注意!

 

テイルズ オブ ジ アビス −鮮血のアッシュ−

角川書店/『テイルズ オブ マガジン』/漫画:斎藤ハナ、シナリオ:二条凛

「テイルズ オブ」シリーズ専門誌『テイルズ オブ マガジン』で連載中の、アッシュ主役の『テイルズ オブ ジ アビス』の外伝漫画。

 ただし、原作ではなくTVアニメ版準拠のコミカライズのようです。

 

第4話

『テイルズ オブ マガジン』も早くも5号目。特筆すべきは、なんとっ! 裏表紙の広告が初めて違うものになってました。書店で手に取ったとき、まずそこを確認した私。(笑)

 

 漫画の方は、前回から引き続いてアニメ第6話のアッシュサイド。面白かったです。今回はルーク側のメンバーにも出番がありました。ちょっとずつながら、それぞれがちゃんと《らしい》感じ。六神将側では、シンクがいい味出してましたね。それと、今更ですけど陸艦の絵が物凄く上手だなぁ。

 原作にはないけれどファミ通小説や本編ドラマCDで使われていた、《アッシュがルークに気付かれることなく、彼の見るもの聞くものを知ることができる。心の声だって勝手に聞けちゃう》ご都合設定が使われていたのは残念でした。作劇上便利ですから、どうしてもこうなり易いんでしょうね。でも頼むから、今後の展開でこの力を多用しませんように〜。今回は《通信が上手く繋がらなくて偶然そうなった》という形にしてありましたので、きっと大丈夫だろうと思いますが。これやっちゃうとアッシュが情報収集に関してなんでもアリな神視点の存在になっちゃう。

 それはともかく。アッシュは強い悲劇性を背負ったキャラクターなのですが、それに酔った描き方がされてなかったので好感を持ちました。ちゃんと(作者として)突き放した視点になっている。カッコ良かったり可哀想だったりするところは勿論、醜いところやみっともないところも逃げずに、それぞれちゃんと描いてくれるんだなぁと。キャラクターは、内面の清濁両方あってこそですよね。

 

 今回しょっぱなからヴァン師匠せんせいがアッシュのことを「じゃじゃ馬」と呼んでいて、ブハッと噴き出さされました。「じゃじゃ馬」は本来《暴れ馬》という意味で、転じて《馬のように荒々しい、言うことを聞かない奴》という意味がありますが、私には、《乗りこなすのに苦労する、気が強くて反抗的な女性》という意味の方のイメージが強かったから。師匠、アッシュのこと《女の子》っぽく思ってんのかなーとか(笑)。じゃじゃ馬馴らししたいんか。何かの筋への妄想用サービスでしょうか。←変な妄想してんのはお前だよ


第5話

 今回はアニメ第7話前半に相当していました。

 作画が荒く、省略絵になっていたりトーンが足りなかったり背景が殆ど入ってないページがありました。単行本では修正されています。

 つーか、ルークとアッシュが同時に双牙斬を放つページ、印刷が下方にずれてる。私の買った本がおかしいのかな?(これも、単行本の方はちゃんとしています。)

 

 アニメを見たとき、アッシュがイオンを奪還させるためルークを呼んでおきながら、イオンに剣を突き付けてまで封咒を開けさせていたので、何を考えてるのか謎だなと思っていたのですが、封咒をわざと開けさせることでヴァンの目的を量り、イオンを返すことで計画を狂わせてヴァンの様子を見たかったんだそうです。なるほど。

 そんで、瓦礫に押し潰されそうになったナタリアをルークが守らなかったことにムカついているのでした。うんうん。なっちゃんのために怒ってくれー。

 崩壊するザオ遺跡から脱出する際には、超振動を放って塞がった道を開けておりましたよ。かめはめ波っぽく。

 

 脱出後、砂漠を走る神託の盾オラクルの陸艦内。

 シンクから、何があってもアッシュだけは死なせるな、危険なアクゼリュスへ勝手に行かせるなとヴァンに指示を受けていたと聞かされ、ラルゴにも「お前も一人前の戦士なら 総長の思いを酌んでやれ」と言われて(ここ、雑誌掲載時は誤字だったのが単行本では修正されてますね)、アッシュは、ヴァンは本当に俺を思いやってくれていたのか、疑ったのは考え過ぎだったのかと迷います。

 で。スッと目を閉じるとまたまたルークに回線を繋ぎ、向こうに気付かれないまま状況を盗み見て、ルークの心の声まで全部聞く。相変わらずのチート展開。

 ルークの心の声を聞くことで、彼がヴァンに超振動での瘴気中和を指示されていると知り、俄かに不安に駆られて、陸艦から飛び降りて独りアクゼリュスへと向かうのでした。

 

 原作のアッシュはカイツール襲撃後の時点で、ヴァンから直接、レプリカルークを利用して外殻の人間を消す、とまでは聞かされていたそうですが、アニメ版のアッシュはギリギリまでホントに何も知らなかった、ってことみたいですね。(この漫画では、イオン誘拐前にヴァンから「私はルークを使いアクゼリュスで計画を実行に移す」とだけ聞いていたことになっています。)

 それにしても、アッシュは自分がアクゼリュスで街と共に消えると預言スコアに詠まれてたこと、ヴァンがレプリカルークを身代わりに殺すつもりで作ったことは知っていたのに、それを念頭に置いた推理をしないですね。

 

 ところで、今回の掲載号から『テイルズ オブ マガジン』が地元の書店に入荷しなくなり、隣県まで買いに行ったり取り寄せ注文したりしなくてはならなくなりました。めんどくせぇ。


第6話

 今回は、アニメ第8話の崩落直前場面までに相当。

 

 確信のないまま、不安に駆られて六神将の陸艦を抜け出したアッシュは、間もなくアクゼリュスに到着。停泊しているタルタロスを発見し、近づいてみたところで、神託の盾オラクル兵に拉致されかかっているティアを見つけます。

 アニメ本編ではアッシュがいきなり斬り込んできましたが、漫画では兵士たちに「おいっ 何をしている」と声をかけ「と…っ特務師団長!!」「総長のご命令です! 邪魔をなさると容赦いたしませ…」と返されたので「ごちゃごちゃうるせぇ」と睨んで譜術・エクスプロードで一発皆殺しでした。アニメと漫画のテンポの差を考慮した変更なのでしょう。

 にしても、騎士団側はアッシュが何者かちゃんと認識してる。恐らくヴァンは、アッシュを殺すなと命じていたでしょうし、無論、ここではティアも殺すまいとしていたはず。アニメ本編では五十人ほどもいた兵士たちをアッシュとティアだけで全滅し得たのは、そういう理由もあったのかな、なんて思いました。

 

 ティアは、ヴァンが外殻大地の人間を消そうとしていることを知っています。原作でもアニメ版でも。が、漫画のティアは「兄は… 兄さんは何か恐ろしいことを…」としか言いませんでした。ティアと合流させたストーリー上の意味が希薄にぃいい(^_^;)。

