注意!

 

テイルズ オブ ジ アビス2

メディアワークス/DENGEKI COMICS/玲衣

 メディアワークスの雑誌『電撃マ王』連載のコミカライズ第二巻。
 表紙のティアの顔が男前だと思いました。
 2006年6月号、同年8月号〜12月号分まで収録。(7月号は外伝1が付録に付いて本編連載は休載。) 内容は、ルークが人殺しの決意をして、アクゼリュス目指して親善大使として出発し、ザオ遺跡でアッシュと対面するまで。

 内容の感想は各号連載分で書いているので省きます。……あ。6月号分は書いてなかったですね。それだけ触れておきましょー。

 タルタロスから脱出し、一挙に舞台は飛んで国境の街カイツール。そこでアニスと再会しますが、イオンは衰弱して寝込み、ティアは(タルタロス脱出の際にルークを庇った怪我による貧血で)倒れてしまいます。ショックを受けたルークは言う。
「お・・・俺も戦うよ!! ――戦わせてくれ」
 ……謙虚だ。漫画版のルークは良い子だなぁ。
 貧血で青ざめ、いかにも無理をしてますという様子で「大丈夫…私がちゃんとあなたを守るわ」と言うティアを前に、「もう俺たちのうちの誰かが傷つくところは見たくねえ!! 決心したんだ!!」と叫ぶルークなのでした。
 ……おお。王道少年漫画(いや、ジュブナイル?)的展開!
 それはそうと、原作と違ってこの漫画ではアニスも同席しているのに、ここで全く喋らないし姿も描かれていません。アニスは子供ですが、軍人として既に人殺しに手を染めている…のですよね。アニスがどんな顔をしてどんなことを言うのか知りたかったかもです。
 その後、国境を越えたいけれどルークとティアには旅券がない。イオンが出て行けば通れるかもしれないが騒ぎを大きくしたくない、と皆が話していると、ルークは自信満々で検問所に行って、自分はファブレ公爵家子息のルーク・フォン・ファブレだから通せと主張。相手にしてもらえないどころか殴られそうになったとき、颯爽とヴァン師匠が出現。ルークをめろめろにしちゃうのでした(笑)。そしてアリエッタの魔物が突然ルークを誘拐、で終了。
 やはし、漫画版のルークは かなり意識的に「子供」として描かれてる感じですよね。そして、ガイが今ひとつ活躍してくれないなぁ…。(ルークの幼なじみで親友で護衛で使用人のはずなのに、殆どルークに関わらないというか。) ちなみにジェイドは頻繁に顔にベタ影が落ちてて怖い。


 巻末には、書き下ろしでティア主役の四コマ漫画が収録されています。ティアが超ツンデレです。(ギャグなのでこう言うのは無粋なんでしょうが、ちょっと性格悪いぞ、このティア。 苦笑)
 そして防寒着を着たらパーティーの皆にポア部分をもふもふ触られまくるルーク。(ルークは皆のペット?) 更に、何気にティアと同室に寝ているルーク(とミュウ)。
 エントチワワは倒したのだろーか。どうする? ア○フル。


 本の帯に寄せられているコメント。一巻目はメインシナリオライターの実弥島巧さんで、「『生きる』ってなんなのかを考えていたら この物語ができました」でしたが、今回はプロデューサーの吉積信さんで、以下の内容でした。

「自分と世界の誤差」。
それに気づいて縮めようと努力することは、美しくもなく、心地良くもないけれど、おそらく誰もが立ち向かっている。
この物語は、そんな当たり前のことを喉元に突きつけてくれると思う。

 これらのコメントを見ていると、製作側の人たちが『アビス』に込めたテーマが見えてくる感じがしますね。

 



 

テイルズ オブ ジ アビス外伝2 失いゆくすべて

メディアワークス/『電撃マ王』'07年3月号付録/漫画:玲衣、オリジナルストーリー:実弥島 巧

 単行本第二巻発売に合わせた付録で、オリジナルイオンの内面を描いた外伝です。

 表紙が綺麗。見事にピンクとグリーン。

 内容はやっぱり、以前ゲーム雑誌のインタビューでメインシナリオライターさんが語っていたものそのままでした。外伝1と同じように、シナリオライターさんの語った「設定」を、漫画家さんが独自に味付けして再構成し、「物語」にしたものだと思います。

 外伝1は、子供アッシュの帰還の旅というエピソードが入れられて、少年漫画的にダイナミックに仕上がっていましたが、今回は、随分と観念イメージ的にしたものだなぁと思いました。小説的な構成ですよね。

◆好きなところ
・各エピソードの前に、オリジナルイオン死亡の日までの日数がカウントされていたのは、面白いし効果的だなぁと思いました。あと、イオンの背後に時計盤、首に死神の鎌の掛かっている絵は暗示的で好きです。
・アリエッタが とにかく可愛かった。
・ラストシーンは、可哀想でちょっと泣けました。世界中に尊崇される導師なのに、誰にも知られることなく野に眠り、せめて花でもあればいいのにそれもなく、(アリエッタとの繋がりの意味があるとは言え)墓碑は獣の骨なんて。生きている間も、死んでからも、ずっと寂しいままの感じがする。

◆?と思ったところ
・冒頭。どうしてオリジナルイオン自らレプリカの失敗作を殺さなければならないのか? オリジナルイオンの強さは良く分かるけれど、必然性がなくて(説明不足で)やけに気になる。
・冒頭。アリエッタが「昨日元気がなかった」とイオンを心配したことを指して、「彼女にすら異変を勘づかれるようじゃ他の人間はだませないよ…」とイオンが言うが。前日にレプリカと入れ替わっていたということ? それじゃ前日に、裸で拘束されたレプリカイオンを、礼拝堂での預言詠みの仕事を終えたオリジナルイオンが殺害してたのは何なのだ?? びみょーに繋がってないような、分かりにくいような。
・導師が自分のレプリカを作っていたからといって、イキナリ剣で刺し殺そうとした謎の集団は何なんだ? 導師は預言で選ばれている。その導師を殺すのは預言に逆らうことでもあるんですが。預言を妄信することに反対する改革派? しかし後にレプリカイオンを改革派の頭に据えてることを思うと…いや改革派を抑えるためにそうしたんだからそれでいいのか…?
・オリジナルイオンの病気って何? (死の間際のシーンですら)少しも乱れず、譜術も体術も強力無比で使い放題。全く苦しそうにしている描写がないのに「病弱」と言ってるし…。(生まれつき病弱だとか、何年も前から病気を患っているとか言うのは、レプリカにもその病気がコピーされてしまうはずなので有り得ない。設定上、巻き戻せるのはせいぜい数ヶ月。シンクやフローリアンは完全な健康体だ。)


 その他雑感。
 オリジナルイオンがテンプレ「暗黒微笑」なキャラで、表面は可愛くて穏やかだけど強くて残酷で精神破綻者であることは全編で描写されていました。アリエッタのことも(陰で)ペット呼ばわり。そんな彼が、アリエッタが傷つけられたとき「…僕のペットを殴っていいのは …僕だけだ」と、攻撃した相手をダアト式譜術でミンチにしてしまう。
 …これもイマドキの萌えの一つなんでしょうか。残酷で横暴で腹黒なカレだけど、ホントはカノジョを愛してるのっ。カノジョを自分以外の誰かが傷つける事は許さないの。そんな危険な独占欲がステキ♥ とかいう感じに。つーか、「殴っていいのは僕だけだ」って、普段アリエッタを殴ってたのかこいつは。
 個人的には、オリジナルイオンのアリエッタへの愛情を示すエピソードには、普通に「アリエッタとのささやかで楽しい日常」みたいなのを使って欲しかったかなぁー、と思いました。暗黒微笑ばっかしてるんじゃなくて。
 狼少女に言葉や人間としての振る舞いを教えるのって、生半可なことじゃできないです。ヴァンの手助けがあったとしても。だからアリエッタとイオンの間には、凄く濃密な、親子っぽい空気もあっただろうと思ってたんですが。この漫画にはそれがなくて、遠くて殺伐とした感じがしたので。個人的にはもうちょいあったかみが欲しかったかなぁ…。(贅沢者です。すんません。)


 それはともかく。
 ずっと心を殺していて、土壇場で自分の本当の気持ちに気付いて涙を流す…って、原作ゲームのレプリカイオンに対する語り口と同じですよね。やはり、これはわざとシンクロさせてあるのでしょうか。


 この分で行くと、単行本三巻が出るときにも外伝付録をやりそうですね。
 今までの分がどちらもシナリオライターインタビューで語られていたエピソードでしたので、それに倣えば、次はジェイドの子供時代ですかね。その次がホド崩落か。


◆超個人的な気になったよポイント
導師守護役フォンマスターガーディアン時代のアリエッタはヌイグルミを持っていない。(ヌイグルミは「不安・寂しさ」の象徴ということ?)



 以降は、'08年末の追記です。

 別冊付録として発表されてすぐの頃の漫画家さんの公式個人サイト日記に、この外伝の製作状況に関する解説があったのを、ずいぶん後になって拝見しました。

  • メディアワークスの会議室で、原案者さんにオリジナルイオンの黒さについて一時間語ってもらい、それを漫画家さんがメモに取った。
  • メモを元に漫画家さんがコンテを描き、原案者さんに設定面の細かい部分まで監修をしてもらった。公式年表と照らし合わせ、台詞回しの一つ一つまで問題がないようチェックしてもらっている。
  • 「一体目のレプリカイオンは被験者イオンの手で直々に始末されていた」という設定は、原案者さんに書いてもらった原案段階から存在していたアイディアで、つまり公式設定である。全てのレプリカイオンがザレッホ火山の火口に投げ込まれたわけではない。(漫画冒頭で殺害されているレプリカイオンは、一体目である。)
  • 当初、アリエッタの生い立ちに関する設定を知らず、《三歳前後に戦争で両親とはぐれて森に逃げ込んだ》という独自の設定で服を着た幼児アリエッタをデザインしていたが、ゲーム会社から指摘されて、実際の漫画では裸で描いた。
  • 唯一の「公式外伝」なのだから、設定に関してはしっかりさせている。

 

 また、ブログ記事によれば、この外伝はカメラワークや回るアリエッタ等、アニメ映画『少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』をイメージしているとのこと。

 

 イオンの衣装デザインは、二年前でも現在のものと全く同じにするようにゲーム会社側から指定されたそうで。ということは、アレは伝統的な《導師の服》で、導師である限り一生涯、同じデザインのものを着続ける…ということなんでしょうか。服を見ただけで導師だと分かる感じで。

