注意!

 

テイルズ オブ ジ アビス 緋色あかの旋律[中]

エンターブレイン/ファミ通文庫/矢島さら

上巻の感想は、ログが残っていないのでありません。(感想は、元々はCGIコンテンツ「レス板」に書き流していたものでした。)

 

ファミ通文庫小説版の二巻目。

…まずアレです。
カースロットシーンの挿絵のガイの感想を述べねばなりますまい。
ぶははははは!!
すげー…
すげー笑ったっ!!
凄いと噂に聞いてはいましたが、予想をはるかに超えていました。
ぐはははははは!!
い、いかん……思い出すだけで横隔膜が震えて……。
ぷくくくくく…!
おかげで一週間は楽しく過ごせそうです。
あーいいもん見た。(^▽^)-3

でも同じ挿絵の中の短髪ルークは可愛かったので、それは満足です。

そういえば、口絵イラストは「ティアに抱きつくルーク」でしたが。
スーパーダッシュ文庫版の方も、口絵イラストにはルクティアを持ってきてましたよね。やっぱヒーローとヒロインを重視するのがセオリーなのかな。

と言いますか。今巻のオリジナル要素は「ティアが可愛い物好きな理由」でしたが。ずっとアッシュとルークの視点なのに、合間にポカンとティアの視点の、本編に無関係な過去エピソードが挿入されるのってどうなんだろうと思いました。
一巻目ではティアは全然目立っていない印象で、ティアとルークのカップルには特に触れないんだな、とさえ思ってたのに、今巻ではルクティア中心になっててびっくりです。まぁ、商業モノですからメインカップリングを中心にするのが当然ですけど。


さて、小説の感想。
一巻目は、本編ストーリーはガンガンかっ飛ばしてオリジナル要素がたっぷりという印象でしたが、今巻はフツーのノベライズですね…。二巻目でインゴベルト説得まで進んでるのは凄いですが。
あとがきによれば、三巻目にはまたオリジナル要素が増えるらしいのですが…。
えええ?
本編ノベライズだけでもあと一巻に収まりきれるか怪しい…つーか物理的に無理だろう相当切っちゃわないとという感じなのに、この上オリジナル…? うそーん…。
どーなるんでしょうね…。


同人的な視点での感想。
一巻目はガイルクでアシュナタという感じでしたが、今巻はルクティアでアシュルクアシュって感じ。一巻目を読んでガイルク展開を期待していた人は、結構ガッカリするんじゃないかなーと思いました。逆にアシュルク好きの人は大喜びしそうな。ルークがどんどんアッシュを好きになる、アッシュがどんどんルークを認めてく…ってな?
そんな妄想が出来そうな箇所が多い印象でした。

にしてもこの小説ではアッシュが常にルークの目を通して(ルークに頭痛を起こさせず、ルークに気付かれることすらなく)自在に状況を見られることになっていて、物語進行の都合とはいえ、都合よすぎと言うか、これじゃホントにルークはアッシュの部品だよ…って感じで少し悲しい。

私は、ルークが元々アッシュの一部だった(だから融合して「完全なルーク」に戻った)とか、ルークはアッシュを生かすために消えた(アッシュが生還したのはルークがそう望んだから)という系統のエンディング解釈が大の苦手なんですけど…。
なんだかこの小説、その方向に話が持っていかれそうでちょっと怖いです。


それはともかくとして。
実は今巻、小説本文よりも あとがきの一文に引っかかりを感じてしまいました。

 レプリカについては、初めてアビスの内容を知ったときから気になっていたのです。みんながルークみたいに手厚い庇護を受けたわけでもなく(イオンは別ですね、きっと)、シンクのようにただ働いてる存在もあって。
 私たちには到底理解できないような哀しみを抱いてるんじゃないかな、と。
 でも、レプリカとオリジナル、どっちがつらいかといえば、案外オリジナルのほうかもしれません。
 ルークとアッシュの場合は特にそんな気がしますね。

