注意!

 

DRAMA CD VOL.3 TALES OF THE ABYSS

脚本:金月龍之介/音楽:関美奈子/演出:鳥島和也/スペシャルサンクス:実弥島巧/フロンティアワークス

『アビス』ドラマCD第三巻。

今回はエピソードがぎゅーっと沢山詰まっていて、設定が難しくて、説明ナレーション多いし、一回聞いただけだと話が理解できませんでした。←あほぅ。でもマジ。
ともあれ聞きでがあって大満足。はふ。


前巻の感想に、ルークが変わりたいと思ったのは自分の主体性の乏しさをティアに指摘されたからなのに、その原作エピソードがカットされていて残念だったと書いたのですが。そのエピソードは(変形してますが)今巻の冒頭に入ってました。
うっわ。こういう構成になってたのかぁ……。そんなコトとは露知らず、浅はかな感想ツッコミを書いてしまいました。
他にも、Vol.1の感想で、ジェイドがタルタロスの乗務員たちに「ごきげんです♥」と言うのは、真面目にするべき時はする印象だったので意外だったみたいな感想書いてたら、今巻では繰り返しのシチュエーションで、こんな風に変形されて入ってましたし。

兵士「音機関、全て異常なし」
兵士「進路に障害物、敵影の反応なし」
兵士「タルタロス、G7地点を通過しました。アブソーブゲートには翌朝に到着の予定」
兵士「師団長、お言葉を」
ジェイド「ごきげんです♥ ……と言いたいところですが。気を引き締めていきますよ」

むぅ。やはり大佐は真面目にするべき時はする人だったのですね。見たか! それでこそ俺のジェイドだ!!
ティアの生まれの話なんかも。なんか違う設定になってるっぽいなぁと思って突っ込み入れてたら、今巻でちゃんと原作に沿った説明が入りました。詳しい説明は後に回してるだけだったのね。

あたかも、「最近の天気予報はまるで当たらない。その理由は恐らくこうでああで」などと得意げに語った翌日から連日バッチリ予報通りになったかのような気まずさを感じます。(苦笑)
ちゃんと完結するまで感想は待ってればいいんだろーなぁとも思いましたが、これも発売直後の空気って奴ですよと開き直りつつ、今回も浅はかな感想を書いてみよーと思います。きっと最終巻を聴いたら、また『アチャー』と思うんでしょうけど。


さて、以下はネタバレ満載な重箱の隅つつき。異様に長くなって途方に暮れましたがそのまま掲載。ネタバレ、長文が嫌な人は読まぬが吉。




前巻の終わり方が実に明るかったので、今巻の暗い始まりには驚きました。しかも、ルーク、ティア、ガイがジェイドに従ってエンゲーブの人々を戦場横断させる、いわゆる戦争イベントからの開始だったので二重にビックリ。えええ普通はセントビナー救出作戦の方を選ぶだろうと思いましたが、全体を聴き終わってみると、なるほど、アルビオール関連のエピソードを丸々カットするためなのか。(セントビナー救出作戦をやると、どうしても行かなければならない場所と出さなければならない人物が増えてしまう。)

ティア「残り85名。随分減ったわね」
ジェイド「被害は予想の範囲内です。むしろ十数名で済んだことを、幸運に思うべきでしょう」
ルーク「幸運って……おい、ジェイド! そんな言い方ないだろう」
ジェイド「ああ〜。そういえば、あなたもいたんでしたっけね。『親善大使』殿」
ルーク「……っ」
ガイ「なあ、ジェイド。ルークはルークなりに変わろうともがいている。だからこそ今回の救出作戦にも参加を志願したんだ。あんただって、その気持ちを認めたからこそ」
ジェイド「認めた。私がですか? いやー、そういう捉え方もありましたか。単に兵隊は多いに越したことはないというだけのことだったんですがね」
ルーク「俺を許せないってのは……」
ジェイド「許すも何もありませんよ。それに言及できるのは、アクゼリュスの人々だけです」
ルーク「だから! だから俺なんとかしたいんだよ! この村の人たちだけでも! アクゼリュスを滅ぼしたのは俺なんだ!」
ティア「落ち着いて、ルーク。気持ちは分かるけど……」
ルーク「分かんねぇよ! ティアにもみんなにも! 分かんねぇって!」
ティアいいかげんにしなさい! 民間人が見ているでしょう?」
#ハッと息を飲んで、ルークは口を閉ざす
ルーク「あ……。俺……」
ジェイド「気が済みましたか? 役に立てとは言いませんが、足を引っ張ることだけは慎んで下さいね、『お坊ちゃま』。――それでは」
#ジェイド、立ち去る
ルーク「俺……また自分のことばっかり……」
ガイ「ルーク……」
ルーク「どうして俺ってこうなんだ。くそっ! 自分が嫌になる」←半泣きで吐き捨てる

とはいえ、以上のように、内容的にはセントビナー周りのエピソードも混ぜてありまして。セントビナー救助活動中にディストが妨害してきて子供が襲われ、ルークが身を挺してそれを庇う、原作ではあまり目立たなかったアレを核にアレンジして膨らませ、アラミス湧水洞での『贖罪』に関する会話、セントビナー崩落後に取り乱したルークをジェイドが叱るエピソード、更に、例の主体性の無さを指摘されたルークがしゅんとなるくだりを、指摘主をジェイドに変更して組み合わせてあるのです。

 村人を連れたルークたちは、ローテルロー橋に差し掛かります。ここを突破しなければ避難は完了できない。けれど、橋は百人の神託の盾オラクル兵に見張られています。作戦会議の席で、ルークはティアに譜歌を歌ってもらえば無血で突破できると提案しますが。

ジェイド「いいところに気がつきましたねぇ。後は、譜術で民間人の治療に当たっているティアが、極度の疲労状態であることに気付けば満点です」
ルーク「あ! そ、そうか。……うん。ごめん。俺……
ティア「……。大佐。陽動作戦を提案します」
ジェイド「同意見です。私が出ましょう」

頑張るルーク。でも何の役にも立たない。ジワジワと殺されていく村人たちを守れない。作戦は愚かで通らない。有能な周囲の人々と比較すると更に惨めです。
変わろうと思って、突然力ある存在になれるわけじゃない。やっぱり無力で役立たずで…好かれなくて。上手くいかない。原作ゲームでは、カタルシスを追求せねばなりませんし、ルークが断髪して心を入れ替えると、後はかなりとんとん拍子に上手くいって手柄を立てることが出来るんですが。でも現実的にはこうだよなぁ、と思いました。なんか泣けた。
作戦会議の結果、ジェイドを囮とし、その隙に村人たちを率いて橋を強行突破する陽動作戦を決行することになります。が、恐らく老人や子供は突破できずに死ぬだろう、他を生かすために切り捨てると、ジェイドは淡々と告げます。
作戦開始前、ルークは軍人たちのそんな決断を知らない村人たちの様子を眺めます。

子供「おかあさん……怖いよぅ……」
母親「大丈夫よ。兵隊さんが守ってくれるわ」
#ガイとティアが歩いてくる
ガイ「おい、ルーク」
ティア「そろそろ大佐が動き出すわ。準備はいい?」
ルーク「ああ……」
ガイ「……大丈夫か?」
ルーク「……」
ティア「ルーク」←気遣わしげに
ルーク「……なぁ。俺……アクゼリュスのこと、どうやって償ったらいいんだろう」
ティア「……難しいことだわ。生涯忘れることなく責任を負い続けること……ううん、漠然としてるわね」
ルーク「俺が……幸せにならないこと、とか?」
ガイ「そりゃ違うだろうよ」←苦笑する
ルーク「そうなのかな。だってそもそも俺は、生まれるはずのない命だろ。そんな奴がアクゼリュスを」
ガイ「あーあーあーあーあー。後ろ向きなのはやめろ。うざいっての」
ティア「ガイ。ルークだって真剣に考えて」
ガイ「とりあえず人助けしろ。残りの人生全部使って。世界中幸せにしろ」
ルーク「っ……、出来るわけねぇだろ」
ガイ「ンなことは分かってる。それぐらいの勢いで何とかしろってんだよ」←笑って

作戦が開始されます。三分間の予定で譜術をぶっ放し続けるジェイドと、橋に残った兵士と戦うガイとティア、ルーク。

どーでもいい話。このドラマでは、ここに至るまでルークがマトモに剣を抜いたのはアッシュと戦った時のみ。しかもボロ負けで使える技は双牙斬だけでしたが、ここでイキナリ「瞬迅剣!」とか言って勇ましく戦ってたのでビビリました。…ルークが人殺しを決意するエピソードは放棄されたっぽいですね。
ついでに。ガイが「シコウバクエンジン!」と叫んでます。漢字で書くと「獅吼爆炎陣」? でも、原作のガイの技は「獅吼爆雷陣シコウバクライジン」なんだよー。
単なる読み間違えか発音ミスか脚本の誤字か。テイルズシリーズの別タイトルの技との混同?

