物語中の時間経過

『アビス』の世界の暦をローレライ教団本部の図書館で確認できますが、地球とは結構違うようです。

 ルークたちの暮らす惑星オールドラントは恒星レムの第二惑星で、一日が24時間なのは地球と同じですが、一年は なんと765日もある。月は衛星ルナ。

 月は以下の順番。地球と違い十三ヶ月です。

1月 レムデーカン
2月 シルフデーカン
3月 ウンディーネデーカン
4月 ノームデーカン
5月 イフリートデーカン
6月 シャドウデーカン
7月 シャドウリデーカン
8月 イフリートリデーカン
9月 ノームリデーカン
*ゲーム中、ダアトの図書館の本には「ノームリデーク」と書いてあるが、レプリカ編冒頭の日付け記述には「ノームリデーカン」とある。
10月 ウンディーネリデーカン
11月 シルフリデーカン
12月 ルナリデーカン
13月 ローレライデーカン

 一週間は以下の順番。単純に地球の日、月、火、水、木、金、土曜日に置き換えてイメージしてよいと思います。

日曜日 レム
月曜日 ルナ
火曜日 イフリート
水曜日 ウンディーネ
木曜日 シルフ
金曜日 ローレライ
土曜日 ノーム

 一年が765日で十三ヶ月となると、単純に計算して、一ヶ月はおよそ59日になります。一週間は7日なので、一ヶ月はおよそ八週間です。地球の感覚に当てはめると、オールドラントの一ヶ月は大体地球の二か月分ですね。

 日付の書き表し方は、ルークの日記を参照すると以下のようになっています。

23day,Rem,Rem Decan
ND2018

 これは、「新創世暦2018年レムの月レムの曜日23日」という意味になる模様。日本風に直すと、「2018年1月23日(日曜日)」ですね。

 さて、これは物語の始まり、ルークがティアと共に超振動で吹き飛ばされた日の日付でもあります。その後、無事バチカルに帰還して今度は親善大使として折り返し旅立つことになった日の日付は「2018年4月2日(土曜日)」なので、タタル渓谷からの帰還の旅に掛かった時間は二ヵ月半ほど(地球の感覚なら半年くらい)だったことが分かります。

 その後、外殻降下を成し遂げてから一ヵ月後の日記の日付は「2018年9月28日(日曜日)」。親善大使〜外殻降下の旅には およそ五ヶ月掛かっていることが分かります。

 何やら長々と書いてきましたが、問題にしたいのは、ではルークがローレライを解放して旅を終えたのは、それから何ヵ月後なのだろうか、ということです。物語はルークの二十歳の誕生日、成人の儀の日の夜(?)に終わります。物語が始まったとき、ルークは十七歳でしたから、単純に考えるとエンディングは三年後のように思えてしまうのですが、本当にそうでしょうか?

 レムの塔〜エルドラントの旅が、アクゼリュス〜外殻降下の旅よりも短い期間で成されたという気はしませんので、この旅にも同じく五ヶ月掛かっていると仮定します。すると、超振動でタタル渓谷に飛ばされてから全体で十三ヶ月強になる。ちょうど一年ですね。ルークのこの冒険が預言に詠われた「新創世暦2018年」内に行われたものであるのは間違いないので、ルークの冒険はこの年の丸一年を使ったものだったのではないかと想像します。

 さて、それで気になるのは、ルーク(オリジナル)の誕生日は何月なのだろうか、ということです。ルークはローレライの同位体なので、感覚的にはローレライの月(13月)ではないか、という気がするんですが…。

 物語の始まった1月23日、ルークは十七歳で、母のシュザンヌは「成人の儀まで、あと三年の辛抱ですよ」というようなことを言っていました。既に十七歳になって半年以上経っていたなら「あと二年と少しの辛抱ですよ」と言う気がしますので、多分この時のルークは十七歳になって間もなく……つまり、先月(昨年末)の13月に誕生日を迎えたばかりだったのではないかと想像します。

 以上のことから、ルークの生年月はND2000の13月。エンディングはND2020の13月で、ローレライを解放してからちょうど二年後のこと。……だと思うのですが、どうでしょうか。

 

