扉でも注意したけれど、ここはネタバレしまくりのコーナーです。
「そんなの許せーん!」と頭から湯気を出してる人は引き返そうね。

忠告はしたぜ!

 なお、ここで紹介しているゲームタイトル群の製作・発売元は発売当時のものであり、現在は変更しているものもあります。

 

魔導物語EPISODEⅡ CARBUNCLE

製作・発売元/コンパイル(89/12/10 DS SPECIALクリスマス号)
MSX-2/Win95-XP

 ”EPISODEⅡ”となっているが、DS版の『魔導Ⅰ』は存在しない。

 シリーズのホントの母体。1989年、MSX-2版『Disc station』クリスマス特集号の中の一本として登場した。

◆ストーリー

「何の用なの!?」
「お前の力が欲しいだけだ!!」
「!?」
「スリィイイイプ!」

 古代魔導スクール目指して旅するぼく。突然立ち塞がった魔導師のおにいさんに眠らされて地下牢に閉じ込められてしまったけれど、「いろけ」で見張りの魔物をだまして脱出した。
 地下牢で出会った自称ナイスガイなナンパ鳥(?)ミイル・ホォルツォ・ベンジャミン。彼との契約により、ぼくは「カーバンクル」という宝石を捜してライラの遺跡の底深くに降り立った。ここには、奇妙な文が床に彫り込まれている。

私と出会うには海より深い知恵と大地より強い力が必要だ
しかし出会うことの出来た者には私は生涯の愛を誓う
私の妃となる者は賢くて強くなければならぬ
ちなみに私はハンサムだから安心しなさい

 そして、壁には見たこともない不思議な生き物の絵が描かれていた。

 途中、ブタの商人のピグラに出会って、彼が作れると言う「すごい杖」、グレートスタッフを注文したけれど……。ああっ、前金だけ持って逃げられてしまった!

 そんな失敗もしながら、とうとう遺跡の最深部に到達。そこにいたのは…。

「私の眠りを妨げる者は誰だ!?」
「こ、こんにちは」
「女の子だ。うれしいな、かわいいし。私の仕掛けていた罠に耐え抜いてここまでやってこれたんだから強いし、 賢いんだろうな。うん、私の妃になるべき女の子だ」
「!? そんなのお断りだよーだ!」
「ふっ、てれるでない。こちらに来い。熱き口付けを交わそう」
「なんだよこのおっさん、変なの。ぼくは、カーバンクルが欲しいだけだよ!」
「な、何ぃ! カーバンクルちゃんを!」
「カーバンクルちゃん?!」
「そんなことはゆるさなぁぁい!」

 何故か唐突に怒り狂った、この角と翼を生やした魔族の激しすぎる攻撃に、ぼくはなす術もない。その時……!

 

 このゲームでは、まだアルルとシェゾには名前がない。カーバンクルも、自身の名前と額の宝石の名前が同一のものとなっている。サタン様はサタンのままだが。ルルーは登場しないが、

どうしたらいいの、6階より下に行けない、ああ、サタン様に会いたい

という手紙が落ちていて、その存在は既に示唆されている。

 私は当時のことは知らないのだが、このゲームはアンチ大作RPGを謳い文句に、「マップは狭い、BGMは6曲」をウリにしていたとか(?)。

 ……しかし…。マップ、別に狭くないぞ?

MSX2 DS アルル・ナジャ そりゃ普通のフィールド型ゲームに比べれば遥かに狭いのだろうが、なんと地下5Fと6Fの2フロアのマップが16×16マスもあるのだ。(それまでは8×8だけど…。)後のシリーズは標準的に8×8マス。(MD版のみ少し広くて10×10マス。)この上オートマッピング機能がなく、方角さえ表示されないのだから、どんな恐ろしい状態になるかは推して知るべし。

>>全マップ参照

 ついでに言うとヒーリングが戦闘中には使えないので、アイテムが尽きると悲惨である。とはいえ、例えばある階の宝箱などでアイテムを手に入れた場合、一度別の階に行って戻ると、同じ宝箱からまたアイテムを取れてしまうので、そういう意味では決してアイテムには不自由しない。

 

 魔導の全シリーズ中、敵が「死亡」するのはPC-98版だけだといわれているが、実はこのゲームではシェゾ(魔導師)はアルルに殺されてしまう。

「うおぉおおおお! そんなご無体なぁ!」
魔導師のお兄さんは じゅうじゅうと変な音を立てて、蒸発していった

 …って、蒸発するんかいっ!

