闇のあいだに
その時俺は迷宮にいた。 目的はもちろん強大な魔力。今回は強大な魔力を秘めた魔道具が目的だ。
魔道具の噂を聞き、実際その魔の持つ引力を感じたのは、1週間ほど前だった。 それからは引力が、魔力の気配が強くなる方向へと移動し続けたどり着いた先がこの迷宮だった。
遠い昔に(とは言っても近くの村の人間にとっては、だが)廃れた迷宮らしく、いわれもなにもわからない。 だが間違いなく、強大な魔力の気配がした。 魔力の有する異様な雰囲気に普通の人間は近寄れず、そこは魔力を糧とする魔物の棲み家と化していた。
「サンダー」 相手にもならないが、うっとおしい魔物を追い払う。 だが、魔力の引力の強まる方向に行くにしたがって、魔物の力も強大なものとなっていった。 人語を解し、外の世界においては人間と友好をあたためあうこともできる魔物。しかし、ここでは魔力と闇に引きこまれ、魔物としての本性が剥き出しになる。
「闇の剣よ!!」 一刀のもとに切り捨てる。 だが、その魔に同等の者どもに囲まれていた。 「ふん、うっとおしい」 呟きながら呪文の詠唱を開始する。自分の中の魔力という気が膨らんだとき。 「アレイアードスペシャル」 開放する。 霧散した。 おのれ以外の気配は、…ない。 そしてここに、魔物や俺を引きつけた魔力のもとがあった。 壁画。 だがこれは扉だ。 この向こうの俺の求める力が…!
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「あら、意外と遅かったのね」 すっとぼけた声がした。 「ああ?」 なんだ、何が起こっているんだ。 「あ、シェゾも引っかかったんだ」 「ぐーーー」 なんだか笑われている。っていうか、どうしてこのメンバーが扉の向こうにいる!? で、迷宮だったはずなのに、明るくて華やかなリビングって感じな部屋なのは何故だ。 「あ〜ら、私は引っかかったんじゃなくって、サタンさまに誘われてここに来たのよ」 「あ?」 誰か説明しろ…。 「ぐっぐぐー、ぐっぐぐー」 踊り食うだけの奴。 「まあまあ、シェゾ君。ここに来てお茶でも飲みたまえ」 サタンの奴がなんだか偉そうに出てきて無理やり俺を引っ張って座に入れた。 「で」 訳もわからず剣呑とこたえる。 「まったく、どういう態度なのかしら。この変態は。サタンさまがせ〜っかくこのイベントを開いて下さったというのに」 ルルーが睨みつけてくる。 「イベントなんぞ知らん。俺は魔道具を探しに来ただけだ」 「え、そんな物があるの」 アルルが目を輝かせる。 「ボクは魔物退治に来たんだよ。でも、アイテムがあるならそれも欲しいなぁ」 無邪気なもんだ。 「で、お茶してるわけか」 「うん、サタンとルルーがいたからね」 相変わらずのんきな奴だ。 「変だと思わんのか」 「何が」 本当に不思議そうに返されてしまった。 「文句を言わないの。1年に1度のイベントの日に迷宮に潜りたがるような物好きのためにサタンさまが企画実行してくださったのよ」 誇らしげにルルーが言う。 「構想3年、実行8日だ」 サタンがえへんと胸を張る。 「すごーい」 「ぐぐー」 アルルがはやし立てる。 「おお〜、カーバンクルちゃんも褒めてくれるかぁ」 サタンがはしゃぎまくる。 「おまえらなぁ」 「さあ、シェゾも手伝って。パーティの準備だよ」
「せっかく来たんだから、楽しまないとソンだよっ!!」
奴らに巻き込まれ、パーティ料理に部屋の飾りつけ、そのほとんどが終わったときに、壁の向こうで声がした。 「やぁっとたどり着きましたわぁ。これであの幻の薬が作れますわぁ」 …あ、またカモ。 どすんと音がした。 「なんですのこれ!!」 勢い余ってこちらの部屋に倒れこむ。 「わ〜、ウィッチも来たんだね」 アルルがはしゃぐ。 着実にパーティのメンバーがそろっているようだった…。 まあ、これも仕方がないか。 こいつ等に関わった以上、この際まきこまれないと仕方がない。と、何とか悟ってみた。
「せっかく来たんだから、楽しまないとソンだよっ!!」
ブツブツと何か言っているウィッチにアルルが言う。 賑やかな連中を見ながら。 それが本質なのかもしれないと、ふと思った。
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