///ミノタウロス


ミノタウロス 性別
身長 210cm
192cm(『ぷよ通』)
体重 277kg
100kg(『ぷよ通』)
スリーサイズ 不明
年齢 不詳
誕生日 2月24日
一般的紹介
(真魔導系除く)
巨大な斧と力を持つ牛人間。
過去、ルルーにラビリンスから救い出されたことから彼女に仕え、誰よりも彼女を慕っている。
ビーフカレーが大嫌い。

半人半牛の大男。無骨な外見に似合わぬ繊細さで、ルルーに一途に仕える。


 ルルーと言えばミノタウロス。ミノタウロスと言えばルルー。常にルルーと一緒、ルルーの背後に付き従い、戦闘のパートナーとしての印象が強い彼だが、ゲーム中でこの構図が完成されたのは実はコンパイル晩期の『わくぷよ』からである。それ以前のゲームでは、単独で戦うか、ルルーが冒険する際には屋敷で留守番かで、実際に共に戦闘するということはなかった。
 言うまでもなく、これはゲームシステム上の都合である。
 だが、『鉄拳春休み』では留守番を言い渡された上に
ミノなんて いようがいまいが いっしょですわ うすらデカイだけなんですもの
 と言われて傷ついたミノタウロスが
たのむから 誰か… オレが 大活躍するゲームを作ってくれぇっ!
 と叫ぶシーンがあって哀れであった。
 ……その後に『わくぷよ』やSS版『魔導』が発売されて、名実ともにルルーのパートナーとして一緒に戦えるようになったのだから、叫んだかいがあったということだろうが。


 ミノタウロスは斧を操る優れた戦士でもある。戦士としての彼のスタンスは、『魔導四五六』での
ありがとう わが斧よ! 死ぬも生きるも 共にいこうぞ!!
 という台詞に集約されているだろう。


●ルルーとの出会い
 ルルーとミノタウロスの出会いは、未だ作品としては語られていない。
 だが、MSX-2版『魔導』の時点で、取説に
ルルーとミノタウロスの出会う話とかあるんだけど、それはまた別の機会に。
 と書かれてあり、二人の出会いのエピソードはオリジナル『魔導』当時からきっちり構想されてあったことは確認できる。
 更に、MSX-2版『魔導』取説には、ミノタウロスの紹介欄にこう書いてある。
巨大な地下迷宮に閉じ込められていたが、ルルーに助けられる。それ以後、ルルーに仕え、誰よりも彼女を慕うようになる。
 どうやら、ミノタウロスはルルーに救われ、彼女に恩と好意を感じて、自らルルーのしもべになったらしい。

 だが、ミノタウロスが何故地下迷宮に閉じ込められていたのか、それをどうしてルルーが救うことになったのかは分からない。
 『鉄拳春休み』では、この辺りのことを
2年前にアブないところを助けてやってから ずっと…
 このウシは私の忠実な し・も・べ

 とルルーの口から語らせており、ここでは、直接的な危機に陥っていたミノタウロスをルルーが救ってやった……というニュアンスが感じ取れる。同じスタッフの手による『魔導物語ファンブック』記載の真魔導設定でも「アルルたちと出会う前、ルルーに窮地を助けられ恩義を感じている」としている。
 また、GG版魔導シリーズでは、ゲーム中では語られていないが、「ルルーがライラの迷宮の落とし穴から地下牢に落ちる」→「脱出のついでにたまたまミノタウロスを救出、ミノタウロスはルルーに忠誠を誓う」→「ルルー、汚れた服を着替えに一度家に帰り、ミノタウロスを従えてライラの迷宮に戻る途中でアルルと遭遇」という設定があったことが、『コンパイルクラブ49』の「霞とK美の診察室」で明かされていた。
 だとすれば、ルルーがミノタウロスと出会ったのはアルルと直接対峙する直前、ミノタウロスを閉じ込めた(罠にはめた?)のはサタン(!)ということになる。おいおい、そんなヤツを勝手に解放して連れ回していいのか、サタン妃希望者のルルーよ。
 まぁ、この設定はゲーム中には表れておらず、後の『鉄拳春休み』のゲーム中で語られた設定とは明らかに矛盾してしまうので、今は没になったものと考えていいだろう。


