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『電撃マ王』2009年連載分

 アスキー・メディアワークス/『電撃マ王』/玲衣

『電撃マ王』連載の『アビス』本編コミカライズ。原作ゲーム発売より早く連載開始した、関連物の中では最も古参の作品です。

 

3月号

 2009年1月末発売です。

 雨の中でルークはどん底になり、ティアの頬に流れるものは雨か涙かで、アストンが乗った譜業大八車が港へ向けて爆走し、リグレットとヴァンは濡れ濡れで色っぽいという、盛りだくさんな回でした。でも流石にパイルダーオンはなかったぜ。

 

《地核振動停止作戦》を扱う二回目。シェリダンの職人たちを犠牲にしてタルタロス出港しルークが涙する、という大筋は原作に沿っていますが、含まれるエピソードはほぼ全てオリジナルになっています。

 この漫画版は今までもアレンジ展開を多く行ってきましたが、ストーリーを短縮するためでした。ところが今回は明らかに方向が違います。大幅に膨らましているのです。

 この感想は半年後に書いていますが、膨張傾向は現在も続いていて、結局、《地核振動停止作戦》に連載六回分を消費しました。今までなら二回、多くても三回程度で始末していたでしょうに。

 これがどういう理由からなのかは分かりません。アニメ版が放送された関係で単行本刊行予定数が増やせて余裕ができたのか、単に漫画家さんの心境の変化なのか。

 

 前回の感想で、大八車で演算機を運んでいるグループに何故かイエモンがいないと書きましたが、今回、車輪付きの巨大火炎放射器に乗って画面隅に登場。脈絡なくアストンたちより高所の道にいましたが説明はありません。……マジで前回は存在を忘れていたんでは…(汗)。

 アストンとタマラの活躍はオリジナルエピソードでたっぷりと描かれましたが、イエモンは2コマ火炎放射したのを唯一の見せ場にして人知れず死亡。

 結局、イエモンとルークが絡むエピソードを全く作らなかったですね。それでもレプリカ編になったらイエモンレプリカが登場してルークたちが心抉られるんでしょうか。それとも、タマラレプリカに変更されるのかな。そもそも登場しないのかもですね。ガイのお姉さんのレプリカだけでも話的には問題ないから。

 

 土砂降りの中、ルークたちが乗ったアルビオールがシェリダンに着くと、街は襲撃されていて所々火の手が上がり、職人たちの死体が転がっていました。かろうじて息のある職人に駆け寄るノエル。彼は、ギンジと『い組』とキムラスカ兵が港でタルタロスを守っていることを告げ、地核突入に不可欠な演算機を運んでいる『め組』を探せ、あれを壊されたらおしまいだと言い残して息絶えます。

 その様を見たジェイドは、悔しそうに顔を歪めながら言うのでした。

「嘆くのはあとです。時間がない」「――今の最優先事項は」「タルタロスを無事に出航させること」「この意味がわかりますね? みなさん」

 そして、以下のように指示しました。

「手分けしてアストンさんたちを捜しましょう」「港に向かう道を下りながらしらみつぶしです」
「ティアとナタリアは一緒に行動を」「十五分経った時点で二人は港のキムラスカ兵の援護に向かってください」
「…ノエル」「アルビオールは地核から脱出するときに必要になります」「め組の捜索は我々にまかせて あなたは直接タルタロスへ向かっていただきたい」

 軽く自失していたノエルは、操縦士の誇りを支えに立ち上がり、ルークたちはそれぞれ駆け出していく。(ミュウは残留。恐らく、アルビオールに乗ったのでしょう。)

 イオンは自分も捜索に行くと言いましたが、ジェイドは、行かせると街の人々を救うため譜術を使うだろうから駄目だと止め、アルビオールでタルタロスへ向かうよう指示します。そして、譜術を使って何が悪いのかと食い下がるイオンにこう言ったのでした。

「イオン様」「何度も忠告してきたはずです」「譜術はあなたの身体に大きな負担をかける」「あなたは…生まれつきお体が弱い」
その理由が私の想像通りならば」「どうしても行かせるわけにはいきません」

 衝撃を受けるイオン。意味が分からずに首を傾げるアニス。ジェイドはアニスにイオンを任せると、自らも捜索に向かったのでした。

 

