注意!

 

テイルズ オブ ジ アビス 剣を重ねて

バンダイナムコ/ゲームソフト付属小説/実弥島 巧

テイルズ オブ ザ ヒーローズ ツインブレイヴ 初回生産限定プレミアムエディション
(2012/02/23)
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 2012年に発売されたPSP用ゲームソフト『テイルズ オブ ザ ヒーローズ ツインブレイヴ』初回限定版に同梱された短編小説集『旅の途中』に収められた一篇です。

『ツインブレイヴ』は、テイルズオブシリーズ15作のキャラクターが入り乱れたパラレル世界観のお祭りゲーム。ところが限定版小説は原作の世界観で、しかも原作を担当したシナリオライター各氏が書いています。公式の原作外伝と捉えていいかと思います。

 本編ゲームから既に七年。原作世界観で、しかも原作シナリオライター女史による公式外伝小説だなんて幸運、夢にも思ってませんでしたから、小躍りしました。そのうえ、私が一番好きなルークとガイのコンビのお話です。ウヒョォォいいんですかぁ!? って感じです。

 また、この小説をルーク役の声優さんが朗読した、同タイトルの朗読ドラマCDも同梱されていました。ガイや白光騎士の台詞のみ、別の声優さんが担当しています。

 朗読CDは、ルーク独白の地部分と、口に出しての台詞部分の区別がつきづらい点があり、聴いていて何度か戸惑う感じでした。なお、朗読CDだからってことなんでしょうが、通常のドラマCDに比べて音楽がシンプルで、演出も最低限です。

 あと、CDのジャケット絵は、イマイチ似てません。特にガイは、明らかになんか違う人になっている。(^_^;) 小説の挿絵の方は、可愛くて気に入りました。

画像引用:
『テイルズ オブ ザ ヒーローズ ツインブレイヴ』初回生産限定プレミアムエディションより(株式会社バンダイナムコゲームス)

 以下、あらすじです。

 二ヶ月強の過酷な旅を終え、やっと屋敷に帰ってきた。

 旅の仲間たちと別れ、もう休むと自室に引き上げはしたが、ルークは安らぐことができなかった。ヴァンが言ったのだ。お前は兵器として飼い殺しにされると。マルクトとの和平を結ばせ、英雄になることができれば自由になれると彼は言ったが、本当にそうなのだろうか?

 不安に潰れそうになったルークは、気晴らしにガイと剣舞をしようと考える。

 ルークには七年分の記憶しかない。赤ん坊同然になった彼をどうにか回復させようと、人々は毎日のように知識を詰め込ませた。それが嫌で、時々部屋を逃げ出しては隠れていた。頭が空っぽになった息子を見て両親がどんなに悲しんだか解っていたから、頑張んなきゃなとは思っていたものの、それでも、もっと気楽に遊んでいたかった。

 そのたびに大騒ぎになって捜索が行われたものだが、ルークを見つけ出すのは決まってガイだった。

 ガイは屋敷で一番ルークに年が近い。父は忙しく、母は病気がち。ヴァンは常に稽古に付き合ってくれるわけではないから、暇を持て余したルークの相手をしてくれるのは、ガイか庭師のペールくらいのもので。あの日、庭木の陰に隠れていたルークを見つけ出し、剣舞という新しい楽しみを教えてくれたのもガイだった。

 ガイを探して廊下を歩いていたルークは、彼が二人の白光騎士になじられている場面を目撃する。カッとして止めようとしたが、一人だけ気付いたガイが『来るな』と目配せしてきたので踏みとどまった。

 ルークに気付かないまま、白光騎士たちは言う。何故、公爵様はお前のような者にルーク様追跡の任務をお与えになったのか。立場をわきまえるべきだ、ルーク様のお気持ちを履き違えるとはけしからん。それに我らの目に届かないところでルーク様にひどく砕けた言葉遣いをしているそうではないか! ルーク様のお言葉遣いが最近乱れていると公爵様が頭を痛められておられるのもお前の責任だ! お前のような者を傍に置いているから、ルーク様は人参を召し上がらないに違いない!