 こんな風に考えてみると、ローレライを解放する最後の戦いに挑んだとき、ルークは十八歳になる直前か、なった直後だったと考えられます。個人的には、多分十八歳になる直前だったのではないかなぁと。ユリアの預言では『聖なる焔の光』はND2018に消滅する……十七歳で死ぬ定めでした。ルークは世界の滅亡の預言を覆しましたが、この時点では、「十七歳で死ぬ」という自分自身の運命に逆らえなかったんではないかと。アッシュの死もそのためだという気がします。

06/01/22

06/04/10追記。三月末発売のエンターブレインの攻略本に物語中の時間経過や歴史についての記載がありました。
それを中心にして、現時点まで二次媒体で明かされた情報から簡易的な年表を作りましたので、宜しければご照覧ください。
>>簡易年表

08/04/21追記。ゲーム中で読める資料や攻略本ではオールドラントの一年は765日だと書いてありますが、ファミ通攻略本掲載のカレンダーが正しいなら、一年は756日になってしまいます。765はゲーム制作会社名”ナムコ”に掛けた数字だと思われるので、それが756日になってしまっているのは、恐らく、最初にカレンダーを作った時点で凡ミスがあったのだと思われます。ご指摘をくださった閲覧者の方に感謝。
>>オールドラントの暦

 

レプリカイオンとオリジナルイオン

 ヴァンとの最終戦では、どのキャラクターを戦闘に参加させ1P操作するかによって戦闘前後の会話が異なりますが、ルークとティアのいないパーティーでアニスを1P操作すると、会話は以下のようになります。

アニス
「さすが総長……」
ヴァン
「レプリカイオンを導師に据えたとき、おまえがこれほどまでに戦えるとは思っていなかったぞ」
アニス
「強くなりたかった訳じゃない。イオン様の役に立ちたかっただけ。 総長にとっては被験者オリジナルの代わりだったかもしれないけど、私にとっては……」
ヴァン
被験者オリジナルと変わらぬ唯一無二の存在か……。そうだろう。あの導師は被験者オリジナルとあまりに違いすぎた」
アニス
「当たり前でしょ。違うんだから! 私は預言スコアが世界を滅ぼすとかそんなこと、ホントはどうでもいい。イオン様やフローリアンや……シンクを苦しめた総長が大っ嫌い!」
ヴァン
「シンクが聞けば不愉快に思うだろうな」
アニス
「それでも私はアンタが大嫌いなの! だから倒す!」
ヴァン
「よかろう。ではそのふざけた人形ごと消し炭にしてくれよう!」

 この会話によって、レプリカとオリジナルのイオンの性格が「あまりに違いすぎた」ということが分かります。といっても、ゲーム中にオリジナルイオンがどんな人間だったのか知らせる描写は他になく、何がどう「あまりに違いすぎた」のかはプレイヤーには分からないのですが……。

 ともあれ、オリジナルとレプリカが入れ替わっても、対外的に全く違和感を感じさせなかったわけですから、表面的な仕草や喋り方、発言の方向は一見同じに見えるもののはずだと思います。と言いますか、同じじゃなければ、ここまで誰にもバレずに入れ替われたのはおかしいです。ルークと異なり、彼は様々な公式の場に出向いていたはず。教団内でも会議など頻繁にあったようですし、キムラスカ王やマルクト皇帝とも面識があったと思われますから。(レプリカイオンはインゴベルト王に親書を届けたとき「お久しぶりです」と挨拶しています。前回会ったのがオリジナルかレプリカかは不明ですが、少なくともオリジナルイオンが導師を継いだ時には各国王と会っていると思うので、王はオリジナルと面識があるはず。)

 簡単に言えば、レプリカイオンはオリジナルイオンの「影武者」なんですよね。ですから、実際の思想や性格が異なっていたとしても、表面的にはオリジナルと全く同じように演技していなければならない。よって、オリジナルイオンの口調や仕草は、レプリカイオンとほぼ同じものだったと私は思います。

 

 ところで、ルークもイオンと同じく「身代わりのレプリカ」でしたが、イオンが生まれてたった二年であれほど人格者然としていたのに対し、ルークは七年生きていてもワガママお坊ちゃまでした。この違いは、多分二つの要因によるものだと思われます。「求められている役割」と「刷り込み教育がなされていたか否か」です。

