『電撃マ王』2010年連載分アスキー・メディアワークス/『電撃マ王』/玲衣 『電撃マ王』連載の『アビス』本編コミカライズ。 連載開始が'05年の秋でしたので、今年で五年目になります。『アビス』の商業二次中、時間面では最も恵まれていた作品と言えるでしょう。
3月号'10年1月末発売。 イオン死亡まで。ページ数はとうとう18。連載の最盛期は一回40ページ以上だったことを思うと、何かの衰退が感じられて多少物寂しくはあります。なお、次号は休載です。
アニメ版のそれの原型は、SD文庫小説版の独自アレンジ(巨大譜石の上で預言を詠んでいたイオンをルークが止め、抱きかかえて飛び降りると譜石が粉々に砕ける)かと推測してます。回り巡って、複数の商業二次で解釈や演出が混じり合って変化発展していくのを見るのは面白いです。長年、様々な人間の手に渡ってきたからこそですね。
イオンが ただしそのままではなく、恐らく『エピソードバイブル』イオン小説の要素を加え、更に膨らませてありました。アニスの両親は檻に入れられておらず、両手を拘束され、怪我をしてボロボロの状態でアニスの後ろに座らされています。父のオリバーが「おまえには苦労をかけどおしだった… すまないアニス」「イオン様をお助けしてくれアニス!!」「アニス 私たちのことはいいから――」と言いかけますが、その場で アニメや原作のアニスは身体を強張らせて立ち尽くしていましたが、この漫画のアニスは地面にへたり込んで涙を浮かべています。惨めで頼りなく見え、より同情・共感を得やすい演出です。 ところで、アニスの父・オリバーの髪色はダークブラウンなのですが、この漫画では白抜きで描かれていました。 へたり込むアニスの背後に影処理を施した 「 と揶揄を込めた会話をさせることでアニスの境遇を知らせた演出は、とてもイイなぁと思いました。コンパクトで解りやすいですし、悪意ある第三者に酷評させたことで、アニスがいっそう哀れに感じられます。
イオンの詠む 独自アレンジとして、乖離し始めたイオンにナタリアが治癒術をかけるが効かない、助かるよなとルークに訊かれたジェイドが苦しげに黙して答えない、というエピソードが加えられてありました。 イオンはティアの手を取り、「言った…でしょう? あなたを…瘴気(ママ。障気の誤字)から救う…方法があると」「…ほら」「ね…」「これでティアは」「大丈夫」とぐったりしたまま言う。 原作では、同じ性質の
僕の代わりはいますと言うイオンに、ルークが泣きながら「馬鹿野郎」「代わりなんているもんか レプリカだってなんだって」「おまえだけだ」「俺と一緒にチーグルの森に行ったのは」と倒置法で言う。目を見開き、嬉しそうに微笑み涙ぐみながらルークの手を握り返すイオンを大アップで。 独り立って涙を流しているアニスに顔を向け「アニス…」「おいで」とイオンは呼び、微笑んで右手を差し伸ばす。 「いいんですよ アニス」「全部…知っていました」 驚いたアニス、しぱし呆然とし、どっと涙と謝罪の言葉を溢れさせる。イオンも涙を溢れさせつつ微笑んで 「アニス」「僕の一番」「大切な――」 アニス駆け寄って、差し伸ばされた手を取ろうとするが、直前にイオンは光になって消滅。 これは、アニメ版のシンク消滅シーンに似ている(元にしている?)ように感じました。乖離して消えていくシンクにアニスが駆け寄って抱き締めようとするが、直前に消えてしまう、という奴。 愕然とする仲間たちの表情を各自コマで。ちゃんと、ティアに涙は流させてなかったので嬉しかったです。ジェイドやガイも涙なし。アニスは大アップ。アニメ版では最後にイオンの名を叫ぶ役をルークに変更していましたが、原作通りアニスに叫ばせていました。 今回はここで終了です。
気になったのは、イオン死亡シーンでアリエッタの姿が一切描かれなかったこと。 原作やアニメ版とは違い、この漫画のアリエッタはこの場に立ち会っています。ルークたちがセフィロトに駆け込んできた場面に小さく描かれてましたから。けれど、その後イオンの側にいないし、イオンが消えた場面、ミュウの表情すら専用コマで描かれているのにアリエッタのはない。 イオンの死の場面にアリエッタを立ち会わせるパラレル変更をしたならば、彼女とイオンの会話を創作してくれてもよかったのにな、などと思いました。どんな会話をしたのか興味があります。 恐らく次回、その場でアリエッタがアニスに決闘を申し込む展開になるのでしょうが、今回のアリエッタは殆ど空気でした。
それと。 全く個人的な思いですが、私はやはり、「イオンはアニスの裏切りを知っていたが黙っていた」という設定は好きではないな、と思いました。それは、私が「裏切りを知っていながら黙っていること」を、必ずしも優しく立派な行為だとは思わないからなんですが。 この漫画のイオンは「全部知っていました」とまで言ってます。前半で イオンは知ってて騙されたふりをしていたんだから、厳密にはアニスはイオンを騙していない、イオンの広い愛にアニスの心は救われた、と言いたいのかなと思いますが。 どうなのでしょう。イエス・キリストはユダの裏切りを知っていたという説もありますが、知っていながら黙って死を受け入れるのは優しさなのでしょうか? ユダは永遠に裏切り者として名を残すことになったのに。 なにもかもファミ通攻略本の辞典コンテンツを書いたライターさんのせいだ、と根拠のない逆恨みをしてみます。 シナリオライターさんの構想がどうだったかは知る由もありませんが、原作時点のイオンはアニスの裏切りを知っていたとは言っていません。イオンは知っていて優しさから黙っていたと初めて書いたのはファミ通攻略本です。それ以降、ドラマCDもファミ通小説もその設定に沿って語られました。後に原作シナリオライターさんの書いた『エピソードバイブル』イオン小説では、「怪しんでいたが、アニスに去られるのが怖くて確認できなかった」という、知っていたとも知らなかったとも言える、中庸的な設定になりました。これなら納得かと思ってたのに…。 この漫画で「全部知っていました」と断定され、それがアニスにとって救いになる感じで語られて、もやもや気分がぶり返してしまいましたよ。
今号と同時に単行本第七巻が発売されたので、単行本収録分のあらすじを紹介した特集ページが設けられていたんですが、そこに漫画家さんのコメントがありました。 最新刊は、今までで最もアレンジを取り入れた内容です。「無難にまとまるのではなく、大胆に!」をモットーに、この4年半ずっと「おもしろいコミカライズってなんだろう?」と四苦八苦してきました。初めての漫画連載、既刊を通しての作品の変化が、そのまま私の成長の記録です。創刊以来ずっとお付き合いいただいてきた連載も、いよいよ残すところあともう少し……よろしくお願いします! オリジナル要素を入れたいというのは、アニメ放映期間中のインタビュー記事でも仰っていたように思います。思い返してみますと、連載開始直後の頃は、ゲームのプロデューサーさんに「(話の進行が)ゲームそのままだから驚いた」と言われてて、タルタロス脱出辺りで初めて大規模なアレンジ(ストーリー短縮)を入れ始めたんでしたっけね。その後は基本、短縮アレンジ。地核突入作戦のみ、何故か原作以上にゆったり描き。引き換えに崩落編終盤は全部カットという大胆進行。 私は一介の読者ですけども、このコミカライズを読みつつ、面白いコミカライズ、理想の商業二次ってどんなものだろう、と考えたことは何度かあります。そう考えさせるような高低左右の波が、この漫画にはあった気がします。
5月号'10年3月末発売。一ヶ月の休載を挟んでの再開です。やはり18P。この感想を書いている時点でもう二回分進んでますが同じ頁数。単行本残り一巻に最後まで収めるのだろうことを思えば、これで固定でしょうか。
原作とアニメを再構成し、独自な形で、けれど大枠からはみ出さずに描いています。 マルクト軍のエルドラント砲撃からスタート。これはアニメ風の描写ですね。プラネットストームに阻まれ当たらないと報告を受け愕然とするピオニーの元に、謎の一万人がルグニカ平野を南下中との報告。ノルドハイム将軍がアップなのは珍しいなー。 場面変わり、平野を徒歩で移動していく一万人のレプリカを高台から見つめるラルゴ。レプリカ情報保管計画の筋書きが狂ってレプリカたちは行き場を失った、彼らは一番の犠牲者なのかもしれん、などとアンニュイに呟いています。 彼の腹にはアリエッタが抱きついていて、泣きながらアニス許さないと怨嗟の言葉を吐いています。決闘申し込み場面は後回しの模様。 そんなアリエッタを切なげに見つめ、メリルの写真の入ったロケットペンダントを握りしめると、犠牲に優劣などない、誰しも行き場のない無念を抱えているとラルゴは言うのでした。 で。その台詞を被せつつ、場面は「行き場のない無念を抱える」一人、アニスに移ります。飛行中のアルビオール内の倉庫みたいなところで、膝を抱えて窓際の壁側にうずくまっている。そこにルークが来て、黙って隣に座ります。 この場所、地核振動停止作戦前やアブソーブゲート決戦前にルークとティアが 一方的に、つらつら身の上と懺悔を語りだすアニス。ふいにルークに呼び掛けて顔を上げ、1Pの2/3を使って、精神的にヤバげな泣き笑いの顔・大アップ。
イオン (アニス)(あなたがいてくれて…よかった)(ありがとう) #定まらない視線で頭を抱え、涙を溢れさせるアニス アニス「…あ」「あ あ」「イオン様 イオン様が死んじゃった」 #視線をさまよわせているアニスを悲しげに抱き寄せるルーク ルーク「アニス…」 アニス「私のせいで… イオン様 イオン様!!」 #アニス、ルークにしがみついて号泣する アニス「あああああああああ」 個人的には、ここの描き方は原作やアニメ版の方が好みかな、と思いました。 アニスが壊れかかったみたいなひきつった泣き笑いしたり視線が定まらない様子で頭抱えて泣き喚いたり。明らかに尋常じゃない様子。彼女の辛さはよく伝わりますが、表現のボルテージ上げ過ぎで、ちょっと引いちゃったナリ……。(^ ^;) 場面は変わってベルケンド(字幕で都市名入れてあった)。ティアの 「レプリカの身体は ……はあ? アストンが辛そうに目を伏せ、スピノザが世界を覆う障気濃度図をモニターに映し出す。既に小動物は死に植物は枯れ始めているそうです。何だろうこの唐突描写。(そりゃ、台詞では予め障気障気言ってましたが…。)アニメ版そっくりの描き方。悪いところは真似なくてもいいのになあ。 どうにかする方法はないのかと問うルークに、スピノザが方法はあると言う。 「ルーク」「おまえさん…」 ガビーンとなるルーク、「一万人も死なせるっていうの!? イオン様みたいに!!?」と泣き喚くアニス。そうだろう無理だ術者も死ぬし増幅装置もないと言うスピノザ。そこに体調悪そうな顔したアッシュが自動扉をプシュと開けて現れて「いいや…不可能じゃないぜ」「その計画!!」と言ったところで今回は終了、でしたが。 なーんじゃーこれーーー……。 一つの仮説が証明された、とのたまうジェイド博士。 あのー。イオンがティアの障気を引き受けたことは、ルークが超振動で惑星を覆う障気を消せる証明にはなりませんよ。 何故なら、イオンは《同じ属性の イオンがしたこととルークの超振動は、全く別物です。 また、一応言っておくと、イオンが消えたのはティアの障気を引き受けたせいじゃない。消えるついでにティアの障気を持って行っただけです。 超振動による障気中和に大量の第七音素が必要なのは、人の命(レプリカの乖離)が必要なのではなく、超振動を起こすエネルギーが必要だからで(超振動は第七音素同士を共鳴させ合うことで発生する)、「イオンの時とは(使う命の量が)違う」と比較すること自体がナンセンスです。 たった数ページの間で、言ってることの辻褄が致命的に合ってない。読んでて「…あれ? あれれ?」と混乱しました。 何回か前の、ティアの譜歌による障気中和からルークの超振動による障気中和を導き出す独自の筋付けは、原作以上に上手いなあと感心したのですが、今回は根本的におかしいです。 アニスが、イオンの死とルークやレプリカたちの犠牲死を結びつけて拒絶するのはいいんですよ。でも、科学者のジェイドやスピノザが、全然違うことを並べて「仮説が証明された」なんてトンチンカンなこと。 申し訳ないけど、ガッカリな回でした。