 これは私の想像なのだが、オリジナル設定で言う「ルルーに助けられ」というのは、直接的なミノタウロスのピンチ――通りすがりに陰謀に遭って牢に閉じ込められたとか、ダンジョンで遭難していたとか、怖ろしい敵と戦って今にも倒れそうになっていたとか――をルルーが救った、というようなことではないのではないか。
 何故なら、伝承上のミノタウロスは親に忌まれて迷宮ラビリンスに閉じ込められていた異形の子であり、最後には怪物として英雄に退治されてしまう、ある意味で悲劇的な運命の持ち主だからだ。
 この伝承を知っていれば、ミノタウロスが迷宮に閉じ込められていた……と聞けば、すんなりと「周囲に忌まれて封じ込められていたんだな」と連想出来るし、ルルーが助けた、というのも、ただ親切に迷宮の外に案内してやった……というわけではなく、恐らくは迷宮に入り込んだルルーが最深部でミノタウロスと出会って戦い、死闘の果てに、殺さずに赦して外に出してやった……という意味なのだろうと想像出来る。
 そして実際、『コンパイルクラブ 101』の記事によれば、ミノタウロスの右目が潰れているのは、襲われたルルーが杖か何かで突き刺したからで、このエピソードは退職したオリジナル『魔導』スタッフの残したメモに書かれていた、とある。
 ルルーが、かつてミノタウロスの右目を潰すほど真剣に彼と戦ったのは間違いがない。


 ところで、『鉄拳春休み』では、二人の出会いは二年前のことだと明言してある。『A・R・S』によれば、ルルーがサタンと出会ったのも二年前なのだが、ルルーとミノタウロスの出会いはそれ以前なのか後なのか……。
 この点についても公式に語られたことはないはずだが、私は勝手に、サタンと出会った後だと考えている。

 先の想像の通りに、ルルーが迷宮に入り込んでミノタウロスと出会ったのなら、彼女が迷宮に入らなければならなかった理由があることになる。
 私は、ルルーはサタンを探していたのではないかと思うのだ。
 サタンと出会った後 彼のことが忘れられず、彼のいそうな場所をあちこちと探し回ったのではないか。怖ろしい魔物が迷宮の奥底に封じられている……と聞けば、サタン様かもしれない、と色めき立ち、たとえ生贄役であろうとも嬉々として引き受けそうなものだ。
 ところが、たどり着いた迷宮最深部で出てきたのは、牛頭人身の怪物だった……。

 ルルーの落胆と怒りが想像できそうなものだが、ミノタウロスを倒し、そのうえで彼を赦して解放してやり、彼がしもべとして付いて来るのさえ受け入れてしまったのだとしたら……彼女の度量の広さには恐れ入る。
 こういう言い方は語弊があるのかもしれないが、ミノタウロスは、そんなルルーの強さと男気に惚れたのだ、と思う。一般には、ミノタウロスがああまでルルーに忠実に仕えるのは彼女を男として愛しているからだ……とだけ解釈されがちだが、恋愛感情の根底をなすのは、こんな、性別を超えた人格への尊崇の念ではないか、と思うのだ。


 余談だが、GG版『魔導V』には「ミノタウロスの迷宮」なる地下ダンジョンが登場する。この迷宮は、壁を破壊しない限り外には出られない構造になっていた。前述のライラの迷宮の地下牢に閉じ込められていたという説を無視して想像するに、彼は、もしかしてここに封じ込められていたのだろうか?
 なお、『アルルの冒険』にも同名のエキストラダンジョンが存在するが、ここは単にミノタウロスが第一発見者(?)というだけのダンジョンである。


●大男、総身に知恵が回りかね……?
 「大男、総身に知恵が回りかね」「ウドの大木」という言葉がある。体ばかり大きくて愚鈍な男を嘲って言うものだが、ひっくり返せば「大男は頭が悪い」というイメージが、世の中になんとなく広まっている、ということでもある。
 このイメージ通り、『ぷよ通』系の解説本には ほぼ必ず、ミノタウロスについて「ちょっと頭が弱い」と書いてある。
 そうか、ミノタウロスはちょっと頭が弱かったのか……。
 それは、知識が貧弱、という意味なのだろうか。それとも、頭の回転が鈍い、という意味なのだろうか? 通常は「鈍い」意味でとられるもののような気がする。
 しかし、ちょっと待ってほしい。
 オリジナル『魔導』取説のキャラクター紹介欄を見ると、ミノタウロスの欄には
巨大な体と力、そして繊細な感性をもつ
 と書いてあるのだ。
 頭の回転と感性はイコールで結べるものではないが、「繊細な感性を持つ」という紹介文の延長上で「頭がちょっと弱い」という設定は作りづらい気がする。なのに、どうして「頭が弱い」ことになってしまったのだろう?