 ルークをアストンの大八車に相乗りさせる展開に繋げるためとは分かっていますが、屁理屈を言えば、このジェイドの采配はちょっと疑問でした。

 これだけ大勢の人間が殺され街が荒らされている。敵は複数と考えられます。いくらルークやガイの腕が立つと言っても、一対多数では分が悪すぎます。目的は演算機とそれを扱える技術者の守護・奪還であり、発見そのものではない。連絡ツールもないのですし、戦闘要員全員で探すか、せめて複数人ずつのグループに分けた方がよかったのでは。

 それに、ティア達に港の援護に向かえと指示しているからには、港での騒乱の可能性を想定していると思いますが、にも拘らず、ノエルにはアルビオールで直接、港のタルタロスへ向かえと命じています。しかもイオンを連れて。

 どう考えても、十五分後に徒歩で港へ向かうティア達よりも、アルビオールの方がずっと早く到着する。安全ではないと思われる場所に要人を乗せたアルビオールを向かわせて、何をさせたいのでしょうか。

 ……うーん。ティア達を援護に向かわせたのはフェミニスト的な詭弁で、港は安全だと思ってたってことなのかな。

 

 それと。こっちは結構大きな疑問ですが。どうしてイオンに向かって、お前がレプリカだと知っているぞ、と示唆するのでしょう。

 それは事実ですが、現時点のジェイドにとっては推測でしかありません。国際問題になり得ますので気安く言えることではなく、何より、イオン自身が隠しています。イオンは知られたくないのです。

 正直、原作のジェイドなら、それらを斟酌して言わないだろうと思いました。また、言う必要もないです。レプリカであろうとなかろうと、身体が弱いから譜術を使ってほしくない、これだけで止める理由として充分だからです。

 どうして、無為にイオンに精神的圧迫を与えるのでしょうか。流石の死霊使いネクロマンサーも、襲撃ショックで頭のネジがすっ飛んでたってことですかね?

 

 アストンは、足止め役をイエモンや若手技師たちに任せ、演算機を積んだ大八車に自分とタマラを乗せて爆走。神託の盾オラクルの包囲を抜けて港を目指します。エンジンが付いている訳ではなく、ジェイドが言ってたように、港までずっと下り坂だってことらしいです。

 爆走する大八車の上で、若き日を思い出して最高に盛り上がるアストンとタマラ。キラキラ青春してます。が、ほどなく大八車が横転、投げ出されて腰を強打。たちまち盛り下がって、弱々しく罵り合う二人なのでした。青春の輝きは一瞬なのね。

 

 その頃、(見つけるんだ)(死なせちゃいけない)(これ以上)と必死に探し回っていたルークは、上空を飛んで行ったアルビオールに導かれるように一本の道を見出す。一方、神託の盾兵に今にも殺されそうになっていたアストンとタマラは、上空を低く飛んで行ったアルビオールを見て、その美しさに感動。自分たちの技師人生への誇りを新たにする。

 その直後、ルークが駆け込んできました。上から追ってきたはずなのに、下から。

 ルークと目が合った瞬間、タマラは、アストンと演算機が乗った大八車に体当たり。ルークめがけて転がり落とすや「ぼうや いきなさい」「いきなさい!!!」と叫びます。ばーちゃんの怖い顔に迫力負けした(?)ルークは泣いちゃって「ごめん!!」と叫ぶと爆走する大八車に飛び乗り、その場から脱出したのでありました。(またすぐに横転、とかしなくてよかったなァ。)

 

 ……ほらほらジェイド〜。単独捜索なんてさせるから、ルークが何しに行ったんだか分からないことになってますよ。タマラの方に助けられてんじゃん。

 原作では、神託の盾にルークたちが襲われたのを、タマラたちシェリダン勢が助けに来てくれ、ルークたちは涙の脱出をする。漫画版ではそれを逆転させ、なのに土壇場のみ原作の形に戻したので、なんか歪んでいます。

 全てジェイドのせいだ。うん。(責任転嫁)

 

 今回はこの場面がクライマックスになっており、以降から出港までは、断片的な絵でしか描かれていません。

 小さなコマで、港も襲撃を受けていたこと、そこでヘンケンが戦って殺されたこと、ギンジとアストンは無事で出港を見送ってくれたことが判りますが、ルークがどのように仲間たちと合流して乗艦・出港したのかは不明です。

 原作でのイエモンの末期の台詞をヘンケンが言い、ヘンケンとキャシーのそれをタマラが言うように入れ替えてあって、キャシーはタマラの台詞の中に名前があるのみで一コマも姿が描かれていません。翌月連載分で、ルークが犠牲者の一人としてキャシーの名を挙げ、血だまりの中の手だけが描かれた小コマがあるので、多分それがキャシー?

