣くことを促しはしなかった。ガイ自身、泣かずに頑張ってきた人ですし。

 ですから、このドラマは《夢の『アビス』》を描いたもののようにも思えました。だからこその魅力がある。こうあってほしかった、こうだったらどうだろう、という理想の一つが結実しているからです。

 原作の、泣かずに頑張ったルークも私は好きです。でもこのドラマの、涙を見せてくれたルークにも、大きなカタルシスを覚えました。

 

 さて。このドラマは《ルークの保護者・理解者としてのガイ》の要素をクローズアップしていると最初に書きましたが、《復讐者のガイ》の要素も、実は消されていなかったように感じました。ラストのガイの台詞を聞くと。

「屋敷に帰れば、お前はもう剣を取らなくていい」「あそこに帰れば、二度と」

 この台詞、額面通り《家に帰れば安全》というだけの意味にも取れますが、最後に《二度と》という強い否定を持ってきて、微量な違和感を生じさせている点がミソのように思えるのです。

 いくら屋敷が安全でも、父親は軍人で戦乱の世界ですし、将来成人して屋敷から出れば剣を持つことは否定できないように思えます。なのに《二度と》剣を持たなくていいと断定している。

 つまり、ルークは成人することも、自由になって社会に出ることもないと言っているのでは。《屋敷での生活に戻れば、復讐者の自分が成人前に殺すから、二度と剣を持つことはない》という、暗い意味が含まれているんじゃないでしょうか。

 このドラマの脚本家さんは、アニメ本編や単独発売ドラマCDでも、ガイがルークに優しくしながら復讐者の顔を垣間見せる描写を好んで入れていますから、多分そうなんだと思うのです。

 

 ……が。ちょっと引っかかる点もあります。声優さんの演技。最後まで声のトーンを変えず、ただ優しく喋っているように聞こえます。どうも《家に帰れば安全》というだけの解釈で演じておられる、ような……?

 うーん。実は全然、暗い意味なんてない? 私、考え過ぎましたかね。(^_^;)

 自分的には、「あそこに帰れば、二度と」だけ、ちょっと暗いニュアンスで演技されて、ルークの泣き声もそれ以上続けず、そこでストンと落ちていたら最高でした。




 最後に、フリートークコーナー。「丸山美紀役のミュウです」には大受けしました(笑)。

 何故かジェイド役の声優さんが非常に悪ノリしていて、「ガイとルークの親密な関係」「後半はずっと二人で乳繰り合ってる」「やらしい」「友情なんだか愛情なんだか分かんねーや」「(リスナーの)女の子はあの辺にキュンとして聴いてるんじゃないかな」「狙ってるでしょ」「狙い過ぎ」などとテンション高く大騒ぎ。司会のルーク役の声優さんが「親友ですからね」「(狙ってるなんて)そんなことないよ」とフォローはしてましたけど。

 おかげで(?)ガイ役の声優さんが少し引いてしまって、ルークとガイが二人で薪拾いに行ったことに「男と一緒に薪を拾いに行くのは、僕は個人的にまっぴらですね(笑)」とコメントする始末。そりゃ女の子と行った方が楽しいでしょうが、野営の準備で男二人が薪拾いに行くのは少しもおかしくも妖しくもないことなのに。しかもガイはルークの従者で護衛ですし。なのに、あたかも男二人でデートスポットにでも行ったかのような言いようで。しまいに「男に背中に縋われて泣かれるのもまっぴらごめんですね!(笑)」とまで言っちゃって。アレはそういう、女の子の方がいいとか男だと気持ち悪いとかの、軟派な場面じゃないじゃん。

 最後に「話は、いい話でした」と仰っては下さいましたが、色々台無しで、ちょっとしょんぼりでした。

 トークで笑うのは笑ったんですが、ドラマの余韻が消されて、イメージを強制的に書き換えられちゃった感じ。

 

 ところで、今回はガイ役の声優さん、何かが変で、脚本への理解と解釈がぐちゃぐちゃ。ルークとガイは薪拾いに行ったのにキノコを採りに行ったと言い続けたり(ティア役の声優さんが突っ込み訂正)、ガイはルークに胸を貸して泣かせてやったのに、背中に縋られて泣かれたと言ったり(ルーク役の声優さんが、自コメント内で さり気に言い直し)。疲れてらっしゃったのかな。