 ……じゃあ、フローリアンがイオンの服のお下がりを着せられていたのは……。

 それから、幼児イオンの髪型を十四歳イオンと同じ感じにするか迷ったけれども、「こういったエピソードのときには「違う髪型も見てみたい」派なので」変更したとのこと。

 

 アリエッタは十六歳ですが、アニスと同年代に見えます。ライガに育てられた影響で精神(脳神経)・肉体共に発達障害が起きているのかなという感じです。で、アリエッタのラフ設定に添えられた描き文字に「12歳で成長が止まってるとのことなので」とありました。…と、止まってるの? 『シンフォニア』のプレセアとお揃いだな。ピンク髪だし。それとも単なる言葉のあやで「止まっているような感じ」なのでしょうか。

 アリエッタの外見年齢は十二歳だったのか〜。

 なんにしても、彼女はもう死んでしまっているから、その後どうなったかを確かめる術はないんですが…。




『電撃マ王』'07年12月号附録DVDに再録。'08年12月発売の「公式外伝集」に収録。

 



 

テイルズ オブ ジ アビス3

メディアワークス/DENGEKI COMICS/玲衣

 メディアワークスの雑誌『電撃マ王』連載のコミカライズ第三巻。
 2007年1月号、同年4月号〜7月号分まで。そして2006年4月号付録の外伝1を巻末に収録。(2月号は休載、3月号は外伝2が付録に付いて本編連載は休載。…でも何故か単行本巻末には3月号分も収録されていると記載されてますよ?)
 内容は、ルークたちがザオ遺跡から脱出、到着したアクゼリュスが崩落して、ユリアシティでルークが断髪するまで。

 なんか刊行ペースが速いよーな…。いえ、月刊連載ものは年に二回出るのが普通なのでしょうか。けれど去年は一冊しか出なかったですし、頻繁に休載するという印象を持っていたので、ちょっと不思議な気がしてしまいました。
 今回の表紙はジェイドです。同時発売の『マ王』10月号付録外伝3の表紙はピオニー、コミックアンソロジーの表紙は(玲衣さんで)短髪ルークとガイでしたので、三種同時に買ったらなんだかアビス男祭りって感じでした。
 書き下ろしは特になく、アニスのイラストつきのあとがきが一枚あるだけです。ただし、そのイラストが二色カラー。ちょっとビックリしました。

 内容の感想は連載分感想で書いていますので触れません。あと、もう帯にゲストコメントは付かないのか〜。ちょっと残念でした。
 そういえば、アッシュ外伝のルークのズボンの長さの作画ミス、しっかり修正されていました。お疲れ様です。

 



 

テイルズ オブ ジ アビス外伝3 結びゆく誓い

メディアワークス/『電撃マ王』'07年10月号付録/漫画:玲衣、オリジナルストーリー:実弥島 巧

 単行本第三巻発売に合わせた付録で、青年時代のピオニーとネフリーの恋愛、二度の別れを描いた外伝です。

 基本デザインは変えられていませんが、表紙の紙質が今までと違っています。紙の値段のことは知りませんが、ちょっと廉価っぽくなったような気もしました。前二冊がツヤツヤ光っていて付録にしては豪華な感じでしたので、普通になったというところでしょうか。(同時発売の単行本三巻に外伝1が収録されたので、)付録の外伝も単行本に収録されることが確定したからかな?


 内容の感想。
 面白かったです!
 とても綺麗にまとまっていました。書簡集的に二人のナレーションを入れて反復させてリズムを作り、ストーリーの要所のページには便箋をイメージした飾り罫が施されていて。クラシカルな恋愛物語であることが強調されていて印象深かった。あと、オールドラントでは女性から短剣を渡すのは絶縁の意味という設定が効果的に使われています。

 しかし、物凄〜く贅沢を言えば、やや食い足りない部分もありました。
 皇帝(皇位継承者)としてのピオニーを、この物語中でも描写していて欲しかったです。原作では名君として慕われているピオニーが見られますので読者はそのイメージで補完して読むでしょうが、この漫画自体の中にはピオニーが皇位継承を強要されてうんざりしている描写しかありません。ですので、クライマックスでネフリーが「あなたは皇帝となるべき人。その器を生まれ持つ人。この国を捨てることができたとしても この国に住む人々を捨てることはあなたにはできないわ」と言って身を引いてしまうシーンが、ちょっと上滑りしている…というか、イマイチ真に迫らなくて、ネフリーの一方的な陶酔、逃げのようにも思えて残念だったので。
あなたは優しい人だから」と言うネフリーの言葉が物語のキメになってましたけど、恋人や友人に優しいことと国を治めることは違うので、ピオニーが国を捨てられない根拠としてはズレてると思っちゃったのです。

 ページ数の関係で仕方ないのでしょうが、ワガママを言えば、ここにもうワンエピソード欲しかったです。前述のようにピオニーが国を真剣に憂いている描写を予め入れておくか、あるいはピオニーとネフリーが本当に一緒に逃げようとして、でも港を出ようとしたところで立ち止まって街(国)の灯を見つめるピオニーを見てネフリーが泣き笑いで身を引くとか…これはベタですけど。さもなきゃピオニーが国を捨てることで起きるであろう不幸を、ちゃんと描写しておくかですね。
 それをやらないんであれば、いっそネフリーが身を引く理由を預言スコアに限定して、オールドラントの人間にとって預言に逆らうことがどんなに恐ろしいか、その恐怖が愛を凌駕してしまったとハッキリ描写して欲しかったです。

 周囲にどんなに反対されても頑なにピオニーとの文通を続けていた(身分差を恐れなかった)ネフリーが一発で身を引いたのは、結局預言に反するのを恐れたからだと思うのですが、それを「優しいピオニーは国民を見捨てられないから」という理由で覆ってしまって、半端に奇麗ごとで覆っている気がしてしまったのです。だから、あの別れのシーンに乗り切れなかった。
 そういう意味でちょっと消化不足だなという感じでした。

 …と書いてはみましたが、百点満点の出来だと思います。もうワンエピソードあったら自分的には百二十点だったなーという、ワガママな妄言です。


 以下、設定考察。
あれは俺が成人したばかりの頃だっただろうか」とピオニーが語る回想シーン。夜にこっそりネフリーの部屋の窓を叩いた彼は、屋敷を抜け出して単身でグランコクマまで行ったこと、ジェイドとサフィールの無事を確認したことを知らせ、それをまとめた報告書を渡します。それを聞いたネフリーはぽろぽろと涙をこぼして「……兄は 無事なのね?」と微笑む。
 勝手な想像なんですけど、このシーン、実際にはピオニーは二十〜二十一歳(ND2002)だったんじゃないかな?
 えーと。つまり、これホド崩落前後のエピソードじゃないかと思うんですけど。ホドを含む国境の戦争が激化。でもジェイドから連絡はない。心配しているネフリーを見て、ピオニーは自ら確認に行こうと決意、グランコクマへ。そういう状況だったからこそ、ネフリーは兄は無事だったと泣くほど喜んでいるんだろうと思ったり。
(決死の覚悟でグランコクマに潜入したピオニーがジェイドと会うエピソードの存在が匂わされてますなー…。いつかこれも外伝で語るんですかねー)

 これがND2002の話だとすると、この時点のネフリーは十五歳ですね。
 で、一年後、ネフリー十六歳、ピオニー二十二歳の頃から恋人になって。その何年後かは不明ですがピオニーはグランコクマに呼び戻され、ネフリーとの文通が始まる。
 ジェイドがフォミクリー研究を放棄したのはホド崩落から二年後のND2004。この時点でピオニーはまだケテルブルクに軟禁されていましたので、ピオニーとネフリーのケテルブルクでの恋人としての交際は、一年以上はあったことになりますね。
 ND2010、ネフリーの二十三歳の誕生日、生誕預言で結婚を告げられる。ここで破局。ピオニーとネフリーの恋人としての交際は、文通期間を併せてちょうど七年、と。
 この破局の時、ピオニーは二十九歳。四年後のND2014、三十三歳の時に即位。ゲーム物語中のND2018時点ではネフリーが結婚してから八年経過している。つまりジェイドはネフリーの結婚式以降、八年間ケテルブルクには帰っていなかった。

 …こんな風に考察してみましたが、どーでしょう。


追記

'08年末に発売された'「公式外伝集」巻末のキャラクターデザインラフ集には、この外伝開始時点のピオニーは二十歳、ピオニーと交際を始めた頃のネフリーは十六歳、ピオニーと別れた時のネフリーは二十二歳だと書いてありました。

 ファミ通攻略本によれば、ピオニーはND1981生まれ。二十歳ということは、外伝3開始時はND2001。(ピオニーの誕生日が年末なら、ND2002の可能性もありますが。)

 一方、ネフリーはND1987の生まれです。ND2001当時は十四歳。

 ……擬似兄妹関係から交際を始めるまでに二年あったってこと?

 ピオニーと別れた時のネフリーが二十三歳なのは漫画の中で明記されているので、これは設定画に添えられた文字の方が間違っているということですよね。交際期間が《七》年、というのは譲れないんでしょう。

 

 '08年に放映開始したTVアニメ版の第11話に、フォミクリー実験で瀕死の怪我を負った若きジェイドの元にピオニーが現れて、殴って諌める回想エピソードがありました。ピオニーの服装も似た感じだったので、これがこの外伝の冒頭に繋がるのではないかと思いました。

 フォミクリー実験でジェイドが大怪我をしたという報が伝わり、ネフリーが心配する。ピオニーはケテルブルクを抜け出して単身グランコクマへ行き、何とか生きながらえていたジェイドを殴りつけて、死んだ人は甦らない、お前が死んだら俺たちがどんな思いをするか考えろと諌める。それからケテルブルクへ戻って、ネフリーにジェイドの無事を報告した…って感じ?

