注意!

 

テイルズ オブ ジ アビス ジェイド編  マルクト帝国騒動記

 外殻降下後からレプリカ編開始までの空白の一ヶ月の間にグランコクマで起こったクーデター事件、そしてジェイドのあるコンプレックスについての話。


 文句なしに面白かったです。このゲームに収録された五本のシナリオの中で一番楽しめましたし、これを見るためだけにでもソフトを買って損はなかったと思いました。キャラクターたちの掛け合いが絶妙です。発売前の紹介記事やタイトルを見た時はコメディなのかと思っていたのですが、扱われている事件やテーマはシリアスでした。コメディ要素とシリアス要素の配分が気持ち良く、萌えもパラッと加味してある。とてもよく出来ていると思います。

 シナリオは本編のメインライターさんによるもので、本編発売後のインタビュー(『電撃Play Station』Vol.341)に「ジェイドの親友のピオニー陛下に関しては、クーデター事件とか、もっといろいろなイベントを盛り込むつもりだったんです。だけど、それだとジェイドがらみのイベントが多くなりすぎてしまう、という理由からカットしてしまいました。」とあるんですが、恐らくその没イベントを手直ししたものなのだろうと思います。今回外伝として見られてよかった!



 ヴァンを倒して外殻を降ろしたジェイドはグランコクマに戻り、溜まった仕事に追われていました。しかしそんな彼を幼なじみたちが悩ませます。ケテルブルクで逮捕したディスト(サフィール)はグランコクマの収容所に収監されていましたが、ジェイド相手でなければ取り調べには応じないと黙秘を続けていて、とうとうゼーゼマン参謀総長のお達しで、ジェイドが取り調べるよう言い渡されてしまう。一方、皇帝であるピオニーは公務から逃げ出して、抜け穴を使って密かにジェイドの執務室に遊びに来ていました。一緒にサフィールをからかいに行こうと促します。ルークたち相手には無敵のジェイドの舌鋒も、それ以上に軽やかなピオニーの弁舌には敵いません。ため息をつきながらも、押し切られて一緒に収容所へ向かうジェイドなのでした。

 収容所にて顔を合わせた幼なじみの三十男三人は、出会った頃の思い出を話します。ジェイドが十歳の頃、軟禁されている悲劇の皇子ピオニーの噂を聞き、その顔を見てやろうと思い立ったのがキッカケでした。いつもくっついて来るサフィールを屋敷に突き入れて囮にして、その隙に忍び込み、ピオニーと出会ったのです。しかし可哀想なサフィールは憲兵に捕えられ、私塾のネビリム先生が助けてくれなかったら収容所に送られていたかもしれません。



 かなり驚いたのですが、ここで語られる出会いのエピソード、かなり細部の台詞回しに至るまでファミ通文庫小説版『真白しろ未来あした』のジェイド編そのままなんですね。その小説の表書きに(例えば監修者や原作者として)ゲームのシナリオライターさんの名はないのですが、あとがきには謝辞が書いてあるので、関わりがあることは分かっていました。しかし小説のエピソードが「全くそのまま」公式だとは予想していませんでしたので、度肝を抜かれました。

 小説家さんが書いたものを、今回ライターさんが取り入れたのか。それとも元々この話の没シナリオのようなものかプロットか何かがあって、それを参考にして小説が書かれたのかは分かりませんが。パラレル的だと思っていたメディアミックス展開が、実は相互補完するものだったと知って、衝撃と興味深さを感じました。

 すんません、今まで外伝小説を侮っていました…。

 しかし、コミカライズ版も「メインシナリオライター原作」を高らかに謳っていますが、ファミ通小説とは、アッシュの過去のエピソードは(設定は同じでも、組み合わせ方やシチュエーションは)違うものになっています。むむむ。なんだか混乱しますね。

 ネビリム先生の話題が出ると、ディストは例によって「先生を蘇らせ、あの時代を取り戻しましょう」と誘いかけてきます。ジェイドは硬い表情になり、ディストには答えずに、ピオニーにだけ断りを言って、足早に立ち去ってしまいました。

#宮殿の前庭(グランコクマ庭園)
ジェイド「……ふぅ……」
#散歩紐で繋いだブウサギたちを連れたガイが通りかかる
ガイ「お、ジェイドじゃないか」
ジェイド「おや……ガイ。良くお似合いですよ」
ガイ「嫌味か」
ジェイド「私が? 嫌味? まさか!」
#ガイ、憮然とする
ガイ「白々しい……」
ジェイド「いいじゃないですか。カゴの中の乱暴な小鳥の次は、六匹のブウサギと一匹の野獣のお世話係。実に微笑ましい」
ガイ「そういう旦那だって、空飛ぶ譜業博士のお世話係に任命されたんだろ?」
ジェイド「耳が早いですねぇ」
ガイ「まあね。だからかい? 珍しくため息なんてこぼして」
ジェイド「まあ、そんなところです」
ガイ「幼なじみなんだろ?」
ジェイド「そんなつもりはないのですが、世間一般的な定義ではそのように言うこともあるようですね」
ガイ「おいおい……」
#しばらく黙りこむジェイド。表情を改める
ジェイド「ガイは……ホド襲撃を目の当たりにしたのでしたね」
ガイ「なんだよいきなり。まあ、そうだけどな」
ジェイド「神経を逆なですること覚悟でお訊ねしますが、やはりご家族や使用人たちを失った衝撃は、相当なものだったのでしょうね」
#ぎょっとするガイ
ガイ「こいつは驚いたな。あんたがそんなことを訊ねるなんて、珍しいこと続きだ」
ジェイド「雨は降りませんよ」
ガイ「かわりに雪が降る」
ジェイド「フフ……。そうかも知れません」
#真面目に考え込むガイ
ガイ「……衝撃……なんだろうか」
ジェイド「…………」
ガイ「喪失感……。虚無感……。うーん。上手く言葉に表せないな。あまりにも被害がでかすぎて、子どもの頃の俺には受け止めきれなかった」
ジェイド「なるほど……」
ガイ「多分父上や母上、それに姉上を失ったという事実認識から始まったんだと思う。そいつは俺にとってわかりやすい『事象』だったからな」
ジェイド「身近なものの死は身近である」
ガイ「そんなところか。いや、正直言うとな。ホドのことをそのまま受け止めたら、生きていけなかっただろうから、心の方が勝手に調節しちまっているんだと思うぜ」
ジェイド「……ああ。そういう感覚はわかります。そうですね、あなたにもそんな経験があるのなら、多少は話しやすいですか……」
ガイ「?」
ジェイド「私は、人の死というものが理解できないのです」
ガイ「ジェイド……」
ジェイド「もちろん、死という定義の意味は理解しています。どのような状態がそれを指すのかも理解している。ただ、死を目の当たりにして『悲しむ』という行為が理解しかねる。ああ――失礼。理解はできますが、私は悲しくないのです」
ガイ「それは調節機能のせいだってことか?」
ジェイド「わかりません。少なくとも、調節するほどの衝撃を受けるものなのかすら……。ただ、あなたが調節機能を経験しているのなら、死を理解しない瞬間がある――その事実だけはわかってもらえるのではないかと……ああ、これも違うな」
ガイ「ジェイド?」
#黙りこむジェイド
ジェイド「失礼。少なからず私も動揺しているようです。わかって欲しいのではないですね。わからないことを話して戸惑わせたくはなかっただけです」
ジェイド(私は未だにネビリム先生の死を、整理できていないのか?)
ガイ「あんたが死を理解できないとは思えないな。人間ってのは、経験で学ぶだろう? あんたは仕事として死を経験してる。心が動かないなら、それは軍人としての調節機能なんじゃないか?」
ジェイド「どうでしょう。何しろ、子どもの頃からずっとこうですから」
ジェイド(ネビリム先生を失って、私は動揺した。自分の失敗を認められず、失敗が露見することに恐れた。それは死に対する感情ではない筈だ……)

 「死」を理解することが出来ない。人間として大切な筈の心が欠けている。それは一見して完璧に思えるジェイドのコンプレックスです。外殻降下の前夜には、ルークにそれを告白していました。ルークは「死」に強烈な痛みと恐れ、悲しみを抱いています。自分を殺そうとしてくる敵を殺すことも、彼にとってはとてつもない苦しみです。旅の中で彼のそんな姿を見続けて、ジェイドは改めて、「死を理解できない自分」について考えるようになったのでしょう。



 それからほどなく、導師イオンの使者としてアニスが皇帝を訪ねて来ました。

#ここで、ガイに面倒なことは任せちゃうジェイド、ガイにわざとくっついてからかうアニスといった、本編でもおなじみシチュのコメディが入って楽しいです! ここでは更に皇帝まで加わって、三人でガイを苛め(?)ちゃう。称号「ハレンチ」を手に入れちゃったガイ曰く、「……最悪だ、このメンツ」。なんだかんだ言ってキムラスカの人々は真面目でしたので、転職先では振り回されちゃって大変ですね。

 携えた親書に書かれていたのは、神託の盾オラクル騎士団の一部がヴァンやモースの手先として世界を荒らしたことへの謝罪と、その責任を追及するべく内部調査を行った結果、離反した旧体制派の教団兵がマルクト軍反乱分子と結託して皇帝暗殺を目論んでいるらしいと分かったとの警告でした。

 外殻降下後のダアトの預言スコア詠み上げ禁止と、マルクトの預言撤廃の動きが出た時期が重なったため、皇帝が外圧をかけてダアトに預言禁止させたのではないかと邪推した一団がおり、皇帝さえ殺せば預言を取り戻せるという大義名分のもと、結託したらしいのです。

 更にアニスは、グランコクマの商店で聞いたという「御落胤」の噂を伝えます。その人物は「自分こそが本物の皇帝だ」と主張し、街の人々から金品を巻き上げていると言うのでした。

#ここで、ピオニーが子供時代にケテルブルクに軟禁されていた理由が明かされます。預言に彼が皇帝になること、軟禁されることが詠まれていたからなのだそうです。ただし、皇帝になることは秘預言クローズドスコア扱いで伏せられていたと。皇位継承争いで彼の異母兄二人と異母姉一人が死ぬことも預言に詠まれていたらしく、そのためのようです。表向きには「ピオニーは世継ぎ争いに負けて軟禁された」ということになっていたとか。
 …本編ではピオニー軟禁の理由に関しては「王位継承の争いで、子供の頃、この街に追いやられたんじゃなかったか?」「前皇帝は、戦時中のまつりごとで敵も味方も多かったでしょうから、その前皇帝の息子である現皇帝も命を狙われていたのかもしれない。身を守るための情報操作だったのかもしれないわ」「それなら軟禁などしなくても良かったのではなくて? それに、ここのような観光客が多い街では、かえって危険ですわよ。何か特別な理由がありそうですわね」と思わせぶりに推論されていただけでしたが、ジェイドはちゃんと理由を知っていたんですね。だったら、みんなが不思議がってた時に教えてくれればよかったのに…。
 元々クーデターイベントで回答を語るつもりでいて、そのイベントが没になったために伏線が未消化のまま放置されていたんでしょうか?