 漫画アッシュは、ティアから何も情報を得ることなく独りで《ヴァンはレプリカルークの超振動を使ってアクゼリュスを消そうとしている》と結論。

 アクゼリュスで自分の身代わりにレプリカが死ぬ予定だとは元々知っていましたが、自分の(レプリカの)力でアクゼリュス消滅を意図的に行い、街中の民間人を巻き込むというのは耐え難かったみたいです。

 そんなことさせてたまるかとダッシュ。ヴァンとルークがどこにいるのか知らないくせに〜。例によって、オリジナルにはレプリカの居場所が感じ取れるんですぅとかいう不思議設定でも作ってチート繋ぎしてるのかなぁ。

 つか、ティアはヴァンが第14坑道にいると知ってるはずなのに、アッシュにヴァンはどこだと訊かれて「わからないわ」と答えてます。アニメ本編や原作では、ティアの先導で坑道に向かってる…はずですが。

 

 走りながら回線を繋いでルークに呼びかけます。ルークが封咒の扉の前にいることを知って、セフィロトツリーを消すつもりかと推測し、しかしイオンはいないんだから扉は開けられないぞとほくそ笑む。

 んが。その場にイオンがいることに気づいてガビーン!(笑)

 たまたま、この漫画を読む少し前くらいに、確かレス板でだったか、ダアトに帰せたと思ってたはずのイオンがアクゼリュスにいるのを見てアッシュはさぞ愕然としただろう、みたいなこと書いたばかりだったせいで、この場面に妙に共感して、おかしく感じられてたまりませんでした(笑)。

 

 ルークが超振動でリングを消してしまい、やっと駆けつけたアッシュが愕然としたところで今回は終了。


第7話

 今回は、アニメ第8話の崩落〜ラストシーンまでに相当しています。

 

 アクゼリュス崩落。アニメ版では存在抹消されていたジョン少年が、崩落する街を描写したコマの一つに辛うじて、けれど台詞付きで描かれていました。ジョン少年のエピソードのカットを惜しんだ原作ファンへのサービスなのでしょうか。

 この回辺りから、アニメ版ではカットされた原作版の台詞やエピソードが積極的に取り入れられるようになっていきます。

 

 ヴァンの呼んだ飛行魔物グリフィンに掴み取られ、崩落していく大地に残されたナタリアを悲痛な思いで見やるアッシュ。しかし為す術もなくアクゼリュスから連れ攫われてしまいます。

 空を行きながら、ヴァンはアッシュを熱く諭します。

「アッシュ」「お前も預言スコアに運命を縛られし者…」「預言を打ち砕かぬ限りお前に未来はなかった」「別人として生き…たとえ自分の居場所やナタリア姫を捨ててでも――」
「救い出したのはこの私… 忘れたわけではあるまい」
「レプリカなど しょせんは使い捨ての駒」「オリジナルおまえの超振動だけが新しい世界を切り拓ける」「お前こそが真の英雄なのだ!!」

 しかしアッシュは、アクゼリュスの惨劇を目の当たりにしてすら平然と理想を語るヴァンへの疑念を抑えきれません。

「あんたが俺に言ってることは」「あの出来損ないレプリカに言ってることと同じじゃねえか…!!」

 疑ってはいたものの、それでも、ヴァンの理想を信じていたかったのに。

 グリフィンの顔に剣を押し当てて行く先を強制すると、アッシュはヴァンから離脱してユリアシティへ向かったのでした。

 

 本編の流れだと、アッシュがどうしてここでルークの前に現れたのか、明確な理由は語られていないわけですが、この漫画でははっきり語っています。ルークを殺しに来たのです。

 利用され打ち棄てられてなおヴァンを師と慕うルークの惨めな姿に自分自身を重ね見て、いっそうの悔しさと憎しみに突き動かされ、お前は俺の劣化複写人間だと暴露する。逆上して襲いかかってきたルークを返り討ちにして、地に転がった彼めがけて剣を振り下ろす!

 …という、アニメ第8話ラストと全く同じ所で今回は終了でした。



 今号が発売された半月後に、今号分までが収録された単行本第一巻が発売されました。あまりのスピードっぷりに、ちょっと複雑な気分になりましたのことよ。(雑誌の方の入手に苦労してて、単行本は普通に買えたから。)

 単行本には、漫画担当とシナリオ担当、二人の作者さんの似顔絵付きプロフィールとあとがきが載っていて、シナリオ担当の方が男性なのだと初めて知った次第です。シナリオ担当さんも、たまには雑誌の方の巻末コメントに参加なさればいいのにね。

 シナリオ担当さんのあとがきによれば、この漫画のコンセプトは以下のようなものだそうです。

  • アニメ化に合わせた、アニメ版のコミカライズ
  • アニメと同時進行である点を活かし、主人公をアッシュに変更

 原作ゲームを遊び倒しアニメ版も見倒して、ゲーム・アニメ版スタッフさん方の強力な支援を受けて製作しているそうです。

 漫画担当さんのあとがきの方にも、「アニメ制作のサンライズ様や、ゲーム開発者の皆様に質問をぶつけて何かと教えて頂いたり」「他媒体で語られなかったアッシュの一面を少しでも描けたらいいなあ…と思っています。」とありました。ただ監修を受けるだけではなく積極的に、原作を掘り起こす方向で、真摯に取り組んで作ってくださっているんですね。

 この漫画に描かれたアッシュ像が、少なくともアニメ版の最大公約数的な公式見解であり、原作ゲーム版の見解をも貪欲に取り入れたものであることは確かみたいです。


第8話

 今回はアニメ第9話のアバンタイトルに相当する部分まで。なんと大半を、原作でもアニメ版でも描かれていなかった、ルークが気を失っていた間の出来事で構成してありました。嬉しいですね。

 

 アニメ本編では、アッシュがルークめがけて剣を振り下ろした後どうなったのか語っていません。なんだよモウ気になるじゃんかよモウとモダモダしていたわけですが、そこを補完してありました。

 アッシュは剣を振り下ろしますが、結局ギリギリで止める。ルークは「俺は…お前のレプリカなんかじゃ…っ」と呟きつつ気を失ってしまう。背を向けて剣を収め、舌打ちするアッシュ。ティアとミュウがルークに駆け寄っている。

 

 次は、ルークが気を失っていた間、アッシュすらいない場所(中央監視施設の会議室かな)での仲間たちの様子を描いていました。

 ちゃんと《生物レプリカ》という言葉を使っていて、何か感心。原作ではこの用語なのですが、アニメ版では《生体レプリカ》に変えられていて、少し気になっていたので。設定用語は原作寄りなんですね。個人的に、《音譜帯》の読みがどうなるかも気になります。原作ママに《おんぷたい》になるか、アニメ公式サイトの用語集やスタッフブログ記事に書かれてた《フォンベルト》になっちゃうか。

 ところでこの場面のジェイドがむっちゃ凛々しくてカッコよかったです。ひょー。

 