ですが、道を切り開いたルークの指揮で村人たちが橋を渡り始めた時、巨大ロボットに乗ったディストが土の中から出現、橋を破壊して人々を虐殺し始める!

ガイ「なんて奴だ。味方まで無差別に殺っていやがる」
ディスト「ハーッハハハハハ! あいにく、天才以外のつまらない虫ケラの区別がつかない性質でね。ハハハハハ! ……ん?」
#ロボットの前を子供が横切り、倒れている母親に駆け寄っていく
子供「おかあさん!」
母親「は、早く逃げなさい!」
子供「いやだ。おかあさんと一緒にぃ!」
ディスト「フン。……『断罪のライトハンド』、準備、よーし♪」←調子をつけて鼻歌のように
#母子に向けて右腕を振り上げる巨大ロボット
ティア「いけない!」
#母子の悲鳴と轟音。ロボットの腕は振り下ろされてしまった……。
ティア「っ。なんてことを……!」
ガイ「いや、見ろ!」
#母子を庇い、(剣で?)ロボットの腕を受け止めているルーク。ここで音楽盛り上がってカッコいいです!
ルーク「ぐぅっ……!」
子供「お兄ちゃん!」
ディスト「ほぉ〜。カイザーディストRXの『ぐれぃと』な一撃を受け止めるとは。なかなか……」
#面白そうに出力を少し上げるディスト。耐えて苦鳴を上げるルーク
ディスト「出来損ないのレプリカにしては、上出来です。――でもォ!」
#出力最大。まだ耐えて「ぐぁあああっ!」と叫ぶルーク
ディスト「潰れてしまいなさい。虫ケラがぁ!!」
ルーク「ううっ。うがぁあああああ!!」
ジェイド「洟垂れディスト!」
ディスト「!?」
#譜術で吹っ飛ばされる巨大ロボット
ジェイド「この忙しい時に。昔からあなたは空気が読めませんでしたよね」
#薄く笑いながらジェイドが歩み寄ってくる

ジェイドは巨大ロボットに向けて火の譜術を放ちますが、炎に包まれてもロボットはピンピンしていて、ディストは嘲笑います。しかしそれは、ロボットを無傷で奪おうと考えたジェイドの作戦でした。熱気に包まれて耐えられなくなったディストは脱出。射出された椅子はブースターの故障で彼方(海?)に墜落し、爆発するのでした…。ディストの生命力はゴキブリ並みなので殺しても死なない、とジェイドは失笑します。

ティア「大丈夫? ルーク」
ルーク「ああ……。なんとかな。――大丈夫か? 坊主」
子供「うん。お兄ちゃんこそ……大丈夫?」
ルーク「あ。あ、ああ……。俺は……俺は、いいんだ」←照れ。でも寂しく笑う
母親「ありがとうございます。あなたは命の恩人です。このご恩は一生……!」
兵士「そこの民間人、早く乗り込めー!」
ルーク「行けよ」←笑って
子供「ありがとう、お兄ちゃん」
母親「さあ、行きましょう」
子供「うん」
#母親と一緒に立ち去りながら、「瞬迅剣!」と、子供はルークの真似をして、母親は微笑ましげに笑う。ディストから奪った巨大ロボットに乗り込んで、落ちた橋を渡っていく村人たちの様子を見ながら、フッと笑うルーク。
ガイ「こういうことなんじゃないのか?」
ルーク「え?」
ガイ「償い。だよ」
ルーク「ああ……。だといいけどな。でも、誰かを助けたからって、俺が奪っちまった命は戻ってこない」
ジェイド「その通りです」
#ジェイドが歩み寄ってくる
ジェイド「過ちを無かったことには出来ません。傷は傷のまま、罪は罪のまま、残り続けます。お手軽に埋め合わせられるなどと、考えない方がいい」
ガイ「ジェイド! お前いい加減に」
ルーク「いいんだ! ガイ。ジェイドの言う通りだ。
 な、ジェイド。だとしたら、罪が残り続けるんだとしたら、俺……どうすればいいんだ」
ジェイド「そうですねぇ。例えばあなたが幸せにならない。という償い方はいかがですか」
ルーク「! ……そっか。やっぱりそれしか……」
ジェイド「変わっていませんね」←笑みを消す
ルーク「え?」
ジェイド「人の言葉にばかり左右されて、自分で考えようとしない。それでは、アクゼリュスの時と同じです。ヴァン師匠せんせいが言うから。私が言うから。そんなことでは、いつまで経っても変わることなんて出来ませんよ。……失望させないで下さい、ルーク」
#背を向けて立ち去るジェイド。ルークは溜息を落とす
ルーク「俺って駄目だな……」
ティア「『失望させないで下さい』ね……」
ルーク「へ?」
ティア「失望は期待の裏返しよ。違う?」
ルーク「ああ……」
ティア「それにあなたのことを、『ルーク』って呼んだわ。『親善大使殿』でも『お坊っちゃま』でもなく、『ルーク』」
ルーク「そういえば……合流してから初めて、名前で呼ばれた気がする」
ティア「大佐は滅多なことで他人ひとを叱ったりしない人だわ。それなのに叱るということは、あなたに価値を見い出してくれたからじゃないかしら」
ガイ「そうだな。『そんなことではいつまで経っても変わることなんて出来ない』。お前を認めたからこその忠告だったのかもな」

この時点で、このドラマのルークは戦闘能力が高いわけでも、賢いわけでも、経験や人望があるわけでもありません。無力で、償いたい役に立って挽回したいと思っても何も出来ませんでした。
一足飛びの成果を求めて、悩んで苛立って八つ当たりして自己嫌悪して。どう償えばいいのかと理屈を模索して周囲に答えを求めて縋る。その果てにルークが行ったこと。それは理屈も何もなく、目の前で殺されそうになった人を庇うという行動でした。
現実には一人で守りきれたわけではない。ジェイドが来なければ母子共々潰されて死んでいたことでしょう。それでも、理屈抜きに動いたことが、ジェイドがルークを認めるきっかけになった…。そして認められたということが、ルークの小さな自信になる。
誰かに認められること。それは特別な力がなくても叶えられることだったんですね。英雄は預言や国王や師匠に選ばれてなるものじゃない。名もなき誰かの感謝が与える称号でした。少なくともあの子供にとっての『英雄』に、ルークはなったのだと思います。

この辺のルークの心の葛藤を描く流れは、オーソドックスですが、分かり易くてすっごくよかったです! 今巻の中では一番好きなエピソードです。

前巻の感想で、ゲームだとグラフィックが切り替わるせいで、断髪するとルークの人格まで変わるような錯覚を覚えるが、そうではないだろう。音だけのドラマCDではその辺どうなるか、みたいな事を書いたんですが。
実は今回、聴いていて、頭の中に浮かぶルークの姿は、ずっと長髪のままでした。
上手くいかなくて苛立ちもがくルークの姿は、アクゼリュスへの旅をしていた頃のルークとさして変わりません。やはり、髪を切ろうが切るまいが、ルークはルーク。駄目なところはそのままで、突然変わったりしないんだなぁと再認識し、なんか、好きだなぁと思いました。

