魔導物語はちゃめちゃ期末試験

製作・発売/コンパイル(96/09/06 DS12)
WIN95

Disc Station Vol.12
(1996)

Windows95

 満を持して登場した『魔導』の完全新作、かつ本編の正統続編

 しかし、幾つか注意しなければならないことがある。

 一つは、当時のスタッフ(企画・シナリオの堕王(織田)健司氏)が『DS12』において、(「魔導物語3」の正式な続編だそうですが、と問われて)「でも、『4』じゃないから、ストーリー的には続きでも、あくまで外伝だぜ」と発言していること。

 もう一つは、同じく堕王氏自らが、編集後記で「ちょっと違う今回のアルルはDS部の皆に「堕王アルルだ!」とか言われていますが」と書いている通り、これまでのシリーズの流れから見て、物語の方向やキャラクターが異質だということである。

 当時はむしろ、異質である故に新鮮で大好評だったのだが、この時点ではまだそれほど大きくはなかった方向性のズレが、今後堕王氏が手がける魔導系作品でどんどん大きくなっていき、コンパイル晩期になると、「違いすぎる」と一部ユーザーの不満を買うことになっていく。

◆ストーリー

 ボクの名は『アルル・ナジャ』
 魔導学校を目指して旅を続ける16歳の女の子
 旅の途中で ボクをおそってきた 禁断の古代魔法を使う 変態おに〜さん『シェゾ・ウィグィィ』
 なぜだか わからないけど ボクを自分の およめさんにしようとしている 自称・闇の貴公子『サタン』
 これらの ヘンな人たちに 旅をジャマされたりもしたけど…
 サタンのいた迷宮「ライラの遺跡」の最下層で出会った ボクの大切な ともだち 『カーくん』こと『カーバンクル』
 そして サタンが大好きで ボクのことを恋のライバルと 勝手に決めつけている ちょっとタカビーな格闘おね〜さん『ルルー』
 さらに ルルーの忠実なしもべ『ミノタウロス』
 ボクたち 二人と二匹の奇妙なパーティーは 長い旅の末に魔導学校に たどり着いた
 この人が 魔導学校の「マスクド校長先生」
 ボクどこかで 会ったような気がするんだけど…思い出せないんだよね
 マスクド校長先生は 変わったことが大好き!
 ボクたち生徒は そんな先生にいつも 振り回されっぱなし…
 そして 今日も…

生徒A
「僕たち生徒を 全員呼び出して いったい 何をやらせる気なのかなぁ?」
ラーラ
「きっと ろくでもないことなのは わかってるけどね」
かすみ?
「何か いや〜な予感がするぜ!」
生徒B
「オイオイ… どぉでもいいけど… あんた 生徒かぁ?」
かすみ?
「こまかいこと 言ってんじゃねぇぜっ!」
ルルー
「あっ マスクド校長先生だわっ
 ちょっと あんたたち お黙りなさい! お声が 聞こえないでしょ!
 サタン様もいいけど マスクド校長も ス・テ・キ!」
ミノ
「ううっ… ルルーさまぁ」
マスクド
「あぁ… 本日みんなに集まってもらったのは ほかでもない
 そろそろ 今期の 成績を決める「期末試験」を 行おうと思う!
 みんなが 日ごろ学んでいる「魔法」を駆使して 私が作った「すぺしゃるダンジョン」を抜ける『迷宮抜け期末試験』を!
 いちばん下の階まで行って 早くこの学校に もどってきた生徒ほど 良い成績をつけてやるぞ!
 場所は みんなわかるな!
 よぉ〜し じゃあ 位置についてぇ…」
ラーラ
「うっそぉぉ〜 いきなり 始まっちゃうワケぇ?」
生徒A
「僕 ダンジョン 苦手なんだよなぁ〜」
ルルー
「サタン様… 必ずや ルルーは この試験で いい点を取ります! そして 一人前の 魔導師になって あなたを 振り向かせてみせますわっ!
 さぁ 行くわよっ! ミノっ!!」
ミノ
「は…はいっ ルルーさま」
マスクド
「よぉぉぉーーーい  ドンっ!!」

 突然 始まっちゃった『迷宮抜け期末試験』だけど…
 ボクたちも がんばらなくっちゃ
 ねっ カーくん!
カーバンクル
「ぐー」
 じゃあ そんなワケで…
 アルル 行っきまぁ〜す!!