 レプリカは、基本的に生まれた時は頭が空っぽで、赤ん坊と同じなのだそうです。しかしジェイドによれば、知識や記憶を予め刷り込んでおくこともできるといいます。

 ルークは、何も刷り込まれていないまっさらの状態でファブレ邸に送られました。何故なら、彼に求められていたのは「キムラスカの目を誤魔化し、七年後に死ぬ」ということだけでしたので、変に記憶を刷り込んでおくよりは、むしろまっさらにしておいた方が色々と都合がよかったからだと思われます。そしてその後も軟禁され、自立性を求められることがなかったので情緒が未発達だったのでしょう。(それでも、精神年齢十歳前後には押し上げられていたとは思いますが。)

 対してイオンは、生まれてすぐに「導師イオンとして完璧に振舞う」ことを要求されていました。オリジナルイオンが病死したのは二年前。そしてレプリカイオンの導師守護役フォンマスターガーディアンにアニスが抜擢されたのも二年前ですから、入れ替わったのはオリジナルの死の直後ということになります。いくらなんでも赤ん坊状態のレプリカが翌日から影武者をこなせるとは思えませんので、間違いなく、刷り込み教育が行われているものと思われます。

 ジェイドによれば、一律的な知識を刷り込まれたレプリカは、言われた通りに動くだけの死んだような目の人間になることが多いそうです。けれども、イオンは死んだ目をしていません。レプリカイオンは作製されて二年を経ていますので、もしかしたら二年の間に自我が芽生えて目が生き生きするようになったのかもしれませんが、思うに、そもそも最初の刷り込み用データ自体も特別製だったのではないでしょうか。オリジナルイオンの死は予めユリアの預言スコアに詠まれていました。それを受けてか、レプリカイオンの作製にはオリジナルイオンも積極的に協力していたとのことですから、イオンの細かな(対外的な)思い出まで含めた「刷り込み用の記憶データ」(インストール用ソフト)が、最初から作製されていたのではないでしょうか。

 その上で毎日、(実際にはモースやヴァンの操り人形なのですが)導師として責任ある仕事をこなしてきたので、短期間で精神性も発達したのだと思います。同じレプリカイオンであるシンクが生まれて二年で神託の盾オラクル騎士団の参謀を務めるほどになっていたのも、そうならなければ廃棄されるというギリギリの生活の中で精神が研ぎ澄まされていたからなのでしょう。

 

 しかし、無理に発達した精神は、いびつになりがちです。イオンやシンクはひどく大人びていた一方で、未発達な部分も抱えていたように思います。イオン自身はそれを「僕は感情を殺した」と表現していましたが、つまるところ、「導師イオンらしく振舞う」ロボットのような感じだったのではないでしょうか。彼は常に穏やかでしたが、それは精神が未発達で、感情を上手く動かせなかったからなのかもしれません。

 対外的には、現在のローレライ教団では、大詠師モース率いる保守派に導師イオン率いる改革派が対抗している、とされていましたが、実際にはイオンはヴァンによってその位置に据えられただけの存在でした。イオンが、生まれて初めて自らの意思で行動したのは、ジェイドが密かにやってきて「戦争を止めるための調停役としてご同行いただきたい」と言った時ではないか、と私は思っています。……そして、普通の人間としての感情が動いたのは、ルークとチーグルの森で出会ったときだったのではないかな、と。ルークは、イオンを「導師」「導師のレプリカ」ではない、「ただのイオン」として見ていた、唯一の人間でした。(デオ峠ではそれが裏目に出て、イオンを特別扱いしなかったために仲間たちと決裂してしまうのですが。)

 

 さて。オリジナルイオンは果たしてどんな人間だったのか。これは、実は二次媒体で多少明かされていました。雑誌『電撃PlayStation Vol.341』(メディアワークス)に掲載された、『アビス』のシナリオライターである実弥島 巧女史のインタビュー記事です。(以下引用です。)

預言によって自らの死期を把握していたオリジナルのイオンは、事前に自分のレプリカを作るよう指示していたんです。そして、今から2年前、オリジナルのイオンが12歳のときにレプリカが誕生しました。オリジナルはかなり悪いやつで、当然今のイオンと姿形は同じものの、その性格はまったく似ても似つかぬ人物です。「外殻大地が最終的に滅亡する運命なら、消しちゃったほうがいいよね」という、ものすごい合理的というか、手段を選ばない性格でした。幼い頃から特殊な環境に育ち、預言の教えがすべて自分の中にある彼は、ユリアに対するモースの妄信っぷりが気に入らないと常々思っていたんです。そんなイオンに、ヴァンが「それなら、こうしたほうがいいんじゃないか」と、いろいろと入れ知恵をして……。こうして、2人は同じ目的のために計画を進める同志として、結託するようになります。ヴァンが主席総長の座に納まることができたのも、イオンのサポートがあったからでしょうね。

