テイルズ オブ ファンダム Vol.2PS2ゲーム/バンダイナムコゲームス 『テイルズ オブ ジ アビス』から一年半後に発売された、『テイルズ オブ ファンタジア』『テイルズ オブ シンフォニア』との合同のファンディスクです。 『ファンタジア』一本、『シンフォニア』一本、『アビス』二本の、計四本の外伝シナリオと、キャラクターたちと対戦できる各種ミニゲーム、それらで条件クリアしていくことで見られるおしゃべりチャット、そして三つの異なる物語世界を繋ぐための大枠シナリオ一本で構成されています。 ミニゲームではお金を稼ぐことができ、そのお金でカジノで更に遊んだり、お店でミニゲーム用の補助アイテムや衣装称号等を購入できます。条件をクリアしていくと、フィールドマップ上に宝箱が出現してアイテム取得できることもあります。
ゲームを開始すると、まず三タイトルそれぞれのラストダンジョン突入前辺りから物語が始まり、それぞれのパーティーが不思議な光に導かれて見知らぬ場所に飛ばされ、その異世界の探索を開始する、というプロローグが語られます。 これが終わるとようやくフィールド画面が出現し、フィールドマップ上に点在するポイントをクリックすることで、外伝シナリオやミニゲームを任意で楽しめるようになります。 四つの外伝シナリオをクリアすると、プロローグに続いた大枠の最終シナリオが出現し、三タイトルのキャラたちが全員集合して問題解決し、それぞれの世界に帰るという結末が語られます。このシナリオを終えるとゲームクリアという扱いになりますが、ミニゲーム等は引き続き楽しめ、称号やアイテム、おしゃべりチャットなどを集めることができます。
総合的な感想をまず述べれば、とても面白かったです。外伝シナリオ目当てで買いましたが、ミニゲームも楽しかった。ゲームそのものも楽しめますが、キャラたちのやり取りや声、勝利コメントがかなり細かく設定されていて、その点で痒いところに手が届く感じでした。ファンディスクとしては十二分だと思います。 #ナタリアVS.アッシュのバカラでのセリフは笑えました。アッシュは自分がナタリアと対戦しているのに、ナタリアの応援をして、ナタリアに負かされると喜び、ナタリアに勝つと謝っちゃうんです。
それでも、ファンディスクで税込6,090円という値段設定は高価過ぎると感じますが、外伝シナリオのボリュームがそれぞれ一時間半程度ありましたので、ドラマCDを数本買ったと思えば安いもの……なのでしょうか。
それと、音楽が各ゲームのものの流用だったのは、とてもよかったです。ドラマCDやOVAだと違う音楽になっちゃいますし、この辺はさすが本家です。音楽を聴くと、そのゲームをプレイしていた頃のことを思い出しますね。
なお、この文章は『アビス』ファンサイトに掲載するためのものなので、全てにおいて『アビス』に重点を置くことを予めご了承願います。
テイルズ オブ ファンタジア 大切な場所原作は、現代→百年前→現代→五十年後と時空を移動していきます。最初期パーティーメンバーのチェスターは「百年前世界」には全く登場しないので、「五十年後世界」で再びパーティーメンバーに加えられるようになった頃には、他キャラとのレベル差が凄いことになっています。 最初のリメイクであるPS版『ファンタジア』からは、これを救済するイベントが用意されていて、夜中に黙々と弓の修行をするチェスターの姿、それを目撃して、チェスターを弱いと小馬鹿にしていたアーチェが態度を改める様子が見られます。(これらのイベントを見るとチェスターのレベルが上がる。) この話は、そのイベントのストーリーを膨らませたもののようです。