 

 早速クラスメート達と競って出発したアルルは、順調に問題を解いていく。一方、魔法の使えないルルーは力技で強行突破。ついに最深部にたどり着くと……そこに待っていたのは何故か(当然?)サタンだった。
「サタンっ、なんであんたがここにいるのよ!」「いや、何を言っているんだねアルルくん。私だよ、マスクド校長だ。ほら、このマスク……(しまった、着け忘れた!)」
 あくまでケンカ腰のアルルに対し、ついにサタンもキレて勝負になる。ところが、そこに割り込んでくるルルー。愛しのサタン様と戦うなんて許さない、と今度はルルーと戦う羽目に。しかし、二人の力の激突は思いがけない力を生み、サタンが封印していた謎の迷宮への空間が開いてしまうのだった。まだ試験が終わっていないと勘違いしたアルル達は、その危険な迷宮へと飛び込んで行ってしまう。

 この迷宮に掲げられたプレートは全て古代文字で書かれてあり、アルルには読めない。だが、道に落ちていた綺麗な腕輪をはめると読めるようになった。そこにはこう書いてあった。
「禁断の爆裂魔法ジュゲムを、この地に封印する……」
 よーし、ジュゲムを手に入れてみせるぞ! 俄然張り切るアルル。
 と。イライラした様子で何かを探しているシェゾと鉢合わせた。さっきアルルが拾った腕輪は彼のものだったのだ。腕輪を勝手に使われていた上、いきなりヘンタイ呼ばわりされたシェゾは、怒ってアルルに勝負を挑んできた。

 シェゾを倒した後、ヒーリングをかけてやると、シェゾは状況の分からないアルルに色々と説明を与えてくれた。ここは古代の遺跡で、世界を意のままに出来るとさえ言われる秘宝が眠っていること。そして自分はそれを探していること。アルル達は空間の歪みからここに紛れ込んだのだろうということ。つまりこれは試験の続きではないこと。自分がこの遺跡に潜ってから二週間以上経過しており、そう簡単には外に出られないだろうということ……。
 勝負には勝ったが、やはり人のものだから……とアルルが腕輪を返そうとすると、シェゾは「それはお前にくれてやる。お前に負けた……自分自身への戒めだ」と言って去って行った。

 ルルーとの厳しい競争の結果、アルルは爆裂魔法ジュゲムを獲得! 古代文字で書かれたヒントを読みながら順調に謎を解いていく。一方、文字の読めなくなったシェゾは謎を解くことが出来なくなってしまった。彼は力任せに封印や仕掛けを破壊して先に進んでいく。
 そしてついにたどり着いた最終フロア。ここには「秘宝を手に入れるには四体のガーディアンを従え、聖衣ホーリークロスをまとわなければならない、悪しき心の持ち主は聖衣をまとえない」と言うようなことが書いてあったのだが……。

 相変わらず、シェゾは力任せに封印を破っていた。そこには恐るべき秘宝のガーディアンがいた。このガーディアン、ファントム・ゴッドの前に、ついにシェゾは倒れてしまう。それを見ていたアルルとルルーは助太刀に入るが、彼女達もたちまち倒されてしまった。
 このまま、全員殺されてしまうのか……?
 その時、何を思ったかシェゾがアルル達を庇うように前に飛び出た。