 

 ルークが脱出した直後、タマラは刺殺される。リグレットはその場に立ち止まって、彼方の港からタルタロスが出港していく様子を見ながら「逃した」「なんたる失態だ」と呟いている。そこに濡れ濡れでシャツを肌に貼り付かせたヴァン閣下が出現。シンクのタルタロス潜入が成功したことを聞くと全軍撤収させます。

 つまり、ルークがヴァンと顔を合わせていません。ティアも、兄や教官が民間人を殺す場面を見ていません。そして、リグレットがタマラの死を見て僅かに心苦しそうにする描写もありませんでした。

 

 それはそうと。「なんたる失態だ」と呟くリグレットの全身立ち絵。雨に塗れた彼女の巨乳に、くっきりと乳首の影が描かれています。

 実は初見時、これに強烈な印象を食らわされて、他の感想が全て吹っ飛んでしまったくらいでした。

 この漫画が連載されている雑誌『電撃マ王』は、創刊当時から性的に相当きわどい漫画が載っていて、女の子のヌードやパンツ、乳首そのものの描写も当たり前。そういうカラーの雑誌なわけで、乳首の影ごときが描かれたからって、今更何ということもないはず……。そもそも単行本見返したら、漆黒の翼が初登場した時も、ノワールの乳首の影がくっきり描いてありますね。(^_^;)

 なのに今回、どうしてそんなにギョッとしたのか自分でも分かりません。ノワールはお色気キャラだけどリグレットは堅物キャラだからかなぁ。単にかなり大きな絵で描いてあったからかな。

 この回が収録された単行本6巻のAmazonのレビューを見たら、やはりこの乳首の影に言及している方がおられたので、あ、気になったのは私だけじゃなかったんだと、ちょっとホッとしたり。


4月号

《地核振動停止作戦》を扱う三回目。

 原作では僅かな会話のみの《ティアに八つ当たりした後、悲しみから立ち直るルーク》というエピソードを膨らませ、なんと丸々一回分をそれだけで消費しています。今まではありえなかった贅沢ぶりです。

 漫画家さんのブログによれば、コンテをチェックするバンナムの担当者さんに、少年漫画のように熱い、と褒められたのだそうです。

 それと、錯覚かもしれませんが、ガイの扱いがこれまでと違うと感じました。なんと言っていいか……。話の中で積極的に使われてます。エピソードの最初から締めまで、筋を通して存在してるし。多分、今までの足掛け五年の連載の中で、今回が一番扱いが良いです。

 

 航行するタルタロス内部で、演算機の取り付けと整備を行っているジェイドとガイ。ジェイド曰く、嵐で遅れが出ているそうですが、出港のとき雨だったことを言っているのかな?

 二人以外のメンバーは休息しているらしいですが、みんなシェリダン襲撃のショックから立ち直れていないようです。

 

 仕事を終えたガイが甲板に出ると、ルークが座り込んで海を見ています。傍に寄り添うミュウ。ガイが軽くため息をついていましたから、ルークはずっとこうしていたのでしょう。

 シェリダンの人々の死を自分の非力のせいとし、これじゃアクゼリュスの時と同じだと吐き捨てるルーク。ガイは「……同じじゃないさルーク」「少なくとも彼らは俺たちと一緒に戦ってくれた」「違うか?」と言ってくれますが、聞く耳持ちません。泣き腫らした目から再び涙を流し、ついにはこう言います。