……レプリカとオリジナルどっちが辛いかといったら、圧倒的にレプリカが辛いと思うのですが…。
ルークとアッシュのケースはもの凄く特殊なわけで。
でもな…。

どうして こんなことを あとがきに書くのでしょう。
と言いますか、どっちが可哀想か、なんて比べても意味ないじゃん。
確かにアッシュは もの凄く可哀想ですが…。

まあ、この小説、往々にしてアッシュを「好意的な視点で補完しようとしている」感じなんですけど。
なんだか、こんなことを書かれると、「この作者さんはアッシュが大好きで、贔屓するつもりなんだ」という色眼鏡をかけてしまいます。
私はアッシュよりもルークの方に思い入れがあるので、「・・・」な気分になるというか。
そんなつもりではないのでしょうが、「アッシュの方が不幸だったから愛されるべき」と主張されているようで。
なんかこー、もやもやしてしまいました。
*下巻まで読み終えての印象では、この作者さんは『アッシュ死亡』の結末を想定して小説を書いていたのかな、と感じました。だからこその発言?

それから、このあとがきの文章、何気にシンクがレプリカだというネタバレをやっちゃってますが。…まぁこの小説、伏線などは ほぼ死んでるというかオープンで突っ走ってるからなぁ…。(読んでる人がゲームクリア済みなの前提っぽい)


そしてこの小説の折込チラシや出版社サイトでの紹介文は間違っています。
以前から言われてることですが。(笑)

慕っていた師匠に騙され、ケセドニアを崩落させてしまったルーク。

ぷはははは!

 



 

テイルズ オブ ジ アビス 緋色あかの旋律[下]

エンターブレイン/ファミ通文庫/矢島さら

とりあえずの感想。
おおお! ちゃんと最後まで話が収まってる!(超感動)
前巻がインゴベルト説得で終わっていたので、残り一冊に崩落編の結末とレプリカ編丸々を収めるなんて出来るのだろうか? と思ってましたので、凄く感心しました。
流石に、ラスト近くは行数を節約する詰まった文章になっていましたが、読み辛いほどではありませんし。エピソードの省略の仕方が流石にプロで、よかったです。
贅沢を言えば、中巻ではあれだけ情感たっぷりに色んなシーンを書いていたのに、この最終巻の最大の見せ場となる結末近くがかなり簡潔な書き方になっていたのが残念でしたが、最後の「彼」が誰なのかをぼかすために あえて感情や主観を極力排したのかな? とも思いました。

普通に面白かったです。



……と、一般的な感想を書いたところで。
例によっての同人視点の、どーでもいい重箱の隅を突付く感想行きたいと思います。
ファミ通小説に感動・満足した、その気持ちを大切にしたいと感じておられる方は読まぬが吉。



『緋色の旋律』を最初に読んで、アッシュとルークの大爆発から始まり、視点が交互に描かれ、コピーライトが「ルークとアッシュ、二人の約束の物語」であることを知った時、ぼんやりと抱いたのは
「アッシュとルークは認め合い、愛し合って一人に融合した」
「ルークはアッシュの分身で部品。だから最後は融合して当然。二人は融合して『真のルーク』になりました」
などの系統の結論に持っていかれるのではないか、という危惧でした。
なにしろ、上巻冒頭の時点で

 これが誰なのか、自分が誰なのか――。
 それを語ることはもはや無意味だと、彼は思う。

と書かれてあるわけですし。
まるで「僕と君は同じ存在なんだから、固有名詞なんてどうでもいいじゃん」と言っているようにも取れたからです。

ですから、最終巻を読むのは楽しみでもあり、怖くもありました。エンディングは、一体どんなニュアンスで語られているのか…。
しかし、蓋を開けてみると非常にシンプルで無味乾燥で、安堵しつつ拍子抜けしたという次第です。

ただ、ちょっと妙な情報操作があるのは気になりました。
この小説だけを読んだ人は、ほぼ間違いなく、最後に帰ってきたのはルークだと思うように書かれていたからです。
何故って、コンタミネーションと大爆発ビッグ・バンに関する設定の一切が語られていないのです。
サブイベントはおろか、フェイスチャットで語られているものも華麗に無視。
そのくせ、アッシュが「自分はもうすぐ消える」と思っていることだけは、むしろ強調されています。(しかし大爆発の説明がないため、何故アッシュがそう思ったのかも、それが実は勘違いであることも説明されないままになっています。…多分、この小説しか読んでない人は、「レプリカ情報を抜かれた悪影響」でアッシュがもうすぐ死ぬのだと思い違いをするんじゃないかなー…)

