はてなどう > 魔導データ館 > 魔導キャラファイル > 最初期魔導のトリビア > 真・魔導物語設定について > 『アル冒』『ぽけぷよよん』における真魔導系裏設定
『アルルの冒険』『ぽけっとぷよぷよ〜ん』発売から八年後、それらのソフトのシナリオ担当の方が、個人サイトの日記でシナリオの裏設定を公表していた。ただし、あくまでコンパイル未公認の非公式設定とのこと。かつて『コンパイルクラブ』でも、WINNER、うぃなぁの名で《初期設定》《没になった設定》として断片的に記載されていたものと同じもののようだ。参考資料として、内容をかいつまんで記録しておく。
アルルの冒険
- 世界観は真魔導年表準拠。魔導大戦によって魔導世界が崩壊した後、サタンが再創造したぷよぷよ世界での物語。この世界では時間が《メビウスの輪・ウロボロスの蛇のように》閉じて、永遠にループしている。
- 閉じた世界の人間は成長することを考えない。ぷよ世界のアルルが学校へ行かず魔導も学ばないのはそのせいで、サタンが《そのような世界》を創ったため。
- シェゾは世界の時間が閉じていることに気付いているが、自分の成長(他人の魔力を奪って自分の魔力を増大させること)の妨げにはならないので放置している。
- 《英雄》の村の七人の精霊も時間が閉じていることを知っており、かつて《英雄》に封印された魔人《セプテム・ディエース》を解放し、その力を用いることで時間の輪を断ち切ろうと目論んだ。それが『アルルの冒険』の事件である。
- 《セプテム・ディエース》は人の願いを力に変える魔人。《英雄》はこれを危険と考えて力《ディエース》と心《セプテム》の二つに切り離し、力は精霊の祠に封印され、心は村の子供セプテムになった。封印されていたディエースに自分の意思がなかったのはそのせい。
- 長老は、時間が閉じているとセプテムが心身ともに永遠に子供のままなので、時間の輪を断ち切ることで人として成長させようと考えた。
- サタンが作中で用いた、ぷよをカードに変える魔法は、触媒として術者の魔力を大量に要求する。作中でサタンが《マントくん》としてアルルのサポート役に回っていたのは、魔力が激減していたため。
- アルルが「いつまでも遊んでいる訳にはいかないよ」とセプテムに言ったのを聞いて、サタンはアルルが心の底では閉じた世界を望んでいないと思うようになり、時間の輪を断ち切ろうと考える。それが『ぽけっとぷよぷよ〜ん』の事件に繋がる。
以上、シナリオライター氏は《裏設定》と表記していたが、実際に発売されたゲームの内容とは殆ど矛盾しているので、正確には《没設定/初期設定》と言うべきものだろう。
実際のゲームでは、七人の精霊たちは「時間の輪を断ち切る」ために行動していたことにはなっていない。マルティスは「世界から《おばさん》という言葉を消すため」、長老は「世界を平和にするため」願いを叶える力を欲したことになっている。長老がセプテムを気にかけている描写は全くない。そもそも、願いを叶える力の正体が魔人《セプテム・ディエース》であるとも言われていない。(『コンパイルクラブ89』には、セプテムの正体がセプテム・ディエースであることは没設定だと明記してある。)
また、アルルが「いつまでも遊んでいる訳にはいかないよ」とセプテムに言うというシーンは、実際のゲームには存在しない。明日は一日中遊んでほしいと言うセプテムに向かい「ボク 明日この村を出るつもりなんだ」「もうすぐぷよくんたちも元に戻せそうだし・・・。そうしたら 帰ろうって考えてたんだ」と言うシーンならあるが。流石にこのセリフで「アルルは閉じた世界を否定している」と考えるのは難しい。
- シナリオ原型は真魔導年表にある「ぷよが消えた日」。その内容は、ぷよたちが異世界に飛ばされ、サタンの魔力が結晶化したぷよカードを用いてもんすたぁを召喚バトル、最後にアルルの願いによって異世界からぷよたちが帰ってくる、というものだった。