「みんなが生き返るならなんでもするのに」「もしもみんなが俺が死ぬことで生き返るなら」「いっそ」「死んで償いたい」

 この漫画版では、原作だと断髪時にあった「アクゼリュスのこと……。謝って済むならいくらでも謝る。俺が死んでアクゼリュスが復活するなら……ちっと怖いけど……死ぬ」というルークの台詞を採っていなかったんですが、ここで補完したのでしょうか。

 

 そこにティアが現れ、あなたが死んでも泣いても何も変わらない、やるべき仕事があるのだから落ち込んでいる暇はないのよと冷徹な顔で諭します。カッとなったルークはティアの胸倉を両手で掴む。ここは原作通りの動きですが、丸一ページを使い、続く台詞も大ゴマ・アップにして、大迫力で描いていました。

「おまえ…なんでそんなに冷静なんだよ? 哀しくないのか!?」「どうしてこんなときまで すました顔していられるんだ!?」
おまえはやっぱり冷血女だ!!

 原作のティアは、むしろ意地を示し、思わず潤んでしまった瞳以外に感情を見せませんでしたが、漫画のティアは最後に

「そうね」「そうであるなら」「――どんなに…」

と、はっきり泣きそうな顔を見せて、弱さを露出し、ルークをハッとさせていました。とっつき易いです。

 

 以前、原作のこのシーンの感想に、ルークが何日も何時間もぐずぐず悲しんでいたならともかく、出港直後に「悲しんでも何にもならない」と言ったティアの行動は角を立てるものでしかない、などと書いたことがあるんですが、この漫画のルークは、どうやら本当に何時間も何もせずにぐずぐず悲しんでいたみたいで、ティアに叱られても当然って感じになってますね(笑)。展開が自然でいいなぁと思います。

 もしもアニメ版が4クール放送だったら、きっとこういう感じのエピソードが描かれたんでしょうね。漫画版はこのまま、原作でもアニメでも成し得なかったストーリー補完を目指していくのでしょうか?

 しかし、この調子で進行するなら、完結までに本当に十年かかりそうなんですが……。まさか、テイルズシリーズ二十周年まで連載を続けたりするんでしょうか。(^_^;)

 

 ティアが自力でルークの手を外して立ち去った後、ガイが気の毒そうにその背を見ながら呟きます。

「…誰なんだろうな」「一番つらいのは」「彼女の――兄なんだぜ?」「じいさんたちを死に追いやったのは……」

 原作の該当シーンの台詞があまり好きではなくて、アニメ版のアレンジ台詞「ティアだって、本当は泣きたいはずだよ」「爺さんたちを殺したのはティアの兄貴だ」がイイなと思っていたので、原作寄りの《誰が一番辛いのか》が含まれた台詞になってて、ちょっと残念でした。

 その代わり、すぐ次に繋げてノエルの様子を描写し、ティアが最も可哀想、という流れにはならないようにしてありましたが。

 加害者の身内のティア。被害者の遺族のノエル。第三者だけど庇われ託されたルーク。一番辛い人を探して、何になるんだろう。

 

 やがて日が暮れる。

 誰が一番辛いのか、というガイの言葉で周囲に目が向いたのか、ルークはミュウを供に、甲板のアルビオールへ向かいます。ノエルはアルビオールのデッキで独り、泣いていましたが、ルークが話しかけると涙を拭い、強いて明るく笑って見せるのでした。

「ルークさん 私ね」「おじいさんの遺志を引き継ごうと思います」「この計画が完成するところを見届けたいんです」「私はアルビオールの操縦士です」「これからも!!」
「だから今は少しだけひとりにしてください」「少しだけ――」

 ルークは多分、ノエルに謝ろうとしたんでしょうけど。気を遣わせたうえ、穏やかにながら背を向けられてしまいました。ダメダメですねぇ。

 どうでもいいけど、このシーンのミュウが凄い顔で涙してます(笑)。

 

 夜が更けて、ルークは今度は船室にこもってベッドにうずくまり、膝を抱えて静かに泣き続けます。アクゼリュスを落とした時だってここまで泣いてませんでしたから、よっぽどこたえたんですね。ミュウはベッドに上らず、床に座ってベッドに寄りかかってしょんぼりしてます。ルークの馬鹿〜。小さいミュウにこんなに気を遣わせるなよ〜。