 ちなみに攻撃技は「アレイアード」「アレイアードスペシャル」のみで闇の剣は使ってこない。そもそも、剣自体装備していないのだ。(……激弱です・汗)

 シェゾは、このゲーム、そして続くMSX-2版『1-2-3』でも、ゲーム中では全く「ヘンタイ」とは言われていない。ゲームだけ見るとまだヘンタイのレッテルは貼られていないかに見えるが、実は両ゲームともに取扱説明書では「変態の目」とアルルに評されてしまっているのであった(^_^;)。変態の目……それは一体。

 

 シェゾの地下牢には中々怪しい人物(?)がいて、部屋に入ると

「振り向くな!! ふくしんづけは好きか?」

と背後から聞いて来る。「好き」と答えると

「これは、俺の作ったふくしんづけだ。食べてくれよな」と言ってふくしんづけを渡し、消えてしまう。

 ……シェゾの部下にはふくしんづけを漬けるのがシュミの奴がいるらしい…。しかし、脱走者であるアルルにふくしんづけを与えたことがバレると自分の首が危ういので、決して姿を見せないのだろうか?

 尚、「嫌い」と答えると、「俺は好きだ」と後ろから蹴りを入れられる。ぐぬぅ…。自分の嗜好と合わないからって、暴力に訴えるのはイカンよな。

 

 シェゾの地下牢の階段は腐っていて、アルルが上るとすぐに崩れてしまった。多分、シェゾ自身は魔法で出入りしているのだろう。

 尚、このゲームでは、アルルの見張りをしていた鬼(サイクロプス?)とリザードマンの他、マミーがシェゾの手下と明言されて登場している。彼らの間ではらっきょやカレーが食べ物として人気のようだ。(やたらとテーブルの上に置いてある。)

 

 ところでサタン様、文字では「いさぎよく私の妃になれっ!」と言いながら、声では「死ねぇっ!」と言うのは止めてもらえませんか。っていうかどっちだ。(^_^;)

 

 カーバンクルが、少なくともゲーム画面中では現在と少しデザインが違う。耳があたかもふさふさしているかのように、毛のほつれらしき表現が見えるし、しっぽも少し大きく、何より鳴き声が「キィ…」なのだ。色も黄色と言うよりは黄土色っぽい。

 

 ゲームを終えて、エンディングのスタッフ名が全て表示され終わると、画面に「おわり」の文字が出る。しかし、そのまま放っておくと「おわりだ」に変化する。それでも更に放っておくと「おわりだってば」になる。………いいじゃん。いつまでもエンディング見てたってよぅ。

 更に放っておくと「おわり」に戻り、繰り返される。

 

 ところで、ゲーム中で青い宝石を手に入れたとき、アルルが

シリア様の瞳のような青い石が出てきた

と言うのだが、シリア様というのは……?

 

参考
>>MSX-2 DS版『魔導物語』取説より 前文
>>最初期魔導のトリビア

 

08/08/15より二千本限定で、復刻されたMSX-2版『魔導物語1-2-3』(Win用エミュレータ付属)に同梱という形で再販。

///このゲームをプレイし、項目を書くにあたっては、ぷよわくさん、清老頭さんのお二人に多大なご厚意とご協力をいただきました。有り難うございました。///

魔導物語1-2-3

製作・発売元/コンパイル(90/06/15)
MSX-2/Win95-XP

復刻版 魔導物語1-2-3 (MSX2版)

 DiscStation版の好評に応え、およそ半年後、シナリオを二本追加して、単独ソフトとして発売された。

 ちなみに、「1-2-3」はコンパイル通には「いっちょうめ にばんち さんごう」として知られているが、制作者の米光氏によれば、通常は「いちにいさん」もしくは「わんつうすりぃ」と読むものだとのこと。元は表計算ソフト「ロータス1-2-3」のパロディ名なのだと言う。