6月号今回から、四回かけて障気中和が語られます。第一回目。 冒頭、(やっとそう呼ばれた)エルドラントにて独り舞台俳優状態なモース様。 場面変わり、死んだ人間のレプリカが出現して街が混乱、というエピソード。1ページ半を割いて、言葉の説明だけでなくエピソードで見せていました。 後のページでそれを報告するジェイドの台詞中に「当初は亡くした近親者などを歓迎する向きもありましたが…」「現在では拒否の色も目立ってきていると」とあって、僅かに原作を膨らませた視点アリ。(原作時では、死者の復活への拒絶しか描かれていなかった。) 原作とは異なり、各国首脳はユリアシティに集結しています。ジェイドが、レプリカたちは《レプリカ情報保管計画》の残骸で、ヴァンが死んだため行き場を失っていると推論。そして自ら提案するのでした。ルークかアッシュのどちらかを犠牲にし、レプリカ一万人の命を消費して障気中和をすればいいと。 (ジェイドがどちらを犠牲にすればよいと言ったかは台詞では描かれておらず、ただ、二人の絵が表示されていました。しかし次回を読んだ限り、どうも、ジェイドはこの時点でルークを犠牲にする選択を提案していたようです。) 猛反対するインゴベルト、戸惑うピオニー。テオドーロの反応は無し。 原作とは異なり、ナタリアが苦しげにうなだれて会議の席に座っているだけで、一切反対しませんでした。 場面変わり、アッシュと共にファブレ邸にいるルークとティア。 ユリアシティの場面にジェイド、ナタリア、アニスの姿しか見えなかったので、てっきりルークたちは別行動でファブレ邸にいるのだと思ってたんですが、次回を見たら直後のファブレ邸に仲間全員が出てきたので、単に、ユリアシティにいながら首脳会議にルークやアッシュは同席しなかったってことらしいです。命をかける本人なのに。……それとも、ルークたちはやっぱり別行動していて、会議の終わったナタリア達が即座にバチカルに飛んで来たってコトなんでしょうか?? ルークに勧められたかららしいですが、自ら両親と対面するアッシュ。最後になるかもしれないからだろう、とルークは言い、「よかったの?」と尋ねたティアに「うん いいんだ」「あいつが やがて戻ってきたアッシュに「この計画 俺は納得していない」と言い、じゃあ誰がやる、お前に出来るのかと凄まれて、ついに俺がやる宣言。 無言で歩み寄ると、アッシュがルークを殴りました。本作にはガイがルークを殴る場面が存在しないのですが、代わりにアッシュが殴るのでした。 「いいよなぁ 苦々しげに言うとルークを突き転がし、俺だって死にたいわけじゃない、だが無駄死にするよりよっぽどマシだ、俺が障気を中和すると、これまた彼方を見つめて言うのでありました。
会議の場にもファブレ邸にもいない。ガイはどこに行ったんだろう……と思ってたら、次回、場面続きのファブレ邸に出てきました。他の仲間たちと共に、ずっと陰からルークたちの会話を聞いていた模様。
7月号障気中和、第二回目。 障気中和が終わったら、自分の代わりにローレライの宝珠を探し出してローレライを解放しろと命じるアッシュ。 ルーク「ローレライ……」「ローレライっていったい…」「なんなんだ!?」 何年も連載に付き合って設定忘れちゃった読者のために、アホの子になってくれたルークです。今頃それを訊くんかい!!(苦笑) そして、ちっとも癇癪を起こさず懇切丁寧に説明してくれるアッシュなのでした。親切だ。 「ローレライとは…」「 ローレライは、「すべてを壊してしまう前に」「この惑星から」解放してほしいと願っているそうです。 原作だと、「自分が地核に留まることでの地核振動の悪影響を心配し、地核から解放され音譜帯の一部になりたがっている」という説明でしたが、この漫画ではローレライが地核にいると星そのものが壊れるそうです。いかにも危機的で、解り易くていいかもしれません。 更にアッシュは、ローレライは外殻降下を境に地核から姿を消した、恐らく、今は今までより厄介な形で閉じ込められていると言いますが、ヴァンの中に封じられたとは説明しませんでした。 2月号のヴァンとリグレットの会話にて説明されていたので読者は知っているわけですが、ルークたちには隠すんですね。ヴァンと戦ってる最中に判明して、その場で「大譜歌を!」みたいな展開にして盛り上げようという仕込みなんでしょうか。
俺の代わりにローレライ解放をやれと静かに告げて立ち去るアッシュの背に「だったらなおさら…」「おまえが生き残るべきだろ!!」と怒鳴るルーク。「絶対死なせないからな」とギリギリしています。その隣でティアはやや俯いて暗い顔。けれど、ルークを止める言葉は一切言わず。 庭から屋敷内に入ったルークとティアを待ち受けている、ガイ、アニス、ナタリア。全員、悲しげな様子です。それぞれルークに言葉を贈るわけですが、原作と比べて全員大人しく、既に諦めている風情でした。 ガイは「悟ったような口を聞くなら許さないぜ 石にしがみついても考えろよ… 生きることだけをな!」と微量の怒りを感じさせるものの、言いながらルークの隣をすりぬけて立ち去ってしまう。ルークの顔も見ないし返事も待たない。意思は伝えるが諦めているという態度。アニスはミュウとセットで泣きながらしがみつく。ナタリアはガイと同様で、原作では自分が父たちを説得するから早まるなとまで言うわけですが、こちらではもう、死にゆく者へ送る別れのメッセージみたいでした。ルークもアッシュも大切な幼なじみです、どちらにも生きていてほしいと言いつつ静かに涙を浮かべて。「それだけです…」とアニスを連れてルークの横をすり抜ける。立ち去りながら振り向かずに、王が待っているから謁見の間へ行くよう促すのでした。 余談ながら、ここのナタリアの台詞、「公爵家」が「侯爵家」になっています。 仲間たちが諦めているように見えるのは、彼らが言うだけ言うとルークを置いて立ち去ってしまうからかと思います。ルークの方が彼らを置いて謁見の間へ向かう形にした方が良かったんじゃないかと思いました。 ジェイドは城門に待ち受けていて、ルーク含むレプリカが死ぬ方が都合がいい、しかし友人としては止めたいと語る。彼に関してはほぼ原作通りのニュアンスでしたね。 そしてティアは、仲間たちに言葉を贈られるルークの傍に、ずっと黙って従っています。
バチカル城の謁見の間にて、ファブレ夫妻立ち会いのもと、インゴベルト王がルークに言います。私は王として、オールドラントを守るためにお前に命を下さねばならない、私の甥よ、この使命を引き受けてくれるか、と。静かに見上げるルークのアップ。夫にすがりついたシュザンヌのすすり泣きを聞きながら、ティアはきゅっと唇を噛みしめる。
どういうわけか、ルークが「やります」と言う様子を、全く描きませんでした。すすり泣くシュザンヌや唇を噛むティアの様子で間接的に示しているだけです。そりゃ、アッシュに向かって俺がやると言っていましたから、それで充分なのかもしれないですが……。 とても気になりました。 原作では、インゴベルト王が「頼んでもよいか」と問う前に、ルーク自身が首脳陣に向け「やります」とはっきり告げていました。あくまで自分の意志での決断だったわけです。 しかしこの漫画では、インゴベルト王の方が先に命じてしまう。……命じられて《させられた》形になっています。この後に「死にたくないんだ」とティアに打ち明けるエピソードを移動させてますし、見ようによっては、全く嫌だったのに無理矢理させられてるみたいな。 個人的には、好きではないなぁと思った部分でした。 それが良い決断でも悪い決断でも、ルークはその時点で最善だと思った道を《自分の意志で》選択したのだ。そういう形を明確化してほしかったなあ、なんて。
場面変わって、ティアとのラブラブタイム。夕刻の草原みたいなところで、風に吹かれながら憂い顔で座っているルークと、傍らに立って寄り添っているティア。 彼方を見つめながらルークは呟きます。 「俺さ ずっと… 心のどこかで死んでもいいって思ってたんだ」 ティアの腕を掴むと抱き寄せ、ルークは彼女の胸にしがみつきます。ガチガチと震える歯を鳴らしながら、死にたくない、怖いと叫ぶ。 ティアは、かつて自分がパッセージリングの起動で障気に侵された時、ルークはそれを続ける決断を許してくれた、だから自分も止めない。けれどルークが消えたらあなたを憎む、世界中があなたを賛美しても私だけは、と渦巻く胸の内を吐露します。けれど、しがみついたまま「うん」と繰り返すばかりのルークに、切なげに「…ばか…」と呟くのでした。 大変盛り上げられていました。ルークとティアのファンには嬉しい演出だったのではないでしょうか。
それはともかく、ルークが「いつか…ティアに言われたとおりだ」と言ってますが、いつ何を言われたことを指してるのでしょうか? と言うのも、原作では断髪時に死んで償えるならそうしたいと言って「やっぱりわかっていないと思うわ。そんな簡単に……死ぬなんて言葉が言えるんだから」と言われたことを指してたんですが、この漫画ではその台詞がカットされていたからです。当時、この台詞を削ったら後に困ることになるはずだと感想書きましたっけ。……何か代替になる場面作られてたっけ? シェリダンの惨劇の際に、ルークが自分が死んでみんなが生き返るならそうするのに、と独りで部屋で泣いてるオリジナルシーンは作られてましたが、ティアがそういう言葉をたしなめるのはなかったような……?? でも連載も何年も経っててもうなんだかよく判らないです。きっとどこかにあるんでしょう。
8月号障気中和、第三回目。 突然、レムの塔の屋上です。アッシュとルーク、仲間たちが並んでレプリカたちを説得しています。 原作同様に別行動したアッシュをルークたちが追いかけたのか最初から一緒なのか、判然としません。ルークの同席にアッシュが怒っている様子がなかったので、一緒にここまで来たっぽい? 今までシルエットでのみ描かれていた、マリィやイエモンのレプリカが登場。タマラ、ヘンケン、キャシーのレプリカも一緒でした。タマラやキャシーは眼鏡、ヘンケンはヘッドフォンと、オリジナルと同じ装身具を着けてましたが、着衣は一緒に複製されないはずなので、わざわざディスト(?)があつらえてやったんでしょうか。意外と気のきく憎いやつです。 そしてマリィレプリカの後ろ髪が長かったです。原作だと(オリジナルは死亡時長かったけれど、レプリカはそれ以前の情報から作られたらしく)短いんですが、アニメ版では長かったんですっけ?
我々を拒否したお前たち人間の大地がどうなろうと関係ない、と素気無いマリィレプリカに「来ない迎えを待ち続けてここで飢え死ぬのか? おまえたちだけじゃない この世界も死にかけている 役に立てたいだろう? どうせ失う命なら」と強圧するアッシュ。 「アッシュ… そのことだけど俺はやっぱり」とルークが謙虚に言いかけた時、塔の真横にどーんとエルドラントが現れました。ここまで飛んで来たらしいです。原作と違い、この漫画のエルドラントは自由自在に空を移動できる模様。 エルドラントの中から凄い勢いで大詠師モースが飛んできて、ドゴン、と塔の屋上に突っ込みました。シュール。計画に不必要なゴミを片づけに来たと嗤いつつ土煙の中から現れたその姿が、ミシミシギチギチと異形に変化していきます。まさか 迎えに来てくれたのですねと無表情ながらに喜んでいたマリィレプリカを、ギガントモースが無慈悲に殴り飛ばします。水平に《ビョオ》と風を切って吹っ飛んで、屋上の縁に瓦礫をふっ飛ばす勢いでぶつかったうえ、こぼれて落ちて行こうとした彼女の手を、「姉上!」と叫んでガイが掴みました。 マリィレプリカ「…なぜだ?」「なぜ私を助ける? 人間よ」「おまえたちは我々が邪魔なのだろう?」 これは完全オリジナルのエピソードです。原作のガイがマリィレプリカ消滅時に「レプリカたちを見殺しにはしない。姉上と同じあなたの命のために」と言ったのを膨らませたのでしょうか。台詞が解り易くて綺麗です。 何気に女性の手を握っており、女性恐怖症克服イベントを兼ねてもいる感じ。 それはそうと、この漫画にはガイがマリィレプリカを見て動揺する前振りエピソードがありません。ここで突然、姉上と呼んで助けています。この漫画でガイの姉のエピソードが語られたのは2009年1月号(2008年11月末発売)、二年近くも前。しかも断片的なカットだけでした。 原作ファンには周知のことですが、漫画だけの読者にはちょっと唐突かもしれないですね。 それと。このマリィレプリカとガイの会話、双方ともに《人間とレプリカ》の対比で語っていて、素で《レプリカは人間ではない》という前提になっているのが目を引く感じでした。人間モドキ認識?
