///メロウ


メロウ 性別
身長 不明
体重 不明
スリーサイズ 不明
年齢 不詳
誕生日 3月19日
一般的紹介
(真魔導系除く)
宙を泳ぐ魔物。「迷宮に住む人魚」の異名を持つ。
好戦的で気まぐれな性格。
自分に足が無いので、足のある者に嫉妬心を感じている。

迷宮を泳ぐ人魚。結構カゲキかも……。


 メロウはピンク色の髪をした人魚である。
 初登場はPC-98版『魔導』……とも言えるし、『A・R・S』だとも言える。
 というのも、PC-98版『魔導』には「鱗魚人うろこさかなびと」なる人魚系魔物が存在しているのだが、容姿や取説のキャラクター紹介文から判断するに、メロウは本来、鱗魚人の名前を変更しただけの魔物だと判断できるからだ。
 現在、「うろこさかなびと」というと真っ先にセリリが挙げられるが、容姿の点から見ると、髪の毛、腰ひれの形など、セリリよりもメロウの方がオリジナルの「鱗魚人」の特質を正確に引き継いでいる。


●「メロウ」は個人名か?
 メロウは『A・R・S』と『はなまる』、『アル冒』、『ぷよBOX』に登場する。
 『A・R・S』『アル冒』に登場するメロウは、本来のうろこさかなびとの添え名「迷宮を泳ぐ人魚」を裏切らず、迷宮(空中)をゆらゆらと泳ぎ回っている。
 『はなまる』のメロウは水中にいて、縄張り意識が強く、尾びれを回して水流を起こすスクリュー攻撃などでアルルを翻弄した。ゲーム中の「モンスター大百科」によると、足がある者に嫉妬心を抱いているという。腰ひれの形がオリジナル鱗魚人や『A・R・S』版メロウと異なり、セリリと同じ形になっている。
 『BOX』のメロウは残念ながら完全なザコキャラで、特筆すべき点は見当たらない。容姿は『A・R・S』版に準じているようだ。

 さて、『はなまる』のメロウは「鱗魚人」と同系統のカラーリング……ピンクの髪に青緑の下半身なのだが、『A・R・S』や『BOX』の彼女は、ピンクの髪に金色の下半身である。前述のように、腰ひれの形も異なる。
 してみると、『A・R・S』のメロウと『はなまる』のメロウは別人ならぬ別人魚、ということになるだろうか。すると、「メロウ」は複数存在する――種族名ということなのか。

 しかし、個人的には「個人名」であることを期待したい。メロウはセリリと同じ「うろこさかなびと」で、個人名が「メロウ」なのだと。何故なら、その方が広がりが感じられて面白いからだ。
 人魚系のキャラで個人名とその性格が判明しているのは、コンパイル時代のシリーズにおいてセリリのみだった。なので、メロウにはぜひ個性を確定してもらい、セリリと何らかの形で係わってくれることを期待していたのだが……。



●伝承の世界
 人魚といえばイギリスのマーメイドが有名だが、アイルランドでは「メロウ Merrow」と呼ばれる。アイルランド語ではモルーア Moruadh 、またはモルーハ Murrúghach と書き、「ムイール muir のオーイ oigh 」という意味だ。
 メロウは荒れた海岸によく現れる。時には、角のない可愛い牝牛の姿となって海岸をさ迷い歩く。
 メロウの姿は比較的よく見かけられると言われるが、漁師達はメロウを見るのを好まない。というのも、その後、必ず大風が吹いて海が荒れるからだ。

 女のメロウは美しい姿をしており、魚の尾があり、指の間に小さな水かきを持っている。マーメイドは人間に知識を与える反面、人間を水底に引きずりこんで食らうとも言われるが、メロウはもっと優しい性質で、時折人間と恋に落ち、結婚して子供を産む。そうして生まれた子供の足は鱗に覆われ、手には水掻きがあるという。また、メロウの子は唖者だとか、夜になると波の音が聞こえて眠れないと言われることもある。

 男のメロウ(アイルランドには人魚の男性を表す語はないらしい)は醜い容姿をしていて、髪と歯は緑色、豚の目で鼻は赤く尖っている。魚の尾があり、足にはびっしりと鱗があり、腕はひれのようで短い。しかし性質は陽気で愛嬌があり、人間と友情を結ぶこともある。