- 初期構想ではセプテムも変身して《セプテム・ディエース》の姿になる予定だった。セプテムとディエースに似た角があるのがその名残り。
- 元々魔人であったセプテムには性別がない。成長すれば本人が望む性別に変わるだろう。
- セプテムの誕生日は12/06という設定だが、これは1000(せん)+2(ふ)+10(テン)+6(む)=セプテムの語呂合わせに由来する。
- 《英雄》の村の住民たちの名前は、ラテン語の曜日に由来する。
セプテム・ディエース(一週間)、ディエース・ルーナエ(月曜日)、ディエース・マルティス(火曜日)、ディエース・メルクリィ(水曜日)、ディエース・ヨウィス(木曜日)、ディエース・ウェネリス(金曜日)、ディエース・サートゥルニ(土曜日)、ディエース・ソーリス(日曜日)
- ディエースが召喚するもんすたぁの名前も、ラテン語に由来する。
リムース(霊)、ウェントス(風)、イグニス(炎)、グラキエース(氷)
※実際のゲーム中では、「リムース」ではなく「リームス」と表記されている。
- 精霊たちが使う変身の掛け声も、ラテン語のエーヴォルーティオー(進化)に由来する。
※実際のゲーム中では「エーウォルーティオー」と表記されている。「ヴ」でなく「ウ」。
- 精霊ヨウィス(かぜくん)は、『ぷよウォーズ』のショウと同一人物。詳細は『ぽけぷよよん』の項目にて。
ぽけっとぷよぷよ〜ん
『ぽけっとぷよぷよ〜ん』は『アルルの冒険』の半年後に同じプラットフォーム(GBA)で発売されている。
- 先行他機種版の『ぷよぷよ〜ん』の設定を元に、新たに焼き直したストーリー。シナリオライター氏は先行他機種版には一切関わっていない。
- 『ぽけっとぷよぷよ〜ん』は『アルルの冒険』の直接の続編。
《英雄》の村の事件でアルルが「いつまでも遊んでいる訳にはいかないよ」と言うのを聞いたサタンは(※実際のゲームにはこの発言はない)、アルルが閉じた世界を望んでいないと考え、時間の輪を断ち切ろうと考える。そのための布石として、手品ショーを装ってカーバンクルを誘拐し、アルルを一時的に《世界の外》に送り出した。
- ドッペルアルルの正体は、アルルの半分。
魔導大戦で魔導世界が崩壊した後、サタンは次元の彼方で次元の狭間に引っ掛かっていたアルルを発見し、自分の作ったぷよぷよ世界に連れ帰った。実は次元の狭間でアルルは二人に分裂してしまっていたのだが、サタンはそれに気付けなかった。ぷよぷよシリーズのアルルがリリスほどの力を持たないのはこのためである。
- 見つけてもらえなかった残り半分のアルル(ドッペルアルル)は、ぷよ世界まで流れ着いたが、一つの世界に同じモノは一つしか存在できないという法則のため、中に入れなかった。長い時間が過ぎた後でサタンは彼女に気付いたが、どうする事も出来ない。そこでピエロ服を与え、アルルとは別の存在だと定義することで世界に招き入れた。ただし、ピエロ服を着ている間は技が封印されてしまう。
- 世界の外側で孤独な時を過ごしたドッペルアルルは、何も知らないもう一人の自分を憎んでおり、排除して入れ替わりたいと思っている。サタンはそれに賛同はしないが、なんとかしてやりたい。そこで、アルル同士がぶつかり合うことで解決策が見つかることを期待して、二人を戦わせた。これが『ぽけっとぷよぷよ〜ん』の事件である。
- ドッペルアルルが、アルルと自分はもう別の存在なのだと心から納得すれば、別存在としてぷよ世界に降り立つことができるはずである。
ドッペルアルルに関しては二次創作でも類似した設定がよく見られたものだが、制作スタッフが本当にこんなことを考えてシナリオを書いていたとは……。