一方、暴れるギガントモースにやめろと呼び掛けるルーク。ジェイドがダッシュで駆けてきて、モースは精神汚染を起こしているから無駄だと叫ぶ。 ジェイド「ですが――原因が 剣を構えて障気中和を始めようとするアッシュ。 わかるよーなわからんよーな理屈です。次回、障気中和が終わるとギガントモースは瀕死になっててすぐに死んじゃうんですが、元々 そして、レプリカ一万人の命<<<<モース撃破 な価値観のアッシュさんです。いやページ数の都合だろうから彼に罪はないけど。(^_^;)
剣を構えたアッシュの傍らで、思い詰めた顔でジェイドの名を呼び目くばせするルーク。頷くジェイド。二人は阿吽の呼吸でアッシュに飛びかかり、ルークが剣を奪いジェイドがアッシュを拘束しました。 「みんな どうか」「俺に…命をください」「俺も」「消えるから!!」 ルーク、障気中和開始。 ティアがルークを止めようと走る描写、そんな彼女をガイが止める描写は一切無し。代わりに、アニスとナタリアがルークの名を呼びながら駆け寄ってました。しかしルークに至る前に超振動は発動する。
ガイにオリジナルエピソードがあって嬉しい半面、とても好きだった、《いざとなると引き留めようとしたティアとルークの意思を尊重したガイ》の対比エピソードが消滅していて、それはかなり残念でした。贅沢者ですね。
9月号障気中和終了。ちなみに、今月号から掲載誌が別雑誌『電撃 黒マ王』と合併。特別号ということで、普段の2.5倍くらいの辞書並みの厚さになってました。この号以降、グッズ付録が毎号付いて豪華になっていきます。旬の過ぎた『アビス』のはもはや付かないですけどね。(^_^;) 同じ号に、この漫画家さんのオリジナル長編漫画も同時掲載でした。『アビス』連載が終わったら、その漫画を新連載する予定なのかな。
障気中和中のルークの独白からスタート。 死にたくない! 死にたくない!! 死にたく ない…!!! そんなことを思っていたルークはハッとする。彼の胸に大きな光が出現していました。なんだこれは集まりかけた アッシュはあいつが持っていやがったのかと叫び、ルークに駆け寄るとローレライの剣に手を添え力を貸します。「アッシュ!! ありがとう!!!」と、明るく熱血な感じに喜ぶルーク。 原作とは異なり、剣を床に突き立てたままでした。これはアニメ版に沿ってますね。レプリカ編に入ってからは本当にアニメ版寄りのストーリーアレンジ・演出が多いんですが、アニメ版が好きなんですねぇ。 障気中和しながら、ルーク一人でだかアッシュとルーク二人でだか判りませんが、キメ台詞っぽいものを叫ぶ。 「世界中の障気よ!! 今こそ…」「 なお、障気中和しながらルークの体が透けかける描写はありませんでした。 障気が中和される様子は3ページ以上使ってじっくり描かれてありましたが、悲しいかな、モノクロなので空の色が変わったんだか何だか判らない。(^_^;)
レプリカたちが消滅した後、最後に残ったマリィレプリカが言いました。 「……約束だ」「人間たち」「 悲しげな仲間たち。ガイが「約束する…必ず!!」と力強く返すと、ページ半分使った大アップでマリィレプリカの微笑み。ハッとして手を伸ばしかけたガイの前で彼女は消える。空を掴んだ手を握りしめ、切なげに「…………」「さようなら」と呟くガイなのでした。 なんだか、『追憶のジェイド』のレプリカネビリム消滅辺りと似てますね(笑)。(そちらの初出は、この漫画の半年ほど前。)よくあるパターンということなのか、オマージュなのか。 それはともかく、とてもいいシーンなのに、肝心のガイの顔が変で、わりと残念でした…。
その時、微かに聞こえてきたうめき声にハッとするティア達。倒れていたルークとアッシュが起き上がっています。喜びに頬染めるティアの大アップ。仲間たちは一斉に彼らに駆け寄って名を呼び、アニスが泣き笑いしながらルークに抱きつく。よかったね! 「生きてる!! 生きてるよ!? 二人とも…」「消えてない!!」 端っこでミュウもしがみついて「ご主人様〜!!」と喜んでいました。可愛いなぁ。 一方、安堵したティアも喜びの声をかけます。心配かけてごめん、と笑顔を見せるルークでしたが、どことなく苦しそうに目線を落とす。異変を察知して不安を覚えるティア。
ジェイドの質問に答えて、アッシュがローレライの宝珠はルークの中にあったのだと説明。ローレライの宝珠が大きく描かれましたが、原作やアニメとは違うデザインでした。丸い外形の内部、Π字型のパーツがあるべき部分が、交差した光の輪のみになってるとゆー。
そして、片隅でいつの間にか瀕死になっているギガントモースです。 アニスは「モースのこと大嫌いなのに イオン様の仇なのに」「なんでかな」「哀しいよ……」と涙し、ティアはそんな彼女を腰にしがみつかせながら「モース様はたしかにこの世界を守ろうとしていた」「私たちとはその方法が違っていただけなんだわ……」と呟くのでした。
突然。 大音量で声が響きます。エルドラントから。 「――…ND2020」 それは、第七譜石の欠片を握ったヴァンの声。詠み終わると、欠片を握り潰して破壊してしまいます。 彼の背後にはリグレットとディスト、そしてフローリアン。 ……フローリアン、まだルークたちと出会ってすらいないんですよねぇ。モースは死にましたし、彼がヴァン側にいる意味が全くないのですが(原作では、第七譜石の欠片から預言を詠むために、モースが彼を使っていた)、最終決戦時にルークたちを動揺させる人質になるとか、そういう新展開が待っているのでしょうか。楽しみですね。 そして、復活したヴァンに忠実に仕えている様子のディスト。この漫画には、彼がヴァンを裏切ってモースと通じていた設定は無いんですっけ。
ところで、 障気を消したって新たな毒が生まれるから無駄なんだよと言いたいのかと思いましたが、そのすぐ後に「結局世界は――障気によって破壊される」と言ってますし。うーん??
にしても、障気中和してるすぐ隣に横付けしたエルドラントにいたくせに、ヴァンもフローリアンも平気なんですね。プラネットストームの障壁に包まれているから?
ヴァンは、(ルークだけにではなく)その場にいた仲間たちやアッシュ全てに向けて言い放ちます。 「ローレライを解放したければ」「ここまで来い」 やっとルークたちがエルドラントという呼称を知ることができました。(^ ^;) 大々的に盛り上がり、次回に続きます。
10月号今回は、エルドラント突入〜アッシュとの決闘突入まで。
崩落編終盤〜アブソーブゲート決戦時と全く同じ現象が起こっていました。前回から突然話がすっ飛んでいて、決戦場突入場面から開始されます。この形式がお好きなんでしょうね。 最初の1ページは、インゴベルト、スピノザ、アストン、ピオニーの独白になっていました。それぞれヴァンに思いを馳せ呟きます。遠く離れた場所にいながら一つに連なる言葉をリレー。 7月号の感想に、ローレライがヴァンの中に封じられていることをアッシュはルークたちに教えなかったと書きましたが、彼らはそれを周知の情報として口にしています。省略されたエピソードの存在が想像されますね。
場面変わり、エルドラントを砲撃している連合艦隊。 「目標 ……「彼ら」が消し去った? 多分、ルークたちがプラネットストーム停止させたという意味なんでしょうね。省略してますがエピソードはあったんですよと。しかしこれでは、原作を知らない読者にはナニガナニヤラになっちゃったなー。 天空を疾駆するアルビオールは大迫力でカッコイイです。ノエル大・大・大活躍。作画が大変な場面だと思うのですが、濃密に描いてありました。 エルドラントの側壁に「味方砲撃による」損傷部分を発見したと報告するノエル。そこから侵入しようとしますが、直前にエルドラントからの砲撃が停止、アルビオールに向かって体当たりを。 その時ルークは、後ろから追い抜いて行ったアルビオール三号機に気付くのでした。(しかしノエルは気付かなかったらしい。)直後に、体当たり失敗したエルドラントは海に着水。どの媒体で見ても間抜けです。
完全にアニメ版に沿っており、それをアレンジした内容になっています。 原作だと、連合艦隊の砲撃開始前にエルドラントが体当たり。着水したエルドラントから対空砲火を受ける。唯一砲火の沈黙した個所を見つけて突入すると、砲台を押しつぶして大破した三号機を発見、アッシュも来ていることを知る、という流れ。 アニメ版では、連合艦隊の砲撃中に体当たりを仕掛けられ回避、その前を通って三号機がエルドラントに突入、側壁を破壊。着水したエルドラントに、ルークたちも三号機の後を追って突入、でしたっけ。 漫画は、アニメ版の流れで三号機突入をぼかして描写を簡便に。突入に利用した穴は、三号機ではなく連合艦隊が作ったもの、と。
その後の展開も完全にアニメ版沿い。ただしアレンジ。 アニメ版では、突然ルークだけが仲間置いて走って行って、その勢いのままアッシュと一緒に落とし穴に消えちゃうコント展開でしたが、そこをカッコよく練り直し、アルビオール突入時にルークとノエルだけが予め仲間と分断されたことにしてありました。 1ページ使って、ルークがノエルとアルビオールに凛々しくお礼(別れの挨拶)を言う。座り込んだまま涙ぐんで彼の背を見送るノエル。原作だとサラっと「ノエルありがとう」と言うだけでしたっけ。思い返すに、この漫画ノエル贔屓が結構強かったなぁ。ファンには嬉しかったんじゃないでしょうか。 それはそーとアルビオール、中破し瓦礫の下に埋もれてましたが、ノエルどーやって帰るんだろう。この漫画では三号機の方が無傷だったりするのかな。ギンジ探して脱出しろと言ってましたし。
ノエルと別れ、仲間とは最上部で落ち合うことにしたルークが独り走っていくと、待ち受けていたように立ち塞がるアッシュに遭遇。決闘をふっかけられます。 落とし穴の罠はありません。確かにアレ、間が抜けてたもんなぁ。(^ ^;) #仁王立ちしてルークを待ち構えているアッシュ #ルーク、ひきつり笑いして つい先月号でアッシュと協力して障気中和したばかり。この漫画ではその後のアッシュの葛藤やルークとの衝突を描いていません。なので、急にプチキレて因縁つけてきたように見えるとゆー。困っちゃいますね。
一方、並行して仲間たちと六神将の戦いが挿入されます。アニメ版式の構成。 罠により仲間たちと引き離されたのはジェイドとティア(とミュウ)。落とし穴ではなく転移の譜陣でした。で、彼らはリグレット&ディストと対面。残されたアニス、ナタリア、ガイは、アリエッタ&ラルゴと対面。 それらと並行しながら更に、ティアがジェイドにルークは間もなく消えると報されてショックを受ける様子が付加されておりました。ミュウはいるだけで話に絡まず。
ところで、アルビオールがエルドラント突入した直後の場面で、ヴァンに「侵入されたか」と問われたリグレットがこう報告してました。 「はい」「敵浮遊機関のほかにも――何匹かネズミがまぎれこんだようですが…」 んん? アルビオールの他にも「何匹か」侵入者がいる? アルビオールに乗ってたルーク一行と、アッシュだけでなく、他にもまだいるのだろうか。 考え込まされたんですが、これどうも、「アルビオール(敵浮遊機関)」と「乗っていた人間(何匹かのネズミ)」を別物としてカウントしているっぽいですね。
今回、ところどころキャラの顔が変だったかも。元々、6巻頃(アニメ放映時期)を絵柄の洗練のピークにして、以降はちょっと潰れた感じに変化してきてたんですが(元々あった、顔の輪郭を丸く描きがちな傾向が強まって横広がり顔になってきた感じ。あと髪線の簡略化で、短髪キャラは時々、毛皮の切れ端か干し草の塊か何かを被っているように見える)、今回は特に多い印象だったなぁと。綺麗な顔もありましたけども。
11月号読者ページにて、次々回で連載終了だと明かされました。それに合わせて「玲衣先生への激励ハガキ募集!!」「5年間ずっと走り続けてきた玲衣先生へ、温かいおハガキを送ってください。」とのことで。 最終回用の祝いメッセージを終わる前から募集するのか、とちょっと驚いたんですが、考えてみたら最終回以降はこの漫画の読者ページは消滅するわけですから、当然のことではあるんですね。にしたって、結末が既に判っているコミカライズならではのフライングだなァ、と思いました。
ややページが増えて22ページ。その全体で殆どのキャラが怒鳴ってた回でした。レプリカ編に入ってお馴染みになった疾走感が、更に増しの豪華ダイジェイト。 怒鳴り台詞ばかり、集中線・移動線ばかりなのは、(クライマックスですから仕方ないけど)読むのは疲れますね。(^_^;)