 困ったような笑みを浮かべて受け流していたガイだったが、「おまえではルーク様をお守りしきれなかったではないか!」「おまえの報告など待たずとも聞き及んでいる。ルーク様が今回の件でやむなく剣をふるわれる状況に追い込まれたと!」と言われた時、態度が変わった。

「だが、ルークは戦ったんだ。最初はともかく、バチカルに帰ってくるまでの道中、ちゃんと自分で覚悟して剣をとった」

 強い態度をあらわにし、しかもルークを呼び捨てにしたガイに、白光騎士は頭に血を上らせて突き飛ばす。だが、ガイは引かなかった。

「俺の到着が遅れたことは謝りますよ。もっと早く合流できてればよかった。けど、報告は悪いことばかりじゃないんです」

 結局、ガイがルークの冒険の顛末を報告書にまとめて提出することで話はつき、騎士たちは不機嫌そうに立ち去った。

 やっとガイの傍に近寄ることを許されたルークは、騎士たちに怒りを向ける。あいつらだって俺をティアから守れなかったじゃねぇか。ガイはちゃんと俺を助けに来てくれた。あんな顔の見分けもつかねぇような連中とガイを一緒にされたくないし、まして苛められるとか、あいつらがガイより上だとか認めねぇ!

 あいつらが俺を守ろうとするのは、父上の命令だからだ。でもガイは違う。命令が無くたって来てくれる。

 最初は笑って取り成していたガイだったが、声を荒げながら懸命に訴え続けるルークに、「おまえ、俺のために本気で怒ってくれたんだな」と真顔を見せて礼を言った。

 それでも彼は言うのだ。白光騎士たちがお前を大事に思う気持ちも本物なのだと。彼らは志願し選抜された精鋭で、ファブレ家に絶対の忠誠を誓っている。命令されて誓ったのではない。七年前のルーク誘拐を彼らがいかに悔やんだか。そして、今度こそルークを守り抜きたいと、いかに必死に願っているのか。

 だからこそ彼らは、今やルークの最も傍近い守護の役を勝ち得ているガイが憎らしいのだと。

「俺は彼らのいうところの白光騎士の誇りなんてのは持ち合わせちゃいないからな」

 あんなに文句を言われて腹が立たないのかと問われて「そうだな。腹は立たないな」と返した。「わかるからだよ。白光騎士の方々が、おまえを本気で思ってるって。おまえのことが心配だから、俺にああまで絡んでくるんだ」。

 ルークにはやはり解らない。だが、ガイが腹を立てていないのなら、自分が怒ることではないのだろうか?

 するとガイが続けた。

「ま、それでも俺はそうやすやすと譲る気はないんだがね」

 そう言うと、ガイはふっと表情を崩して、妙な笑い顔になった。「まだおまえにはわからないだろうけどな。それでいいんだよ、ルーク」と。

 その意味を尋ねたルークだったが、ガイはいつもの調子で、くすぐり言葉を投げて話を終わらせた。ルークは奇妙な感覚を覚える。以前は判らなかった。でも今は、なんとなく感じ取れる。ガイに何かをはぐらかされたんじゃないか?

 それを口にすると、ガイはいやにしみじみとした目になって、ルークを上から下まで眺めまわした。

「ルーク、おまえ、成長したんだな」
「大変な冒険だったけど、外の世界を見て、おまえ、変わったよ」

 ルークにはやはり、よく解らない。外の世界に出て見えるようになった幾つかの懸案事を思うと、再び不安が身を噛むばかりだ。ガイに何かをはぐらかされているような、スッキリしない感じも消えはしない。

 それでも強引に気持ちを切り替え、ルークはガイを引き連れて、剣舞をするために中庭へと向かった。

「……そのまままっすぐ進んでくれよ」

 ぽつりと落とされたガイの言葉の意味も、今はまだ理解できないまま。

(あらすじ終わり)

 この小説は長髪時代のルーク視点です。そのため、イマイチ分かりづらい。と言うのも、この頃のルークは人の気持ちを読み取る力が低いから(笑)。ガイもまた、はぐらかすような言い方ばかりしていますから、輪をかけて分かりづらい。

 とりあえず、三パターンくらいの読み方ができるなぁと思いました。

 