 思うに、これはオリジナル『魔導3』における彼の戦いぶりからの連想なのだろう。
 今でこそサブキャラクターの位置に甘んじている彼だが、初登場時、すなわちオリジナル『魔導3』では、なんとラスボスとして活躍していた。ルルーは戦闘をしないキャラクターだったからだ。なので、『ぷよ1』では『魔導2』中ボスのシェゾよりも上位に位置していたりする。
 彼は怖ろしい雄叫びをあげ、斧を振るって一撃を放つ、それは屈強の戦士だ。ミノタウロスを倒すのは、サタン以上に難しかったかもしれない。しかも、「やがて せかいを しはいする じごくのかみよ! われの にくたいを かいふくさせたまえ!」と祈ることにより、体力回復までしてしまうのである。
 ……ところが、この呪文は彼にとって諸刃の剣でもあった。この呪文を唱えるたび、代償として、彼は己の知力を奪われていってしまうからだ。

 闇の神に祈りすぎて、彼の のうみそはぷーになってしまったのだろうか……。


 しかし、この「力は強いがちょっと頭が弱い大男」というイメージは、コンパイルでのシリーズ後期になっていくと次第に薄らいでいく。特に真魔導系作品では、暴走するルルーを優しくさりげなくフォローする気配りの「オトナ」として描かれていた。『鉄拳春休み』では、同行を禁じられたものの影からそっととルルーを見守り、助けた。サタンがそうするようには鮮やかにいかなかったが、それでも、このことで彼とルルーとの距離がちょっぴり縮まったのは確かである。小説『真魔導』には、「外見は無骨そのものであるが、残された左目にまぎれもない知性の光を宿すこの半獣人は、意外なほど思慮深いコメントを返す。」という一文もある。これらのミノタウロス像からは「愚鈍」さはうかがえない。


●ルルーとの関係
 現在一般的に、ミノタウロスはルルーに恋しているのだ、と解釈されている。
 しかし、オリジナル『魔導』〜GG版『アルルのルー』の段階では、実は、はっきりそうと解釈できるエピソードは存在していない。ミノタウロスはルルーに忠誠を誓っているが、明確なのはそこまでである。

 初めてミノタウロスのルルーへの恋心が確認できるのは、恐らくは『ルルーのルー』でだ。ここでのミノタウロスは、サタンへの恋に悩むルルーのために情報を収集して駆け込んできて、
サタンのダンナは、カレーが こうぶつらしい ですぜぃ!
 とびっきりのカレーを サタンのダンナに!

 とアドバイスする。彼曰く、
ルルーさまのなやみはあっしの なやみ
 ルルーさまのおともが あっしの いきがい… そして、よろこび…

 だそうだ。
 この時点では、ただ忠実に主人を思っているだけ……とも取れるし、取説のキャラクター紹介欄にも「(ルルーに)絶対忠誠を誓っている。でも、恋心はいだかない。悲しいから。」と書いてあったりするのだが、物語の最後、結局サタンに振られてしまったルルーが、集めた材料でミノタウロスのためにカレーを作ると、
うおおおおおおお!! わが じんせいに、カケラも くいなし!
 と叫ぶ。カレーは素晴らしくマズかったのだが、彼はそれをガツガツと食べてルルーを微笑ませるのだ。この喜びようは、主人に優しくされた臣下のものというよりも、やはり、恋する女に手料理を振舞われた男のもの、と解釈するのが自然であるように思う。