「闇の……剣よ……。うっおおおぉぉぉあああぁぁああー!! 切り裂けっ!」

 シェゾは魔剣で空間を切り裂くと、その中にアルルとルルーを押し込んだ。

「ははっ……なぜなのかな……。闇に魅せられた このオレが……シェゾ・ウィグィィ(神を汚す華やかなる者)たる このオレが……お前たちを助けるなんてな………。ハンッ! このシェゾ様にも、ヤキがまわったもんだ……ぜ……」
「………シェゾ!? こんな時に何言ってんの? は、早く、キミもこっちに……」
「残念ながら……もう……そんな体力は………残ってないんでね……」

 ファントム・ゴッドの雷が閃き、アルル達の目の前でシェゾは跡形もなく消滅した。

「シェゾォォーっ!!」

 

 目の前でシェゾを殺され、ルルーとははぐれ……。不安や悲しみに押しつぶされそうになりながら、アルルは暗黒の空間をさまよっていた。
 そんな彼女の前に、もう一人のアルルが出現する。

「キミは………ボク……な……の?」
「…………………………………。
 ………そう! ボクはキミ……もうひとりのキミ………アルル・ナジャだよ。
 分かりやすく、少しドラマチックに言えば、キミの分身……『ドッペルゲンガー』ってやつになるのかな?」

 ドッペルゲンガーはアルルに賭けを持ちかける。即ち、このファントムゾーンに潜んでいる自分を探し出し、勝負に勝てば元の場所に戻してやると言うのだ。
 賭けに勝つと、ドッペルゲンガーはアルルに魔導力を分け与え、強力なアイテムを授けた上にファントム・ゴッドに勝つ方法を助言する。

「キ……キミはっ! 本当は一体誰なの?」

 アルルの問いに答えることなく。

 こうして古代迷宮に戻ったアルルは四体のガーディアンを調伏して聖衣を手に入れ、更に再会したルルーから最強の魔導杖を与えられた。
 シェゾの仇を討つべく、アルルはファントム・ゴッドに立ち向かう。

 

 ―――アルル・ナジャ………この世の全ては、因果律によって定められている………。悲しいけれど、貴方も例外ではないの………。
 そしてあの『ルベルクラクを持つモノ』 カーバンクルの庇護下にあるものとして……貴方を取り巻く運命は常に数奇なもの………。貴方はまだ……自分では気が付いてはいないけれど……。貴方がそれを望むにしろ望まないにしろ……………貴方は秘宝の元へ導かれる………。
 ……でも……その先にあるものが………その後の貴方を……そして世界を………どう変えていくのかは……アルル……………貴方自身が決めること………。
 世界というあまりに重い鎖に繋がれ、運命の糸を紡ぎ続ける……そんな私と同じ道を………同じあやまちを犯してはいけない……。
 ……願わくば………あの子が因果律によって定められた自らの運命の糸を、断ち切らん事を……………。
 アルル・ナジャ……………………………私の……………

 

 本編の正統続編……とはいえ、これはオリジナル魔導『1-2-3』の続編ではない。ゲームギア版『Ⅱ』『Ⅲ』とメガドライブ版『Ⅰ』の続編であるというのが正確なところだと思う。登場キャラ、その性格、世界観等から考えるに。

 これまで敵として登場してきたシェゾ、サタン、ルルーらが味方に転換している。彼(彼女)らはそれぞれアルルと戦うが、しかし様々な場面でアルルを助けている。立場的に敵とは言えなくなっている(今となっては同じ学校の生徒と教師、クラスメートだ)サタンやルルーはともかく、シェゾのそれはかなり劇的。何しろ命を捨ててアルルたちを助けてしまうのだから。アルルもそれに応え、彼の仇を討つために命をかけて最後の戦いに挑む。このゲームでシェゾの人気が爆発し、DS出張版にシェゾさまファンクラブが設立されたのは余談である。

*念のため。どうも、未プレイの人の中には誤解をする人が多いようなので書いておくが、このゲームにおいて、シェゾは一度も死んでいない

 