 ルークがレプリカだったと知って動揺するアニス。壁に寄りかかって腕組みしたガイは暗い顔で呟きます。

「7年前の誘拐から記憶喪失で帰ってきたルークは」「フォミクリー技術で作られたばかりの別の人間だったってわけか…」
「歩き方も話し方も忘れたんじゃない」「知らなかったんだな……」

 それを聞くナタリアの脳裏にも、かつてのルークの姿が浮かんでいます。ろくに歩くことすらできずに泣いていた彼に、いつか必ず記憶を取り戻せると信じて、あれこれ学習やリハビリを強いていた日々のことを。

 やがてティアがやって来て、ルークは部屋で眠ったままで、ミュウとアッシュが傍にいると告げます。するとナタリアは思い詰めた顔で駆け出して行ってしまうのでした。

 

 次の場面からようやく、アニメ第9話のアバンタイトルに当たるシーンになります。

 アッシュは自分の意識の中でルークを目覚めさせ、レプリカであることを思い知らせる。現実を受け入れようとしない情けない姿に再び自分を見て憎しみを煽られ、やはり殺してしまおうかと首に手を伸ばしかけますが、ミュウの妨害で気勢を殺がれます。

 その次に、アニメ本編ではカットされていた、原作(フェイスチャット『アッシュの目算』)を元にした会話を挿入していました。

 ここに至ってまでヴァンへの依存を捨て切れていないルークの様子に激しい怒りを感じ、

(まだ師匠せんせいだなどと…)(俺は違う!!)
「ヴァンの計画を阻止する」「そのためにもまずは外殻大地に戻って奴の行動を洗う」
「お前はそのまま眺めていろ!!」「現実ってやつをな!!」

と怒鳴りつけるのでした。

 

 アニメ版のコミカライズですから、このまま進んでいけば、例のルークへ向けてのアッシュの台詞「俺には俺のやるべきことがある。お前は自分が何をしたか、何をすべきか、自分の頭で考えろ」が出てくるのだと思いますが。アッシュがこういう心理状態だったという解釈なら、この台詞も納得出来るかなぁと思いました。

 ルークを独立した一個の人間と定義して兄か教育者のように「お前は自分が何をしたか、何をすべきか、自分の頭で考えろ」と言ったのではなく、自分自身と重ね見ている部分があって、だからこそ苛立ち、ヴァンから独立して自分の頭で考えろと言わずにおれない、と。うん。

 でも個人的には、この台詞は使わないでくれた方がスッキリはしますけど。原作通りでいいですよ…。

 

 それはそうと、アッシュがルークの意識を自分の意識の中に捕らえた理由って、結局何なんだろう。

 

 アッシュがティアの家の玄関から出た瞬間、「ルーク!!」と呼びかけられる。

 一瞬、硬直するアッシュ。

 ナタリアが来ていました。何も答えないアッシュの様子に、ぎこちなく「アッシュ」と呼び直して、「わたくしのこと 覚えていらして…?」と不安げに語りかけてきます。そんな彼女を前に、アッシュは。

 ……ってところで今回は終了です。

 

 この漫画は、ナタリアが可愛いのが本当に幸せですねぇ。眼福です。(^ ^)


第9話

 今回は、アニメ第9話アバン〜後半のアッシュの夢・導入部分までに相当していました。

 

 ナタリアに何も言えず、目をそらすと歩き去るアッシュ。ルークが何か非難していましたが、(俺はもう… 過去を捨てたんだ)と、肩を怒らせ早足に進みます。走ってるようにさえ見える絵です。青春は意地っ張り。

 

 その次の、テオドーロを交えた作戦会議の会話は部分的にアニメ本編に沿っていましたが、タルタロス打ち上げをジェイドが提唱してアッシュを誘うというアニメ独自のアレンジを廃し、原作通り、アッシュ提唱で仲間たちを率いていくという形に戻してありました。うんうん。そうじゃないと変ですよね。

 また会議後に、原作を元にした、アニメにはなかったガイとの会話が追加されていました。

 ガイはアッシュにルークの様子を尋ね、ルークも一人になれば自分が何をすべきか気づくだろうとおもんばかり、アッシュに向かっては「お前のことは信用しちゃいない」と冷たく言い放つ。

 アニメ版は《アッシュに冷たいガイ》の要素をほぼ全カットしてたんですけど、それを原作通りに復活させています。

 タルタロス打ち上げの件はともかく、ガイの扱いを戻したのには少し驚きました。アニメ版のコミカライズですが、部分によっては、原作沿いに演出やエピソードを戻す方針のようです。

 

 タルタロス打ち上げ〜ベルケンド入港辺りの会話は、原作寄りの形に戻されていました。ガイがとにかく冷たい。アッシュの中から見ているルークが(な…なんか ガイらしくないな…)とビックリしています。

 

 この漫画はアッシュ視点で、アッシュがいない場面はそう多くは描かれないのですが、ベルケンド港でガイとナタリアだけが会話するシーンを完全コミカライズしていました。過去の回想シーンまで入れて。ガイとナタリアの幼なじみ組は、《二人のルーク》にとって重要な存在なんですね。ちょうちょを追っかけて転ぶ子ルークが可愛いです。子アッシュはすごく凛々しいです。

 シチュエーションはアニメに沿わせていますが、ラストのガイの態度を、やはり原作寄りに戻しています。

 

 第一音機関研究所へ。確かアニメ版では《第一》という部分が省略されてたんですけど、ここも原作設定に戻してある、かな。

 スピノザに逃げられる〜ジェイドが書類からワイヨン鏡窟の手掛かりを得る辺りはアニメ本編沿い。

 ガイの離脱。ルークを否定するような、角の立つアニスやナタリアの台詞は全カットしてありました。ルークが脇役であれば不必要ってことかな。

 ここのアッシュの心情解釈が自分のと同じだったんで安堵。うん。

 

 ガイ離脱後の会話は原作寄りに戻してありました。お前も行きたければあのレプリカのところへ行けと言われて、口ごもってしまうナタリア。胸に去来するのは七年間の思い出。そんな彼女をじっと見つめるアッシュ。切ないシーンです。お友達に出ていかれて寂しいですねとジェイドにからかわれるエピソードまで、原作から取り入れてありました。

 

 そして、ワイヨン鏡窟のあるラーデシア大陸を目指して夜の海を行くタルタロス。ベッドで眠るアッシュは七年前の夢を見る……。

 ってところで、今回は終了。

 次回はアッシュの過去話でしょうが、『マ王』漫画版外伝1を元にアニメ版のこのシーンが作られ、それをまた別の漫画家さんがコミカライズすることになるなんて、なんだか面白いですね。どんな感じになるんでしょうか。


第10話

 今回はアニメ第9話アッシュの夢からラスト辺りまでに相当。

 

 アッシュの夢は、『マ王』漫画版外伝1の超ダイジェストだったアニメ版の更にダイジェストって感じでしたが、自分の居場所にいるレプリカを見て絶望するシーンに、背後から両肩を支えて語りかける幻のヴァンという、漫画からの描写を付け加えてありました。ナタリアの花冠はなし。

 どうでもいいけど、目を覚ましたアッシュに下半身透けた絵で語りかけるルークが、取り憑いてる幽霊みたいだよ。(笑)

 

 アニメオリジナルの、夜の甲板でのジェイドとの会話もしっかりコミカライズ。ふぉおお、ジェイドがカッコいー!