 で、翌年にホド崩落が起こり、その更に二年後、ピオニー二十三歳、ネフリー十七歳の時にジェイドはフォミクリーを禁忌とする、とか。


追記の追記。

 '09年に『月刊Asuka』で連載された漫画『追憶のジェイド』にて、フォミクリ―実験事故まわりのエピソードが語られました。『追憶のジェイド』はTVアニメ版板コミカライズですが、シナリオはゲーム版のメインシナリオライター女史が書いています。

 それによれば、ジェイドがフォミクリ―実験の失敗で重傷を負ったのはND2003の末。この少し前にピオニーは次期皇帝としてグランコクマに呼び戻されていました。

 つまり、上記の私の想像は全て大外れです。(^_^;)

 この外伝3で、ピオニーが軟禁を抜け出してまでグランコクマへ潜入したり、兄の消息を聞いたネフリーがたっぷりと嬉し涙を流したり、普通の情況ではないと思ったので、戦争か事故か、ジェイドの生死を左右する大事件が起きたんじゃないかと想像してしまったんですが、結局、「都会に行ったきり連絡のない兄を寂しがりのネフリーが度を超えて心配し、彼女を気遣うピオニーが常識外の行動をとった」というだけのことだったみたいです。(^_^;)




 さて。原作ゲームだと、ピオニーとネフリーが結ばれなかった理由をジェイドは「身分違いのため」と説明してますよね。話にずれがあります。
 単に、原作の時点では預言のせいで結ばれなかったという設定がまだ作られていなかったのかもしれませんが…。
 あえて妄想してみるに、ネフリーが受けた生誕預言は嘘だったりして(笑)。
 町娘と次期皇帝の恋愛を憂いた周囲が嘘の預言をさせた。ピオニーとネフリーは今でも預言は本物だったと信じているけど、ジェイドはそれが嘘の預言だったことを知っている。なので「身分違いで結ばれなかった」とルークたちには説明した。そもそもこういう結末になるだろうと最初から予想していたので、妹とピオニーの交際に反対していた…なんてね。
 ホントに妄想です。二次創作でも書くべきですね…。

 しかし、ユリアの預言ではない一般の預言はかなり曖昧なもののはずなんですが、一体どんな内容だったんだか。「あなたは今年結婚するでしょう」だとピオニー以外の人と結婚することにはなりませんから、「あなたは今年、この街の人間と結婚するでしょう」とかかな? もし結婚相手の名前を具体的に言われたんだとしたら、やっぱ捏造預言の疑いが濃いよーな。

 でも、預言のせいで他の男を愛する女と結婚させられてしまったオズボーン子爵も不幸なものです。しかも相手は皇帝ですから、日々気の休まる時がないことでしょう。(ピオニーとネフリーの交際は結構周囲に知られていたようですから。)
 …この人、原作には全く登場しない上、オズボーン子爵=ケテルブルク知事=ネフリーとして扱われていて、まるで存在しない人であるかのようになっているのがかなり気になります。とはいえ、例えば彼が亡くなっているのなら、ジェイドが葬式に行っていない(ネフリーの結婚式後ケテルブルクに帰省していなかった)のが変ですので、病気で伏せってるとかなんでしょうか。彼を当て馬にして今後のピオニーとネフリーの純愛が描かれたりしたら、ちょっと嫌かもしれません。


 その他。
 シルエットながら、ピオニーの父のカール五世が初登場。
 思ってたより若いですね。ゴツいし。
 あと、ピオニーが皇帝になるという秘預言クローズドスコアは、彼の兄姉たちが死に絶えるまでマルクトには知らされてなかったんですね。ピオニーはケテルブルクに軟禁される、という預言は知らされていたようですが。モースは小出しに情報を流していたのか…。


 蛇足ながら、生誕預言を受けるシーンで、ネフリーが「ネフリー・カーティス」と呼ばれちゃってます。カーティスはジェイドが養子に入った家の名前なので、「ネフリー・バルフォア」が正解。

※単行本収録時に修正されました。

 

 

'08年12月発売の「公式外伝集」に収録。

 



 

『電撃マ王』2007年連載分

 アスキー・メディアワークス/『電撃マ王』/玲衣

『電撃マ王』連載の『アビス』本編コミカライズ。原作ゲーム発売より早く連載開始した、関連物の中では最も古参の作品です。

 

4月号

 2月号('06年末発売)は完全休載、3月号は付録外伝で本編は休載。というわけで、すっごく久しぶりな気のする漫画版本編です。

 前回末の煽り文から予想していた通り、今回はアクゼリュスでした。ヴァンに「愚かなレプリカルーク」と言われたところで終了。
 …いやに半端なところで切れている。もしや次回は、気絶していたルークが目を覚ましてアクゼリュスが崩落したことを聞かされるシーンから始まるんじゃ。とか思わせられました。

 この漫画版全体に言えることなんですが、ルークに優しいですね。ルークの醜さから極力目を逸らしていると言うか(笑)。マイルド風味で万人に好まれる味に。うんうん。
 ルークが仲間たちから孤立していく描写が薄い。また、原作のルークがアクゼリュスで役立たずで仲間たちから白い目で見られる描写もなし。ナタリアが病人に駆け寄った時に感染るかもしれないからやめろと言った程度でした。「ルークはアクゼリュスでも傲慢」説をとってた小説版二種とは違い、「ルークはアクゼリュスの様子に怯えてた」説を取ってる感じ。

 しかしそれよりなにより「あれ?」と思ったのはティアの思想の取り扱いでした。原作ではイオンのものだった「預言スコアは生きる上での道具に過ぎない」という台詞を、ティアに言わせちゃってるのです。
 原作のティアは、この時点ではまだ一般教団員的価値観の持ち主で、預言は絶対的なものだと普通に思ってたんですよ。アクゼリュス崩落がきっかけでそれが揺らいで、戦争イベントの時に「預言は絶対的なものじゃない」とやっと言うようになる。でも預言から外れるのは怖い、とも。
 なのに漫画版では、ティアは最初から預言から自立した人間なんですね。…漫画版ティアは最初から思想が完成されたほぼ完璧な人間…と。
 なんか残念でした。コンパクトにまとめるにはこうした方が――ルーク以外のキャラが悩んだり迷ったりする姿まで描かない――方がいいんでしょうけども。
 ルーク中心に浅くマイルドに進む訳だな、と見ました。

 しかし、この漫画、ホントにティア以外の仲間たちが「空気」だなぁ…。いてもいなくても変わらない。…と言ってしまってもいいくらいルーク(物語)と絡みません。むむむ。

 どうでもいいですが、今回、ティアの顔なんかの絵がかなり崩れてて気になりました。

 

5月号

 今回は絵が崩れてなくてよかったです。

 省略するのかな、と思っていたら、崩落の描写がキッチリありました。ヴァンがアッシュを連れて逃走し、ティアが崩落から仲間たちを守るため、譜歌を発動させようとするところで次回へ続く。
 原作とは状況が異なっていて、超振動を使った後ルークが気を失いません。なのでルークはその場で自分がやったことの結果を突きつけられて愕然としますし、アッシュもその場でそんなルークをぶん殴って、更に、彼が自分の劣化複製人間レプリカであることを暴露してしまいます。ルークは愕然とするだけで、原作のように「嘘だ」と叫んだり逆切れしてアッシュに襲い掛かったりはしません。
 崩落による小さな瓦礫がピッとルークの頬に当たって血が一筋流れ、更にアッシュに殴られる。具体的な「肉体の痛み」によって犯した罪を実感させてくれたのは、真に迫ってよかったです。

 ただ、この話の流れだと、ルークが「俺は悪くねぇ」と責任逃れをするエピソードはどうなるんだろう、と気になりました。ヴァンにだまされた上、自分がレプリカだと知った、その直後に仲間たちがルークに責任を問うたら、いくらなんでも酷ですよね。

 この漫画版は原作よりルークに優しくマイルド風味なので、次回は「ユリアシティで悩むルーク」から始まって、その後仲間たちと共に再出発とか、そういう感じになるんでしょうか。それとも、きっちり障気の海に沈むアクゼリュスの人々の死体だとか死にゆくジョンの姿を見せて、その上でルークに「俺は悪くねぇ」と言わせ、逃げずにルークの(そして仲間たちの)醜さを語るのでしょうか。


 あと、漫画の後に付けられているアビスファン用の読者コーナーで、これまでは必ず掲載されていたドラマCDの情報が載ってなかったのが気になりました。CD4がほぼ同時発売なのに…。いったいどうしたことか。

 

6月号

 今回は面白かったー!
 原作ではカットされていた、崩落するアクゼリュスの中、魔界クリフォトへ落ちていく仲間たちの様子が細かく描かれていて。果てなく落ちながら瓦礫を突き抜け、漠々たる魔界が眼下に広がった時の衝撃。大・迫力でした。
 以前の、ルークの超振動が連絡船で暴走した時の小島消滅や、ザオ遺跡での壁破壊して地下水ドッパーン! もそうでしたが、ダイナミックなシーンは、原作よりも演出が派手で、センスがいいですよね。

 ルークが責任逃れするシーンは、きっちり描いてありました。
 崩落したアクゼリュス。転がる何人もの無残な死体と、足元に流れ出した血溜り。それはヴァンに騙されたルークがセフィロトツリーを消してしまったからだとティアに説明されて、引きつった笑みを浮かべて強張り、言い訳を口にし始めるルーク。俺は悪くねぇぞ、師匠せんせいに言われた通りにしただけだ、俺は英雄なんだ、と必死に喚きます。ジェイドは「ここにいると馬鹿な発言にイライラさせられる」と席を外し、それを見たルークは「なんで俺だけ責められなきゃなんねーんだよ!? おまえらだって何もできなかったじゃないか!!!」と責任転嫁して周囲を責め始めます。イオンは「たしかにそのとおりです。僕たちは無力だ。だけど……」と、悲しく厳しい目でルークを見つめ、ティアは喚き続けるルークを悲しい顔で平手打ちして「…これ以上 幻滅させないで」。
 それでも認めきれずにいたルークは、頭痛を起こして昏倒してしまう…ってところで次回へ続く。

 …なんつーか。ルーク。シャットダウンと再起動を繰り返す、調子の悪いパソコンのよーだ。気絶して起きて気絶して(苦笑)。

 原作では、超振動でセフィロトツリーを消した直後にルークは気絶しちゃうので、魔界で目を覚まして初めて自分の行動の結果を突きつけられるのですが。この漫画では、気絶しなかったですよね。その場でアクゼリュス崩壊を目にして、挙句アッシュに殴られて罪の自覚を突きつけられてました。
 なのに、何故か今回になるとルークは最初から気絶していて、ティアに説明されて初めて自分の罪を知ったみたいな顔をしている。ちょっと繋がってない感じかも。
 それに、前回明かされた、ルークが実はレプリカだという衝撃の事実にだーれも言及しないのも謎です。…いや、そのせいでナタリアとガイは何も言わなかった(言えなかった)のかな?
 それでも、アニスが全く責めないのは謎。でもイオンはしっかり責めて(諌めて)きたのでビックリでした。
#とりあえず、読者が「ルークは全然悪くない」とは思わないように誘導しているのかな? 普段からキツめの性格のアニスに責めさせると、彼女を悪者にし易くなりますから。責めるアニスはひどい、ルークは可哀想な被害者、みたいに。しかし普段優しいイオンにあんな悲憤の目を向けられてはそうは言っていられないですよね。
#念のために追記しておきますが、イオンは最初に「僕がうかつでした。僕がセフィロトの封咒を解かなければ!!」と言っています。ルークを庇うようなタイミングで。でもその後で、ルークが「俺は悪くねぇ」と喚いて仲間たちを責め始めたのです。