 マップが完全に8×8マスになり、オートマッピング機能も装備された。方向が示されないことを除けば、後の魔導とシステム的には全く変わらない。つまり、この時点でシステムが完成したと言える。

>>全マップ参照

 

●シナリオ1

「みなさぁん、本日は、魔導幼稚園の卒園試験です。でも、卒園試験を受けることができる優秀な人は今年、たった一人しかいません。先生は残念です。でもぉ……」
 しけんは、きんちょーするので、むねがドキンドキンしてます。
 まどーようちえんのあそびばに、だーんとたっている塔。この中にある みっつの「まどーきゅー」を手に入れると、ごうかくです。イリュージョン・モンスターやトラップがあって、とってもこわいのだそーです。その塔が 目の前にあるから、きんちょーします。あしが ガクガクしてます。
 でも、だからこそ、りんとしてゆうきをふるいおこさないといけないとおもいます。

 まどーようちえんのそつえんしけんのために、そうこうまどースーツをきて、ぼくは塔に入った。ホネ男のスケルトン-Tや、くさりかけたおねえさんのワイトなんかと戦いながら、みっつのまどーきゅーを手に入れなければならない。
 あれれ? かべの中からきゅうりが出てきたよ。きゅうりはすごくおいしかったけど、おなかがいっぱいになってねむっているあいだに、だれかにたべものをみんなとられちゃったりした。

「ほほほ! 根性あるだけで馬鹿でしょ、あんた」

 コウモリのはねをはやしたおねえさんは、わるぐちの天才だ。

「いや、お礼はいいから。グッバイ、スイート」

 そうこうまどースーツをきた男の子、ウィザードは、たまにらっきょをくれたりする。いい人だとおもうけど、ときどきは ぼくの経験値をすいとってしまうんだからわかんないよ。……えっ、ぼくがらっきょを盗んだって? 商人のもももさんに怒られて、ウィザードからもらったらっきょを取りあげられてしまった。うぅ……ぼくじゃないのにぃ。
 おおきくなったら こだいまどースクールに入って、いちりゅうのまどーしになるために、ぼくはぜったいごうかくしなくちゃならない。それでも、みっつのまどーきゅーを手に入れて、やっと外に出られたとおもったときは泣きたいくらいうれしかった。なのに……!
 むかえてくれたともだちのかおが、ぐにゃりとゆがんだ。目がつりあがって、おばけみたいなかおになる。

「ごべぇえええ!」

 あぶない! 外に出たと思ったけど、これもイリュージョンだったんだ!
 まっさおな鳥みたいなまものが、出口の前にたちふさがっている。

 

 アルルの装甲魔導スーツがメカメカしくて、デザインがなんだか謎だ。ちなみに、普段着もPC-98版以降に共通しているスモック(幼稚園児の服)のイメージとはやや違う。

MSX2 1 アルル・ナジャ この『魔導1』はこの後くり返し、最も数多く移植(リメイク)され続けたが、続くPC-98版以降に採用されていたイメージと最も違う点は、最後の試練、変貌する友達の幻が、ここではさして重大事項として取り扱われていない点にあるかもしれない。後のアルルは腐った友達の幻を見て相当なショックを受けてしまうが(んなもん見たら受けて当然だが)、このアルルはショックはショックでも、そこまでの深刻さは感じさせない。

 壁の中に潜んでいる、ぴこきゅうりが大好物の何者かや、壁に書いてある呪いの言葉を読んだために、右が向けなくなってしまうなど、独特の、おかしさとも不気味さともつかないエピソードがちまちまとあって面白い。

 

●シナリオ2

 頭がズキズキと痛む。
 突然、現れた魔導師のおにいさんに呪文をかけられて…。
 怪物が見張っている。あの魔導師の手下なのだろう。
 ぼくは怪物を いろけでだましてカギを奪い取った。こんな地下牢からはさっさと脱出してやる。

 古代魔導スクールへ向かう途中、ヘンタイの目をしたおにいさんにつかまったぼくは、おにいさんをばたんきゅ〜させて脱出した。さっさと旅を再開したいところだけど、地下牢で会ったミイル・ベンジャミンという赤い鳥(?)との契約で、伝説の杖――ウラノス・スタッフを手に入れるため、かつてのライラ族の文明の跡、ライラの遺跡へ向かうことにした。ここに眠っているというルベルクラクという宝石と、ウラノス・スタッフを交換するのだ。
 それにしても……。
「プレゼント」だと書いてアイテムが置いてあったり、床に意味不明の文が刻まれていたり。なんだかおかしな感じがするんだけど、考え過ぎかなぁ。

 地下4Fにいた魔物商人のよよよが、不思議なことを言った。  

「美女と野獣がどなってたよ。6階にいけないっ! サタンさまに会いたいっ! ってね。 サタンさまを愛した者は決して幸せになれないんだよ」

 ……どういう意味なんだろう?