戦闘で役に立たなくても、強い信念がなくても、みんなが好きで一緒にいたいならそれでいい。下手であっても料理番などすればいい。…あくまで有志の集まりである『ファンタジア』のパーティーと、社会的立場を持ち責任を負った『アビス』のパーティーとの差を強く感じました。 ただ、ミントが「アーチェはクレスに恋愛感情を持っているのか」を問題にして、人が変わったようになってアーチェに詰め寄り、大怪我をして治療を求めてきたクレスやクラースに治療拒否してしまうのは、いただけないと思いました。そのキャラクターが絶対に取りそうにない言動を取らせる、いわゆるキャラクター崩壊ギャグのつもりなのでしょうが、違和感が強くて笑えませんでした。 また、魔術が使えなくなる病気のタネ明かしの部分で、すずが「それはクレスさんの勝手な解釈です。私はそんなことは一言もいっていません」と言いますが、「勝手な」という言葉は入れなくてもよかったんじゃないでしょうか。すずがクレスを非難しているかのようです。個人的には、「それはクレスさんの勘違いです」くらいの台詞回しがよかったかなと思いました。
#魔術が使えなくなったことを暴露し、仲間に八つ当たりしたアーチェ、その態度を責めたチェスターを叩いて逃げ去る→夜の森で特訓中のチェスターに会う→チェスターが「みんなお前を探しているぞ」と言う→魔物を発見。野営しているクレスたちが危険だと判断、二人で協力して戦闘→チェスターがアーチェに弓を教える約束をする→翌朝、クレスたちがトレントの森まで行ってもらってきたと、魔術不能病の特効薬をアーチェに渡す→チェスターが起きてきて、徹夜で作った弓を渡そうとするが、無駄になったと知って怒る ある意味自分のせいで飛び出していって行方不明になったアーチェを、チェスターが捜しもしないで自分の特訓していたのは何故? ちょっと身勝手じゃないか? みんなアーチェを捜していると言ったのに、「野営しているクレスたちが危険」ってことになるのは何故? 捜索を諦めてみんな寝てたってことか? たった一晩でトレントの森まで行って薬を調合してもらうなんて出来るの? アーチェを捜すか野営するかしてたんじゃないのか。手分けしたのかもしれないが、それをチェスターも知らないし。移動時間はレアバード(小型飛行機)で何とかなるとしても、処方してくれたエルフの長に対して失礼ではないか。(夜中に押しかけて大急ぎで処方させたことになる。命に関わる病気ではないのに。) 話の根幹を崩すわけではない、どーでもいいことですし、適当に理屈を見つくろえるレベルのことなんですが、気になりました。 テイルズ オブ シンフォニア もうひとつの交響曲途中でスパイであったことを明かして裏切り、しかしその後も影でロイドを助け続け、最後には仲間に戻ってくる、ロイドの実の父でもあるクラトス。この話は、そんな彼がいかにして影からロイドたちを助けていたかを、クラトス自身の視点で補完する話です。 本編のメインシナリオライターさんがシナリオを手がけていることもあり、外伝として安心して楽しめます。実際、クラトスの心情の掘り下げ(解説)がとても深かったですし、一方でパーティーメンバーの「いつもの楽しいやり取り」もしっかり入っていて、嬉しい話でした。 それに、四千年前の勇者パーティーのエピソードも語られていて、ユアンやミトスに対するイメージが少し変わりました。特にユアンは、本編ではあまり深い印象を持っていなかったんですが、人間味を感じて愛着が湧きました。 四千年前の勇者たちについては本編で詳しく語られていなかったので、商業アンソロジー等見ていると、ファンの中で独自に育った共有イメージのようなものがあったと思うんですが(ユアンは「ドジっ子」、ミトスは四千年前から二重人格に近い「超シスコン腹黒少年」で姉と恋仲のユアンを虐待していたなど)、当たり前ですがそんなことなかったですね(笑)。ユアンがやや偏屈な人間(ハーフエルフですが)で、ミトスは彼をからかいつつ、姉との仲を静観していました。そして最強は天然マーテル(笑)。既にユアンを静かに尻にしいています。
