ボクは地下一階まで戻った。
とはいうものの…これからどうすればいいんだろう。
マップを見る限り、このままこれまでの道を辿って、もう一度下に降りていっても、あまり意味はなさそうだ。
一方通行の扉を使って、一階の最初の通路に出た。
ここからだと、入口はすぐそこだけど……このまま帰るのも悔しい。
まさか、このこーもり傘がダンジョン最後の宝物ってワケでもないだろうしね。
…なんてコトを考えながら歩いていたボクは、突然足を踏み外した。
「へっ!?」
忘れてた! ここの床には大きな穴が開いていたのだ。
一度覗いてみたけれど、底が見えないくらいとてもとても深い穴だった――。
あ、あ、しまった…!
覚悟した瞬間。
「キイキイキイッ」
バサッ。
けたたましい声を上げて、持っていたこーもり傘が勝手に開いた。
「え…ええ〜っ!?」
開いた傘は、落下傘の代わりになったみたい。落下速度がゆっくりになり、ふわりふわりと降りていく。
無事、地下二階に降り立った。
「ぐぐーっ」
カーくんは大喜びだ。
そ、それにしても…驚いたなぁ。これはこうやって使うものだったんだ。
地面に降りると、傘はまた勝手に閉じてしまった。
よく見たら、本物のコウモリみたいな耳と目が付いている。これも魔導生物の一種なのかもしれない。魔導生物といえば、あの籠の蛇にもビックリさせられたケド…。
あれ、そういえば。
『黒い翼を開いて地を望み
鱗をくねらせ天を睨む』
そっか! 地下三階の本に書いてあったのは、この事だったんだね。
地下二階の床には、まだまだ下まで続く穴が開いている。
マップで見ると、この穴の下に当たる地域は未踏査のままだ。よぉおおっし!
「行くよ、カーくん」
「ぐーっ」
こーもり傘を持って、ボクらは穴に飛び降りた。
ばさっと傘が開き、ふわふわと降りていく。
ボクらは、地下四階に降り立った。
穴の周りは、結構広い空間になっている。地下三階はごく狭い通路だけで行き止まりになっていたけれど、ここには扉があった。開けると、ちょっとした部屋になっている。…もしかしたら、実験施設か何かだったのかもしれない。雰囲気が他の部屋とはちょっと違っていた。
「ぐー!」
「どうしたの、カーくん。…あれ? 何かある」
部屋の片隅に、置き忘れられたかのようにぽつりとそれはあった。大きな壷のような形のもの。
るつぼ――鍛冶屋さんが使う、鉄を融かす壷、だよね?
「ふうん…。ここでは、アイテムを作ったりなんかもしていたみたいだね」
「ぐー?」
ここにはこれ以上は何もない。
ボクらは更に穴を下の階に降りた。
地下五階。
四階よりも更に広く開けている。
それはそうだろう。この階のマップは殆どが真っ白のままだ。マップを埋めるためには、それだけ歩き回らなければならない。
「がおおおお」
この階を徘徊している魔物は、お馴染みのドラコ。いつものチャイナドレスではなく、カンフースタイルだ。翼を鳴らしてボクの前に回り込み、炎の息を吐く。
「アイスストームッ!」
「ほえほえほえ…」
ドラコはばたんきゅーだ。勿論、こっちも火傷は覚悟しておかなくちゃならない。
反対に、冷気の技で攻撃してくるのが、これまたお馴染みのバーベガジだ。そのせいでもないだろうけど、冷気が強くなっているような気がする…。いや、冷気が強いからバーベガジがいるってコトなのかな。
この階ではボックスを二つ見つけた。中身は、一つは「シールド」。もう一つは…なんだろう、これ? 鍵の形にへこみがついている板だった。
南に進んでいくと、やっと魔法陣。
ボクは魔法陣に乗った。