日月を射る〜沢山あった太陽や月を射落として、一つずつだけ残したという話。

 

タイトル1  国




参考文献
『』

タイトル  国

本文



参考 --> 「」



月を射る  中国

 大昔、月は九つの角と八つのかどを持ち、太陽よりも明るかった。月が出ると人々の顔は真っ赤に焼けて、畑の作物は焦げてしまうのだ。

 ある所にアラという夫とジガという妻がいた。アラは弓の名手であった。大山の頂に立って月を射落とそうとするのだが、いつも上手くいかない。それを聞いたジガは、「もっと真剣にやることよ」と諌めた。

 そこでアラは朝早く起きて月を射に行ったが、やはり当たらない。がっかりしていると、背後の大山が音を立てて裂けて、長い髭の老人が出て来た。

「北山の猛虎の尾で弓の弦を張り、南山の大鹿の角で作った矢で射れば、月は丸くなるであろう」

 言い終わると何処かへ消えてしまった。

 アラが家に帰ってこのことを話すと、ジガは「あなたは弓の名手なんだから、猛虎も大鹿も簡単にしとめられるでしょう」と言う。

「あの大鹿と猛虎の皮は年経て厚く、矢が通らないのを知らないのか」

「それならどうするの?」

「大きな網を編んで、退路を塞いで生け捕りにするしかない」

「その網は何で作るの?」

「俺もそれで困っているんだ」

「じゃあ、私の髪の毛を使って編めばいい」

 こうして夫婦は、一ヶ月かけてジガの髪で大網を編み、猛虎と大鹿を捕らえ、鹿角の矢を作り虎の尾で弓の弦を張った。

 月に向かって矢を射ると、それは一息で月の九つの角、八つのかどを断ち切って、月は丸くなった。けれど、それでも光は強かった。

「これじゃまだ駄目だわ」とジガが言った。

「大きな錦の布を矢の先に結んで射て、月を覆えば月の光はなくなる」とアラが言った。

「そんな大きな錦はどこを探してもないでしょうね。でも私はちょうど、上に一本の娑羅双樹、下に白兎と白羊を織り込んだ大きな錦を織ったところよ。まだはたにかけたままになっているから、それを持って行きなさい」

 アラは機にかけてあった大きな錦を切って、矢の先に結び付けて月めがけて射た。それは月をすっぽりと覆った。ところが月が昇ると、ジガまでもが舞い上がって、ゆらゆらと月に向かって飛んでいった。これを見たアラは慌てて東山から走って行って西山に登ったが、空に昇ることができずに大声で泣いた。これを聞いたジガは、自分の髪の毛を解いてアラに下ろしてやった。アラはジガの髪の毛を伝って空へ昇った。

 これ以来、人々は月の強い光に悩まされることがなくなった。

 アラとジガの夫婦は月で幸せに暮らしている。ジガは錦を織り、アラは月を覆った錦から抜け出した白兎を放していると言う。



参考文献
『四老人故事集』
月を射る」/『ことばとかたちの部屋』(Web) 寺内重夫編訳

※ジガの髪の毛が万能過ぎる。

 女の髪で日月に関連するモノを捕らえるという観念は、メキシコのマヤ族の話にも見える。

罠にかけられた太陽  メキシコ マヤ族

 ある家で姉と弟が暮らしていた。弟は姉が眠っている間に姉の髪を切って、太陽を捕らえる罠を作った。

 目覚めると姉は「私の髪をどうしたの」と尋ね、太陽を捕らえる罠を作って森に仕掛けたと聞くと、そこに出かけていった。

 娘は森で、自分の髪の毛に絡まった太陽を見つけた。可哀想に思って逃がしてやろうとしたが、とても熱くて手を火傷するばかりである。そこで友達のモグラを呼んで手伝いを頼んだ。

 モグラはすぐに髪の毛の罠を噛み切った。自由になった太陽はいつものように光を放ち、娘にこう言った。

「私を助けてくれたのだから、今日からお前の髪の毛は金になれ」


参考文献
『世界の太陽と月と星の民話』 日本民話の会/外国民話研究会編訳 三弥井書房 1997.

※太陽の力(霊力)を《黄金》とする観念が見える。



参考 --> 「月の嫦娥」「不死草



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