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世界の週の呼び名
 日月五星の名で呼ぶ
日本語 日曜日
にちようび
月曜日
げつようび
火曜日
かようび
水曜日
すいようび
木曜日
もくようび
金曜日
きんようび
土曜日
どようび
太陽の日 月の日 火星の日 水星の日 木星の日 金星の日 土星の日
韓国語 日曜日
イリョウイル
月曜日
ワリョゥイル
火曜日
ハヨゥイル
水曜日
スヨゥイル
木曜日
モギョンイル
金曜日
クンギョンイル
土曜日
トヨイル
太陽の日 月の日 火星の日 水星の日 木星の日 金星の日 土星の日
 日月五星を神に例えて呼ぶ
ラテン語 Dies dominica
(Dies Solis)
ディエース・ドミニカ
(ディエース・ソーリス)
Dies Lunae
ディエース・ルーナエ
Dies Martis
ディエース・マルティス
Dies Merucurii
ディエース・メルクリィ
Dies Jovis
ディエース・ヨウィス
Dies Veneris
ディエース・ウェネリス
Dies Saturni
ディエース・サートゥルニ
主の日
(ソル[太陽]の日)
ルナ[月]の日 マルス[火星]の日 マーキュリー[水星]の日 ジュピター[木星]の日 ヴィーナス[金星]の日 サトゥルヌス[土星]の日
古ギリシア語 hemera-
Heliou
hemera-
Selenes
hemera-
Areos
hemera-
Hermeos
hemera-
Dios
hemera-
Aphrodites
hemera-
Kronou
ヘリオス[太陽]の日 セレネ[月]の日 アレス[火星]の日 ヘルメス[水星]の日 天神(ゼウス)[木星]の日 アフロディテ[金星]の日 クロノス[土星]の日
スペイン語
*イタリア、フランス、ルーマニアも同系統
Domingo
ドミンゴ
Lunes
ルーネス
Martes
マールテス
Miercoles
ミエルコレス
Jueves
フエベス
Viernes
ビエルネス
Sabado
サバド
主の日 月の日 マルス[火星]の日 マーキュリー[水星]の日 ジュピター[木星]の日 ヴィーナス[金星]の日 仕事を中断する日・安息日
英語 Sunday
サンディ
Monday
マンディ
Tuesday
チューズディ
Wednesday
ウェンズディ
Thursday
サーズディ
Friday
フライディ
Saturday
サタディ
太陽の日 月の日 ティーウ(チュール)[火星]の日 ウォドン(オーディン)[水星]の日 トール[木星]の日 フリッグ(フレイヤ)[金星]の日 サトゥルヌス[土星]の日
インド
カンナダ語
アディ・ワーラモ ソーマ・ワーラモ マンガラ・ワーラモ ブッダ・ワーラモ グル・ワーラモ スックラ・ワーラモ セニ・ワーラモ
始まりの日 月の日 幸運[火星]の日 仏陀[水星]の日 導師[木星]の日 シュクラ(ラクシュミー)[金星]の日 シャニ[土星]の日
スウェーデン語
*デンマーク、ノルウェー語も同系統
sondag mandag tisdag onsdag torsdag fredag lördag
太陽の日 月の日 チュール[火星]の日 オーディン[水星]の日 トール[木星]の日 フレイア[金星]の日 洗い日、風呂の日
フィンランド語 sunnuntai maanantai tiistai keski vukko torstai perjantai lauantai
太陽の日 月の日 チュール[火星]の日 週の真ん中 トール[木星]の日 フレイア[金星]の日 洗い日、風呂の日
ドイツ語 Sonntag Montag Dienstag Mittwoch Donnerstag Freitag Samstag
(Sonnabend)
太陽の日 月の日 ツィオ(チュール)[火星]の日 週の真ん中 ドナー(トール)[木星]の日 フレイア[金星]の日 仕事を中断する日・安息日
(太陽の日の前夜)
オランダ語 zondag
ゾンダァフ
maandag
マーンダァフ
dinsdag
ディンスダァフ
woensdag
ウンスダァフ
donderdag
ドンデルダァフ
frijdag
フレイダァフ
zaterdag
ザァテルダァフ
太陽の日 月の日 ツィオ(チュール)[火星]の日 オーディン[水星]の日 ドナー(トール)[木星]の日 フレイア[金星]の日
 数で数える
ユダヤ教