それはともかく、ディストの声優さんがやけにノリノリで、べらべらべらべら喋りますし、その辺に妙に意識を奪われました(笑)。

ディスト「はは、はは……ワーッハハハハ! たと、たとえ封印の術を解いたとしても、怖くなんかありませんよ! かか、カイザーディストRXの装甲は、厚さ150mm。およそ千回に及ぶ耐熱耐寒、耐衝撃実験をクリアし、しかも、内装はこだわりの本革仕様! 土足厳禁! モダンリビングな発想!」
ジェイド「はいはい。――フレアトーネード!」

…文字だと読み飛ばせるのでそれほどではありませんが、音だけだと、うぜぇ…(苦笑)。聴いてると段々ワケ分かんなくなる。ジェイド、台詞遮ってくれてありがとう。
ジェイドとディストの(口での)対決はかなり尺が長い感じで、この二人が好きな人は嬉しいんじゃないかなーと思いました。

ジェイド「封印術? ああ〜、そんなものを掛けられていたこともありましたね。とっくに解除済みですが」
ディスト「なんと! 封印術を解くには短くとも数ヶ月は……む? ん、フフフ、ハハハハ! 分〜かった。分かりましたよ。ハッタリ、嘘ですね。あなたはいつもそうやって、純真な私を騙して」
ジェイド「いえ、本当ですよ」
#ぎょっとなるディスト。この辺は音楽効果がちょっとディズニー映画的で愉快です
ディスト「ホントに?」
ジェイド「本当に」
ディスト「ホントのホントに?」
ジェイド「ホントの本当に」
ディスト「な、なな(汗)」
ジェイド「さて。お仕置きの時間です」

なお、ディストはロボットに攻撃させる度に、「閃光のレフトハンドぉ!」「情熱のツインレーザー!」「紅蓮の絨毯爆撃」などと喋ってくれます。おかげで、ロボットがどんな攻撃してるかが映像無くてもバッチリ分かります。ありがとうディスト。シナリオライターさん!

それから。前巻から気になってましたが、ドラマCDのディストの巨大ロボットは、原作ゲームと構造違う…。ゲームでは自律型の無人ロボットなんですが、ドラマではディストが中に乗り込んで操縦。しかも他の人も乗せられる……。まあ、原作でも初期案ではディストが乗って操縦してたみたいなんで、ある意味設定に忠実なんでしょうか。

ちなみに、カイザーディストを見たガイが「な、なんだあのブサイクな譜業兵器は」と言ってディストの逆鱗に触れてました。同じ譜業マニアでも、彼らのセンスは相当合わないらしいです。

それにしても、例によって地理が原作とは違う感じ。
原作のローテルロー橋は海峡に架かった長大なものなんですが、このドラマでは崖に架かってる橋らしく。原作ではこれが落ちると、アベリア大陸へは船で行くしかないんですが、このドラマでは三日ほど掛ければ徒歩で迂回できることになってました。

*と言うか、原作と違ってピオニー皇帝直々の命な上、タルタロスも使える状態なんだから、百人ぐらいの民間人なら陸艦に乗せて運べばいーのに。そもそも橋の入口側の見張りを引きつけたところで出口側にも見張りいるだろうし、挟まれて全滅の危険が高い。民間人を避難させるのが目的の作戦でこれはないだろうと言うか、橋が塞がれてるなんて予想付いてただろうに、原作と違って迂回可能と言うなら、何故最初から迂回路を選ばなかったんですか大佐。突破できそうだと思えるほど、よっぽど小さい橋なのか?

そんで、ディストがそれを破壊したので、ディストから奪った巨大ロボットに村人を乗せて運んだようなんですが、どんな状況なんだか映像がイメージできません。橋が架かってたのは深いけど狭い谷、ってこと? そしてこのドラマのカイザーディストは一度に少なくとも数人以上乗せられる程度にはデカいのか。崖を渡れる機能が付いてるのか。そーいや、前巻では空飛んで使節団の船を襲ってた気がする…。飛行出来るのは(一応)アルビオール(創世暦の浮遊機関)だけ、という設定は無い模様。なんか色々根本的に違うっぽいですね。


一方、アッシュ、ナタリア、アニスは、戦争を止めるべく、アクゼリュス崩落の真相を告げる為にバチカルへ向かう……のですが。バチカル間近でアッシュとアニスは離脱。

アニス「あ〜あ。根暗ッタは根暗だし、イオン様はヴァン総長にさらわれちゃうし、このままじゃ導師守護役フォンマスターガーディアンクビになっちゃうし、戦争は始まっちゃうし、ルークはバカだしアッシュはナゾだしお腹減ったし、もうなんか大変〜!」
ナタリア「バチカルまであと僅かです。辛抱して下さい」
アニス「アニスちゃんの大活躍、きちんと陛下に伝えて下さいよ〜?」
ナタリア「分かっていますわ。報酬の件、必ずお父様に……」
アッシュ「フン!」
#アッシュ、背を向けて歩き始める
ナタリア「あ! アッシュ!」
アニス「ちょっと。そっちバチカルじゃないし」
アッシュ「ここから先は、お前たちだけで行け。俺はヴァンを追う。……幾つか心当たりがある」
ナタリア「アッシュ……」
アニス「『けっ。たまたま行く方向が同じだっただけのことだ。馴れ合うつもりはねぇ』……ってやつですかぁ? でもぉ……心当たりあるんならラッキー♥ 私も乗っけてもらっちゃおーっと。ナタリア、ここからなら一人でも大丈夫だよね」
ナタリア「え、ええ……」
アニス「じゃ。アッシュー!」
#アニス、アッシュを追って駆けていく
アッシュ「来るんじゃねぇ!」
#アニス、再びアッシュの声真似をする
アニス「『けっ。たまたま行く方向が同じだっただけのことだ』」
ナタリア「待って下さい!」
#アッシュ、足を止める
ナタリア「アッシュ。一緒にバチカルに……。あなたはキムラスカの貴族です。戻るべき場所に」
アッシュ「言うな!」
ナタリア「!」
アッシュ「言うな……。俺が戻る場所なんて、世界のどこにもありはしない。……どこにも」
#立ち去っていくアッシュ

……。バチカルまでちゃんと送って行ってやりなよ〜。両親や伯父に会いたくないとしたって、街の入口までなら大丈夫でしょ。半端な男だなっ。

この会話の直前にアリエッタとの戦闘があるんですが、ナタリアは戦闘に参加していません。このドラマでは、ナタリアは未だ実戦をこなしていないのだと思われます。アニスが同行しているのは、ナタリアの雇われ護衛としてなんですね。…にも拘らず、街に着いてないのに、アッシュとアニス二人でお姫様の護衛を放棄。ひどいよ。

今巻は、アッシュの扱いが悪いなぁと思います。なんというかカッコ悪い描かれ方をされてる。彼のチャームポイントはナタリアへの不器用な愛情だと思うのですが、それが見えない。自分のことばっかりで傲慢で。アッシュファンの方はガッカリするのかも。
そしてアニスは、前巻からずっと『イヤな女』です。物語の構造上、そういう役目を割り振ってるだけだってことは分かりますが、アニスはアニスで好きなので、フォロー無いのはやっぱ哀しい。

アリエッタ「アニスなんか……! ヴァン総長がイオン様を誘拐するの止められなかったくせに。アニスなんか……導師守護役フォンマスターガーディアン失格だよ!」
アニス「! ……潰す

このアリエッタのオリジナル台詞。スーパーダッシュ文庫版小説でも、同じ意味のことをルークに言わせてましたっけ。アニスは導師守護役失格だと。
確かにそうなんだけど…うーん…。いやホントに、ドラマCDのアニスは、今の所、美点が見つけられないです。原作のような有能さも感じられませんし。次の最終巻でアニスの話が大きく扱われるらしいので、そこでフォローするんでしょうけれど。