 ジェイドの「起きてしまったことは変えられない」という言葉を受け、(そうだ… だから俺は これからを変える)と静かに、しかし熱く決意するアッシュなのでした。ヒーローしてます。

 

 ワイヨン鏡窟にて、眉一つ動かさぬ涼しい顔で魔物を次々と倒すアッシュ。六神将時代に比べるとクール度チョーUPです。ヴァンから離れることで、ある程度精神的に安定したってことなのかなぁ。

 そんな彼を、ナタリアとアニス、ついでにジェイドが口々に褒めそやす。「つ つべこべ言ってねぇで先を急……」とどもるアッシュくん。原作のこの辺りでアッシュとどめで戦闘勝利すると、女性陣に褒めそやされて「……さ、先を急ぐぞ!」とどもるボイスドラマが発生するんですが、それから採ってるみたいですね。マニアック!

 次いで、大爆発ビッグ・バン関連のオリジナル伏線が入れてありました。突如痛みを感じるアッシュ。ナタリアの優しい手を「大丈夫だ」と拒みつつ、(…何だ? この痛みは)(頭痛…か?)と自問する。

 

 洞窟深部のフォミクリー研究施設に到着。原作やアニメに比べてアッシュの台詞が増やしてあります。以下のオリジナル会話が面白かったです♪

アッシュ「ヴァンの指示でディストが動いていたはずだ」「奴は変わり者だが譜業に関しては優れた技術を持っている」
アニス「死神ディストかぁ」←微妙に遠い目
ジェイド「鼻たれディストですねぇ」←嫌そう
アッシュ「鼻…?」←あくまでシリアス
ジェイド「ええまぁ」←しれっと

 

 研究施設で地震が起きて、落ちてきた器材に押し潰されそうになったナタリアをアッシュが救う展開は、アニメ沿いですね。抱き合い見つめ合うアッシュとナタリア。一瞬、過去の思い出がよぎる。

 ここは原作よりアニメより、萌えっ! でした。くぉおお。やるなアッシュぅぅ! (照れくさくて悶絶する私。)アニスと一緒に「いいねぇいいねぇ若い二人はお幸せですよ」とか囃し立てたくなりましたよ。アッシュに聞かれたら双牙斬されるけど。

 嬉しそうに語りかけてくるナタリアを無視して、顔を背け、アッシュはつれなく離れます。ですが内心では(そばにいるとどうしても…)なんて思ってて、溢れそうになる気持ちを思い切るように、ぐ、と目を伏せるのでした。

 ナタリアの側にいると捨てたはずの過去がよみがえってきてしまう、どうしても。だからここで別れて単独行動をとることにした……という心の流れは、自然で、なるほどと納得できました。

 

 アニメ版ではこのシーンに続けてすぐ、その場でアッシュがルークとの回線を切断します。が、漫画ではもうワンシーン追加して、タルタロスに戻ってヴァンの計画について話し合い、更に、大爆発ビッグ・バン関連の伏線を追加していました。原作から採っているんですが、《檻の中の実験チーグル》は登場させず、独自の理屈付けになっています。

#再び頭痛を起こすアッシュ。例によって、大丈夫だと誤魔化すが
ジェイド「頭痛の他に 手足に痺れを感じませんでしたか」
アッシュ「…いや」「なぜそんなことを聞く?」
ジェイド「実はレプリカ情報を採取する際に 被験体オリジナルの身体に悪影響が出る場合があるんです」「最悪の場合」「死にます」
アッシュ「!?」
ジェイド「完全同位体なら別の事象が起きるという研究結果もありますが…」
#動揺しているアッシュ
アッシュ(……)(俺が…フォミクリーの悪影響で)(死ぬ…?)
ルーク『俺が作られたせいで…アッシュが!?』
ジェイド「心配しなくていいですよ」「レプリカ情報を採取された被験体オリジナルに異変が起きるのは無機物で10日以内です」「生物の場合はもっと早い」「7年間異変がなければ大丈夫でしょう」「ただの頭痛ならば気にすることはない」
#安堵の息を落とすナタリア、アッシュ、ルーク
ナタリア「よかったですわ…」
アッシュ(おどかしやがって…)
ルーク『よかった……』

 で、ナタリア達と別れた後、ダアトの街を歩いていて再び頭痛が起こり、しかも右手の先がピリピリと痺れることに気づく。

「これは…まさか……!?」

 と、衝撃を受けたところで今回は終了でした。

 レプリカ情報採取されて悪影響が出ると、頭痛に加えて手足が痺れる、というのはこの漫画独自の設定です。実験チーグルを出さなかった分、アッシュ(と読者)を騙すミスリードするために追加した、漫画で描き易い仕掛けってことなんでしょうか。

 ちなみに原作だと、悪影響=採取から数日後の突然死 としか語られてません。

 レプリカ情報採取の悪影響と大爆発ビッグ・バン(完全同位体のコンタミネーション)は別モノなのですが、アッシュはいつまで、自分の身に起こった異変を誤解しているんでしょう?

 アニメの流れでいくとアッシュが次に登場するのは第13、14話、ナタリアのバチカル脱出援護ですが、この時点で既に、自分はもうすぐ死ぬと思い込んでいることになっています。

 多分次回は漆黒の翼を仲間にするオリジナルエピソードかと思うのですが、大爆発関連も扱うのかなぁ。スピノザかディストに会うのかしら。

 

 さて。今回、フォミクリー研究施設探訪の際に、アニメでは採られなかった原作フェイスチャット『思い出』を使っていて嬉しかったです。

アッシュ「真実を知るためには 自分の目で自分の足で確かめる。そうしなければ この国の政治は何も変わらない」

 で。アニメ第9話で私が一番引っかかった(苦笑)、アッシュがルークとの回線を切断する際のオリジナル台詞「お前は自分が何をしたか、何をすべきか、自分の頭で考えろ」。漫画では少し変えていて、しかも、前述の『思い出』でナタリアに向かって言った台詞ととても似た感じになっておりました。

アッシュ「ここから先は自分の目で見て 自分の頭で考えろ!」

 うーん? どういうことでしょ。アッシュは昔から持ってる自分のモットーをルークにも語っただけですよ、ということなのだろーか。

 ともあれ。アニメではアッシュは静かな表情で言っていて、「何をすべきか、自分の頭で考えろ」という言い回しも、いかにも教師めいていて、その点が嫌だったんですけど。漫画では「俺は…どうすればいい」と頼ろうとするルークの依存的な態度にムッとした、という演出が加えられていて、悟った教育者には見えなかったので、それがよかったです。


第11話

 今回はアニメ第10話と12話に相当。原作にもアニメにもなかった、完全オリジナルエピソードです。待ってた!