それで、決戦前にアッシュは刺し殺されて、あのエンディング。

「約束、してたからな」
 ティアの頬を涙が伝う。
 彼に気付いて振り向いたナタリアが、ガイが、アニスが――、それぞれの胸に約束を思い起こした。果たされないはずはないと、何度自分に言い聞かせてきたことだろう。
 ただひとりその場に佇むジェイドの前で、影たちは寄り添い、ひとつになってゆく。

と書いてあって、どうひっくり返しても帰ってきたのはルークだとしか読めません。

…しかし、小説を読み終えてあとがきを読むと

「 最後に約束を果たしたのはどちらの彼だったんでしょうか。それがルークでもアッシュでも、あるいは第三の誰かだったとしても、ティアやナタリアたちの気持ちは複雑だったろうなあ。ジェイドが見せた表情も気になりましたよね。」

と書いてあって、オイオイ 帰ってきたのがアッシュか融合人格の可能性もあるつもりなのかよ、この小説の書き方で。つーか、「ジェイドが見せた表情」って、あなたの小説では「その場に佇む」としか書いてなくて全く表情を描写してないやんけ!
…と、ちょっと苛立たしい気分になりました。

あくまでゲームをプレイした人向けの小説、ということなんでしょうか。
…しかし、帰ってきたのが誰なのかは読者の判断に任せるつもりなら、ちゃんとコンタミネーションの説明も、ジェイドの悲しげな表情についても書いてほしかった…。
狭めた情報しか与えず、あとがきで可能性だけ並べられても困惑です。


この小説、
上巻はルークとアッシュの原作では語られなかった過去がたっぷり語られていて満足でした。
中巻は、アッシュがどんな時もルークの目と耳を通して勝手に状況を把握していることになっている(ルークが誰と何を話して何を見たのか、ルークに意識させないまま全部知っている)のが疑問でした。
…そんな。ルークはアッシュ専用の『生きた盗聴器』なのかよ…。
(下巻では更に、回線繋いでもいないのにルークの心の声すら勝手に聞いてます。ルークのプライバシーはゼロです。)
で。下巻。
…アッシュが覗き魔になってる……。
シェリダンでイエモンたちが虐殺されルークたちが見捨てて逃げなければならなかった、あの惨劇の時。何故かアッシュがずーーーーーーっと物陰からただ様子を見ていたことになってるんですが、なんなんですかこれは。何故こんな最低なことに。
原作ゲームでは、ここに入るフェイスチャットでルークが「アッシュは何をしてるんだ」と八つ当たり的に叫ぶんですが。
…実はごく傍で覗き見してました、ってか。…はー。
(いや、スピノザを追ってたはずですから、アッシュがここにいてもおかしくはないんでしょうが…。何故シェリダンの人々やナタリアが危機の時に、じっと隠れてなきゃならないのか。)

巻を追うごとにアッシュの行動が怪しく…と言うより、正直蛇足になっていくのは…なんとも。
一巻目のように、本編の裏で行動していたアッシュの姿を完全オリジナルで語ってくれれば嬉しかった気がするんですが、いちいち本編のルークの行動をコソコソ覗き見しては、それを自分視点で語り直して辛口コメントをつけてるイヤな奴になっちゃってますよ。もー。

一人、消滅に怯えながら宝珠を探すアッシュの姿こそ、描いて面白い題材だったと思うのに、何故なのか この辺りの彼の主観が全く語られていません。
オアシスにルークを呼び出して「おかしなことはないか」と訊ねたのも、自分の体調不良が不安になったからだと私は解釈してますが、この小説では「ローレライが頻繁に話しかけてくるようになった。頭痛がひどい。きっとルークは耐えられないだろう。心配だからルークの調子を聞きに行ってやろう」というニュアンスになっていて、どうにも…。
このように、アッシュがコンタミネーションによる体調不良(自分の消滅)に怯えていたことが中巻まではスッポリ無視されていて、なのに下巻になった途端「俺は消える消える」と言っていてワケわかめ。

それはともかく。
実は下巻で一番印象的だったのが、次のアッシュの独白でした。

 ルーク……。
 俺の名を、過去を、未来を、奪ったお前。
 屑という呼び名を撤回する前に、もう一度だけ呼ばせてくれ。
 あとは頼んだ。ありがとう――、屑。

……これはギャグか?