シュレーの丘に向かったアッシュ。セフィロトの外で、イオンを連れたヴァンとリグレットと鉢合わせます。戦いますが全然敵わない。「ルークと大差ないぞ」とヴァンにからかわれて「俺の前で、屑の名を言うなぁ!」とブチキレ超振動まで使ったのに、やっぱ勝てない。そこでアッシュはどうしたか。……便利連絡網でルークに救いを求めたのでした。(たった今 屑と呼んだ相手を頼りますか)
ローテルロー橋からルークが駆けつけると(徒歩で移動、しかも戦場を再び突っ切ったなら相当の日数がかかるはずですが、その辺無視。つーか例によって原作とは地理が違うのだろーか)、アッシュは重傷を負って転がっていました。「誰にやられた!」と慌てるルークにアッシュは言います。「遅いんだよ……屑」「お前の頭は空っぽか。想像力を働かせろ」と。何様ですかあなたはってアッシュ様だけど
アッシュは『察せないお前が悪い』という態度で埒があかないので(重傷を負ってるのでそもそも長時間喋れないでしょーが)、ジェイドがアニスに説明を求めますが、イオンが「僕からお話した方がいいでしょう」と出てきます。ヴァンはアッシュをコテンパンにしましたが、「アッシュの機嫌を取ってやるのも悪くなかろう」と、オナサケでイオンを置いていったのでした。
それはそうと、何故アニスよりもイオン様が説明した方がいいのかはサッパリ分かりませんがイオン様は何としても自分で説明したかったのだろうなぁと思います。ドラマCDだと喋らない限りいない扱いになっちゃいますもんネ。

この後セフィロトの中に入り、消されていたセフィロトツリーを復活させるためにルークが超振動を使うことになりますが。

アニス「無理ですよ。ヴァン総長だって言ってたじゃないですか。劣化品は一人では超振動を操ることは出来ないって」
ガイ「ここで失敗しても、何もしないのと結果は同じだ!」
アニス「だったら、いっそ なんにもしない方がルークお坊っちゃまのお心が傷つかなくていいんじゃないですかぁ? また『俺のせいじゃない』とか、『お前たちも同罪だ』とか喚かれたらたまんないですよぉ! あーあ。アッシュが元気でいてくれたら何の問題もないのに」

ひ…ひどいなアニス。流石にこれはひどい。原作があえて避けてたことを――パーティーメンバーにルークを「劣化品」と呼ばせることを、やっちゃいましたよドラマCD。タブーを破っちまっただよ!
原作のアニスは、キッツイことも言うけどさっぱりもしてて、あまり引きずらないし、まだ成果を出せなかった頃の落ち込むルークを励ましてくれたり、ここまで酷いことなんて言わなかったよ!?
これで最終巻になってルークがアニスを優しく慰める展開になったらちょっと怒る。ドラマCDにはルークがアニスを好きになる要素がカケラもない。
つかアニス。あなたアッシュの戦いに加勢もしないで重傷を負わせて、イオンも自力じゃ取り戻せなくて、「アッシューアッシュー」言ってただけのくせに、そゆこと言いますかね!? それに「なんにもしない方が」って、言っていいことと悪いことかあるだろ!? 放置すれば大勢の人が死ぬ。…そもそもアニス自身ルグニカ大陸にいるから一緒に崩落して死ぬ。そんな時にそんなこと言うか!? なんだこの空気の読めない大馬鹿娘は! イオン様も黙ってないで下さい。原作イオン様なら軽くたしなめるところだよ。

ルーク「俺には出来っこない。……そういうことか」
ジェイド「グランツ謡将はそう考えているのでしょうね。ただ、出来るかどうかを決めるのは彼ではなく、あなたです。……どうです? 出来ますか」
ルーク「……出来るかどうかは分からない。でも……」
#ルーク、前に進み出る
ルーク「やらせてくれ!」
ジェイド「いいんですね? 今以上に重い罪を背負う結果に終わるかもしれませんよ。それが簡単に償えないということは、今のあなたなら、身に染みて理解しているはず」
ティア「……私が」
ルーク「え?」
ティア「私がサポートに付きます」
ルーク「ティア」
ティア「超振動は第七音素セブンスフォニムです。第七音譜術士セブンスフォニマーとして有効なアドバイスが出来ると思います」
ジェイド「危険ですよ! 超振動の暴走に巻き込まれて、あなたが命を落とす可能性も……」
ルーク「っ! 大丈夫だ、ティア。俺一人でやってみるからさ」
ティア「約束したから」
ルーク「約束?」
ティア「あなたが変わっていくのを、見ているって」

#二人でパッセージリングの前に佇むルークとティア。ルークの体が輝く
ルーク「ううっ……」
ティア「いいわ。そのまま集中して。そう。そのまま……。いいわ」
ルーク「うっ……うぐ……!」
ティア「ルーク、私の声に耳を傾けて。力を抜いて。そのまま……」
ルーク「……。ああ」
ティア「そのままゆっくり意識を指先に持っていって。ルーク、力を抜いて。……怖がらないで」
#アッシュがルークの頭の中で叫ぶ
アッシュ『何をやってやがる。やめろ! その力を使うんじゃねぇ!』
ルーク「――っ。黙っててくれ……!」
アッシュ『屑に超振動が操れるはずがねぇ! やめるんだ!』
ルーク「……俺は、お前の言う通りに屑かもしれない。どうすれば、犯した罪を償えるのかも分かんない! でも!! 変わっていかなくちゃ、いけないんだぁーーっ!!!
#ルークを包む光が輝きを増す
ガイ「見ろ、超振動の力が!」
アニス「はぅあ! なんか音が変わってるしぃ」
イオン「制御に成功したということですか!?」←嬉しそう
ジェイド「そのようですね」
ガイ「おい、見たかジェイド! あれがルークだ! 言っただろうが。あいつは前に進める奴だってな! よぉ〜しルーク! それでこそ俺のルークだ!!←親バカ大炸裂
#ルークの超振動がプロテクトを消却。脱力して荒い息を吐くルーク
ティア「ふふっ……。赤いラインだけ、綺麗に削り終えたわね」
#ツリーが再生する
ティア「エネルギーが噴き上がって、セフィロトツリーが再生したわ!」
ルーク「……っ。やったぁ! やったぜ!」
#ルーク、ティアに抱きつく
ルーク「ティア、ありがとう!」
#どぎまぎしているティア
ティア「わ、私。何もしてないわ」
ルーク「そんなことねぇよ。ティアがいたから。……信じてくれなきゃ出来なかった!」

誰かに信じてもらえることで、自分の限界を打ち破るパワーを出せるんですね。
ちょっと感動しました。

そして「俺のルーク」呼ばわりするガイに笑った。仲間の誰も突っ込まないし。黙って微妙に距離をとられてたのかもしれないなぁとか思いました。
Web上のあちこちのレビューでこの台詞を見た時は、どんな凄いホモ展開なのかと危ぶんでいたんですが、普通に異常な親馬鹿だった。「それでこそ我が息子だ!」みたいな。いやまあ一部ファン層のウケを狙ってるんだろーなぁとも思いましたケド(笑)。

ウケと言えば。ティアのサポート時の台詞は、原作でルークの超振動が初めて暴走した時のヴァンの台詞が元になってます。ヴァンの時は「声だけ聴いてるとエロくさい」感じでしたが、ティアの場合だとどうでしょう(笑)。えろえろ?