 成る程、地下5Fには、そこから下へ行く階段も何もなかった。……なんだか、フロア全体が変わった形を作っている。
 これまでに探し出してきた三つの宝石を使って地下6Fに降りたぼくの前に、緑の髪をした魔族の男のひとが現れた。
「さぁこちらへ来い。熱き口付けを交わそう」
 その人は、イキナリぼくにキスしようとしたうえ、ぼくがルベルクラクを取りにきただけだと説明すると、逆ギレして襲い掛かってきた!

 

 『2』にはDiscStation版からそのまま使われている画像なども多くあり、あくまでDiscStation版の「完全版」として作成されたという意図が見える。

 シェゾの地下牢は何故か僅か一層のみになっている。(PC-98版は勿論、DS版ですら二層あるのに)

 ここには、後のゲームギア版で「シェゾの部下」として登場するリュンクスもいるが、実はこのゲームのリュンクスはライラの遺跡にもバッチリ登場するので、特別シェゾの手下というわけではないらしい。このリュンクス、こちらがダイアキュートを掛けるとヨロイ(しばらくの間無敵になるアイテム)を着込んだりして、憎らしい。

 しかし、牢の鍵が廊下に落ちてるなんて、なんか管理に問題あると思うぞ。

 ところで、全ての『魔導2』のシェゾの地下牢には、必ず魔法のお風呂があったりする。『ぷよぷよBOX』でも自宅に温泉を掘ろうとしていたし、意外に風呂好きなのかも。

 

 シェゾがここで初めて剣を装備している。ただし、「やみのけん」ではなく「やみのつるぎ」だ。また、アレイアードの他に「アレイアード・ロン」という魔法を使う。これを使うと必ず大打撃になるようだ。アレイアード→アレイアード・スペシャル→アレイアード・ロンという順番で攻撃してくるので、シェゾの最強技なのかも……。

 このゲームで初めてシェゾに名前が付けられた。取説には名前の意味が「神を汚す華やかなる者」であり、偉大な魔導師になるために他者の魔力を吸収してきたと紹介されている。また、ゲーム中でアルルがアレイアードを使ったシェゾに対し「そんな古臭い言葉使わないでよ」と言うところから、使う魔法が古代魔法である、という設定もこの時点からあるのが分かる。ただ、ここではまだ(少なくとも取説、ゲーム中では)「闇の魔導師」という言葉は出てきていない。持っている剣が「闇の剣」なのだから、そこで示唆されているとも思えるが。

 

 ミイルは全シリーズ中最もナンパだろう。アルルをお茶に誘い、あっさり振られたのに、それでもスカートにすがり付いて引き止めようとしたのだから。ついでに言うとここではミイルは妻帯者であり、アルルに「奥さんに言いつけるわよ」と脅されてしまうのであった。他のゲームでは包丁を出されたり塩を振りかけられたり、アルルに食べられそうになるのだが。

 セイレーンは……鬼だ。(踊りで魅了して、歌って、殴って、また魅了しての繰り返し。ハマると一撃も出来ずにばたんきゅ〜させられてしまう。 汗)

 

 サタン様 末期の台詞(笑)。

「くっ、ちゃんと、朝ご飯食べとけば よ、か、っ、た………」

 やっぱり、朝ご飯はしっかり食べよう。

 

◆シナリオ3

 と、いったわけで、ぼくとカーバンクルは、いっしょに魔導学校目指して旅をしている。
「あっ、あなたの肩にいるのはカーバンクル! っていうことは、あなた、サタン様と結婚したのね!」
 急に、いろっぽいおねーさんがぼくにむかって言った。
「い、いえ、ちがうんです、あの………」
「きぃーーっ! くやしいーーっ、サタン様とは私が結婚するのよ」
「あ、あのぉ……。サタンは、地下迷宮の中で、ばたんきゅー状態ですけど」
「うそばっかしっ! ゆ、ゆるせないわぁあああ!」
「だからですね、あ、あのぉ……」
「БГДЖЙ! いでよ、ミノタウロス!」
 だぁあー!

