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TVA『テイルズ オブ ジ アビス』DVD/BD初回特典ドラマCD
特殊音譜盤スペシャルフォンディスク 7〜9

バンダイビジュアル

 TVアニメ版DVD/BDの、初回特典ドラマCDのVol.7から最終巻まで。

 

特殊音譜盤スペシャルフォンディスク
〜ガルディオス伯爵の華麗なる日常〜

 TVアニメ第18話「アブソーブゲート」、19話「最期の預言スコア」、20話「森の墓標」が収録された、DVD/BD Vol.7の初回特典ドラマCD。

 発売前に出ていた予告では、タイトルが「ガイラルディア伯爵の華麗なる日常」でした。

 この巻より一年強前に出たゲーム『テイルズ オブ ファンダム Vol.2』収録の「マルクト帝国騒動記」にて、ガイが全く親しくないマルクト貴族に「ガイラルディア伯爵」とファーストネーム+肩書きで呼ばれていて、不思議に思ったことがあります。間違いじゃないんだけど、あまり普通の感じがしない。

 そしてこの巻より二ヶ月ほど前に出た書籍『テイルズ オブ ジ アビス 公式シナリオブック』収録の小説では、ガイの父…ジグムント・バザン・ガルディオス伯爵のことすら「ガイラルディア伯爵」と表記されており、公式はよっぽどその呼び方が好きなんだなァと思うようになりました。

 実はホドの領主はガルディオス家ではなくガイラルディア家だったのでしょうか。原作ゲームのサブイベント《シグムント兵法家》の時点で、ガイ自身が「ガイラルディア家」って言ってたりしますし。んじゃ、ガイの本名は正しくは「ガイラルディア・ガラン・ガイラルディア」?

 などなど思っていたところ、おお、実際に発売されたものを見たら、ちゃんと「ガルディオス伯爵の華麗なる日常」になってるではないですか。単に予告の誤植だったのか。それとも急遽修正したのか? なんにしても、(ちょっぴり拍子抜けしつつ)安心しました。

 

 外殻全降下後から再結集までの空白の一ヶ月間、ガイがどう過ごしていたかを語る《あったかもしれない話》です。

 外殻は全て降下し、ヴァンは地核に消え。世界が平和になった今、ファブレ邸からガイが旅立とうとしていました。この期に及んで引き止めてくるルークを、これが一番いいんだと諭します。永遠に会えなくなるわけじゃない。いつかまた、きっと会えると。寂しそうにしていたルークも、最後には笑顔で送り出してくれました。

 ガルディオス伯爵としてマルクト帝国に帰参。領地を持たない貴族である彼に、皇帝が直々に与えた仕事は、彼の側付き……でしたが、実態はペットのブウサギの世話係でした。呆気にとられるガイ。
 しかし、実はこの仕事には重要な意味が隠されていたのです。

 ブウサギの世話係のガイは、ブウサギたちを散歩紐でつないで、宮殿内を闊歩します。出会ったメイドに、俺も使用人みたいなものだからと気安く話しかけ、こっそり息抜きしたいから、皇帝にも気づかれずに過ごせるような誰も来ない穴場があったら教えてくれないか、と問いかけます。身元確かな貴族なのに優しくて腰の低いガイにすっかり気を許したメイドは、すぐに、心当たりを教えてくれました。

 広大なグランコクマ庭園の片隅にある、人々に忘れ去られた場所。そこでは昼日中ひるひなかから、マルクトの公爵(侯爵?)が、仲間の貴族と何やら密談を交わしていました。そこに、ブウサギたちを連れたガイが現れます。
 怪しげな空気に気付いた様子もなく、ニコニコ呑気なことを言って立ち去った彼に、公爵たちは聞こえよがしに侮蔑の言葉を投げかけました。「フン。長くマルクトを離れて何をしていたかと思えば、突然現れて陛下のペットの世話係ですか。名門ガルディオス家も落ちぶれたものですなあ」「ふ。全くだ。キムラスカにいたと言うし、そのような者を側仕えにするなど、陛下も何をお考えなのやら」などと。
 当然、ガイの耳にもそれは聞こえていましたが、彼は平然とした様子で、鼻を鳴らして見上げてきたブウサギに笑いかけます。「お、心配してくれてるのか。ありがとな。でも、俺は大丈夫だ。ああいうのも覚悟していたしな。言いたい奴には言わせておけばいい」。そして独りごちました。「それに……もうすぐ言えなくなるだろうしな」と。

 果たしてその夜、グランコクマを離れていたはずの皇帝の腹心・死霊使いネクロマンサージェイドが公爵邸に押し入り、彼を皇帝暗殺計画の容疑で拘束したのでした。

 そう。この逮捕劇は、ガイの暗躍によるもの。
 腰が低いばかりの愚かなブウサギ世話係は、仕事の一面に過ぎない。ガイに与えられた真の任務は、宮殿内の情報を集め、皇帝に報告することだったのです。
 公爵の挙動は、以前から怪しまれていました。けれど決定的な証拠がなかったため泳がせていた。そこでピオ二―とジェイドは、立ち回りの上手いガイを利用したのでした。

 上々のガイの仕事ぶりにピオ二―皇帝もご満悦。すっかり彼が気に入ったようで、今後、城下にお忍びに出る際にはガイラルディアを護衛に連れて行くと言いだし、ジェイドも、信用出来て腕もたつガイには、元々皇帝の身辺警護の任に就いてもらうつもりだった、とベタ褒めです。

 さて、ガイは皇帝の部屋にいるブウサギが増えていることに気付きました。いつの間にやら、ブウサギの個体識別までできるようになっていたのです。この男、デキすぎです。
 皇帝は、新入りのブウサギを紹介しました。少し赤毛のあるそれの名は、《ルーク》だと。

 ブウサギルークを含むブウサギたちを連れて、今日も散歩するガルディオス伯爵。呼びにくいから、陛下に倣って《可愛い方のルーク》と呼ぼうかな、なんて思案して、ルークは元気でいるだろうかと思いを馳せます。そうだ手紙を書いてみよう、どんなことがあったか、どうしているかを知らせよう。あいつから返事が返ってくればいいんだが。しまった、そういえば手紙の書き方を教えてなかったな、などと独りごちながら。

(元気でいるか、ルーク。俺はそれなりにやってるぜ。またいつか、お前に会える日を楽しみにしている。
 きっと、また会おう!)

 晴れた空を見上げ、彼の気持ちはもう、遠いキムラスカのルークに送る手紙の書き出しに向かっているのでした。おしまい。

 私はガイが好きです。そしてルークとガイのコンビも大好きです。ですから、この特典は予告タイトルを見た段階から楽しみにしていましたし、聴いてみて、出だしと終わりがルークとの関わりでまとめられていたのも、とても嬉しかった。大好きです脚本家さん!