一方、その頃。
ナタリアは一人でバチカル城へ行き、停戦を訴えます。が、モースが現われてナタリアは偽の姫だと告発。牢に入れられてしまいました。そこにラルゴがやって来て、「お前の本当の母親の形見だ。……古い知り合いから預かっていた。いつか機を見て、お前に渡すよう頼まれてな」とペンダントを渡そうとします。

ナタリア「要りません。お返しします。……何の理由があったのかは知りません。しかし、わたくしの本当の母が、わたくしを捨てたことだけは事実です。そのような女のペンダントなど」
ラルゴ「シルヴィア。それがお前の、母親の名前だ」
ナタリア「聞きたくありません! ……聞きたく……ありません……」
ラルゴ「……そうか」
#泣くナタリア
ラルゴ「王国の跡継ぎを。健康な男児を産むように。国王と国民の期待が王妃の心を蝕んでいた。死産の事実を知ればその心は完全に壊れてしまっていただろう。そこで王妃の乳母は考えた。自分の娘、シルヴィアが数日前に産んだ娘を、代わりに城に差し出そうと」
ナタリア「勝手ね。勝手で、愚か」
ラルゴ「そうだな。結局シルヴィアは、娘を失ったことを気に病み、バチカルの海に身を投げて……命を絶った。愚かな話だ」
#泣きながらペンダントを受け取るナタリア
ナタリア「『新暦1999年。我が娘メリルの誕生の記念に』。このペンダントは、父が母に贈ったものなのですね」
ラルゴ「そうだ」
ナタリア「それをあなたが、わたくしに渡して下さった。……母の名はシルヴィア。父の名は?」
ラルゴ「……バダック」
ナタリア「バダック……。優しい人だったのでしょうね。でももう今はいない。どこかで道を誤って、優しかったバダックはいなくなってしまった」
ラルゴ「用は済んだ。――処刑は、明日の夜明け。さらばだ!」
#身を翻し、立ち去るラルゴ
ナタリア「さようなら」
#ラルゴの足音が遠ざかり、聞こえなくなる
ナタリア「さようなら……バダック……」

ここの展開ちょっと強引。ナタリアの察しが良すぎですよね。(^_^;) 聴いてて置いてけぼりになっちゃいました。
それに、自らペンダントを渡しに行く――父娘の名乗りを上げておいて、ナタリアを助けようとはしないラルゴはヤな感じ。ナタリアを助ける気がないなら、ペンダントを渡しに行ったりするなっつーの。どっちかにせい!
ラルゴは1か0かをキッチリ分ける男だと思っていたぜ。イライラ。

そんで、例によって原作とは設定が微妙に違ってます。
原作では、モースに王女すり替えの懺悔をしてたのはラルゴなんですが、ドラマではシルヴィア。原作では、シルヴィアは知らない間に母に娘を連れ去られて、直後にパニックを起こして海に飛び込んで死んだんですが、ドラマでは一応納得して自ら娘を渡して、死ぬまで結構時間があったっぽい。
更には。何故、王妃の乳母は自分の孫娘と死産の王女を入れ替えたのか。王妃の心が弱ってたのは確かですが、実はここに『預言』が絡んでいる。乳母は悩んで預言士スコアラーに相談し、お前の孫娘が王女になると預言された。預言スコアは絶対のもの。だから乳母は自分の娘から子供を奪って王妃に与えたのでした。…このことを知って、ラルゴは預言を憎むようになり、ヴァンの配下に下った。これが原作の設定です。
ドラマではこの辺説明してないんですが、これもまた、次巻で説明するんでしょうね。

さて。夜明けとなり、ナタリアの処刑が迫ります。なんと断首刑。何故か仕切ってるのは外部者のモースです。いーのかこれ。首が落とされる、そんなギリギリの場面で聞こえてくる声。

ナタリア「アッシュ……。もう一度、もう一度お会いしたかった」
モース「首を刎ねろ!」
「待ちやがれ!」
ナタリア「!」
#遠くから誰かが駆け込んでくる足音。目隠しをされているナタリアには姿が見えない
「ルグニカじゃ今、何百何千の人間が、国の命令で、正しいことだと信じて戦って、命を落としてる! それが全部、預言を実現させるためだなんて。間違ってる! こんな馬鹿げたことがあっていいはずがない!!」
ナタリア「この声は……アッシュ! ……いいえ。――まさか!」
モース「アクゼリュスを地の底に沈めたお前が何を言うか。レプリカめ!」
ルーク「待ってろナタリア。すぐに助けてやるからな!」
#キムラスカ兵たちが武器を構える
ルーク「ティア! ガイ! ジェイド! アニス! 行くぞ!!」
#それぞれの声で呼応して飛び出す仲間たち。救い出されて共に走るナタリア
ナタリア(ルークが……まさかあのルークが……。アクゼリュスを崩落させ、自分のせいじゃないと泣き叫んでいたルークが。戦争を止めるために戦っている!?)
ルーク「ナタリア!」
ナタリア「! は、はい」
ルーク「レプリカの俺が言っても、意味ないかもしれねぇけど。生みの親が誰だろうが、お前はお前だ!」
ナタリア「え!?」
ルーク「見ろ!」
#ルークが城門を開ける。市民がナタリアのために兵たちに立ち向かっていた

原作では処刑されかけたナタリア(とルーク)を助けに現われるのはアッシュなんですが、ドラマではルークでした。原作でダアトに捕らえられていたナタリア(とイオン)をルークが救いに行ったエピソードも混ぜてるのかな。しかもナタリアがルークに呼ばれて「はい」とか言ってる。アッシュに言われた時みたいに。なんとなく、ナタリアの中で低い存在に落ちちゃってたルークが、ここで一気にランクアップしたんだなぁと感じました。
このドラマでは、ルークがレプリカだと知れて以来、ナタリアは完全にルークを見捨てていて。悲しいからフォローがあるといいなぁと前巻の感想に書いたほどなので、私はこの展開はとても嬉しかった。でも、アッシュ視点で見ている人には面白くない展開かもとも思いました。原作ではアッシュのかなり大きな見せ場ですもんね。

バチカル脱出のくだりはなく、ナタリアはその場でもう一度 父を諌め、インゴベルトもすぐ受け入れて大団円となります。

それはそうと、ここで原作と同じく「わたくしは……陛下のお側で十七年間育てられました」とナタリアが言いますが。ナタリア十八歳だろー? 原作、小説版、ドラマCDと、こうもしつこくそのまま使われてるところを見ると、これで正しいのでしょうか。一歳までは王妃が生きてて王妃の側で育てられたとか言うトンチじゃあるまいな。

市民たちのナタリア様万歳の歓呼の中、抱き合うインゴベルトとナタリア。遠く眺めながら「良い父を持ったな。……さらば。さらばだ、メリル」と呟くラルゴ。そしてルークは。

ルーク「ナタリアはすげぇよ」
ガイ「……だな」
ルーク「たとえ本物の王女じゃないって分かっても、自分の居場所を持ってる。伯父上も、街の連中も、ナタリアはナタリアだって認めてる。でも俺は……そうじゃない」
ガイ「よせ、ルーク」
ルーク「でも。俺が生まれなかったら、ナタリアはアッシュと……」
ティア「あなたが生まれていなかったら、アッシュは『ルーク』としてアクゼリュスで死んでいたでしょうね」
ルーク「ティア」
ティア「自分が生まれなかったらなんて仮定は無意味よ。あなたはあなただけの人生を生きてる。あなただけしか知らない体験」
 ――ありがとう、お兄ちゃん!
ティア「あなただけしか知らない感情」
 ――……っ。やったぁ! やったぜ! ティア、ありがとう!
ティア「それを否定しないで。あなたはここにいるのよ」
ルーク「……うん。ありがとう」

どーでもいいけど、父王に受け入れられたナタリアを見て、ルークが自分は受け入れてもらえないと寂しく思う脚色は、スーパーダッシュ文庫版小説と同じ。

ナタリアの提案に従って、キムラスカ、マルクト両国の間に平和条約が結ばれることになります。原作だと、ナタリアと並んでルークも条約締結のために尽力した感じ…と言うか、臆していたナタリアに話し合いを勧めたのはルークなんですが、ドラマではそれがないので、「活躍を認められたルークたちは、国賓としてグランコクマに迎えられ」とナレーションで言われてて少し不思議な気分に。
何故なのか、原作では中立の場であるユリアシティで締結したのに、ドラマではマルクトのグランコクマでの締結。
グランコクマ宮殿の中を見て回ったルークが「ハァーッ、立派な宮殿だな!」と大声をあげててちょっと驚きました。公爵家に閉じ込められて育ったルークは価値観が偏っていて、立派な建物なんて当たり前。原作ではどんな建物を見ても感心することってなかったですもんね。(原作なら、建物が立派だと感心するのはアニスの役ですな。)