 

 前回に引き続いてダアトの街から始まりますが、直後なんでしょうか。路地で情報屋に金を払っているアッシュです。またも頭痛を感じたようで、思わずよろめく。

 その頃、六神将はヴァンの指示に従って各自行動していました。シンクは部下を率い、アクゼリュス崩落跡を調査。アッシュは崩落に巻き込まれたと認識しており、監視役からオサラバできてせいせいすると考えています。リグレットはダアトで、苛つくモースを宥めてコントロール。ラルゴはキムラスカ軍のふりをしてルグニカ平野のマルクト軍陣地を襲撃、同時刻にアリエッタがキムラスカ軍陣地を襲撃して、両国の開戦を誘発。

 残るディストは、ダアトを出たアッシュと鉢合わせしていました。この場面は色々な意味でよかったです。

  1. ディストも、アッシュはアクゼリュス崩落に巻き込まれたと聞いていた。つまり、ヴァンはアッシュを捕らえる指示を出していない。
    俺は泳がされてるってことか?)とヴァンの思惑を計るアッシュ。
  2. アッシュにヴァンの狙いは何なんだと詰問されたディストは笑いを止め、「ヴァンの狙い?」「さて…」「そんなことには興味ありませんね」と返す。
    ディストの表情の感じが、静かなぶん狂気じみていて印象的でした。全体的に、ディストが《らしい》と感じましたです。
  3. アッシュは、ディストがモースと通じていて、ヴァンを裏切っていることに気づく。
    ナタリアのバチカル脱出の際、アッシュはラルゴとディストの前に立ち塞がって、それを口にする訳で。ここで知ったことにしたのかぁー。すごく綺麗に話が繋がってる! ここに一番感動しました。
  4. 会話中、再びアッシュに頭痛が。するとディストが「もしや今頃になって音素フォニムの乖離が始まっているのでは!?」「ええきっとそうです!! 完全同位体特有の…理論上でしか知りえなかったあの現象が目の前で…!!」と大興奮。アッシュは詳しく聞こうとするが、気を利かせた漆黒の翼が煙玉を使ってアッシュを連れ出し、話は聞けずじまいに。
    で、アッシュは大爆発ビッグ・バンに関して勘違いすることに…という流れなんですね。なるほど。

 さて。ディストを問い質したかったのに、漆黒の翼に一方的に助けられて(?)しまったアッシュ。「俺がお前らを雇うのは移動手段アシが必要だからだ」「それ以外のことを依頼した覚えはない!!」と不機嫌そうに金袋を投げ渡し、彼らの自動車にドカッと乗り込む。

 冒頭でも情報屋にお金払ってましたけど、アッシュってお金はいっぱい持ってるんだなぁ。ヴァンはちゃんとアッシュに給料払ってたんですね。……それとも任務用に渡されたものを流用してるのか?

 ヨークの帽子の上のネズミがニヤニヤしてて目立ってました。気になるアイツです。

 

 その後、ルークたちの様子が描写されます。

 ……タルタロスで陸地を走って、直接セントビナーに救助に向かってました。むむむ。急に、アニメとも原作とも違う展開に。(本来の設定では、タルタロスは魔界クリフォトに落ちたため陸上走行機能が故障。マルクト軍も動かせなかったので、ルークたちは徒歩で救助に向かったのです。)

 その後は、アニメ版の展開に沿って、セントビナーでの救助活動中にアルビオールが出現。(ただし、セントビナーが崩落を始める描写はなし。)アニメ版では何故かピオニー皇帝が敵国所属のアルビオールを召喚すると言うトンデモ展開なのですが、そこは誤魔化して、どうしてアルビオールが現れたのかは一切説明しませんでした。ノエルの顔出しもありません。(次回に1コマだけ出ますが、台詞も自己紹介もなし。)

 

 それらの様子を、漆黒の翼の自動車の座席で、便利連絡網で覗き見しているアッシュ。

 勝手に耳目を使われてることを気づいてなかったものの、ちゃんとルークに軽い頭痛が起きている描写を入れてあったのは嬉しかったです。

 急場はヤツらの方で大丈夫そうだと確認しつつ、着いたのはシュレーの丘のセフィロト。アッシュは、ここで何をするつもりなのか? …というところで、今回は終了です。

 

 どーでもいい閑話。

 シュレーの丘のパッセージリングへの封咒が開いているのを見て、アッシュが(やはり ここもか…!!)と思ってましたが、細かいことを言うと、ちょっと変ですよね。(^_^;)

 ここを開けたのは、六神将がタルタロスを拿捕して、イオンを捕らえた時です。この時、アッシュは六神将として任務に参加してましたから、リグレットがイオンを連れて行って封咒を開かせたことを、知らない方が不自然です。封咒が開いているのを見て(やはり ここもか…!!)と思うのではなく、パッセージリングが停止しているのを見てそう思うか、或いは、(恐らくここも…!!)などと思いながらパッセージリングを見に行く、みたいな方が齟齬はなかったかも。


第12話

 今回は、アニメ第13話の途中までに相当します。物語も折り返しですね。

 

 シュレーの丘のセフィロトに入り、パッセージリングが停止しているのを確認したアッシュ。既にザオ遺跡のリングが停止しているのも確認してきたらしいです。ヴァンはどこに行ったのか、と考えるアッシュ。

 にしても、ここの台詞はちょっと謎だ。

「ザオ遺跡…そしてここシュレーの丘」「少なくとも二ヶ所のセフィロトが停止されている」「セフィロトツリーが消え大地が崩落するのも時間の問題か…」

 セフィロトは停止しない。停止するのはパッセージリング。パッセージリングが停止するとすぐにセフィロトツリーは消える。(ディバイディングラインや他のセフィロトツリーがあるため、二、三ヶ所のツリーが消えてもすぐには崩落しない。)

 なので正確には、「少なくとも二ヶ所のパッセージリングが停止されている」「セフィロトツリーの消失で大地が崩落するのも時間の問題か…」みたいな台詞回しであるべきなんじゃないかなぁ…?