 おねーさんが何か呪文を唱えると、煙と共に、頭が牛の恐ろしい大男が現れた!

 こりゃ、こまった! とにかく逃げなくっちゃ!

 ………。
 気が付くと、ミノタウロスの気配がない。
「諦めたのかな…?」

 しばらく進んで、ミノタウロスが追ってこない理由が分かった。
 ここは、迷いの森。生きて出てきた者のいないという、迷いの森だったのだ!

 

 泣いていた魔物の子に話しかけたのがきっかけで、なんとか森を抜け出せたものの、この森やその出口に繋がる地下迷宮には冷気に弱い魔物ばかりがいて、冷気魔法の使い過ぎですっかりしもやけになってしまった。
 薬屋のおにいさんと約束して、しもやけの薬の材料になるババウ岩を取りにモケモエの遺跡に向かったぼくは、最深部に辿り着いたとき、思いがけない相手に出くわした。
 遺跡の底なのに、そこは美しく整えられ、赤いじゅうたんの先に上品な玉座がしつらえられている。
 襲いかかってきたミノタウロスを倒し、ぼくはそこに座るあのおねーさん、ルルーに詰め寄った。

「あなただったのね、この地下迷宮に魔物を解き放ったのはっ!」
「そうだけど、もとからここは私の場所だったのよ。それを、あの町のやつらが荒らすものだから……」
「で、でも、町の人達は困ってるわ。ババウ岩が手に入らなくて…」
「それで?」
「ババウ岩を分けてもらえないかしら」
「いいわよ。ただし一つ条件があるわ」

 ルルーの言い出した条件っていうのは……

 

 三本のシナリオのうち、(私見では)最も工夫が凝らされているのは「3」だ。

 カーバンクルがマッピングをしてくれることになっていたり、正体不明のアイテムを鑑定してくれたりと、新たな仲間であるカーバンクルの付加価値が強調されているわけだが、鑑定など、後のシリーズにも現れてくるような要素が、既にここで見えてもいる。

 カーバンクルは強力な攻撃手としても認識されているが、戦わせるとしおしおに消耗してしまい、回復を待たねばならない。

 その他、PC-98版にも引き継がれていた「種育て」や、持ち続けることで変化するアイテム、ぐにゃぐにゃの存在など、時間経過を主眼にしたイベントや仕掛けが多いのも特徴だろう。

 

 尚、PC-98版では三層分しかない迷いの森の地下迷宮が、ここでは四層分あり、かなりのボリュームがある。(ゲーム自体、この『3』だけでFD二枚分の上下組になっている。)PC-98版にあった「引火性のガスの充満している部屋」は存在せず、ただ登場する魔物の殆どが冷気属性に弱いため、自然と冷気魔法中心で戦うように誘導されている。

 迷いの森で人間に対する魔物達の憎しみを聞くことが出来るが、PC-98版のようにそれとルルーが直結するようなエピソードは見当たらない。しかし「魔物を解き放った」という言葉から、ルルーと魔物達との間の何らかの関連、上下制を感じ取ることは出来る。

 後のPC-98版においてもそうだが、ゲーム中ではルルーは戦わず、取説のキャラ紹介にも「格闘」の文字はまだどこにも見当たらない。

 

 ところで、このゲームではまだアルルには名前がない。

 主人公には、名前がない。勝手に名前つけて、呼んでやってください。ちなみに、私は”らっこ”と呼んでます。
 主人公が生まれる話とか、ルルーとミノタウロスの出会う話とかあるんだけど、それはまた別の機会に。

とのこと。(取説より)

 アルル・ナジャという名前が登場するのはPC-98版『1-2-3』からである。

>>最初期魔導のトリビア

 