 翌年の『魔導四五六』では、ミノタウロスはルルーと組んでスゴロク大会に挑むが、優勝すると、ルルーは賞品のカーバンクルを盾にサタンに結婚を申し込みに行ってしまう。「ミノタウロス・・・・ キミも大変だね」というアルルの同情の声を聞きながら、ミノタウロスは「もーーーーーーーーっ!!!」と涙の叫びを上げ続ける。明らかに、ルルーに主従以上の感情を抱いており、しかも周囲もそれを認識している、という形になっている。これは『わくぷよ』にもほぼ同じ形で現れているイメージだ。
 そのすぐ次に発売された『ぷよぷよCD通』の三周目デモでは、アルルの「あっ、ルルーだ!!」という声に
えっ! ル、ルルー様? どっ、どどどどどこ?」とうろたえ、からかわれた事を知ると
おっ、オレ様の純情を踏みにじりやがって。
 と激怒している。
 アルルのからかいぶりも怖ろしく意地が悪いのだが――「こんな化石のような手にひっかかるなんて、きみのおつむも、ぷよぷよなみだね! あはははははっ! ひぃ〜!」だそうだ――逆に言えば、ミノタウロスがそれだけルルーに夢中だということを、アルルが熟知しているということである。また、このゲームでは、ミノタウロスは連鎖ボイスで「ルルー様!/好きだー!」と雄叫んでもいる。大胆である。


 ただ、『ルルーのルー』の物語上の続編になる『鉄腕繁盛記』では やや異なる解釈がされているようで、ここではミノタウロスはルルーのファンクラブを私設していることになっている。男として女のルルーを愛す……のではなく、ファンとしてアイドルのルルーを応援している、というわけだ。確かに、忠義心を先行させてルルーの恋の手助けをする姿は、ファンがアイドルを応援する姿と重ならないでもないのだが……。
 どんなに想おうともルルーの心が自分に向くはずがないし、なにより自分はしもべとして忠誠を誓ったのだから……という苦しい気持ちが、いっそ「ファン」になってしまえ、と、こういう弾け方を彼に選ばせたのであろうか。


 しかし前述のように、シリーズ後期以降、特に真魔導系作品においてミノタウロスの「価値」の見直しがなされ、同時に、彼とルルーの関係にも微妙な変化と進展が見られるようになった。
 『鉄拳春休み』では、最初は「ミノなんて いようがいまいが いっしょですわ」と言っていたルルーだったが(実際、それ以前のゲームではルルーは殆ど単独行動している)、独りで行動し始めてすぐ、無意識に いないミノタウロスに命令を下してしまい、「知らず知らずのうちに 私は 自分で思ってたより ミノに頼っていたのかもしれないわね…」と考え込む。そして、禁を破ってこっそり自分をフォローしてくれていたミノタウロスに気付くと、照れながらもお礼を言い、「帰りは いっしょに 魔導学校まで帰りましょうね」と声をかけ、彼に背負われて「ふふっ… たまには あんたの このゴッツイ背中も悪くないわね」と笑うのだ。そしてそれ以降、自分自身も気付かないほどちょっぴりなのだが、ミノタウロスに優しくなるのだった。
 SS版『魔導』では、ミノタウロスはルルーとアルルをかばって瀕死の重傷を負う。アルルに対して意地を張りながらもルルーはミノタウロスを深く心配し、彼に怪我を負わせた事件の黒幕がサタンかもしれない……という疑念が湧いたとき、「今回は やりすぎですわっ! ミノは… ミノタウロスは… 私を まもろうとして倒れたのですよっ!」と悲痛に叫ぶ。それまでサタンを至上視し、言うこと成すこと肯定しがちだったルルーが、「ミノタウロスが傷ついた」という一点でサタンを否定したのである。ここでは、ルルーにとってのミノタウロスの価値が、同じ意味合いでかはともかく、サタンと同等かそれ以上であるようだ。


 『わくぷよ』では、小間使いとして、護衛として、戦闘のパートナーとして、アゴでこき使われようと理不尽に罵られようと、黙々とルルーに仕えるミノタウロスの姿を、ゲームの始めから終わりまでたっぷりと見ることができる。その涙ぐましい姿には、なんと、他人のことに無関心なシェゾまでもが何度も疑問や意見を差し挟んでくるくらいだ。

シェゾ
「相変わらず 人…いや牛使いの荒いヤツだ」
ルルー
「だからどうしたの?」
シェゾ
「ふん。あの牛がいなくなったら さぞかしお前は困るだろうな」
ルルー
「何をバカなことを言っているの? そんなことあるわけないわ」


 また、「お前も いつまでもムダなことをせずに、たまには その牛男を休ませてやれ」と言ったこともある。同じ男として感じるところがあったのか、シェゾはミノタウロスに同情しているのだ。だが、「お前、ルルーにコキ使われてばかりで腹は立たないのか?」と尋ねられたミノタウロス本人の答えは、