 一つは、《BLボーイズ・ラヴ》的な読み方。狙ったのかたまたまそう読めちゃうのかは知る由もありませんが、そう読んでも差し支えなくはありますよね(笑)。

 ガイと白光騎士たちはルークの《》を巡り争っている。同じ相手を想う者として共感する面があるガイは白光騎士の肩を持つようなことを言ったりもするけれど、それでもルークを譲る気はない、とカッコよく宣言。

 で、以下の部分。

「ま、それでも俺はそうやすやすと譲る気はないんだがね」
 ガイはそう言って笑う。こういう時、こいつは妙にカッコつけた顔をするんだよな。
 俺が黙ると、ガイはふっとその表情を崩して、妙な笑い顔になった。
「まだおまえにはわからないだろうけどな。それでいいんだよ、ルーク」
「……なんだよ、それ」
「それがおまえのいいところだってことさ」
「な、なんだよ、いいところって! 気持ちわりーな!」
 かっと頬が熱くなる。俺は大げさに飛び退って、大きく両手を振り回した。
 ガイのこういう物言いに、俺はなんか変な感じがする。この感じは、外の世界を知る前の俺にはたぶんなかったことだ。
 なんか変だ、引っかかる、けどどう変なのかはわからない。なんだろう、この気持ち……苛立ってるわけじゃない……強いて言うなら……焦り、なのか?

 ここを、ルークがガイへの恋心を自覚し始めた意味だと解釈してみます! まだ色恋沙汰は解らないだろう、それでいいと言うガイですが、ルークは胸をざわめかせ、はぐらかされたと感じて納得しない。ガイは、ルークが恋愛感情を理解し始めるほど成長しつつあることに感銘を受けるのでした。

 ……なんてね。(ああっ、どん引いてる人がいる気がする。)

 勿論、この小説は一般向けの公式外伝ですから、そんなはずはありません。でも、ルークがガイにくすぐり台詞を言われて、照れて頬を熱くして憎まれ口を叩いちゃってる点が、いささか少女的な反応なもので、ついついそんな風にも読めちゃいますね(笑)。

 

 ふざけるのはここまでにして、真面目に。

 もう一つの読み方は、《主君ルークの寵を競う臣下たち》です。

 白光騎士たちやガイは、臣下としてルークに忠誠を誓い、その信を得たいと思っている。白光騎士たちは役職以上に重用されているガイが気に入らない。忠誠心あふれる騎士たちにとって、主君の信こそが最大の褒章なのですから。そんな権力闘争をルークは知らず、理解もできない。

 ガイはその純真さこそが「ルークのいいところ」だと褒めます。世のしがらみに囚われず、自身の気持ちだけで判断している。世界の醜さは知らなくていい、まだ子供のままでいればいいと言うわけですが、ルークはそこに「焦り」を感じる。子供のままで居続けてはいけないと思い始めたということですね。ガイはその様に感銘を受け、「今の真っすぐな心も捨てずに大人になってくれ」と願う。

 これがスタンダードな読み方かと思います。ですが、原作ファンの多くは、これにもう一つ要素を重ねて読んだのではないでしょうか。

 

 というわけで。最後の一つは、《復讐と愛情に揺れるガイ》という読み方です。

「七年前、彼らはおまえを守れなかった。けどおまえはこうして戻ってきた。彼らにしてみたら、今度こそ守り抜くって必死なんだよ」
 必死……か。俺にはやたら口うるさくって融通きかない連中にしか見えないんだけどな。
「なんだよそれ、俺はそんなこと頼んでねーっつの。俺にはガイがいるしな」
「まあ、もちろん俺もおまえの面倒をみることにかけちゃ譲れないけどな」
 つまり、白光騎士もガイも俺を守りたがってて……なんだよ、じゃあ別に仲悪くなる理由なんてねぇんじゃねぇの?
「待てよ、ガイもあいつらもみんな俺を守りたいんだろ? じゃ、なんで面倒くせーことになるんだよ?」
「つまりだ、白光騎士団の方々からしてみたら、俺は得体の知れない使用人で、彼らの大事なルーク様のお守りにはふさわしくないってことさ。俺は彼らのいうところの白光騎士の誇りなんてのは持ち合わせちゃいないからな」
「はあ? なんだよそれ、馬鹿な話だな」