ただ、一点。文句ではないのですが、とても驚いたことがあります。 クラトスが長々と自分の心情を語り、自分は常に他者に理想や希望を見て依存していた、今もロイドに全てを託してしまっていると反省すると、ロイドが「世界には嬉しいことも悲しいこともあるだろ。だから誰かが誰かの希望になるって、ちっともおかしくないし、クラトスの中の希望を補助する希望が俺でもいいじゃん」「俺がクラトスの力になれたなら嬉しいよ」と笑う。更に、クラトスが自分はミトスを止める事も討つ事も出来ず、どっちつかずのまま四千年を過ごしてロイドが事態を動かすまで傍観し、そんな自分への慙愧と後悔をロイドに自分を討たせることで弁済しようとしたと懺悔すると「四千年って、普通の人間なら生きられない時間だろ。背負う後悔ってのも、きっと一人の人間には重すぎると思うんだ。なら、俺が協力するのもおかしくないよな?」とやはり笑う点です。 ロイド懐広ぇ〜!! 何この人。聖人じゃん。肉体も胎児の時からハイエクスフィアで強化されてるんですから、文句なしに超人ですね。 本編の段階で、ロイドは差別心を全く持たない、他人のために懸命になれる良い子だったんですが、人が、いわば自分の人生も目標も全部あなたに預けてました、支えてくださいと言ってるも同然な時に屈託なく「いいよ」って…。若さゆえの無責任さで深く考えてないだけとも取れましたが、あまりに眩すぎました。(いやまあ、クラトスは父親なんですから、息子として父を支えるというのはなんらおかしくないのか。)そして仲間たちが「ロイドは素晴らしい人だ」と褒め称えて終わるし。(一応、最後にロイドの欠点の一つである「勉強が全く出来ない」点を強調してコメディぽく調整はしてましたが。)ははは。なんじゃこれ。
ルークも仲間たちに認められた良い子ですが、彼は悩んで迷って、一時は仲間たちにも嫌われまくって、長い迷走の果てに突き抜けてその域に達した。でもロイドは最初からそういうキャラなんですよね。良い意味でも悪い意味でも「飽きっぽい」ので人を恨まないし、悩みにぶつかっても殆ど迷わないで突き進みますし。健全で強くてゆるぎなくて、自然体の博愛の使徒と言うか、愛し愛されることの天才と言うか。ラスボスのミトスですら、最後にはロイドに力を貸しちゃいますもん。 なので分かりきってたはずのことだったのに。いやー驚いた…。そんな自分にも驚いた。
テイルズ オブ ジ アビス ティア編 遺言 ― メシュティアリカ ―ティアが実兄ヴァンを討つ決意をするまでの話。ラストが直接本編冒頭に繋がっていますし、本編中の断片的な回想から直接繋げたシーンがクライマックスになっていたり、本編との連絡が非常に密な内容になっています。 しかし、私はこの話、どうも好きになれませんでした。正確には、メイン登場キャラたちが好きになれませんでした。理屈的にも「なんで?」と思う部分が多く、納得できずに引っかかってばかりいました。 本編をプレイしたばかりの頃、私はティアが理解できず苦手に思っていました。その後、本編をじっくり読み込んでいくことで理解できたように思い、最近はかなり好きになっていたんですが、今回のこの外伝で、危うくまた苦手になりそうな気がしたりしました。どうしてくれる。 一つ一つのエピソードは問題ないのですが、組み合わせ方が腑に落ちないと言うのか……。ゲストキャラのカンタビレのせいで話が少し違う方向にずれてるような気もしますし。 結局のところ、本編を見て私が想像していたものと微妙に、しかし不満な方向にずれていたため、そう感じただけなのかと思います。シナリオを書いた方が本編のライターさんではないことも、うがった目になってしまった一因でしょう。(尤も、雑誌のプロデューサーインタビューによれば、設定やキャラの口調など、本編のメインシナリオライターさんの監修がしっかり入っているそうなのですが。)ですので、以下の感想は一プレイヤーのたわごととして軽く読み流して下さい。
それに、ティアの独白で「早くに離れてしまったせいで、私の中に残る兄の記憶は乏しい。覚えているのは時折届く手紙と、ごくまれに帰ってきたときの兄の姿。」と言っているのも、少し引っかかってしまいました。 本編ではティアはヴァンに料理を習った設定になっていますし、ティアの細かい部分にまで強烈に影響を与えている。本編ではティア自身が「兄さんはずっと私の親代わりだったの。外殻大地へ行ってしまってからも、私のところに顔を見せてくれたわ」と言っています。微妙な言い回しの問題なのですが、「兄の記憶は乏しい」と言わせてしまうと、兄妹の絆が細く感じられてしまう。