「お前には わからないだろうが、ルルー様は 本当に優しいお方だ…」

 というものだった。
 ミノタウロスの言うとおりシェゾは全く理解できず、「…あの女が優しい? 何をバカなことを…」と呟くばかりだったが、どんなにこき使われようとも、ミノタウロスにとってルルーへの尊崇は揺らぎないものなのだ。

 セガ製作の『みんぷよ』に移ってもそれは変わらない。ここでは晩御飯の買い物をしているミノタウロスを見て、アルルが同情の言葉をかけてくるのだが、彼は逆に激昂する。

アルル
「ねぇ キミさぁ」
ミノタウロス
「ウモッ?」
アルル
「いつもルルーといっしょにいてさぁ…大変じゃない?」
ミノタウロス
「どういうイミだ?」
アルル
「だって ルルーって すんごい ワガママでしょ
 キミも ちゃんと イヤなことは イヤって言ったほうがいいよ」
ミノタウロス
「ウモーーーーッ!
 ルルーさまの わるぐちを言うとは ゆるせ〜ん!
 ルルーさまの ために ここで おまえを倒してやる ウモーッ!」


 ミノタウロスのルルーへの想いは、単純な「惚れた弱み」どころではない、もっと清く強く真剣なものなのだと思い知らされる。

 もっとも、『ぷよクエ』では
愛してるブモーッ
 ルルーさまのわがままには モー ついていけないぞ! でもそこがかわいかったりするのだv
                                             〜ペンネーム・ウシ男〜

 などという匿名の手紙をラグナスポストに投函したりしていて、何だか急にレベルが下がったというか、あらあらと腰砕けな気分にさせられてしまうのだが。
 このように、ミノタウロスはルルーのワガママでムチャクチャなところに女性的魅力を感じるらしい。SS版『魔導』では、何でも私に聞きなさいと言った直後に何でも私に聞くんじゃないわよっとキレたルルーに呆れつつ「もぉ ルルー様ってば メチャクチャなんだから… (…………でも そんなトコロが ミリョクなんですけど……グフッ♪)」と含み笑いし、アルルに(ミノタウロスってば なに ひとりで わらってんだろ…)とブキミがられていた。

 ルルーへの恋情を明白にしているミノタウロスは、ただ従者としての立場に甘んじているだけではない。出来れば想いを成就させたいと思っているらしい。『鉄拳春休み』では、眠っているルルーに「チャンスだ」とこっそりキスを仕掛けている。お約束に未遂で終わったのだが。SS版『魔導』では、ルルーの体力のすごさを「ケモノっぽい」と冗談めかしてアルルに話した事がバレてルルーに激怒された時、「自分がルルー様の悪口をいうワケがないじゃありませんか!? そうでしょう!? だだだ…だって自分は 自分はルルー様のことを…っ! あ… 愛して… いるのですから… (い…いっちまったぁぁぁっ!!)」とドサクサに告白する。だが、ルルーは怒りのあまり全然聞いていなかった。ミノタウロスに与えられたのは怒りの拳だけだったのである。

 このように、コンパイル晩期になるとミノタウロスはもはやその想いを隠さない。『アルルの冒険』では、気合いが入りすぎて、衆人環視のカードバトル大会のステージ上でルルーの名を連呼し、「ルルー様っ しっかり 見ていてください!」「俺はお前に勝つ! そしてルルー様に勝利を捧げるのだ!」と叫びまくった。結果、「人の名前を ポコポコ大声で呼ぶなぁっ!! 恥ずかしいじゃないのよ! 少しは抑えなさいよ!」と、ステージ上に飛び出してきたルルーに殴られた……のだが。そんな彼らのやり取りを見ていたアルルは呟く。
ははは…。いつ見ても二人は仲がいいね
 ルルーは「……なんか言った?」と睨んでいたが、カーバンクルも同意した、納得の一言だった。彼の叫びの内容自体は否定せずに、「少しは抑えなさいよ!」と照れるルルーは、確かに微笑ましく可愛いではないか。
 そう、同情するようなことではないのだ。一見して「女王様としもべ」であろうとも、確かに、これが彼らの愛の形なのだから。