「俺は白光騎士の誇りなんて持ち合わせちゃいない」というガイの言葉に、ルークは何も感じていません。ですが、実は問題発言ですよね。白光騎士の誇り。それは、心からルークらファブレ家の人々を案じ、命かけても守ろうとする忠義心。そんなものは持ち合わせていないと彼は言っているのです。

 当たり前のことでしょう。彼は復讐者なのですから。ルークを殺し、ファブレ家を不幸の底に落とすのが彼の悲願。ですが、この頃のルークはそんなこと夢にも思いません。

「だいたいあいつらの言ってることおかしいしさ。ガイはちゃんと俺を助けに来てくれたじゃねぇか」
「ま、旦那様じきじきのご命令もあったしな」
「それだけか? 父上の命令がなかったら、おまえ、来てくれなかったのか?」
 俺は真顔できいた。もちろん、ガイの答えはわかってるけど、とにかく俺は大真面目にきいた。
「……まさか。むしろ、旦那様のご命令を引き出すのにもうちょっと手こずってたら、勝手に動いてたよ。俺がおまえをほっとくわけにはいかないからな」
 大真面目な俺の問いを受けて、ガイもようやく真面目に答える。

 幼い子供が親にそう思うように、無条件で愛されていると信じ込んでいます。

 ですが、この時のガイの心中はどうだったのでしょうか?

 ガイの方がずっと頼りになる、俺の気持ちを解ってくれていると言い、比較して白光騎士団を悪し様に言うルークに向かい、ガイは何故か彼らの弁護を始めます。彼らがいかにルークを大事に思っているかと、何度も何度も。

 これは、ガイにお人好しの面があるからとも、同じ主君を想う同志としての情けだとも取れますが、彼が雌伏した復讐者である点を踏まえれば、《後ろめたさ》の発露と捉えることもできるのではないでしょうか。

 本当に心から案じ守ろうとしているのは、ルークが悪く言う白光騎士団の方。本当は、信頼し切っているガイこそが危険人物なのです。ガイが自身を「得体の知れない使用人」と、強烈な皮肉を込めて称している点にも、それがうかがえる気がします。(そして、この皮肉にもルークは気付きません。)懸命とさえ言える弁護は、不誠実な彼が見せた、せめてもの誠実さだったのかもしれませんね。

 無論、彼のルークへの愛情も嘘ではないでしょう。だからこそ「ルークの面倒をみる役を譲る気はない」と宣言したはず。けれどその陰に、やはり復讐心が潜んでいたと解釈することも不可能ではありません。守り役という最もルークの傍近くにいる立場。即ち、「いつでもルークを殺せる立場」を手放すつもりはないのだと。

 そんな気持ちのせめぎ合いが、彼に「妙な笑い顔」をさせたのかも。「まだおまえにはわからないだろうけどな。それでいいんだよ、ルーク」という台詞には、俺が復讐者だなんてお前には気付けないだろう、まだ気付かないでいてくれという願いがこもっていたのかもしれません。

 実際、今までのルークなら、ガイの言葉に含まれた陰に気付けませんでした。ところが、外の世界を知って成長した彼は、曖昧ながらも違和感を覚える。気付かなければならない何かがある。無意識ながらそれは感じて、焦った気持ちになったのではないでしょうか。

「よし、じゃあ久しぶりに剣舞でもやるか?」
「お、そうこなくっちゃな!」
 ガイが応じてくれたので、俺は弾む足取りで中庭へと歩き出した。
「……そのまままっすぐ進んでくれよ」
 ふと、俺の背中でガイが呟いた。
 まっすぐ進め? ガイの奴、何を言い出すんだ。自分の屋敷の造りくらい、嫌になるくらいわかってるっつーの。
「は? なに言ってるんだよ?」
 立ち止まって振り向くと、ガイは笑って手をふった。
「いや、なんでもないよ」

そのまままっすぐ進んでくれよ」というガイの言葉。これには、健やかな成長を願う守り役としての気持ちだけではなく、復讐者としての願いもが込められていたのでは。

 ガイはかつて、幼いルークと賭けをしました。彼が剣を捧げるに相応しい主君に成長したら、復讐をやめて生涯の忠誠を誓うと。

 白光騎士の誇りなんて持ち合わせていないと笑ったガイですが、主君に剣を捧げるのは騎士のすること。

 いつか騎士(守護者)の誇りを持てるように。ルークを殺さずに済むように。

 そんな願いが、この言葉には込められていたように思います。

 