 けど、一方で、これちょっとガイを持ち上げ過ぎではなかろーか、とも思いました。(^_^;)

 マルクトに帰って一ヶ月も経たないうちに国家転覆規模の陰謀を華麗に阻止。悪口言った連中はガイの一声で即日失脚。皇帝とその腹心にはむちゃくちゃ信用されている。特にジェイド褒めすぎ(笑)。皮肉も最後に入れてたとはいえ、あなたにそこまで正面からベタ褒めされると怖いよぅ。「マルクト帝国騒動記」にあったような、彼らに理不尽に振り回されてハゲそうなトホホ描写はないですし。

 確かにガイは大抵のことはできて人格的にも練れている、希有な人材ですけど、まだ21歳の若者でもあるわけで。少し過大評価かなあ、こんな《何でも出来ちゃうオレ》的ストーリーに浸るとキケンではなかろーかと、落ち着かない気分にもなったのでした(笑)。ヒネクレモノです。

 

 それはそうと、この話って結局、「マルクト帝国騒動記」を下敷きにしているのでしょうか? そちらも、空白の一ヶ月間にマルクトで起こった、貴族による皇帝暗殺計画を阻止する話でしたが。ストーリーそのものは全然違うんですけど、まず不穏な噂があって調査開始、実際に阻止・拘束するのはジェイド、という大まかな要素は同じですよね。

 もし違う話ならば、たった一ヶ月の間にマルクトでは同じような皇帝暗殺計画が二つも持ちあがったとみなすことが可能になります。マルクト帝国って、キムラスカに比べると平和志向で革新的で和気あいあいと楽しい国みたいな扱いされがちですけども、実は中枢は相当に荒れてるってことでしょうか。思えば、セントビナー救出に兵を割くことすら議会の反対でろくにできなかったんでしたっけ。ピオ二―の味方は少ない? ブウサギと遊んだり城下にお忍びに行ったりしている場合じゃなさそうですよ。

 逆に、好戦的で保守がちで規律厳しい国のように扱われるキムラスカには、今のところ、国王暗殺計画のエピソードなんて全く出てきてないです。…偽王女事件が近いと言えばそうですが。マルクトには皇帝の座を巡ってピオ二―の兄姉たちが骨肉で殺し合い全滅したという過去すらありますが、キムラスカの方はそういう話も聞こえてこない。預言スコアをきっちり守ってたのだろーか?

 

 そうそう。「マルクト帝国騒動記」では、物語の最後に、「ピオ二―の退位が預言にないのに謀反を目論んだ貴族は、預言にとらわれず動いた見どころのある奴」なんてフォローが入れられてましたけども、このドラマにはそれがなかったですね。マルクト公爵は、預言を無視して皇帝暗殺しようとした革新派、でいいのでしょうか。謀反を起こそうとした理由は革新的なピオ二―に反発したから、ってことになってましたけど。

 結局、人間は自分に都合のいいように物事を見ると言うことなんだろうなぁと思います。イオンが主張するまでもなく、預言は人間の生活の道具に過ぎない。都合がよければ利用し、悪ければ無視する。それだけのことで、良いことも悪いことも我慢して全て飲みくだそうとしたモースやキムラスカとは、マルクトの人たちは根本的に違うんでしょうね。

 

 ともあれ、マルクトは意外にまとまっていない国で、キムラスカは国王と重臣たちが一枚岩でまとまってる、という印象を、今回のドラマと「マルクト帝国騒動記」を併せて考えてから、抱くようになりました。

 キムラスカも、今後アッシュとナタリアの代になったら、革新的になるんでしょうから、色々荒れるんでしょうか?



 以下、面白かった&気になった点。


◆旅立ち

ガイ「じゃあな、ルーク。元気で」
ルーク「ガイ! ……どうしても行っちまうのか? このまま屋敷で暮らせば……」
ガイ「ルーク……。それは出来ないって言っただろ。俺の正体もバレちまったんだ。今までどおりってわけにはいかないさ。旦那様だって、自分を狙っていた敵の息子が側にいたんじゃ、落ち着かないだろう」
ルーク「でも、ガイはもう復讐するつもりはないって」
ガイ「ああ。だけど、これが一番いいんだ。分かってくれよ、ルーク」
ルーク「ガイ……」
ガイ(微苦笑して)ほんとのこと言うと、俺も結構、寂しいんだぜ」
ルーク「え?」
ガイ「復讐のために、この屋敷に入り込んだはずなんだけどな。何年も機会を窺っているうちに、逆に情が移っちまったっていうか。奥様や他の使用人たちに、家族みたいに気にかけてもらったり。やんちゃなお坊ちゃんの世話を任されて、そのお坊ちゃんと毎日大騒ぎして怒ったり、笑ったり。家族を亡くしたあの時から、忘れていた人間らしい感情を、いつの間にか取り戻していたんだ。ここは、俺にとっても、大切な場所になっているんだなって」
ルーク「ガイ」
ガイ「そんな顔するなよ。二度と会えなくなるわけじゃないんだし。キムラスカとマルクトの関係は、これからもっとよくなるはずだ。そうすれば、もっと頻繁に行き来が出来るようになる。お前もマルクトに遊びに来ればいい」
ルーク「うん……。そう、だな。――(強いて明るく)そういえばお前、マルクトに帰ったら伯爵家を継ぐんだろ。なんか想像つかないんだよな」
ガイ「ははっ。そう言うなよ。俺だって、今更自分が貴族として、屋敷を構えてふんぞり返ってるのなんて想像できないさ。自分で動く方が楽だし、使用人生活が性に合ってるからなぁ。あっちでも、じっとしてられないと思うけど」
ルーク「はははっ。主人あるじ自ら屋敷の掃除したり、買い出しに行ったり? 変わり者の伯爵って呼ばれるぜ」
ガイ「ははっ。あり得るな。まあ何とかなるだろう。――おおっと。そろそろ行かないと。船が出ちまう」
#荷物を持ちあげ、歩き出すガイ
ルーク「――ガイ!」
#ガイ、立ち止まって振り返る
ガイ「ん?」
ルーク「元気で……頑張れよ」
ガイ「ああ。お前もな。――また会おう!」
#扉を開け、出ていくガイ。扉の閉じる音が大きく響き渡る

 ルークが凄くストレートにガイを引き止めていたので、少し驚きました。元々ガイは使用人をするような人間じゃなかったとか、折角の躍進なんだから俺のワガママで引き留めちゃ駄目だとか、仇の家にいつまでもいてはガイも辛いだろうとかの葛藤や遠慮が、全く描かれてない。ほええ。びっくりしましたが、素直なルークも可愛いですね。

 引き止められたガイが返した「それは出来ないって言っただろ」という台詞が、ほのかに苛立ちを含む感じで、ここに至るまでに相当もめたんだろうなぁ、と思えました。このドラマのルークは、ずーっと引き止めてたんじゃないかな。何度ガイに説き伏せられても。

 それでも、最後には笑って送り出してやったんだから、ルークもオトナになろうと頑張ったんだなと思います。最後に響き渡る扉の閉まる音が、無情で、とても大きくて、兄弟のように同じ家でずっと一緒、という関係が断ち切られた寂しさが伝わってきました。

 

 で。全く個人的な感覚なのですが、どうにも納得できない点がありました。ガイが、ファブレ公爵を「旦那様」と呼んでいることです。思えば、アニメ第24話の、最終決戦前オリジナルエピソードでも、そう呼んでいましたっけ。

