に咲く花
〜サタン様のメリークリスマス〜



 ふっふっふ……。

 私はほくそ笑んだ。

「はいサタン様、そこどいてどいてー!」

「うぉう!」

「サタン様、邪魔だわさっ」

「のわぁっ!」

 横合いからモップをかけつつ突進してきたキキーモラを危うく避けた所で、背後から来たマミーに衝突してしまった。

「もう、危ないだわさ」

 それでもカナッペの沢山載った皿を取り落とさなかったのは流石だ。だが、マミーは非難がましく私を睨みつけた。

「そうですよサタン様。ここは私たちがやりますから、あちらへ行っていて下さい」

「う、うむ…」

「ほらほらぼうっとしてないだわさ。パーティーに間に合わなくなっちゃうだわさ!」

 そう。

 今夜、まもなく我が城ではパーティーが催される。

 今日はクリスマス。正確にはクリスマスイブだが……。

 サタンである私がクリスマスを祝うというのも皮肉なようだが、この世界ではそれらの真の意味は忘れられて久しい。

 ともかく、年に一度のお祭りだ。当然、こんな楽しいイベントを私が逃そうはずもない。縁故知人寄せ集めて盛大なパーティーを開こうというわけだ。

 勿論、私としても、愛する者と二人と一匹っきりでこの夜を過ごしたい。

 だが無理にそういう場を作ろうとしても、なにやかにやの妨害が入って無駄に終わるというのは、これまでで手痛く経験済みだ。

 この世に生まれて10万とんで25歳。私とてまだまだ学習しているのだ。

 そこで、今年は無理に策を弄せず、最初から広く客を招くことにしたのだ。

 といっても、我が未来の妃、アルル・ナジャとのスゥイートな夜を諦めたというわけではないぞ。

 そう、これまでの私は策に走りすぎていたのだ。

 男女の仲は所詮駆け引き、間違っていたとは思わないが、策に耽ればアドリブが利きづらくなる。そうだ、それが今まで私を失敗させていた原因だったのだ。

 だがしかぁし! 今年の私は一味違う!

 真っ向勝負だ! あくまで正攻法に、真摯な態度で臨む。

 ヘタに二人っきりになろうとするからマズかったのだ。二人だけのデートの前に、まずは明るくグループ交際から……なんだか少し違う気もするが、まぁ別にいい。

 ともかく、そうすれば自ずと結果も出るというものだ。うむ、出るに違いない!

 知らず、私の口からは再びくぐもった笑い声が漏れ始めていた。

「ふっふっふっふ……」

「サタン様ぁ、邪魔だって言ってるのに…」

「シャンパン持ってきたな〜す」

 紫色のナスが声を上げている。

「うむ、そうだな。まずはアルルの飲むシャンパンに目薬でも……」

「サタン様、それ全然正攻法じゃありません」

 キキーモラよ…。お前は私の心が読めるのか? 



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