地の果ての泉(井戸)にいる首の話は、イギリスの民話が元になっている。(円環伝承の「民話想」に例話を挙げているので、興味ある方はどうぞ。主例話索引の「シンデレラの環」から「地の果ての井戸」で。)

 自分たちによく尽くした者に幸運を与える三つの首――死霊。神秘的な泉に座している”頭”は、ケルト神話に登場する、全知の鮭とも繋がっているし、ギリシア神話で、八つ裂きにされて水に投げこまれ殺されたあと、首だけになって予言したとされるオルフェウスや、北欧神話で霊感(知恵)の泉を守護しているとされるミーミルとも繋がる。そして、泉に座して人の運命を紡ぐ、運命の三女神にも通じる。

 泉の側で髪をくしけずる女は、泉の側で機を織る(糸を紡ぐ)女に通じ、即ち運命や世界を紡ぐ女神である。

 

 

 でも、首を泉で洗うというのはやはりかなり血なまぐさい感じがするので、忘れられ歪められた神話・儀式的意味よりもっと単純な、供儀や戦的な意味合いがあるのも知れない。



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