 原作ガイがファブレ公爵を旦那様と呼ぶのは、使用人に身をやつしていた雌伏時代のみです。正体が暴露されて以降は、「あいつ」「公爵」と呼んでいます。そりゃそうだよね、と私は思います。だってガイは、好きで使用人をやっていたんじゃないです。ほんとに、殺してやる! という憎しみを抱いて、敵地に乗り込んできていた。

 長く暮らすうち、優しいシュザンヌや気のいい同僚たち、健気なナタリアや手のかかるルークに情が移って、復讐を水に流し、ファブレ公爵をも赦した。とは言っても、「旦那様」なんてへりくだった呼び方を続ける義理なんてないですもの。立場上も、もう使用人じゃない。貴族として儀礼的な敬意を払うとしても、へりくだらなければならない立場じゃないですし。

 私は、ガイは貴族としての誇りを持ち続けていたと思っています。使用人の多忙な生活の中で、僅かな時間を利用しては、シグムント流の剣を極めマルクト帝国の知識を詰め込み、(戦争イベント見るに)貴族風の礼儀も忘れていなかった。あれだけ身につけるには、とてもハードな生活を送ったんだと思う。そこまで努力したのは、いずれはガルディオス家を再興するという想いがあったからだと。ルークと過ごすうちに、殺したくない、このまま仕え続けてもいいんじゃないか、という揺らぎも生じていたとは思いますが、ガルディオス家の嫡男であり続けることを諦めてなかったと思うのです。だからこそ、マルクトに帰った。ガルディオス伯爵として。ブウサギの散歩をするばかりでなく、貴族院に加わって政治に参加し、平和な世界を作ろうとしていました。

 ですから、このドラマのガイが、正体が明かされ使用人も辞めたのに公爵を《旦那様》と呼び、「今更自分が貴族として、屋敷を構えてふんぞり返ってるのなんて想像できない」「使用人生活が性に合ってる」と言ったのは、正直、情けないと思いました。

 いえ。実際ガイは、使用人生活に慣れちゃって、貴族としての振る舞いが落ち着かなかったり、自分で動く方が楽だと思ったりするだろうと、私も思います。けど、貴族(為政者・領民の長)である誇りと責任感は、しっかりあると思う。…あってほしかったです。

 ルークに情が移ったからって、心まで《ファブレ公爵の使用人》になり下がって、自分の誇りを捨ててほしくなかった。幾ら復讐を水に流したからって、自分の肉親を直接殺した人間を、必要もないのに「旦那様」とか呼ぶか!?

 

 ちなみに、ガイが退職後もシュザンヌを「奥様」と呼ぶのは、別に問題ないです。

 何故なら、原作でもそうだから。(^_^;) そして、使用人ではないティアも一貫して奥様と呼んでおり、つまり普通の呼びかけ・敬称だと考えられるからです。

(ヴァンとジェイドは「奥方様」と呼んでました。ガイも将来的にはそう呼ぶようになるかな?)


◆ルークと一緒に暮らしますか?

 アニメ版では、レプリカだと知られたルークが屋敷の使用人たちに敬遠されて辛い思いをしたこと、ピオ二―に「なんだ? レプリカだっていじめられたのか? ならガイラルディアと一緒にこっちで暮らすか?」と言われたエピソードがカットされていたのですが、ここに変形挿入されていました。

ジェイド「しかし意外でした。あなたが本当にこちらへ帰ってくるとは。ルークが駄々でもこねて、強引に引き止めていると思ったのですが」
ガイ「おいおい。ルークもずいぶん成長したよ。もう俺が側に付いてお世話をしなくても、一人で立派にやっていける」
ジェイド「そうでしょうか。今こそ、彼には側で支えてくれる存在が必要な気がしますが」
ピオニー「どうせなら、ルークも一緒に連れてくればよかったんじゃないか?」
ガイ「…陛下?」
ピオニー「ルークがレプリカであることは、ファブレ公爵家の者みんなが知ってるんだろ? 直接何か言われなくとも、態度の変わる者はいるだろうしなぁ。キムラスカで暮らしにくいなら、こっちに住めばいい。俺たちは大歓迎だぜ? なあ、ジェイド」
ジェイド「それはそれで、大変な気がしますが。なにしろ、気まぐれで常識外れな皇帝陛下のお相手をさせられるわけですから。私なら、お勧めはしません」
ピオニー「おい! ――(笑って)たく。ホントに口の減らない奴だな。とにかく、ルークにその気があるなら呼んでやればいい」
ガイ「はあ……」
ガイ(本気……なんだろうな。話してもルークが嫌がるような気もするが)

 原作のジェイドは、ピオニーがそう言うと即座に「陛下。笑えない冗談はやめて下さい」と否定します。その反応に至極納得していたので、ドラマのジェイドが消極的な否定しかせず、半ばは肯定する様子なのに驚きました。

 ピオ二―は天衣無縫な人なので、猫の子でももらってくるように「こっちに住め」と言えるのでしょうが、そんな簡単な話じゃないと思いますし。

 そもそも、ドラマのジェイドが「そうでしょうか。今こそ、彼には側で支えてくれる存在が必要な気がしますが」と言ったのも、驚く以前に違和感を覚えました。ジェイドってこういうことを言うキャラかな?

 つーか、色々な不安に耐え過去から踏み出して新しい場所に来たばかりの青年に、出端でばなで、来たこと自体を非難するみたいな言い方するなんて。鬼か。あ、鬼畜眼鏡だからか。

 人はそれぞれ進むべき道・目指す夢があって、どんなに仲良しでも同じ道を歩き続けられないことがある。ガイだって慣れ親しんだ場所を離れるのは辛くもあったけれど、やるべきことがあったから踏み出した。なのにジェイドってば。ガイに、彼自身の夢や人生を犠牲にしてルークの世話をし続けることを強いるつもりなんですか。

 ガイにガルディオス家の復興と言う夢がなかったのなら、そのまま一生ルークに仕えたってよかったと思う。主君を立てていくことが彼の生きる目的になったでしょう。加藤清正みたいに。パラレルストーリー・ゲームの『レディアントマイソロジー2』のガイは、そういう感じになるかなと思います。けど、本編のガイはちょっと違う。自分で過去にとらわれることをやめてお家復興の未来を目指すことを望んだんだし。

 それに、マルクトに移住しただけで状況が好転するとは思えません。ルークが両親に疎外されているとか虐待されてるならともかくも、レプリカと知れても息子として受け入れられ、王位継承権だって剥奪されてない状態なのに。亡命という扱いになるのでしょうが、下手すれば国際問題です。マルクトに来ても、周囲からレプリカとして白い目で見られるだけでなく、敵国だったキムラスカの王族、あのファブレ公爵の息子だと憎しみの目で見られる可能性があります。マルクトには、厚く守ってくれる両親はいません。まだ自身の基盤も定まっていないくちばしの黄色いガイも、ちょっと辛い立場に追い込まれることになるのは必至。いくらピオ二―とジェイドが歓迎したって、この国は一枚岩じゃないですから。クーデターが頻繁に起こってる国ですよ。

 ルークが救われるには、彼自身が問題に立ち向かうしかない。優しいガイの家に住むのは、一時的な避難にしかならない。だから、可哀想だけど、あまり意味は無いと思うのです。(遊びに来させてリフレッシュさせる、くらいならいいと思うけどね。)

 ジェイドは合理的で自立を尊ぶ考え方の人間だと思っていたので、だから原作で「笑えない冗談はやめて下さい」と強く否定したのだと納得してました。ので、ドラマのジェイドは、なんか、理解できないです。何考えてるんだろうこの人。


◆俺は大丈夫。…なのか?