Shabbat
シャバット
(サバト)
第一の日 第二の日 第三の日 第四の日 第五の日 第六の日 仕事を中断する日・安息日
ギリシア語 Kyriake Deutera Trite Tetarte (Tetrade) Pempte (Pephte) Paraskeue Sabbaton
主の日 第二の日 第三の日 第四の日 第五の日 準備の日 仕事を中断する日・安息日
ポルトガル語 domingo
ドミンゴ
segunda-feria
セグンダ・フェイラ
terça-feria
テーサ・フェイラ
quarta-feria
クァータ・フェイラ
quinta-feria
キンタ・フェイラ
sexta-feria
タ・フェイラ
sábado
サッバド
主の日 すぐ次の日 第三の日 第四の日 第五の日 第六の日 仕事を中断する日・安息日
ロシア語 woskresenie
ヴァスクレセーニェ
ponedelnik
パニェジェーリニク
vtornik
フトールニク
sreda
スレダー
chetverg
チェトヴェールグ
pyatnitsa
ピャートニッツァ
subbota
スボータ


第二の日 真ん中 第四の日 第五の日 仕事を中断する日・安息日
ポーランド語 niedziela poniedzial~ek wtorek sroda czwartek piatek sobota
働かない日 働かない日の次の日 第二の日 真ん中 第四の日 第五の日 仕事を中断する日・安息日
チェコ語
*セルビア・クロアチア、マケドニア、ブルガリア語も同系統
nedele
ネジェレ
pondelí
ポンジェリー
úterý
ウーテリ〜
streda
ストゥシェダ
ctvrtek
チトゥヴルテック
pátek
パーテック
sobota
ソボタ
何もしない日 何もしない日の次の日 第二の日 真ん中 第四の日 第五の日 仕事を中断する日・安息日
アイスランド語 sunnudagur manudagur priδjudagur miδrikudagur fimmtudagur fostudagur laugardagur
太陽の日 月の日 第三の日 真ん中 第四の日 断食日 風呂の日
ハンガリー語 vasárnap
ヴァシャールナプ
hétfő
ヘートフェー
kedd
ケッド
szerda
セルダ
csütörtök
チュテルテク
péntek
ペーンテク
szombat
ソンバット
市の日 週の頭 第二の日 真ん中 第四の日 第五の日 仕事を中断する日・安息日
ペルシア語 Yak shambe Do shambe Se shambe Cahar shambe Panj' shambe Jome Shambe
第一の夜 第二の夜 第三の夜 第四の夜 第五の夜 休日
アラビア語 Yaumu l-Ahad Yaumu Lithnayni Yaumu Th-thulatha Yaumu l-Arbi-Aa Yaumu l-Khamis Yaumu l-Jumaa Yaumu Ssabt
第一の日 第二の日 第三の日 第四の日 第五の日 週の日 仕事を中断する日・安息日
スワヒリ語 Jumapili Jumatatu Jumaane
(Jumanne)
Jumatano Alhamisi Ijumaa Jumamosi
週の第二 週の第三 週の第四 週の第五 神を讃える日 週の最初 週の第一
ベトナム語
チュウ・ニャット
トゥウ・ハーイ
トゥウ・バー
トゥウ・トゥー
トゥウ・ナム
トゥウ・サウ
トゥウ・バァ
主の日 第二の日 第三の日 第四の日 第五の日 第六の日 第七の日
中国 星期天
(星期日/礼拝日/礼拝天)
シンチティエン
(シンチリ)
星期一
シンチイー
星期二
シンチアー
星期三
シンチスェン
星期四
シンチスー
星期五
シンチウー
星期六
シンチリュウ
週の最初 週の一 週の二 週の三 週の四 週の五 週の六


おまけ。曜日の由来が分からなかったもの
タイ語
ワン・アーティット
ワン・チャン
(ワン・ジャン)
ワン・アンカーン
ワン・プット
(ワン・プッ)
ワン・プルハット
ワン・スック
(ワン・スッ)
ワン・サオ
始まりの日? チャンドラ[月]の日?
仏陀[水星]の日? 創造神[木星]の日? シュクラ[金星]の日?
トルコ語 Pazar Pazartesi Sali Carsamba Persembe cuma cumartesi
バザール(市)の日 バザールの次の日




