「そういえば、今夜は七夕なんだね」
「七夕というと、アレだな。中国の乞巧奠(きっこうでん)が元になったという、水と豊饒と星の祭り…」
「そんなうんちくはどーでもいいのよ。七夕って言えば、やっぱり牽牛と織女の悲しくもひたむきな愛の物語! ロマンチックなカップルのイベントよね」
「ボクは、どっちかというと笹の葉に付けるお願い事の短冊なんかの方を思い浮かべちゃうケド…」
「願い? それなら…」
「”お前が欲しい”ってのはもう聞き飽きたからね。却下!」
「う…まだ何も言ってないぞ」
「それより、ボク、一つ疑問に思ってたんだけど…七夕って、七月七日の夜でしょ。でも、七月七日って言ったら、その日の午前0時から、次の0時までじゃない」
「確かにそうだけど…それがなによ」
「だから、つまり七月七日の夜って二回あるじゃないか。彦星と織姫って、いつ逢ってるんだろう」
「そりゃあ…二回逢ってるんじゃない? 逢えるのは一年に一度なんですもの。二回でも足りないわよ。…って、そもそも星の世界には昼はないんだから、一日中ずっと一緒だわね、きっと」
「そっか」
「それ以前に、普通七月七日の夜って言ったら、午後の方を指すんじゃないのか…? 午前0時から夜明けまでの時間は、未明とか朝とかいうだろ」
「「あ、なるほど…」」
「それにしても、今日って雨じゃないけど曇りなんだよね。こういう日って、どんな感じなのかな。雨だと天の川が溢れて逢えないって言うけど」
「問題ないわよ。天気の一つや二つで、あたくしの愛を阻むことは出来ないわっ」
「い、いつの間にルルーの話になったの…?」
「やぁね、一般論よ。…でも、憧れるわ。星空で二人きりのデート…ああ、あたくしもいつかサタン様と…」
「だが、一年に一度しか逢えないんだぞ。お前、それでもいいのか?」
「ジョーダンじゃないわよ! そんなの耐えられないわ。一年もお顔を拝見できないなんて…サタン様ぁあ」
「ま、まぁまぁ…だけど、それからすると、こうしていつでも好きな時に逢えるボクたちは、幸せだよね」
「「…はい?」」
「その通りだアルル! 一年に一度とは言わず、毎日デートでも私は一向に構わないぞ!」
「わっ、サタン!? ど、どこから…」
「本当ですか、サタン様!」
「はっ!? ル、ルルー!」
「毎日デートだなんて…でも、嬉しいですわ。七夕の日にそんなことを言ってくださるなんて、やっぱりこれは運命ですわね!」
「いや、私はだな、アルルに…」
「さ、サタン様、参りましょっ。七夕の夜は短いですわ。…ミノ、サタン様をお連れしてっ」
「ブモー!」
「うわぁぁあ、アルルぅ〜!」
「…行っちゃった…」
「何だったんだ…っていうか、相変わらずだな」
「本物の織姫と彦星もあんな感じなのかな?」
「…幻想を打ち砕くようなことは言うなよ…お前」
「シェゾ…幻想抱いてたの?」「ぐー?」
「ほっとけ!」
99年7月7日の日記に書いたもの。
ものすごく短いですが、当時使っていた日記の一回分の投稿容量ギリギリで、
かなり削りながら書いた記憶があります。(何の意味が…?)