ピオニー皇帝とルーク、ティア、ガイの初邂逅は公式な場ではなく、宮殿の庭(鳥の声が聞こえるので、多分)でした。にこやかに話しかけられて「はぁ? なんだお前。馴れ馴れしい野郎だなぁ」とぞんざいに言うルークはまだまだアホ。宮殿にいるんだから、高確率でマルクトの貴族だよ。キムラスカ公爵家に連なる者として和平のために敵国の宮殿にいる自覚ゼロです。
ピオニーはジェイドについて語ります。

ピオニー「自信過剰が仇になって大事なところでポカをやらかす。フ。ガキの頃からまるで変わっちゃいない」
ルーク「あのジェイドに、子供時代があったなんて想像できねぇや」←苦笑いして
ピオニー「あいつのエピソードなら事欠かないぜ。ブウサギ脱走事件に、オリジナルカレー大爆発事件。そして、洟垂れディスト生き埋め事件。――よーし、俺の部屋に来い。飲みながら昔話としゃれ込もう」

大佐の詰めアマ属性は子供の頃からの不治の性癖だったのか。
それはさておき、オリジナルカレー爆発事件って何!? カレーのレプリカ作ろうとして被験体オリジナルが爆発したの!? …とか思いましたが、考えてみたら、単にオリジナルの料理を作ろうとして失敗しただけか。…ジェイドは子供の頃ナタリア並みの料理オンチだったのだろーか…と、悶々と妄想しました。味見役はサフィール(ディスト)固定だったに違いない。「お前だから特別に任せるんだよ」とか言われて嬉々としてやって、自ら墓穴に埋まってそう。
そして、相手が皇帝だと分かってもタメ口ぞんざい変わらずなルーク。ドラマのルークは、相手や場に合わせて口調を改める気遣いは、まだ出来てないみたいです。

一方、ジェイドとアニスは演算機を使って何やらデータ解析中。そのデータはヴァンが残したものらしいですが、どこから入手したのか全く語られてません。大変不親切。とりあえず、ヴァンが巨大なレプリカを作ろうとしている、もしや世界をレプリカと入れ替えるつもりなのでは…と示唆される展開。

アニス「出たぁ、フォミクリー。人間まで複製できちゃうなんてトンデモ迷惑な技術〜。きっと、ディストみたいにキモかっこ悪いヤツが考えたに決まってますよぉ!」
ジェイド「あっはははは! そうかもしれませんねぇ。まぁ……アレと一緒にされるのは心外ですが」←最後笑ってない
アニス「ほえ?」

…相変わらず、このドラマのアニスは言うことキツ過ぎる…。そしてルークに劣らずアホ。シナリオライターさんがアニス嫌いなのかなぁと心配になるくらい。実はジェイドとさえ仲良くないんじゃないのかと思えてきました。

場面は変わり、ルークとガイの会話になります。虫の声が聞こえているので、多分、夜の宮殿の庭なんでしょう。

ガイ「キムラスカとマルクト。本当に一つになるんだな……」
ルーク「どうした、ガイ」
#ルークが近付いてくる
ガイ「おう」
ルーク「顔色よくねーぞ。具合でも悪ぃのか」
ガイ「おいおい。心を入れ替えたのは結構だが、そこまで気を遣ってもらうと流石に気味が悪いぜ。いつも通り『うぜー』とか『たりー』で頼む。はっ、ははっ」
#ルーク、小さく息を吐く
ガイ「ん?」
ルーク「そんな嘘の笑いやめろって」
ガイ「……」
ルーク「どうしたんだ? 言ってくれよ。な?」
ガイ「……………………お前にだけは言っておくか。明日の平和会議、俺はマトモじゃいられないかもしれない」
ルーク「どういう意味だ」
ガイ「俺は……」
#ガイの二の腕が光り、突然苦しみ始める
ルーク「どうした、おい、ガイ!」
ガイ「う、ぐ。……うぁああああっ!」
#剣を抜き放つガイ
ルーク「ガイ!!」
#振り回されるガイの剣を避け続けるルーク
ルーク「ガイ、やめろ! やめてくれ!」
#攻撃の手を止めて荒い息を吐くガイ。苦しそうに自分を抑えている様子
ガイ「………ルーク。う、ぐぅうううっ……ルークぅううっ!!」
ルーク「! 誰かに操られてんのか!? ガイ、目を覚ませ!」
#イオンが走ってくる
イオン「ルーク! 下がって下さい!」
ルーク「!」
#イオンがダアト式譜術を使う。苦鳴を上げて倒れるガイ。ぐったりしたガイに向かい、イオンが解呪を始める
ルーク「なんとか出来んのか?」
イオン「と言うより、この術は僕にしか解けないでしょう。カースロットは……本来導師にしか伝えられていないダアト式譜術の一つですから」
ルーク「頼む! なんとかしてやってくれ! ――畜生、シンクの野郎! ガイにこんなことさせやがって。許せねぇ! 絶対に許せねぇ!」
イオン「……ルーク。いずれ分かることですから、今お話ししておきます。カースロットと言うのは、けして意のままに相手を操れる術ではないんです」
ルーク「……どういうことだ」
イオン「カースロットは、記憶を掘り起こし、理性を麻痺させる術。つまり、元々ガイにあなたへの強い殺意がなければ、攻撃するような真似は出来ない」
ルーク「――そんな」
ガイ「……お前のせいじゃない」
#ハッとするルーク。ガイが身を起こした
ルーク「もう大丈夫……なのか」
ガイ「ああ。………俺がお前のことを殺したいほど憎んでいたのは……お前のせいじゃない。俺は……マルクトの人間なんだ」
ルーク「え!?」
ガイ「俺はホド生まれなんだよ。で、俺の五歳の誕生日に戦争が始まったんだ」
#ホド滅亡の回想シーン。Vol.1の冒頭と同じ
ガイ「俺の家族は、ファブレ公爵に殺された。家族だけじゃねぇ。使用人も、親戚も。だから俺は、公爵に……俺と同じ思いを味わわせてやるつもりだった」
イオン「あなたが公爵家に入り込んだのは、復讐の為だったのですね」
ルーク「……ごめん。俺、何も知らなくて。俺の側にいるのは、嫌だっただろうな。俺はレプリカとは言え、ファブレ家の……」←声震えてる
ガイ「そんなことねぇよ。……そりゃ、全くわだかまりがないと言えば嘘になるがな。むしろ今は、お前を尊敬してる。過去に縛られずに……前に、前に。あがきながら前に進んでいる、お前を凄いと思う。……誰にでも出来ることじゃない。俺みたいに、いつまでも前に進めない奴もいる。
 ……そんな訳でな。明日の平和会議、インゴベルト国王とファブレ公爵が顔を合わせる場所で、自分を抑える自信がないんだ。とは言え、戦争の犠牲になったホドの住民の為にも、俺は明日の会議をきちんと見届ける義務がある」
#俯くガイ
ガイ「どうすりゃいいのか。分からなくなっちまった」
ルーク「ガイ……」
ガイ「はっ、ははっ。でも……こんな術に、易々と操られちまって。……駄目だな。やっぱり明日は、立ち会わない方がいいのかもしれない」
ルーク「ガイ。ガイは俺を許してくれたじゃねぇか。前に……前に進むってそういうことだろ。それに……俺みたいなのだって少しは前に進めたんだ。お前なら出来ると思う。
 ガイ。お前を信じるよ」
ガイ「そうか。――もし、馬鹿な真似をしちまったら。頼む、その時はお前が」
ルーク「あーあーあーあーあー。後ろ向きなのはやーめーろ。うぜーってーの!」
ガイ「ふっ。うぜー、か」
ルーク「おう。うぜー、うぜー」
ガイ「はっ、ははは。久しぶりに聞いたな、お前のそれ」
ルーク「へっ、へへへ」
ガイ「ははは」
ルーク/ガイ「「うぜー!」」
#声を合わせて明るく笑い声をあげるルークとガイ
イオン「……羨ましいな。残酷な運命を、あなたたちは次々と乗り越えて行ってしまう。前に、前にと」