聖衣をまとったアルルとドッペルアルル

 物語の背景に新たな展開が付け加えられた。かなり大きな広がりを感じさせる物で、伏線張られまくりである。ここから、後に再編成された――これまでの魔導とは全く異なる世界観と設定を持つ、新たな『魔導』の流れ、真魔導設定が生まれたのだ。

 といっても、キャラ版権の問題もあり、今後この流れの続きがゲームで作られることはないようだ。この流れの設定で書かれていた小説として、ファミ通文庫に小説『真・魔導物語』シリーズがあったので、気になった人は探してみるといいだろう。

 

 私が初めてプレイした『魔導』。長年ゲームとは無縁だった私には、可愛くてよく動く絵も、よく出る声も結構カルチャーショックだった。ちなみに最初に触ったのは アスキーの雑誌『Login』におまけで収録されていたヤツで(DS版の一年後に発売)、完全収録なんだけどセーブ出来なかった。(当時の私の知識じゃ無理だった。)

 ……おお、クリアしたとも。頭から終わりまで、ノーセーブでな!

 そんなわけでハマってここにいる。

 

 OPアニメがむちゃくちゃかっこいい。でも最初見たとき「キャラデザがゲーム本編とは全然違う! この不統一さは何事!」と思った。

 ちなみにこのOPアニメは、コンパイルから発売されていたビデオ『DSアニメ総集編'98』の巻末に収録されていた他、ややリニューアルされた完全版(?)がCD-ROM画集『コンパイルギャラリー123』に収録されていた。

 

 このゲーム前後(正確には『ぷよ通決定盤』)より、コンパイル自社のオーデイションで選ばれたアルル、ルルー、シェゾらの専属声優が声をあてはじめた。後、コンパイルが和議申請して契約が解除されるまで、それらキャラの全ての声を彼女達が担当し、ユーザーのイメージを固めていった。

 個人的にはシェゾ役の大塚雄史郎氏の声が好きだった。

 

 このゲームは、2004年5/27よりしばらく、インターネット上でダウンロード販売されていたが、アイキの消滅と共に販売サイトも消えた。

魔導物語Ⅰ炎の卒園児

製作・発売/NECアベニュー(96/12/13)
PCE

魔導物語1 〜炎の卒園児〜 【PCエンジン】

 『魔導物語1』のリメイク作、NEC版。注意すべきことには、コンパイル製の『魔導』ではない。現時点では、幼児アルルの活躍する最後のゲームである。

 私にとって最も謎だったゲーム。コンプリートコンパイルにも載っていないし(コンパイル製じゃないから仕方ないか…… 汗)、どんなゲームだったとかという噂さえ伝わってこなかった。一時は実在を疑ったほどである。

 私がプレイした2000年当時、市場ではかなりのプレミアがついていた。その上、プレイするにはPCエンジン本体に加えてアーケードカード(PCカードみたいなもの)が必要なのだから、恐らく、全魔導中最も「高価くつく」ゲームの一つだっただろう。

◆ストーリー

「みなさ〜ん、今日は魔導幼稚園の卒園試験の日です。でも、今年卒園試験を受けられる優秀な人は、アルルさん一人だけです。先生はとても残念です。でも……」
「がんばってね、アルル!」
「合格しろよ!」

 沢山の友達の笑顔と声援に励まされて、六歳のアルルはたった独り、試験の行われる魔導の塔に挑んだ。この塔の中にあるという三つの「魔導球」を手に入れ、塔の外に出る事が出来れば合格だ。
 塔の中には、魔物はもちろん、ヘンな人も沢山いた。金銀財宝を集めているイケイケなお姉さん。着せ替え人形で遊んでいるおじさん。巻き物を持っている三人の怪しいお坊さんや、自称「魔導界一強い男」忍者ハッタリ半蔵。ヘンな魔物も沢山いた。お茶が無いと生きていけないとのたまう「屍」スケルトンT。美少女コンテストに燃える(?)半竜お姉さんの蛟人コウジン。子供のおやつを取って食べちゃう、牛の角としっぽを持った美女ベヒーモス。
 数々の苦難を乗り越え、ついに三つの魔導球を手に入れたアルルは、やっと塔の外へ……。