襲いかかってくるアッシュの剣を及び腰で受けるルークからスタート。 アッシュ「ヴァンから剣を学んだ者同士……」「どちらが強いか!! どちらが本物なのか!!!」「ここで決着を――」「つける!!!」 見開きで、戦うアッシュとルークの立ち絵が対照的に描かれ、背景には今までの漫画からヴァンとの思い出をコラージュ。熱烈な愛の告白大会が開始されてどうしましょうって感じです。元は原作やアニメにもある台詞なんですが、演出強化されているので。 なんとゆーか、悪い女に捨てられた青年二人が、それでもどちらが逢いに行くかで噛みつき合ってるみたい。(^_^;) アッシュ「俺は…ヴァンを尊敬していたんだ!!」「あいつの理想を!!」「俺もともに――信じたかった!!」「すべてだったんだ」「あいつが俺の!!」「世界を滅ぼすなんて馬鹿なこと あいつが言い出さなけりゃ」「俺は今でも…あいつを!!」 思いっきりアニメ版アレンジですなぁ。私がアニメ版で一番好きでなかった、原作にないオリジナル台詞が取り入れられていて、個人的にはしょんぼりでした……。うが……。 (アニメ版) そーかー。この漫画家さんは、アニメ版のあのアレンジを、むしろ原作よりイイと思ったよ派なのか。こういうのは人それぞれですから仕方ないことだけど、ホント解釈の方向が合わないでござる。 アニメ版のコミカライズだった『鮮血のアッシュ』は、その台詞を原作のものに戻していましたっけ。一方で、原作ゲームのコミカライズである筈のこの漫画が、わざわざアニメ版オリジナル台詞を採っている。なんとも不思議なことです。 この漫画、レプリカ編に入ってから基本アニメ版に沿って展開していましたが、ここまで徹底するとは。よほどアニメ版がお気に入り。少なくとも資料として全幅の信頼を置いているようです。
そして、原作とはルークの心理も変えられてあります。原作ルークがアッシュとの決闘を受けたのは自身の存在を証明するため。ヴァンの元へはあくまでアッシュを行かせよう(自分はサポートに回ろう)としていたんですが、この漫画では、ヴァンへの敬愛度を張り合って決闘を受け入れ、いわば《自分の方が》ヴァンが好き、より傷つけられた、決着をつけたいから、アッシュを倒して自分が行くと力強く宣言しています。 なんでこんなことに。って。アニメ版のオリジナル会話(アッシュの台詞「だったら、俺を倒してヴァンの元に行くんだな!!」)を取り入れて、それを発展アレンジさせた結果でしょうけども。微妙ながら話が違う方向へ行っちゃってますよね。 果たして、それを認識してやったのか。
さて場面は一度、仲間VS.六神将に移ります。 イオン様の仇、と憎しみに燃えてアニスに襲いかかる、ライガに乗ったアリエッタ。ガイとナタリアが、あの時死んだイオンはアリエッタのイオンではないと説明しようとしますが、アニスが強く止める。 「そうだよ」「アリエッタ」 「上等…」「です!!!」とアニスを睨むアリエッタの横顔が怖かった。 場面移動し、ジェイド&ティアVS.ディスト&リグレット。 ティアは大変なマルチタスクぶりでした。まずは戦闘。同時にリグレットと激しく口論。ここまでなら原作やアニメでもやっていましたが、加えて心の中で(ルークが…消える)(消えてしまう)(助からない)(ルーク ルーク)(ルーク!!!)とひたすら悲鳴をあげているのでした。(表情には全く出ません。ティアさんの自制心は半端ない。) 一方、同時に戦っているジェイドとディストは完全な背景になっていて、一言たりとも会話を交わしません。流石に最終決戦でコレは無いので、次回以降に見せ場を作るんだろうなと思ってたのですが。次回を読んだら、あれ? そのまま終わって…る……? ……え、えええ? これは一体どうしたこと。思わず、紙数無いしアッチで語ってるからいいよね、と『追憶のジェイド』を意識してカットしたのかしらなんて穿ったこと考えちゃいましたよ。 いやでもまだ、次々回のエピローグで獄中のディストとの会話シーンなんかを入れてフォローって可能性はあるのかな? また場面移動し、ナタリアVS.ラルゴに。ラルゴは、何やらポエムっぽく自分たちが世界を破壊する理由を述べた後、唐突に己の過去を語り始めます。 「金の髪」「蒼い目をもつ 美しく優しい女」「俺の……シルヴィア」 ナタリアの生母・シルヴィアを「蒼い瞳」だと言っているのが目を引きました。ナタリアはアニメ版で何故か蒼い瞳だとモースに断罪される。母と娘だから同じ髪と目の色という意図でそこから取ってるのかなぁ、と。でもナタリアの実際の目の色は緑ですから、関係ないかも。 関係ない話と言えば、この漫画ではレプリカ編に入ってからナタリアとガイの衣装を称号服に変更していましたが、レムの塔以降、ナタリアのみ元に戻されています。そっか。流石にドレスで敵陣突入はないですよね。(^ ^;) そしてガイは完全に背景でした。一応、アニスに加勢してアリエッタと戦ってたみたいですけど。 ……はっ。レムの塔で彼にだけオリジナルエピソードが付けられてたのは、最終決戦で背景化する前倒しの埋めあわせだったんでしょうか?
ナタリアはラルゴに向け、自分たちが望めば未来は変えられるとカッコよく宣言。その台詞から繋げて、この漫画家さんお得意の、イメージシーンとポエム的モノローグによるリリカル構成が始まります。 モノローグはルークのものっぽいんですが、あまりハッキリしませんでした。何故なら、最後にまたまたルークとアッシュが同時に同じ台詞を叫ぶ(?)からです。と言うことは、二人が同じことを考えていたことになるのか? #寂しげな表情で背中合わせの幼少ルークとアッシュのイメージイラスト 最後の台詞は黒一色の一ページに特大フォントのみで。 ちなみに次回の最終ページは、白一色の一ページに吹き出し入り台詞一つでした。狙って揃えたんでしょうか? 考えてみたら崩落編の最終ページもそんな感じだったなぁ。
ともあれ、このリリカルな流れで、個人的に激怒した次回へ続きます。
12月号ページ数はどっと増えて46。単行本最終巻は少し厚くなりそうですね。 今回が本編最終回で、次回はエピローグなのだそうです。漫画の前にカラー1ページを設けて(絵は7巻発売時の記念付録ポスター流用)、「ついに 来月号は「テイルズ オブ ジ アビス エピローグ記念大特集」と称して、読者の応援ハガキの大増掲示やイラスト企画等を行うそう。創刊号からの連載で、一時は間違いなく掲載誌の一枚看板でしたから、編集部にも色々感慨があるんでしょうか。ここ一年ほどの低下ぶりを思うと破格の扱いのように見えます。
突然、ホド神殿の屋上でルーク独りがヴァンと対峙しているところから始まります。手にはローレライの剣。あ、あれ? 仲間と落ち合う約束じゃなかったの? アッシュとの決着は? 例によって結末を語らないショートカットで、ヴァンと対峙している事実と、アッシュやヴァンの「レプリカがオリジナルに勝った」という台詞で間接的に結果を提示。……障気中和辺りからコレ多いですね。紙数の都合で仕方ないんでしょうけど、腫れものの縁をなぞってるみたいな手法は、多用されると、ちょっとムズムズするかも。 やはりアニメ版を元にした展開・台詞回しでした。もう、原作コミカライズの看板下げてアニメコミカライズのそれ掲げるべきなんじゃないかな。 #歯を食いしばりヴァンに立ち向かうルーク これもアニメオリジナル台詞のアレンジですね。 ヴァンとの戦闘は迫力がありました。でも笑顔全開で襲いかかり、次いで涙をぽろぽろこぼしながら戦うルークは怖かったです。《生きる喜び》と《迫る死の恐怖》を同時に感じてるという意味だったのかなぁ。なんとなくエアロビクス大会を連想したぜ!←全開笑顔固定で激しくダンス演技する競技
さてアッシュの方はと言うと、ルークとの決闘の場で、独りで 「… これもアニメ版独自アレンジを採って、更にアレンジしたもの。 注目すべきは、ルークとの約束が存在自体消され、代わりにナタリアとの約束が掲げられて、しかも「約束は果たせない」と断言させていること。 で、「もうすぐ俺の命は尽きる」と傍点(ここでは下線で代用)で強調していて、自身が(戦闘とは関係なく)間もなく死ぬと思っていることを暗示しているわけですが……。 これら二点は、
場面戻り、笑いながら涙こぼしてヴァンと戦うルーク。俺は今生きてる、大切な人たちや掛け替えのないものを守りたい側にいたいと、戦いながらつらつら独白してますと。唐突にアッシュから便利連絡網が。 『頼んだぞ』『 それは、 原作では「聞こえるか、レプリカ……」「あとは……たの……む……」と言うだけですが、強いて「レプリカ」に「もう一人の俺」という読み仮名を振る。ここには漫画家さんのルークとアッシュの関係への解釈・結論が出ていると思います。これも後述。 彼の想いは、同調フォンスロットの無いナタリアにも届きます。愛の奇跡ですね。ラルゴと戦闘中だった彼女はハッとして振り返り、「……アッシュ!?」「嫌」「そんな…」と悲痛に顔を歪める。(ラルゴパパは紳士なので、その隙に攻撃したりなんかしません。) 直後、エルドラントの中層辺り(アッシュの遺体?)から大きな光がカッと打ち上がり、天空で向きを定めると、どっとルークにぶつかって包みこむ。アニメ版の描写を元に、ド派手に演出強化しています。意図的か偶然か、ゲーム版本編ドラマCD最終巻と酷似の解釈・感性・演出。 涙をこぼしながら驚くルーク。ヴァン 「 なに堂々とウソ描いてるんですかコラァ〜!!(怒涙) いや公式コミカライズとは言え突き詰めれば漫画家さん個人の解釈による二次創作なわけで漫画家さんにとってそれが《 無論、考えました。漫画家さん・担当編集さん・バンナムの担当者さん。最低でもこれだけのプロの方々が目を通し世に出しているのです。この漫画で語られたことが正しくて、私の方が間違っているんじゃないかと。 でも、原作のイベントを見直しても、攻略本の設定を読んでも、やっぱりこの漫画に描かれてあることはおかしい、と思う。これが正しいなら原作が間違っているということになるのでは。 ああいやでも、最後に地核に入るルークの周囲に光の螺旋が描かれてあるから、大爆発はまだまだ進行中で終わってないって意図かも? そうなら大意では間違ってなくて、私が早とちりで馬鹿なだけか。しかしそれならそれで、今回の段階でヴァンに「大爆発現象だ」と語らせるのは奇妙だと言わざるを得ないし……。 ……自分を疑ってるとキリがないので、ヴァンが大爆発だと言った時点が本作での大爆発完了だと仮定して、以降の話を続けさせていただきます。すみません。
腹が立ったのは、どうしてこうなったのか理由の一端が見えるような気がしたからです。 アニメ第25話に、アッシュの遺体からオレンジの光の粒が立ち上がり、それが流れてルークを包み込む描写があります。で、こんな会話を交わす。 (アニメ版) これは、原作のシンク戦(ルークが第二超振動を使えるようになった)後のフェイスチャットと《ルークの日記》を元にしてはいますが、アニメ版独自の会話です。加えて、アッシュから立ち昇りルークを包む光( そして同じ回で、死ぬ前のアッシュがこんな回想をしています。 (アニメ版) アニメを見た時に思いました。ああ、これは勘違いする人が出そうだなと。 アニメ版の 加えて、音素の流れを視覚化した思わせぶりで紛らわしい演出。もしかしたらアニメの演出家さん自身が勘違いされていたのでしょうか? ここで起こった《死んだアッシュの 根拠として、原作のサブイベント《コンタミネーション・4》を挙げます。このイベントはヴァン戦直前のセーブポイント到達以降に発生します。つまり、アッシュが死にルークが第二超振動を使えるようになっている(この漫画で「大爆発」とされる現象が既に起きている)状態です。ジェイドが獄中のディストにアッシュの死を伝え、大爆発は始まっていたと思うかと問う。 (前述の原作シンク戦後のフェイスチャットにて、何か温かいものが降ってきた気がしたとルークに言われてジェイドが言葉を濁す場面があります。また、スピノザとの会話などからアッシュが音素乖離を始めていたことにも気づいている。つまり、ジェイドは大爆発開始を確信していますが、認めたくないあまり、ディストに否定してほしくて相談している。) 始まっていたと返されて、まだ始まっていないかもしれないとごねるジェイドに、そんなにあのレプリカが大事なのですかと苛立ちつつ、ディストはにべもなく告げるのです。 (原作) アッシュの死に関係なく、既に起こっている現象は進行すると語られています。つまり、この時期まだ なお、ナムコ版攻略本では、大爆発はこう解説されています。 完全同位体の つまるところ