#ちなみに、ピオニーがネフリーと結婚できなかった理由も、本編では「身分違いだった為に陛下とは結ばれませんでした」とジェイドが言ってるだけなんですが、この外伝ではそれも預言のせいだったと皇帝の口から説明されています。(ピオニーの方がネフリーに振られたようです。)ならば、どうしてジェイドはそれを仲間たちには伏せていたのか。…ホド崩落がマルクト軍の仕業だったことを最初から知っていたのに、皇帝自身がそれを語るまでガイに話さなかったのと同じように、皇帝に関わることだから黙秘してたのかなー。守秘義務厳守か。

#ピオニーの人生について、ここまで何もかも預言のせいにされちゃうと、ちょっと微妙な気分になりました。ピオニーがこれほどに預言に人生を左右された人間だったのなら、本編中で預言の是非について彼がもっと熱く語るシーンを入れてほしかったなーとか。いやサブキャラだからあえてカットしてたのかな。でも、だから ああもあっさりと預言廃止したんですね。なんか納得しました。

#本編では、レプリカ編開始の時点で、ダアトもマルクトもキムラスカも既に預言廃止を宣言しているように見えます。あらゆる人々が不安がっていますし。でもこの外伝によれば、この時点でマルクトもキムラスカも正式には預言禁止を発令していないそうです。はっきり預言禁止を宣言していたのはダアトだけらしい。今後キムラスカと足並みを揃える必要がある、みたいに言っていました。ということは、レプリカ編開始時も、実はまだ正式発令されてなかった?

 アニスのもたらした二つの不穏な情報。けれど、話を聞いたピオニーの瞳が輝きました。なんと、自ら御落胤探しを行うと言うのです。真面目なガイが「な、何を言ってるんですか! 陛下が自らそんなことをするなんて、あり得ません!」と怒り出し、ジェイドやアニスも口々に諌めましたが、ナタリア姫だって危険な場所をウロウロしていたぞと屁理屈をこね、しまいに「最終兵器発動! 皇帝勅命! ただいまより、ジェイド・ガイ・アニスを御落胤捜索隊に任命する。ちなみに隊長は俺だ。いいな?」と某親善大使ばりに命じたのでした。…アニスはマルクトの国民じゃないのですが…。



 こうして、変装したピオニーを連れて調査を開始した三人。(というか、皇帝とジェイドにこき使われ、アニスにおちょくられるガイ。)噂の御落胤は十五、六歳の金髪の少年だと分かります。そのうえ、その少年は今しも宮殿前で演説を行っているのだとか。宮殿に戻ってみると、リース・ヘブンリーという少年が声高に皇帝批判の演説を行っているところでした。

#リースは「何故ピオニー九世は愚かにも預言を廃絶に追い込んだのか」と演説し、それを聞いた市民は「確かに陛下は、預言を撤廃なさった」とざわめいています。…預言禁止はまだ正式発令してないんじゃなかったのか? どーなってんのか、ちょっと分かり難いです。

 彼の側には尖った印象の中年の男――反皇帝派の筆頭であるシュタインメッツ伯爵が付いていて、リースは先帝の長子で第一帝位継承者であったフランツ皇子が、彼の屋敷に滞在した際に世話役の使用人に産ませた忘れ形見だと主張しました。その証拠としてフランツの手紙と短剣を提示します。リースは、自分の父が本当は皇帝になるはずだったのにピオニーに毒殺された、ピオニーは預言に詠まれていない偽王で、預言を廃止したのも次代皇帝としてリースの名が詠まれているのを隠すためだと信じていて、父の仇であるピオニーに憎しみと敵愾心を燃やしているのです。

 ピオニーは直接この少年に対峙し、導師守護役フォンマスターガーディアンのアニスが中立の立会人として名乗り出ました。証拠品と、親子確認のためにリースの髪を一房預かり、調査して三日後に結果を明かすことになります。するとシュタインメッツ伯が発表は謁見の間にて正式な形でしてほしいと訴えました。皇帝暗殺計画の囁かれる今、何か思惑がありそうです。ジェイドは難色を示しますが、これを断っては周囲で見ている民衆が納得しないからと、ピオニーは承諾します。



 血縁関係確認のため、ジェイドは帝室の廟所に保存されていたフランツの遺髪とリースの髪の音素フォニム比較検査をディストに任せました。ジェイドに「あなたの力が必要なんですよ」と素っ気無く言われただけで舞い上がり、大はしゃぎで引き受けるディストを見て、流石に気の毒になってしまうアニスなのでした。

アニス「……なんかこんなに必死だと可哀想になって来ちゃうなぁ」
ジェイド「アニス。あなたらしくもない。……いえ、あなたらしいと言うべきですか」
#アニス、ムッとする
アニス「そう言われるのも嫌です」
ジェイド「でしょうねぇ」

 アニスはつくづく偽悪者なんですね。けれど、この(愛すべきとも言える)態度が後のアリエッタとの悲劇に繋がってしまったのだと思うと、悲しいものです。



 三日後。貴族たちの居並ぶ中、謁見の間でリースの帝位継承権の審議が始まりました。立会人はアニス。司会は内務大臣です。後見人であるシュタインメッツ伯がリースの身の上を語ります。彼が十六歳であること、フランツは帝位継承問題で揺れる自分の立場を考慮してリースの存在を隠し、帝位に就いた暁には迎えに行く約束として親書と短剣を残したこと。しかしリースを産んだ母は死に、リースはシュタインメッツ伯に匿われたこと。

 親書と短剣は本物でした。ですが、件の母子は、フランツの死後に側近が捜した際には既に死んでいました。そして髪の音素検査の結果、フランツとリースは赤の他人であることが証明されていたのです。

 酷い衝撃を受け、「シュタインメッツ! どうなっているんだ! 私はフランツ皇子の息子なのだろう!?」と縋るように言ったリースに、シュタインメッツ伯は第五音素フィフスフォニム(炎気)を取り込む譜陣を譜術で書き込みます。音素暴走によってリース自身を爆弾にする。元々、それが目的だったのです。

おまえはピオニーの傍で爆発するための手駒だ! 御落胤である訳がなかろう!

 ジェイドの指示で、ガイが貴族たちの避難の誘導を行います。ピオニーにはアニスが付いて避難を促しました。その間に、ジェイドはリースを第四音素フォースフォニム(水気)で包むことで第五音素の暴走を鎮めることになんとか成功します。

 ところが、そこにマルクト義勇軍を名乗る反乱兵たちが雪崩れ込んできて、預言スコア撤廃を不満とし、アニスやガイを襲いました。斬り殺されそうになったディストをピオニーが庇った、その隙をついて。シュタインメッツ伯爵のナイフが、ピオニーの背に突き立てられました。

ピオニー「ぐう……っ!?」
シュタインメッツ「貴様のようにのうのうと暮らす男に帝位など任せられるか! この国は我々の物だ! 預言を取り戻すのだ!」
ピオニー「……預言を取り戻すのは勝手だがな……。この国はおまえたちの物じゃない……。国民のもの……だ……」
アニス「……っ!?」
ガイ「くっそぉ!」
ジェイドピオニー!?

 床に倒れ、動かないピオニー。歓呼する義勇軍。ジェイドは譜を唱え始めます。最強の譜術の呼び名の高い、天の雷を呼び出すそれを。

アニス「大佐! こんなところでそんな譜術使ったら!」
ガイ「俺やアニスは味方識別マーキングがあるが、ディストが!」
ディスト「じぇ、じぇいど!?」
ジェイド「――いでよ、神の雷! インディグネイション!」