 ルークやアッシュ、アリエッタは、幼い頃からヴァンに手なずけられ、彼の手駒になるように育てられていましたが、オリジナルイオンもある意味そんな感じだったんですね。(他の子供たちよりはヴァンと精神性が近い、共犯者的関係だったようですが。)ヴァンは「あの導師は被験者オリジナルとあまりに違いすぎた」と言いましたが、それはレプリカイオンをオリジナルと同じようには手なずけることが出来なかったせいなのかもしれません。

06/02/17

06/03/20追記。『ファミ通PS2』vol.210(エンターブレイン)のシナリオライターインタビューに新規情報がありましたので、併せて記載しておきます。

 

07/07/28追記。

『キャラクターエピソードバイブル』(一迅社)と、『電撃マ王』(メディアワークス)連載コミカライズ版「失いゆくすべて」を参照した限り、オリジナルイオンの口調は「一般にはレプリカイオンと同じですます口調、ヴァンたち腹心にはシンク風の皮肉な口調、アリエッタには優しいシンク口調」と判断してよさそうです。

 アリエッタは、イオンが自分にだけ親しい口をきいてくれることを自慢に思っていて、だからレプリカイオンにですます口調で話しかけられるようになったのが辛かった模様。

 

アルバート流剣術の謎

 ルークはアルバート流剣術の使い手です。その剣の師はヴァンで、物語はルークがヴァンに剣術の稽古をつけてもらうところから始まります。

 ところで、この「アルバート流剣術」、設定上、意外に重要と言いますか、考えさせられる部分があります。

 

  1. アルバート流剣術の創始者は、フレイル・アルバートである。
    *フレイル・アルバートは創世暦時代に活躍した人物で、ローレライ教団の始祖ユリア・ジュエの一番弟子と言われ、その剣でユリアを護ったとされる。
  2. アルバート流は盾を使わない独特の剣術で、マルクト帝国領ホド島に伝わる独特のものである。
  3. アルバート流剣術には「シグムント派」と呼ばれる分派が存在する。(以下、「シグムント流」と記載)。
    *シグムント流は、ヴァルター・シグムントによって創始された。彼はフレイル・アルバートの剣の弟子であり、腹違いの弟である。また、ユリアの弟子ともされる。兄とユリアを護るためにアルバート流剣術に独自のアレンジを加えた。
  4. シグムント流は、ガルディオス家とそれに連なる者にしか伝承されず、奥義伝承も口頭でのみ行われる。
    それは、この剣術がアルバート流の弱点を補うためのものであり、広く知られれぱアルバート流の弱点をも世に広めると恐れられたからである。

 

 ホド島にユリア(とアルバート)の子孫が生きていることは、二千年間ひた隠しにされていたことでした。ユリアの子孫たちの受け継いだ『ユリアの譜歌』『第七譜石』『創世暦時代の技術』『ユリアの墓所』の影響力は強大であり、悪用される恐れがあったからです。そして、ユリアの弟子として名を知られるフレイル・アルバートとヴァルター・シグムントの創始した剣術も、世間的には秘匿されるべきものだったと考えられます。実際、シグムント流は限られた血筋の人間に限られた方法でしか伝授されなかったと、ゲーム中ではっきり述べられています。

 ところが、そのように考えてみると、幾つかの矛盾と疑問が湧いてきます。

 一つは、ヴァンが公式に『ルーク・フォン・ファブレ』にアルバート流剣術を教えているということです。『ルーク』はホドの血筋とは全く関わりませんし、それどころか、ファブレ家はホドを滅ぼした憎い仇です。なのに、ホドの生き残りのヴァンは、どうしてアルバート流剣術を指南したのでしょうか? ゲーム中で、ヴァンがファブレ邸に置いて行った『アルバート流奥義書』を入手してルークが新技を習得していきますので、流派を偽っていなかったことははっきりしています。