いや、すんません。
多分作者さんは感動的な独白として書いておられるのだと思います。
…ええと。なんつーか。
乙女フィルターのかかった文章だなぁ、と感じました。

グズでドジなあたし。そんなあたしにやたらとちょっかいをかけてくるA君。乱暴でいつも怒った顔をしてて、あたしのことを『バカ』って呼ぶの。
最初は怖かったんだけど……。でも、本当は照れ屋でとっても優しかったんだ。
最近は、『バカ』って呼ばれるとちょっと嬉しいの。おかしいよね。

なんかこーゆー。
王道少女漫画ってやつですね(笑)。
バカとか屑とか呼んでるけど、ホントは彼は優しい人。だから罵倒語にも愛情がこもってるの、アレは本当は愛の言葉なの、という。

…いや、ラブコメとかほのぼのドラマでやる分には少しも構わないんですが。
アッシュとルークで本編シリアスの場合は、違うのではなかろーかと。

既に中巻で、ルークがこんなことを言うシーンがあるわけですよ。

(ヘンだな……レプリカだのなんだの言われても、前ほど腹も立たねーや)

その頃から既に「うむぅ…」と思ってましたゴメンナサイ。
コメディタッチの二次創作でやってる分にはどうとも思いません。むしろ好物です。うはうはします。
しかし商業本編シリアスでやらないでください! 乙女フィルター必須エピソードを!

他の人はどう感じておられるのかは分かりませんが、おかしいと私は思いました。
いくら相手が好きでも、レプリカや屑などと呼ばれて悲しくなったり腹が立ったりしないわけがありませんし(たとえば、目の不自由な方が『めくら』と呼ばれて嬉しいですか?)、相手を「愛情込めて」侮蔑語で呼ぶ人間は、真面目な話、人間性のどこかが壊れていると思います。
愛情を込めているから侮蔑語で呼んでもいいということでもないと思うので。
ルークを認めたならちゃんと名前で呼ぶべきだよ。よりによって最後の最後に「ありがとう、屑」か。どーゆうオチなんだこれは。


乙女フィルターといえば。
中巻ではアシュナタばりばりでしたが、下巻では完全無視。(アッシュの話は六割ナタリア…だとか、「アッシュの旦那はあなたに死んでほしくないんですよ、お姫様」といった台詞がカットされちゃってる。)
代わりに(?)アッシュ→ガイでした(笑)。


そんなアシュガイ(違)なアッシュの独白。

 幼い頃のバチカルでの記憶……。
 俺はそいつを封印して生きてきた。
 だが最近、思い出すことがある。
 ガキだった俺と、ガキだったガイの他愛ない気まぐれ……。
 庭師の道具小屋の隅に転がっていた汚い手袋グローブを、戯れに投げてきたのはガイだったか?
 二度三度、投げ返した。
 そのうち軌道を大きく外れ、ガイの投げた手袋は植え込みの中へ。
 急に醒めた俺は、誇り高き貴族の遊びではないと、その場を立ち去った。
 あれはまだあそこにあるのだろうか(そんな訳はない)。


 探さなければ見つからない。
 拾わなければ手に入らない。

手袋を投げつけ合う。…決闘ごっこ?(笑)

つか、そんなにガイを手に入れたかったのかアッシュ…。と思いました。
はい、乙女フィルター装備です。


さて、あとがきには秋に外伝が出ると予告されていました。CDドラマ発売に合わせる感じ?
内容は、雪国組(ネビリム)と、ナタリアと実の両親、オリジナルイオンとそのレプリカたち、それとあと一つ、意外な人物の話だそうです。

で、最後に「いつもながらシナリオの実弥島巧先生、イラストの中島敦子先生には大変お世話になりました。外伝でもよろしくお願いします」と書いてありました。
…流石はプロです。さりげに、原作シナリオライターさんの協力があることを明記しています。
こんなことを書かれたら、マニアとしては外伝もチェックせざるをえないではありませんか(笑)。


…しかし、とうとうガイ兄さんは挿絵にはカースロットのアレでしか出演できなかったんですね。
流石は薄幸の男です。

 



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