 最初にティアやガイの言葉を思い浮かべはしますが、それでも思考はマイナス方向へ雪だるま。二人の言葉は届かなかったみたいです。

(みんなが生き返るならなんでもするのに)(みんなが生き返るなら)(もしもみんなが俺が死ぬことで生き返るなら)(いっそ――)

 おいおい。

 こんなどん底まで転がり落ちた時、ルークは最後に聞いたタマラの言葉を思い出します。実際には必死な厳しい声で言ってたのですが、ルークの脳内に浮かんだタマラの顔と声は限りなく優しい。

『ぼうや』 『いきなさい』

 平仮名なんで、《行きなさい》と《生きなさい》をかけてるのかなーなんて妄想もできますね。

 その声を幻に聞いて、ルークは泣き濡れた顔を上げる。まさにその瞬間、夜が明けて、光が眩く世界を照らし出したのでした。

 この辺は、この漫画家さんお得意の、重ねたイメージを駆使したリリカルな紡ぎ方ですね。

 

 朝の光の中、腕組みして通路の壁に寄りかかっていたガイは、部屋から出てきたルークを認めて安堵の息をつき、「……もう大丈夫だな。そのツラなら」と笑顔を見せる。

 目元は泣き腫らしたまま、それでも強い意志の光を瞳に取り戻したルークなのでした。

 今回はここまでです。

 

 今回はガイがいい役をもらってて嬉しかったです。あと、ミュウが落ち込むルークにずっと寄り添ってるのが良かったなぁ。きゅーんとしました。

 それはそうとラストシーンのガイ。まさか一晩中、ルークの部屋の外に立って心配してたのかな。いやいや。さわやかな顔してましたんで、早起きして様子を見に来たのかも。

 なんにせよ、親身に心配してくれる友達がいるっていいですね。

 

 今回は、漫画家さんによるアニメアフレコレポート漫画が2P、付いていました。単行本7巻に収録されるんでしょうか?


5月号

《地核振動停止作戦》を扱う四回目。今回は地核突入からシンクが妨害に現れたところまで。描線がちょっと気がそぞろと言うか、ポソポソした感じでした。

 ちなみに、この掲載号が発売された頃、アニメ版が放映を終了しました。

 

 アクゼリュス崩落跡に到着したタルタロス。原作通り、砲台から射出した譜陣に乗って地核まで降りますが、動画ではないので説明しづらい分、キャラクターたちの台詞によって状況説明の補完を行っていました。

 アニスが騒ぎルークは黙って驚いていて、ジェイドが説明し、ガイはその説明を聞きつつ嬉しそうにウンウン頷いてる。ミュウが、一人前に一席を与えられていて可愛いですね。

 地核の中でガイが第七譜石を見かける伏線がちゃんと入れてありました。

 

 タイムリミットまで五時間。地核の中で無事に振動中和装置を起動させ、ホッとした……途端に、艦内の電源が落ちて真っ暗になりました。ギシギシと艦がきしみ、ガイが機関室へと駆け出します。懐中電灯で照らしだされたそこは、配線がズタズタに切断されていました。

 ガイが言うには、圧力中和装置の主力動力配線が切られているので、保って二十五分で艦が潰れてしまうとのこと。脱出だけならアルビオールでできますが、そうなれば振動中和装置は永遠に失われ、二度と作戦遂行できない。イエモン達はもういないのだから、と。

 ……いやでも、アストンや何人かの技師は生きてたし、設計図は残ってるだろうに。

 ともあれそういうことになりまして、情況は絶望的ということに。珍しく、ジェイドが絶望をあおるような後ろ向きなことを言いますし。

「…無理です」「こんなにも複雑な配線」「技師の手も借りずに暗闇の中…… 三十分足らずで繋ぎ直すなんて」

 ジェイドに頼ればなんとかなーると思っていたルークたちはガビーン。暗黒の沈黙が落ちる……。と。

「――いや」「たしかに ここには技師はいない」「時間もない」「状況は最悪だ」「だが」
「俺がいる」「音機関好きのガイ様がな」

 ガイの緊張した、けれど不敵な笑顔を見て、同じように不敵に、明るく笑い返すルークなのでした。信頼厚き友情ですね。

 どうしたことでしょうか。前回に引き続き、今までになくガイに花を持たせてくれてますよ。『マ王』漫画版の今年上半期はガイフェスタなのかしら。

 