「おめでとう、アルル!」「合格おめでとう!」

 だが。アルルを出迎えた友達の姿が、突然氷のように溶け、腐って崩れ始めた。ショックのあまり、アルルは泣き出してしまう。

『アルル、アルル……』

 その時。三つの魔導球が光り輝き、魔導球に宿る三人の精霊が現れた。

『これは腐導師があなたに見せているイリュージョンです。このイリュージョンは くじけてしまいそうなあなたの心の弱い部分が見せているものなのです。
 アルル、あなたはあと一歩のところまできて くじけてしまうような子だったのですか? あなたは卒園試験に合格して、先生やみんなに会いたいのでしょう?』
「う、うん……」
『では、思い出すのです。この魔導球を手にした時のことや、塔の中で あったことを』
「思い出す?」
『そうです。何のために この魔導球を手に入れたのかを』
「何のため、って……。
 ――そうだった。
 おっかないモンスターに会っても、色んな罠にひっかかっても。どんな時でも、夢を叶えるまで、最後まで絶対あきらめないって。
 そうだ。ボクは卒園試験に合格して、先生やみんなにまた会いに行くんだ!」
『どうやら、思い出したようですね……。では、あとはどうすればよいかも、もう分かりますね?』
「うん! ボク、ゼッタイにくじけないよ。必ず最後までやり抜いてみせるから。だから、精霊さん。ボクを見守っていてくれる……?」
『うふふっ。私達は、あなたの心の中にもいるのです。不安になるのは、あなたが、あなたの心の中にいる私達の存在を忘れてしまっているから。だから、いつでもあなたを見守っていますよ』
「……そうか。そうだったのか!
 ようし、その腐導師ってヤツを倒して、卒園試験に合格したボクを、先生やみんなに見てもらうんだ!
 精霊さん、ありがとう。ボク、もうゼッタイにくじけないよ。そして精霊さんのこと忘れないよ。だって、精霊さんは、いつもボクの心の中にいてくれるから……」

 立ちあがったアルルの前に立ち塞がる最後の敵、腐導師。アルルは、果たして試験に合格できるのか?

 

 同時期頃に発売された他機種版に比べると、かなり絵がクリアで鮮やか。画面は沢山のリボンで彩られており、通常の『魔導』の画面周りの宝玉――経験玉の代わりに、リボンの色によって取得経験値まで表現されている。

PCE魔導アルル 魔導装甲装着前 アルルの衣装はオリジナルで、やはりリボンが沢山付いており、ちょっとチマ・チョゴリにも似たスモックの上に白いヒラヒラしたポンチョ風マントと豪華な装飾の青い装甲をまとっている。紐飾りがどことなく和風で可愛い。個人的には、幼児アルルの衣装の中で一番好きかも。

 ついでに、方向を指し示すアイテムは他機種のような宝石ではなく、宝石のはめ込まれた「魔導メダル」になっている。MD版の渾天石もこれに似ていたが、かなり見易くて便利だった。

 

 フルボイスで、殆どのイベントに声が付いている。アルルの声優は三石琴乃。スケルトンTが千葉繁で、幼稚園の先生と魔導球の精霊が井上喜久子、石像や怪僧が青野武……かな? あとよく分からん。(どこにも声優名が表示されてないのは何故なのだろう……。)基本的にPCエンジンの『ぷよぷよCD』と声優は同じらしいが。