なお、本作の「同位体の 通常の死と大爆発現象は関わりを持ちません。また、レプリカが死んでもその音素が残った アッシュは説明の全てを聞いておらず、自分がこのまま音素乖離して死ぬのだと思い込んで、俺には時間が無いんだ無為に死ぬなら自己犠牲で世界を救うと生き急ぎ、レプリカに過去も未来も奪われたと猛り怒ったのでした。
さて。本作ヴァンは更に「アッシュの 原作で「レプリカ情報を抜かれた被験者に悪影響が出ることも皆無ではない」という情報が出た時、アッシュが不安顔になると、ジェイドがすぐ言います。 「心配しなくていいですよ。レプリカ情報を採取された と言う訳で、アッシュの体調不良はレプリカ情報を抜かれた副作用ではありません。 なおこの時ジェイドは「完全同位体なら別の事象が起きる、という研究結果もありますが……」とチラリと口にしています。(太字強調は筆者による)
この会話は、個別に檻に入れられた黄色いチーグルとそのレプリカを前にして行われました。通常ならレプリカの方が劣化するものなのに、何故か その数ヶ月後、もう一度その場所に来たアッシュは、 彼はこの頃、スピノザから ところが、この話はサブイベント《コンタミネーション・2》に続いていて、そちらで真相が明かされています。ジェイドはミュウの協力を得て、残っていた黄色いチーグルと話す。すると、スターという名のそのチーグルは、自分は (原作) アッシュがレプリカだと思ったチーグルは
以上のことから、この漫画で語られた 「限りなく特異な条件下でのみ起こるとされる干渉現象」という表現から、恐らくファミ通攻略本も参照したんだなとは判るんですが……。あの本の ちなみに、特異な条件下でしか起こらないというのは、地核という《他の音素の影響を受けず不測の事態も起こらない特異な場所》にコンタミ進行中のルークとアッシュの遺体が入った、だから大爆発は完成した、という意味だと私は解釈してます。地核に入らなかったら大爆発は完成せず、二人とも死んで終わってたかもしれない。
レプリカ編に入ってから、アニメ版を主参考にコミカライズしていることは気付いていました。アニメ版は基本的に原作忠実でよく要約してある。確かに、これを下敷きにすれば構成作業は格段に効率アップするでしょう。 正直、要約文を読んで書いた読書感想文を読んでいるようでモヤッとした気分はありましたが、当のアニメ版だってこの漫画やSD文庫版小説を参考に要約・演出してた部分が色々あった。それに崩落編終了辺りの様子を見るに、レプリカ編は一年(単行本一冊分)という期限を切って少し無理をして描いていたのかもしれない。だから少しでも楽になろうとアニメ版を使ったのかもしれない。見当違いの想像でしょうけど、そう考えちゃうと、描いてくれただけで感謝すべきで、不平を言うべきではない気がしてくる。 しかし今回の 前回の読者コーナーに「5年間ずっと走り続けてきた玲衣先生へ、温かいおハガキを」とありましたが、実際、『アビス』公式作家の中では最も長く携わっている方です。なのにこうなるのかと。 ……でも、漫画家さんだけの問題じゃない。複数の関係者がOKを出しているんですから。それに結局はコミカライズです。原作とは違うけど漫画ではこうだよ、公式コミカライズだけど独自設定に変更だよ、と思うべきなんでしょうね。 大爆発の存在に触れることすらしなかった幾つかの先行作を思えば、難しい部分に果敢に踏みこんで、真摯に取り組んで下さったと思いますし。 しかしこの漫画を読んで
さて、話を漫画のストーリーに戻しましょう。 世界再生を前に死ぬとはアッシュも無念だろうと言うヴァンに向かい、妙に落ち着いた顔になったルークが、今度は涙をスルスル流しながら喋り始めます。 ルーク「いいや」「アッシュは死んでなんかいない」「アッシュはここにいる」 本作アッシュ死亡時の便利連絡網メッセージ。『頼んだぞ オリジナルとレプリカは物質的には同一の存在。その意味でそう呼んで差し支えはありませんが、二人の決闘直後の言い回しとしては、はなはだ不適切だと感じたからです。 二人の決闘にはどんな意味があったのでしょうか。自分たちはもはや《分身》でも《影武者》でも《もう一人の自分》でもない。オリジナルとレプリカという事実関係は揺らぎませんが、代替え品として成り立ちはしない《別個の人間》なのだと承認するための、いわば《独立の儀式》だった筈です。 ですからここでアッシュに「もう一人の俺」と呼ばせてしまうと、決闘が無意味になる。全てが台無しになってしまうのではありませんか? この漫画でも決闘時、俺たちは別の人間なんだとリリカルに独白させていたのに、どうしてこうなるのかと驚きました。 思えば決闘中、戦いながら「俺は俺だ」と二人同時に叫ばせていましたが、本当はアッシュがそう言えるのは決着後、ルークに負けて後のはず。レプリカルークは自分の下位互換品ではないと認め、自分たちは別個の人間、自分の存在は奪われていないと認識してやっと、地に足を付けて「アッシュ――いや……ルーク・フォン・ファブレだ」と名乗ることができた、はず。なのに、どうして漫画では決着前にルークと同時に言うんだろうと怪訝に思っていましたが。 今回分を読んで解りました。漫画家さんの中ではこれらは繋がっておらず、あくまでルークとアッシュは分身同士。アッシュは最後までルークを自分の代行者だと思っていたという解釈なんですね。決闘前は下位互換品だと思っていたのが決着後は同等互換品と認めたって感じか? こういうのは人それぞれですから仕方ないことだけど、ホント解釈の方向が合わないでござる。
で。この漫画で言うところの 大爆発によってルークとアッシュは融合した、というのがこの漫画の解釈であることが解ります。意識はルークのもののようですが、「師匠」にルークとアッシュ双方の呼び癖の読み仮名を振っているところを見ると、多少意識も重なっているイメージらしい。 で、そんなルークを見たヴァンは感嘆の笑いを浮かべて「おまえは今こそ真の人間となったわけだ」と評す。 この漫画では、アッシュと融合することでレプリカルークが《人間》《真のルーク・フォン・ファブレ》になったと解釈していることが解ります。 原作にも、ルークがアッシュは俺の中にいる力を貸してくれていると言ったり、ヴァンがルークにお前は真の人間になったと言ったりする場面はありますよ。でも、それは《融合による完全化》って意味じゃないと、私は思ってます……。 原作ヴァンが「おまえは こういうのは(中略)、ホント解釈の方向が合わないでござる。
再び漫画のストーリーに戻ります。ヴァンと《真ルーク》の激突。その次ページから脈絡なく、ティアが大譜歌(?)を詠い始めます。何と六ページに渡り、彼女(と、ユリアの?)の独白付きで。 (…やっと)(わかったの…) 合間に小さいコマで仲間や六神将の表情を描写。まだ全員が生きていて、歌声に驚いている様子。同じ場所にいたジェイド、ディスト、リグレットはいいとして、離れた場所のアニス、ナタリア、ガイ、アリエッタ、ラルゴにも聞こえているのはおろか、最上階のヴァンとルークにもバッチリ聞こえていました。どんな声量なんですかティアさん。 そして、どうして詠うのティアさん。 この漫画には、大譜歌でローレライを活性化させヴァンを弱体化させようという作戦が存在しません。そもそも六神将の前で大譜歌詠っても何の効果もないはずです。なのに戦闘中に対戦相手放置して詠う意味は何なのよティアさん。(一緒に戦っていたジェイドが驚いていたので、援護を頼んで詠い始めたわけではないらしい。)突然「新技、閃いたわ!」状態にでもなっちゃったのか。 ヴァンとルークはしみじみと聞き入っています。 「七番目の譜歌…… 幼い ヴァンは過去を追想するような少し切なげな遠い目で。私の中のローレライが震えているとは言っていますが、少しも苦しそうではありません。大譜歌が決戦の要となるという設定は消失している模様。そして細かいこと突っ込みますが、ティアはホド崩落後にユリアシティで産まれたので、ホドでヴァンに譜歌を聞かせてもらうのは不可能。 「綺麗だ ティアの声」 ルークは赤面しうっとりと微笑んで。恋してますね。
で、次の瞬間。ルークがローレライの鍵でヴァンをぶっ刺して倒しました。アニメ版に沿った倒し方ですが、剣に超振動の力を込めることはせず。アブソーブゲート決戦の時、そのパターンを使っちゃったから? #ルーク、正面からヴァンの胸を突き刺したまま。表情は見えない 個人的には、ここはアニメ版のアレンジままの方が好きでした。 ちなみにルークがローレライの宝珠を剣にはめて鍵を完成させる描写は存在せず。そもそも剣に宝珠がハマってるように見えないんですが(束の刀身と接する部分に上からΠ型宝珠が差し込まれていないといけない)、本来何もないはずの刀身の根元部分に丸く、強い輝きがある場面が二つほどあったので、それが宝珠だと言うコトかもしれません。
ここでもまた、ルークが自分の言動をアッシュと重ねて語り、ヴァンの方も《二人》に向けて言葉を返しています。この後ルークが地核に入る時も「ローレライと俺たちとの…約束なんだ」と言ってましたし。やはり、この漫画では《融合したのだから、ヴァンを倒したのもローレライ解放も、ルークとアッシュとの共同作業》という解釈なんですね。 そりゃ、ヴァンを倒すまでには仲間たちやアッシュの協力があり、ローレライは解放を元々二人に頼んでいましたが。でも原作では、レプリカルークの成した仕事だった。悩んで考え続けて頑張って踏み越えて想いを受け継いで、果たしたのは彼だった。だからちょっと、いえ割と悲しい。 この漫画版の主人公はレプリカルークではなく、ルークとアッシュ二人。仕事の成果も仲良く平等に。だって彼らは二人で一人の《ルーク》なんだから、ということなんですね。
ナタリアと同様に、ティアも愛の奇跡で離れたヴァンの死を察知。ハッと歌をやめ「兄さん……」と呟いて振り返ります。 エルドラントが崩壊開始。リグレットは瀕死で床に倒れていて(背後にはカイザーディストが埋もれているので、ディストも死んだらしい)、「――行けティア」「おまえの行くべきところへ…」と促す。切なげな顔をしたものの、「はい!!」と礼節正しく返事して、ジェイドと共に駆け出すティア。それを見送りつつ「ヴァン」「いま…お傍に」とリグレットは息絶える。……あれ? リグレットもヴァンの死を察知してますね。これも愛の奇跡? それともエルドラントの崩壊から推測したってこと? つーか。かなり不思議に思ったのですが、リグレットはどうして死んだんでしょうか。ティアが詠ってた間はまだ元気そうだったのに。ディストはジェイドが倒したとして、なんで大譜歌で。……はっ。この漫画における大譜歌は指向性の殺人音波だったのでしょうか!? こえーー!! そして立ち去り際、思いっきり杖を投げ捨てて行くティアなのでした。おいおい。ヴァンも六神将も倒したからもう戦う必要はない身軽になって一刻も早くルークの元へって事? しかし兵士や魔物の残党かいるかもしれないんですから武器を捨てるのは早計かと思うよティアさん。
一方、アニス、ナタリア、ガイ組。アリエッタの遺体を横抱きにしたラルゴが、「決着はついた…」「行くがいい おまえたちの道を」と言いつつ、自ら崩壊する奥地へ歩き去る。そして「強く――生きろ」「メリル」と言葉を残すのでした。仲間と共に反対方向へ駆け出しながら「……」「お父様!!!」と涙するナタリア。 この漫画のラルゴは《ねじの外れた信念》を持たないようです。ヴァンの死を(愛の奇跡で? 笑)感知したからなのか、彼自身はまだピンピンしている様子なのにこの諦めの良さ。そして口に出してナタリアに「生きろ」と言ってしまう。 もう一つ気になったんですが、ナタリアとラルゴに対峙はさせても言葉の応酬だけで実際に傷つけあう場面は一切描かず、ナタリアに止めも刺させませんでしたね。アブソーブゲート決戦の時、ティアがヴァンに全く攻撃されず自分も攻撃せず、最初から最後まで突っ立って観戦していて奇異に思ったのですが……今回もティアはヴァンとは戦わなかった。これは何なんでしょうか。肉親と殺し合いなんてさせたくないという漫画家さんのポリシー?