実際、独白で「兄が自分の理想を実現するために、何をやろうとしているのか……。漠然とした不安が、このころから、私の中に常にあったように思う。その不安をぬぐうためにも、私は兄の本心が知りたかった。なぜあんな恐ろしい顔をして、恐ろしいことを思いつめるようになったのかを、知りたかった。」と語られ、そのためにダアトの士官学校に入って兄の側に行きたかったのだ、と結論付けられています。とうに「兄は変わってしまった」と思っており、それを信じたくない故の行動だったと。
ヴァンが心の内に大きな闇を抱えていることは、ティアにとって漠然とした不安にはなっていても、本編開始直前まで、兄への信愛を揺るがすまでのものではなかったと、本編を見た時は感じていたのです。でも、この外伝の語り口では、ティアは最初からずっと、兄を「不安」の域を超えた「疑念」の目で見ていたように感じられます。
そうして、この兄妹の「フェンデ家たった二人の生き残り」という孤立性、親子のようでもある特殊性を見せ、ティアが兄さん大好きだということを強調してこそ、その間に立ち塞がったかに見えたリグレットに反発するエピソードや、兄が外殻の住人を消そうとしていると知ってショックを受けるくだりも、もっとくっきりと際立ったのではないでしょうか。と思ってみたり。すんません素人の安易な妄言です…。
ND2016、十四歳のティアは士官学校入学を希望しますが兄と養祖父に反対されます。それでも養祖父に頼み込んで兄を説得してもらいましたが、ダアトへ行くことは許されず、ユリアシティに教官であるリグレットが派遣されてくる形でした。この人は兄の側へ行きたい自分の邪魔をする障害だ、とティアは認識し、ささやかな抵抗として、初日の訓練をわざとすっぽかします。ところが、リグレットは遅くなってもまだ待っていました。 『この人は一体、なんなのだろう』 リグレットと出会う以前は、ティアはあまり他人と関わろうとしない、それでいて心の底で「自分を理解してくれる人が欲しい」という飢えを感じている人間だったようです。 関わりたくない他人との距離を開けるため、自分を下げる行動を取っていたティア。それでいいと思っていた。もしかしなくても、あまり友達もいなかったんじゃないのかな? ティアにとって、旅の仲間たちは、初めて出来た本当に親しい友人だったのかも。
共有家畜庫のブウサギ全てが殺される事件が起こり、遺留品のナイフからティアが疑われます。テオドーロはティアが犯人だとは思っていませんが、場を収める為にティアに一緒に頭を下げてくれと求める。理不尽に思いますが、ティアは養祖父の苦しみを慮り、仕方なく謝ろうとします。が、それをリグレットが「自分にやましいことがないのなら、堂々としていればいいでしょう。やってもいないことを、やったというのは無意味よ」と止めます。彼女に従ったものの、ティアは養祖父の立場を考えて不安で仕方がない。嘘でも私が謝った方がいいのかな……。ところが、リグレットが密かに動いて真犯人を捕らえてくれていたのです。ティアはリグレットのもとへ走って感謝します。 ティア「教官! あの……お祖父様から話を聞いたんですけど……。教官が、共有家畜庫を襲った犯人を見つけてくれたんですね。何でも私と同じ、士官候補生だったとか……」 さて。初めてユリアシティへ行った時の、ルークに対するティアの態度を思い返してください。殆ど、今回のリグレットのもの そのままですよね。 ホントはルークの世話のためもあったと思うんですが、いざ、ルークに「俺のためにシティに残っててくれたのか」みたいに訊ねられると、冷たく「自分のすべきことを祖父に相談しようとしていただけ」と跳ね除ける。でもそれでルークがしょんぼりすると後悔して、ちょっとだけ優しい励ましの声を掛けちゃう。 ティアは本当に、リグレットの行動パターンそのままを真似ていたんだなーと分かってニヤッとしました。