 マルクト貴族たちに聞こえよがしに悪口を言われ、ブウサギに向かって「 お、心配してくれてるのか。ありがとな。でも、俺は大丈夫だ」と言ったガイ。

 ……大丈夫じゃないですよね(苦笑)。ブウサギ相手に「心配してくれてるのか」と独り言を言っちゃうくらい、ハートが傷ついていたんだなぁ。がんばれ、がんばれガイ。

 自分より小さなものに「俺は大丈夫だ」と虚勢を張ることによって自己を保とうとする。ルークの前で、頼りになる兄貴であろうと虚勢を張り続けてきたからこそかなぁ、なんて妄想をしました。


◆ルークの反応は?

 ルークと名付けられたこのブウサギのことを、ルークが知ったら何て言うだろう。「怒るか。それとも、大笑いするか」と楽しそうにプウサギルークに語りかけるガイ。

 原作ゲームには答えが出ています。怒ってました(笑)。「俺も名前を使われたぞ……」と不満そうに言ってましたので、激怒じゃないけど、静かにムッとしてたみたいですね。



 フリートークコーナー。

 今回のテーマは、華麗な日常話と好きなカレー話。

 ガイ主役のドラマと言うことで、一番手がガイ役の声優さんでした。カレーラーメンがお好きだそうです。食べたことないなぁ。美味しいのかな。ジェイド役の声優さんとピオ二―役の声優さんは、いっぱい本を読んでて賢いそうです。

 カレー話で凄く盛り上がってるトークでした。貴族B役の志村 知幸さんのトークが一番(?)聞きでがあったかも。珍しく、メイド役のうえだ星子さんがいっぱいトークしてたです。

 

特殊音譜盤スペシャルフォンディスク
〜キノコロードのその先で〜

 TVアニメ第21話「いにしえの塔」、22話「消えゆく者」、23話「悲しき決別」が収録された、DVD/BD Vol.8の初回特典ドラマCD。

 何故かこの巻だけ、特典ディスクの色が変わっています。今まで黒地に白文字だったのが灰地に黒文字に。

 原作のサブイベント《キノコロード》のドラマ化です。冒頭、ルークが屋敷に入れずグズグズするオリジナルエピソードがあるのと、原作では執事のラムダスだった説明キャラがメイドに入れ替えられているのと、キノコロードでルークが卑屈になって一緒に行かないエピソードが消失、相変わらず《アッシュに冷たいガイ》の要素が抜いてあり、アッシュとルークが共闘してドラマオリジナル魔物を倒すクライマックスが付け加えられていて、ミュウをはっちゃけた狂言回しにするアレンジが行われていますが、その他はほぼ原作通りで、全体的には目新しい印象は受けません。

 久しぶりにバチカルに立ち寄った一行。屋敷に寄って行こうとガイに誘われても、仲間たちに母親に顔を見せて安心させてやればいいと言われても、用事なんてないし、俺の顔を見て喜ぶかなあと、なんだかんだ渋るルークです。そのグズグズうじうじした態度にアニスが切れ、ガイと共に強引に屋敷に引きずって行きました。
 ところが、「ルーク様のお帰りですよー」というアニスの声に反応して駆けだしてきたメイドは、青ざめた顔で告げました。ルークの母・シュザンヌが倒れたと。

 母の容態は然程のものではありませんでしたが、心配でたまらないルークは、薬なら俺、買ってきますと申し出ます。しかし原料であるルグニカ紅テングダケが、栽培地のセントビナーが崩落した影響で入手できなくなっていると言うのです。
 するとミュウが、自然に生えている場所を知っていると言いだしました。チーグル族の知る、キノコロードと言う秘境にあるのだと。心配する母をジェイドの機転で安心させ、一行はすぐに飛晃艇でキノコロードへ向かったのでした。

 キノコロードで、一行はアッシュと遭遇しました。どうしてここにとナタリアに問われても説明しないアッシュでしたが、お前も奥様を心配してキノコを探しに来たんだろうとガイに見抜かれます。ジェイドの提案で、半ば強制的ながら仲間に加わることになりました。

 キノコロードを行きながら、ルークはアッシュに自分の気持ちを語りました。自分はレプリカだから、屋敷が自分の家だけど自分の家じゃないように思えて帰り難かったこと。けれど母上が倒れたと聞いた瞬間、走りだしていたこと。やっぱり、俺にとっても母上は母上なんだな、と……。ふん、くだらんな、と一蹴するアッシュです。

 その時、ミュウが嬉しそうに騒ぎ始めました。傍らに生えていた緑色のキノコが、とても美味しいものだと言うのです。ジェイドが、それは《ワライナキサケビネムリダケ》という毒キノコだと忠告しましたが、ミュウは聞き入れずに食べてしまい、飛び回りながら笑って泣いて叫んで、カクッと眠ってしまいました。
 この有様にアッシュは呆れ、案内役が役に立たないなら一緒にいる意味がない、と言って一人立ち去ります。

 ミュウは眠ってしまいましたが、起きている時に言っていた、ルグニカ紅テングダケはキノコロードの一番奥にあるという言葉を頼りに、一行は最奥地へ。そこで目的の光るキノコを発見したものの、見たこともないような巨大なキノコ型魔物に襲われます。魔物が発する胞子を吸い込んでしまったルークたちは麻痺を起こし、動けなくなってしまう。体当たりしようと走ってくる巨大魔物。絶体絶命!
 そこに颯爽と現れたアッシュが、魔物に《斬魔飛影斬》の強烈な一撃を与えました。「フン。お前の力はその程度か」と挑発されたルークは、「とどめは俺がさす!」と、痺れる体を押して立ち上がり、《空破絶風撃》を叩きこんで打ち倒したのでした。

 戦闘が終わると、アッシュはキノコをルークに託して立ち去ります。
 キノコをバチカルに届けると、母はルークや仲間たちをねぎらい、アッシュが手伝ってくれたと聞いて、私はこんなにいい息子を二人も持つことが出来たのね、としみじみ言って嬉しそうでした。

 そこで突然、ミュウがお腹が空いたと言いだして、キノコロードから採って来た不気味で臭いキノコを取り出しました。みなさんも食べてくださいですのと言いながら飛び迫ってくるミュウに追い回され、ルークたちは悲鳴をあげて逃げ惑ったのでした。おしまい。

 原作の《キノコロード》で私が一番好きなのは、アッシュにボケキャラ的な一面があることが分かるフェイスチャット《何かおかしい?》です。そして一番印象的だったのは、ガイがアッシュに冷たく接するので、しまいにルークが「おいガイ! こいつ、ガイのこと好きなんだから、ちょっとは優しくしてやれよ」と言ってしまうエピソードでした。また、卑屈を極めたルークが、遠慮してアッシュを仲間と共に行かせ、自分は連絡役として独りでキノコロードの入口に残っていた様子も印象的でした。