 ところで、ミノタウロスの誕生日はルルーのそれと同じである。単なる偶然だと考えることもできるが、なんとなく、不遇の生い立ちから自分の誕生日を知らなかったミノタウロスに対し、ルルーが「一緒に祝えばいいでしょっ」などと言って、自分と同じ誕生日を与えたような気がする。


●ミノタウロスの一人称
 真魔導設定では、ミノタウロスの普段の一人称は「オレ」、ルルーに対する時だけ「自分」と言うことになっている。体育会系である。
 ただし真魔導系でも、『鉄拳春休み』では、普段もルルーに対する時も同じ「オレ」になっている。

 ミノタウロスの一人称は、実は結構バラつきがある。これはシェゾも同じなのだが、オリジナル『魔導』〜『ぷよ1』の段階で一人称が使われていなかったことが主な原因なのだろう。シナリオ作業を担当したオリジナルスタッフの退職後、後継スタッフたちがそれぞれの判断と解釈で一人称を選んだわけだ。
 一応、殆どのゲームでは「オレ」が使われているのだが……『ルルーのルー』では「あっし」、SS版『ぷよ通』では「わし」、『ぷよCD通』では「オレ様」、『ぷよクエ』では「わたし」になっている。

 ついでながら、ルルーがミノタウロスを「ミノ」という愛称で呼び始めたのは『ぷよSUN』が最初のようだ。おかげで、彼らの親密さが増した印象がある。



●伝承の世界
 伝承上のミノタウロスは、ギリシア神話に登場する。

 クレタ島にミノスという王がいた。一説によれば、彼は雄牛に変じた大神ゼウスが王女エウロペに産ませた神の子であった。
 ゼウスは見事な雄牛となってエウロペに近寄り、誘われるまま王女が背に乗るや否や、連れ去って海を渡り、クレタ島に至った。そこで美しい青年の姿で王女と交わり、彼女に神の種を宿して去った。
 当時クレタ島を支配していたのはアステリオン(アステリオス)という男だったが、エウロペは彼の妻になり、ミノス、ラダマンテュス、サルペドンの三兄弟を産んだ。
 時が過ぎ、アステリオンが血の繋がった子を持たないまま死ぬと、後を継ごうとしたミノスに周囲から反対の声が上がった。そこで彼は、自分は神々からこの王国を与えられたのだ、だから 神はいかなる願いも叶えてくれると主張し、海神ポセイドンが雄牛を授けてくれるように、そうしたらその雄牛を神に生贄として捧げよう、と祈った。すると本当に海から見事な雄牛が現れたので、ミノスは認められ、クレタ島の王になった。
 ミノスは様々な法を制定し、賢明な王になった。また、パシパエという美しい王妃を得た。

 ところが、ミノスはポセイドンから授かった素晴らしい雄牛を見るうち、これを生贄に捧げるのが惜しくなってしまった。彼は雄牛を自分の牛の群れに加え、ポセイドンには別の牛を捧げた。
 ポセイドンは怒り、雄牛を狂わせてひどく凶暴な性質に変えた。また、王妃パシパエが雄牛に道ならぬ欲情を抱くように仕向けた。
 雄牛への恋に思い悩んだパシパエは、当時王宮で保護していた名匠ダイダロスに相談した。彼は素晴らしい技術者だが、自分より優れた才能を持っていた弟子を妬んで殺害し、逃れてきた男である。ダイダロスは木と牛の皮で精巧な牝牛の人形を作り、中に人間が入れるようにした。雄牛はこれを見て本物の牝牛だと思い、のしかかって交わったので、中に入っていたパシパエは存分に情欲を満たすことができた。
 しかし、道ならぬ交わりの報いは来た。やがて身ごもったパシパエが産み落としたのは、頭は牛、体は人間の異形の怪物だったからである。
 この怪物には祖父と同じアステリオン(アステリオス)という名が付けられたが、「ミノスの雄牛ミノタウロス」という呼び名の方が有名であろう。
 ミノスはミノタウロスを忌んで、ダイダロスに作らせた迷宮ラビュリントスの中に閉じ込めた。
 一方、凶暴になった雄牛の方は、やがて訪ねて来た英雄ヘラクレスによって捕らえられた。ヘラクレスはこれを女神ヘラに捧げようとしたが、拒否されたので、野に放った。雄牛はアッティカのマラトーンに去り、そこで人々を悩ませた。