 これら声の演技を強制的に聞かされる事になるイベントシーンの脚本を書いた人は、きっとドリフが好きなのだろう。キャンセルできないのでかなり辛い…PCE魔導の敵キャラたち。
左から、ハッタリ半蔵、ベヒーモス、Dアルル、コウジン

 

 沢山の、このゲームにしか登場しないキャラクターが存在する。そこはかとなく世界が外れているような気もするが、逆に言えば自分が『魔導』という作品にいつのまにか枠をはめ過ぎていたのだと気付かされた。なお、どうやらそれらの魔物、そして一部のアイテムは一般公募でデザインやアイデアを募ったものらしい。当時の事は知らないので正確なところは分からないけれど。

 

 かつてのオリジナルの『魔導1』において、アルルを先に進ませる最大の原動力は「友情」だった。友達の声援を受けて試験に挑むのはもちろん、ダイアキュートやプレインダムド等の魔法も、友達との関わりの中で習得されるものだったのだ。だからこそ塔から出ようとしたとき、友達が腐る(魔物化する)幻を見せられるのであり、それを乗り越えるのが最大の試練になっていたのだと思う。

 最初のリメイク作であるゲームギア版では、その「友達」をカミュというキャラに収束し、象徴させていた。カミュは自称「ライバル」だが、アルルと競い合うことで彼女を合格に向けて引き上げていく。最後にはアルルを庇って倒れ、消えてしまうわけだが(彼もまた、試験用に作り出されたイリュージョンだったのだ)、彼の存在がゲームギア版においてのアルルの心の支えであり、原動力だったのは間違いない。

 しかし、続くSFC版やMD版になると、「友達」の意味は希薄になり、アクション性、コミカルさの方が重視されていくようになったと思う。「友達」よりは「ライバル」の方が重視される感じになったというか。結果として、友達がおかしくなってしまう幻を見せられる、というエピソード、そして友達に魔法を教えてもらう(みんなに支えられて先に進んでいく)というイメージそのものが消えていったわけだ。(『はなまる』には友達が石に変えられた、というエピソードはあるが、これが最終試練にはならなかった。)

 しかし、このPCE版ではその辺りのテイストがほぼそのまま残されている。

 

 残されたテイストといえば、他機種のリメイク版では、アルルの可愛らしさ、幼さが前面に出されたのに対し、ここでは「凛々しさ」が前面に出され、その面でもオリジナル魔導のテイストが強く残されていると感じた。

 まだこんなに幼いのに「だからこそ凛として、勇気を奮い起こさなければ」と言える、そんなアルルの精神。コンパイル晩期の魔導では忘れ去られかけていた、けれど大好きだった彼女にまた出会う事が事が出来て、自分的にはかなり嬉しかった。

 

 それはそうと、このゲームの取扱説明書は、ここで紹介している全ゲーム中 間違いなく最下位、最低だ! キャラ紹介等の楽しいおまけがないのはまだしも、確実に校正作業してねぇと断言できるほどの誤字の嵐なのだ。ちなみに「ももも酒」は「ももみ酒」、「イダテン草」は「イダテンん草」だよ。

 ………いや、誤字というより……。

 生まれて初めてワープロを使った人の作った作例をそのまま出したような感じ、といったらお分かりだろうか。ふりがなとして表示されるべき文字がそのまま漢字の後ろにべたっと書かれてたりとか。

 ちなみに、一応ゲーム攻略のヒントなども書かれてあるのだが。

魔導の塔の地下3階は、床古を使って道を作ってクリアーするんだ

 …………………。

 この取説をごく真面目に読んだよい子は、永遠にクリアーできないと見た。何故なら床古(ゆかふる、とご丁寧にふりがなまで振ってある)なんてアイテム、存在しないからだ。「床吉」ならあるケドね。それとも、ゲームの中で表示されるアイテム名の方が誤字なのか? ついでに、ゲームの中では「塔」を「搭」に間違えてる箇所がやたらと多かったが。  