 以下は小ネタ的な感想です。

◆勉強とルーク

 屋敷時代のルークには、勉強もしないで遊び暮らしていたようなイメージもありましたが、実は逆で、詰め込み学習を強いられていたことが判明。

 尤も、時々逃げ出していたようですが。その理由は。

 俺だってわかってたんだ。何もわからなくなっちまった俺を見て、父上や母上がどんだけ悲しんだか、とかさ。そーいうの見ちまうと、がんばんなきゃなとは思う。けど……やっぱりもっとなんも考えないで遊んだりしたかったんだよな。

 うーん、ダメっ子(笑)。

◆飴と約束

 ルークに甘いと言われがちなガイですけど、原作のアクゼリュス崩落の後、あえてルークの傍を離れてみたりとか(意図的に離れたと、台詞で述べられています)、意外に厳しい面もある。

 詰め込み勉強が嫌で逃げ出したルークを見つけ出して剣舞を教えたエピソードが今回語られていますが、ただ教えたんでなく、それを餌にして勉強をやらせたことが語られていて興味深かったです。

「サボりか? みんな探してるぞ?」
「ちょっと休んでただけだっつーの!」
「はは、まあ、覚えることは山ほどあるからな。たまには休みたくもなるよな」
「ほんとにだりーよ。ガイ、かわってくれねぇか?」
(中略)
「かわってやるわけにはいかないが、手伝ってやるくらいはできるかもな」
「マジか!?」
「ああ、ひととおり今日の分が終わったら、俺が剣舞教えてやるよ」
(中略)
「えーっ! 今すぐやりてぇよ」
 そう言って俺が口をとがらせると、ガイは子どもをあやすみたいに笑った。
「お楽しみはとっとくもんだぜ? ほら、早く戻って終わらせないと、日が暮れちまうぞ?」
 そう言われて中庭の空を見ると、たしかに日が傾いてきてる。俺は慌てて服についた埃を払った。
「うわ、マジだ! じゃあガイ、約束だぞ!」
「ああ、後でまた中庭でな」
「忘れんなよ!」
「はは、心配すんなって」
 もちろん、ガイは約束を守った。
 あの時以来、ガイとの剣舞を何回くらいやってきたのか……もう数えきれねぇな。

 飴を上手く使ってますねぇ。

公式シナリオブック』の小説だと、屋敷時代のガイは荒ぶるルーク坊ちゃんをちょっぴり持て余し気味(笑)に見えたんですが、こんなに余裕な態度で躾けていた面もあったんですね。

 アッシュ(オリジナルルーク)は約束や指きりが嫌いなのに、ルークが平気で指きりをするので、彼をレプリカだと知らなかった頃のナタリアが不審に思う。そんなエピソードが原作序盤にありました。アッシュの約束嫌いの原因は、父がいつも約束を守ってくれなかったから。その条件は同じはずなのに、ルークには約束へのトラウマは何も無い。

 ガイが、いつもルークと約束して、ちゃんと守ってくれていたからだったんですね。

◆母想い

「母想い」と言えばアッシュの称号ですけども、ルークも、しっかり母想い。

 ああ、でもついでにもう一度母上の部屋にも顔出しておくかな。俺が急に消えちまって、母上相当参ってたって話だからな。倒れたってきいた時は俺も慌てたけど、見舞いにいったら体は起こせるくらいだったし、まあ一安心だった。むしろ、見舞いにきたティアの方がひどい顔してたからな……あの時は、元々体が弱いから気にするなってティアには言ったけど、やっぱり気になるもんは気になる。

 あの時のティア、そんなに辛そうな顔してたのか。ポリゴンでは判りませんでした。シュザンヌの見舞いをしてから解散するまで、屋敷を案内して回ったり時間が空いてましたけど、ルークはずっとティアの様子を気にしてたのかなぁ。なんだかんだで長髪時代も優しさがありますね、ルーク。

◆全部ガイのせい!?