 メロウたちはコホリン・ドゥリュー cohullen druith と呼ばれる、羽で覆われた赤い三角帽子を被っている。これを被れば人間でも竜宮――海底のメロウの住居に行くことができるが、面白いのは、これを奪われるとメロウたちでさえ竜宮に戻ることが出来ない、という点だ。水掻きがあったり、いかにも海洋生物的な姿をしているくせに、彼らはアイテム無しでは海底に潜れないようなのだ。
 そもそも、彼らの生活空間には水がないのである。実際の海底というわけではなく、海から通じている異界だと考えるべきであろう。
 帽子は地上と異界の間の海中を過ぎる際に使われる。天女の羽衣と同じ、"渡り"のアイテムである。

 また、メロウは海底の籠の中に水死者の魂を閉じ込めていると言われるが、これは「水の底に冥界があり、冥界神がそこで死者の魂を憩わせている」……という古い信仰の片鱗であると思われる。
 ほぼ同じ話が、ドイツの水の精・ニクスの話として伝わっている。ここでは魂は伏せられた壷の中に入っている。


 最後に、メロウに関する二つの物語を簡単に紹介することにしよう。グリム兄弟と同時代に民話伝承の収集を行っていた、クロフトン・クローカーによるものである。

ゴルラスの婦人
 ある晴れた夏の朝、ディック・フィッツジェラルドという独身の男が海岸に行くと、岩に美しい女が腰掛けて、青黒い海のような色の髪をくしけずっていた。傍らには魔法の三角帽子コホリン・ドゥリューが置いてある。これはメロウに違いない……。
 ディックは全速力でその帽子をつかみ、奪った。というのも、そうすれば女は海中に逃げていけなくなると知っていたからだ。振り返ったメロウはしくしくと泣き出した……ディックは散々なだめたが、まるで言葉が通じないかのようだった。けれども、ディックがメロウの手を握り締めると、ようやく泣くのをやめ、こう言った。
「ねえ、あなたは私を食べるつもりなの?」
「とんでもない! そんなことをするくらいなら、自分を食うよ」
「食べないなら、私をどうするつもりなの?」
「魚さん、俺はお前をフィッツジェラルド夫人にするつもりなんだ」
 このメロウは波の王の娘だったが、了承して彼の妻になった。彼女はかいがいしく働き、娘一人に息子二人を産んだ。
 そんなある日、ディックの留守の間に掃除をしていたメロウは うっかりと釣り用の網を引き倒してしまった。その後ろの壁には穴があり、中にはコホリン・ドゥリューが隠されてあった。それを手に取ると矢も盾もたまらなくなって、メロウは一番年長の娘に「お母さんが帰ってくるまでいい子にして、弟たちの面倒を見るのよ」と言い置いて家を出て行った。そうして海辺まで来ると、たちまち俗世でのことは忘れてしまい、帽子をかぶって海の底に消えた。
 やがてディックが帰ってきたが、妻の姿はない。帽子が消えているのに気付き、彼は何が起こったのかを悟った。それから二度とメロウは帰ってこなかったが、彼は生涯、妻が戻るのを待ち続けた。
 メロウがディックと暮らしていたとき、どんな点から見てもよく出来た女房だった。彼女は「ゴルラスの婦人」と呼ばれ、その地方の伝承の典型となって、今でも語り継がれている。