 と思ってしまいましたが、バンナムのチェックを通ってるんだから問題ないのか。『アビス』の設定は難しいですね。

 

 その頃ルークたちは、アルビオールを使ってセントビナーの住民たちの避難を完了させていました。

 展開が、アニメ版とも原作とも違う……と言うか、ミックスした感じになってます。

原作…セントビナー崩落→救出した住民をユリアシティに降ろす→魔界クリフォトに落ちたシュレーの丘へ行き、リング再起動→地上に出て開戦を知る

アニメ版…セントビナー崩落→そのまま住民を乗せて空を飛んでいて開戦を知る

アッシュ漫画…セントビナー崩落(台詞の説明のみ)→救出した住民を地上に降ろす→空を飛んで開戦を知る

 その後はアニメ版に沿った展開に。キムラスカ軍の総大将に停戦を命じに行ったナタリアは、モースの暴露で偽姫として捕らえられる。

 

 一方アッシュは、漆黒の翼の判断でケセドニアに逗留していました。スネに傷持つ人間が身を隠すにはもってこいの街だと言うのです。彼らと同類扱いなのは不本意であるものの、(ダアトには帰れないと考えていたが…)(仕方ない)(ここを拠点に動くとするか)と従う。そして独り、思いに沈みます。(バチカルという居場所を奪われ)(そしてまた)(俺にはもう何も無い)(ただこの身がこうしてあるのみ――…)と。まだまだ漆黒の翼と打ち解けていませんね。最終決戦までに仲間らしくなれるのでしょうか。

 そんな時、街を行く人々が、ナタリアが偽姫として捕らえられたと噂しているのを耳にしました。

(ナタリア……!?)

 真っ青になって勢いよく席を立ち、我を忘れたように走り出したアッシュを、驚いた漆黒の翼が追う。結局、彼らに宥められて、落ち着いて作戦を考えることが出来たようです。彼らの自動車でバチカルへ急ぎます。

 ノワールは、「縁もゆかりもないはずのアンタが なぜナタリア王女を助けに行くのか…」と笑う。アッシュが何者なのか、まだ正確には知らないんですね。ルークを見知ってますから見当はついてるんでしょうけど。

 幼い頃から、髪の色が父母と違うと、城の人々にナタリアが疑惑視されていたことは知っていました。でも、そんなことは関係なかった。アッシュは、何度も思い返してきた七歳の日の約束を、再び胸に浮かべます。

(生まれなんか関係ない)(誰よりも国を愛し)(国を思うナタリアがニセモノなものか!)(あいつこそがキムラスカの王女だろうが!!)

 バチカル城に潜入したアッシュは地下の罪人部屋へ。牢に入れられていたガイとティアを発見しての第一声は、「ナタリアはどこにいる!」でした。彼らを牢から出しながらも、(ナタリア……間に合ってくれ!)と焦りは募るばかり。

 

 この後の展開は、原作ともアニメ版とも少し違っている感じでした。ナタリアの私室での処刑未遂エピソードがなく、謁見室にナタリアとルーク(とミュウ)だけが連行されていて、処刑されそうになったところにアッシュがバーンと登場。アッシュを主人公として盛り上げるためなのでしょうね。

 王が処刑を命じるとルークとナタリアが背を合わせてましたが、これ、ぶっちゃけ、『マ王』漫画版の該当シーンの真似ですよね。(^_^;) (更に原型は、原作ゲームのOPアニメですが。)

 アッシュは謁見の間に飛び込み、「俺がこいつらを食い止める」「お前らは早く逃げろ!」と叫ぶ。この、あまりにもカッコイイ場面で今回は終了でした。おー!

 

『テイルズ オブ マガジン』の次号予告に、大きく「次号、いよいよCLIMAX!!」と書いてあります。この雑誌、あくまで『月刊コンプエース』の増刊という扱いで、毎月発売されていても定期刊行物扱いではありませんでした。そもそも最初から発刊数がおおよそ決められていたとか何とか…。

 というわけで、もしかすると次号で休刊ではないかと。

 この漫画はどうなるんでしょうね? 運が良ければ別の雑誌に移って連載を続けるのでしょうが。次回で連載終了なら、ナタリアを助けて約束の言葉を交わしたところで終わって、単行本二冊で完結?

 ドキドキしつつ次号を待ちたいと思います。


第13話

 掲載誌『テイルズ オブ マガジン』、本当に今号(Vol.14)で休刊でした。この漫画は『コンプエース』3月号(1月26日発売)に続くそうですが、最終コマにて「次回、衝撃の結末へ…!!」とあおってあって、次で打ち切り終了っぽい? 単行本二巻で完結で、原稿料を出すためにラスト一回分を雑誌掲載するとかなんでしょうか…?(単行本書き下ろしだと原稿料出ないそうですから。)

 と思ってたんですが、後に続くとは全く書かれていなかった同誌連載のギャグ漫画『ているずV』が、ちゃっかり『コンプエース』に移籍して1月号から連載再開してたので、だったらこっちも最後まで続けさせてくれるのかも、と希望を感じたり。どうなるんでしょう。

 

 さて。今回はアニメ第13話の終盤と、第14話の冒頭、第15話のAパートに相当。予想通り、ナタリアを助けて約束の言葉を交わしたところまででした。

 前回書きました通り、原作ともアニメ版とも状況が異なります。ルークとナタリア二人だけが謁見の間に引き出され、王に処刑を命じられたところにアッシュが登場、彼に足止めを任せて、続いて現れた仲間たちと共にバチカル脱出。『マ王』漫画版のオマージュって感じです。

 で。アッシュ視点ならではの追加エピソードがありました。ルークたちを逃がし、ラルゴとディストが喧嘩を始めた後。アッシュはさっさと剣を収め、インゴベルト王を無言でギッと睨む。ビクッ、と竦み上がる王に背を向け、謁見の間から駆け去ったのでした。

 

 この場面、皆さんはどう思いましたか? 私は妙に心に残りました。

 ささやか過ぎるほど小さなエピソードなのに、どうしてだろうと己に問いかけてみた結果、王がアッシュに睨まれただけで怯えたことと、この時点のアッシュが《自発的に》正面から伯父を睨んだのが、少し納得できなかったみたいです。

 インゴベルト王は、ああ見えて弓の名手で、平和条約締結の席でガイに喉元に剣を突き付けられても冷静に対応したぐらいは胆力のある人じゃないですか。彼が動揺するなら、獅子に睨まれたウサギのように怯える感じではなく、自身が切り捨てたもう一人の身内〜本物のルークを目の当たりにして、改めて罪悪感を突かれたり預言スコアの歪みを実感したりして揺らいだ、って感じの方がよかったなぁ。

 ジブン的には、王がアッシュの顔を見て驚くエピソードを入れてほしかったです。「お、お前は…!?」などとハッとして(本物のルークだと気づいて)何か言いかけたのを、アッシュがギロッと睨んで遮り(拒絶し)、背を向けて無言で走り去る、みたいな。

 要は、断罪(絶対・圧倒的な強さ)より拒絶(弱さを含む意地っ張りの強さ)のニュアンスが強い方が、自分の中のアッシュ像とは合致したなぁ、ってワガママなだけなんですが。(^_^;) スミマセン。

 

 城下へ駆け下りるアッシュ。アニメ版ではカットだった、城下でナタリア達に追い付いてキムラスカ軍から庇うあたりも描かれていましたが、ペールと白光騎士団に指示を出して守らせたあたりはカットです。

 原作にあった、バチカル脱出寸前のナタリアとの会話はカット。その代わり、アッシュがナタリアをじっと見つめながら心の中で(ナタリア…… 民を愛し民に愛され お前は――… お前は約束を果たしたんだな)と思う形に変えてありました。惚れ直してるねぇ。