このドラマのシナリオライターさんはガイが好きなのでしょうか。Vol.1の感想に書いたように、幼少のガイからドラマが始まり、彼が復讐者であることがリスナーに隠されていない。そして出番は多く、原作よりも好意的に掘り下げられているように感じます。
以上のカースロットイベントは、その最たるものかも。

原作では、このイベントで主眼を置いて描かれるのは「ルークの苦しみ」です。ところがドラマでは違う。「ガイの苦しみ」が語られているのでした。
原作のガイは、カースロットが発動した時点で、まだ迷いがあったように思えます。彼の真意はルーク(プレイヤー)にはよく見えない。だからルークは言います。「俺、ガイを信じる。……いや、信じてくれ……かな」。気を抜けばガイは離れて行ってしまう。そんな不安がありました。その後の長い旅の中で、ルークが『変わりたい』という意志を貫き続けたことでガイもまた変わり、ついに完全に復讐を捨てた…んだと私は思いました。
しかし、ドラマのガイは既に完全にルークを取っていたらしく、ルークに対して開け広げに自分の弱さをさらけ出してきます。
ドラマのガイは、「ちょっと前まで、赤ん坊みたいなものだったんだ」とルークを語り、ルークを頼むと仲間たちに頭を下げていました。そんな親心を知らず、ルークは「お前だけは俺のこと分かってくれてるって思ってたけどな! 見損なったぜ!」と罵ったりしてました。完全に保護者と被保護者、育て親と養い子の関係だったのですが…。
ガイが初めて弱音を吐き、心情の全てを吐露し、ルークを尊敬しているとさえ言います。そしてルークはガイを許して認めて信じて、支える。
ここで、ガイの「後ろ向きなのはやめろ」の台詞をルークが繰り返すのは、シナリオライターさんの一種の意趣返しなのかなぁと思いました。原作だと、ルークばっかり周囲から説教されちゃってますもんね(笑)。
ともあれ、ここでようやく、ルークとガイは対等の、本当の親友同士になれたのかな、と思いました。
そんな二人を羨ましいと言うイオン。彼がレプリカであることはドラマでは未だ明かされてませんが、多分最終巻で死ぬ時、同時に明かされるんでしょうね。

そして思った。カースロットの話を聞くなり、「シンクの野郎! ガイにこんなことさせやがって」と喚くルークはどんな超能力者なのでしょうかと。ドラマじゃ、ガイ自身すら術掛けられたことに気付いてなかったのに。そして、こんなタイミングでカースロットを発動させるシンクの意図は意味不明。どうせなら平和会議の最中に発動させりゃー、全てはぶち壊しになって、各国の足並みを乱れさせられて万々歳だったのに。(原作とはカースロットの設定が違うのかなぁ? シンクが近くにいた描写がないですし。いつ発動するか分からない、とか?)

平和条約締結は、流れは原作に忠実ですが、台詞の殆どに改変がかかって、大幅なフォローが成されていました。
ガイはインゴベルトに剣を突きつけない。インゴベルトは自ら、ガイを捕らえようとした警備兵を止めて、平和条約締結に尽力したガイを信じると言う。ファブレ公爵は、ガイの家族を殺しルークを死地に送り出したのは自分だが、国に仕える者として行動した以上謝罪しない、けれど気が済むのなら私を刺しなさい。とルークとガイの二人に向かって言う。

ガイ「だとさ。どうする、ルーク」
ルーク「……決まってるだろ」←硬い声
ガイ「だよな」←笑って

当然、『刺したりしない』と言う結論だと思いきや、ここでピオニーが「おっと。復讐の相手はまだ残ってるぞ」とホド崩落の真実を語り始めて、なんか流れがうやむやになっちゃって残念でした。「ったく。この調子じゃここにいる殆どの人間を殺さなくちゃ、復讐は終わりそうにないな。……前に。前に進むしかないってことか」と最後にガイに言わせるだけじゃなくて、はっきりガイとルークの二人に、「もう復讐する気はない」「父上を恨む気はない」って言ってほしかったなぁ。

ここでヴァンがホドで行われていたフォミクリー実験の被験者だったことが分かり、ジェイドが自ら、自分がフォミクリーの発案者だと明かします。なんかふざけた口調と態度で。(たまには読んだ空気に合わせてくれ旦那。悪いがマジにムカッとしたぞ。) …が、すかさずピオニー陛下がジェイド擁護をしたので、ゲンナリしてしまいました。

ピオニー「一応助け舟を出しておこう。ジェイドが編み出したのは、あくまでも原理だ。ジェイドはすぐにフォミクリーの倫理的問題に気付き」
ジェイド「技術的問題にもです。何体かの悲惨な失敗作も製造しました。それからようやく、色々なことに気付いたのです」
ピオニー「だそうだ。とにかく、ジェイドはフォミクリーの研究を封印した。ジェイドを責めるなとは言わないが、愚かな行いに気付いて止めようとした事実だけは、認めてやってくれ」

ルークがジェイドを責めたのなら多少擁護をしてもいいでしょうが、まだビックリしてポカンとしてた時に先回りして「ジェイドは悪くない」と封じるなんて。ずるいと言うか、イヤ〜な感じ。
ジェイドは厳しくルークに「一度犯した罪は消えない、償いなど簡単に出来ない」と声を投げかけ続けますよね。それは、ジェイド自身がフォミクリーという技術によって生み出された一連の悲劇の責任を自分のものとして受け止めているからこそ、言うことを許されていると私は思ってるんです。自分の責任を人一倍見つめているジェイドだからこそ、ルークに「責任から逃げてはいけない」と言えると。
理屈から言えば、私もジェイドにレプリカ問題の責任は無いと思ってます。でも、ジェイド自身がそう思ってない所に意味があるんだとも思うのです。
ですから、ここの流れは超ガッカリでした。私の中のピオニー陛下の株が暴落した…。
為政者が公式の場で身内を庇う発言するんじゃなーい。(インゴベルトの「我が娘に誓って」も微妙。身内に誓うことが、戦争被害者に対して何の効果を持つのか。ピコハンで突っ込み入れたかった。)


一方。怪我して以降ずーっと出てこなかったアッシュが何をしていたかと言うと、一人で別のセフィロト(ザオ遺跡?)に行って、ヴァンの消したセフィロトツリーを再生してました。ルークがやったように超振動で制御板削って。が、再生した直後に警告メッセージが出て、全セフィロトが耐用限界を越え、間もなく停止すると表示される。「ヴァンの狙いはこれか!」と罵りながら、アッシュは便利連絡網でルークに連絡するのでした。

原作では、全セフィロトが耐用限界を越えたのは、地核が震動してセフィロトが不安定になったからです。何故地核が振動したかと言うと、地核の中にローレライが封印されていたから。何故地核にローレライがいると振動するかと言うと、プラネットストームが活性化するから。何故プラネットストームが動くと地核が振動するかと言うと、創世暦時代の譜術戦争のため、プラネットストームに歪みが生じていたからです。そして地核が震動すると障気が湧いて大地が液状化する。
つまり、この時パッセージリングが耐用限界を迎えたのは偶然、そしてそもそも二千年の耐用年数を越えたからだったと思われますが、ドラマでは設定が全く違うものに変わってました。

アクゼリュスとザオ遺跡の二つのセフィロトツリーを短期間に操作し、過剰な負荷を掛けたために、全セフィロトのダアト式封咒が自動的に解呪され、セフィロト自体も機能不全を起こしたのだそうです。そ、そういうことになってんの?
セフィロトとダアト式封咒って連動してるの? つか、ルークが操作したシュレーの丘のセフィロトは無関係なの…?
…ドラマではやっぱ、ローレライの存在は抹殺されてるっぽいなー。