魂の籠
 クレア地方の荒涼とした海岸に、ジャック・ドハティという漁師が住んでいた。この辺りでは難破する船が多く、高価な品物が頻繁に漂着したために暮らしぶりはよく、ビディーという妻も得て、幸せに陽気に暮らしていた。
 ジャックは、メロウに会いたがっていた。というのも、彼の父も祖父も しばしばメロウを見かけており、特にこの入り江に最初に居を構えた祖父は、メロウと大変親しかったと聞いていたからだ。
 散々 探し回っていたある日、ついに、ジャックは岩の上に男のメロウが腰掛けているのを見た。それは全身緑色で、手にはつばのある三角帽子を持っていた。この時は、ジャックが声をかけると、海の紳士は慌てて海に飛び込んで消えてしまった。けれども それ以降、海の荒れた日にその岩のところに行きさえすれば、得体の知れないものが岩の上で跳ね回ったり、海に飛び込んだり、また上がってきたりするのを見ることができた。
 ジャックはそれだけでは満足せず、なんとかメロウと友人になりたいものだと思っていた。そこで その日も例の岩に向かったが、あまりにひどい嵐だったので、近くの洞窟に避難した。すると、洞窟の中にメロウがいるではないか! 流石のジャックも怯んだが、このチャンスを逃すまいと話しかけてみた。
「ご機嫌いかがですか?」
「やあ、ご機嫌よう、ジャック・ドハティ」
「何てことだ、よく私の名をご存知ですね!」
「わしがお前の名を知らないはずがないだろう。お前の祖父さんが独身の頃からの知り合いなんだからね。
 ああジャック、わしはお前の祖父さんを好きじゃった。貝殻に注いだブランデーの飲みっぷりのよさといったら、陸にも海にも、あれほどの男は後にも先にも見たためしはなかったわい。
 望むらくは、お前があの人の孫に相応しい男であればいいのだが!」
「ご心配には及びません。もしお袋のおっぱいがブランデーだったら、俺は今の今まで乳飲み子のまんまでしょうよ」
 二人はたちまち打ち解け、次の月曜のそっくり同じ時間に再びここで会おうと約束した。月曜日にジャックがそこに来ると、メロウは赤い三角帽子を二つ持って現れた。これを被って、海底のメロウの家に遊びに来るように、と言うのだ。ジャックは三角帽子をかぶり、メロウのすべすべする尾をつかんで、海の中に飛び込んだ。随分長く進んだと思った後、ついに二人は水から抜け出し、海の底の陸地に降り立った。頭上には空のように海が横たわり、砂の上には数多くの海老や蟹が這い回っている。そして蠣殻で屋根を葺いた立派な家の中に、メロウはジャックを案内した。
 家の中には暖炉に火が赤々と燃え、二人の若いメロウが食事の支度をしていた。選りに選った二十種類もの魚料理と酒が出され、二人は楽しく飲んで食べた。
 メロウはクーマラと名乗り、友達だからクーと呼べ、と言い、数百年単位で生きていることを明かした。
 やがて機嫌よく酔ったクーマラ爺さんは、ジャックをある部屋に連れて行って、自分が今までにコレクションした沢山の奇妙なガラクタを見せてくれた。中に、壁に沿って置かれた大きな海老籠があり、ジャックの注意を引いた。
「失礼でなかったら教えていただきたいのですが、あそこにある海老籠のようなものは何なんですか?」
「おお、あれか。あれは魂の籠さ。わしは溺れ死んだ船乗りの魂を ここにある籠に入れておくのさ」
「おお、主よ! どうやってそれを手に入れたんです」
「なに、わけはない。ひどい嵐になりそうなときに、こいつを十ばかり置いておくのだ。やがて船乗りが溺れ死に、魂が抜け出るのだが、可哀想に魂は寒さに慣れないものだから凍え死にそうになってしまう。そこで寒さを避けようとわしの籠の中に入ってくるのさ。で、わしは哀れな魂が気持ちよくしていられるように、家に連れてくるわけさ」
 それから、ジャックが帰りたいと言ったので、クーマラ爺さんは三角帽子のつばを横向きにしてかぶらせ、彼を肩に乗せて海の上まで押し投げてくれた。ジャックは陸地に上がると、約束どおり、被っていた三角帽子を海の底に投げ返した。

 翌日、ジャックは一日中、籠の中の哀れな魂について考え込んでいた。クーは悪人ではないし、自分が悪いことをしたとは思っていない。けれども、魂は天に昇るべきだ……。
 考えた末に、ジャックは妻に「溺れ死んだ船乗りたちのために巡礼に行っておくれ」と頼み、妻が快諾して出かけてしまうと、クーマラの岩に行って大きな石を投げて合図し、彼を自宅に招待した。彼を酔いつぶして、その隙に魂を逃がしてしまおうと考えたのだ。
 一度目は、ジャックの方が先に酔いつぶれてしまったために失敗した。しかし二度目には、クーマラ爺さんには強い酒を飲ませ、自分は水で薄めた酒を飲んだので、まんまと酔いつぶすことに成功した。ジャックは三角帽子を引っつかんで海に飛び込み、クーマラの住居に行った。そこは静まり返り、メロウは誰一人いなかった。籠をひっくり返すと、何も見えなかったが、口笛か鳥の鳴き声のようなものが聞こえた。
 ジャックが自分の家に戻ると、クーマラ爺さんはまだ眠っていて、帰ってきた妻のビディーが、夫が酒の飲みすぎで獣になったかと思って騒いでいた。ジャックはこれまでのことを打ち明け、酔いつぶれているクーマラ爺さんを起こした。彼は飲み比べに負けたことを恥じて こそこそと帰っていった。

 こんなことがあったものの、二人の友情は壊れなかった。クーマラ爺さんは籠の魂を逃がされたことに気付かなかったか、気にしなかったらしく、行き来は何年も続いた。その間、嵐の後には、ジャックはしばしば海底に潜って行って、新たに捕らえられた魂を解放した。
 しかしある朝、いつものように石を投げても、クーマラ爺さんは現れなかった。翌日も現れず、彼が姿を現すことは二度となかった。
 ジャックは、あの気のいい爺さんは死んでしまったか、どこか遠くに引っ越してしまったのだろうと考えた。

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