特殊音譜盤スペシャルフォンディスク
〜ナタリア 愛の手料理〜

 TVアニメ第6話「砂漠の雨」、7話「孤立」、8話「崩落」が収録された、DVD/BD Vol.3の初回特典ドラマCD。

 タイトル通り、ナタリアの手料理をモチーフにしたコメディです。恐らく、今巻収録の第6話で通るバチカル廃工場にちなんだのでしょう。原作ゲームでナタリアがパーティに入るのがここからで、ナタリアに初めて料理を作らせると発生するフェイスチャット「お姫様のドタバタクッキング1(ナタリアが料理下手を嘆き、無配慮な発言をしたルークが味見役になる羽目になる)」を、多くのプレイヤーがこのタイミングで見るだろうからです。

 その他、「お姫様のドタバタクッキング 2(ナタリアの料理の味見をさせられるルークの惨状)」「お姫様のドタバタクッキング 3(ティアに料理を習うがてんでダメなナタリア)」「貴重な人体実験!?(ジェイドが、軍人なので料理はサバイバルに重要、それに人体実験みたいで楽しいと言う)」「アニスが料理上手な訳は?(アニスの料理をルークが褒めていると、イオンが玉の輿に乗るには料理上手が一番と言っていたとアニスの思惑をばらしてしまう)」「ティアの料理の先生は?(ティアの料理の見栄えが大雑把なのはヴァンに軍隊式料理を習ったから?)」など、原作の料理系フェイスチャットからのネタ、実はガイが料理上手だという設定などがふんだんに盛り込まれ、補完・再構成されてありました。

 ちなみに「愛の手料理」というタイトルは、原作でアッシュに初めて料理を作らせると発生する《料理上手なアッシュが料理下手なナタリアを優しく庇い、アニスにからかわれる》という内容のフェイスチャットのそれと同じです。ですので発売前にタイトルだけ見たときは、アッシュが出てくるのだろうか? と思っていました(笑)。

 

 鳥が不気味にギャアギャアと鳴き交わす場所を進む親善大使一行。日も暮れてきたし疲れたし、今夜はここで野営をしようと言うことに。
 すかさずジェイドに水汲みを頼まれたナタリアが、怪訝な顔を見せながらも席を外した後、仲間たちは安堵の息を落として、今のうちに料理を作ろう、ナタリアの料理はひどすぎると会話します。ところが、様子を怪しんだナタリアが素早く戻って物陰で話を聞いていたものだからさあ大変。ルークの無配慮な態度が油を注ぎ、怒りに燃え上がったナタリアは、今日の夕食はこのナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディアが作ってみせますと熱く宣言したのでした。頑張ってくださいね、と応援したのは、アニスの努力でただ一人ナタリアの料理を食べたことのないイオンだけです。

 ティアとアニスに強引に教師役を頼み、さっそく調理開始するナタリアでしたが、野菜の皮をむいてと言われて、気合いを入れつつ包丁を振り回してダイナミックに切り刻み始めます。いきなり前途多難です。
 危機感を覚えたガイとジェイドは、ルークが腹をすかせて待ってるから、みんなで早く作ろうなどと適当に言いくるめて、傍らで上手に野菜を刻み始めます……が、ジェイドが行軍中は魔物を食べるだの料理は人体実験と同じだの言いだしたので、ナタリア含む仲間たちに別の危機感を与え、「だ、旦那はもういい! 俺がやる!」とガイだけがお手伝い。

 ガイの包丁さばきは見事なもの。鼻歌を歌いながらサクサクと野菜を刻んでいきます。一方、ルークは何もしないで腹が減った早くしろと文句を言うばかり。ティアは呆れたため息をつきますが、アニスはルーク様とイオン様は待っていてください、と媚を売ってニコニコ。
ちまちまやってねぇで、音機関で一気に作るとか出来ねぇのか?」というルークの適当な言葉を聞いたガイは、悪くないかもなぁ…とフワフワ妄想。アニスが、音機関の力を借りなくったって、と見事なみじん切りの腕を披露。ルークがアニスの料理は俺も認めると手放しで褒めてくれましたが、イオンに玉の輿に乗るための料理技能だと暴露されちゃいます。
 また、ティアも手伝って炒め料理を作っていましたが、野菜の切り方などガイが苦笑する程度には豪快。「う〜ん、ティアのメシは旨いけど、繊細さに欠けるんだよなー。焼いただけ―とか、煮ただけー、とかよ」と批評するルークでしたが、彼女の料理がヴァン直伝だと聞くと一変、お前の料理を俺に食わせろ、と大騒ぎするのでした。