 さて、その頃、アテナイにテセウスという王子がいた。
 彼はアテナイ王アイゲウスがトロイゼン王女アイトラーとの一夜の交わりで産ませた子で、アイゲウスはアイトラーの前を去るとき自分の刀とサンダルを大岩の下に隠し、生まれた子が男児でこの大岩を動かせるようになったなら、このサンダルと刀を証拠として訪ねてこさせるように、と言い残した。
 十六歳になったテセウスは大岩の下から刀とサンダルを取り出し、アテナイへ向けて旅立った。長い冒険の末に王宮にたどり着いたが、王は彼が息子だと信じられず、王妃メディアに讒言を吹き込まれたこともあって、テセウスをマラトーンの猛牛退治に送り出した。――そう、例の狂った神の雄牛である。
 テセウスは雄牛を生け捕りにして帰還した。王はそれでもメディアに言われるまま毒杯でテセウスを殺そうとしたが、テセウスがわざと例の剣を見せ付けたので我が子と悟り、彼の手から毒杯を叩き落し、メディアを追い払った。雄牛はアポロン神への生贄に捧げられた。

 ところで、アテナイでは毎年、あるいは三年か九年に一度、七人ずつの少年と少女をミノタウロスの餌食としてクレタ島に送らなければならない定めがあった。
 というのも、ミノス王とパシパエ妃の息子の一人、アンドロゲオースが、アッティカで殺されたためである。(一説によれば、アテナイ王アイゲウスがこの異国の王子をマラトーンの雄牛退治に向かわせたのだという。)これに怒ったミノス王は船団を率いて攻め、アテナイは降伏し、前述のような定めを強いられたのだ。
 この生贄の少年少女の中に、王子テセウスは自ら、あるいはくじ引きで、あるいはミノス王に指名されたために加わった。悲しみの船には黒い帆がかかっていたが、アイゲウス王は白(または緋色)の帆を渡し、もしも生きて戻ったならばこの帆を揚げよ、と命じた。

 生贄の仲間たちと共にテセウスがクレタ島の土を踏むと、王女アリアドネが一目で彼に恋した。彼女は暗い迷宮に追いやられる彼を哀れんだ。
 彼女とテセウスがどのようにして二人きりになり、どのようにしてアイテムが渡されたのかは、明らかにはなっていない。ともかく、アリアドネは自分の持っていた糸玉(または、つむ)をテセウスに渡した。一説には、これは名匠ダイダロスのアドバイスだったという。迷宮は最奥に辿り付く事は出来るが、外に出ることこそ難しいものだったからだ。
 テセウスは糸の端を迷宮の扉に結びつけ、糸玉を持って奥へと進んだ。ミノタウロスは迷宮の最深部で眠っていた。テセウスは彼の前髪を捕まえ、ポセイドンの生贄に捧げるべく(素手か、杖か、棍棒か、アリアドネにもらった剣で)襲いかかった。二人は格闘し、テセウスは(一説では、剣で胸を突き刺して)ミノタウロスを殺した。

 糸を辿って迷宮の外に生還したテセウスは、王女アリアドネとその乳母のコリュネを伴い、仲間たちと共に、夜陰に紛れてアテナイ目指して出港した。予めクレタ島の船の船底に穴を開けておいたので追われる心配もなかった。
 けれども、彼らは途中で立ち寄ったディア島にアリアドネとコリュネを置き去りにしていったという。何故そうしたかには諸説あるが、テセウスには既に他に恋人があったからだとか、アリアドネは元々ディオニュソス神の恋人であり、それを夢で告げられたテセウスが彼女を置いて行った、などと言われる。

 テセウスの船はアテナイに帰還した。けれども、彼はアリアドネのことでぼんやりしていて、帆を取り替えることを忘れていた。アクロポリスから黒い帆を見たアイゲウス王は、てっきり息子が死んだものと思い込み、その絶壁から身を投げて死んだ。

 一方、名匠ダイダロスは糸玉の入れ知恵をした罪に問われ、息子のイカロスと共に迷宮に閉じ込められたが、蝋と羽で翼を作り、空を飛んで脱出した。しかしイカロスは夢中になって太陽に近づきすぎたため、翼の蝋が溶けて分解し、海に落ちて死んだ。