 床吉を使い、卍の形に床をはって石盤をはめ込む謎解きは最後の難関。かなり難しい。作業そのものは簡単なのだが、「それ」に気付くまでに結構……。私は二時間ほど迷ってしまった。おまけに、四つ目の石盤がはめ込めなくなり、クリアできなくなるバグがあるそうだ。 

 

 ところで、このゲームには「魔物と仲良くしよう」というコンセプトがあったりする。たまに魔物が話しかけてきたり、アイテムを差し出して「許してください」と言ったりするのだが、これを無視して戦闘を強行すると、「心の優しさを象徴する赤い魔導球」が輝かず、最後のフロアへ行くためのドアが現れない。コンパイル晩期の『魔導』はとにかく「魔物だって人間だってみんな仲良し、友達さ!」というコンセプトを打ち出していたのだが(『アルルの冒険』、SS版『魔導』)、このゲームはそのさきがけであったのかもしれない。

 オープニングデモは、アニメブーム真っ盛りの時期に作られたこともあってか、当時のゲームとしては結構凝っていて、綺麗……なのではないだろうか? かなり長い尺を取ってアルルとドッペルアルルの対決シーンが描かれており、とてもかっこいいのだが、だからといってドッペルアルルが大活躍するような事は全然無いのだった。――あれ?

 しかし、階を移動するたびにいちいちかなり長いロードシーンになって、真っ黒い画面でカーバンクルが踊りまくるのは、なんとかならなかったのだろうか……。(ゲームの流れがしょっちゅう分断される感じで嫌だった。) MSX-2版並みの読み込みの遅さだよ……。

 

///このゲームをプレイし項目を書くにあたっては、清老頭さんに大変なご厚意をいただきました。有り難うございました。///

ルルーの鉄拳春休み

製作・発売/コンパイル(97/03/06 DS14)
WIN95

Disc Station Vol.14
(1997)

Windows95

 これはRPGではない。マルチエンディングのアドベンチャーゲームである。タイトルにも『魔導物語』を冠していない。だが、物語的には『はちゃめちゃ期末試験』と強い連続性を持つため、ここに書いておく。

◆ストーリー

 私(わたくし)の名は『ルルー』
 天下無敵のナイスバディをほこるピッチピチの18歳よ!
 この方は『サタン』さま…
 見てのとおり とってもすてきな方よ…
 2年前にアブないところを助けられてから ずっと…
 私は『サタン』さまの愛の と・り・こ
 このウシは『ミノタウロス』
 見てのとおり ずうたいばかりでかい ただのウシよ
 2年前にアブないところを助けてやってから ずっと…
 このウシは私の忠実な し・も・べ
 …ってところかしら?
 そんでもって このチンチクリンな娘は『アルル・ナジャ』
 自分のことを『ボク』なんていう ちょっと変わったコよ
 このコのとりえといえば そうねぇ…
 ヘナチョコな魔法が ちょっとばかり使えることくらいかしら?
 でも なぜだか『サタン』さまの妻になる証となる『カーバンクル』(上の絵の黄色いヤツね)は このコといつもいっしょなのよね

 現在 私は魔導学校で この『アルル』といっしょに毎日魔法の勉強をしているのだけど…この私には いまひとつ魔法はむいていないようだわ…
 でも いいの! 私にはこの 無敵の拳(こぶし)があるのだから…

 あらっ? 『マスクド校長』が みんなをお呼びになってるわ
 『マスクド校長』も『サタン』さまほどではないけれど なかなかイイ線いってるわね
 でも… 少し変わった方だから また何か よからぬコトを考えられたのでは ないかしら?
 この前は『校長すぺしゃるダンジョン』という迷宮で 期末試験があったし(くわしく知りたいという良い子はDS12号を買いに書店へGOよ!) あげくのはてに 私と『アルル』だけは『もっとすぺしゃるダンジョン』まで追試で 行かされたのよね
 そういえば 明日からは春休み…か…
 ううっ… なんだか イヤな予感がするわね