ウイグル語 yäkshänbä
イェクシェンベ
düshänbä
ドゥシェンベ
säyshänbä
セイシェンベ
charshänbä
チャルシェンベ
päyshänbä
ペイシェンベ
jümä
ジュマー
shänbä
シェンベ







インドネシア語 hari Minggu
ハリ・ミング
hari Senin
ハリ・スニン
hari Selasa
ハリ・スラサ
hari Rabu
ハリ・ラブ
hari Kamis
ハリ・カミス
hari Jumat
ハリ・ジュマッ
hari Sabtu
ハリ・サブトゥ






仕事を中断する日・安息日
マレー語 hari Ahad hari Isnin hari Selasa hari Rabu hari Khamis hari Jumaat hari Sabtu






仕事を中断する日・安息日
ハワイ lapule
ラープレ
po 'akahi
ポー・アカヒ
po'alua
ポー・アルア
po'akolu
ポー・アコル
po'aha
ポー・アハ
po'alima
ポー・アリマ
po'aono
ポー・アオノ







チュイ語
(ガーナ)
Kwesida Dwowda Benada Wukuda Yaoda Fida Memenda







 

 さて、ここまで「週」の起源が占星術にあり、よって日ごとに星や神々の名で呼ばれるということを説明してきましたが。

 週の概念がギリシア、ローマを経てゲルマン系民族に伝わっていったとき、彼らはそこで使われていたローマの神々を自分たちの神々の名に置き換えました。マルスはチュールに、ヴィーナスはフレイアに。うまく置き換えられなかった土曜日は、そのまま「サトゥルヌスの日」と呼んだり、色々と別の名で呼んだりしました。また、ローマがキリスト教を国教と定めますと、(既に異教の神々の名で定着していた他の曜日名を変えはしませんでしたが)、太陽の日を「主(キリスト)の日 "Lord's Day" or "Dominica"」と呼ぶようにもなりました。一度殺されてから甦ったキリストは、沈んでは昇る太陽に象徴される"太陽英雄"であり、太陽になぞらえられるのは至極当然かと思います。

 このように、週に付属していた宗教的要素は、移入先の宗教文化に合わせて変更されていくものでした。日本や、その影響によると言われる韓国の週になりますと、星の名前のみで神々の名は完全に消えうせ、宗教的な匂いは無くなっています。

 

 一方で、ユダヤ教徒たちが持っていた「週」は、星や神の名は付かず、単に「第一日、第二日………、安息日」と、数で数えるものでした。なにしろユダヤ教は一神教で、七つもの星に当てはめる神はいなかったのですから、これは当然のことだったかと思います。

 改めて世界の様々な言語による「週」を見てみますと、曜日を星や神の名で呼ぶばかりでなく、「第一日、第二日……」「真ん中の日」など、数で呼んでいるものもかなり多いことに気付かされます。ユダヤ教・イスラム教のように、それらの語族の宗教が一神教である場合もありますし、単純に、ローマを経由せずに直接ユダヤの週を導入した、ということでもあるでしょう。キリスト教圏ではギリシアやアイスランドがそうであるように、古くは星や神々の名を付した曜日を使用していたけれど、後の時代になって、古い多神教の匂いを廃するべく「数の曜日」に変更した、というものもあるだろうと思います。

 また、この二つの系統の週が入り混じっているらしき様子も伺えます。ユダヤ教の安息日は土曜日で、その日をヘブライ語で「Shabbat シャバット(サバット)」と呼びますが、世界中の週を見てみますと、他の曜日は星の守護神の名前なのに、土曜日には Shabbat に類縁した名が付けられているものがかなり多くありますよね。

 尤も、Shabbat はギリシア語の俗語 Sábbaton として取り入れられており、更にラテン語にも入って各国語へ……例えば英語にも Sabbath として存在していますので、ユダヤの週と無関係に「休日」という一般的な意味で付けられた可能性もありますが。しかし、それぞれの宗教の安息日である日曜や金曜にその名が付けられることはなく必ず土曜日に付いておりますので、これはやはり、ユダヤ教の週の直接の影響があると見ていいでしょう。(キリスト教でも、教会の典礼暦ではずっと、ユダヤ週式の「第一日、第二日……」という呼び方が通されていたようです。)

 