 みんなの料理の腕を確認したナタリアは意欲を燃やし、更に力を込めてまな板をめった刺しに……もとい、野菜を力強く切っていきます。そうして、謎めいた調理過程を経て出来上がったモノは……。

ティア「な、なんだか……」
ガイ「ああ……。前に作った時よりも、強烈になっている」
アニスナニこの毒々しい色。赤いような青いようなキイロいようなみどりのようなくぐうぅ……」
ティア(ぎこちなく笑いながら)見たこともない色ね。よく分からないものも入っているし」(あんなの材料の中にあったかしら)
#鍋の中身が勝手にパシャパシャッと揺れる
ガイ「ひぇえ! お、おい。今、中で何か動かなかったか?」
ジェイド「ふむ。この臭い。古い雑巾を煮詰めたような……世界中の生ゴミという生ゴミを集めて凝縮させたような……」
ミュウ(鼻をつまみながら、半泣きで)変なにおいですのぉ〜〜」
#ルーク、パチッと手で目を押さえて
ルーク「うぅッ! 目に、目に染みるぅ!」
#笑顔でイオンが歩み寄ってくる
イオン「どんな料理なのですか? 僕にも見せてください」
ティア「あああ、イオン様は近寄らない方が」
アニス「そうです! イオン様、倒れちゃいますよ、危険、下がって、下がってくださぁあいっ」
#刺激臭で半泣きになりながら必死にイオンを押し戻すアニス

 人間の食べられるものなのか、はなはだ疑わしいその物体を、ナタリアは満面の笑顔で強引にルークの口に入れました。結果、ルークは奇声をあげて卒倒し、そのまま意識不明に。

ガイ「ああ!!」
ティア「ルーク!?」
ミュウ「ご主人様ぁあ!!」
#文字通りルークの元へ飛んでいくミュウ
ナタリア「え?」←ポカンとしてます
#ガイ、倒れたルークに駆け寄る
ガイ「おい、しっかりしろ、ルーク!」
アニス「ティア、ティア、早く助けないと!」
ティア(焦りながら)ええ。ファーストエイド! ハートレスサークル! ――ああ〜間に合わなかったわ。レイズデッド!」

 蘇生したルークは、花畑が見えたとジェイドに語りました。
 当然、ナタリアに向かって俺を殺す気かと怒りましたが、彼女の方は納得できない様子。不味いはずがない、教えられた通りに作ったと。気を取り直したルークが味見はしたのかと尋ねると、王族は毒見されたもの以外口にしないものだからしていないとか。(え? じゃあ今までの旅の中でも他の誰かを毒見役にしてたんでしょうか? 汗)
 ともあれ、ようやく不味かったことを認識したナタリアは暗く落ち込……んだと思ったら、変に燃えてしまい、これから毎日料理を作って腕を磨き、ルークに美味しいと言わせてみせる、と宣言したのでした。

 それ以来、ナタリアの まな板めった切りな日々が始まります。もはやまな板や食材を憎んでいるようにさえ見える力入りっぷりです。ナタリアに隠れてマトモなものを食べているからいいものの、これがいつまで続くのか。げんなりした仲間たちの中からティアが、いい加減、美味しいって言ってあげたら? とルークに言いますが、彼もまた無駄に意地っ張りで、つまるところ要領が悪く、不味いモンを不味いって言って何が悪いんだよ、と譲歩しません。強情な王族二人を前に、どうしたもんか…とため息をつくガイなのでした。

 ナタリアがハートマーク付きの笑顔で差し出す料理(?)を、今日も震えながら食べさせられ、奇声をあげて卒倒するルーク。仲間たちはため息。失敗続きに落ち込んだナタリアに言葉をかけたのは、イオンでした。