 ともあれ、原作に比べると、まだマイルドだと感じました。ルークがみんなの前でイキナリ昏倒しちゃって、思いっきり病人の風情なので、なんつーか、「こんなに弱い子を責めるのは可哀想だヨ」という雰囲気を醸し出してましたし。
 責める(諌める)のが仲間のうちの半分だけのせいか、大してルークに「責任」を求めてない印象があり、原作の、仲間たちに責められて幻滅されて見捨てられちゃう、あの途方もない窮迫感と孤独感、痛さは感じなかったです。

 次回はどうなるんでしょうね。アッシュは出てくるのか? 原作どおりに仲間たちと一時離れる展開になるのか。それとも、その辺は省略してみんなで一緒に外殻へ戻る展開になるか。なんにせよ、次回辺りで断髪かな、と思いました。


 次回から、漫画の作者の玲衣さんへの読者の質問コーナーが開始されるそうです。ちょっと楽しみです。

 

7月号

 ページを開いて最初に思ったこと。
「あれ? なんか厚い……。今回ページが多くない?」
 思わずページ数を数えてみると、40Pもありました。ちなみに先月は32P。おお。
 …と思っていたらば、よく見たら目次にばっちり「大増40ページ」と書いてありました。数える必要なかった。アホぅ。
 大増ページの影響なのか、後半、ルークやティアの正面顔なんかが崩れまくってた気がするのですが、錯覚かもしれません。ガイの顔も結構変でした。ユリアシティでの方策会議の時とか。

 今月はルークが断髪して「俺… 変わりたい。いや 変わらなきゃいけないんだ!!!」とティアに言うところまででした。「見ているわ、あなたのこと」や「ルークが『ありがとう』だって!?」には まだ到達していません。

 大雑把に言えば、ドラマCD式のストーリーアレンジになっていました。ルークがアッシュの目を通して仲間たちが今後の方策を話し合っている情景を見る。ガイはユリアシティを出る前に「ルークが心配なんだ」と仲間から外れる。その際、原作にあった「アッシュのガイへのこだわり」「ガイのアッシュへの敵意」には全く触れない、と。(ガイの黒い面を見せない。)更に、タルタロス打ち上げのエピソードがなく、全員がユリアロードを使っての外殻帰還、ってとこまで同じ。
#ちなみに、ルークがアッシュの目を通して情景を見ることが出来た理由付けは、原作やドラマCDとは異なっており、アッシュの意志とは無関係な偶発現象、ルークの精神体がアッシュ視点の断片的な記憶の中をさまようイメージで語られていました。アッシュはルークが自分の目を通して物を見ていたことに気付いてない感じで、よって、この二人の脳内会話は全くありません。アッシュのルークに対する意地悪さ――葛藤や醜さも薄められ、マイルドにされているように感じました。

 やっぱり、全体的にマイルド風味だなと思いました。優しい…というより、読者が「仲間が酷い」とは思わないように気を遣っている感じです。
 たとえばイオンはヴァンの目的を知るために外殻へ戻ろうという話になった時、決意の表情でまっさきに「賛成です」と言い、「このような事態になったのは僕の責任でもあります」と言います。イオンがアクゼリュス崩落を自分自身の責任であると感じ、だからこそ外殻へ戻ろうとしたことがはっきりと語られています。ルークに責任を押し付けて見捨てて去ったのではない、ということですね。(昏睡しているルークを連れて行くことは出来ない、と仲間全員気まずい顔になって俯いてましたし。)

 原作では、ティアはアクゼリュス崩落直後と、ユリアシティからルークと共に旅立つ準備をしていた時に「守れなかった」「崩落は私の責任」的なことを言うんですが、漫画版ではまだティアには言わせてないですね。あと、原作ではガイは「一人になればルークも気付くだろう」と、あえてルークから離れる父親的な厳しさを見せますが、漫画版ではドラマCD版と同じ、徹頭徹尾優しいルークの兄ちゃん、みたいです。


 ルークが「変わりたい」と決意して断髪するシーン。ティアに自分の主体性のなさを指摘され、ショックを受けるくだりが、大ゴマをたっぷり使って、多くのページ数を費やして描かれていました。原作だと、

主体性のなさを指摘される→ショック受けて、その通りだ、だからみんなに見捨てられて当然だと落ち込み、ついでに俺やっぱアッシュのレプリカなんだなと自嘲。(既に卑屈の萌芽アリ。)苦しげに「変わらなきゃいけないんだ」→ティア「本気で変わりたいなら変われるかもしれない。でも、あれだけの罪を犯してあなたはどう変わるつもりなの」とあえてキツく追及→分からない、でも信じて欲しいと、証として髪を切る。決意を込めて「上手くいかないかもしれない。でも俺、変わるから」

という流れでしたが、漫画版は

主体性のなさを指摘される→ルーク大衝撃!(ヘレン・ケラーの「ウォーター!」並に) そうだ俺ってそんな奴だったんだ→しばらくぼんやり宙を見て→髪切ってティアに見せ決意を込めて「変わらなきゃいけないんだ!!!」

でした。原作は台詞でルークに心情をガンガン語らせて進めてましたが、漫画は流石に絵で語ってましたね。あと、「仲間に見捨てられた」とルークに言わせることを(現時点では)避けてます。これもやっぱ、読者が「仲間はルークを見捨てた、酷い奴らだ」とは思わないように気遣ってるんでしょうか。


 原作ではここでルークが語る「俺が死んでアクゼリュスが復活するなら、ちっと怖いけど死ぬ」という台詞が、レプリカ編で結構重要になってくるんですけど。漫画版では触れないのかな?(まあ、漫画版でレプリカ編の該当シーンに到達するのって本気で数年後でしょうから、十中八九読者は覚えてないし、ここに楔打っといても無駄か…。)


 前々回でヴァンに連れさらわれたアッシュが、今回になると何食わぬ顔で仲間たちと一緒にいるのでビックリさせられます。中盤のテオドーロの台詞から、ユリアロードを使ってやって来たことは分かるのですが、彼が現れたシーンが描かれてませんから、「え? なんでいるの?」とどうしても思っちゃいます。あと、ユリアロードの設備が原作とちょっと違ってます。(湧水洞側の出口、原作だと泉の中なんですが、漫画版ではユリアシティ側と同じ譜陣が設置されていることになってました。)


 来月から、今まで空気だったガイ兄さんが目立ってくれるでしょうか…。目立ってくれたら嬉しいなぁ。そんで今までのツケとばかりにルークにペラペラ喋ってください。「俺にとってのルークはお前だけってことさ」とか例の台詞を。
 そーいやこの漫画ではガイってカースロットかけられてたっけ?? …かけられてないよね?(ザオ遺跡後をよく覚えてない) テオルの森でかけられて直後にルークを襲うとか言う展開かな?

 『アビス』は長い物語ですが、実は一番融通が利くのが崩落編で、外面的には「和平条約締結」「外殻降下」、内面的には「ルーク、成長。…したにもかかわらず、ヴァンに心をへし折られる」というポイントを押さえてさえいれば、後はどうとでも省略・アレンジできるんですよね。
 この漫画、来月は休載だそうで。ホントにこのペースだと原作通りでは十年くらいかかりそうなんで、崩落編は軽やかにサクサクと進めて欲しいです。そんでレプリカ編に入ったらねちこくやってほしぃー。しかしそんなことを思うまでもなく、今までの展開も既に相当アレンジかかってますし、これからはもっとガンガンいきますかね?

 

9月号

 一ヶ月の休載を挟んでの、連載十八回目です。
 ルークが短髪になりました。背中の悪魔マークも見えるように(笑)。この漫画のルークは長髪時も可愛かったですが、髪が短くなっても可愛いです。後ろ髪がひよこのしっぽだぁー。(ぽわわん)
 原作ゲームだと、髪を切ると顔つきまで変わっちゃって別人になったかのように見えるのですが、漫画版ではちゃんと同一人物でした。うん。

 テオドーロから秘預言クローズドスコアについて聞かされ、ショックを受けるルークとティア。
#個人的に、ルークがテオドーロ市長に謝罪するエピソードをカットしないで入れてくれてたのがすごく嬉しかったです。
 ティアの部屋で、その話をガイにも伝えます。

「一緒に来てくれとは言わないよ。そんな資格はもうないもんな」「お…俺 ルークじゃないからさ」

 外殻へ戻って何かしたい、たとえ独りでも。苦しそうな笑みを浮かべてそう言ったルークのおでこを、ゴツンとガイが小突きました。

「おいおい… 寝てる間にずいぶんと卑屈になったもんだな? せっかく俺が待っててやったってのに」
「で…でも!! 俺レプリカだから。もう親善大使の資格もないし おまえの主人でもなんでも――」
「いいんじゃないか? アッシュだっていまさらルークって呼ばれるのはイヤがってんだから」「もらっちまえよ ルーク

 更に、またまたおでこにビシィッと人差し指を突きつけて。

「第一!! 俺はおまえが俺のご主人様だから ここに残ったわけじゃないぜ? おまえはおまえ アッシュはアッシュ。俺にとっての本物はおまえだけってことさ」

 ガイはなんでそんなにルークのおでこが好きなんだろう。
 …じゃなくて。ゲフン。
 期待していた通り、ガイ兄さんがルークにたっぷり言ってくれましたー!! ワーイ。ありがとう漫画版スタッフさんたち。おめでとうガイ。祝! 脱・空気!!
#「昔のことばっか見てても前へ進めない」はまだ言わないんですね。カースロットの時に言うのかな。
#あと、「残りの人生全部使って、世界中幸せにしろ」も言わないのか…。結末を思うと皮肉だから?