 ルークが軟禁されていた公爵家のお坊ちゃんらしからぬチンピラ口調なのは、ガイの影響……とは、アニメ版ドラマCDで語られていましたが、今回は白光騎士たちがそこを突いておりました。

「まったく嘆かわしい! ルーク様のお言葉遣いが最近乱れていると公爵様が頭を痛められておられるのも、すべてはおまえの責任だ!」

 んん!? 「お言葉遣いが最近乱れている」? とゆーことは、ルークがあのチンピラ口調になったのは本編開始のちょっと前くらいからなのか。

「そうだそうだ! 言葉遣いたけではない、おまえのようなものを傍においているから、ルーク様はにんじんを召し上がらないに違いない!」

 ルークのニンジン嫌いは屋敷中に知れ渡り、騎士たちまでもが大真面目に心を痛めていたのか……っ!(爆笑)

 この小説で一番笑ったのがこの場面でした。ちなみにルークは「なんなんだよこいつら、ガイに文句言ってるんじゃなくて、俺に文句があるのか? そういうことなのか?」とご立腹でしたのことよ。

◆ガイがルーク探索を命じられたワケ

 原作にて、疑似超振動で敵国に飛ばされたルークをガイが探しにきます。彼は剣の達人ではありますが、屋敷では使用人の一人に過ぎません。精鋭の白光騎士団を差し置いて彼が探索の任を得たのはどういうことか?

 自分としては、緊張状態にある敵国に軍隊である白光騎士を送り込むのを憚ったんだろうとか、ヴァンとガイが結託して公爵を上手く言いくるめたんだろうと想像していたものです。今回、ちょっとだけ答えが垣間見えていましたね。

「旦那様のご命令を引き出すのにもうちょっと手こずってたら、勝手に動いてたよ」

 あ、やっぱり言いくるめてたんだ(笑)。

◆新鮮なあなた

 屋敷から消えたルークを追い、拿捕されたタルタロスで合流。そのことを指して、もっと早く追いつきたかったぜとガイは言い出しました。

「そしたら、おまえのもっと新鮮な反応が見られたかもしれないからな」
 言いながら、ガイはにやにや笑う。
 なんだよ、面白がってるんじゃねぇか。そういうつもりなら、俺だって!
「俺は、新鮮なおまえ見せてもらったぜ」
「ほう、どんな?」
「『ガイ様、華麗に参上』だったか? ずいぶんカッコつけてたよな?」
「ああ、決まったろ?」
「カッコつけてる暇があったらもっと早く助けろっつーの」

 そ、そうか……。アレ、ルークにとっても「新鮮なガイ」だったんだ(笑)。

 なんなんでしょうね。やっとルークを見つけてハイテンションになっちゃってたんでしょうか。

◆ガイのお仕事

 原作で、この小説の翌朝に当たる時間帯にガイの部屋に行くと、彼が椅子に座ってダラッとしていて、「おまえを探しに行ってる間に仕事がたまってたよ。こうなるとかったるいなー」と言います。これについて、以前、本編の感想文漫画版の感想文にて

ガイの仕事ってルークの世話ってだけじゃないみたいですね。それとも、白光騎士団の方々の意地悪か?

もしかして毎日のルークの様子の報告書(ルーク様日記、みたいな)を書いて提出するのが彼の仕事で、それが溜まってたんだったりして(笑)。

などと書いてたんですが、ホントに大体そんな感じ? だったのかも。

 白光騎士たちへのごますりに失敗し、取りつく島もなく報告を聞いてもらえないガイ。とうとうこんな折衷案を。

「……わかりました。じゃ、この話は改めて、きっちり報告書にまとめてから提出させていただきますよ。それなら腹も立たないでしょう?」

 ガイが翌朝「溜まっててかったるい」と言った仕事には、この報告書も入ってたのかもしれませんね。


 以上で終わりです。また公式外伝が読める日が来るといいなー。

 

 そういえば、お祭りゲーム等の公式二次シナリオに長髪ルークが出る時って、決まって「俺は悪くねぇ!」と言いますよね。しかしこの小説にはありませんでした。

 キメ台詞のような「記号」に頼ってキャラを似せるよりない二次創作作家と、そのキャラの生みの親である一次創作作家の違いということなのでしょうか。ちょっと考えさせられました。



>>『ツインブレイブ』ゲームの感想(ブログ)

 



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