『マ王』漫画版は、この美しい場面をギャグ風味に脚色してたんだよなぁ。翌月の読者コーナーで読者の絶賛を受けてましたが、私には今思い出しても不可思議センス。人の嗜好はそれぞれでござる。

 

 この後のナタリア達の脱出場面、二つ、心に残る部分がありました。

 一つは、ナタリア達を市街に送り出した後、アッシュが市民たちを背後にしてキムラスカ軍に剣を向ける絵が描かれており、市民たちと《一致団結》してるみたいに見えたこと。

 実際、市民を扇動させたのはアッシュですし、ナタリアを守るという点で心は一致しています。描かれてないだけで原作でもこういう感じだったのは間違いないでしょう。なのに少し不思議な感じがしたのは、彼が基本的に一匹狼で部下を使う際も命令して一方的に動かす感じで、部下ではない集団と《団結》する様子を見たことがなかったからですね。カッコいいです。

 この感じだと、アッシュは将来、バチカル市民たちの間で人気が出そう。よっ、キムラスカの英雄王!

 

 もう一つは、脱出の際、アッシュに「レプリカ! ドジ踏むんじゃねぇぞ」と言われたルークが、明るい感じでニッと笑って「お前こそな!」と返したことです。

 原作にも似たような場面はありますが、そっちだと「ルーク! ドジを踏んだら俺がおまえを殺すっ!」「……けっ。おまえこそ、無事でな」なんですよね。殆ど違わないじゃないか、と思う方も多そうなんですが。ううううう〜〜ん、私には決定的に違ったぁああ……。

 崩落編のルークは、アッシュに対してさほど卑屈になってない代わりに、反発心がスゴかったじゃないですか。アッシュの方も、ルークを自分のコピー、身代わりだと思ってます。原作アッシュはここであえて《レプリカ》とは呼ばず「ルーク」と呼ぶ。自分はもう《ルーク》ではなく、今の《ルーク》はレプリカの方だから不本意だけどナタリアを託す、レプリカは《俺》なんだから彼女を命かけて守って当然、守れないなら(ドジったら)価値がないから殺すぞだからしっかりやれ……と言う感じかなと勝手に思っておりますが。ともあれ、この時点では、《ストレートに互いに認め合い信頼し合う仲》ではないです。

 なので、ルークが《任せろ》って感じで明るくニッと笑うのは……。ううう〜〜ん……。違うと思う。この二人の関係性ではない。

 原作のルークの台詞。「……」と間がある。で、「けっ」と、苛立ちを含んだ発声が入る。ここに色々な複雑さが込められてるのではないでしょうかっ。(演説ぼく主張) 反発心とか、思いがけない救出への戸惑いと感謝とか、残していく心配とか、ナタリアを託さざるを得ない彼の辛さや強さの認識と罪悪感とか、それでもやっぱりムカつくんだよ、とか……。

 そんなわけで、漫画の王道カラーで機微を感じる余地を塗り潰してしまったここの脚色はちょっと残念、というか、引っかかってしまいました。どうでもいい些細なことなのにね。

 

 次。アニメ第14話冒頭に相当する、アッシュと漆黒の翼がバチカル脱出して自動車に駆け寄る場面になりますが、一つエピソードを足して膨らませてありました♥ 少し事情を話しただけで市民が動いてくれて驚いた、ナタリア王女は本当に国民に愛されているということかと漆黒の翼たちが話していると、傍らで聞いていたアッシュが言うのです。どこか誇らしげに、いとおしむように。

「当たり前だ」
「あいつは民に触れ…直接その声を聞いて」「自分に何ができるかを いつも考えている」
そういう王女だからこそ みながついていくんだ

 この場面は、TVアニメ版DVD/BD 五巻の初回特典ドラマCD『孤独を抱いて』を簡略化したものですね。

 ナタリアの行動そのものも立派ですけど、かつて子供の頃に自分がナタリアに語った理想を、彼女がしっかり自分のものに昇華して実現させている…。誘拐されて以降アッシュが失ってしまった《夢》が、彼女の手でいまだ守られ輝いているっていうのも、凄く嬉しいに違いない。アッシュ(オリジナルルーク)の理想が受け継がれ、約束が守られているということは、彼が間違いなくそこにいた、そして消えていない、という存在の証にもなりますし。ナタリアにとってアッシュは、愛する人であると同時に為政者の理想を掲げる尊敬すべき師ですが、アッシュにとってもナタリアは、愛する人であると同時に、自分を支える《夢》そのものになったんだろうなぁ。

 一瞬ポカンとして、ニヤニヤし始める漆黒の翼たち。アッシュの話はナタリア六割、と後に言われる基盤が形作られたようです(笑)。

ヨーク「へえ〜」
ウルシー「うしし」
ノワール「よっぽど王女様のことが大事なんだねぇ」
アッシュなっ何…!(背を向け、肩を怒らせて歩き出し)「さっさと ここを離れるぞ!」
ノワール「あはは 可愛いねぇ 照れちゃって」
ヨーク「からかっちゃ可哀想ですぜ」
ウルシー「純情でゲスなぁ」
#眉間にしわを寄せ、憮然としているアッシュ

 ニヤニヤ。ホントに可愛いなぁあ♥

 が。ほのぼのした空気から一転、アニメ版に沿った、車に乗り込もうとしたアッシュが激しい頭痛を覚えてよろめく、大爆発ビッグ・バン現象の伏線エピソードになります。

 アニメ版では「もう……時間がねぇってのか」と言っていて、既に現象の内容をあらかた知っている感じなんですが、漫画のアッシュは前々回ディストの言ってた「もしや今頃になって音素フォニムの乖離が始まっているのでは!?」という情報くらいしか知らない。で、(本当に… 俺にはもう時間が無い…のか…!?)という疑問形の独白に変えてありました。そして、スピノザに会って確かめるために即座にベルケンドへ向かう。

 

 原作でも、バチカル脱出後アッシュはベルケンドへ向かいます。そしてルークたちと落ち合う。一方、アニメ版のアッシュはベルケンドには全く現れません。

 そして、アニメ版のコミカライズとされつつ原作の内容をも取り込んでいるこの漫画では。バチカル脱出後ルーク組・アッシュ組共に即座にベルケンドへ向かうが、全く出会わない。という状況になってました〜。(^_^;) 

 これはアニメ版に合わせたということになるんでしょうか? 実はアニメ版でもアッシュはベルケンドに来てたけど、たまたま顔を合わせなかったんですよーとか。

 その後、シェリダンで地核振動静止装置を作る手配をしているナタリアたちの様子を、アッシュが便利連絡網で覗き見するエピソードが入れられてましたが。それだったら、逃げたスピノザを探して町をうろついていたアッシュがルーク組を見つけ、物陰から様子を窺って状況を知る、みたいなのでもよかったなぁなんて思いました。珍しく、連絡網(チート設定)を使わなくても成り立つ状況だったんですし。

 

 ちなみに、回線を繋げられてるルークには頭痛が続いていて、ようやく、もしかしてアッシュがこっちを見てるのでは? と気付いたことになってました。おお。気付かれたとなると、今後は《こっそり覗き見》することは無くなるのかな?