 ガイのこの言葉と、ティアとミュウの優しいまなざしに感動したルークは、小突かれた額を押さえながらぽつり。
……あ…ありがとう
 途端に血の気を引かせて驚愕するガイ。ついでにアゴが落ちそうなくらい驚いてるミュウ。
ルークが「ありがとう」!?」「傍若無人と礼儀知らずの化身のルークが」「天変地異の前ぶれだ いやもう天変地異は起きてるか」「こここ公爵様にご報告を
 何気にアンタも「礼儀知らず」だよ(苦笑)。(いやすごく笑いました。面白かった。)

 しかし、「公爵様にご報告を」と言ってるのは目を引きました。この期に及んでファブレ家の使用人としての言葉を漏らすのかぁ…。長年の使用人生活で染み付いちゃってて、ついつい出ちゃったのかなと思いましたが、これってつまり、良いにつけ悪いにつけ、ルークに何かあれば公爵に報告するのがファブレ家の生活では基本だったということ? 初めて喋ったとか歩いたとか、ナタリア様と喧嘩しましたとか身長一センチ伸びましたとかニンジン食べられましたとかテストで百点取りましたとか(笑)。
 原作で、長髪ルークの最初の旅が終わった翌朝、ガイが「おまえを探しに行ってる間に仕事がたまってたよ。こうなるとかったるいなー」と自室でぐったりしてるんですが、もしかして毎日のルークの様子の報告書(ルーク様日記、みたいな)を書いて提出するのが彼の仕事で、それが溜まってたんだったりして(笑)。

 さて。その後、ルークはティアと二人きりで話して、ティアとヴァンがホド出身であること、ヴァンがホドを見捨てた世界を憎んでいたこと、それに感付いたティアが刺し違える覚悟でヴァンを討とうとしていたことを知ります。アクゼリュス崩落の責任は自分にもある、ルークだけのせいにはできないと言うティアに「強いんだな…」と呟いて。

「俺も…強くなりたい。変わりたいんだ。
 俺が変わったところでアクゼリュスは元には戻らない。何千という人が死んだ事実も変わらない。何をすればいいのか どう変わればいいのか。正直言って…わかんねぇ。
 こんなことしか言えなくてダセぇよな。
 すぐにはうまくいかねぇと思う。また間違えるかもしれない。でも…俺きっと変わるから。おまえに見ててほしいんだ。ティア」
「…気を抜かないことね。私もガイも いつでもあなたを見限ることはできるわ」
「うん」
「見ているわ。あなたのこと」

 漫画版はマイルド風味なので、よく論争の種になるティアの台詞「いつでもあなたを見限ることが出来るわ」を使うとは思ってませんでした。ビックリ。
 そしてやっぱり、「俺が死んでアクゼリュスが復活するなら死ぬ」の台詞は使わないんですね。

 また、ここではティアとヴァンの過去の姿も描かれており、そのデザインは『ファンダム2』に準拠したものになっているのですが。『ファンダム2』の物語自体は採用されていないようです。ティアがヴァンとリグレットの密談を目撃してしまう情景が描かれていましたが、『ファンダム2』の外伝だとその場面のティアは士官学校の制服姿なのに、この漫画では私服姿でした。

 まあそれはともかく。
 この一連のシーン、ティアがひたすら美しいんですが、そんなことより状況が気になって気になって仕方ありませんでした。
 だってそこ、ユリアシティの屋根の上に見えるんですけど!?
 何故障気渦巻く中にわざわざ生身で出てって長話…!
 いいから早く中に! 中に入ってって! 病気になるだろ。障気蝕害インテルナルオーガンに!
 ひたすらハラハラさせられました。(あれ? 漫画版では障気蝕害の設定ってなかったんですっけ?)

 しかしどーして二人はわざわざこんな所で話してるのか。何が何でもガイとミュウがいないところで話したかったのでしょーか。
 悪意無く付きまとう小姑…もといガイとミュウの目を逃れ、二人きりになるために、とうとうシティの屋根の上まで行っちゃったのかと思いました。

 気になるといえば、テオドーロの話を聞きに行った時にガイがいなかったのも謎でした。ルークが目覚める結構前にガイは他の仲間たちから離れてルークの方へ戻っていたはず。一体どこで何をしていたのか?

  1. たまたま行き違った
  2. ガイがテオドーロの所に同行するのを遠慮した
  3. ガイはユリアシティの中で迷子になっていた
  4. シティの女の子に絡まれて震えていた
  5. はあ〜ん! シティの珍しい音機関の数々に見とれていた

とかとか妄想しましたどうでもいいですねハイ。

 ここでルークたちのパートは終わり、残り2ページはベルケンド in アッシュ一行。アッシュに殴られたスピノザが、開き直って悪い顔で笑いながらジェイドをバルフォア博士と呼んだところで次回に続く、でした。


 …で。来月は単行本第三巻に合わせた別冊付録外伝3で、本編はお休みです。
 なんだかなー…。ぶつ切り…。
 外伝3は、若き日のピオニーの話だそうです。…15〜13年前の、ホド崩落でグラグラしてるジェイドを諌めたりとかネフリーに身を引かれたりとか、その辺の話?

 今月号には、例によって来月出る『アビス』アンソロジーのお試し版が別冊付録として付いていました。今回はアニス特集です。
 一部が早く読めるのは嬉しいんですが、アンソロを買う身としては損してる気分になっちゃうんですよね…。むぅ。

 

11月号

 二ヶ月ぶりの本編連載です。

 原作とは違い、予めティアは後でジェイドたちと合流する約束をしていたとのことで、アッシュを除く旅の仲間全員が集合したところから物語スタート。
 場所は、どうやら民間の連絡船の内部。
 …よくそんなところで待ち合わせできたなぁ。よほど綿密に日時を打ち合わせてたんですね。

 明言はされていませんが、この連絡船はキムラスカ船籍っぽい。同乗していた一般人がアクゼリュス崩落について「どうせマルクトの仕業だろ? 狂ってやがるぜ…」と声高に話していました。
#アクゼリュスはマルクトの重要な都市ですから、最初に読んだときビックリして、ちょっと混乱しました。

 …の割に、この船の行き先はマルクト首都のグランコクマで、途中で整備のためと言って、マルクト領のケテルブルクに寄港している。
 んじゃ、マルクトでもキムラスカでもない勢力の船なのかな?  ダアトが一般向けの連絡船を出してる気はしないので、実はケセドニアの船とか? いや、ケセドニアから出る船はマルクトかキムラスカか、船籍はっきり分かれてましたっけ。
 まあ、例によって読者が深く考えても仕方のないことなのでしょう。

 原作では二国間の情勢が悪化したためにルークたちは自前の乗り物で移動しますが、漫画版では普通の交通機関利用なのか…。戦争が始まったら移動できなくなりそう。次々回辺りでアルビオールを入手するんでしょうか。早くノエルに会いたいです。


 ともあれ。ユリアシティでの決別後、初めての仲間たちとの顔合わせです。
 例によって、とてもマイルドに味付け直されていました。原作では、最初ジェイドとアニスはかなりキツい嫌味を言ってくるのですが、それがない。 アニスは

「確かにティアとは落ち合う約束したけどぉ〜〜」「なんでおぼっちゃんまで一緒に来てるワケ!?」「髪なんて切って心入れかえたつもり?」

などとは言うものの、続けてジェイドが戦争が起こりかけているという世界情勢を説明して「わかりましたか? ルーク」「今度は独断で足を引っ張らないでいただきたい」と厳しい顔で言うと、驚いて「手きびしいですねェ…」と口をつぐんでしまいます。その後はもうティアとルークの仲をからかい始めて、普通に接している。

 ジェイドの手厳しい台詞も、原作の再会直後のものとはニュアンスが違っています。原作では、

「やれやれ。また、あなたと行動することになるとはねぇ」「迷子になったりして足を引っ張らないようにお願いしますよ」「いつまでも一緒にいなければならない義理もないですし。しばらくは我慢しましょう」「アニスは不必要に先走ったりはしませんよ。あなたと違って」

などと言ってまして、再会直後は本気の皮肉と嫌悪が見えるんです。けれども漫画版では、アニスに「手きびしいですねェ…」と言われて数瞬黙り込み、眼鏡を押し上げると「罪を背負う者には相応の自覚が必要ということですよ…」と言います。皮肉でも嫌悪でもなく、何か深い思いがあってそう言っているらしいことが、かなりハッキリと透かし見えるようになっています。

 ジェイドは、大罪を犯しながらなかなかそれを認め切れなかったルークの姿に、過去の自分自身を重ね合わせていました。驕りによってネビリム先生を死に至らしめ、しかしそれが取り返しのつかない罪だということを認められず、レプリカで帳消しにしようとして、なのに失敗し、それでも認められずに罪を積み重ね続けた。そんな愚かな自分。

 だからこそ「俺は悪くねぇ」と言い張ったルークにジェイドはあれだけ怒っていたわけなんですが、原作ではそれは明確には語られていません。後にシナリオライターインタビューで解説されはしていますが。
 けれど、漫画版ではエピソードを圧縮して直後にジェイドの過去を語っており、彼の心理を明確化させていて、結果的に原作の「ルークに本気の皮肉と嫌悪を見せるジェイド」の姿は消滅してしまっています。
 でも、仲間たちに仲良くあってほしいと望むファンにとっては望むべくな改変、なのかな。

 結論としまして、漫画版ではジェイドもアニスもルークに寛容でした。
 原作では、「イオンとナタリアの救出」「ピオニー皇帝と交渉(無自覚でしょが、ルークはこの時王族としての責務をも果たしている)」「セントビナーでの救助活動(いわばアクゼリュス救助活動のやり直しなので、ルーク超がんばる)」という課題を済ませて、ようやくジェイドもアニスもルークを好ましく見つめて褒めるようになる。信用を本当に取り戻し、更には以前以上に好かれるようになるまで、結構時間がかかっています。(一ヶ月前後くらい?)
 でも漫画版では、その辺は はしょっているのですね。長い原作は適宜省略すべきだと思いますし、月刊連載の漫画で主人公が仲間に嫌われてる状態を延々続けるのは問題でしょうし、優しい雰囲気なのも嬉しいですが、逆境の中でめげずに頑張り、その姿勢で認められていくルークも結構好きだったので、それが見られなかったのは少しだけ残念だったかも。

 まあとにかく、そんな感じで。
 ルークが「みんな… 迷惑かけてごめん」「もう一度チャンスをくれないか」と仲間たちに請う痛重いシーンはすぐに終了。アニスがルークとティアの仲をからかうコミカルな空気に切り替わります。
なぁーる!! ティアが魔界クリフォトに残ったのはそういうことだったんだぁ〜!!」「ティアって!!」「ルークのことォ〜(超ニヤニヤ。だって恋バナは乙女の暇つぶしなんだよぅ。とか思ってそう。)
 とたんに真っ赤になるティアとルーク。けれども、ティアは脊髄反射のように「ちっ ちちち 違うわよ!! フォニム学の本を探してただけよ ほら!! これ!! ねっ!! 冗談じゃないわ!!」と否定してしまい、ルークの男心はグッサリとキズついてしまうのでした(笑)。

 原作には、ティアがルークとの仲を邪推・からかわれるシーンは沢山あって(殆どはアニスに指摘されるんですが、二回くらいガイにもからかわれてましたよね)、その殆どで彼女は強く、あるいはキッパリとそれを否定してきます。あたかも、イオンに「優しい方ですね」と言われたルークが泡を食ってそれを否定する態度のごとく。なんなんだこの二人(笑)。しかしティアの態度で問題なのは、ルーク当人がその場にいても同じように強く否定しちゃって、その上フォローしないところ。原作には二回くらいそういうシーンがありますが、その度にルークは傷心しているのであった。二回目の時は日記にまで書いてたし。罪な女です、ティアさん。
 しかし何気に、ルークとティアの超振動訓練の布石がなされていますね。「フォニム学の本」で。