 また、ガイの正体が明かされる時、ジェイドが「あなたの剣術は、ホド独特の盾を持たない剣術、アルバート流でしたからね」と言いますが、『アルバート流はホド独特の剣術』という認識が世間一般的なものであったとしますと、ファブレ公爵がどうしてそんな剣術を息子に習得させることを容認したかが理解し難くなります。ホドを滅ぼしたのはファブレ公爵であり、彼はマルクト人を嫌っています。『アルバート流はホド独特の剣術』ならば、それを修めているヴァンもホド出身でありマルクト人なのだと、自ずと判ってしまうはずです。どんな剣豪であり、今は中立国家ダアトに属していようとも、誇り高いファブレ公爵がわざわざ敵国人から敵国の剣術を息子に学ばせようとするとは思えません。世間体も激悪です。それくらいなら、大人しくランバルディア流剣術でも学ばせるだろうと思います。

 以上の理由から、私は『アルバート流はホド独特の剣術』ということは、世間的には殆ど知られていなかったのではないかと考えています。であるからこそ、ファブレ公爵は単純にヴァンの剣術を認めて、息子の剣術指南役に任命した。守り役のガイがアルバート流(を装ったシグムント流)の剣を使っても気に留めなかった。……のではないでしょうか?

 では、どうしてジェイドが『アルバート流は盾を使わないホド独特の剣術』だということを知っていたのか、という謎が沸き起こってきますが、これに関する私の推測は二つあります。

 一つは、キムラスカ王国では全く知られていないが、マルクト帝国では一部に知られていたのではないか、という推測。マルクト帝国領ケテルブルクに行くと、「ホドの剣術であるアルバート流の変遷について研究しています」と言っている人物に出会えますから、伝承者ではないのに流派の存在を知る者がいることは確かです。よって、マルクトの軍人であるジェイドは知っていた……?

 もう一つは、ジェイドが個人的にこの流派に関して話を聞いたことがあるのではないか、という推測です。初めてファブレ邸に行った時、ペールと顔を合わせたジェイドが「どこかでお会いしましたか?」などと怪訝な顔をし、ペールが慌てて誤魔化すというエピソードがあります。攻略本の情報を参照するに、実はホドが崩落するまではペールは(ガルディオス家の騎士として)マルクト軍に属する軍人だったのだそうです。それでジェイドとも面識があったということらしい。

 ここからは完全に妄想になりますが、かつて(まだ軍人としては新人だった)ジェイドがたまたまペールの戦いぶりを目にすることがあったのではないでしょうか。そして盾を使わない独特の技術に感心して、「どういう流派なのですか」と訊いた。シグムント流の存在は秘匿されるべきだったので、ペールは「ホドに伝わるアルバート流剣術です」と答えた……。そして年月が過ぎて(ペールの弟子である)ガイの戦いぶりを見ているうち、かつての記憶が甦り、「あれは確かホド独特の剣術だ。ということは、彼は……」と考えるに至ったのではないでしょうか。

 ガイは周囲に自分の流派は(ルークと同じ)アルバート流だと偽っていたと思われますが、実際には、アルバート流とシグムント流の戦い方は結構違います。(設定上は、素人目には殆ど見分けがつかない、ということらしいのですが。)盾を持たないのは同じなんですが、アルバート流は音素フォニムを込めたパンチとキックを織り交ぜた、半格闘とも言うべきもの。対してシグムント流は完全な剣術で、確かに盾は使いませんが、片手に鞘を持ってそれを使ったりもしています。そんな風に違いますので、もしジェイドが単に『アルバート流剣術』というものに詳しかっただけなら、逆に、ガイの戦い方を見て「あなたの剣術はアルバート流でしたからね」なんて言わないのではないかと思いますし、そもそもルークやヴァンもアルバート流ですから、それを手がかりに「ガイはホド出身なのでは?」と考えたりはしないのではないかと思います。ルークがキムラスカ人なのは確かですから。ガイの戦い方がジェイド自身のホドの記憶を濃密に刺激したからこそ、そう考えたのではないでしょうか。

 

 ちなみに、アルバート流の戦い方から見て、私は創始者のフレイル・アルバートはかなり豪快で喧嘩っ早い人物だっただろうと考えています。ヴァルター・シグムントはもう少し慎重で細やかな感じ、でしょうか。

06/07/17



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