集英社/スーパーダッシュ文庫/結城聖
これより以前の巻の感想は、ログが残っていないのでありません。(感想は、元々はCGIコンテンツ「レス板」に書き流していたものでした。)
さまようものが好きなので、前巻の暗示深く素晴らしいサブタイトル「愚かな焔と崩れる世界」に引き続いて、サブタイトルで萌え(笑)。
次巻のサブタイトルにもドキワクです。
…最終巻のサブタイトルが気になるなぁ。まさか「消える焔と〜」じゃないですよね(悲)。
あと、WEB上で色んな方々が書いておられるように、私もピンナップ裏のガイとルークのイラストには浮かれました。やっほい!
とりあえずこれだけで満足です。はい。勿論、本文挿絵のカニに座るガイ様も堪能しましたが。
…とか言う感想で終わると、読んであんまり面白くなさそーなんで、重箱の隅をつつくことにします。ねちこいです。すんません。でも隅から萌えを拾うのが私のスタイルなのかも。
ええと、本文の感想ですね。
あとがきを読むと、二巻目執筆時以上に切迫した状況であったようなのですが、内容は良くなっていると感じました。いい意味で力が抜けてきてるなぁーと。
一巻目は、ルークのひどい言動に関して、とにかく好意的な解釈をしている、と感じました。原作よりもルークが良い子に描かれていると。
二巻目は、逆に原作よりも荒んだ解釈になっていると感じました。一巻目の印象が強かったので、その反動でそう感じたのかもしれません。特にイオンに対するルークの感情の動きが一貫しておらず、シーンごとに分断されているような印象を受けました。
また、アッシュと精神を繋いで旅する辺りの書き方が変わった感じでした。何か特殊な効果を狙ったものかもしれませんが、台詞の羅列にしか思えずに、いい印象は受けませんでした。
#あとがきには いかに執筆に余裕がなかったかが書いてあるので、時間がなかったためにあんな書き方になったのではないか、と邪推してしまいます。あとがきに ああいうことを書くのはマイナスの印象を与えるかも。
この二冊、総じて言えば、ルークの心理描写…と言いますか、「この時、実はルークはこんなことを考えてたんですよ!」という説明が多すぎて、少しゴチャ付いている印象があったのですが、今回の三巻はスッキリして普通の小説になってるなぁと。
作者さんの調子が乗ってきたのだろうなと思いました。(いや、単に私の方が読むのに慣れたのかもしれないですが。)
原作沿いと言いつつも、オリジナルのエピソードも ちょこちょこ入っています。ガイがアラミス湧水洞でカニに座って待っているのもそうですが、個人的に印象に残ったのは、シュレーの丘のパッセージリングに行った時です。
パッセージリングを見てアクゼリュスを思い出し、内心に恐怖を感じるルーク。
ジェイドが言います。
「ルーク。今回は、超振動で消したりしないでくださいね?」
流石にそれは笑えないと引きつるアニスに「冗談ではありませんから」と真顔。
空気が凍って、ルークも辛い思いを噛み締めるけれど、ぐっとこらえて潰れない。そんなルークを仲間たちが気遣って明るく振舞ってくれて、ジェイドはその様子を見て満足げなのでした。
大佐は叩いて伸ばそうとする人なんですねぇ。ある意味 情が深いですね。それが妙に心に残りました。人を叱って伸ばすのって、エネルギーが要ります。それをあえてやったのだなと。
後、気になったところ。
ケテルブルクでネフリーに呼び出されるエピソード。
誰も付いて来なくていいと言い張るルークに、ミュウだけがこっそりついて行きます。
これ、原作ゲームでも明確に描かれていないのですが、ルークがホテルから駆け出していく時にミュウが「ひらめき」マークを出してルークの後を追って画面外に消えること、その翌日発生のフェイスチャットでルークがミュウにネフリーの話を知ってること前提で話しかけることから、恐らくミュウはルークにくっついて行って、一緒にネフリーの話を聞いたのだと推測できるわけです。
そして、この小説の該当シーン。ミュウがルークにくっついていったようには全く読めないのですが(わざわざ「途中、後ろを振り返って見たが、誰かがついてくる様子はなかった。」と書いてある)、その後ジェイドに口止めされるシーンになると、突然ミュウが涌いて出てきて「ミュウも絶対内緒にするですの!」と言うので「??」と思いました。作者さんが混乱してたのでしょうか?