 それはそうとこのシーン、背景に描かれている仲間たちの表情にも想像力を刺激されるものがあって楽しかった。こういうのは漫画の特権ですね。
 全力で否定しつつ不自然に話題を変えるティアと、男心が傷ついてるルーク。その二人を眺めるアニスは にまにま。ガイもニヤリ。イオンはふつー(ちょっと困惑してるよーにも見える)。そしてナタリアは。……ムスっとしてるんですよ、これが。何も言わないんですが。
 ですよね。本物のルークは別にいたと分かったのですが、レプリカのルークを本物だと信じて本気の愛を捧げて過ごした時間は七年。複雑な心境になるのが普通の人間の心理だと思います。納得。

 連絡船が故障したらしく、ケテルブルクに一晩停泊することになります。船から降りて街で宿を取ってくれと船員に言われ、「少々気は進まないのですがね」と言いながらジェイドが仲間たちを案内したのは、ケテルブルク知事邸。ケテルブルク知事にしてジェイドの妹であるネフリーが登場です。
 ちょうど先月号の外伝が娘時代のネフリーの物語だったので、「おお、あの娘さんがこんなに立派な女性に」と、妙に感慨深く感じました。

 ネフリーのジェイドへの対応は、原作とは違うように感じました。原作のネフリーは兄を慕いながらも(死を理解できないという異常性を)恐れているように思えたのですが、漫画版のネフリーはひたすらに兄を慕っている感じ。台詞回しやエピソードの流れは殆ど同じなのですが、流れる空気と言うかニュアンスが。

 そして「?」と思ったこと。「アッシュさんという方が立ち去られた理由―― みなさんはまだご存じないのですね?」とネフリーが言って、ジェイドがフォミクリー技術の生みの親であることを明かすんですが。ルークたちからこれまでの話をざっと聞いただけで、自分は一度も会ったことすらないアッシュがベルケンドで突然機嫌を損ねて立ち去った理由…彼の心理思考を、確定事項としてルークたちに語るネフリー。変なの。ここは話のつなげ方が強引で不自然だと思います。

 ネフリーは夜更けにルークを呼び出し、ジェイドの過去について語ります。子供の頃のジェイドはまるで悪魔だったと聞いて、「そっ!! そんなことねーよ!!」「確かにジェイドは嫌味っぽくて説教くさくてムカつくことも多いけど!!」「って あわわ!!」と強く言い返しちゃうルーク。おやおや。漫画版のルークは、実は現時点でただの一度もジェイドに優しい言葉をかけられたことがありません。(原作だと、ダアトで健康診断してもらったりしてますけどね。)そんな相手をここまで語気強く庇うとは、ネフリーを気遣う意味もあるんでしょうが、優しい子ですね。

 子供だった頃のジェイドは、扱う素養のない第七音素セブンスフォニムを使って暴走させ、ネビリムの屋敷を焼いて彼女を死なせてしまいます。漫画では、大怪我を負ったネビリムがジェイドを火から庇い避難を促しながら死んでいった状況が描かれていて、ジェイドの受けた衝撃が強く伝わってきました。

 ゲーム発売直後のシナリオライターインタビューでは、ジェイドはネビリムの人格ではなく、第七音素を扱えるなどの能力に一目置いていたと語られていたのですが、ゲームから一年以上経って出た公式関連物では「ネビリムに恋していた?」と取れる描写が見えるようになってきて、なんか言ってること違ってきてますけど状態なんですが。しかしその方が面白みがあっていいのかな。王道ですし。
 ネビリムに恋していた。だからこそ彼女の復活にこだわった。それを本当に認めるのに、ジェイドは二十年近くかかったということなのかな。

 ともあれ、原作に比べるとジェイドが非常に人間的に、分かり易く描かれていました。
 ルークが知事の部屋を出るとジェイドが待っている。ネビリムを復活させる気はないと語り、「私は一生過去の罪に苛まされて生きるんです」と言って。なんと! 少し悲しい顔をしながらルークにこう言うのでした。

「それに… ルーク」「いわば あなたやアッシュを苦しめているのも私の――」

 でぇええええっ!!???
 いや、ジェイドが内心でフォミクリー技術で苦しんだ人々への罪悪感を抱いていることは、既に攻略本なんかのスタッフインタビューでも語られてましたけど。
 ジェイド自身がルークに面と向かって言うとは思わなかった。しかもこんな序盤の、まだルークがホントに心入れ替えたかも分からない状況で! レプリカ編で言うならともかく! なんか段階超えていきなり超腹割ってるモードにっ。うひょああああ!! なんじゃこれぇーー!!(笑)

 ルークがすかさず「だってもう しょうがないじゃんか!!」「俺にもレプリカ作れる頭があったら絶対ジェイドと同じことしてたと思うし!!」「つーかフォミクリーってのがなかったら俺も生まれてねーってコトだろ!? うわっコエー」と喚いてジタバタして一人漫才を始めてくれたので、それ以上の謝罪がジェイドの口から出ることはありませんでしたけど。むむむ。ここ、原作のレプリカ編のモース怪物化の時の「時間を遡れるなら、私は生まれたばかりの自分を殺しますよ。まったく、迷惑なものばかり考え出してくれる」辺りのデモもちょっと混ぜてあるのかなと思いましたが、原作どおり、周囲へのストレートな謝罪よりも自分自身への批判という捩れた形で後悔や弱音を語らせてほしかったですね、ジェイドには。
 つーか、ジェイドが心情を素直にストレートに語っちゃうのは、まだこんなところで使うには早すぎる最終兵器だと思うんですっ。←なんだそれ

 まあともかく、ルークの子供っぽい慰めにほだされて、ちょっと微笑んで肩の力を抜くジェイドという、なにやらほのぼのした雰囲気で今月分は終了でした。

 …アクゼリュス崩落の責任を取るためのルークの悲壮な決意は なんとなく有耶無耶にされて、どっかに飛んでっちゃいましたヨ…。しかし少年少女向けの活劇漫画としてはこれで正しいのかも。
 コミカルなシーンが多くて、キャラ同士のほのぼのしたやり取りが複数入っていて、今回は喜んで読んだ読者が多そうだな〜と感じました。

 次回はいよいよカースロットでしょうか。どんな風になるのかなー。あぁーワクワクぅ〜〜。


余談1
 今回はミュウが全然喋らなくて寂しかったですが、何気にルークの頭に乗っかってたりして和ませてくれました。
余談2
 全編で「ケテルブル」と書かれてましたが、「ケテルブル」が正解。
 間違えやすいですよね。私もサイト立ててしばらく間違えていて、ある日突然気づいて慌てて全修正しました。
 単行本になる時は修正されるんでしょうか。
余談3
 どーでもいいレベルの話ですが、ページの外枠にある人物紹介、ルークのやつとかいい加減書き換えてくれないかなぁ…。絵は短髪に差し替えられてるのに。全体の人間関係が変わっているのに、最初期の紹介のまま いつまでも直されない。

 

12月号

 今月で連載二周年なんだそうです。もうそんなになるのか…。ということは、二年弱で外殻大地編を消化したんですね。『アビス』は三部構成になっていますが、外殻大地編が一番短いです。物語が完結するのに果たしてどれくらいの時間がかかるのか。そしてその頃まで掲載誌の『電撃マ王』は生き残っているのか。田舎の本屋でもずっと売っててくれるのか。色々と予断を許しません。

 今回の扉絵は短髪ルークが腰の剣に手をかけて歩いていく背中のアップで、印象的でした。こういう系統の絵を見ると、私はレプリカ編終盤のルークを思い浮かべます。色々と辛いことがあってもそれを抑え、立ち向かっていったイメージ。「男の背中」ってヤツです。そんな手前勝手なイメージで恐縮なのですが、好きな扉絵だと思いました。


 さて。
 これまでは漫画を読んだらすぐに感想を書いていたのですが、今回は一週間以上手をつけませんでした。というのも、私という人間ときたら埒もない愚痴といやらしい突っ込みしか感想を言えないのだなぁと、つくづく思ったからです。
 漫画の後ろに付いている読者のお便りコーナーを見ると、作品への純粋な喜びや感動、キャラクターへの愛情や今後への期待、漫画の作者さんに対する敬意や労いの言葉がキラキラ溢れていて、これこそが「正しい感想」なのだと、今更ながらに自己嫌悪する思いでした。

 といって、こうしてまたいつもの感想を書いていることでお分かりの通り、自分の書きたいものを書きたいように書きたいんだ、と開き直るだけなのですけども〜。ならグダグダ言わずに黙って書けってな話なんですが、まあ、言い訳です。(^_^;)

 そんなわけでして、以下は、「今月号はもう本当に面白かった。この素敵な読後感を誰かと共有したい」と思って感想サイトを見て廻っている方にはオススメしません。別にけなしてるつもりもないですが褒めてないので。



 今月分の実も蓋もない総感。
 ジェイルク強化キャンペーン継続中。

 もうグランコクマまで話が飛ぶのだろうかと思っていたらばケテルブルク港の朝から開始でした。キムラスカの密航船が来ていると騒ぎが起こります。それはアルビオール二号機で、ノエル、イエモン、アストン、タマラの四人が乗っていました。(初号機で飛行して)アクゼリュス崩落跡から断層が伸びているのを空から見た、だからセントビナー崩落の危険を報せに来たとノエルが言うのですが、開戦間際の時期に密入国して治安を乱したとしてマルクト軍が拘束。けれどルークが「ジェイド!! なんとかできないか?」とお願いしますと、ジェイドが「やれやれ… 仕方ありませんね」と兵士に口をきき、その場で解放させてくれました。すごい権力者です。

 ノエルたちからセントビナー崩落の危険性を聞いたルークは、「アクゼリュス崩落や最近の地震はキムラスカの譜業兵器の仕業」と人々が噂しているのを聞いたばかりだったこともあり、すぐにもセントビナーへ行って人々を助けたいと訴えます。けれどジェイドは皇帝に避難命令を出してもらう方が効率的だとやんわり反対する。この様子を見ていたアストンがセントビナーとグランコクマ両方に運んでやろうと言い、一行はアルビオールでセントビナーへ飛び立つのでした。
アルビオール二号機。実はここまでは水上走行で来ていて飛行はこれが初めてだと発進間際に聞いて、降ろしてくれと泣き喚くガイとアニスのギャグ入る。