 このゲームは、2003年12月、アスキー発行の書籍『MSX MAGAZINE 永久保存版2』に収録され、付属のエミュレーターによってXPまでのWindowsパソコンで遊べた。

 また、08/08/15より二千本限定で、D4Eより復刻版(Win用エミュレータ付属)が販売。オリジナル版の付録のカードゲームやMSX2DS版『魔導』も同梱された。

 

>>公式サイト(コンパイルステーション)

///このゲームをプレイし、項目を書くにあたっては、ぷよわくさん、清老頭さんのお二人に多大なご厚意とご協力をいただきました。有り難うございました。///

魔導物語1-2-3

製作・発売元/コンパイル(91/11/23)
PC-98

魔導物語1-2-3
(1991/11/23)

PC-9801

 MSX-2版『1-2-3』の移植作として、翌1991年に発売された。『魔導』が初めて世に出て(MSX-2 DS版)から二年後であり、前後して『ぷよぷよ』が発売されている。

●シナリオ1

 しけんはきんちょーするので、胸がどきどきしています。この中にある3つの"まどーきゅー"を手に入れると合格です。でも、イリュージョンモンスターやトラップがあって、とってもこわいのだそうです。その塔が目の前にあるから、本当は足が がくがくしています。でも、だからこそ ゆうきを ふるいおこさないといけないと思います――。

 今日は魔導幼稚園の卒園試験の日。ただ一人受験資格を得た六歳のアルル・ナジャは、たった一人で魔導の塔に挑む。
 三つの魔導球を手に入れ、やっとのことで辿り着いた出口。ところが、「おめでとう!」と出迎えてくれた友達や先生の眼窩がぼこりと落ち窪み、肉がずるりと腐り流れた。

「おめでぇええええ……」

 外に出たと思ったのは、腐導師の仕掛けたイリュージョンだったのだ。最後の関門に、アルルは立ち向かう。

 

 冒頭の「だからこそ勇気を奮い起こさなければ」という台詞一つでアルルの性格を表してるなー、と言うか、私はこれでかなりインプリンティングされたものだった。

 にしても、幼稚園でこんなに厳しい試験を課せられているのだから、魔導世界は実に厳しい生活環境を持つ世界なのだというのが推察できる。

 個人的にはラスト、本物の友達のところに帰還して、でも一瞬緊張して固まるアルルがなんか印象深かった。

 ……性格、歪んだな。

   

●シナリオ2

 十六歳になったアルルは、古代魔導学校受験のため旅をしていた。
 出発してから三日目のこと。目の前に突然現れた不審人物。とってもハンサムなお兄さんなんだけど、なにかおかしい。……じっと見つめる、目が。

「なんのようなの」
「お前の力が欲しいだけだ」

 あああああああ! へんたいだわ この人っ! 

 というわけで、ヘンタイお兄さんにスリープの魔法をかけられて、哀れアルルは囚われの身に。目が覚めると暗い地下牢に閉じ込められていた。

「・・・いったぁー・・・
 何よあの魔導師! ちょーーーーっといい顔してると思って・・・
 ・・・・・・」

 アルルは横目で牢の出口をうかがった。一本角のサイクロプスや、二本角のリザードマンが、鉄格子のはまったドアの向こうに武器を持って立っている。

 怪物だ。見張ってる・・・。
「よし!」
 ぼくは怪物を いろけでだまして カギをうばいとった。
 こんな地下牢からは さっさと脱出してやる!

 勿論ヘンタイお兄さんも黙って出ていかせてはくれない。なんと、出口で待ち構えていた。

「おとなしく牢獄で待っておれば よいものを」
「あ、あんた!」
「おまえの魔力 ゆっくりと吸収するつもりだったが しかたがない。ここで死んでもらおう!」
「やだよっ!」
「聞きわけのない娘だ」