 強力な譜術が荒れ狂い、その場にいた全ての反乱分子が打ちのめされたのでした。




 数日後。

 ジェイドの執務室には、ピンピンした皇帝が遊びに来て笑っていました。

ピオニー「いやー。後ろから刺された時は、さすがに死んだかと思ったなあ!」
ジェイド「……」
ピオニー「なんだよ。まだ怒ってるのか、ジェイド」
ジェイド「……仕事中です」
ピオニー「いいじゃないか。こんなこともあろうかと、服の下に鎧を着ておいたんだ。暗殺計画があるって分かってて、この俺が何も準備していない訳がないだろう?」
ジェイド「ですから、仕事中です」
#ピオニー、笑って
ピオニー「……動揺したか?」
#ムッとした様子のジェイド
ジェイド「いいえ」
ピオニー「嘘付け。人前なのにファーストネームで呼んだぞ」
#ジェイド、険しい声音で呼びかける
ジェイド「……ピオニー」
ピオニー「おう」
ジェイド「……なんであんな真似をしたんだ?」
ピオニー「あんな真似? サフィールをかばったことか?」
#分かっていて話を逸らすピオニーに、更に苛立つジェイド
ジェイド「死んだ真似だ」
#真顔になるピオニー
ピオニー「昔からおまえは執着心がない。ネビリム先生を除いてな」
ジェイド「……それは認める」
ピオニー「ふふん。珍しく素直だな」
ジェイド「……だからなんだ?」
ピオニー「皆まで言わせるかねぇ?」
#逡巡するように口をつぐむジェイド。やがて口を開く
ジェイド「……動揺した」
ピオニー「そうか」
ジェイド「悲しい、とは思わなかったがな」
ピオニー「だろうな。それがおまえの死に対する感覚だ。悲しむことだけが死を理解することか?」
ジェイド(怒り……? それも死を理解すると言うこと? 死は終わり。消えるだけ。それはどうにもならないこと。それに怒りを覚えるというのは……)
ジェイド「執着している……と言いたいのか?」
ピオニー「子どもが子どもである理由は、能力じゃない。他人への理解だと俺は思う。能力の高さは、時に理解を曇らせる」
#沈黙するジェイド
ジェイド「それはあなたの解釈ですね」
#いつもの口調と声音に戻っている。笑うピオニー
ピオニー「なんだ、もう落ち着いたのか。理性的な奴め」
ジェイド「これも個性です」
ピオニー「よく言う。演技の上手い奴だ。まあ、俺の勝手な解釈であることは間違いないし、押しつけるつもりもない。だが、もう理解できないなんて言う必要もないんじゃないか?」
ジェイド「そうですねぇ。確かに執着していることは認めますよ」
ピオニー「だろう? ルークたちとの旅は、なかなかに有意義だったようだな」
ジェイド「弱点ができてしまったようで、残念です」
ピオニー「何を言ってる。おまえの弱点なんて、昔から知っている」
ジェイド「おや、何が弱点だったと仰るんですか?」
ピオニー「俺。ネフリー。先生。あとアレ」
ジェイド「……あなたは昔からそうでしたねぇ。自信家というかなんというか」
ピオニー「俺は皇帝だからな。国民のことはよく分かってるんだ」
ジェイド「さすが賢帝」
ピオニー「……嫌味か?」
ジェイド「本当に賢いことで。ふっ……」
ピオニー「ふふ……」
#声をあげて笑い合う二人

 このシーンでかかっている音楽が、本編の結末、タタル渓谷のシーンでのものだったので、見ていてなんだか哀しいような、切ないような気分になりました。



「死」を理解できない。それはジェイドのコンプレックスでした。けれどピオニーは言います。ネビリムを殺してしまって動揺し、ピオニーが殺されたと思って怒りに我を忘れた。それもまた、「死」への理解。「生命」への執着、即ち愛情から生じるものなのだと。

 本編では、崩落アクゼリュスでジョンが障気の海に沈んでいった時、ジェイドは憤っていたように見えました。それを見ていたからこそ、ネフリーに「兄は死を理解できない」と言われても、ルークは「そんな風には見えないけど」と返したのではないでしょうか。

 親友が死んだと思った時も、ジェイドは我を失うほど怒りはしたものの、悲しみは感じなかった。それでいいとピオニーは言います。それがジェイドの「死」への感じ方、個性だから。けれど、これから二年後の、本編のラストシーン。タタル渓谷に帰ってきた『彼』を見た時、ジェイドは初めて哀しそうな表情を見せています。

 『彼』が帰ってきた。だから、『彼』は死んだと認めなければならなくなった。

 「身近なものの死は身近である」。

 幾人かの親しい者の死を経て、この時、ジェイドはやっと、「死」を悲しむ心を知ったのかもしれない。

 そんな風に思いました。




 最後に、話の本筋からは逸れるけれど、気に入った・気になったポイント色々。(あれ? ガイのことばかりだ…)



◆ガイのジェイド評

 ピオニーに、「死を理解できない自分」について悩むジェイドの様子を問われて。

「まあ、おかしいのは相変わらずですし……。でも、珍しく自分の話をしましたね。驚きました」

 ジェイドのことそんな風に思ってたんだ(笑)。


◆大詠師会と詠師会は同じもの?

 アニスがダアトから運んできた親書に「大詠師会」とあります。本編のレプリカ編では、アニスがイオンに「そろそろ詠師会の会合が始まりますよっ」と言ってます。この二つは同じもの? それとも違うもの?


◆ガイの収入

 貴族であるガイの収入は本来は領地から得られる筈ですが、ガルディオス家の領地ホドは崩落している。よって、皇帝の直轄地の管理を任され、それによって収入を得ているのだそうです。それを聞いたアニスは申し訳なさそうに、給料を話題にしたことを謝罪していました。(ガイは「なんだなんだ。そんなこと気にするなんて、アニスらしくないぜ」と気持ちよく笑ってやっていました。)

 ガイが皇帝やジェイドの使い走り状態になっていたり(貴族と言うよりは使用人の扱い)、アニスが貴族のガイに玉の輿狙いのモーションをかけないのは、これも一因? ガイは伯爵ですが、あまり裕福ではなさそうです。

 折角お家復興したと思ったのに幸薄いなぁ…。まさか一生このままじゃないですよね。皇帝陛下、早くガイに新しい領地を与えてやってください…。(いや、ガイがマルクト貴族の娘さんと結婚できたら、そこの領地を分けてもらえるんだろうけど。家族も出来るし。そっち方向は色々難しいですよね、現状では。


◆詰め甘ですね

 大詠師モースが罷免され、イオンも教団運営がやり易くなったんじゃないかとガイに言われて、アニスは満面の笑顔で「そうなんだよね〜。あのうっざーいモースがいなくなって、イオン様の天下! 私も解放っ!」と言います。

 ジェイドは「解放?」と少し引っかかったように聞き返しましたが、「あ……はーい。だってモースってば、私が導師派だから、些細なことでもすぐ怒ってたんですよぅ。トクナガの顔がキモイとか。失礼ですよね。おまえの方がキモイっちゅーの!」とアニスが誤魔化すと「……なるほど。まあ、いいでしょう」とその話を打ち切ってしまう。

 本編のレプリカ編で、アニスがイオンに手紙(実はモースへの報告書)を出してくると言った時の対応と同じです。この詰めの甘さが後々悲劇を生んじゃうのか…。


◆真面目なガイ

 ご落胤の話題が初めて出た時、ガイとジェイドに咎められたピオニーが「おいおい濡れ衣だ! 俺はそんなヘマはしないぞ」と慌てると、アニスが笑って「私はヘマしてもらってもいいです♥ 未来の皇帝の母ってのも悪くないし……」とかなりきわどいことを言います。ピオニーは悪ふざけ(?)して「成人したらすぐにグランコクマへおいで♥」と返すのですが、するとガイがマジ怒りします。

陛下!! アニスも混ぜっ返すな!

 ガイは本当に真面目な人なんですね。怒鳴られても皇帝は余裕で「まあまあ。そう青筋を立てるな、ガイ」と笑いますが、「誰がたてさせているんですか!」とますます怒っていました。真面目で、その点ではほんのちょっと融通が利かないかも。先生みたいです。さすがルークの教育係だっただけはある?

 事件解決後には、内務大臣に頼まれて、公務から逃げ出したピオニーを追い回し連れ戻すガイの姿が見られましたが。真面目で人が好く、腰が軽いので、この人、マルクトでも使用人的便利屋にされつつあるみたいですね。ルークの世話係をさせられてたみたいに。苦労性と言うか…。一生このままだと幸が薄すぎるので、どうせなら、将来は本当に皇帝の補佐役(内務大臣とか)になれたらいいのにと思いました。


◆海が好き

 島生まれのガイは海が好きで、波の音を聴くと安心するんだそうです。

 アニスが「ガイって、海好きだよねぇ」と笑っていたので、旅の中でも海の近くに行くといつも嬉しそうにしていたんでしょうね。

 ここでアニスがガイに「海のサル」と呼びかけますが、この時点ではまだ水着称号入手できてないですよね(笑)。


◆戦う皇帝

 今回、ピオニーが戦闘に参加です。秘奥義はやはり「ブウサギ召喚」ですか?(笑)

 本編の闘技場イベントで、ジェイドが「この国の武闘大会は有名ですよ。ピオニー陛下も行きたい見たい、参加したい、で大変でしたから」と言っていますので、ピオニーに何か武術の心得があるらしいことは分かっていましたが。ネビリムイベントでは剣などの武具をコレクションしていることが語られますので、てっきり剣術かと思えば、体術だそうです。なんじゃそれ。とアニスと一緒に思ったところ、「ま、細かいことは気にするな」と言われてしまいました。

 ……確かに、護身術としてなら体術が一番いいのかもですが。でも、譜術の国の皇帝なんだから譜術を習えばいいのに(笑)。才能がなかったか、「譜術はジェイドに任せた。似たような戦い方をしてもつまらんからな」とかそういうのなんでしょうか。

 とりあえず、街のチンピラたちを鮮やかにのしてみせるほどには腕が立つようです。


◆ガイ様 薄幸伝説1

 呑気な皇帝は御落胤よりもナンパの方が気にかかる。ジェイドは何かとこっちに面倒なことを回してくる。アニスは話を脱線させる。捜索が進まねー。真面目なガイは呆れつつイライラしているご様子。「なんでもいいから早く行きましょう!」と御落胤がいるらしい場所へ急ぎ向かおうとした彼に、ピオニーたちが笑って言います。

ピオニー「怒るな、ガイ。抜け毛が増えるぞ」
ジェイド「ええ。いつもその調子では、髪に良くないと思いますよ」
アニス「ガイが薄くなったら幻滅〜」

 ……商業アンソロジーの二次創作等で、ガイが気苦労でハゲてしまう・色んな意味で薄そうだと指摘されるネタを幾つか見かけたものでしたが、公式になっちゃったみたいです(苦笑)。気の毒なガイは、「……そうなったらおまえらのせいだぞ」と、ボソッと呟いていました。このネタは、「異聞録」に続きます(笑)。


◆ガイの地位

 グランコクマ庭園でリースとピオニーが初対峙するシーン。ジェイドがリースたちに「情け深い陛下に感謝しなさい。本来なら、不敬罪で処罰されても文句は言えない筈ですよ」と言うと、シュタインメッツ伯爵は傲慢に「貴族である私を愚弄するのか」と言います。するとガイが「先に陛下を愚弄なさったのは貴公では? シュタインメッツ伯爵」と口を挟み、シュタインメッツは「ガイラルディア伯爵! そなたもいたのか!」と驚く。

 これらの会話で二つのことが分かります。

 ひとつは、ジェイド(カーティス家)は貴族ではなく、その意味での地位は高くない。貴族社会ではガイの方が発言力が強いらしいこと。いつも、軍人でもないのにガイはジェイドに顎でこき使われているので、地位がムチャクチャ低いのかと思ってしまいますが、ぶっちゃけ人が好くてジェイドになめられてるだけなのね(笑)。

 もうひとつは、ガイが「ガルディオス伯爵」ではなく「ガイラルディア伯爵」で通っているらしいことです。何故肩書き呼びの時にファミリーネームでなくファーストネームなんだか分かりませんが、この外伝ではそれで統一されていました。ガルディオスを名乗れない理由か何かあるの? と妄想したくなります。


音素フォニム学の権威?