飛行するアルビオールの艇内にてルクティアイベント入る。自分の超振動は破壊の力だと卑屈になるルークに、ティアが近いうちにあなたの力が必要になる気がすると予言めいたことを言って音素学の本を渡す。自己向上を決意して早速本を開くルークだったが、理解できずに脳みそショートというギャグで締め。

 セントビナーに着くと、マクガヴァン父子が避難するかしないかを巡ってケンカしています。ルークはミュウを振り回して火を吹かせ、二人を止めます。オイオイ。(ーー;)

 ジェイドが「私が責任を取りますよ。このあと陛下からお叱りを受けるであろうことに大差はありませんからね」と諦め顔でグレン将軍に言ってのけ、避難活動が開始されます。
ジェイド! この調子なら みんな無事に避難できそうだな!!」「ジェイドのおかげだ!! ありがとう!!
 明るい笑顔で厚く礼を言って避難活動に頑張るルークを見守り、フッと微笑むジェイドなのでありました。

 そこにカイザーディストに乗った(ホントに上に立ってた。飛行椅子は無し)ディストが出現。「おとなしく導師イオンを渡してもらいましょうか!!?」とジェイドに襲い掛かり、譜術で背後のルークたちを守った彼に向かって「ネビリム先生のことは諦めたくせに…!!!」と憎しみ溢れる表情で言ったところで次回へ続く、でした。


 この漫画版は原作にある色んなこと、特にキャラクターの過去や生い立ちに起因するであろう性格・言動の描写をカットすることが多いのですが、今回もそれが満載でした。それはそれで仕方がないのだと思います。原作とは結局別物なのですし、出来るだけ枝葉を落としてスッキリさせるのが正解だとも思います。

 例えば、原作では老マクガヴァンはジェイドを「ジェイド」または「ジェイド坊や」と呼んで特に目をかけていますし、その息子のグレン将軍はどうやら(皇帝や父のお気に入りである)ジェイドに良い心証は持っておらず、常に皮肉な口をきいてくるのですが、漫画版では完全にカットされ「無い」ことにされています。老マクガヴァンはジェイドに「助かったよカーティス大佐。生きておられたとは何よりだ!!」と言います。原作とはまるで別人です。(つーか、原作のグレンの台詞を微改変して老マクガヴァンに流用しちゃってる。)グレン将軍は素直にジェイドに従うだけで、原作ではあれほど強く見えていたジェイドに対する劣等感や反感がまるで出ていません。

 この、キャラクターの背後関係から起こるはずの言動を無視するという傾向は、この漫画では最初から顕著で、なんとメインキャラクターもそうなっています。

 たとえば、ガイ。原作では外殻大地編の時点から彼が内面に抱えている暗い部分、悲しい過去がチラチラと見え隠れしていますし、アッシュが本物のルークだと分かると、彼に対して非常に冷たい態度を取ります。それはガイが復讐者だったから。滅ぼされたホドの遺児という過去を持っていたからで、ちゃんと意味がある言動なのですが、漫画版では全て無視されています。現時点で、ガイはただ「誰に対してもいい人」なだけです。
 そしてナタリア。恐ろしいほどに彼女の内面に由来する描写がありません。「オリジナルルークを想っている」ことしか語られていることはないのです。もしかするとこのまま、たまに切なげに「アッシュ…」と呟くしか存在価値の無いキャラにされるのではないかと恐怖を感じるほどです。

 今月号のナタリアは、特にひどかった。喋るどころか、顔が描かれることすら一コマもありませんでした。その他大勢の群集に混じった小さい姿が四コマくらい出ていただけです。王族としての自負と使命感が強く、ルーク曰く「正義魔人」であるところのナタリアなら、港で騒ぎが起こっていれば真っ先に出て行こうとしたでしょう。なにしろ捕まっているのはキムラスカの船だと言うのですから。でもこの漫画のナタリアは壁の絵です。

ナタリア、飛び出そうとする→ガイ辺りがここはマルクトだぞ自分の立場と状況を考えろと言って慌てて止める。(ガイは触れないんでルークが抑えるのがいいですね)→幼なじみ組が軽くもめる様子を見たジェイドがヤレヤレ仕方ないと、出て行ってアルビオールの乗員たちを助ける
 くらいの動きがあってもよかったのになぁ…。そんでアストンたちとナタリア殿下の会話は必須だと思うのですが。なんで漫画版では喋らないの?

 ナタリアが「正義魔人」なのは、王族として相応しい人間であることに自分の存在意義を見出していたからで、それは不義の子と中傷されていた辛い子供時代に起因しています。また、王族に相応しい人間で在ることはオリジナルルークとの約束でもあります。ちゃんと意味がある言動なわけですよね。しかし無視されています。

 勿論、前述のように原作とは別物なのですから、触れないのならそれでもいいのですが、前号と今月号でのジェイドの扱いを見ていると、どうにも不安になってしまったのでした。つまり、ある回から唐突に「ガイルクキャンペーン」なり「ルクナタキャンペーン」が起こり、それまでまるで顔に出しもしていなかった悩みをガイやナタリアがそれぞれペラペラ喋りだし、ルークが一足飛びに彼らを深く理解しているという顔をするのではないかと。(まあ、この二人は幼なじみという設定なので、まだマシなんですが…。同じ調子で「ルクアニキャンペーン」や「ルクイオキャンペーン」までやられたら目も当てられない。)

 最初に「ジェイルク強化キャンペーン」とふざけて書きました。本当にジェイルクがお好きな方はもしかしたら気分を害したかもしれないので申し訳ないです。ジェイドとルークが心を通わせるのはいいのです。原作でも、二人は最終的にかけがえの無い友人同士になりました。
 でも、そこに到達するまでには長い時間が掛かったのではないでしょうか。

 前号の感想にも書きましたが。漫画版ではルークは一度もジェイドに優しい言葉をかけてもらったことがなかった。ジェイド含む仲間たちは(ティア以外)全くと言っていいほどルークに絡まず、たまに文句言うくらいで空気でした。なのにネフリーが兄は死を理解できないと言うと、ルークは非常に語気強く否定します。
 原作のこのシーンでは、ルークはあやふやな口調で「そんなことないと思うけど…」と言うだけです。この頃のルークにとって、ジェイドはまだよく分からない他人だったからだと思うのです。きっといいヤツなのだ、と思うけど、まだ深く知らなかった。それが長い時間かけて互いに理解して信頼関係を築いて、最後には年齢差も経験差も立場も超えた友情を結んだ。

 でもこの漫画版では、「もう崩落編になったんだからいいでしょ」とばかりに、あらゆる段階を跳び越えてルークとジェイドを互いに心通わせました。仲間なんだから理由なく仲良くて当然、と言うかのように。
 しかもジェイドとルークの関係がクローズアップされると、たちまち(ティア以外の)他のキャラがルークに絡まなくなる。ルークはジェイド(とティア)とだけしか ろくに会話をしない。恐ろしいほどの単線構造です。

 あんまりひどいと思いました。
 先月号を読んで少しイライラしてたんですが、仲良くなったジェイドとルークは可愛いですし、解り易いですし、コミカルなシーンが増えて物語のトーンも明るくなりましたので、今までよりも喜ぶ読者は多いだろうとも思いました。漫画としてはそれがきっと正解なんだろうと。
 でも。今月号分を読んだらまだその調子が続いていたので、ちょっとばかりやさぐれた気分に。ずっとこの調子か。けど、この漫画が対象としている大多数の読者は喜んでいるだろうと思うので。ひねた視点の私は駄目だなぁと。こんな感想読んだ人は厭な気分になるだろうなどと色々考えました。考えた結果、これまでどおり思ったことを普通に書いていこうと決めましたが。まあ世の中には変わった人間もいると言うことでご容赦ください。


 セントビナーでルークが避難活動に頑張るシーン。漫画版では微笑みつつ見守っているのはジェイドだけです。
 でも、原作では仲間たち全員がそれぞれの視線でルークを暖かく、嬉しそうな顔で見つめていたんですよ。
 私はこのシーンが好きでした。「戦争を回避する」という大義名分のために集まっていた立場も何もかも違う烏合の衆が、ここでようやく、感情の面で繋がりだしたように感じたからです。頑張るルークを中心にして。

 でも漫画版ではジェイルクだけのエピソードになっちゃいましたよ。ルークを温かく見守っているのはジェイドさんだけです。ルークもひたすらジェイドだけに頼ってジェイドだけにお願いしてジェイドだけにお礼言ってます。な ん だ こ れ。ガイもアニスもナタリアもイオンも、キャンペーン中はルークと会話する資格すらないのか。

 ジェイルクキャンペーンは恐らく来月も続くものと思われます。ジェイドが活躍するのは嬉しいけど、もうちょいバランスよくエピソードを作れないものなのかなぁ…。

 つーか、この時点でこんなにルークをジェイドに懐かせたということは、セントビナー崩落後にジェイドが だだをこねるルークをキツく叱るエピソードはやらないってことでしょうね。ルークがこんなにジェイドを好きになってる状態でやったら、話が宙に浮くから。(原作のアレは、ルークがまだジェイドを理解してなくて、嫌われてると思ってて、だから叱られてへこんで、ところが叱るのは嫌いだからではないと知って、冷たそうに見えてた人も自分を思いやってくれてる、世界には敵意ばかりがあるんじゃないと理解して視野が広がるとゆー話なので。)


 さて。アルビオールを現時点で入手ということは、テオルの森のエピソードは確実にありませんよね。ガイのカースロットネタは完全になくなった? ベルケンドでヴァンと再会した時にヴァンの口から復讐者だと明かされるエピソードにまとめるのかな。移動経路が原作とは異なっていますので、どう展開していくのか楽しみです。

 そんで。漫画版のディストはシリアスキャラなの?


