■優曇華の花の話

 みなさんは、優曇華うどんげの花をご存知でしょうか。

 それは、インドの想像上の花だといいます。正式名称は優曇波羅華うどんはらげ――ウドゥンバラ・プシュバ。三千年に一度花が咲き、その時にはとてもよいことが起こる――如来菩薩や金輪明王・転輪聖王(立派な王様)が現れるのだそうです。このことから、日本では通常「滅多にない吉祥」という意味の言葉として使われています。

 さて、この優曇華の花ですが、実は想像の花ではなく実在のものらしい――少なくともモデルが存在していたようなのですね。ビックリです。それはインド原産の桑科イチジク属のフィクス・グロメラタで、葉は長さ十〜十八センチの先の尖った楕円形で牛のエサになり、実は長さ三センチほどの倒卵型で食用となる。(おいしいのかなぁ?) 花は小型で、壺状の花托に包まれて見えないため、「滅多に花を見られない植物→三千年に一度開花→花を見ることが出来たらイイことがある」とされたらしいのです。

 伝説だけ聞くと、大変神秘的で大きくて綺麗な花のような気がするのに、実は小さくて目立たない花だったなんて。現実なんてこんなものなのかと思いますが、少し残念な気がします。

 ところが、昔の人もそう思ったんでしょうか。調べてみると、”優曇華”と呼ばれている花って、結構色々あるんですね。これまたビックリ。

 

優曇華と呼ばれている花

 

 ところで、私にとっての”優曇華の花”は、これら植物の花のことではありませんでした。今まで二回ほどそれを目にしたことがありますが、それはとてもとても小さくて、葉などはなく、しかもアルミの門扉などから生えていました。「これが噂に聞く優曇華の花という奴だろうか」と思い、なんとも興味深く感じたものです。

 それは、虫の卵なのです。

 日本では、クサカゲロウの卵のことも”優曇華の花”と呼ぶのでした。小さな短い糸の先に白い虫の卵が一つ付いていて、それが壁などにまとめて毛のように生えています。(一、二本だけのこともあるようですが、私が見たものは毛のように複数生えていました。)これは三千年に一度しかお目にかかれないようなものではなく、ごくありふれたものらしいです。それにしたって小さいのでそんなにしょっちゅうは目に付きませんけど。

 面白いことに、昔はこの優曇華の花が咲くと悪いことが起こる、と言われていたようです。火事になる、病人が出るなど。つまりは、虫の卵が付くほど家を汚くするな、という主婦への戒めなのでしょうね。しかし、元のインドの伝説からするとまるで意味が反対になっている上、規模もなにやら小さめになっていて、おかしな感じがするのでした。



02/07/20

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