 ジェイドはディストを音素学の権威だと偽り、リースの髪の音素検査をさせます。

 どうして犯罪を犯して拘留中の人間にそんなことをさせるのでしょうか。案の定、「そのような犯罪者に、私の証明が出来るのというのか!」とリースに怒鳴られていました。「ご心配なく。検査には第三者が立ち合いました」と返していましたが、音素学の権威なんてグランコクマには別にいそうですし、不穏な時期なので他人が信用できなかったのならジェイド自身がやればいい。しかも、ディストを拘束したまま(絵には描かれてませんが、いちいち金属音がするので多分。)審議の場に連れてきて、貴族たちの前に立たせていました。一体何故?

 単純に考えれば、ディストを物語に絡めるための都合なんでしょうが。(^_^;)

 ものすごーくうがった考えをすると、もしかしたらジェイドは、ディストに手柄を立てさせたかったのかなと思いました。少しくらい罪が軽くなり、いつか釈放されるように。

 尤も、この直後くらいにディストは収容所から脱走してしまい、更なる罪を重ねることになるのですから、ジェイドの思惑なんて軽く蹴飛ばされてしまうわけですけれど。

#しかしジェイドは今回、反乱軍もろとも容赦なくディストをインディグネイションで打ちのめしちゃったので、蹴飛ばされてもしゃーないかも…。


◆内務大臣

 マルクトの内務大臣は、まるでキムラスカのアルバイン内務大臣を縦に引き伸ばしたみたいな容姿の人です。毎日逃げ回ってばかりのピオニーに手を焼いているようです。ガイ曰く、マルクトの大臣たちはみんな真面目でいい人だそうですし、物語のラストでは内務大臣に頼まれてガイがピオニーを探してましたので、真面目な苦労人気質でガイと気が合うのかもしれません。名前が知りたいです。


◆血縁証明

 現実世界では、血縁を証明する検査と言えば遺伝子検査ですが、オールドラントでは音素フォニム検査になるようです。エルドラントで落とし穴の罠にハマった時、アッシュが「ファブレの遺伝子」と言っているので、遺伝子の存在が知られていることは確かなんですが、何故か血縁証明の時は問題にされないみたいです。謎。

 ディスト曰く、「最近ではフォミクリー技術の進展で、音素構成による一親等の検査ならほぼ九割以上確実な証明ができるのです」だそうです。

 血縁者は音素構成と振動数が似ているものらしく、それが一致するかどうかが重視されるみたいです。…ということは、ファブレ家もしくはキムラスカ王家の人間は、元々、第七音素セブンスフォニムの音素振動数に近い振動数を発してたんでしょうか。それともアッシュの振動数だけ変異していて、でも音素構成は血縁の人々と一致してるのかな?


◆音素暴走

 リースに第五音素を取り込む譜陣を書き込み、音素暴走による爆弾に仕立てようとしたシュタインメッツ。

 そんなことで爆弾が作れちゃうなら、爆弾テロやり放題じゃん。ヤバい世界だぜ。

 ちなみにリースは命ながらえたものの、エルドラント突入の時点でマルクト軍の収容所に投獄されているそうです。利用されていただけではあるけれど、しでかしたことが大きすぎるので、恩赦を賜るだろうまでは数年はそのままだとか。気の毒ですね。


◆ジェイドの口調

 ピオニーが死んだと思った時、ジェイドは「陛下」と付けずに「ピオニー」と叫び、その後執務室で会話する時もピオニー相手に対等の口調になります。ここでピオニーが「人前なのにファーストネームで呼んだぞ」と言うので、てっきり、プライベートでは素の口調で話すのかと思ってしまいますが、実際には二人きりの時でも、いつもは「陛下」呼びで敬語なんですよね。

 本編を見ていくと、デオ峠でリグレットにルークがレプリカだと確認した時、セントビナーを襲撃したディストがネビリム復活を口にした時にも、やはり激怒して口調が素になっています。つまるところ、激怒すると仮面が外れて素の口調になるのがジェイドの性質なんですね。


 実を言えば、この外伝をプレイして一番変わったのが、ジェイドとピオニーの関係への印象でした。本編だけの時は、もう少し距離があるように感じていたので。ピオニーはジェイドに親しげに応対するし周囲も二人は親友だと言う。でも、ジェイドがピオニーをどう思っているのか、今一つ確信が持てませんでした。ジェイドはクールな人間とのことでしたし、どこかで仕事上の関係の方を優先させているような気がしていたのです。

 なので今回、ジェイドが(変装しているとはいえ)街中でピオニーに笑顔で暴言を吐きまくるのにビビりました。そして「異聞録」でのエピローグで、心中でピオニーに謝辞を述べたのを見るに至って、二人は何の曇りもなく親友なんだと、心底納得できました。

 また、ディストとピオニーの関係も、本編だけの時はよく分からなかったのですが、今回で納得できました。ディストがピオニーにコンプレックスを抱いて嫌っているというのは本編でも語られていましたが、ピオニーがディストをどう思っているのかイマイチよく分からなかった。おもちゃ程度にしか思っていないのではないかとさえ思っていたのです。でも、「いいじゃないか、サフィール。俺は親友だと思ってるぞ♥」と言ったし、彼の危機には体を張って庇った。ピオニーにとって、ディストも大切な友達なんですね。


 今回ピオニーが、ジェイドとディスト双方に向かって「全く手がかかる奴だ」「チッ。世話の焼ける!」と言っている(ジェイドには章タイトルで、ディストには台詞で)のが面白かったのです。実際、ピオニーは年齢も社会的立場も二人より上なんですが。…実は今回、ジェイドのコンプレックスをほぐそうと諭すピオニーを見ていて、母性みたいなものを感じてしまいました。父親的というより母親的。感覚的なものなので説明は出来ませんが。


◆ジェイドの仮面

 ジェイドの口調について考えていた時、ふと思ったことがあります。子供時代のジェイドは冷たく素っ気無い口調で、無口ではないけど饒舌でもない。おべんちゃらは一切言わず、説明も必要最低限しかしようとしない感じでした。けれど今のジェイドは基本笑顔で、ペラペラペラペラ愚にも付かないことを喋り続けて煙に巻いてきます。今と昔では全く違う。

 誰しも、子供のまま大人になることは出来ません。社会で生きて行くために多かれ少なかれ迎合し、その為の仮面を身につけるものです。ジェイドの笑顔と減らず口は、そうした「仮面」の一つなんだろうな、と。

 …とか考えつつ最後のシナリオ「異聞録」をプレイしていたら、ズバリそのことが語られていたのでビックリしました。あーやっぱそうなんだ…。

ジェイド「もうお別れですか。いやぁ、実に名残惜しいです」
リフィル「気のせいかしら。あなたの言葉すべてが空々しく聞こえてよ」
ジェイド「とんでもない。私はいつも本心を語っていますよ。嘘は嫌いなんです」
リフィル「フフフ……」
ジェイド「おや、何か笑われるようなことを言いましたか?」
リフィル「言葉の鎧を身にまとうのは、本当の自分をさらけだすのが怖いからかしら」
ジェイド「これが本当の私ではないと?」
リフィル「制御不能になる自分を抑える術なのだと解釈しているのだけれど」
ジェイド「……なるほど。
 あなたは私の敬愛していた先生に……似ています」
リフィル「あら。ならあなたの先生に成り代わって、一つ忠告しておくわ」
ジェイド「はい?」
リフィル「ポケットに手を入れて歩くのはやめなさい」
#驚くジェイド
ジェイド「あははははは! 意表をつかれました。完敗です。肝に銘じておきますよ」

 念のため。リフィルは『シンフォニア』のキャラで、二十三歳の銀髪の美人女教師です。そうか。リフィル先生とネビリム先生は似ているのか〜…。ネビリムの印象が、自分の中で一気に固まった気がします。


 にしても。ポッケに手を入れて歩いたり荷物押したり譜術を使ったりするのは、やっぱりよくないよね!(笑)


◆検閲

 ピオニーに返事を出すぞと言われて、さっそくラブレターを送ったアニス。返事が来ないと憤慨しますが、実はジェイドが握りつぶしていたのでした。手紙の中身が女性に読ませるには毒だったとかなんとかで。アニスにそんな手紙を渡したら脅迫のタネになるから、なんて嘘とも本気ともつかないことを言っていました。

 …しかし、皇帝の私的な手紙を一介の大佐であるジェイドが検閲するって。いいのかこれ。アリなのかこれ。幼なじみもしくは親友として見た場合でも行き過ぎだと思うのですが。プライバシーの侵害じゃん。

 ぶっちゃけ、アニスが手紙を公表したって大した脅迫は出来ないでしょうから、検閲の必要はない気もするんですが…。

 …ホントはピオニーが返事を出すのを忘れたか、アニスの手紙自体が差し止められて皇帝に渡らなかったかで、ジェイドが皇帝の面子を保ちつつアニスを気遣うために「自分が握りつぶした」ことにしてやったのかな、と思いましたが、「異聞録」でのシナリオで、「(アニスの玉の輿作戦)成功の暁には、キムラスカに亡命させていただきますね」「アニスが王妃では国が傾きますから」とジェイドは言ってますし、ネフリーとピオニーが付き合っていたのも快く思っていなかったようなので、もしかしてピオニーの結婚話を片っ端から潰そーとしてんのかとも思いました。独身男のひがみで。(それはやだなー)