 ガイの指示に従って、ジェイドはガイの助手を務め、ルークとティアは侵入者の捜索と予備動力の防御、イオンとナタリアとアニスはアルビオールに避難です。(次回分を見るに、イオンをアルビオールに乗せた後、アニスとナタリアは取って返して侵入者捜索を始めたみたいですが。)ミュウも多分アルビオール。

 ティアと共に通路を駆けるルークは、懐中電灯も持ってないのによく全力疾走できるよなと思います。鼻折るよ。

 走りながら、出港から五日もあったのに今になって装置を破壊するとは、侵入者は俺たちと心中するつもりなのかと疑問を口に。すると横の通路からシンクが自ら出現。不遜に笑うと、生きるか死ぬかのゲームを楽しもうじゃないかと言い放つのでした。

 今回はここまでです。

 

 原作ではアルビオール脱出用の譜陣をシンクに消されてしまい、ジェイドの指示でルークとティアが描き直すミニゲームが発生するのですが、物語としては、タルタロスの圧力中和装置を破壊されたというこの設定の方が無理がなくてずっといいですね。ヴァンの目的は、ルークたちの抹殺よりは地核振動静止の阻止のはずですし。素晴らしいアレンジだと思います。

 

 そういえば、今号には単行本第6巻の発売を記念して、特製かけかえカバーが折り込み付録として付いていました。絵は、子爵ルークとメイドティアです。


6月号

《地核振動停止作戦》を扱う五回目。

 シンクとの戦闘に丸々一回を費やしています。完全なオリジナル展開。今回は本当に少年漫画的ですね。

 

 修理が間に合わなければ艦が圧解するまで残り十分。シンクとの戦闘が始まります。パンチ、キック、くないと、アニメ版っぽい、バリエーション豊かな攻撃でルークに挑むシンク。ティアが背後から譜術で援護しますが、シンクは自分の服についている紐を外してティアに投げつけ、それにがんじがらめにされた彼女は背後の壁に身体を打ちつけられて気絶してしまいました。

 このシーンのティアの絵がいやにエロかったです。紐が口を塞いでるし巨乳がぷるぷるしてるし。拘束プレイ?

 

 ティアがリタイアして残り時間五分。ルークは長々と喋り出します。彼にしては珍しく、口撃作戦に切り替えたらしいです。

「…おまえ」「これをゲームって言ったな?」
「だったら…このゲームは最初からおまえの負けだ」
「ガイはこの船を直すぜ」「必ず…時間内に!!」

 シンクはムッとして、そうしたらお前らを皆殺しにしてもう一度艦を破壊するまでだと言い返す。するとルークは言うのです。

だったらイオンさえ無事ならいい
「たとえ俺たちが死んでもイオンだけは必ず生きて地上に帰す」「あいつなら優秀な技術者や勇敢な仲間をすぐに集められる」
「いや たとえ誰が生き残ったとしても」「俺たちは何度でもここに来る」「たとえ一からやり直しでも」「絶対にあきらめない!!」
「だから…おまえの負けだ」

 そう言って不敵に笑うルーク。

 とてもいいこと言ってる感じなのですが、うーむむむ…(^_^;)とも思いました。圧力中和装置が破壊されて艦が潰れそうになっている今、脱出だけならすぐに出来るけれど、あえて残って修理をしているのは、技師が殺されて二度と振動中和装置が作れない、即ち、やり直しがきかないから。そういう前提が、つい前回、提示されたばかりです。なのに「イオンもしくは誰かが生き残れば何度でもやり直せるよ」ってアンタ。

 間違ってませんし前向きでとても宜しいのですが、状況前提がぶれまくりですな。いいけど。

 ついでに突っ込み入れとくと、そんなに何度もやり直してる時間的余裕はないよーな。地核の振動を止めようとしてるのは、一刻も早く外殻大地を下ろさないと崩落するからなので。

 

 もっとも、ルークは時間稼ぎのためにこう言っただけで、実際はこのただ一度の機会を、何が何でも成功させようと思っているのでしょう。……ですよね?

