地下一階に降りると、ひんやりとした冷気が頬をなでた。
ぽかぽかと日の照っていた外とはまるで違う。カビくさい、お馴染みのダンジョンの匂いだ。
なんだか奇妙なプレッシャーを感じた。
どうやら、何かの魔力妨害結界が張ってあったらしい。
試してみた結果、今のボクが使えるのはファイヤーやアイスストームといった基本攻撃魔法、それからばよばよとブレインダムドみたいな基本補助魔法。そしてヒーリングだけみたいだった。
でも、こういったことは魔力の働いているダンジョンでは珍しい事ではない。大体、ダンジョンの魔力に慣れるにつれて使えるようになる事が多いしね。自然と鍛えられる事になって、魔力も強くなり易くなるし。
とはいえ、慣れるまではちょっと辛いかなぁ…。
入ってすぐの右手はちょっとした袋小路になっていて、魔物商人のリディアが露店を開いていた。
リディアは青みがかった白い毛並みで、ウサギみたいな長い耳をしている。魔物商人にしては珍しく、態度も言葉遣いも正確で折り目正しい。
リディアの店で装備を整えて(おこづかい殆ど持ってないかららっきょぐらいしか買えないケド)、ボクは店を出た。
と。
「ぷよぷよぉ〜!」
ぷよぷよが現れた。
ゼリーで出来た緑色のおまんじゅうみたいな魔物だ。あまり強くないけれど、その体液の匂いは他の魔物を呼び寄せる。
「アイスストームっ」
「ぷよ〜」
何とか倒したけれど、何回か体当たりを食らってしまった。しばらく街でボーッとしていたから、ナマっちゃったのかもしれない。
ちょっと進むと、右手に結構広い部屋があった。ボックスがある。中に入っていたのは剛天草。力を強くしてくれる稀少アイテムだ。もうけっ。もぐもぐしながら部屋を出ようとすると…。
「おちゃあぁああ!」
奇声を上げながら飛び出してきたのは、ガイコツの魔物、スケルトン-T。手に持っている湯飲みで殴り掛かってくる。
「ファイヤー!」
「これでも食らえぃっ」
あっつううぃっ! 湯飲みの中のお茶をかけられた! このお…っ!
「骨折り損だったなぁ!」
ああっ、攻撃するだけして、スケルトン-Tはさっさと逃亡。く、くやしぃいい!
部屋から元の通路に戻って進む。と。
うわぁあっ! 危ないっ。
床におっきな穴が空いていたんだ。
危うく落ちるところだったよ。あーひやひやした。
穴の先は壁になっている。どちらにしてもこの先には進めそうにないね。
少し戻ってそこの扉から別の通路に入ると、転送の魔法陣があった。地下二階へ進むためのもののようだ。
ボクは魔法陣に乗った。