 ところで、「ユダヤ教の安息日は土曜日」などの部分を読んで、「あれっ?」と思った方もおられるのではないでしょうか。現代日本に住む私たちは、週の休日といえば日曜日だと認識しておりますから。けれども、世界的に見れば、週の休みは金曜、土曜、日曜、あるいはそれ以外と、それぞれ異なっているのですね。

 日本で週の休日が日曜なのは、やはり日曜が主に休日とされるヨーロッパの週を、明治に新たに取り入れたからです。とはいえ、日曜に必ず休めと号令が下ったわけでもなく、導入当初の一般の人々は月に二度程度休みがあるのがせいぜいでした。ですが、学校や官公庁、多くの企業が日曜休を取り入れたため、現在ではそれが普遍化しています。

 日本では日曜休に宗教的意味は全くありませんので、実際には日曜日に休まない職種も多く、特に店などは、むしろ「掻き入れ時」とて日曜日に開いているのが当たり前です。ところが、ヨーロッパに行って日曜日にデパートで買い物でもしようとすると……あれあれ、店が閉まっている。なんてことはよくあることだそうです。なにしろ、キリスト教やユダヤ教では、週の休みは元来「働いてはいけない日」だからです。

 実は、「働いてはいけない日」であることが、ユダヤ週の土曜休をキリスト教の日曜休に変えた一因であるとも言えます。キリストは罪人として十字架にかけられ殺されましたが、その罪状の一つを「土曜日なのに病人を癒すなどして働いた」としており、そうして彼が(十三日の)金曜日に処刑され、日曜日に復活したため、日曜日を「主の日」として祝福し、安息日とした……と、現在一般的に、キリスト教が日曜を休日とする根拠として語られるからです。

 しかし、それは「理由付け」であって、「動機」は別にあったことでしょう。

 ローマのコンスタンティヌス帝は、キリスト教を国教とし、それまでユダヤ教と同じだったキリスト教の土曜休を日曜休に改めました。これが日曜休の始まりです。ここには、キリスト教徒とユダヤ教徒をはっきり区別するという意図があったと思われます。紀元前一〜紀元二世紀ごろ、ローマに征服されていたユダヤ人は反抗を続けていました。何度も戦いが繰り返され、結果として、ローマのユダヤ教への対応はより厳しさを増しました。ローマの国教となったキリスト教はユダヤ教の一分派であり、よって共通項が様々ありましたが、安息日を異ならせてしまえば、ユダヤ教とは違うということを明確に示すことが出来たのです。(なお、当時この強引な取り決めに反発するキリスト教徒も少なくなく、現代でもあくまで土曜日を安息日とするキリスト教の宗派は存在します。)

 余談ですが、コンスタンティヌス帝が日曜を安息日とする勅令を出したBC321は、ユリウス暦で一月一日が日曜日でした。無論、元日が日曜(週の第一日)となる年を意図的に選んだものと思われます。

 イスラム教では金曜日が「集会の日」であり、即ち安息日ですが、これは教祖マホメットがメッカを追われて、メジナに聖遷都ヘジラしたのが金曜日であることに由来します。

 近年では週休二日制が現れつつあり、日本でも一部で「土日」を休みとする風が現れています。各国のカレンダーの休日表記を見ていくと、中国・ミャンマー・ルクセンブルグ・オーストリアなどが土日休、バングラデシュが金土休、アラブ首長国連邦が木金休。面白いのが、ブルネイは金日休で、飛び石休なんですね。

 

 ユダヤ教の安息日は土曜日です。では、週の始まりの日はいつなのでしょうか。

 ……これは、上の表を見るとすぐに分かってしまうかと思いますが。日曜日が「第一の日」です。これは、『新約聖書』でもキリストの死と復活の前後のエピソードで確認することが出来ます。

「さてユダヤ人たちは、その日が準備の日であったので、安息日に死体を十字架の上に残しておくまいと、(中略)死体を取り下ろすことにした。

(中略)イエスが十字架にかけられたところには一つの園があり、そこにはまだ誰も葬られたことのない新しい墓があった。その日はユダヤ人の準備の日であったので、その近くにあった墓にイエスを納めた。」(ヨハネによる福音書 第二十九章)