ぷよ世界のアルルが魔導世界のアルル当人で、時空の狭間に引っ掛かっていた……という設定は、織田氏の真魔導年表から見て矛盾していないだろうか? 真魔導年表では、最終決戦の際にはアルルは二十歳になっていた。しかしぷよ世界のアルルは永遠の十六歳である。勿論、分裂した影響だとかサタンの魔力で若返らせただとか肉体が失われていたのでサタンの好みで十六歳の体を作っただとか、幾らでもこじつけることは可能だが、おかしいものはおかしい。それにぷよ世界のアルルが魔導世界のアルルと直接の同一人物なら、どうして彼女は時間のループした世界に疑問を抱かないのか。例によって「時空転移の影響で記憶と力が失われました」「サタンが魔力で意識操作している」という、真魔導設定お得意の辻褄合わせなのか。しかし全ての矛盾をこれで処理してしまうのは、いい加減ご都合主義過ぎないだろうか。
- この一件の後、サタンはカーバンクルのルベルクラクの力に外側からラグナスのアゾルクラクの力をぶつけ、更に《英雄》の願いの力をも使い、時間の輪の切断に成功。
- しかしその際に時間の切れ目から何百体ものぷよが世界の外に飛ばされ、ヨウィスはそれを救おうと世界の外に飛び出す。時空移動の際に記憶が書き換わって『ぷよウォーズ』のショウになった。
ここでも「時空転移の影響で力と記憶が失われました」。それに、あんなに苦労して封印した《願いを叶える力》をまた解放している。
- 『ぽけっとぷよぷよ〜ん』のデモシナリオは、漫才デモとしてはシリアス過ぎると、スタッフの間ではかなり不評だった。
- 特殊な条件でウィッチの代わりにダークウィッチが出現し、ドッペルアルルの正体を仄めかすという分岐シナリオを作りたいと考えたが、シリアス過ぎると判断して提案自体をしなかった。
- 対戦に限り、四十体以上のキャラクターを使えるようにする予定で、カットイン用のイラストまで作っていた。(このアイディア自体は『ぷよBOX』で実現させているようだ。)
ぷよぷよBOX
以下は、実際のゲームとは全く関わらない、シナリオライター氏の中だけの個人的な設定とのこと。
- 『ぷよBOX』の「ごちゃまぜぷよぷよ」は『ぽけっとぷよぷよ〜ん』の直接の続編で、時間の輪を断ち切ったため時間に混乱が生じ、別時間の同一人物が混在するようになったのをマズいと考えたサタンが、それぞれを元の時間に戻す目的で開いた大会。
- 「ごちゃまぜぷよぷよ」に登場するビーストドラコは、ドラコケンタウロス族の一人で、人里離れた場所に暮らしていたらしい野生児。カタカナで片言言葉を喋る。美少女コンテストやぷよぷよ勝負にこだわらない。
- 時間の輪が断ち切られて世界の時間が正常になると、アルルは再び成長することを考えるようになった。そんな彼女と、別個体として世界に降り立ったドッペルアルルの物語を、機会があれば作りたかった。
ユーザーに明かされた部分には、真魔導設定上のぷよぷよ世界が《時間がループした世界》だとは書かれていない。ただ「この世界では、アルルは基本的に永遠の十六歳」とあるので、私はそこから、幾分穿った見方として、時間のループした箱庭世界、という解釈をしてきた。が、実際のところ、ぷよ世界のアルルが永遠の十六歳なのは、《主人公アルルが十六歳のぷよぷよシリーズ》を恒久的に作り続けていくための方便に過ぎないのだと考えていた。『サザエさん』や『名探偵コナン』のキャラクターたちが永遠に年をとらないのと同じ意味・意図しかないのだと。
……ところが、制作側の人が《シリアスに》時間がループした世界だと認識していて、しかもそれを成長のない悪い世界だとし、再び時間を動かして成長を始めるという硬い展開を考えていたとは、大変驚いた。ある意味、真魔導設定で魔導世界とぷよ世界を分離させていた意味を無に帰してしまう。一度「時間がループしていた」とシリアスに定義してから否定・解放を行うと、以降は時間を停滞させた物語が作り難い。一作ごとにキャラクターたちの年齢を上げていくか、一新して新主人公を立てるかしなければならなくなるところだったのだが、その辺はどう考えていたのだろう。
参考資料:稲研 -稲妻研究所-「どーでもいいこと。」2008/01/21分(Web)、『コンパイルクラブ』89・91、『アルルの冒険』(GBCゲームソフト)