マスクド校長
「よおしっ! みんな集まったな
 いよいよ 我が魔導学校も明日からは楽しい春休みだが…楽しい楽しい春休みの『課題』もしっかり待ってるぞぉ!」
 ほぉ〜らね! イヤな予感が当たったようだわ
 まぁ いいわっ! たとえどんな課題が出ようとも 私のこの無敵の拳と美貌と気合で乗り越えてみせるわっ!
 『サタン』さまにふさわしい究極の女王になる その日までっ!
 さぁっ! この私の華麗な大冒険の始まりよ!
 オ〜ッホッホッホッホッ・・・

 

 こうして敢行された春休みの課題。マスクド校長が用意したそれは、生徒各自に好きな封筒を引かせ、中に書かれているテーマをこなすというものだった。さて、ルルーの課題は……?

不思議の国のルルー編

 課題入りの封筒をいきなり覆面男に盗まれてしまった。男を追って木のうろに飛び込むと、そこは不思議の国。そこの住民はみんなルルーの知った顔なのだけれど、どうやら別人らしいのだ。
 そこには豊かな自然があったが、異変が起こり、少しずつ荒れ始めていた。
 幼い頃 大好きだった祖母。大事なオルゴールをくれたのに、誕生日に来てくれなかったのが悲しくて、苛立ち紛れにそれを壊してしまった。だが、実はその日、祖母は危篤だったのだ。このことはルルーの心に傷になって残ったままだったのだが……。
 その祖母が教えてくれた自然を愛する心を思い、ルルーはこの世界を元に戻そうとする。ところが、そこにあの覆面男が現れ……。

食材を求めて…編

 あぶりだし(?)で得た課題は、究極の食材を探せ、というもの。勝手に「究極のカレーを作れ」という課題に頭の中で転換させてしまったルルーは、究極のカレーの食材を譲ってもらう代わりにもももの店でバイトを始めるが……。

5種の神器編

 課題入りの封筒が湖に落ちてしまった。そこで友達のいない人魚のセリリに「なかよしカード」を渡されるという寒い体験を乗り越えながら、ルルーは「5種の神器を集めろ」という課題に取りかかる。神器を持っているのは何故か昔話の主人公ばかり。そのくせ、いざ会いに行くと「俺が浦島たらおだぁー!」とか言いながらすけとうだらが出て来たりするのだった。さて、最後の神器はどこに……?

 

 それぞれの編で数パターンの展開と結末がある。全部で35種類……かな?

 不思議の国のルルー編の、戦闘がないパターンのハッピーエンドで、なんか泣けちゃったっけなぁ。

 食材編は、ウィッチとの掛け合いが見物。ルルーの鉄拳春休み

 でも一番好きなのは神器編。『魔導R』でルルーを誘拐した伯爵と再び戦う話なのだが、スタンダードにアルルと立ち向かう話では最後まで諦めないルルーの強さとしたたかさが見れるし、シェゾと立ち向かう話では、ホントにこの二人の掛け合いが面白い。お互い全く遠慮なしにぽんぽん言い合うからねぇ。ルルーの非常識さ、もとい無敵のパワーが最も発揮されるのはシェゾと組んだときだろう。しかも、実はルルーには隠された魔力がある……? という結末。ミノタウロスにおんぶしてもらって帰る結末もほのぼのしてていい。

 だけど、やっぱりルルーといえばサタンかな。というわけで、ベストは一人で伯爵と戦って、最後にサタン(マスクド校長)に空を飛んで送ってもらって幸せな結末……これだろう!

 

 ルルーがホントにいい子で、私はこのゲームでルルーが好きになった。えらくカラッとしていて、アルルに嫉妬する女……というイメージからくるような陰湿さが微塵もないのだ。破天荒でメチャクチャで面白いし。

inserted by FC2 system