さて。崩壊していくエルドラントを走るアニスは、物陰にフローリアンを発見。「あなた…は!!」と驚き立ち止まる。 この後 最上部まで連れて行って一緒にアルビオールで脱出したようですが、今回はそこまで。彼が何者かどうしてそこにいたのか、そして名付けのエピソードはエピローグでやるのかな? 場合によっては《彼》の帰還場面にフローリアンも同席するんでしょうか。 フローリアンの存在はかなり思わせぶりに引っ張り続けていたので何かやるのかと思っていたら、出てきただけでした。存在抹消されなかっただけ幸運だったということでしょう。
ティア組アニス組合流して、仲間全員でホド神殿最上階へ駆け登る。そこには、床にローレライの鍵を突き立て、アッシュの遺体を横抱きにして佇むルークが。「ルーク!! アッシュ!!!」と呼びかける仲間たち。 意気高く突っ込みを誘われている気がするので、遠慮なく。 アッシュの遺体はどこから湧いたのよ。 アッシュの どれであろうと、なんのために? 仲間に向かって、みんなは脱出してくれ俺はここでローレライを解放する、ローレライと俺たちとの約束なんだ、と「俺たち」というのを強調して言ってたので、ローレライ解放はアッシュの肉体とも一緒にやらなくちゃいけないんだというこだわりから、わざわざ下に戻って遺体を取ってきたということなんでしょうか。感動するとこなのかもしれないが私は怖いです。 話に齟齬をきたすほどの無理をしてまで、ここでアッシュの遺体を抱えさせる必要はなかったんじゃ。
ルークと仲間たちの間の床は崩壊していて近寄れません。仲間たちがそれぞれ鬼気迫る様子で呼びかけます。 「ルークがいなくちゃ私が困るんだから!! 私…教団を立て直すの」「お金持ちのルークは私の支援者だよ!! ねっ!? ね!!!」 ぽろぽろと大粒の涙を落としながら呼びかけるアニスは、アリエッタと戦っていた時からずっと泣きっぱなしです。傍らにはちょっと引いてる様子のフローリアン。ルークは背を向けたままだったので彼の存在には気づいてなかったっぽい。 「おまえは俺のご主人様なんだからな!!」「使用人を放置して帰ってこないなんて…… 許さないぞ!!!」 漫画版のガイ兄さんはルークの 「大事な人を失うのはもう嫌です!!」「生き延びて!! お願い――絶対に!!!」 ナタリアも涙を滂沱と流しています。彼女もラルゴと戦っていた時から泣きっぱなしでした。最上階に駆け登ってルークを見た時、口元を押さえて涙してましたが、ルークの抱えたアッシュが既に死んでいることを見てとったからなのかな。 「ご主人様!! 一緒じゃなきゃいやですの」「ミュウのご主人様はご主人様だけですの!!」 ミュウ太った? 「生きて…帰ってきてください ルーク」「無茶でも… そう――望みます!!」 本作ジェイドはルークたちの
そして、真打ちのティアさん登場です。 「…待ってるから」「待ってるわ 私……あなたのこと待ってる…」「ずっと待ってるから!!」 原作ではガイやミュウも「待ってる」と言うのですが、本作ではそれをカットし、反対にティアには執拗なほどに繰り返させています。言葉の特別性を高めようとしてるのかな。 今まで仲間たちがどう呼びかけても振り向かなかったルークが、振り向いて、落ち着いた様子で凛々しく微笑みました。 「帰るよ」 言葉をなくしたように立ち尽くすティア。ルークの姿は消え(地核に入る様子は描かず)、仲間たちはティアを促してアルビオール(3号機?)で脱出。窓に張り付いた彼女は遥か眼下のエルドラントを見つめ、独白します。 #仲間に促され脱出するティア ティアに涙を流させない縛りが徹底されていたのが良かったです。次回エピローグ、《彼》を迎えたティアの美しい涙のカタルシスを期待していいんですよね。早く読みたいです。贅沢を言えば、最終決戦周り(読者が覚えていられる範囲)で、私は泣かないわと意地を張るティアにルークが泣いてもいいんだぜと言う系のエピソードがあったら自分的に嬉しかったですけど、紙数もないし解釈も色々違うし、そう都合よくいかないのが当たり前ってもので。
今回分を読みながら、ゲーム版本編ドラマCD最終巻を思い出してなりませんでした。 唯一の大きな相違は、本作は男女恋愛を非常に重視していたこと。特にアッシュとナタリアの描き方。ドラマCD最終巻の方のアシュナタ排除っぷリは、執念的なものさえ感じさせるほどでしたもんね。 しかしそれ以外は、本当によく似ています。
さて。ドラマCDの方では、エピローグで帰ってきた《彼》が(アッシュの力を得た)ルークでした。名前を呼ぶまではしていないものの、ティアは嬉しそうに声震わせて「帰って来てくれたのね…」と迎え、《彼》も明るく「約束したからな」と返す。明るい音楽が盛り上がる大団円でした。 というわけで、この漫画でも帰ってくるのはルークである率が90%以上だなと、今回分を読んで思いました。あの ティアが涙を流しながら頬を染め微笑んで《彼》に飛びつき、ラスト1ページは花畑に「おかえりなさい…!」みたいな台詞が一つ入って終わるとか、そういう幻が見えましたが、私の想像は宝くじレベルで当たらないという実績があるのであれでござる。でもそういう系統の期待を煽りますよね。 大爆発にああいう説明打っちゃったんだから仕方がない。それにルークとアッシュの「必ず生き残れ」という約束も消しちゃってるので、《彼》がアッシュの場合「約束してたからな」の言葉が弱くなっちゃいますし。 ルークが帰還するなら、もうそれを極めて素直な感動的ハッピーエンドで有終の美を飾ればいいと思います。 シナリオ上の正解を描くラストはアニメ版がやってくれたから、もういいや。諦めました。
次回は巻中カラーとのことですが、実は(使い回しカラーのみの)今回も同じ扱いでしたので。描きおろしカラーページがあるのかはまだ謎。 ともあれ、次回でとうとう終わりです。長かった。
1月号最終回です。ページ数は17。うちラスト3ページがカラー。 前回から予想されたとおりの素直なエピローグでした。二年後、それぞれ充実して暮らしている仲間たち。ルークの成人の儀の夜、渓谷に集まってティアが詠う。すると《彼》が出現、約束してたからなと微笑む。晴れやかな笑顔で宝石のような喜びの涙をこぼすティア。彼女と仲間たちが《彼》に駆け集まっていくところで終了でした。 名前を呼ぶまではしていませんし、ティアが抱きつく直前で幕切れにしてありますが、帰って来たのはどう読んでもルーク。アニメ版ではジェイドにくっついたまま喜びの顔を見せない意味深長な演出のされていたミュウまでもが(>▽<)こんな顔して感涙☆大喜び★飛びつこうとダッシュに変更されてあり、明るく綺麗な雰囲気のハッピーエンドでした。
ただし、ジェイドのみ笑顔でなく、ぼんやりした無表情でした。その他大勢的にコマの端っこに描かれているだけですが。駆け寄らないのは彼の年齢・性格的に不思議ではないにしても、ティア、ガイ、ミュウを喜びの笑顔に変更しながら、彼だけ原作ママと言える表情にしたのは何故でしょうか? 本作の作者さんは、どうして原作やアニメのラストがジェイドの悲しげなアップになるのか、消化できていなかったのかもしれません。意味を理解しているのなら、ルーク帰還エンドに改変した以上、彼に原作ママの表情をさせてはいけないからです。解らなかったけれど気になりはしたので、ジェイドだけ表情を残したのかなと穿ってしまいました。 もしも、「帰ったのはルークではない可能性もあるんですよ」という解釈の余地を与える意図ならば、愚かだと思います。
作画は全体的にあっさり目。セレニアの花が印象派と言うかラフで残念でした。1コマくらい、それが美しくて特別な花なんだと判るコマが欲しかったなぁと思うのは贅沢な望みだったのでしょうか。
ではもう少し詳しく内容に触れます。まずは二年後の仲間たちの描写。 アニス&フローリアンは約1ページ使って。 フローリアンが何者かという説明は、とうとう行わず。ただ、アニスが彼をフローリアンと呼び、共にダアトで暮らしている様子を描いただけでした。必要な説明はすべきではないかと思いました。 コミカライズなんて原作ファンしか読まないでしょと投げているのか、顔が同じだから推測できるでしょと投げているのか、単にうっかりさんなのか。 課題から逃げ出したフローリアンをアニスが捜しに来るというシチュエーションで、アニメドラマCD4を参考にしているのかも。
ジェイド&ガイは約2ページ。 『追憶のジェイド』単行本書き下ろしエピローグの焼き直しと言うか改変と言うか二次創作でした。本家はシリアスだったものをコメディ風味に脚色。 国防委員会にてフォミクリ―研究再開をジェイドが提案、ブチ切れたノルドハイム将軍がこめかみに血管を浮かせつつ「――もういい!! 下がりたまえ カーティス大佐!! 君らしくもない!!!」と怒鳴って、作戦会議室からガイ共々ジェイドをバタン!! と締め出す。「おー こわっ」と呟き汗タラなガイ。 会議室にいた他の国防委員は汗タラのコメディ的困惑顔。ゼーゼマン参謀総長は……これ、お菓子か何かを食べてるんでしょうか? ピオニー陛下は「やれやれ」って感じの苦笑気味のコメディ汗タラ顔。 ジェイド「やれやれ そんなに無謀でしたかねぇ?」「私の提案は」
しんみりした二人の会話が終わると、その場に大勢の女性たちが押し掛けてきます。絵がラフ過ぎて判然としないんですが、服装がドレスっぽいのと軍本部(※)に入りこめていることから、メイドなどではなく、権力持ちの貴族令嬢たちでしょうね。 ※会議の場所が『追憶のジェイド』と同じだと仮定すると、軍本部の作戦会議室だと思われるので。違うなら宮殿でしょうか。 令嬢達「あっ… ガイラルディア伯爵♥ ねぇ私といつデートしてくださるの!?」「ずるいわ!! 私の番よ」「私よっ」 完治……。原作では完治したと語られたことはありませんので、オリジナル結末ですね。 以前の感想で、レムの塔から転落しかけたレプリカマリィをガイが救うオリジナルエピソードについて、女性恐怖症克服イベントも取り入れてる感じだと書きましたが、本当にそのつもりだったみたいです。 二年も経ったんだから完治しててもおかしくないし目出たいことですが、なんか寂しい(苦笑)。「私の番よ」なんて令嬢たちが言い争ってて、前にデートした娘もいるのかなという感じで。かわりばんこにデートしてるのでしょうか。この漫画のガイは既に浮名を流してそう(笑)。幸せそうだしルークも帰ってくるしで言うことありませんね。
ナタリア&シュザンヌは1ページ半。……ファブレ邸でしょうかね、ここ。薔薇が生い茂るテラスです。シュザンヌは白い丸カフェテーブルに着いていて、テーブルの上にはミュウ。小動物っぽくシュザンヌの手にじゃれついています。どうやらこの漫画のミュウは、チーグルの森に帰らずファブレ邸に居ついたみたいですね。 シュザンヌはナタリアを「ナタリア様」と呼び、彼女のレプリカ保護への尽力を シュザンヌ「もう あれから 二年になるのね…」「今日は盛大な式典になるわ」「(涙ぐんで)最後に…真の英雄となったのだから あの子たちは」 ……「懐かしいあの森」? 「森」? 確かに道には木々が茂ってたし森と言ってもいいんだろうけど……地名はタタル「渓谷」だし、実際に集まる場所は花畑だし……。 読み返してみたら、本作では二度目にタタル渓谷に行った時、もう「森」だと言ってるんですね。うむむ。 ナタリアが「懐かしいあの森」と、ルークとティアの思い出の場所であるタタル渓谷について語るのも、ちょっと違和感がありました。そりゃ、タタル渓谷のセフィロトには全員で行きましたけれども。そう考えるとパーティメンバーにとっては世界中が「懐かしいあの場所」なのかな。