◆ツッコミ失敗

 「異聞録」で見られる、真の(?)エピローグ。

#過去の回想
ピオニー「シュタインメッツは実に見所のある奴だな」
ジェイド「何を言い出すのですか」
ピオニー「奴らが偽の御落胤を用意したのは、まだ預言スコアに支配されていた時代のことだ。俺は一応預言に詠まれた皇帝だからな。奴は預言に逆らっていたってことになるだろう?」
ジェイド「どうでしょう。彼がそうすることすら、秘預言クローズドスコアだったのかもしれませんよ」
ピオニー「何だよ。後ろ向きな奴だな」
ジェイド「視野が広いと言っていただきたいですね」
ピオニー「よく言う。まあ、どちらにせよ、預言がなくなったことで、奴なりに「自分で考えて」暗殺計画を実行した。実に見所があるじゃないか」
ジェイド「……あなたという人は、本当に変わり者好きですねぇ」
ピオニー「そうでもなければ、おまえの幼なじみなどやっていないぞ」

#回想をやめて、フッと笑うジェイド
ジェイド(……私も困った幼なじみを持ったものだ)
ジェイド(ピオニー……。感謝するよ)

 以前、漫画外伝2の感想で、預言で選ばれた導師イオンを暗殺しようとした謎集団は預言を否定したことになると感想書いてたんですが、今回はそういうツッコミを入れる前に先回りして穴を塞がれた気がしました。チッ。負けたぜ! ←アホ



時の狭間の物語 ― テイルズ オブ 異聞録 ―

 このファンディスクに収められた、三つの異なる物語世界をクロスオーバーさせるためのシナリオです。



 私はクロスオーバーものが苦手です。このファンディスクは『アビス』の外伝が見られるというので買いましたが、もし「三つの作品のキャラたちが一緒に大活躍」というだけのゲームだったら、最初から手を出さなかったことでしょう。

 そんなわけで、クロスオーバーシナリオである「異聞録」は、紹介記事を見た段階でウヘァと思っていたのですが、蓋を開けてみると、なかなかに楽しい。クロスオーバーものの魅力は、本来は出会うことすらないキャラたちが顔を合わせた時の思いがけない反応、そして異分子が入り込んだ時の既存キャラ同士のいつにないやり取りが楽しめる点だと思うのですが、それが存分にありました。面白かったです。

 しかし、クロスオーバーものは、違うもの同士を混ぜた結果、本来の作品の世界観や人間関係が破壊されてしまうという危険もはらんでいるのです。(だから苦手。)

 ……ぐぅ。地雷踏んだ。

 私にとってかなり大きな地雷が一つ……。異なる作品のキャラ同士を掛け合わせることで生じていました。

 うわぁああああ。

 ……やっぱ、クロスオーバーものは私には合わない……。今まで『アビス』本編に抱いていた印象や感想を、こんな所でひっくり返されたように感じました。うー。




 三つの異なる時空。そこで三つの集団が、それぞれ世界の命運をかけた戦いに挑もうとしていました。

 クレス、ミント、チェスター、アーチェ、クラース、すずの六人は、時空を超えて災厄を撒く魔王ダオスの城へ乗り込もうとしており、ロイド、コレット、ジーニアス、リフィル、しいな、ゼロス、リーガル、プレセアの八人は、堕ちた英雄ミトスによって双つに分断された世界を統合するため精霊オリジンの試練を受けようとし、ロイドの父クラトスがそれを見守っていました。そしてルーク、ティア、ジェイド、アニス、ガイ、ナタリア、ミュウの六人と一匹は、世界をレプリカと入れ替えようとしているヴァンの野望を止めるため、先に向かったアッシュを追いつつ、要塞島エルドラントへ突入しようとしていたところだったのです。

 しかし不思議な光に包まれ、気がつくと彼らは見知らぬ、けれどどこか見覚えのある場所にいました。

 

 ファンタジアチームは、食料調達しながら手分けして速やかに調査開始。

 シンフォニアチームは全員でああだこうだと相談。

 二組に分かたれてしまったアビスチームはと言えば。

 ティア、ルーク、ナタリア、ミュウ組は、他の仲間たちを捜すうちにアッシュと遭遇。本編の流れでは、この時点のアッシュは、次にエルドラントで会った時には決着をつけるとルークに捨て台詞を吐いていましたし、ナタリアには八つ当たりで暴言を吐いて別れたままでした。大変気まずい状況の筈ですし、これまでだったら「お前らと一緒にいられるか!」なんて言って立ち去っていたところだと思うのですが、流石に異世界で一人きりで心細かったのか、自分から寄って来て、まるで借りてきた猫のように大人しいのでした(『アビス』本編比・笑)。

 一方、ジェイド、アニス、ガイ組。呑気に談笑するジェイドとアニスを余所に、血相を変えてルークたちを探し回るガイ一人……。

#必死の表情で走り回っているガイ
ガイ「おいルーク! ルーク!?」
#立ち止まって
ガイ「くそ、はぐれちまったのか? どこに行ったんだ、あいつは」
#また走って行く。笑顔で見守るアニスとジェイド
アニス「おー。子守役が頑張って捜してますよ、大佐」
ジェイド「本当ですね。麗しい主従関係です。
 そういえば、ティアとナタリアの姿もありませんねえ」
#憮然とするガイ
ガイ「そういえばって……。今気付いたみたいにいうなよ」

 そこは不思議な世界で、景色がどこか見覚えがあるだけでなく、思い出の品にそっくりなものが落ちていたりします。そうこうするうちに遠くに強く輝くものを発見。各チームはそこに向かうことにします。

ナタリア「まあ、アッシュ。あの雲をご覧になって!」
アッシュ「……ん?」
ナタリア「なんだか、バチカルの街に形が似ていませんこと?」
#アッシュ、笑って
アッシュ「……そういえば、似ているな」
ナタリア「うふふ。あの雲の街にも、私に似た雲の子やあなたに似た雲の子どもが住んでいたら、素敵ですわね」
アッシュ「……ナタリア」
#赤面するナタリア
ナタリア「あら、いやですわ。私ったら、子どもみたいなことを言ってしまって……」
#赤面するアッシュ
アッシュ「い、いや、夢があって……」
ルーク「おまえ、白昼夢でも見てるんじゃねーの?」
#ムッとするナタリア
ナタリア「な、なんですの! あなたには何も言って……」
アッシュ「レプリカ! てめぇ、ナタリアに向かってなんてことを言うんだ! 白昼夢を見てるのはおまえの方だろうが!」
ルーク「んだよ、悪かったな。どうせ俺は、存在自体が白昼夢だよ」
ナタリア「まあ! ルーク! なにを言うのですか!」
アッシュ「ナタリアに心配をかけるな、屑が!」
ルーク「おまえ、ナタリアナタリアうるせーぞ!」
アッシュ「な、何だと……!」
ミュウ「ご主人様をいじめたら駄目ですの!」
アッシュ「……くっ。チーグルに庇わせるとは卑怯な奴だな!」
ルーク「別に頼んじゃねーよっ!」
ミュウ「みゅうぅぅぅうぅぅぅ。ボク、迷惑ですの?」
アッシュ「……こんな小さな動物をいじめるとは、ほとほと屑だな」
ルーク「ちょっ……! おまえ! 俺が何やっても文句言うんだろ!」
アッシュ「黙れ屑」
ルーク「ティア! 何とかしてくれよ!」
#遠くで何かが光る。「?」となるルーク
ティア「あら、ちょうどいい具合に何か光ったわ。行ってみましょう」
ナタリア「そうですわね」
#ティアとナタリア、笑って行ってしまう
ルーク「ちょっと待て! ちょうどいい具合にとは何だよ!」
アッシュ「行くぞ、屑!」
ルーク「屑屑言うな! その屑の元はおまえなんだぞ! 屑被験者オリジナルーーっ!」
#ルークもアッシュの後を追う

 幸せな二人の邪魔すんなよルーク…。空気読め(笑)。バカップルな甘い空気に当てられて、ちょびっとヤキモチ焼いちゃったんですかね。

 その後のアッシュとの言い争いは、本編に比べてコミカルで、子供の口喧嘩めいていて可愛いです。(レムの塔以降の、精神的にかなりしっかりしたルークだからこそ、アッシュを仲間として受け入れつつ、まっすぐ文句が言えるんでしょうね。)

 

 ファンタジアチームやシンフォニアチームは、それぞれちゃんと探索していたというのに、ルークたちはこんなん(笑)。

 ちなみに、その頃のガイは相変わらずジェイドとアニスに苛められていました。理由は「強いて言えば、ガイだから?」だそうです。なんだかジャイアニズムが展開されています。思わず「……キムラスカに亡命したい……」と呟くガイ。するとますます苛められて、いけにえ呼ばわりされてしまいました。幸薄いです(笑)。



 光っていた森に集まった四組。再会して喜んだアビス組は別にして、残りは敵か味方か? 緊張が走る中、ルークは素直にクレスやロイドの言うことを信じますが、アッシュは剣呑な様子で周囲を敵と決め付けた発言をします。

チェスター「おい、赤毛の白い方。お前の兄弟は疑り深い上にずいぶん失礼だな」
アッシュ「だ、誰がこいつの兄弟だ!」
ロイド「兄弟だろ? そっくりじゃん」
アッシュ「黙れ、そこの赤い奴!」
チェスター「おまえだって赤いだろうに」
アッシュ「うるせぇっ! この屑がっ!」
チェスター「人のことを屑呼ばわりするんじゃねぇっ!」
ナタリア「アッシュ! おやめなさい! 今のはあなたが悪いですわ!」

 やがてアッシュの抜刀をキッカケに乱闘(というか、流派自慢?)となります。すぐ熱くなるロイドに、巻き込まれて怒ったルークや、義憤に駆られたクレスまで参戦。

#見守るアニス、面白そうに
アニス「あれれ。もう時代は流派自慢らしいよ」
#ルークに制止を無視されたティアは、憮然としている
ティア「……もうどうでもいいわ」
ガイ「そんな訳にはいかないだろ。それでなくてもファブレの坊ちゃんは二人とも熱くなりやすいってのに。このままじゃ全面対決になるぜ。早く止めないと」
ジェイド「いや〜。一度こうなってしまったら、止めるのは無理だと思いますよ」
ガイ「じゃあどうするんだよ!」
ジェイド「我々大人は高みの見物と行きましょう。見たところ、皆それぞれ、なかなかの使い手のようですから、闘技場より楽しそうですよ」
ガイ「あんたって奴は……」

 ぶっちゃけ、喧嘩の原因は周囲に噛み付きまくるアッシュなんですが、ここでルークがアッシュを庇うのが、本編では見られなかった行動で面白いです。一種の兄弟愛?