イオン「ルークを見返そうと思うから、上手くいかないのではないですか?」
ナタリア「え……」
イオン「料理で一番大切なものは、愛情ではないでしょうか。愛情を込めて、愛する者のために。そう思って作れば、美味しい料理が出来るかもしれませんよ」
ナタリア「愛情を込めて、愛する者のために……」
ナタリア(愛する者……)
#荒い息を吐きながら起き上がっているルークに、ナタリアは視線を送る
ミュウ「ご主人様、今度は気絶しなかったですの」
ガイ「ナタリアの料理に慣れてきたのかもな」
ルーク「うるせぇ! 誰がこんなもんに慣れるか!」
#じーーっとルークを見つめているナタリア
ルーク「…ん? なんだよナタリア。俺の顔に何か付いてるのか?」
ナタリア「………」
#ナタリア、ポワポワポワ〜ンと妄想する。普段よりキラキラ五割増し(?)なルーク登場
ルーク『ナタリア……』
ナタリア『ルーク。どうしたのですか? なんだかいつもと様子が違いますが』
ルーク『喜んでくれナタリア。思い出したんだ! 記憶を、記憶を取り戻したんだ!』
ナタリア『ええっ…! そんな。本当ですか!?』
ルーク『ああ。お前の愛のこもった料理を食べて、全てを思い出せた。お前のおかげだナタリア!』
ナタリア『わたくしの……わたくしの料理で……!』
ルーク『ああ。ナタリア。お前の愛の力だ』
ナタリア『ああっ……』
ルーク『今まで心配をかけてすまなかった。もう大丈夫だ。もうお前に、悲しい思いをさせたりはしない。ずっと一緒だ。これからは、ずっと俺の傍にいてくれ。ナタリア!』
ナタリア『ルーク…!』
ルーク『ナタリアぁ〜♥
ナタリア『ルークぅ〜〜♥』
#ポワポワポワワ〜ンと妄想終わり
ナタリア「はぁ……♥ ルーク……♥」
ルーク(不機嫌に鼻を鳴らして)なんだよさっきから。人の顔じっと見て」←現実

 愛を込めれば、奇跡だって起こせるかもしれない。そう思ったナタリアは、再び調理器具に向かいます。
 ところが今度は、いやに野菜を切る手際がいい。調理が進むといい匂いもしてきて……。出来上がった料理はかぐわしく美しいものでした。素晴らしく美味しそうです。宜しければ召し上がってみてくださいと勧められたルークは、おずおずとそれを口に運び……。
 愛の力は、本当に奇跡を起こすのか!?

 こういうのは言ってはいけない感想なのかもしれないのですが、このドラマを聴いた時、真っ先に思い出したのは、株式会社マッグガーデンの『アビス』アンソロジーVol.2に収録されていた二次創作漫画、『王女の食卓』(著:佐藤夕子)でした。細かい差異はあれど、終盤に至るまでの展開は大体同じです。

 で。そちらの漫画をグッドエンドとするならば、こちらのドラマはバッドエンドな結末でした(大笑)。

 アニメ版ドラマCD3に、ナタリアの料理は最近は随分美味しくなってきたとみんなが褒めるエピソードがあるんですが、数ヶ月の作中時間の差があるとはいえ、今回の話とのギャップが凄いですね。ナタリアはこの後も努力し続けたんだなぁ。

 

 今回の話には、特に引っかかった部分は無かったです。楽しくスラッと聴いておしまい。面白かった。最後のミュウの台詞、「ご主人様、死んじゃいやですの。ご主人様ぁ〜!」がやけに耳に残りました(笑)。

 それにしても、原作だとナタリアの失敗料理はまだしも現実的な感じなのに(外は黒焦げで中は生焼けの魚、焦げて黒くなってしまったトマト)、二次創作の中では《漫画的お約束》が適用されて、得体の知れないものが入ってたり中に怪生物が生まれてたり、もはや食べ物じゃないですね(笑)。

 

 フリートークコーナー。

 今回は1分ほどしか時間がなく、やや早口でキャストの皆さんが料理にまつわる一言トークをして、おしまいでした。ドラマの方がやや長いからなんでしょうか?


 



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