 お兄さんは闘志満々! 軽快な動作で刀身の反った大きな刀を振り上げると、朗々と呪文を唱えた。

「アレイアード!」
 げっ。古代魔導!?
 どぉーん!!
「いったぁぁぁい」

 大打撃っ。でも、負けてはいられない。

「さっきは油断してたけど 今度はそうはいかないわ!」
「ふっ」

 嬉しいのかおかしいのか、お兄さんは笑いを漏らす。激しい戦いが続き、やがて、アルルの放った魔法でお兄さんの頚動脈が斬れた。凄まじい勢いで血が吹き出た。

 やったっ! 勝てる。
 切断された首が転がり落ちた。
「ふうー どーにか、こーにか」

 一息ついたアルルは、すぐにハッとなった。辺りに闇の気配が満ちている。

「ん!? この邪悪な気は?」
「ゆ」
「なに!?」
「る」
「なんなの!?」
「さぬ・・・」
 切断された首が宙に浮かび目が開いた。
「ぎゃぁ! そんな」
「許さぬぞ」
 闘志満々! 首が飛びかってくる!

 再び戦いが始まり、やがて首は「無念っ!」とばたんきゅーした。

 その後、壁を壊して外に出ようとしたら、不気味なホムンクルスの実験体に邪魔されたりもしたけれど……。今度こそ外に出て、さぁ、試験の旅の再開だ……かというと、アルルはそうはしなかった。というのも、ヘンタイお兄さんの地下牢で知り合ったミイル・ベンジャミンという魔物が、ライラの遺跡にあるルベルクラクなる宝石を持ってくれば、魔導杖・ウラノススタッフと交換してくれると約束したからだ。
 ところが……どうやら、ここにはかなりヘンな人がいた(いる?)らしい。壁には  

私と出会うには海より深い知恵と大地より強い力が必要だ
だが、出会えた者には生涯の愛を誓う
ちなみに私は絶世の美形だから安心しなさい

などというプレートが掲示してある。

 幾多の罠と仕掛けを越え、ついに地下10階にたどり着いたアルルの前に現れたのは、魔王サタンだった。翼と角を生やした、この見るからに怪しいおっさんは、会うなりアルルを妃と呼び、キスを強要してくるのだった。
 危うし、アルル(笑)!

 

 シェゾ、サタン、カーバンクルと出会う、最も根幹的な話。

 個人的意見としてはサタンは確かに変質者だが、シェゾはヘンタイと言うより……マジ危険人物だ。静かで神秘的なのだが、爪も尖っているし、なんとなくマッドサイエンティスト風味があって、アルルを捕えたのも実験材料としてでは? などと思ってしまう。なにしろシェゾを倒したあと”実験体”というホムンクルスが立ち塞がるし、これはやはりシェゾが造った魔物なのだろうと思えるからだ。

 アルルは牢から脱出する際、(見張りの魔物相手に)「色気」を使用したことになっている。現在のお子ちゃまアルルはともかく、当時のアルルはそれなりのことをやりそうな気がするなぁ。うーむ。見たかった(笑)。

 ところで、98版魔導はシリーズ中唯一、絵がかなりシリアスに(ちょっと耽美、と言いかえられる?)描かれており、しかも「ばたんきゅ〜」(気絶)ではなく「死亡」することになっている。その影響を最も受けているのがシェゾで、なんと彼はアルルに殺されてしまう!(正確には、MSX-2 DS版でも殺されているのではあるが。) しかも余程無念だったのか、切断された首が舞いあがって、血まみれで再戦を挑むのだった。ひぃいい。

 でもそれ以外の戦い方は今と同じ、「アレイアード」「アレイアードスペシャル」「闇の剣よ切り裂け」である。

 なお、この”殺された闇の魔導師の首が舞いあがって……”の元ネタは、『魔導物語』の原型の一つとされるMSX-2のゲーム『魔導師ラルバ』ではないかと推測している。

 

 シェゾを倒すと魔導水晶が手に入るが、後ろで見ていた友人が一言。「……使えよ、シェゾ。自分でそれを」……あああっ、言われてみれば確かにそうだっ(^_^;)。

 ちなみにこの尊い犠牲(^_^;)から得た魔導水晶を、私はとっととスキュラに盗まれてしまったのだった。がびーん……。

 魔導力がなくなるとファイヤーやアイスストームなどの基本攻撃ですら出来なくなると思いこんでいたので、ヴァンパイアの出て来る辺りの階はすごく怖かった。職場のパソコンを借りてプレイした都合上、じっくりレベル上げに専念できなかったので、とにかく強硬突破してたのだ。この階では魔導力を吸い取られる床ばかりで、ホントにどきどきした……。