 このドラマでは、その全てが採られていません。実際「こいつ、ガイのこと好きなんだから〜」を採るのは、幾つかの理由で無理でしょうけど(^_^;)、《何かおかしい?》ネタは入れてもらえてたら嬉しかったなぁ。

 

 以下は、気になった&考えさせられた点。


◆きれいなガイと そのままのティア

 前巻に引き続き、ガイがファブレ公爵を屈託なく《旦那様》と呼んでいます。
 また、アニメ本編と同じように、アッシュに冷たく接する様子が全カットされ、むしろ明るく屈託なく接していました。アニメのガイは、つくづく心の澄みきった人です。

 これまでの特典ドラマCDで、アニメ本編ではマイルド修正されていた初期ティアが、原作通りに冷たくきつい感じに描き直されていましたので、ここで《アッシュに冷たいガイ》がカットされていたのは意外でした。
 …まあ確かに、初期ティアの方はともかく、ここでガイが今更アッシュに冷たく当たったら、原作を知らない視聴者には訳が分からないし、ガイが豹変したとしか思えないですよね(汗)。

 しかし何故か、ティアがアッシュに あまり優しくない辺りは、しっかり残されてありました。一緒に行かないぞとギャンギャン怒鳴ってたアッシュに、魔物が寄ってきたらどうするのとピシャリと言って黙らせ、「急ぐわよ」とさっさと歩きだすやつ。友好的に「一緒に行きましょう」と説得したりはしないのです。
 ティアはまた、ルグニカ紅テングダケを見つけた時のルーク/アッシュとのパラレル会話でも、ルーク版では優しく「気にしないで」と言うのに、アッシュ版では「それだけよ」と取り付く島のない言い方したりするんですが、それもドラマにしっかり残されてありました。

 原作だと、アッシュが同行するなら自分は必要ないから残って連絡役をするとルークが言い出すこともあって、ティアとガイはちょっと不機嫌になってる感じがします。だからここでのアッシュへの態度が厳しめなのかなと思っています。
 このドラマにはルークが残るエピソードがない。にも拘らず、ティアの態度のキツさだけは残ってる。……輪をかけるように、声優さんの演技が、かなり冷淡に感じられました。どういう解釈でここを演じられたのかなぁ。それが一番気になりました。


◆ラムちゃんの不在

 原作では、ファブレ家の執事・ラムダスだった説明キャラが、メイドに変わっています。
 考えてみたら、そもそもアニメ版にはラムダスが存在していなかったのでした。


◆「ママさん」禁止?

 原作のミュウは、ルークの両親をパパさん、ママさんと呼びます。この《キノコロード》イベントでも、シュザンヌを「ご主人様のママさん」と呼んでいました。
 が、ドラマではその台詞をあえて修正して、「ご主人様のお母さん」に変えています。
 何でなんでしょ? 


◆親子の会話

 ルークは両親に対しては基本、丁寧語で喋るんですが、原作ではかなり崩れた、普通の親子間っぽい言葉も織り交ぜています。アニメ版はそれを、もう少し厳密な丁寧語に修正していたものでした。このドラマでも、ルークの母に対する言葉使いの幾つかが修正されています。

「足りなくなったなら、俺買ってくるよ」→「薬なら俺、買ってきます」
「そんなの気にしてられるかよ」→「そんなこと、気にしている場合じゃありません」
「ごめん、母上」→「ごめんなさい、母上」


◆はっちゃけミュウ

 今回のドラマではミュウが狂言回し役になっています。ルークとガイが「あいつ……、なんであんなにゴキゲンなんだ?」「きっとリーダーになった気分なんじゃないか?」とひそひそ話してましたが、なにやらハイテンションで、少し言動が変(苦笑)。

 ゲーム版アンソロドラマCD2の「キノコ狩りに行こう」では、ガイ、ナタリア、アニスがキノコ中毒でおかしくなってましたけど、ここではミュウにお鉢が回って来たようで。

#仲間たちを得意げに先導して飛んでいたミュウ、急に止まって
ミュウ「みゅみゅっ!? みなさん!」
ルーク「!? なんだよ」
ミュウ「この緑のは、と〜ってもおいしいキノコですの。ボクのおススメですの」
アニス「うぇ〜!? なにその毒々しい色。気持ち悪〜い」
ミュウ(少しムキになって)本当においしいんですの。ミュウ、食べるですの」
#はむはむ、はむはむはむ、と食べるミュウ。←ほんとに「はむはむ」言ってて、むっちゃ可愛いです
アニス「うわ。ホントに食べちゃった。大丈夫なの?」
ミュウ「美味しいですの」
ジェイド「……む?」
ナタリア「どうかされましたの? 大佐」
ジェイド「そのキノコ。それは食用のキノコではありませんよ、ミュウ。毒キノコです」
ティア「ええ!?」
ミュウ「そんなことないですの。おいしいおいしいキノコですの」
ジェイド「いいえ。間違いなく毒キノコ、その名も《ワライナキサケビネムリダケ》です」
ガイ「ワライナキサケビネムリダケ?」
ナタリア「本当に、間違いありませんの?」
ジェイド「ええ。昔ディストに食べさせたことがありますから」
ティア「た、大佐?(汗タラ)
ミュウ「でもでも、全然平気ですの。(更にはむはむはむと食べる)……みゅ。みゅふ。みゅふふ。みゅふふふふ」
#体内で何かが起こったようで、ミュウ、ビクッとなる
ミュウ「みゅ!」
ルーク「おい、どうしたんだ?」
ミュウ(すっ飛ぶ)みゅ〜〜! みゅふふふふ、わ、笑いが、ふ、みゅふふふふ、止まらないですのぉ〜〜! みゅふふ、みゅふふふふ」
ジェイド「これが、《ワライナキサケビネムリダケ》の中毒症状です。その名の通り、笑って泣いて叫んで眠ってしまうのです」
#けたたましく笑い続けているミュウ
アニス「大した毒じゃなさそうだけど、なんだか疲れそう……」
ガイ「ああ。絶対食べたくないな」←すごい本気が感じられるイントネーションでした(笑)
ミュウ「そんなぁ。みゅふ、みゅふみゅふみゅふ。う、う、うぇえええん。みゅ、うぇええん。――みゅーーーっ!!! みゅー、(カクッとなって眠る)Zzzzz……」
アニス「うわ。ほんとに寝ちゃったよ」

 なんじゃこりゃ(笑)。

 聴いてて、そう素で突っ込んじゃいましたし、すごく笑ったんですけど、ミュウらしくないエピソードではあるなぁと思いました。キノコ好きのチーグル族のくせにキノコの目利きがダメなところはともかく、ジェイドに間違い指摘されてもムキになって言い募り、反抗してキノコを食べ続けたあたりが。