チェスター「何なんだ、おまえたち! さっきから技を乱発しやがって。そっちがその気なら、俺も手加減しないぜ」
アッシュ「それはこっちのセリフだ。このツリ目野郎。おまえ目つきがよどんでるんだよ!」
ゼロス「……そりゃお互い様でしょーよ。どっちも目つきが悪ぃんだから」
ルーク「アッシュのことバカにするなよな! お前だって、嫌な目つきしてるだろっ!」
アッシュ「だ、黙れ屑! 俺のことは別に……」

 …いやまあ、ルークはアッシュと同じ顔なんで、貶されたくなかったのかもしれませんが(笑)。

 そんなこんなで収拾がつかなくなる直前に光が辺りを包み、今度はチーム入り混じりの七組に分けられて、この世界の各所へ飛ばされてしまいました。



 主人公三人は火山に飛ばされますが、そこで先ほどの乱闘の興奮冷めやらぬロイドとルークが剣を抜いて睨み合います。仲裁してきたクレスをルークが睨んでいると、先程までカッカしていた筈のロイドが「……やめたやめた! いち抜けた!」と剣を収めてしまいました。

ロイド「すぐカッカするのが俺の悪いところなんだよな。よく叱られるのに、またやっちまった。ごめんな、二人とも」
ルーク「え!? 俺にも?」
ロイド「喧嘩両生類って言うだろ?」
クレス「あはは。おもしろいギャグだね!」
ロイド「へ? 何がギャグなんだ?」
#呆れるルーク
ルーク「……あのな。それを言うなら喧嘩両成敗だ」
ロイド「そう、それそれ!」
クレス「あははははは! 君っておもしろいね」
ロイド「へへ、そんなに褒められると照れるな」
ルーク「…………」
クレス「あれ? 君はおもしろくなかった?」
ルーク「……いや……あの……」
ロイド「どうしたんだ?」
#しょんぼりするルーク
ルーク「……お……俺。俺も、ごめん」
クレス「君……」
ルーク「……よく考えてみたらもめた一番の原因は、アッシュが――俺にそっくりの奴が剣を振り回したからだもんな」
クレス「それだけじゃないよ。チェスターが挑発するようなことを言ったのだってよくなかったんだ」
ロイド「けどよ、一番悪いのは、あの変な光じゃないか? あれでみんな混乱したんだろ」
ルーク「そうか」
クレス「そういえばそうだね」
ロイド「よしっ! じゃあれが悪いってことで、俺たちは一時休戦、な?」
ルーク「おまえら、いい奴だな……」
クレス「そんなことないよ。結局一度はもめてしまったんだし」
ロイド「つーかさ、俺はおまえもいい奴だと思うぜ」
ルーク「え? そうかな……」
ロイド「だってよ、ここに飛ばされるとき、おまえあのアッシュとか言う奴のことを悪く言われて怒ってたじゃん。誰かのために怒れる奴っていい奴だと思うけどな」
ルーク「……あ……ありが……とう」
ロイド「どういたしまして! それより、この後どうしたらいいかな」
クレス「そうだね。まずはお互いに情報交換した方がいいと思う。それぞれ知っていることを共有すれば、少しは状況が見えてくるんじゃないかな」
ロイド「すげぇ。おまえって頭いいなー」
クレス「そ、そんなことはないよ。ただ当たり前のことを言っただけで」
ルーク「でも確かに、リーダーらしさがあるって感じするな。俺とは大違いだ……」
#ルーク、苦笑してうなだれる
ロイド「てか、おまえ……あー、おまえおまえめんどくせぇっ! 名前を教えてくれよ。俺はロイドだ。ロイド・アーヴィング」
ルーク「あ、俺はルーク。ルーク・フォン・ファブレ」
ロイド「ルークか。ルークって結構後ろ向きだな」
ルーク「……わ、悪かったな!」
クレス「その言い方はないんじゃないかな?」
ロイド「悪い。けどさ、そんな風に自分のこと悪く言うことないと思ったんだよ。おまえだって、おまえの良さがあるんだしさ」
ルーク「……え……」
クレス「へぇ。いいこと言うね。その通りだよ」
ロイド「へへっ、サンキュ。で、リーダーっぽいおまえの名前は?」
クレス「リーダーって……。参ったな。僕はクレス・アルベイン。よろしく、ロイド、ルーク」
ロイド「おう、よろしくな!」
ルーク「よろしく。……だけど、ロ……ロイド」
ロイド「ロロイド? 俺はロイドだけど」
ルーク「わかってるよっ! ……うん、おまえ、すげぇいい奴だな。俺……おまえみたいな友達がほしかった」
ロイド「欲しかったって、もう友達だろ? なあ、クレス?」
クレス「そうだね。見たところ歳も近いみたいだし」
#複雑な顔になるルーク
ルーク「歳……か……」
ロイド「どうかしたのか?」
ルーク「……いや、何でもない」

 このシーンでは、感じるものが沢山ありました。

 一つは、ルークはお馬鹿キャラという位置づけではないんだなということ。熟語を間違えているロイドに突っ込む側になっています。

 もう一つは、ルークの対人スキルの低さ。ロイドとクレスがもう次の話に進んで歓談しているのに、深刻な様子で謝って場を凍らせてしまいました。空気が読めないんですね。クレスがビックリしちゃってます。

 そして最後。実はこれが、私にとって地雷でした。ロイドがルークを後ろ向きだと言い、お前にもいいところはあるんだからそんな風に言わなくていいと励ます。それを聞いたルークが感激して、「俺……おまえみたいな友達がほしかった」と言う。この流れです。

#色々乗り越えて前向きになったと思っていたのに、初対面のロイドにいきなり「後ろ向き」と言われる展開も情けなかった。

 この後、ガイたちと再会した時、この流れはこんな風に続いています。

ガイ「それにしても、ルーク。少し離れている間に、みんな仲良くなったみたいだな」
ルーク「まあな。話を聞いて、いがみあう必要はないってわかったんだ。それにロイドもクレスもすげぇいい奴なんだぜ」
クレス「ルークなんて、ロイドに「こんな友達が欲しかった」って、泣きそうな顔しながら言ってたよ」
#汗タラのガイ
ガイ「……え? ルーク、それって、じゃあ俺は……」
#構わずに笑顔で照れているルーク
ルーク「ばっか! クレス! 言うなよ! 恥ずかしいだろ!」
ロイド「いいじゃん。それにもう、ルークもクレスも俺の友達だろ」
ゼロス「ロイドくーん、俺さまは? 俺さまは?」
#心なしかしょんぼりしているガイ
ガイ「……俺の立場は……?」
アッシュ「ふん。薄情なレプリカなんざそんなもんだ」

 ルークは泣きそうな顔で「ロイドみたいな友達が欲しかった」と言った。そして本来の親友キャラであるガイが(ギャグっぽくですが)否定されたような流れになっています。

 なんだか、ひどくショックでした。



 ロイドは差別心を全く持たない、迷いのない人間です。全ての存在を屈託なく受け入れて肯定してしまう。シンフォニアチームの面々は全員がどこかで社会から弾き出されていて、だからロイドを中心にして集まり、彼に救われるという形になっています。

 以前、『アビス』にロイドがいたらルークは救われた筈、というようなご意見を、サイトの閲覧者さんから伺ったことがありました。それは本当のことだと思います。

 でも、公式の作ったもので、そう語って欲しくなかったのです。

 実際には『アビス』の世界にロイドはいません。絵に描いた餅です。ロイドのいない歪で残酷な世界で、それでもルークもその仲間たちも、不完全なりに頑張った、私はそれが好きでした。でもここでロイドが一言ルークを認める声をかけると、ルークは感激してしまう。「ロイドみたいな友達が欲しかった」と泣く。本来の仲間を見なくなる。

 ルーク自身の口から、『アビス』本編でのルークの人生、そして仲間たちの存在が否定されてしまったと感じました。

 そっか……。ルークは、そんなにも無理してたんだ。ホントは仲間たちに満足してなかったんだ。不幸なまま、本当に欲しい友達はいないと思ったまま死んじゃったんだと。

 

 …クレスは、ルークが過去形で「こんな友達が欲しかった」と言ったことを笑いましたが。ルークはもう、この時点で余命幾ばくもないんですよね。それを自覚してる上での言葉。

 ああ。そんなに不幸でしたか。

 確かに不幸だけど、彼なりに自分の人生に価値をつけて、誇りと幸せを見つけて死んでいったんだと思ってたけど。ただ無理して不幸で惨めなだけでしたか…。

 

 エンディングで、コレットと明るく笑って「ルークはなんか後ろ向きでこれからが心配だな」なんて言ってるロイドが痛い。ロイドに未来はあるけど、ルークにはないから。

 ルークと仲間たちが必死で、つたなく積み上げていたものを、ロイドの眩いほどの「善良さ」が悪意なく、あっけなく破壊してしまった気がします。天使の前では罪人のあがきは無意味です。