 が、このスピーチはシンクをブチ切れさせました。ルークがイオンを高評価しているのが、チョー気に入らなかったみたいです。あんたたちは導師に騙されていると嘲り、最初に導師を片づけようと言うと、壁をぶっ壊して一気に甲板のアルビオールへ向かう。イオンがアルビオールに乗ってること知ってたんですね。

 アルビオールのガラス張りの機室の中にイオンが見える。シンクはそこ目がけて、譜術・アカシックトーメントを放とうとする。

 その瞬間、追うルークの投げた剣がシンクの仮面を砕き、譜術はガラスにヒビを走らせた程度で不発に終わったのでした。

 

 で、それと同時、圧解タイムリミット 一分前にガイの修理が完了。艦の灯りがパッと点いて、艦橋ブリッジで各動作を確認したジェイドは「本当に…やってくれましたね」「大したものですよあなたは」「ガイ」と微笑み、機関室のガイは、工具や配線にまみれて大の字に寝っ転がって、実に満足げに笑っているのでした。

 ここ数回は、本当にガイが厚遇されていましたね。堪能させていただきました。

 

 この漫画版は、ガイがシンクにカースロット(ダアト式譜術)をかけられるエピソードをカットしていました。ですからここで、イオンがシンクの放とうとしたアカシックトーメントを見て「その術は…アカシックトーメントは本来導師にしか使えないもの」「やはりあなたは僕と同じ――」と言う、という形に変形・補完してありました。

 シンクは気まずげに甲板に飛び降り、イオンはアルビオールから降りて、アニスとナタリアが艦内から駆け出してきてルークに並ぶ。シンクの素顔を見て驚くアニスたちに向かい、イオンは、自分もシンクも本物の導師イオンのレプリカだと明かす。

 

 一方、気絶したまま放置されていたティアが人知れず動き、譜を唱えもしないで、己を拘束する紐をジュッと蒸発させて立ち上がる。そして虚ろな表情のまま、「私を――解放してくれルーク」「この永遠回帰の牢獄から」と謎めいた言葉を口にするのでありました。

 今回はここまでです。


7月号

《地核振動停止作戦》を扱う六回目。ようやく終了です。ページ数が少なく、20Pになっています。

 

 シンクの死の辺りは、ほぼ原作に沿っています。ただ、原作やアニメ版を知らない人には、シンクが飛び降り自殺したんだってことが解り辛いかも? 落ちていく絵を描いていないので。

 シンクの死を悲しんでいるところに、何者かに憑依されたティアが出現。ローレライと名乗って解放を要求すると、倒れて気絶してしまいます。ティア、前回から気絶してばかりですね(笑)。

 

 地核から脱出するアルビオールの中で、意識を取り戻したティアを囲んで話し合い。ジェイドが言います。

「ローレライとは第七音素セブンスフォニムの意識集合体と考えられているものの呼称です」
音素フォニムが自我を持つ――にわかには想像しがたい話ですがね」

 え(汗)?

 単行本を読み返してみたら、漫画版では、音素の意識集合体について仲間たちがルークに説明する場面がカットされていたんですね。

 原作だと、外殻大地編で二回目にキャツベルトに乗った時、音素は一定以上集まると自我を持ち、それを操ると高等譜術が使えること、第七音素の意識集合体のみ未だ観測されておらず、実在が確認されていないことが語られています。つまり、音素が自我を持つこと自体は科学的に証明されており、一般常識として知られているわけです。

 漫画版では音素意識集合体は《想像しがたい存在》? これは、一切観測されてないということなのか。単にジェイド個人の感想として、観測されていようが想像しがたいということなのかな。

 

 ティアを医者にかからせるためにベルケンドへ。原作では全員で病院まで付いて行きましたが、漫画版ではナタリアとジェイドのみ付き添いらしく、残りは宿屋で休んでいました。

 ベッドに大の字に寝っ転がるルークが可愛いです。

ねえ これで――よかったんだよね」「私たち」と、誰にともなく不安そうに確認するアニス。あまりに多くの命を犠牲にした作戦だったからですかね。ガイが「…ああ」「俺たちは俺たちのなすべきことをひとつ やり遂げたんだ」「それだけは…たしかさ」と言いますが、イオンもルークも、当のガイすらも浮かない顔です。