「週の初めの日、夜明け前に、女たちは用意しておいた香料を携えて墓に行った。ところが、石が墓から転がしてあるので、中に入ってみると、主イエスの遺体が見当たらなかった。途方に暮れていると、見よ、輝く衣をまとった二人の者が、彼女らの前に姿を現した。(中略)『その方は、そこには居られない。甦られたのだ。まだガラリヤに居られたとき、(主イエスが)あなた方に話されたことを思い出しなさい。(中略)即ち、三日後に甦る、と仰ったではないか』」(ルカによる福音書 第二十四章)

 ここには、キリストが処刑されたのが安息日の準備の日……即ち金曜日であり、キリストが甦ったのはそれから三日後(金曜日を一日と数える)の日曜日で、週の初めの日であると書かれています。

 しかし……考えてみるとおかしいですよね。先に、曜日の順番を定める幾つかの方法を書きましたが、基本的に「土、日、月、火、水、木、金」の順番になるもので、第一日は土曜日のはずです。なのに、世界的に見ても、土曜を週の第一日とするものは ほぼ見当たりません。(上記の表中ではスワヒリ語のみ。) 一体どうして日曜日が第一日になっているのでしょうか?

 この答えは分かっておらず、定説はありません。ただ、紀元前にユダヤ人たちは奴隷としてエジプトに囚われていたことがあるわけで、その恨みから、エジプト人の開発した「土曜日から始まる週」に対抗して、一日ずらしの「日曜日から始まる週」を使うようになり、それが世界に広まった……という説があるそうです。

 

 ユダヤ教から分かれたキリスト教でも、一週間の始まりは日曜日です。そしてヨーロッパの週を取り入れた日本でも、同様に始まりは日曜日。その証拠に、あなたの部屋にある暦表カレンダーを見てください。十中八九、一番左が日曜から始まる形式になっているはずです。

 ……って。ちょっと待ってください。

 世界中の現行の暦表カレンダーを並べて見てみますと、最も多いのが日曜始まりですが、次いで、かなり多くの国々が月曜始まりとなっているそうです。(その他、土曜始まり・金曜始まりがごくごく少数) 日本にも月曜始まりの暦表カレンダーが稀に存在します。

 実を言いますと、現在のヨーロッパ諸国とロシアは、殆どが月曜始まりの暦表カレンダーを使っているのでした。これらの国々はキリスト教圏なのにも関わらず、何故月曜始まりになっているのでしょうか? これまた答えははっきりしないのですが、一般に、「休んでから仕事を始める」より「仕事を終えてから休む」方が落ち着くから……と理解されるようです。そもそも、『旧約聖書』では神は六日かけて世界創造の仕事を成し、七日目に休んだとされています。コンスタンティヌス帝に強引に安息日をずらされはしましたが、「働いてから休む」「安息日の翌日が週の初めの日」という生活サイクルが、神話の昔から人間にとって最も心地よく性に合ったものなのだ、という結論なのかと思います。

 ちなみに、どうやら国際標準化機構(ISO)の規格では、月曜始まりが暦表カレンダーの標準、ということになっているらしく、ヨーロッパ諸国はそれに従っている、というわけです。

 日本も明治にヨーロッパから暦表カレンダーを導入した当初は、イギリス式に月曜から始まるものだったそうですが、やがてアメリカの影響の方が強まり、次第にアメリカ式の日曜から始まるものが一般的になったのだそうです。

 


余談1 カレンダーの語源

 日本語の「暦」は、「読み」が語源となっています。「読む」とは数える、読み取って察知理解するということ。暦は天文学と切っても切り離せないものだと本文で書きましたが、日を数え月の相を読むことで暦は作られるものでした。

 では、英語のカレンダー calendar はと言いますと、諸説あるようなのですが、よく言われるのはラテン語の「カレンダエ」が語源である、という説です。かつてローマでは新月を基点として、「新月」「半月」「満月」三つの月の相で一ヶ月を区切っておりましたが、月の朔日、新月の日を「カレンダエ」と呼んでいたのです。これは「Calo 呼ぶ」という語を含む言葉で、欠けて消えていた月が再び姿を現したとき、人々にラッパ等で報せたから、と説明されていることが多いのですが、私は死んだ月(新月)をあの世から呼び戻す・月が呼び戻される、という意味があったのではないかと思います。洋の東西を問わず、暦表カレンダーは天文に関わる言葉なのですね。