余談1
今月も「ケテルブルグ」と書いてありました。
思わずこれが正解なのだろうかと不安になって確認し直したりしてみましたが、やっぱ「ケテルブルク」…ですよね。漫画版ではずっとこのままなのかな。
余談2
崩落編二回目の今月も、人物紹介はやっぱり初期のまま差し替えなしであった。もしかしなくても最終回までこのままなのか。見ちゃうとなんか気になるので、来月からはなるべく人物紹介欄は見ないようにします。(^_^;)

 

1月号

 1月号ですが2007年11月末発売なのでここに記載します。

 セントビナー崩落開始。原作では戦闘の間は一応平常で、カイザーディストを地に倒すと、その振動が駄目押しになったかのように崩落が始まった感じでしたが、漫画版だとどうだったんだっけ…。(先月分読み返す)…ああ。カイザーディストの現れる直前から不穏な地震が起き始めていたのか。

 導師を渡せと言いながらイオンを目で探そうともしないディストは、ただジェイドにちょっかいを出しに来ただけに見えます。

 走って逃げるジェイド(とついでにルーク)をズシンズシン追いながらバルカン砲やレーザーを間断なくぶっ放すカイザーディストの上に直立して、けたたましく哄笑するディスト。すげーバランス感覚です。椅子はおろか手すりすらないのによく直立したまま揺れもせず、転げ落ちもしないものだ。この人は電車の中でも吊革を必要としないのだきっと。笑い続けてて舌も噛まないしなぁ。…実は本体は中に乗って操縦してて、上に立ってるのは立体映像とか、そういうカラクリなんだろーか。

 ここでいきなりギャグになります。ジェイドに耳打ちされたルークは、意味がよく分からないまま、指示されたとおりに「やーい!! 鼻たれディストー〜」と子供っぽく囃し立てる。ディストは子供のように涙目になって激高し、ジェイドそっちのけでルークを追う。「鼻たれ」は彼の逆鱗らしい。一層凶暴になったカイザーディストに追われて、ルークも涙目になって町中逃げまくる。

……あいつら何やってんだ? ピンチじゃないのか?」と汗タラでポカンと突っ立って見てるだけのガイ。充分ピンチだと思うのですがバルカン砲やレーザーを撃たれまくってるんだし。当たっても追い付かれて踏まれても死ぬけどなァ…。この追いかけっこのシーンだけ「撃たれても死にません」的ギャグ世界に移行している模様。『アビス』でそれが許されるのはディストだけだと思ってたぜ〜。

 ともあれルークがオトリになってくれてる間にアニスはイオンをアルビオールに退避させ、ティアとナタリアは市民たちの避難を進めます。そして街を見下ろす展望台に移動していたジェイドが実にカッコヨク登場。パンパカパーン。譜術を唱えてカイザーディストを一撃破壊。でも何故かディスト自身は無傷で、吹っ飛ぶことすらなく、その場にドサッと座り込んだだけでした。どういう破壊のし方なんだろう? ジェイドは料理に嫌いなものが入ってた時、より分けるのが上手そうだなァと思いました。(それともマジに上に立ってたのは立体映像で本体は離れた場所にいたのか。カイザーディストが譜術の氷の柱に貫かれた画面にディスト描かれてないっぽいですし。

 カイザーディストを倒してから避難活動を続け、最後に残った一部の住人を乗せてアルビオール離陸! …したら、船尾にディストが操縦するカイザーディストが取り付いてきます。

「この船に導師イオンもいるのでしょう!? 渡してもらいますよ… 私とジェイドの理想のために!!
 計画が果たされれば そう――彼女にさえ会えれば ジェイドはあの頃の彼に戻れるのです!!」

 一人ディストと対峙するルークは、彼を睨みつけます。

「おまえとジェイドの間に何があったの知んねーけど これだけは俺にもわかるぞ
 ジェイドはもうおまえの言うようなジェイドじゃない!! おまえとジェイドは違う!!!

 この漫画では誰よりも深くジェイドのことを理解しちゃった(?)ルークです。ジェイドのために激怒したルークは、ジェイドのためにもディストをやっつけるべく、捨て身の勢いでカイザーディストに跳び移って操縦桿を奪い、ディストと共に自ら空中へまっさかさま。早くも自己犠牲かよって感じでそのまま投げ出されて彼方に消えていく。悲鳴をあげるティア、険しい表情で驚くジェイド…。

 ってところでジェイドかティアがルークを華麗に救っていたなら、ここ数回をかけて構築されていた特定の人間関係だけが突出して完成していたところでしたが、救ったのはアニスだったんで私が救われた。

 再起を誓うルークに(原作では)冷たかったジェイドとアニスがこのようにルークと心通わせたりルークを助けたりして、この問題に一応決着つきましたよというサインなのかな。ルークの無茶に怒ってプッツンしながら叱ってたアニスが可愛かったです。それを見守るティアとジェイド。体の弱いイオンは機室内に留まって当然としても、ルークの幼馴染のナタリアや親友のガイがその場に来てすらいねぇのは個人的にこの二人とルークの仲良しぶりが好きだったのでちょっと泣けた。

 ちなみにディストは飛行椅子に乗ってシリアスに逃走していきました。やっぱ漫画版ではこの人はシリアスキャラなのか…。

 そしてふと気づけばルグニカ平野で戦争が起こっていたので、このままじゃ崩落で両軍全滅する、大変だよーってところで今回は終わり。

 

2月号

 2月号ですが2007年12月末発売なのでここに記載します。

 どーでもいいけど今月号は本自体がやたらと薄かったんですが何だったんだろう。

 冒頭の戦争シーンの暴力描写がスゴいです。戦争は怖いです。

 グランコクマ宮殿へ行き、ピオニーと対面。カースロットのエピソードがないので、まずはイオンが交渉開始。続いて、ナタリアとルーク、二人の若きキムラスカ王族が懸命に崩落の危険と停戦を訴えます。

 ここで「敵国の王族に名を連ねる貴公らが なぜそんなにマルクトのことで必死になる?」とピオニーに問われた二人が、じっと互いに顔を見合せてから、それぞれの理由を口にして、二人でピオニーを見据えて「みんなを助けたいんです!!」とはっきり言ったのはすごく好きなシーンです。

 ピオニーは例のピオニー節を発揮してルークを戸惑わせますが、話を聞いてくれて、速やかに停戦のための議会招集を命じます。原作では議会の反対にあって動けず、実働をルークたちが担わねばなりませんでしたが、漫画版のマルクト帝国はひたすらカッコイイ国です。周囲の廷臣たちも誰も反対しないし。今のところ醜さを全く見せていません。更にピオニーは、わざわざルークの前に歩み寄って「ルーク殿」「セントビナーでの件はジェイドから聞いた」「おまえさんたちは俺の大事な国民を救ってくれた恩人だ」「感謝する」と笑って握手を求めるのでした。嬉しさで胸がパンパンになった感じのルーク。よかったね!

(しかしそれ以上の見所は、その次のコマに描かれているデフォルメ点目ルークかも。なんじゃこれカワイイぞ 笑)

 その後、「ディスト」=「サフィール」であることがアニス絡みのコミカルエピソードで説明されてましたけど、考えてみれば漫画版ではまだ「アニスとディストは以前からの知り合い」「アニスのトクナガはディストが作ってくれた」という設定は語ってないんでしたっけ??

 ノエルが自主的に残ってくれて、専属パイロットとして働いてくれることになりました。他のシェリダンメンバーはもうシェリダンまで送って行ったそうで。…ディストと戦ったのがその日の昼で、その時点でどうも夜らしいのですが、半日もしないうちにシェリダンまで行ってまた帰って来て、すぐに出発って、いくらなんでも無茶ではあるなぁ…。ノエルはいつ寝ているのだろう。

 原作ではポリゴンしか絵がないこともあって、私のノエルへの印象って(いつも笑顔ではあるけど)どこか固い、わりと真面目で優等生的な女の子だったのですが、漫画版のノエルは表情が豊かでとてもチャーミングな女の子でした。レプリカ編からほの見せるルークへの仄かな好意は漫画版でも語られるのでしょうか。くそぅ! こんな可愛い女の子に密かに好かれるなんて、ルークは憎いやつだな!(しかもてんで気付かない)

 崩落を止める手段を求めてユリアシティへ向かいます。その艇内で、実に久しぶりに(いや…もしかすると漫画版ではこれだけの人数でニコヤカなのは初めて?)、ルーク、ガイ、アニス、ティア、ナタリアが一つの空気の中で和やかに談笑してくれたので本当に本当に嬉しかったです。よかった〜!

ガイうーむ しっかし ルークがピオニー陛下から握手を求められるとはなぁ… ちょっと前までなら世の中がひっくり返ってもあり得ないことなのにな
#怪しむ素振りのガイ。アニスもうんうんと頷いている。苦笑気味に言い返すルーク
ルークどういう意味だよ!?
#ガイ、ニッと笑う
ガイ「いや 天変地異も悪くないってことさ」
アニス「まぁ…ね」←ツンデレ ツインテール少女
ルーク「? ?」←分かってない
#ティアとナタリアは嬉しそうにそれぞれ微笑んでいる

 原作のセントビナー救助作戦の時、仲間たちがそれぞれ頑張ってるルークを嬉しそうに見つめるシーンがあったのに、漫画版ではそれを改変してジェイドとだけのやりとりにしていてガッカリしたと前々回の感想に書きましたが、「仲間みんなが」ルークの頑張りを嬉しく思っている描写が、遅れてここに入って来た、みたいです。おぉお。嬉しーなぁ。

 あと、ガイの言ってる「天変地異も悪くない」ってのは、ユリアシティでの断髪直後、ルークが「ありがとう」と言ったのにガイが青ざめて「天変地異の前ぶれだ」と騒いでたオリジナルエピソードから引いてるんですね。色々細かいネタも絡み合うようになってきて、読者の楽しみが増えまする。

 さてルークの方は明るいのですが、イオンが卑屈になって落ち込み始めます。原作では戦争イベントでエンカウント率が高いと見られる、導師なのに開戦を止められなかった無力な自分を悔やむエピソードが挿入されます。当然ながら、みんなが暖かくイオンを励ますという展開になるんですけど。驚いたのはここで、ルークが個人的にイオンに謝るオリジナルエピソードが挿入されていたこと!

「あ… あのさイオン… ずっと言わなくちゃって思ってたんだけど」「いつだったかは…酷いこと言ってごめん」「俺――イオンのこといらねぇなんて思ってないから!!」

 ほー…。

 漫画版ではザオ遺跡脱出後に言ってた「今はイオンがいなくても俺がいれば戦争は起きねーんだし!!」って言葉のことですかね。心の底でずっと気にしていたんでしょうか。その場で謝れたらベストだったんでしょうが、時間はかかったけど謝れた、と。漫画版のルークはよい子です。うん。

 魔界クリフォトに突入したところで次回へ続きます。

 わざわざグランコクマからは遠いアクゼリュス崩落跡を使っていましたが、あれ? 漫画版ではセントビナーってまだ崩落してないんだっけ、と混乱。…確かに崩落した描写がないししたとも言われてないですね。
 しかし次号ではシュレーの丘が魔界にあるし…んん? (@_@;)
 色々設定が原作と異なってきて、よく考えないと分からなくなってきた予感。

 

余談。
 12月号分で「譜業」に「ふぎょう」と読み仮名が振ってあったんで「?」と思ってたんですが、今月号分にも同じ読み仮名が振ってありました。
 原作ゲームやラジオドラマだと「ふごう」と発音してるように聞こえてたんですが、単に私の耳が悪いのかなとも思った。ちょっと気になったんでメモ。

 



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