もういっこ。
テオルの森でのカースロット発動シーン。
原作ゲームでは、後ろからガイに斬られかけたルークをティアが庇って助け、ルークを襲おうとしたラルゴをナタリアが矢で牽制する、という流れになります。ルークはヒロインたちに守られて危機を脱するという展開ですね。
でも、この小説の該当エピソードだと、ティアがルークを助けるシーンが丸々ない。ルークは自力で背後の殺気に気付いてそれを剣で受けています。ナタリアも最初から弓の弦をラルゴに切られていて牽制できず、ラルゴは戦うガイとルーク双方を襲ってくるので、ルークはガイとラルゴの攻撃を避けながら自分とガイを護るという神業的な活躍をします。
原作ゲームでは、シンクがカースロットで操るのをやめたので、ガイは勝手に気を失って倒れるのですが、小説ではルークがガイの足を払って鳩尾に肘を叩き込んで気絶させてます。
…うーむ。なんだろうルークのこの超人ぶりは。
それはともかく、ナタリアがラルゴを牽制して対決するのは、後のレプリカ編での父娘対決に繋がるラインなんですけど、それをわざわざ改変して「無し」にしてるってのは…何か意図があるのかな? と気になりました。
話が逸れます。
私は自分で勝手に『アビス』のノベライズもどきを書いているので、商業ノベライズを読むと少し変な読み方をしてしまう部分があります。
ああ、ここはこんな風にまとめたんだ…うん、こっちの方がスッキリしてる。流石プロだなぁと思ったり。
あるいは、おっ、ここは同じ解釈でまとめてる。うんうんやっぱそうだよねぇと共感したり。
どーでもいいことですね(笑)。
イベントの間にどんな風にフェイスチャットを配置するかとか。結構考えどころなんですが。あーどーしてもこのネタ入れられねぇと自分がギブアップしたものをちゃんと組み込んでおられるのを見ると、うーもっと粘ればよかったかーとしみじみ思ったり。
しかし、ここに無理して入れなくてもいいのに…と思うものもちょっとありました。
ダアトにイオンとナタリアを助けに行った時。
この小説では何故か人殺しの描写がやけに詳細で、酷くえぐいのですが。
その前に、ティアの投げたナイフがその喉を貫いていた。ごぼ、と口から血泡が溢れる。残る相手は三人。一人の胸を、ジェイドの槍が貫き、もう一人の首を、ガイの剣が斬り裂いて、辺りに血の臭いが漂った。残った一人は、敵わないと見たか、踵を返して逃げ出した。
(逃がすわけにはいかないんだっ!)
ルークはジェイドたちの間を抜けて肉薄すると、下からすくい上げるように斬りつけた。肉と骨を断つ感触が腕に伝わってきて、ルークは砕けるかと思うほど強く奥歯を噛み締めた。兵はおそらく即死だった。声も上げなかった。
「手段を選んじゃいられないんだ……」
剣を振って血を払い、倒れた男の服で残りを拭いながらルークは自分に言い聞かせるように、そう呟いた。剣がまた、重くなった気がする。
このグロエグ悲惨なシーンの直後に、ジェイドがルークの脈を確かめて健康診断してルークがお礼を言って周囲に引かれて怒って皆がほのぼのと笑うという、あのコメディぽいエピソードが入れられていて、
皆、努めて明るくしている――そう思えた。そうしなければいられないのだ。イオンを、ナタリアを助けるためとはいえ、人を殺さなければならないこの状況を乗り切るには。
と説明されていたのは、流石に「オイオイ」と突っ込まずにはいられませんでした(笑)。
人を殺したのが重苦しいからって いきなりルークの脈を取り始めるジェイドというのはギャグにしか思えません。でも状況描写が陰惨過ぎるんで笑えないよぅ。というわけで、どう感じていいのか分からずに困惑しました。
と言いますか、猫の行動を思い出しました。猫って気まずい時、顔洗ったり関係ない行動して誤魔化すじゃーないですか。
原作はとても長い話なので、どこをカットしてどう繋ぎ直すかというのは結構重要だと思うんですけど。
ギンジ救出のエピソードが丸々カットされてたのは、いいなぁと思いました。確かにストーリー進行上必要ないですね。代わりに、シェリダンに滞在して幸せいっぱいなガイの姿が描かれていて、なんだか嬉しかったです(笑)。よかったねーガイ。
戦争イベントが簡略化されてるのは まぁ当然…。
今後は、どのエピソードが省略されるのかなぁ、どれがストーリー進行上不必要なものなのかなぁと、つらつら考えてしまいました。
・イニスタ湿原
・ユニセロス
・メンテフォニゴ
は確実に要らないですよね。スピノザ捕獲は…簡略化・変形でしょうか。
他は何がカット出来るでしょう?
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