本編では、リグレットはティアに宛てた遺書の中で「私はあなたが私を何の疑いも無く理想化していることに不安を感じていた。私はただの人間だ。あなたは私の後を追うのではなく、あなたの理想を追いなさい。」と書き遺しています。
カンタビレは、本編中では神託の盾騎士団の組織図の中にのみ見られる、恐らく組織の数合わせのため名前だけ設定された人物で、物語には全く登場しませんし、噂にのぼることすらありません。ゲームから三ヶ月後に発売されたファミ通攻略本に「強固な導師派であるため ヴァンやモースに反発したため、疎まれてつねに地方に派遣されている。」と、ちょっとギャグのような、身も蓋も無い解説が書かれているだけです。男なのか女なのかさえ分かりませんでした。 それが、この外伝で登場。隻眼で刀を装備した、いかにも叩き上げの軍人的な性格の女将校でした。 登場するなり、彼女はこう言います。 「近ごろは教団も世知辛くてね。やれ誰が導師派だの、大詠師派だの、そんな話ばっかりだ。ま、かくいうあたしも、導師派ってことになってるらしいけど。あんたたちにあらかじめ断っておくが、そんなのは、一切関係ないからね」 ……そ、そうですか……。なんかイキナリ、攻略本情報を(完全にじゃないですが)否定されたよーな……。「導師派ってことになってるらしい」って。「強固な導師派」って感じじゃないですね。攻略本に載ってたのは、どうせ今後カンタビレが出ることなんてないからとテキトーに作られた設定で、シナリオ作製側が、それにちょっと意趣返ししてるのだろーかと思いました。
彼女はヴァンやリグレットとは折り合いが悪く、ヴァンの妹でリグレットの特別指導を受けたティアを色眼鏡で見ていたのでした。無論、彼女なりに真摯に指導している部分もあるのですが、真面目で仕事上では公平にしようとするリグレットとは違い、総長の妹だけあって生意気だと怒鳴りつけ、リグレットの特別指導を受けたことに関して嫌味を言い、わざと正解とは違う指導をして惑わすなど理不尽なことも多々する。彼女のそういう面を生真面目なティアは理解できず、正面から何度も噛み付きます。 カンタビレ「あんた、自分が総長の妹だってことを、鼻にかけてないかい?」 疑問なのですが、この語り口だと、カンタビレはヴァンが何をやろうとしていたか知っていて、それを諫めようとしたこともあったけど徒労に終わったってことになっちゃいますが……。 ともあれ、カンタビレにもらった地図の場所は実験場で、そこでヴァンが悪役ぽいセリフを吐きながら擬似超振動の実験をしている様子をティアは見てしまいます。無防備だったようなのに、どうして誰にも咎められずにそこまで入れたのか疑問です。その場で「どういうつもりなの」と詰め寄りましたが、前導師の指示で平和利用のために実験していると誤魔化されてしまうのでした。
ところがそこで、ヴァンが後から帰省してきたことを養祖父に知らされます。もしかしたら兄は自分を元気付けるために来てくれたのかもしれない。話せば不安はなくなる。そう期待したティアは、ヴァンがいるというセレニアの中庭へ走り、そこでヴァンとリグレットが外殻大地の住人を消す計画について話しているのを聞いてしまいます。 このシーンは、本編でも見られるものです。この外伝ではそれに直接繋げて新しいエピソードが語られ、それがクライマックスになっています。 ティアはその場で二人に詰め寄りましたが、リグレットは「閣下のなさることに間違いはない。私はただ、命令に従うのみ」と言って立ち去り、ヴァンは「私を止めたいと思うなら、止めてみるがいい。だがそのためには、私を討たなければならんぞ。おまえにそれができるか、ティア?」と、ティアに自分の剣を渡します。 ヴァン「その剣を取れ、ティア」 えーとアレですね。