 ラストでもミュウがキノコ絡みの暴走をして、それがオチになっています。

ミュウ「みゅー。ホッとしたら、なんだかお腹がすいてきたですの。(キノコを取り出す)これを食べるですの」
ルーク(ザッと身を引いて)ぬあ! (薄気味悪そうに)お前、そんなものを持ってきたのか?」
アニス「う゛〜スゴイ色。(鼻つまんで)なんか臭いし〜」
ミュウ「みなさん、一緒に食べるですの。(差し出す)どうぞですの」
ティア「い、い、いらないわ」
ジェイド(サラッと)私もいらない」
ルーク「そんなもん食えるか!」
ミュウ「どうぞですの。食べてですの〜!」
#ミュウ、キノコを持って飛んでくる
ルーク「うわぁあああ! 来るな、こら! わああ」
アニス「うわぁああ! 私だって食べないよぉ」
ミュウ「食べてですの〜〜!!」
#悲鳴をあげて逃げ惑うルーク一行
ミュウ「好き嫌いは、駄目ですの〜!」
#おしまい。

 シュザンヌがお礼を言って終わる、原作ママのオチだと弱いと言うことなんでしょうが、良い子のミュウが、ゲテモノ食いの性癖のうえ、嫌がってる他者に無理やり物を食べさせようと追い回す、ヤバい奴になっちゃいましたよ。

 これらのエピソードが、例えば、ルークのキノコ嫌いを治そうとみんなで奮闘するとか、サバイバルで食用キノコを探すみたいなギャグ話に織り込まれていたのなら全然平気・むしろ大笑いなんですけど、本編沿いのシリアスストーリーの中に挟まれているので、唐突感・違和感の方を強く感じてしまいました。味噌汁にクッキーが入ってるみたいだよ。

 オチは、無理にギャグにしなくてもシリアスでもよかったんじゃないかなぁ、なんて思いました。例えば、アッシュが遠くから母を想っている様子とか。メイド役と兼役にすればノワールが一言二言喋るのも不可能ではなかったかもしれないですし。そこから、いよいよ最終決戦が近いぞ、みたいな本編の流れに繋げたり。
 なんて。全く、個人の嗜好の問題に過ぎないですね。(^ ^;)


◆自己解決してるルーク

 原作ルークは、レプリカに居場所はあるのか、消えるべきじゃないのかと悩んでいます。ですから、キノコロードでアッシュが同行することになると、同じ戦い方の奴は二人も要らないだろ、と卑屈なことを言って、ティアに引き止められても頑なに探索メンバーから抜けてしまいます。キノコを母に渡した時も、自分の手柄よりアッシュの手柄の方を大きく伝えようとしている。
 この問題はこのイベント内では解決されず、本編のレムの塔以降のエピソードを待たねばなりません。

 このドラマでも、自分の家に帰るのを渋ってグズグズしてましたから、その要素が消されているわけではない。しかし、平気でアッシュと同行して、しかもペラペラと、家に帰り辛かったけど母上は俺にとっても母上だと分かった、と喋る。特に屈託がないみたい。
 ……えーと。なんか、自己解決してる??

 アニメ版のルークには、帰宅(両親との対面)をいつまでも嫌がり続けていた印象があります。レムの塔以前〜直後の時期なら納得ですが、実は第24話、最終決戦直前にも、帰宅を渋るルークをガイが強引に連れて行って親に会わせる、という、今回のドラマ冒頭と似たオリジナルエピソードが入れてあるからです。

 アニメのルークは、最後の最後まで、自分の家を自分の居場所だと思えずに、ビクビクと遠慮したままだったのか?
 その割に、今回のドラマでは母上はやっぱり母上だと、穏やかにアッシュに向かって語っていて、オリジナルに対する劣等感も罪悪感も遠慮も感じられない。レプリカとしてのコンプレックスが見えない。既に乗り越えて爽やかに洗い流されているように見える。……けど、一方では家に帰ることすら怖がってて、アニメ本編と併せて考えれば、この後もそのままの状態だった訳で。よく分からない感じです。

 アレですよね。アニメ版にはファブレ子爵のエピソードがなかったから? アレがあると、両親が本物にもレプリカにも同等に愛情を注いでるのがはっきり分かって、親子関係がしっかりした印象になりますし。


◆男の戦い

 ルークのアッシュへのわだかまりを消去して、代わりに、二人が協力して巨大魔物を倒す、というオリジナルエピソードをクライマックスに持ってきていたのは、普遍的な味わいになって面白い感じでした。

 特に良かったのが、危機を救うアッシュが甘っちょろい労りの言葉をかけず、ルークの方もありがとう、なんて言わなかったこと。「フン。お前の力はその程度か」とアッシュは挑発します。ルークの戦闘力や根性が弱くないと思ってるからですよ! そしてルークは、男のプライドを発揮して立ち上がり「とどめは俺がさす!」(だから手を出すな!)と叫んで、見事打ち倒す。庇い庇われじゃない、意地っ張りで上向きの、対等の男の戦い。(例えば、『テイルズ オブ バーサス』ダオス編のアッシュ&ルークの戦いとは対極だと思います。そっちは二人で延々庇い合い心配し合ってましたっけ。)すごく良かったです! 昨今は、二人が同時に技を放つ、助け合って戦う、みたいなタイプの共闘も定番ですけど、こういうのもいいなぁ〜と、惚れ惚れしました。ここのアッシュはまさにアビスシルバー。

 それから。アニメ本編では、ルークはとうとう、秘奥義以外の原作の技を使うことがなかったんですけど(アッシュもですっけ?)、ここで使っていました。アッシュの方は、技の前の発動ボイスも原作ママ。すごい! でもルークの方は、何故か、発動ボイスは秘奥義レイディアント・ハウルのもので、使った技は通常奥義の《空破絶風撃》でした。軽く謎。《空破絶風撃》には発動ボイスがないからかもしれませんが、だったら《魔王地顎陣》とか《絶破烈氷撃》なんかは、割とカッコイイ固有発動ボイスがあるんですから、そっちでもよかったのにな。

 

 フリートークコーナー。

 今回のテーマは、好きなキノコ。今までのフリートークの中で一番面白くてためになった気がします。大人のシイタケの食べ方は美味しそうです。シイタケはよく網焼きするけど、汁が出るまで焼いたことないなぁ…? ハタケシメジも美味しそう。でも高価だから買わない。干しシイタケは一週間水に浸けていてはいけないと学びました(笑)。一週間忘れることの方が難しそうではあるんですけど。

 メイド役のうえだ星子さんのトークが沢山で、シュールでした(笑)。想像力豊かな子供時代。

 

特殊音譜盤スペシャルフォンディスク
〜ルーク様御一行スペシャルラジオ! 感動の!? 最終回!〜

 TVアニメ第24話「栄光の大地」、25話「存在を賭けて」、26話「新たな世界」(最終回)が収録された、DVD/BD Vol.9(最終巻)の初回特典ドラマCD。

 Vol.1の特典ドラマCD「ルーク様御一行スペシャルラジオ!」の、直接の続き。前回ネタの反復が基本で、相変わらず馬鹿馬鹿しい(褒め言葉)、カオスなメタフィクション世界がノリと勢いで紡がれています。