 サタンさまは強かった。と言うか、アルルの状態を示すメッセージの読み方がいまいち分からなくて、それを掴むのに苦労した。つい今 体力全快させたのに、次の攻撃で「痛い! 視界が変色する」となって、はぁ? そりゃどーゆう状態じゃ、と思ってたら次の一撃で即死。このメッセージが出たら死の直前ってのが分かるまで何度殺されたことか……ついでに、サタン様の弱点を掴むのにもちょっとかかった。ジュゲムは通じない。

 

 一度クリアしたあなたは、ブレインダムドを使用してシェゾやサタン様と戦ってみよう。新たな世界が広がるハズ!

 

●シナリオ3

 カーバンクルことカーくんを道連れに、旅を再開したアルル。
 それから三日後のこと。道で行き会った綺麗なお姉さんが、突然眉を吊り上げて怒った。
「ああっ、あなたの肩にいるのはカーバンクル! ということは、あなた、サタン様と結婚したのね!? キィイーっ、許せないわぁあっ。サタンさまは私と結婚するのよ!」
 聞く耳持たないお姉さんに牛頭人身の魔物・ミノタウロスをけしかけられて、必死に逃げたアルルは「入った者は二度と出られない」という迷いの森に入り込んでしまうのだった。

「ねぇ……泣いてるの楽しい? だったらもう泣くのはおしまい。楽しい方がいいでしょう?」
 出口のない森の中で、泣いている魔物の子供を慰めたことをきっかけに、アルルはなんとか森を脱出することが出来た。出口を教えてくれた魔物の親は言った。自分たちはここに迷い込んだ人間を残らず殺してきた。何故なら、人間は魔物を殺すからだ。しかし君は気絶させるだけで殺さなかった。だから出してあげる……。

 この一件でアイスストームを使いすぎ、しもやけになったアルルは、しもやけの薬の原料があるというモケモエの遺跡に行く。ここには近年魔物がはびこって、薬屋が薬材収集に行けず困っているらしい。

「女王様は、ここを人間の手から守ってくれているんだ
 人間なんて滅んじまえ」

 遺跡の奥で、コケまみれの樽の中に入っていた馬の口は言った。
 この迷宮の魔物達を統べる女王とは、一体何者なのだろうか……?

 

 個人的にはすごく好きなゲーム。種育てが特に好きだ! ゲームギア版は全く違うゲームになっているのだが、やはりこの、人間と魔物の対立している世界観のせいだろうか。『ぷよぷよ』からはかけ離れてるもんなぁ……。

 樽の中の馬の口だとか、道に落ちてるウシトカゲの頭が忠告してきたりだとか、鼓動している限り持ち主を回復させつづけるアイテム”亀の心臓”だとか、ちょっとおどろおどろしい、魔術的な匂いがするのも特徴的。割と好きな雰囲気だ。出来れば、今後の魔導で復活してほしい部分である。(この一方でどこか間抜けだったりするギャップがいいのだな。)

 これらオリジナルの魔導は絵は全然動かなかったりするのだが、とにかく戦闘時のテキストが楽しいのだ。テンポいいし。一度のエンカウントで三回戦くらいまである、二段三段になってる戦闘だとか。それにかなりレベルが上がっても、ちょっとした油断でザコキャラに殺されたり、最後まで緊張してプレイできる。(こういうの、バランスが悪いって言うんだろうか? でも私にはよかった。)個人的にはデュラハンがむちゃくちゃ怖かった。強行突破していてレベルが低かったし。でも宝物は欲しいので挑戦していた。

 

 シナリオ1のエンディングでは、六歳のアルルの未来――即ち十六歳のアルルの過去と、そして未来? を見ることが出来る。おばあちゃんとお菓子を焼いたこと、幼馴染の男の子との取っ組み合いのケンカ、小学校の卒業、中学での勉強風景…。最後、まとめ髪でちょっと大人びた雰囲気のアルルが、こちらを見て笑っているカットでゲームは終わる。このアルルは……やはり、十六歳より未来のアルルなのだろうか。そして誰に向かって笑っているのだろう? そんなことを考えさせてくれる、私の好きなエンディングである。

 

>>最初期魔導のトリビア

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