ティアが苦手な方の感想など読むと、ティアが兄の計画をろくに知らないまま、怪しいと思っただけで即殺そうとしていて変、と書かれてること結構あるんですが、それをフォローしているように感じました。決定的な情報が既にあって、ヴァンはあからさまに狂人で、その上でヴァンの方から「私を止めたいと思うなら、止めてみるがいい。だがそのためには、私を討たなければならんぞ」と誘ったと。(素直だなティア) ここでヴァンがカンタビレも言っていた「覚悟」を口にします。つまり、それがこの話のテーマなんですね。本編中のティアは、ルークに対して何度も「やるべきことをやりぬくための覚悟」みたいなことを口にしたり体現したりしてますが、それは本編開始直前のこの事件で、やっと培われたものでした……ってことで。
ヴァンが人間としての大切な根本の部分で歪んでいる、一種狂っている、レプリカ世界を作った後でティアやガイと共に安らかに死ぬ(あらゆる悲しみから解放される)つもりだったことは、既にメインシナリオライターさんがインタビューで明言していましたし、それはいいんですが、なんかこう……微妙なさじ加減なのですが。 ヴァンにも、狂人のたわごとと看過できない正義が、理屈があったこと。大勢の人間を魅了しただけの理想があったことを、もっと明確に語って欲しかったのです。これではヴァンが酷く矮小に見えます。誰が正義ともいえない、それぞれの勢力にそれぞれの正義が…「信念」がある。それが『アビス』のテーマの一つだったと思っていて、私はそれをかなり気に入っていましたので、ヴァンをただの「奇妙なことを言ってる頭のおかしい奴」にしてほしくなかった。ティアに、「兄は狂ってるんだと理解」してほしくなかった。これが、この外伝への最大の不満です。
本編では、ティアは最初は兄が理解できず、追い詰められた獣のようになって闇雲に立ち向かっていました。しかしルークの成長する姿を見たり仲間たちと接するうちに視野が広くなっていき、最終決戦前には「私たちは兄さんのやろうとしていることを理解し、その上で、認めてはいけないと思っている」と明言します。五歳の頃も十五歳の頃も「分からない」としか思えなかったティアも、最後の戦いに挑む時には、兄の悲しみや苦しみ、憎しみを理解できたのでしょう。兄がただの狂人ではないと知って、その上で自分の信念とは違うことを示して戦ったのだと思っています。 そう思えば、この外伝はこれでいいのでしょう。
まあ、つい最近自分が通った道だからこそ、ルークのヴァンへの傾倒や覚悟の甘さが癇に障って仕方なかったんだろうなと理解できますが…その後ちゃんと謝ってたし。でも感情的にはムカムカッとするなぁ〜。見ていて可愛げが少ないですし。 いやうん、ティアはやっぱり発展途上の人なんだなというのはよく分かりました。
カンタビレ「大詠師直属だ? 大きく出たね。理由を聞かせてもらおうか」 …To be continued 'TALES OF THE ABYSS' こうして本編へ繋がるのでしたー、という流れは音楽も合っていてカッコよかったのですが、とても気になったことがあって気が散っていました。 あの。ヴァンを討つためにどうして大詠師の部下にならなきゃならないんですか? さっぱり分からないのですが。説明されないし。 確かに本編でもティアは「私は兄さんを止めるために……外殻での任務を引き受けたんだから」と言っています。でもそれは、ユリアシティから自由に出られなかったティアが、第七譜石探索の任務を利用して外殻にいる兄のもとへ向かったんだと思ってたんですが…。 この外伝のティアは、既に自由にダアトとユリアシティを行き来している。ヴァンはダアトやユリアシティに現れる。カンタビレの協力があれば居場所を知ることも出来るでしょう。無理に情報部に所属しなければならない必要は全くないと思うのですが、なのに、何故「どうしても」モース配下にならなければならず、それが「唯一無二の」機会なのか? そもそもヴァンは世間一般的に大詠師派だと言われていました。なのにわざわざ大詠師モース配下にならなきゃならないのですか? ヴァンとモースが結託して監視されたら終わりじゃないですか。