 

 漆黒の翼が気を回して、自動車を勝手に、ナタリアのいるシェリダンへ回していました。王女様が気になるんなら会いに行けばいい、と言うのです。覗き見で満足していたアッシュは、なんつーことをしてくれるんだ! という、世にもアレな顔をしましたが、結局ため息をついてみせながらも受け入れる。

 

 次の場面は、夜中のシェリダンの宿屋の廊下。トイレに起きてきたルークが寝ぼけまなこで暗い廊下を歩いてたら、通り過ぎようとした曲がり角の壁に誰かが腕組みしてもたれかかってる……――アッシュ!? 叫んでビックリポーズになっちゃったルークを、「静かにしやがれ!」とアッシュが一喝。ごめんアッシュ色んな意味でちょっと怖いしルークがビビるの当然なので怒鳴るのは理不尽だよ。(^_^;) トイレに急いでいたらしいルークが漏らさなくてよかったと思いました。

 …って。漆黒の翼にナタリアに会っておいでと言われて来たんですよね。で、夜中にナタリア一行が泊まってる宿の廊下でルークと鉢合わせ。つ、つまり、本当はナタリアの部屋を探していたのかっ…!? それって夜這……ゲフン。いやだってルークと秘かに話したいだけなら、それこそ便利連絡網を使えばいいんですし。

 ともあれ、ルークとしばらく情報交換することに。外殻降下について伯父上とも話し合って、マルクトと平和条約を結ぶべきだ、と語るルークを見つめるアッシュ。こいつ意外とましなことを言うようになったじゃねぇか、なんて思ってたのかな。更にルークは、ナタリアがインゴベルト王との再会に怯えていること、その気持ちはヴァンに見捨てられた自分にはよく解る、などと話します。その様子を見つめて更に何かを思うアッシュ。ヴァンに裏切られたのに慕う気持ちを捨てきれない。そんなルークに再び自分自身を重ね見たんでしょうか。

 そしてルークは立ち上がり、アッシュに、お前も一緒に行かないか、力を貸してくれよと要請。しかしアッシュは、

「レプリカと慣れ合うつもりはない」「話はわかった もういい」「俺には俺のやることがある」「お前も俺のレプリカとして しっかり働くんだな!」

と言い捨てて立ち去り、「おっお前何なんだよ! オリジナルだからって えらそうに…!」とルークの怒りを買うのでした。

 これはアニメ版ではカットされてた、ベルケンド知事邸前からスピノザが逃走した直後の会話の変形、なのかなぁ。「一緒にスピノザを捜そうぜ!」「か、勘違いするな!(中略)おまえたちと……レプリカ野郎と慣れ合うつもりはないっ!」って奴。それとも、レプリカ編のロニール雪山での「なら(ローレライの宝珠を)一緒に捜そう!」「レプリカと慣れ合うつもりはない」という会話を前倒して使ってるのだろーか。

 この場面、ルークにきつい言葉を浴びせながら、アッシュは内心ではこう思っています。

劣化品とはいえ この俺のレプリカだ
今のこいつになら
崩落大地のことは まかせるに足りる

 アッシュはルークのここまでの成長を認めている。けれど、それは未だ、本当の信頼ではないですよね。なにせ「劣化品とはいえ この俺のレプリカだ」ですから。そもそも、ルークを一個人として認める意識がない。この時点では、アッシュにとってルークは自分の代わりに動いてくれる代用品でしかありません。どうにか代用品として許容できるレベルにはなった、という認め方。うんうん。

 俺には俺のやることがある、と言ってますが、つまり二次的な問題(大地の崩落)の始末はレプリカに任せて、自分は問題を起こす元凶――ヴァンを捜し当てて倒す、ということですよね。

 

 さて。この後、ワタシ分的お待ちかねの《夜明けの約束》の場面になりますが、話の繋がりが不思議な感じです。ルークの前から立ち去ったアッシュは、次の場面では何故か、未明のシェリダンの大きな家の屋根の上に座っています。そのじっと見つめる先は海岸で、そこに小さく、佇むナタリアが見える。と思ったら、その次の場面ではアッシュ自身がそこにいて、ナタリアに約束の言葉をかける。

 ええええっと……。アッシュはどうしてまた屋根の上なんかに座ってたんでしょうか。そしてどういう経緯でナタリアが海岸にいることに気付いたのでしょうか。この前に、何故か夜中の宿の廊下でルークと話す場面を入れてしまっているので、尚更おかしな感じがします。

 …と、いうわけで読者の特権、妄想というスキルを使ってみるぜ!

 アッシュ、漆黒の翼にあおられてナタリアと話すために夜中の宿に侵入 ナタリアの部屋はどこだ? ウロウロ… 突然気付く。夜中に淑女の部屋に侵入するのはマズいんじゃないかっ!? しかしここまで来て会わずに帰るのも… 廊下で悩んでいたらトイレに起きたルークに発見される。うるさいっ、ナタリアに気付かれるだろーが ついでなので意見交換。ナタリアが王との再会に怯えていると聞く。心配だ 勢いで宿の外に出てしまい、ナタリアに会うか会わぬか屋根の上で悶々 屋根の上から海岸のナタリア発見。元気なさそう 意地も見栄もくそくらえ。一言元気づけるために会いに行きました

 こういうのだとどうでしょうかっ。と訊かれても困るでしょうけど(苦笑)。

 

 夜明けの約束の場面、絵が非常に美しかったです。文句なしに素晴らしかった。

 それから、約束の言葉を聞いたナタリアが涙をこぼす演出が加えられていて、それもよかったです。それと、最後にナタリアがアッシュを見つめながら「アッシュ…… ありがとう」と言っていて、切なさもあった原作とはかなり味わいが違ってきており、甘い感じでした。原作→アニメ版→漫画版と脚色を経てきた結果だな、と感じました。

 

 翌朝。王と会う決意を固めたナタリアの様子をまたまた屋根の上から見つめているアッシュ。今回は漆黒の翼も一緒です。キミらは実に高い場所が好きだな。

 夜明け、アッシュがナタリアに「生まれなんてどうでもいい お前ができることをすればいい」と言い、今、ナタリアは「王女として…キムラスカの人間として できることをやりますわ」と仲間たちに告げる。その力強い言葉と晴れ晴れとした顔を見届けると、アッシュもまた(俺も 残された時の中で できることを――…!)と勇ましく旅立っていく。原作の頃から重ねてあった「できることをやる」という二人のキーワードを更に重ねて、絆値ますますアップです。アッシュの言葉がナタリアに力を与え、ナタリアの姿がアッシュに力を与える。素敵ですね。

 ここで今回は終了です。次回はどうなるんでしょう? 打ち切りじゃないといいなぁ。

 

 



inserted by FC2 system