 エンディングには、ルークとしいなのこんな会話もあります。

しいな「ルーク。あんたもいろいろ苦労したんだって?」
ルーク「な、何だよ。もしかしてロイドに聞いたのか?」
しいな「まあね。……あたしもあたしの失敗で、仲間を大勢殺しちまった。だから何となく気持ちがわかるよ」
ルーク「……そうか。おまえも大変だったんだな」
しいな「だけど、あたしにはロイドたちがいてくれたから」
ルーク「ロイドか……。俺にもロイドがいてくれたら、また変わってたかもしれないな……」
#哀しげなルークに笑うしいな
しいな「何言ってんのさ! あんたにもガイたちがいるだろ? 一人で抱え込むんじゃないよ」
ルーク「……そうだよな。みんなこんな俺を受け入れてくれたんだ。感謝しないとな」
しいな「それに別れても、ロイドもあたしたちも、クレスたちだってあんたの友達さ」
#笑うルーク
ルーク「ああ。そうだな。ありがとう、しいな! おまえもロイドのこと、自分に素直になれよ」
#しいな、赤面する
しいな「お、大きなお世話だよ!」

 …多分これは、フォローのエピソードなんですよね。ルークの世界にロイドはいないけど、仲間たちがいるよという。

 でも最初に見たとき、しいなが「あんたにもガイたちがいるだろ?」と言っても、ルークが浮かない様子で「……そうだよな。みんなこんな俺を受け入れてくれたんだ。感謝しないとな」と言うばかりに見え、本当は満足していないのに、「そう思わなければいけないんだ」と卑屈な態度で無理しているのかと思ってズキッときました。しいなが「別れても、ロイドもあたしたちも、クレスたちだってあんたの友達さ」と言って、やっと明るく笑うんだと。

 でももう一度見直したら、「みんなこんな俺を受け入れてくれたんだ。感謝しないとな」と言ってるルークの声も表情もちゃんと明るいかな、と思えました。大丈夫…かな?


 この流れでガイとゼロスの会話もあって、そちらではフォローのニュアンスが明確に出ています。

ゼロス「俺さまに心残りがあるとすれば、ミントちゃんとアーチェちゃんとすずちゃんとティアちゃんとナタリアさまとアニスちゃんとお別れすることと……」
ガイ「……それ以上、まだあるのか?」
ゼロス「おまえさんの女性恐怖症を治してやれなかったことだ」
#がっくりするガイ
ガイ「……これでも大分治ったんだ」
ゼロス「うーん。いっそこっちの世界にこないか? 俺さまがいい女を紹介してやるぜ」
ガイ「いや、ありがたいけど、そっちには譜業もないだろうし……」
ゼロス「あ、駄目だ。やっぱおまえは連れていけない」
ガイ「なんだ? どうした突然」
ゼロス「おまえを連れて行くと、俺さまの人気が下がるかもしれない。ライバルはいない方がいいからな」
ガイ「ははは……。ゼロスらしいな」
ゼロス「……だからさ。おまえはおまえの世界で、あの後ろ向きなルーク坊ちゃんを助けてやれよ」
ガイ「もちろん。俺はあいつのお世話係兼心の友だからな」
ゼロス「がんばれよ。ついでに彼女も作れよ! 約束だぞ!」
ガイ「ははは……。そっちは約束しきれないけどな……」

 ゼロスってピオニー陛下と言動がそっくりだよなー。キャラタイプが同じなんですね。



 ともあれ。

 「ロイドが傍にいたら、ルークは救われていたかも」。このネタそのものが悪いとは言わないです。でも、ルーク自身にそれを言わせないで欲しかったのです。例えばガイ辺りが悔恨を込めて「ロイドか……。ああいう友達がいたら、ルークももっと変わっていたかもしれないな」とか言って、シンフォニアキャラ辺りに「ルークにはあなたたちがいるでしょう」と励まされる、という使い方だったら、こんなに悲しくならなかった。

 つまり、エルドラント突入(消滅寸前)という時期に、ルークに自分の人生を悔いるようなことを言わせて欲しくなかったんです。

 繰り返しになりますが、『アビス』が好きだった気持ちを否定されたように感じたから。




 地雷の話はここまでにして、残りの感想にいきましょう。

 不思議な光に飛ばされてしまった面々。



 水辺に飛ばされたヒロイン組の会話は、なかなか三人の特徴が出ていて面白かったです。ちょっと異常なくらい天然ボケしているコレットと、コレットほどではないけどおっとりしていて、意外に順応性の高いミント。ティアは全くシリアスで、だからこの二人の感性についていけない。特に、コレットに対しては一度本気で「ふざけないで」と怒っていました。コレットのボケが真性だと知ると謝っていましたが。

 『シンフォニア』世界では、コレットのドジやボケは可愛いだけなんですが、現実的なティアと並べると、割と本気で「異常」に見えてしまうのが面白かった。

 でも、そんなティアも心の中でミントたちの金髪を羨ましがったり、コレットの羽が可愛いとうっとりしたりしています。



 猛風地帯に飛ばされたのは、チェスター、ゼロス、ガイの主人公の親友組。つーか、ゼロスって「主人公の親友」ポジションだったのか…と驚きました。ジーニアスの立場は…。

 カッカするチェスターを挑発する大人気ないゼロスと、それを止める苦労性のガイ。ゼロス曰く、ガイは「ピチピチスパッツ着てる男」だそうです。……え、そうなの? ガイは「人の服装にケチをつけないでもらいたいんだが……」と言ってました。

 ゼロスにからかわれて喚くチェスターを見るにつけ、「……やれやれ。ここにアッシュがいたら、と思うとぞっとするな」と呟いてしまうガイ。話題がアッシュのことになりますが、アッシュの評判は大変悪いです(苦笑)。赤い髪のゼロスは「赤い髪のいけ好かない野郎」「あの手の顔した奴は、絶対根性曲がってるぜ」と言い、皮肉な目つきをしたチェスターは「生意気そうな嫌な目つきの奴」「あの顔は、ろくなもんじゃねえ」と評していました。

◆ガイ様 薄幸伝説2

 そしてここに引き継がれるガイ様の幸薄い伝説。言い争うゼロスとチェスターは、互いの額の生え際の後退っぷり(?)を貶し合い始めます。ところが、本気で怒り出したのは何故かガイでした。

ガイ「後退後退言うな、二人とも! 俺が一番心配なんだぞ!」
チェスター「おまえは別に後退してないだろう?」
ゼロス「それとも偽物か?」
ガイ「誰がだよ! いろいろ気苦労が多いんで、気が気じゃないんだ」

 …ずっと気にしてたんだなぁ(涙)。でも思いつめたらますます髪に悪いと思いますよ。

 そしてこの後女性恐怖症を告白したところ、ホモ扱いされてしまってますます可哀想なことになっていました。



 草原に飛ばされたのはクラース、リフィル、ジェイドの年長者組。…って、リフィルは二十三歳なんですけど…。なのに年寄りと言われれば、そりゃ怒るよねぇ。

 ジェイドの減らず口に翻弄され続けるクラースとリフィル。…ジェイドがこんなにウザく役立たずに思えたのは初めてで、ビックリしました。話が進まねぇ〜! 精霊の支配する異世界では説明役になれないせいか、それとも制止役のガイがいないせいか…。

 しかし、レプリカはどんな意味でも召喚じゃないと思うけど。



 雪山に飛ばされたのは、すず、ジーニアス、アニスのお子様三人組。考えてみれば、すずとアニスは職業軍人(暗殺者)で、ジーニアスだけただの子供なんですね。(天才ですが。)

 アニスがやけにピリピリして好戦的で不自然でした。いつもの仲間が誰も傍にいなかったせいなんでしょうか。ジーニアスと一触即発になりましたが、すずが鉄槌で仲裁。一応アニスが年長者なんですから、余裕見せてほしかったなぁ。



 雷の鳴り響く地に飛ばされた、アーチェ、しいな、ナタリアのサブヒロイン組はひたすら雷に怯えて抱き合い、アーチェはしいなの胸で窒息しかけてました。

 コリンの名前が出るのはここだけなんですね。心の精霊としてしいなたちを迎えに来てくれたらよかったのにと思いました。



 飛ばされた各組は光を目指して元の集結地点に戻りましたが、その頃には打ち解けて仲良くなっていました。

 ちなみにアッシュは、クラトス、リーガル、プレセアと共に飛ばされずに残っていたのですが、老成三人組に無言で見つめられ、子供っぽさを指摘されて説教されちゃってました(笑)。『アビス』本編では分かりにくかったアッシュの精神的な未熟さがはっきり分かるシナリオになっていますね。私としては、ゲーム発売後のインタビュー記事から得たアッシュ像と符合していると感じたので、違和感はなかったです。

クレス「みんなロイドの仲間かい? 随分大所帯なんだね」
ルーク「いや、ひとりは俺の連れだよ。アッシュ! 無事だったか?」
アッシュ「誰がお前の連れだと? ふざけたこというんじゃねえ!」
#声を震わせてうな垂れるルーク
ルーク「……う……。ごめ……ん……」
ミュウ「ご主人様をいじめないでですの!」
アッシュ「……ぬぅ……」

 ミュウに弱いアッシュ。新発見。実はちっちゃいもの好きか? チーグルをお供にしたルークが羨ましい?