ティアだけは私生活が全く描かれず、タタル渓谷の花畑で仲間たちの前に立って詠う場面から描写されます。 今回のナタリアが、シュザンヌと話している間じゅう背を向けて最後に顔見せアップになるのは、彼女の成長を印象付けるための演出だそうですが。ティアについても同様に、顔のアップが出るまで、口元→足→後ろ姿と、焦らして盛り上げてありました。 また、原作ゲームのスタッフさん方が発売当時のインタビューで、エピローグのティアは口紅をつけている大人になった演出だと盛んに仰っていましたが、この漫画でもしっかりそれを受け継ぎ、彼女の唇には艶やかにトーンが貼られておりました。 詠うティア。大譜歌なんでしょうか? 説明は全くされません。詠いながら独白します。アニメ版のオリジナル台詞の取り込みです。最後の最後までどっぷりアニメ沿いでした。このやろう。 … と、思いつつ目を上げると、少し離れた正面に《彼》が立ってるじゃありませんか。わーお。 驚きながら涙を浮かべるティアのアップ。どうしてここに、ここからならホドが見渡せるそれに、の会話で涙がキラッと落ちて。キラキラ涙を振りこぼしながら笑顔で駆け寄るティアのアップ、同じように喜びいっぱいで涙ぐんでるガイとミュウ、笑顔のナタリアとアニス。なんかぼーっとしてるジェイド。
大アップで優しげに微笑む《彼》はどう見てもルークです。駆け寄るティアと目線を合わせつつ「約束 してたからな」と答えた遠景で終了でした。
で、次ページから「お疲れさま特集」ということで、「コミック版『テイルズ オブ ジ アビス』連載終了特集 ROAD OF THE ABYSS」という特設ページが、12ページ・全カラーで付属していました。 カラーイラストを使用した目次付き扉が1ページ、これまでの漫画の内容をコマ絵をたっぷり使って振り返る企画が3ページ。イラストギャラリーが5ページ。漫画家さんからのメッセージと、原作ゲームスタッフの吉積信さん、樋口義人さん、実弥島巧さんからの労いコメントで1ページ。最後に二ヶ月前から募集しておいた読者のお祝いハガキの山が見開き2ページ、という内訳。原作ゲームには触れず、ひたすら漫画の軌跡を讃え完成を祝っています。イラスト集もほぼ同時発売したそうです。 世にコミカライズは無数にありますが、(外部作家によるもので)このような「お疲れさま特集」が組まれたものを、寡聞にして見たことがありません。いえ、十年以上連載してTVアニメやドラマになったような人気一次漫画でも、ここまでの「連載終了記念」特集は、まず見ないです。特異なものを見た気分になりました。同誌で連載中の『テイルズ オブ ディスティニー』コミカライズも、最終回を迎えたらこんな感じで特集されるのでしょうか。
漫画家さんのコメントは半ページ分もあり、考えさせられる内容でした。要約や一部引用では誤解を呼ぶ恐れが高いと判断したので、長いですが全文引用させていただきます。 ※緑色の強調文字は原文ママの装飾です。 いくらでも書けるような、何も書くことがないような……というのも、今すべてが終わってみると四苦八苦していた記憶しかありません。 「……なんだか大変なことになってしまった」。 そんな気持ちで『TOA』を引き受けたのか!? と怒られちゃいそうな出だしなのですが(滝汗)。
何しろ、それまで漫画をまともに描いたことがない私です。最初はとにかく原作をなぞってネームに起こすだけでも必死でした。 「最初から山頂を見ちゃうと絶対つらくなる。足元だけを見つめていきましょう」 そう、足元だけ見つめてがんばる。がんばる。ただがんばる。ひたすらがんばる。するとその甲斐あって、少しずつネームのイロハもわかってくる。ちょっと楽になる。ちょっとほっとする。同時に、ちょっとだけ余裕もできてくる。 「……すこし演出を工夫してみようかな」 そのちょっとした工夫が、つたないなりにけっこううまくハマッたりすると、これがうれしいもので。しかもネームを読んだ担当が「あそこはよかった。ああいうのはどんどんやりましょう」なんて褒めてくれたりもする。 「……もっといろいろやってみてもいいかも!」 そうです、以下エンドレスです。最初のころの消極ぶりが嘘のように(むしろその反動かも)……もうそこからは大暴走だったのです。 第2部ではやたら熱っぽく積極的に、大胆なアレンジや工夫を取り入れていきました。当時はそれが原作シナリオに対する最大の敬意なのだと信じて疑わなかったのですが、今になってしみじみ思うのは……メーカーさん&実弥島さんは、私の無謀なチャレンジをよく許してくださっていたものだなぁと……。 「漫画ならではのことをやるんだ。漫画にしかできないことをやることで、よりおもしろくするんだ!」 ……そんな想いが突っ走っていました。数年前。たった数年前のことではあるのですが、すごく荒削りで乱暴なことをしていたのだと今さら青くなってしまいます。というか、実際、じつは途中で1回青くなってしまったのです。
エンドレスの四苦八苦は、そうやっていろんなところを不格好にみっともなくグルグルした結果、現在では、すごくシンプルなところに落ち着いています。 「私も、自分にしか描けない物語が描きたい」
『TOA』を通して、すごくたくさんのことを学ばせてもらいました。 「最初から山頂を見ちゃうと絶対つらくなる。足元だけを見つめていきましょう」 ……この初代担当編集の言葉には、今こそ、こう返そうじゃありませんか。 「実際に登ってみたら、ありえないほど遠かったですよ!! 山頂!!」
……でも、かつて山のふもとで「私には漫画家なんて無理です」なんてイジけてた人間が、今は泥まみれの笑顔で「漫画を描くのって、最高におもしろいよ!」って言えるようになった。
最後に、私の『TOA』を愛してくれたみな様へ。5年という長い時間をともに過ごしてくれたことに、心から感謝します。 「ありがとうございました!!」 シナリオを弄ったため一度青くなった、とはどこのことを指しているんでしょう。 この漫画ではタルタロスがアクゼリュスに現れません。崩落跡からユリアシティへの移動方法は語らず無視していました。ジェイド達はユリアロードで外殻に帰還、ガイはその時点で別れてシティに残留する。 これは大筋でゲーム本編ドラマCDと同じ脚色です。当時から疑っていましたが、ほぼアニメ版に沿ってレプリカ編を描き上げた結果から鑑みるに、この辺りはドラマCD版を下敷きに描いたのだと結論していいかと思います。そう思えば、本作レプリカ編クライマックス〜ラストの《真ルーク》解釈・脚色がゲーム本編ドラマCDとそっくりなのも偶然ではないのでしょう。 その後は民間連絡船で移動しケテルブルクでアルビオールを入手、という大胆脚色。お陰でカースロットが無くなり、ガイの正体バレがかなり遅く・地味になってしまったので、そこは不満でしたっけ。 しかしタルタロスがシェリダンになければ地核振動停止作戦が語れません。(ドラマCDはその作戦そのものを無いことにしたので、参考にできない。)と言う訳で、イオンが権力を行使し予めシェリダンに運ばせておいたという、ちょっと強引な辻褄合わせがありました。青くなったと言うのはそこのことでしょうか。 で、それ以降は視野が広くなって描き方が変わったとのことですね。 実際、この漫画の構成バランスがおかしくなったのはそれ以降からだったと記憶しています。シェリダンの惨劇〜地核は今までになく力が入って脚色の質がそれまでとは異なり、展開が遅かった。それが終わると予定外の休載。その間に描いたというオリジナル漫画が他誌に発表されて。再開した『アビス』の方は唐突に崩落編(第2部)結末に飛び、そのまま駆け足でレプリカ編へ。ページ数は半減。この迷走ぶりに、漫画家さんの身に何か起きたのかと不安を感じましたっけ。一方で数ヶ月おきに長編オリジナル漫画を他誌や本誌に発表。 「私も、自分にしか描けない物語が描きたい」。 ああ、やっぱりそういうことだったのか。 プロとして当たり前の欲求です。それ自体は何も問題が無い。けれど当時の状況を思い今回のコメントを読むと、複雑な気分です。早くオリジナルに絞りたかったのに最後まで描いてくださってありがとうと感謝しなければならないのでしょうけれど。
漫画家さんはそう評されて不本意のようですが、レプリカ編(第3部)は駆け足だったと思います。 ガイやナタリアの衣装を変えてファンサービスしたり、主人公たちを三グループに分けて効率的に並行展開させたイオンの死までの再構成は、気を配っていたし工夫もしていたと思いますから、その努力を読者側も酌み取らねばならないのかもしれません。 ああ、でも。コメントまで読み終えた私の胸の内は、モヤモヤ感でいっぱいです。
私はこの漫画を読んで原作『アビス』を購入しました。発売前に連載開始されたこの漫画の第一回目が面白く、買うか迷っていた気持ちを吹き飛ばしてくれたからです。本作がなければ私は『アビス』をプレイしていなかったし、ファンサイトも作っていなかったでしょう。 序盤、タタル渓谷で目覚めたルークの「あれが海なのか」と呟く表情のアップ。連絡船でローレライに操られたルークの放った超振動が彼方の岩島まで消失させてしまう恐るべき描写。これらの演出や脚色は原作よりも優れていたと、今でも思っています。 けれど崩落編は、迷走の挙句の構成崩壊という結果に終わりました。 そしてレプリカ編。アニメ版を小手先で再構成したコミカライズになり果てていたのはまだいい。作業を軽減しなければならないほどの事情があるのだろうと同情していました。けれど 全ての設定を変えてはいけないとは思いません。たとえばセフィロトの数などは、脚色に応じて変更するのは大いにありだと思います。でも大爆発設定は変えて(間違えて)ほしくありませんでした。
今回、ガイの台詞に「 その回が収録された第4巻の感想でも指摘したことがありますが。フォミクリ―は「同位体複写技術」ではありえません。何故なら、フォミクリ―では同位体は作れないからです。これは原作中ではっきり説明されています。(ジェイドがキャツベルトで説明する。) 事故によってルークはアッシュの完全同位体のレプリカとして生まれた。特異な存在でした。そのためアッシュや(彼の完全同位体の)ローレライから通信され、 これは『アビス』の基本的な設定の一つです。 しかし、この言葉は第4巻の帯にも使われ、数年を経た最終回でもまたまた使われました。漫画家さんは同位体を作る技術なのだと思い込んでいるのでしょう。 些細な勘違いですね。けれど、大爆発の誤解説を見て今回のこれを見て、この漫画家さんは設定を理解していなかったし、資料の確認もちゃんとはしなかったんだなと、寂しい気分になりました。五年も携わっていたのに。限りなく原作に近い、唯一の公式コミカライズだと標榜していたのに。連載中何度も「面白いコミカライズを追求しています」と意気高く主張していたのに。 ストーリーの再構成も大事ですが、設定把握もしてほしかったです、原作ファンとしては。漫画と原作は別物だから? その免罪符の掲示はどこまで許されるものなのでしょう。