 最終巻なのだからルークも成長して自分が創作キャラだと自覚するようになっているのかな、と思いきや、Vol.1のまま、彼だけ無自覚の道化の役回りでした。

 Vol.1では登場しなかったガイとナタリアがいます。また、声優さんの宣言通り、ディストが登場していました。……そして、本編ではとうに亡くなっているイオンが普通にいます。あくまで楽屋世界と言うことなのでしょう。「イオン! お前、死んだはずじゃ」「今回のラジオのために音譜帯から戻ってきました♥」とかやっちゃうと、流石にマズいんでしょうし。(^_^;) イオンの台詞、多めだった気がしました。

 

『ルーク様御一行スペシャルラジオ』感動の最終回の放送が開始。……二回目だけど。
 例によって度を超えた棒読みでたどたどしく台本を読むルーク(第一回目の時よりひどくなってる気が…)に、仲間たち全員が突っ込み。「テイルズ オブ ジ アビスマン!」でも色々失敗してましたが、アニメルークは演劇系は苦手なんでしょうか。しまいにティアが「あなたが司会に向いていないことはよく分かったから」と、ルークの台本を取り上げてしまいました。台本なしで喋る方がまだマシだろう、と言うのが全員の見解です。おかげで始まりかけていた「自己紹介コーナー」は中断、終了。前回いなかったガイとナタリアが、今更どんな自己紹介するのか、ちょっと聴きたかったです。

 ルークは相変わらず「ラジオ」も「最終巻」も意味が分からず、何のことなんだと苛立ちます。すると前巻同様、仲間たちが一斉に言うのです。

仲間たち『ルーク!!』
ルーク「な、なんだ」
ティア「第一回の時も言ったはずよ。細かいことは気にしないで」
ジェイド「そうですよ。この番組はあらゆる意味でギリギリなんですから」
ルーク「ギリギリ?」
アニス「だからぁ。綱渡り感覚なんだって」
ガイ「うーん。崖っぷちを歩いてるようなものだ。一歩間違えると、色んなところから怒られるからな」
イオン「そうなったら、番組は中止です」
ナタリア「あなたも少し、大人にならなくてはいけませんわ」←なんかすみません
ルーク「はあ!? やっぱり意味が分からない」
イオン「ルーク。意味が分からなくても、ここまで来たらやるしかないのです」
ルーク「ここまで来たらって、どこまでも来てない!」
イオン「聞くところによると、第一回の、スペシャルラジオはとても好評だったそうですよ。僕たちの番組を心待ちにしてくださっている皆さんがいるのです」←そんなに好評だったのか…

 ティアは、今回は《感動の》最終回なのだから失敗するわけにはいかない、必ず感動するように番組が構成されている、と自信を込めて言いました。なんと、そのために23時間50分ほど前から最終回記念の24時間マラソンをしていると言うのです。小動物のミュウが。ソーサラーリング抱えて。たった一匹で。
 やめさせてやれよ。
 バラエティ番組で消費される若手芸人みたいな扱いになってます。
 なんで走ると感動するんだよ、といぶかるルークでしたが、ガイもイオンもアニスも、間違いなく感動すると今から目を潤ませ、ミュウがゴールしたら、感動で泣いてしまうだろうと熱く語るのです。次のコーナーになったら全員ケロッとしてましたが。ジェイドは徹頭徹尾ケロッとしてましたが。

 マラソン中継は一時中断し、お馴染み(と言っても二回目)の「電話お悩み相談コーナー」に。いつの間にやら司会はティアになっている? 例によってボイスチェンジャーを通し、ティアの指示でルークが電話を取る。

ルーク「はい。こちら、電話相談です」
???ハーッハッハッハッハッハッハッハッ』 
ルーク「はぁ? (仲間たちに苦笑を見せて)この笑い方……どこかで聞いたような気がしないか?」
ジェイド(白々しく)さぁ〜〜あ。まっっ……ったく覚えがないですね」
イオン「あは、はははは(苦笑)。まあ、折角ですから。悩みを聞いてあげませんか?」
アニス(白々しく)そーですねぇ〜〜。哀れですもんねぇ。――で、どんな悩みがあるの?」
???宜シイデショウ。私ハ、らじおねーむ《おーるどらんとノ薔薇ノ貴公子》。私ノ悩ミヲ相談シテ、最終回ニ華ヲ添エテ差シ上ゲマショウ。
 私ハ、前ノ放送以来、ズット、ズット、ズット ズゥット ズーーーット、電話ヲ掛ケ続ケテイタノデス。ソレデ、ヨウヤク繋ガッタノデスカラ、アナタガタモ、心シテ答エルノデスヨ

ジェイド「どうせ、友達が出来ないという悩みなのでしょう? 鼻垂れディスト」
???――ナッ!? 本名ヲ明カシテシマウトハ。私ノぷらいばしーハ ドウナルンデス。ソレニ、マダ何モ言ッテナイジャナイデスカ!←《鼻垂れディスト》も本名じゃないんだけど…
ジェイド「もうボイスチェンジャーは必要ありませんね。――(甲高い声で)ポチッとー!」
#ジェイド、ボイスチェンジャーを切る
ディスト『だぁっ! 声までバレちゃうじゃないですか』
ジェイド「はいはい。早く悩みを言ってください」
ディスト『〜〜っ。ジェイド。あなた、番組のリスナーであり、かつての親友である人間に、その口のきき方は何なんです』
ジェイド「かつての親友? そんな悪趣味なものになった覚えはありませんよ」
ディスト『だぁ〜! ひどい! ひど過ぎるじゃないですかぁ!』
ガイ(朗らかに)まあまあ。折角相談してくれたんだし、聞こうじゃないか」
ティア(そっけなく)早く言って。時間がないわ」←↑ガイとティアの態度の対比がすげぇ(^ ^;)
ディスト『――っ。仕方がないですね。私の悩みを、教えて差し上げましょう』
ルーク「別に、聞きたくないけどな」
ディスト『とある鬼畜ロン毛眼鏡の、私に対する態度を改めさせたいのです。その方法を、ジェイド以外の皆さんに答えてもらいましょう』
ジェイド「ディスト。鼻水が出ていますよ」
ディスト『え。あ、ホントだ。――〜〜って、出ていません! 見てもいないのに、なんで分かったのです!』
アニス「あ〜、やっぱり鼻水出てるんだ〜♪ あははは」
ディスト『キーーッ! うるさいうるさいうるさーい! そんなことより、早く質問に答えなさい! 鬼畜ロン毛眼鏡を、私にかしずかせる方法を教えるのです!』
ジェイド「そんな方法はありません」
#ジェイド、ガシャンと電話を切る