 なお、現代英語の Call には「呼ぶ」の他に「借金の返済を要求する」という意味がありますが、実際、ローマでは月の頭は借金の取立て日だったそうで、「Calendarium カレンダエの手段(借金の取り立て台帳)」→「Calendar カレンダー」となった、という説もあります。……これは夢がないなぁ。

 

余談2 宵から始まる一日

 『新約聖書』の「ルカによる福音書」第二十三章を読んでいると、こんな一文があります。

「(イエスの遺体を)岩を掘って造った墓に納めた。この日は準備の日であって、安息日が始まりかけていた。」

 一切の労働をしてはならない安息日が始まろうとしていたために、信者の女たちはイエスの遺体に香油を塗って死に化粧することができず、一日置いた日曜日の早朝に墓に出かけることになるわけですが……。

 これを読んで「んん?」と思う方はおられましたでしょうか。「安息日が始まりかけていた」? つまり、日付が変わろうとしていたということですが。このとき真夜中だったのか? それとも明け方だったのか?

 実は、ユダヤの暦では一日は日没に始まり、翌日没に終わることになっています。つまり、このとき「日が沈もうとしていた」というのがこのシーンの正確な状況なのですね。

 これはユダヤが月の満ち欠けを基本とした太陰太陽暦を(現在も)使っているからですが、この夜に始まり夜に終わる一日、という考え方は、ヨーロッパの各地の慣習に今でも根付き、残っています。『クリスマスの話』でも、「クリスマス期間は12/24日没〜1/5日没」「クリスマスは24日の日没に始まり、25日の日没に終わる(クリスマスイブとクリスマスは本来一日)」と紹介しましたが、曜日、主に北部ドイツで土曜名に使われる語「Sonnabend 日曜の前夜」などにも、夜を一日のスタートとする慣習の残滓を見ることができます。

 

余談3 半ドン と どんたく

 週休二日が定着してきたために最近はあまり言いませんが、以前は土曜日といえば半休、午後からお休みで、ウキウキと「今日は半ドン」などと言っていたものでした。ところでこの「半ドン」、実は語源はオランダ語の「日曜日 zondag (ゾンダァフ)」に由来します。つまり、「半分日曜日・休み」ということ。zondagは「祭礼の日」とも捉えられ、有名な福岡の祭り・博多どんたくの「どんたく」の語源ともなりました。

 

余談4 洗う日

 スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、アイスランド等の言葉では、土曜日には「洗う日、風呂の日」というような意味があります。なんでも、これらの国の人々は実際に土曜日には風呂に入って体を清めていたのだとか?

 しかし、ある説によれば、「洗う日」とは元々「血を浴びる日」の意味で、神に生贄を捧げる祭礼の日、という意味があったのではないか、と言います。

 

余談5 魚を食べる日

 キリスト教圏の物語を読んでいると、金曜日に肉を食べることが異端者の条件とされているエピソードが出てきたりして、不思議に思うことがあります。

 なんでも、キリスト教(カトリック)では金曜日には肉を食べてはならないとされ、代わりに魚を食べるのだそうです。これはキリストが処刑されたのが金曜なのでこの日に肉を食べるのを控えるためだと説明されていますが、その理由では「魚を食べる」理由にはならないはず。だったら、野菜だけ食べたっていいはずですよね。

 この慣習に関しては別の説もあり、金曜日は北欧の性愛の女神フレイア(フリッカ)の曜日なので、生殖力を象徴する魚を食べるのだ、ということです。

 神話伝承においては魚はしばしば女性器や子宮にたとえられ、魚を食べて妊娠するエピソードもよく見かけます。西欧では、俗に、魚は催淫的な食べ物だとも認識されているそうです。どうも、復活祭の前の金曜日を聖なる金曜日として特に魚を食べるとする風もあるようで、復活=生殖力という意味づけがあるのは間違いなさそうです。

 金曜日は愛の日……なのですね。

 

余談6 様々な週

 七日一期の週は現在世界中で採用されていますから、それしかないように思えますが、実際には各地・各時代で様々な「一ヶ月を区切る単位」「休みのサイクル」がありました。

 古い時代の北欧は五日週だったという説があり、ローマでは七日週を導入するまでは八日週だったといいます。インドネシアでは「市場の週」という五日週が使われ、かつてのソビエト連邦では、革命後、それまでの七日週を廃して五日週を定めていたそうです。(これは、休日は各自の仕事の形態に合わせて取るという合理的なものでしたが、家族の休日が一致せず団欒が図れないという理由から、1932年に六日週に改められたそうです。……今は七日週に戻っているのでしょうか?) 日本や中国には、月を十日ずつ三つに分ける十日週もありました。今でも、月の上旬、中旬、下旬という概念で残っています。

