「あ、あんたは!」
部屋から出てきたルルーが目をむいてボクを見た。
青く長い髪、整った肢体。やっぱりルルーは美女だ。ただ、その放つ気配は決して穏当とは言えないが。
ボクも負けじとルルーを睨み付けた。
「よくも今までひどい目に遭わせてくれたわね」
「あんたこそ、人の家をなんだと思ってるのよ!家を ぶっこわす気!?」
…あ、そーいえばそんなこともしたっけか。
「とにかく、オトシマエはつけさせてもらうからねっ」
「望むところよ! サタン様は渡さないわっ」
…だからそれは誤解なんだけどなー。
「行くわよ!」
ルルーが襲い掛かる。
ビシッ!
鋭い鞭の一撃を危うくかわす。
「ファイヤーっ!」
「きゃっ」
ボクの放ったファイヤーはルルーの鞭を燃やした。よしっ…と思ったのもつかの間。ルルーは燃えてしまった鞭になんてまるで頓着しない。
「くらいなさい! 破岩掌っ」
「わああっ」
ルルーの掌底が吸い込まれた壁が吹き飛ぶ。こ、こんなのが当たったらボク死んじゃうよっ。
ひるんだ瞬間、ルルーに捕まった、ふわりと体が浮き、視界が逆転。
「背負い投げっ」
思いっきり床に叩き付けられて目から火花が散る。でも、ボクだって負けていられない。
「ファファ…ファイヤー!」
「きゃああっ」
ダイアキュートをかけて威力を増幅した魔法は、さすがにダメージが大きいようだ。よしっ、畳み掛けるぞ。
「ダイアキュート!」
ボクは呪文を唱える。
「…ッキイィーッ! 許せないわぁ〜っ!!」
ルルーは両手を交差させる。
「ルルービーム!」
「わっ!?」
どかああああんっ!
交差したルルーの腕から怪光線! これは魔法なの? …ううん、魔力は感じなかった。武道の達人は己の気を気功波として放つというけれど、その一種なのだろうか。それにしてもこのネーミングセンス、なんとかならないのぉ〜?
「ダダ ダイアキュート!」
ボクは諦めず魔力を高める。
その時、ルルーが急激に間を詰めてきた。短期で決めるべきだと判断したのかもしれない。
「なかなかやるわね…でも、これで終わりよ!」
何か、すごい必殺技を出そうとしているのが分かる。
今しかないっ。
「必殺っ、女王乱舞っ!」
「ファファファファファファ……ファイヤ――っ!!!」
増幅に増幅を重ねた魔導力はボク自身にも想像もつかなかった威力を生み出した。それはルルーの技と真っ向からぶつかり、魔力と気は融合し、また反発して爆発した。
「きゃああああっ」
「きゃああーっ」
ボクとルルーは吹き飛ばされ、それぞれ地に転がった。
「このっ…!」
ルルーが素早く立ち上がろうとする。
と、その時。
「そこまで!」
誰かがボクたちの間に飛び込んで叫んだ。