ルーク「はい、こちら電話悩み相談」
???モシモシ
ルーク「もしもし?」
???コノ電話相談、ドンナ悩ミデモ聞クトイウノハ本当カ
ルーク「あ、はい。一応そういうことになってますけど」
???ナラ、コノ俺ノ悩ミヲ聞イテモラオウ
アニス「誰だろうこの人……」
ガイ「この話し方、どこかで聞いたような……」
???コノ最終巻マデ ズット ヤッテキタガ、俺ハるーく、オ前ト掛ケ合ッテ喋ル時、ドンナニ苦労シテイルト思ッテイル!←この台詞聞くまで私、本気で誰なのか分かりませんでした(苦笑)
ルーク「え? どういうことだ?」
???俺トオ前ハ別々ニ存在シテイル。ソレナノニマルデ、一人ガ喋ッテイルカノヨウニ、掛ケ合イデ喋ルノガ大変ナンダ。一人二役カノヨウニナ
ティア「ちょっと待って。その相談ギリギリ過ぎるわ、アッシュ」
???――ナッ!? 俺ノ名前ヲ呼ブナ!
イオン「もうボイスチェンジャーは必要ありませんね。ポチッとな」
#イオン、ボイスチェンジャーを切る
ルーク「アッシュ。俺と喋るのが大変って、どういうことだ?」
アッシュ『お前は分からないのか』
ルーク「えっ? ああ……」
アッシュ『例えば、お前が技を出そうとした時に、ギリギリで俺が弾き返す時なんて、特に大変だろうが』
ルーク「? どういうことだ」
アッシュ『やってみれば分かる。お前が《空破絶風撃》を出して、俺がギリギリで、《飛燕瞬連斬》を出す。それを声だけでやってみるんだ』←前巻ドラマでもルークに《空破絶風撃》使わせてましたけど、そんなにメジャーな技でもないので、脚本家さんが好きなんかな?
ルーク「あ、ああ。別にいいけど。――じゃ、行くぜ!」

ルーク/アッシュ「空破絶風ゲっヒエンシュンレンザン!』

アッシュ『……ふう。どうだ。分かっただろう』
ルーク「あ、ああ。なんとなく分かった」
アニス「やっばいよぉ〜! ギリギリ過ぎるよぉ〜!」←と言いつつなんか楽しそうですよ(苦笑)
ティア「その悩みを解決する方法なんてないわ。ごめんなさい、アッシュ!」←方法あるよね(笑)。別録り。
#ティア、電話を急いで切る。

 折角アッシュが出ていたのにナタリアが一言も喋らなかったですがどうしたのでしょうか。(^_^;) これまでの巻ではウザいくらい熱愛だったのになぁ。

 ともあれ、番組もいよいよ終盤ということで、再びマラソン中のミュウの中継に。ところがミュウは森の中で道に迷っていて、しかも道端にキノコを見つけて、マラソンを中断してはむはむと食べ始めてしまいました。

ガイ「おいおい。なんか走るのやめてるみたいだぞ?」
イオン「想定外の展開ですね」
アニス「ミュ〜ウ〜、走らないと駄目だよー!」
ミュウ『はみゅはみゅはみゅ……。はいですの。このキノコを食べ終わったら、すぐ走るですの。はみゅはみゅはみゅ……』
アニス「もお〜! ……はあ。もうしばらく待ってないと駄目みたいだね」
#唐突に、ビクッ、となるミュウ
ミュウみ゛ゅ! みゅみゅ!?』
ジェイド「どうしたんですか、ミュウ」
ミュウ『なんだか、変な気分ですの。このキノコ、変ですの」 
ジェイド「どんなキノコなのですか?」
ミュウ『紫に、黄色い点々があるキノコですの』
ルーク「見るからに、毒キノコじゃないか?」
ジェイド「ミュウ。それは《オコリウタイハヤクチネムリダケ》です」
ミュウ『みゅ!?』
ジェイド「それを食べると、その名の通り、怒って歌って早口言葉を披露したうえで、眠ってしまうのです」
ミュウ『みゅう! (ビクッ、となって唐突に怒り始める)みゅう〜〜っ、みゅうみゅうみゅうみゅーーっ(怒)! (穏やかに歌いだす)みゅ〜みゅ〜みゅ〜みゅ〜みゅ〜♪♪ (早口に)赤ご主人様青ご主人様黄ご主人様! (フワ〜っと意識遠のいて)……ふみゅう〜〜……。(カクッと眠る)Zzzzz……』
アニス「ちょっとミュウう! 寝ちゃ駄目だよぉ!」
イオン「ミュウ? 起きてください!」
ルーク「……なあ、ティア」
ティア「なに?」
ルーク「これって……、台無し、なんじゃないか?」
ティア(苦笑して)そうとも言うわね……」

 もはや、ミュウの到着を待つ時間は無い。締まらない終わり方に納得できないルーク一人を残して、仲間たちの別れの挨拶を最後に、番組は朗らかに終了したのでありました。おしまい。

 

 前巻に引き続き、っていうか、前巻からの反復ネタとして、ミュウのキノコ中毒が描かれてます。

 特典2ではキノコを採りに行くと健気に言い、特典4ではキノコの匂いがすると壁板を叩いて皆を脅かし。そして、特典8と9で、変なキノコを自らむさぼり食っては妙な中毒を起こすヤバキャラに。アニメ脚本家さんの中で、ミュウはネタキャラに進化してしまったようですね。(^_^;) 今巻が最終回でよかったです。

 って言うか、ミュウ役の声優さんに中毒演技をさせるのにハマってるんじゃなかろーかと、チラッと思ってしまいました(笑)。前巻も今巻も、演技が可愛くて大変そうでした(笑)。

 反対に、単独発売ドラマCDの方にはよく入れていた、ティアの「かわいい…♥」は、特典ドラマには全然なかった……ような…? ありましたっけ? どうでもいいことですけども。杞憂ですが、「キノコで中毒になってるミュウも可愛いわ♥」みたいにならなかったのはよかったです。(^ ^;) 流石に。

 

 フリートークコーナー。

 最終回のテーマは、《感動した出来事》。ルーク役とディスト役の声優さんが、チワワのトイレのしつけ談義で大盛り上がりでした(笑)。それぞれのお話が面白かったです。

 司会のルーク役の声優さんが、最終回ということで割とテンション高く盛り上げようとしていて、ラスト間際にティア役の声優さんに「ルーク落ち着いて」と言われていたのが、妙に耳に残ったり。

 

 この二ヶ月後にファンディスクの発売が控えていたわけですが、そのことはドラマの中でもフリートークでも、全く言及されなかったです。あれれ?

 雑誌『テイルズ オブ マガジン』(角川書店)には、毎号、この特典ドラマCDの声優ミニインタビューが掲載されていたものでしたが、この最終巻、ティア役の声優さんのコメントが興味深かったです。(Vol.14)

「シリアスなストーリーが『アビス』の幹だからこそ、ドラマCDという枝葉が伸ばせるということがみんなわかっているんですよね。たとえばキノコロードの話とか、ティアの洋館での怪談話とか……。ゲーム本編でのスキットよりも、いい意味で逸脱できて、演じていても楽しかったです。」

 ティア役の声優さんは、アニメ版が始まったばかりの頃の雑誌インタビューでも、かなり真剣にティアのキャラクター像や、原作とゲーム版本編ドラマCDとTVアニメ版がパラレルであることを考察・認識して語っていて、作品やキャラに深く踏み込もうとする、真面目で思慮深い人なんだなぁという印象を受けていました。シリアスが『アビス』の幹で、ギャグ系のドラマCDは幹がしっかりしているからこその枝葉。うん。そうですよね。なんかスッキリした。



 というところで、特典ドラマCDの感想は終わりです。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

 

 



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