 

余談7 八曜日と曜占術のこと

 日本では、七曜が実際の生活のサイクルとして使われだすと廃れてしまった「曜日占い」ですが、ミャンマーやタイなどの東南アジア諸国では、今でも最もポピュラーな占いとして親しまれています。(Web上には曜日占いを行っているサイトは沢山あるので、検索してやってみるのも楽しいかと。)

 ところで、ミャンマーの曜日は八曜日です。週は七日なのですが。どうなっているのかと言いますと、水曜日が午前と午後で違う支配惑星を持つことになっているのですね。土・日・月・火・水・木・金の日月五星ではなく、土・日・月・火・水/ヤフー・木・金の日月六星が当てはめられている、というわけです。

 付け加えられている星・ヤフーは、想像上の星で実在はしません。この星は陰の星・地球の分身のような意味合いで組み入れられているという話ですが、恐らくは、インド(ヒンドゥー)で言うところのラーフが基になっているのだろうと思います。

 九を聖数とするインドでは、七曜にラーフとケートゥという二つの想像上の星を組み入れ、九曜として占星術に用いていました。神話は、こう語っています。

 太古デーヴァ神族・阿修羅アスラ神族の神々が協力して、乳からバターを作る要領で大海を攪拌し、不死の飲料・甘露アムリタを作ろうとしました。
 太陽や月を始めとする様々なものがこの海から生まれ、最後に甘露を入れた壷を持つ医師神が現れました。
 二つの神族は甘露を独占しようと争い、勝ったデーヴァたちは饗宴を開いて甘露を飲みました。ところがこの時、アスラのラーフがデーヴァに変装して紛れ込み、甘露を飲もうとしました。太陽と月がそれに気付いて報せたため、デーヴァのヴィシュヌが戦輪チャクラムを投げて、ラーフの首は切り飛ばされました。
 しかし、既に甘露はラーフの喉にまで達していたため、首は死なずに舞い上がると、告げ口した太陽と月を恨んで呑み込みました。けれども、ラーフの首は切られているので、飲まれた日月はそこから外に逃げ出します。
 こうして、ラーフが太陽や月を呑み込むことで日蝕や月蝕が引き起こされるようになったのです。

 世界各地に見られる、「日月を食べて蝕を起こす怪物」の伝承の一つなのですが、このラーフの頭と、切り離されたラーフの体(ケートゥ)を、インド占星術ではそれぞれ星としてカウントしたのですね。

 ちなみにこの話、タイではこんな形で伝えられています。

 三人兄弟が一緒に暮らしていました。ところが、長兄は毎日僧侶たちに黄金を施し、次兄は銀を施していたのに、末弟のラフは汚れた鉢に少しの米を入れて施すことしかしませんでした。
 このため、三人が死ぬと、長兄は太陽に、次兄は月になって神々の仲間入りをしましたが、ラフは頭と腕と爪しかない真っ黒の怪物になりました。ラフは兄たちを妬み、彼らに襲い掛かって呑み込もうとします。日蝕と月蝕はそのために起こるのです。

 この神話の片鱗は日本神話にも見えます。アマテラス(太陽)とツクヨミ(月)とスサノオの三兄弟がいて、末弟のスサノオによって日蝕が引き起こされるからです。

 

 ラーフとケートゥは中国では羅[目侯]と計都と翻訳され、日本にもその名で伝わり、羅[目侯]星らごしょうは蝕を引き起こす暗黒の星、計都星けいとせいは彗星であるとして、不吉な星とされています。西洋占星術では分断された竜神として、ドラゴンヘッド、ドラゴンテールと呼ぶそうです。



04/05/17

参考文献
『暦のからくり 過去から学ぶ人生の道しるべ』 岡田芳朗 著 株式会社はまの出版
『暦と星座のはじまり』 坂上務 著 河出書房新社
『暦入門 暦のすべて』 渡邊敏夫 著 雄山閣
おもしろくてためになる暦の雑学事典』 吉岡安之 著 日本実業出版社

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