で、今(05年)の私だったらどんなオチを付けるかなぁともやもやと考えてみました。

 デート先はサタン指定の遊園地。あれこれ言い間違えた後で、最終的には、タダ券が手に入ったとか何とか無難に誘うかなぁ。遊園地の各所にサタン配下の魔物たちがスタッフとして紛れ込み、サタンも対策本部なんか作って自分が中心になって、あれこれ完璧なデートのための指示を出す。バレンタイン・フラワーのスケジュール機能のせいで、シェゾは強制的に決められた場所(特定のアトラクションとか)に移動させられちゃうのですが、そこでスタッフ達が待ち構えていて、二人っきりでアトラクションに入れたり、飲食物のサービスをしたりとか、それをわざとこぼさせて何かのきっかけにするとかなんとか。

 ところがどっこい、シェゾはその悉くを失敗してしまいます。なんかサタンの思惑とは違うことになります。まぁ、アルルはそれなりに楽しそうではあるけれども。全然「完璧」なデートじゃない。(しかし、シェゾのせいばかりでもない。サタン用にスケジュールが組まれているので。例えば、アトラクションに乗っていると何故か突然事故で落下! 翼を広げ、颯爽と彼女を救う私! …などという計画が組まれていたりしますが、シェゾに羽はありません、とか。)
 業を煮やしたサタンは、遂に強硬手段。シェゾに自分が乗り移ってしまいます。シェゾの意識はあるのだけど、体の自由はサタンが強制的に奪っている、魔法的二人羽織状態。(頭の中でシェゾとサタンが会話しつつ、行動はサタンがしてる。)

 急に人が違ったようになって、歯の浮くような口説き文句を吐き、陶酔気味の行動をするシェゾ(頭の中では本物のシェゾがのたうってますとも、もう)に、アルルは最初は顔を引きつらせますが、そこは女の子。大人っぽくムードたっぷりに迫られて、だんだん場が盛り上がって行ったりして。そして美しい夕景の中、盛り上がりは最高潮。そのままキスシーンに突入……(サタンは盛り上がりすぎて、自分がシェゾの体を使っているという状況を忘れています)
 …ってところで、体の自由を奪われっぱなしだったシェゾが「だぁああああああっ! や・め・ろぉ〜〜っ!」とサタンの支配を打破。ギリギリでキスは未遂に終わります。

 その場でシェゾが(弾き飛ばされて実体化した)サタンとぎゃあぎゃあとケンカを始めていると、ぽつんと取り残されていたアルルが一言。

「……何? キミたち二人で、また何か悪だくみしてた……ってワケ?」
「いや、違うぞアルル。私はいつでもお前に純粋本気ラブだっ。今回はこの間抜けな男のために、仕方がなく策を弄したがな」
「間抜けは余計だっ! 大体、お前があんな危険物を無用心に放置していたせいだろうが。くっ……アレのことさえなければ、誰がこんなデートなんかするか!」
 とまぁ、例の如く余計なことを言う男二人。
「なんだよ。結局、二人してボクのことからかっていたんじゃないか。こんなの……こんなの、ボク、バカみたいだ」
 うつむいて肩と声を震わせるアルル。
「おい……アルル?」
「触らないでよ、バカ! シェゾもサタンも、大っきらい!!」
 涙を振りこぼして、アルルは走って帰って行ってしまいました。後に残るは愚かな男二人のみ……。



 日がだいぶ暮れた中、アルルは自分の家への道を歩いていました。男二人の情け知らずな行動も、それを知らずに舞いあがってしまった自分のことも、情けなくて仕方なくて、涙がポロポロこぼれてきます。肩のカーバンクルは、アルルの気持ちを慮っているのか、「ぐぅ」とも鳴かずに押し黙っています。――と、黙っていたカーバンクルが急に「ぐー!」と声をあげました。目の前の空間がよじれて、どおっと風が吹き、その中からシェゾが現れました。
「……何の用よ」
「……」
 シェゾは一歩踏み出します。
「近寄らないでよ! キミの顔なんて、もう見たくもないんだからっ」
「待て、違う! ……悪かった」
「……え?」
「だから、……お前をあんな風に泣かせるつもりじゃなかった」
 びっくりして、アルルはシェゾを見上げました。ばつが悪そうでそれでいて視線をそらしている顔を見ているうち、僅かに、口元に笑みとも苦笑ともつかないものが浮かび上がってきます。
「……だったら、一体どういうつもりだったのさ」
 下から覗き込んで、からかうような口調で言うと、シェゾは「え、いや、それは……」と目に見えて動揺します。アルルの笑みはますます広がって、
「まぁ、キミがしょーもないヤツだってことは、前から分かってたことだし。いいよ、もう。今回は許してあげる」
と、両手でシェゾの手をとり、少し持ち上げて握りました。シェゾと視線を合わせ、にっこりと笑って。
 ――途端に。
 ポンッ、と音がして、シェゾの全身に文字通り花が咲きました。そりゃもー、綺麗な花が山盛りに。
「な!?」
 あまりのことに呆然としていると、「おお、やったな!」と言いつつその辺の茂みから飛び出してくるサタン。
「ちょっと咲き方が狂ったようだが、バレンタイン・フラワーが満開だ。これで貴様も解放されるぞ、よかったではないか。だが、流石にこの花を貴様からアルルに贈らせる訳にはいかないがな」
 などと言いつつ、「いて、いて、いて!」とジタバタするシェゾを背中から足で押さえつけて、ぶちぶちと花をむしりとっていきます。束になったその花を持ってアルルに向き直り、
「アルルよ、少々手順が狂ってしまったが、私からのプレゼントだ。今回は厭な思いをさせてしまったが、次こそは、私と完璧な魅惑のデートをしよう!」
 と、キリッとした表情でアルルの目をじっと見つめて言うのでした。……が。
「だぁああっ、いいかげんこの足をどけろ!」
 サタンに足蹴にされていたシェゾが跳ね起きたので、サタンも転びかけて跳ね退きます。
「ぬうっ、何をするか! 邪魔をするなっ」
「うるせぇ! 今日一日、貴様の言うことに従ってきたが……これさえ外れればもう用はない。たっぷりと礼を返してやる!」
 効力のなくなったアイテム(バレンタイン・フラワー)を引き剥がして、シェゾは魔剣を構えています。
 その場の空気が一触即発になったとき、アルルが腰に手をあてて下を向き、溜め息をついて言いました。
「……で。よく分かんないけど、二人ともその花を咲かせるのが目的だった、ってコトでいいんだ?」
 その声音にこもった何かを感じ取って、ケンカを止めてなんだか慌てて弁明を始める男二人。
「いや、違う。……違わなくはないが、そうではなくて」
「本当は、私がこの花を咲かせて、お前に最高で完璧なデートを贈る予定だったのだ。それを、この男が……」
 とかなんとか、ジタバタと。
「キミたちって……キミたちって、ほんっとぉーに、バカ!!」
 言うなり、アルルは男二人を殴りました。そりゃもー、グーで思いっきり容赦なく。
 もっとも、その声色には、ほんのちょっとだけ笑みが含まれてはいたのですけれども。
 
 
 
 ……こんな感じですかね。(行間は、よろしければ各自妄想で補完してくださいね。)
 サタン様も満足なオチか、これ? ……どっちも不満足なオチなだけなのかも。(^_^;)



この文章は、05/2/13の別館の日記に書いたものです。

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