私はこんな風に陰々滅々としちゃったんですが、明るいハッピーエンドでしたから、大喜びした読者は多かっただろうと思います。読者ハガキを拝見すると「原作とは違う結末を期待」とか「ハッピーエンドがいいです」とか書いてありましたし。 ともあれ、五年間お疲れさまでした。
最終巻連載終了の翌々月、2011年1月末に、最終回までを収録した単行本最終第8巻が発売されました。予想通り少し厚いものでした。 70ページ分に細かな修正を入れ2ページ分を描き足したという漫画家さんのツイートを知って、諦めながらも淡い期待を抱いてしまいました。あの致命的な設定間違いに何らかのフォローがなされるのではないかと。 そんなことはなかったぜ。 むしろ少々ながら悪化して……る気が。これは予想外です。 モヤモヤが再び湧きあがってしまったので、蛇足も蛇足ですが感想を追記させていただきます。褒めていませんので、満足感を汚されたくない方はご注意ください。
描き足しは、第51回(2010年12月号分)の最終ページ後に追加されていました。見開きで、1ページ目は地核に降りたルークにローレライが語りかけ、アッシュの手がピクリと動くエピソード。2ページ目はページ全体を使ったエルドラントの遠景で、ぼかした白線が空にドーム状に描いてあるので、多分、光がエルドラントからパッと広がった様子(ルークとアッシュが融合した?)をイメージしているのだと思います。 どうしてアッシュの手がピクリと動く場面を描き足しに選んだのでしょうか。 ここでアッシュの手が動くこと、そしてラストシーンにジェイドの悲しげな表情が大写しされること。帰ったのがルークならば、理屈に合わない、齟齬を感じさせる事象です。即ち、これらは帰還者が実はアッシュであることを気付かせる、そのために用意されている要素。 この漫画では、帰還者をルークにしています。そう変更・決定した以上、《アッシュの手が動く》場面を描いてはいけないのです。 設定を歪めてまでこの漫画が選んだ独自の筋。それを通らなくする要素を、どうしてわざわざ描き足したのか? 思わざるを得ませんでした。馬の脚が現れてしまったんだと。 最後に帰ってくるのが本当にルークなら、どうしてここでアッシュの手が動く? どんな理屈で、どんな意味があるのか。意味があるなら、ルーク帰還のラストに合わせてどう変えるべきか。 それを考えなかった。ただ、そのまま写し取って描いた。 ああ、この漫画家さんは本当に、ラストシーンに至る原作の伏線も設定もエピソードの繋がりも、理解していないし考えようともしなかったんだ。私の傲慢でも勘違いでもなく、本当にそうだったのか……。 ……原作ママに写し取る。それならそれで、 結果としてちぐはぐになって、全体が繋がらなくなっている。お話として、みっともないことになってるじゃないですか。
描き足しページ。地核のルークは口元しか見せずに表情を強いて隠しています。そしてなんと、ローレライが完全に人間の顔になっている。ただし、こちらも口元だけで表情を見せません。彼はルークとアッシュ二人に語りかけます。 ここでも、ヴァン討伐〜ローレライ解放はレプリカルークという個の乗り越え辿りついた道ではなく、アッシュとルーク二人の共同作業なのだと強いて語り直されています。 『――世界は滅びなかったのだな 私の分身たちよ』 この漫画家さんは、最後に《彼》が帰って来たのは、ローレライがお礼として《奇跡》を与えてくれたからだと思っているんですね。 原作は「どうしてあの結末になったのか」ひととおり設定して語っていたのに。度外視して、奇跡のローレライパワーです! としか考えなかったんだなぁ……。
なんて。漫画家さんがそんな風に考えたのもまた、アニメ版を見ての勘違いなんだろうなと透け見える感じでした。 原作とアニメ版のこの場面、実は細かく状況が異なっていまして、漫画は例によってアニメ版を発展アレンジさせた形になっていたからです。 アニメ版だと、地核に降りたルークのところに人型っぽくも見えるローレライが現れて、驚嘆に値すると言って、薄れて消えていくルークと手ピクしたアッシュの周りをぐるぐる包み込んでしまう。で、繭のようになった光が爆発してエルドラントから立ち昇ります。原作通りの解釈もできますけど、まるでローレライがルークとアッシュに何かをしたかのようにも見える、紛らわしい演出になっています。 一方、原作。 地核に降りたルークのところにローレライが現れて驚嘆に値すると言って、そのまま独りで音譜帯に飛び去ります。光の柱がエルドラントから立ち昇る。残されたルークは地核の中からそれを見上げ、目を閉じて薄れて消えていく。……その瞬間、彼が抱きかかえていたアッシュの遺体の手が、ほんの微かにピクッと震え、超新星のような光の爆発! やがて鼓動が聞こえ始める……。 原作では、ローレライはルークたちに何もしません。言葉をかけただけです。ルークとアッシュに この漫画、原作ゲームのコミカライズなのに。どうしてここまでアニメ版に沿い続けるのか。アニメ版の解釈(演出)を鵜呑みにし、それを更に強調して、原作から見るとあさっての方向へのアレンジをしてしまうのか。 ……ゲーム画面や原作資料を確認するのがよっっっっぽど面倒くさかったんだなァと思ってしまいました。思わざるを得ませんよ、ね。
つーか、ここまで変更してローレライに「おまえたちに 感謝の印を」とまで言わせたんなら、ラストはいっそ二人帰還にしちゃえばよかったと思うよ。そうしたら良くも悪くも伝説のコミカライズとして名を残したことでしょう。
ところで、 ……なんでじゃろ。 漫画家さん的には、《アッシュが消える理由》が《レプリカ情報を抜かれた悪影響》だということは、強いて教えてあげないとニブい読者は気付かないかもしれない、とっておきの真相……なのでしょうか。 ミスリードなのに。まんまと引っ掛かって、傍点付け足してまで強調しちゃって………。仕方ないけど。この漫画じゃそれが真実なんですもんね。アッシュはレプリカ情報を抜かれた悪影響で死ぬ運命で、それはレプリカを作られた者の宿命で、フォミクリ―は同位体複写技術で、つまり世のレプリカはみんなオリジナルの同位体なんですもんね、この漫画世界では。超振動起こし放題オリジナル死に放題ですね。 ちなみに、こんな風に微細な台詞修正をした一方で、誤字やちょっとした設定間違いの方は放置でした。「ファブレ侯爵家」もそのままでしたし、ヴァンは幼いティアに《ホドで》譜歌を詠い聞かせていたと。
間違い自体は初期から色々ありました。ケテルブルクがケテルブルグになってたり、譜業に「ふぎょう」と読みが振ってあったり。でもそれらは単行本化されるとキッチリ全修正されていたんです。ですから、しっかりチェックして作っているんだな、より良くしようとしているんだなと、信頼感を持っていました。 思えば、初期の単行本は巻末に用語集が付いていたり、担当編集記者さん(?)の情熱や原作への好意が感じられましたね。 でも、七巻くらいからだったでしょうか。誤字が修正されずまんま単行本化されるように。直す気力もなくなったんだか担当編集が交代して方針が変わったんだか判りませんが。作り手の熱意が薄れたように感じて萎えたものです。(漫画自体も、細切れの超疾走展開に突入していました。) 最終巻もその調子で終わってしまいました。
そういえばこの漫画、キャラクターやアイテムのデザインが原作とは違うことも稀にあったんですが、あれは何かのこだわりだったのか。 以前の感想にも書いたことありますけど、例えばペールのキャラクターデザイン。
……誰? ご覧のように、連載第一回目に登場するペールは、原作とは全く異なるキャラクターデザインです。顔も髪形も服装も。結構大きな存在感のキャラなのに。(ゲーム発売前の連載開始でしたから)資料が間に合わなかったのかな、と思いましたが、単行本でも無修正なので驚いたものです。この漫画では今後彼の活躍する場面はないんだなと思いました。 ところがどっこい。三年後に再登場。
……誰? 前掲の連載第一回目の爺さんが、原作版ペールのコスプレをしている状態。髪型は元のままで、首のネッカチーフも忘れていません。(原作ペールは髪がやや長く、ネッカチーフも着けておらず。)でも顔立ちは一変していますね。糸目じゃなくなってる。 デザインを混ぜて折り合いを付けたってことなんでしょうが。思えばこの回、このペールやアッシュの真面目な言動をルークとティアが「ペールもアッシュもヘンだ!!」と苦笑したり口あんぐりギャグ顔で驚いてみせたりして、折角のシリアスエピソードを茶化していて微妙だったなぁ。
もう一つ、連載48回(2010年9月号分)に、ローレライの宝珠が大アップになるコマがあります。ところが宝珠の中心にあるべきΠ型の核(宝珠本体)が描かれておらず、光の輪が二つ斜めに交差した独自のデザインになっていて、「?」と思ってました。 で。単行本化にあたり、宝珠の中に描き足しが行われてました。なにやら音叉っぽい光のマークが。えええええ?
交差する光の輪はアニメ版の譜紋の環が元になっているのかなと思いますが、それにしたって違う。うろ覚え描き選手権くらい違ってます。 雑誌掲載時は「簡略化?」と思った程度でしたが、単行本で違う方に進化していたのでビックリしました。単行本化の作画《修正》として原作と違うオリジナルデザインに。どんな意図の自己主張なのでしょう。 特に主張がないとすれば、資料を見返すのが面倒でうろ覚えで描いたんでしょうか。なのに描き足しまでしちゃう勇気はすごいと思います。市販の攻略本にも(核部分のですが)設定資料が載ってますし、アニメ版にも大写しされてる場面がありますし、確認しようと思えば数分でできることではないかと思うんだけどなあ。 ちなみに『鮮血のアッシュ』の方は、アニメ版デザインで正確に描いてましたよ。同じ月刊連載漫画でしたが。
設定を勘違いしていること。伏線を読み違えていること。漫画家さんがそれに気付くことは、恐らくないのでしょう。もう過去作なのですから。二次創作は所詮は借り物。各所で繰り返し発言しておられるように、漫画家を成長させるための糧。連載自体は無事終わり、次のステップに踏み出した。目出たいことで、当たり前で、それでいい。 原稿料の出ない描き足しを2ページ分もしてくださったのですから、愛情があったことは解ります。だからグダグダ文句を書いている私はひどい読者です。 でもやっぱり、好きな原作のコミカライズだからこそ読んでいた者としては、残念だったな。
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