それに、導師派とされるカンタビレに大詠師モース配下にしてくれと頼むってどんな状況。(カンタビレ配下になった方が色々と確実だったんじゃないですか?) ついでに。本編ではティアはモースを宗教の師としてとても慕っている。なのに外伝では全くそれに触れられていませんし、ティアに大きな影響を与えたと本編ではっきり語られている人物なのに、この外伝にモースが登場しない(ティアが彼への評価を全く語らない)のが、そもそも謎。「モース様は兄さんと違って本当に世界平和を望んでいるんだわ」などと傾倒するエピソードが入っていたなら、モース配下を望むのも分かるんですが。
ティア「カンタビレ教官。遠方の守備隊へ転属されるという話、本当なんですか?」 「まさか、私のせいで……?」ってアンタ。頼んだ時にカンタビレ自身が「あの親父はあたしを煙たがって、どこかへ飛ばそうとしているからね。言う事を聞いてやる交換条件にでもするさ」と言ってるじゃん。なんなんですかこのズレは。せめて同じゲームの中でくらい辻褄はキッチリ合わせてくださいよ…。 それにカンタビレ。「あたしを失望させるんじゃないよ。あんたの覚悟がどんな結果を生み出すのか、楽しみにさせてもらうからね」って……。 一見して心温まる恩師からの言葉のようなんですが。カンタビレって、ヴァンが危険な人間だと知っていて、ティアをヴァンから離そうとしてたでしょう。カンタビレの指示でティアはヴァンに会いに行き、その後様子がおかしくなって、やがて据わった目でやってきて「果たさなければならない使命があるからです」。ティアが何をしようとしているのか分かりそうなものですが、「楽しみにさせてもらうからね」ですか。 私は、ものすごく無責任だと思いました。カンタビレがどの程度ヴァンの異常性に気付いていたかは分からないんですが、それほど深く気付いてなかったんならティアに忠告するのは大きなお世話ですし、深く気付いていたなら、世界の存亡(もしくは国家間の陰謀)に関わる事なのに、たった十四、五歳の少女に全て丸投げして、兄に傾倒していた時には「覚悟が足りない」、兄を討つ決意をすると「覚悟を決めたようだね」と言って、その後の騒動には全く関与しないって、あんまりです。 これは結局、カンタビレが本来物語の中にはいなかったキャラで、なのに無理に大きな役を与えた結果、生じた歪みなのだと思うのですが。ティアには偉そうに覚悟を問いながら、自分は世界の危機にも教団の危機にも何もしない。噂すら聞こえない。自ら左遷されて姿を消し、ティアの恩人扱い。気分がよくありません。
リグレットに関しては、物語中盤で「私はあるいは……彼女の手にかかって、果てることになるかもしれない。仕方のないことだ。たとえそうなっても、私は彼女を恨んだりしない。私の中の、彼女に対する恩義の気持ちにも変わりはない。だから今、ここで礼を述べておこうと思う。ありがとうございました、教官。」と言わせてるんですが、終盤でリグレットに失望した様子が描かれ、結末ではカンタビレのことばかりでリグレットのことは全く語らない。彼女の印象がカンタビレにかき消されてしまいます。 本編に出てこないキャラとティアの絆なんてどうでもいいです。ティアとリグレットの因縁を強く感じさせるようにしてほしかった。
そして最後に一つ。とても気になっていたことを言わせて下さい。一体何が「遺言」なんですか? ……もしかしてこの話全体がティアの「これからの戦いで私は死ぬかも」という遺言だとか言うつもりなのかなぁ…。そうだとしたら、プレイヤーはみんなティアが生き残ることを知ってますので、色々間が抜けていますが。(話自体、『決戦直前のティアが過去を回想する』形になっているため、「ティアが死を覚悟してユリアシティを出発した」ことを強調されても、「遺言」と言うタイトルはピンとこない。)
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