あきのはら




 雲一つなく晴れ渡っているのは同じなのに、空は、やはり盛りの頃とはまるで違って見えた。

 一つの季節が終わり、過ぎ去ろうとしている。

 

「秋の野原って、広いよね、すごく」

 

 先にたっていた少女が立ち止まり、そう言うのが聞こえた。

 

「こんなにたくさん花が咲いてるのに……

 どうしてかな。寂しい感じがする」

 

 全てに薄い影が差しているからだ。過ぎ去り、終わろうとするものの残す憂い。

 草の間を渡る風の音は、間もなくこの大地から消え去るものたちの、微かな別れの声だった。

 

「だけど……だからかな。

 寂しいから、すごくきれいな気がする。きれいで、愛しい。胸が痛いくらいに。

 ボク、秋の野原って好きだよ」

 

 夏の盛りの花そのもののような少女は、そう言って笑う。その笑顔に、この原のような薄い影が差しているように見えて、男は目を瞬かせた。

 

 季節は去り、変わろうとしている。

 少女が、少女のままではいないように。

 

 ――何かが、変わるのかもしれない。

 

 永遠の夜を歩きつづけてきた男は、はじめてそう思った。






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2001/09/25のうら日記より。
一つの冒険が終わり、ダンジョンから出た直後。いわばラストシーン、というイメージ。
「男」が誰なのかはお好みで当てはめてください。(笑)

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