 ちなみに、プレセアによればチーグルに肉球はないそうです。

アッシュ「何なんだ、この屑どもは!」
ルーク「アッシュ! そんな言い方はよせよ!」
アッシュ「うるせぇっ! てめぇもうぜーんだよ! 飛ばされた先でくたばってりゃよかったんだ!」
リーガル「そのような物言いは感心しないな」
プレセア「アッシュさん……本当は心配していたはずです。自分の心を偽るのは……よくないと思います」
アッシュ「な……!」
#微笑むクレス
クレス「そうか。君は照れ屋なんだね」
アッシュ「ち、ちが……!!」
#笑うロイド
ロイド「だから憎まれ口をたたくんだな。素直じゃない奴」
アッシュ「!!」
#絶句するアッシュ
ルーク(すげぇ。アッシュが言葉をなくしちまったよ……)

 アッシュもロイド他シンフォニアチームが傍に付いていたらなんか変わってたんですかね? しつけはしっかりされそうです。

 老成組に促されて、苦虫を噛み潰しながらも、アッシュは最初にチェスターやゼロスに斬りかかったことを詫びようとします。こういう点は、自主的に(身内の分まで)謝れるだけルークの方が成長してるみたいですね。

クラトス「アッシュ」
アッシュ「……う……」
クラトス「こういうことはけじめが肝心だと思うが?」
プレセア「がんばって……下さい……」
リーガル「己の罪を背負うことができるのは己のみだぞ」
アッシュ「わかってるっ! ……おい、ツリ目野郎に軽薄男」
チェスター「何だよ、その呼び方は!」
ゼロス「やれやれ、お子様だねぇ……」
アッシュ「……さっきはすまな……」
ジェイド「おや〜! 皆さんおそろいで」
#超にこやかな声に割り込まれ、言葉をなくしてしまうアッシュ
(中略)
アッシュ「……死霊使いネクロマンサー……っ! 何のつもりだ」
ジェイド「おやおや? 何を怒っているのですかアッシュ」
アッシュ「何をって……」
ジェイド「言っておきますが、偶然ですよ。あなたが素直に謝ろうとしたところに、私たちが入っていったのは。ええ、偶然ですとも。運命は皮肉なものですねぇ」

 可哀想(苦笑)。



 ところで、ここでゼロスが財産持ちだと知ったアニスが玉の輿狙いでまとわり付くんですが、『アビス』本編では、エルドラント突入前夜に「こうなったら玉の輿は諦めて、自力で初代女性導師になりますよぅ」と言ってますよね。玉の輿は諦めたんじゃなかったの?

 尤も、最終決戦直後、ルークに「教団を立て直すにはパトロンが必要でしょ」と言ってましたし、この「異聞録」のエンディングでも「ローレライ教団を立て直すには、異世界のお金持ちなんて意味ないじゃないですか」と言ってますんで、女性導師を狙いつつ、パトロンになってくれるお金持ち男性を探してるってことなんでしょうか。



 全員がそろうと、六つの光の玉の姿をした精霊の幼生体たちが現れ、やっと事情を話し始めます。時間がないらしいのにトロいです。

 この世界の根源精霊たちが暴走して世界消滅の危機に陥っているので、根源精霊たちを正気に戻してほしい、それが出来なければあなたたちもこの世界と共に消滅するだろうという、お約束と言うか強引な展開。(一応、あらゆる世界の精霊は繋がっており、他の幾つかの世界で異常が起こって、その世界の精霊にストレスが溜まってこんなことになった、つまり主人公たちの世界での争いが一因である、みたいな因縁はつけられてましたが。

 ちなみにここで、どうしてこの世界の景色は見覚えのあるものばかりなのかという疑問に答えが返されてましたが、『この世界の本来の姿は、皆さんが今目にしているものと異なります。皆さんは皆さんの記憶に残る光景を通して、この世界に自己イメージを固着させているのです』『要は、ご自分が過去に見た光景を、再び目にしているようなものです』だそうです。最初読んだときは「へー」と思いましたが、よくよく考えてみたら、そんなことする意味なんてまるでねぇー。どゆこと? この世界は本来は人間には知覚出来ない世界なんでしょうか。

 …つまり、思い出の品が落ちてたり、この世界にはいないはずの人間の幻を見たのも、そのせいなんですね。カジノにディストやミトスがいたり、ドンジャラでユアンやピオニーと対戦できたり、何故かシュタインメッツ伯爵が魔物と連れ立ってチェスターを襲ってくるのも。いや、そもそもこの世界にカジノやショップが存在することすら。アレらは全て幻だったんだな(笑)。



 関係ないですが、アーチェってボルトの言葉が理解できないんだっけ?
 あと、クラースが精霊ルナしか使わないのは一種のギャグにはなってるけど、六種の精霊を倒すのに同じ精霊を召喚するわけにはいかないから、ってのも大きいんでしょうね。しいななんか精霊を全く召喚しませんし。

 小精霊たちに請われるまま、六種の根源精霊をボコって正気に戻した面々。すると光っていた場所に最後の精霊オリジンが出現。…流石にローレライは出ないんですね。

 全員でオリジンをサンドバッグにすると、この世界は救われたとお礼を言われ、元の世界に戻してもらえることになりました。

ナタリア「名残惜しいですわ……」
アッシュ「この世界がそんなに気に入ったのか?」
ナタリア「そうですわね。この世界……というより、ここで出会った皆さんが、ですわね。特にリーガルとクラトスは、是非キムラスカへきていただきたいぐらい」
#ぎょっとするアッシュ
アッシュ「……おまえ……。ああいう奴がいいのか……」
ナタリア「まあ! 何をおっしゃいますの! 私はただ、あの二人のような者が我が国に仕えてくれれば、あなたやルークの右腕になってくれると、そう思っただけですわ」
アッシュ「……そ、そうか……」
ナタリア「だいたい、あなたは私の好みをご存知のはずですわ! 私には……あなたしかおりませんもの」
#赤面するアッシュ
アッシュ「……馬鹿野郎が」

 本編の流れでは、この時点で暴言吐いて吐かれて断絶したままだったのに、むちゃくちゃラブラブです、この二人。このゲームではあらゆるところでイチャイチャしていて、アッシュがナタリアにベタ惚れで、もー笑うしかない(笑)。お幸せに〜。


 対してルークとティアには、哀しい死の影が付きまとっています。

「……見てるって決めたのは自分なのに、それが辛いと感じることもあるの。私は……どうすればいいのかしら」

 ティアはミントにそう相談していました。ミントは「ご自分の本当のお気持ちを、大切にしてあげてください」と答えてましたが。

ティア「精霊……」
ルーク「ティア。寂しそうな顔してるな」
ティア「おとぎ話の世界だったなと思って。私たちの世界とは全然違う。精霊のいる世界……」
ルーク「そうだな。でもあっちはあっちで大変だってクレスたちに聞いた。戦いもあるんだって」
#黙りこみ、こらえきれないように叫ぶティア
ティア「それでも! それでも向こうの世界なら、あなたは!」
ルーク「……ティア。いいんだ」
ティア「……ごめんなさい。でも許されるなら、あちらの世界で暮らしたかった。あなた……みんなと」
#目を伏せるルーク
ルーク「……ありがとう、ティア」

 ロイドが友達だったら。人でなくても屈託なく存在を許される世界なら。

 実際には異世界も人間の住む世界で、死も差別も苦しみもみんなある。それが分かっていて、ティアはこう言ったんでしょうね。ルークにもそれは分かっている。

 どこかに夢の世界はあるのかもしれない。戦争のない、思い出だけで紡がれた小さなこの世界のように。それでもルークは元の世界に戻って決着をつけることを望み、ティアはそんな彼の姿を最後まで見届けることを選ぶ。

 戦いが終わった後の幸せを見据えているクレスとミントや、ロイドとコレットとは違う。これがルークとティアの道なんですね。



 それぞれの時空へ帰って行くファンタジアチームとシンフォニアチーム。

 クラトスはアッシュに「……武芸の鍛錬は心の鍛錬でもある。屑という言葉、あまり連呼するなよ」と言い、プレセアは「私と……逆の時間を生きているルークさんとは、もう少し……お話してみたかったです……」と言い残します。プレセアはルークとは全く話していなかったと思うんですが、どういう勘なのか、彼が外見よりずっと生きた年数が少ないことに気付いていたんですね。ジーニアスに「彼は……私と同じです。自分の知らないところで大きな何かに巻き込まれて、本来の時間とは、かい離してしまった……」と言っていました。(念のため。プレセアは十二歳で肉体の成長を止められており、実年齢は二十八歳です。



 さて。ゲームの都合上とはいえ、決裂して、エルドラントで決着をつけることになってたアッシュがルークたちの仲間に入ってたのは間が抜けていたわけですが、最後にどうにかフォローが入れられていました。

ガイ「アッシュ。元の世界に戻っても、単独行動を取るつもりか? こうなった以上、俺たちと一緒に……」
アッシュ「断る」
#苦笑するガイ
ガイ「やれやれ……。強情だな」
アッシュ「……ここでのことはあくまで事故のようなものだ。……おい、レプリカ!」
ルーク「え……?」
アッシュ「いいか、約束を忘れるなよ。エルドラントで全ての決着をつける」
ルーク「……わかってる。わかってるよ」
ナタリア「アッシュ……どうあっても、決意は揺らがないんですのね……」
#かたくなに目を伏せるアッシュ
アッシュ「…………」

 やれやれ。辻褄が合わされました。

 しかしアッシュ。ナタリアのためにノリノリで学生コスプレまでしてたくせに「事故のようなもの」か(笑)。



 こうして元の世界に戻ると過ぎた時間は一瞬で、しかも記憶が消えちゃってましたとさ、というおなじみの予定調和です。クレスは「ロイドやルークと一緒にいたことで、すごく勉強になったよ。ここで得た経験を、これからの戦いにも活かしていけるといいんだけどな」とエンディングで言ってたのに、お気の毒でした。

(しかし今後もクロスオーバーものの外伝ではロイドやクレスとルークは会うんでしょうね。テイルズシリーズは何故かシリーズのクロスオーバーが大好きみたいなので…。)





 シナリオの感想は以上です。


 このゲームには「タイミングバトル」という、提示されたタイミングに合わせてボタンを押すことで成否を判定するシステムがあります。シナリオに組み込まれている他、単独ゲームとしても七箇所に設置されていて、それぞれクリアすることが、おしゃべりチャットの発生やアイテム入手の条件になっています。

 私は、「異聞録」クリア後に出現する記念碑のタイミングバトルが最後までどうしても出来なくて、おかげで「異聞録」のしいなとルークのエンディングデモが見られず、しまいに諦めかかってたんですが、ふと思いついて、わざと五回くらい負けてから挑戦したところ、少し速度が遅くなった(ような気がして)クリアできました。

 カジノにあるスロットも、よく見ていると強制的に目が揃うことがあるので、下手な人のための救済措置は講じてあるんだなーとありがたく思いました。

 



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