アッシュからの報せを受けて、平和会議はそのまま対策会議にシフト。世界中の科学者たちが集まって検証考察。

どーでもいい話。このドラマでは、原作では封印術アンチフォンスロットと言ってるものを封印術ふういんじゅつに変えてまして。音声じゃ分かりにくいから平易な言葉に代えてるのねと感心してたんですが、ここのナレーションで「世界中の名だたる科学者たち――テクノクラート」とわざわざ原作に無い英単語に読み替えてたので、あれそういう訳じゃなかったのか? と肩透かしを食った気分になりました。

世界六箇所の全てのパッセージリングを同時に操作して外殻大地を魔界クリフォトに緩やかに降下、同時にディバイディングラインで障気を地核に押し戻す作戦が決まりました。
…ちょっと待て! パッセージリングは世界に十箇所。内二つは崩落して消滅してますが、それでも世界にはまだ八箇所あるだろー!? 確かに、シュレーの丘とザオ遺跡の二箇所は既にルークとアッシュが操作してますが、原作と違って、他のパッセージリングと連動させる命令を書きこんだわけじゃない。セフィロトツリーが再生されて、今現在も他のパッセージリングと同様に機能してるじゃん。これも同時に操作しなけりゃヤバいじゃんかー!

ついでに言うと、Vol.2では原作どおりの設定で「魔界クリフォト。外殻大地の内側に存在する、地獄の如き地下世界。大地は液状化し、至る所から障気が噴き上がり」…とナレーションで言ってたくせに、今巻では液状化大地のこと無視してるんですけど。大地が液状化してるなら、地核の震動を止めないと、ただ外殻を降ろしただけでは泥の海に飲み込まれてしまう筈です。
あぁああ もー知らん。設定ボロボロ過ぎ! 原作設定とドラマ用変更設定がぐっちゃぐちゃになってるよ!?

ともあれ、他のセフィロトにはそれぞれ軍に護衛された科学者たちのチームが既に到着済みということで、ルークたちはタルタロスを使ってアブソーブゲートに向かうことになりました。

…たるたろすは陸艦だよー。水の上も走れるけど、普通の船より遅いんだよぉおー。
やむを得ない事情でタルタロスで海走ってた原作とは状況が違うのに、何故ここでタルタロスに乗るかなー。極地のゲートはセフィロトの中じゃ一番遠いだろー。他のチームはとっくに着いてるんだろー。何故にわざわざ遅い足を使うかなー。
個人的希望では、ここでアルビオールとノエルを出してくれた方が嬉しかったかもです。ノエルの声優さんは誰かの兼任でもよかったですから。
いやそうですねドラマには「陸艦の水上走行モードは速度が遅い」という設定が無いんですよね。こんなことに引っかかる私の方がどうかしてる。

ティア「兄さんは……優しかったヴァンデスデルカ兄さんは、もういない。それに、軍属である限り、民間人を守るのは私の義務だわ」
ルーク「……強いなお前は。自分のことよりも、他人のことを考えてる。俺なんか、いつも自分のことばっかりだからさ。お前のことすっげぇ尊敬する。……でもな。お前だって少しは自分のこと、考えたっていいんだぜ。……そんなに強がるなよ。な」
ティア「あなた……変わったわ」
ルーク「っ。何だよ急に」←照れ
ティア「ほんのちょっと前、タルタロスの……やっぱりこの場所で、二人で話したこと覚えてる?」
ルーク「ああ……。『俺は師匠せんせいの一番弟子だ。事と次第によっちゃ師匠の妹だからって――女だからって容赦しねぇ』……だっけ。ふっ。すぐにお前にブン投げられちまって。はは」
ティア「誰かを傷つけることの意味さえ知らなかったあなたが、今は私を気遣ってくれる。自分のことよりも、他人のことを考えている」
ルーク「ティア……」
ティア「人は変われるのね。でも、兄さんはそう思っていない」
ルーク「戦いから……外れてもいいんだぜ」
ティア「馬鹿ね。あなたのことを見ているって、約束したじゃない。それに……兄を討つのは、妹である私の役目だわ」
ルーク「……無理するなよ」
ティア「ありがとう、ルーク」

↑このやり取りは分かり易くてよかった。Vol.1からの反復シチュエーションにより、ルークとティアの変化が浮彫りにぃ。


設定は物語のスパイスに過ぎない。それでもやっぱり引っかかる。極秘ではない正式任務ならタルタロスには三百人弱は乗務員がいるはず。けど、ヴァンが待ち構えるアブソーブゲートのパッセージリングへ赴いたのは、ルーク、ガイ、ティア、ジェイド、アニス、ナタリアの六人でした。
何故だ…。普通に不思議だ。
というか、どうしてここにアニスとナタリアがいるのかが理解できない。
ドラマのナタリアは未だ実戦こなしてないよ? そんなお姫様を連れてくるとは。足手まといで危険だよー。
ドラマのアニスは、正直仲間という感じが全くしない。何でこの人ここにいるんだろうとしか思えない。

原作では、ルークたち六人は長い旅を共にしてきました。その積み重ねがあってこそ、ヴァンとの戦いにあの六人で挑んだ。でもドラマではずーっとそれぞれが別行動を取ってましたので。ナタリアはルークの幼なじみだけど殆ど一緒に旅してない。アニスはちょこちょこ同道はしたけど、心の繋がりがまるで語られてない。
なのに、ヴァンを前にするとティアの心の友だという顔をして「あなたがその軽挙妄動を慎まねば、ティアが苦しみます!」「妹と戦うなんて、総長、本気なの!?」とか言い出すのは謎でした。空々しいぞ、おい(苦笑)。
ついでに言えば、ここでルークが「師匠! 考え直してくれ。ティアの為にも。――お願いします!」と勢いよく頭下げたのは、プフーーーッ!! すんません爆笑しました。いや説得しようと言いながらロクに説得しなかった原作をきちんとフォローしてるんだけど。言い方が。素晴らしいなルーク! 爽やかスポーツマンだ!(というかアレですか、やはりラスボス戦の「ありがとうございました!」の伏線なんですか。)

そしてアッシュはどこ行っちゃったのか。原作と違って、もう怪我は癒えてる筈なので、ヴァンを放置して姿を消してる理由が謎。他のセフィロトに行ってるのかもしれませんが、それらは他のチームが操作してるし、原作の『パッセージリングを操作できるのはルークとアッシュだけ』という縛りが存在しないので、アッシュがわざわざ他のセフィロトに行かなきゃいけない理由も無く、やっぱり謎。さて次の最終巻でどんな説明がされますか。

#ヴァンとの対決シーン。音楽がかっこいいです
ルーク「……どうして。どうして人は変われるって信じられないんですか!!」
ヴァン「戯れ言を。ならば私を変えてみせろ。愚かなレプリカルーク」
ルーク「師匠……いや、ヴァン! あなたが俺を認めなくても、俺は……俺だ!!」

ヴァンとの戦いが始まったところで『次巻へ続く』となりましたが、次巻は、きっとまたすっごい話が飛んでるんでしょうね。下手するとダアトでイオンと話す所から始まったりして。
現在まで、ローレライの存在が本気で無視されてますし、コンタミネーションの説明も全く行われない。なので、このままだと大爆発ビッグ・バン設定が適用されることはまずありえない。普通に「ルークが帰ってきた」という結末で終わりそう…。さもなきゃ、エルドラントでルークが消えて、みんなが「ルークは帰ってくるさ」と言ったところで余韻を残しつつ終了、とかになりそうな感じですね。

そんなこんなで、今巻の総合的な感想は。
「利便重視で積み重ねを無視しちゃいけないね」
そして
「設定はいじればいじるほど歪む」
でした。

次巻は一ヵ月後発売の予定でしたが、発売延期だそうで。
いつ聴けるのか分かりませんが、楽しみにしたいと思います。

 



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