 以上がミノタウロスとその迷宮を巡る大まかな物語であるが、幾つか補足しておくべき事項がある。

 一つは、この物語に繰り返し登場する「雄牛」は、恐らくはクレタ島の祖霊神トーテム獣だっただろう、ということ。
 元々、「自分たちの祖先は強く立派な雄牛である」という信仰があり、そこからこのような物語が作り出されていったのだろうと思われる。王妃パシパエが神の雄牛と交わるのに様々な理由付けや場面設定が行われ、背徳の行為のように語られているが、本来はもっと単純で神聖な「神婚」の物語だったに違いない。

 もう一つは、これが「冥界の物語」である、ということだ。
 牛は、しばしば「月」の化身とされる。
 欠けては満ちる月が、何度死んでも甦る生命の神の化身とされたこと。そして、牛はしばしば神々への生贄にされていた――生贄として冥界の女神に食べられた者は、新たに産み直されて再生するという信仰があったことが、この二つのイメージを結び付けているものと思われる。
 ミノスとは「月の生物」という意味の名であり、つまりミノタウロスには「月の雄牛」という意味がある。月の雄牛は生贄として殺されては再生する聖神で、クレタ島の王はこの雄牛の化身であるとて「ミノス」と呼ばれた。ミノス王は代々、月の女神と結婚していた。
 雄牛を神の生贄に捧げるエピソードは、本来は月の女神に雄牛を捧げる儀式――月の女神と雄牛の神婚を表わしているのだ。

 神話上のミノス王の妃パシパエは、太陽神ヘリオスと女神ペルセーイスの娘だが、ペルセーイスは月女神を表わす名の一つである。そしてパシパエ自身の名も「あまねく輝く女」を意味しており、月の女神なのである。彼女は魔法を使うことができたし、ラコーニアには彼女の神託所もあったという。
 同様に、ミノスの母であるエウロペの名も「丸い目をした女、大きな顔の女」の意味で「月」を表わし、ミノスの娘であるアリアドネも「きわめて清く、明るい女」という意味の名で、やはり「月」を表わしている。一般に知られる物語では、アリアドネは迷宮に向かうテセウスに糸玉を渡したことになっているが、より古い物語では、彼女は自分の冠を渡したのだった。この冠は光り輝いて暗黒の迷宮内を照らし出したとされる。つまりは、月女神が自らの「月の光」を貸し与えた、ということであろう。

 古い物語で渡されたのが「道を照らすアイテム」だったのは、その頃の「迷宮」が現在考えられるような道が判らなくなってしまう迷路ではなく、一本道が螺旋状に中央に向かっていく構造のものだったからでもある。だから、迷宮に入ってまた出てくること自体は難しいことではなかった。それでも「月の女神の導き」がなければ帰還できなかったのは――螺旋状に中心にぐるぐる入っていく迷宮が、女陰から子宮へと辿る道――すなわち「冥界への道」を暗喩していたからに他ならない。女神の助けがなければ、冥界へ下って(死んで)再び帰還する(産み直される)ことは出来ないのだ。
 ちなみに、ミノス王はその死後、兄弟のラダマンテュスやサルペドンと共に冥界の裁判官になったとされる。つくづく、彼は冥界と深く結びついているのである。


 迷宮を表わす「ラビュリントス Labyrinth」という語には、「諸刃の斧の家」という意味がある。これはクレタ島で雄牛を月の女神に捧げる際に使われた儀式用の斧、ラブリュス Labrys に由来するという。
 牛の角の形はしばしば「三日月」と関連付けられ、牛の二本の角を合わせた形は「斧」とも関連付けられた。このように、牛と斧と月は結び付けられたイメージがある。


 ミノタウロスの本名であるアステリオンには、「星の王」という意味がある。よって、陶器画によっては、ミノタウロスは体に星を散りばめた姿で描かれている。(このことを承知していたのか、MSX-2版『魔導』取説では、ミノタウロスのイラストの背後に「☆」が散りばめて描かれてある。)
 アステリオンは、恐らくはクレタ島で古く信仰されていた夜空を司る天空神であろう。(ゼウスと同一視された結果、ゼウスの変じた雄牛がエウロペを連れ去ってくる、という神話が生まれたものと思われる。)
 アステリオン〜ミノタウロスは、いつの間にか月女神の夫たる英雄(テセウス)に退治される怪物に零落してしまったが、本来は彼自身も月女神の夫たる天空〜冥界神であり、テセウスと彼は光と影、同じ存在から派生した分身同士なのである。

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