 そこにナタリアが駆け込んできて、「ルーク! 一緒に来てください」「早く」「ティアが!!」「ティアが……!!」と泣きながらルークの手を引くのでした。

 今回はここまでです。次回はルクティア満載回かなー。

 

 翌月号は休載で、再開は七月末発売の9月号からとなります。

 どうでもいいけど、お便りコーナーに「物語も中盤に」って書いてあるの、凄く長く見続けているような気がする。いつになったら中盤を越えられるんだろう。


9月号

  休載を一回挟んでの連載再開……の予定でしたが、5Pの四コマギャグ漫画「それゆけ! またまた帰ってきた第七音譜術士セブンスフォニマー」に変更されていました。この四コマシリーズは、今までは単行本巻末の書き下ろしでした。次号こそ本編再開、とのこと。

 可愛くて面白かったです。ティアとガイは意外と似た者同士? ナタリアがおかん的立ち位置なのもイイ。

 ところでガイは子供時代にルークにプリンを奪われたそうですが、八年前ならルークではなくアッシュのよーな。台詞の誤植かな。

※単行本七巻に収録された際も「八年前」のまま、修正されていませんでした。原作設定では七年前に作られたレプリカルークは、この漫画では八年前から存在していたようです。


10月号

 突如アブソーブゲート決戦に突入。何ヶ月分か読み飛ばしてたっけと混乱しました。

 あまりに急激な風呂敷畳み。崩落編でコミカライズ終わらせる訳じゃないですよね。(^_^;)

 この調子で話を詰めるのなら、レプリカ編含め、あと一年くらいで連載を終わらせるのかな。全九巻くらいか? 

 

 今回、気になったのは以下の部分。

  • アブソーブゲート決戦場にもイオンが同行。
  • アブソーブゲートを降りていた時にセフィロトの逆流が起こり、吸いこまれていた記憶粒子セルパーティクルがゴッと噴き上げてジェイドが焦る、というアレンジはよかった!
    アニメ版に想を得た脚色ですよね。フィードバックし合っているなぁ。
    • 追記。フォームからご指摘をいただきました。記憶粒子は噴き上げたのではなく、吸い込まれていると。つまり、アニメ版の間違いをそのまま踏襲しているってことですね……。
      (アブソーブゲートは「吸い込み口」なので記憶粒子が吸い込まれているのが通常の状態。しかしアニメ版では「逆流した記憶粒子が元に戻った」と、それまで吸い込まれていたのが噴き上げるという、反対の描写をしていた。)
  • アブソーブゲートカクカクぐるぐるぅ。
  • 見開きヴァン師匠せんせい怖い。目ピカー。

 

「じゃあ後ろ向いてる」のルクティアイベント以外、《地核振動停止作戦》以降のエピソードは全てカット。降下作業は描いていますが、スピノザの反省、ティアの出奔、ヴァンとの邂逅やアッシュの大爆発ビッグ・バン伏線、ロニール雪山は勿論、美味しいアブソーブゲート決戦前夜も一切なし。

 今年に入って急に物語進行が緩やかになったと思っていたら、(減ページと予定外の本編休載を挟んだうえで、)今度はワープ。不安を感じる構成です。


11月号

 アブソーブゲート決戦。決着は未だ付かず。

 相変わらず話が飛んでいるように思えます。

  • 何故か唐突に、ルークとティア以外の仲間全員(イオンまでも)がボロボロになって倒れている。ジェイド以外は全員気絶していて物語から完全に追い出されてます。
    • 前回ラストのヴァンの一撃で気絶したということかもしれませんが、その時のガイもアニスも攻撃を受けながら立っているので、気絶するほどのダメージに見えないです。
  • 今まで影も形もなかった(と思う)リグレットが唐突に描かれ、銃でジェイドを牽制している。
    • 先月分をじーーっと見て探すと、ごちゃごちゃした背景の前に立っている姿が小さくあるのが発見できました。

 ポカーン…。

 記憶力・観察力・想像力を試されているっぽい。自分の漫画読解力の低さをまざまざと認識させられるばかりです。(実は私、この辺りで心情的に一度、この漫画から脱落していました。数ヵ月後に気を取り直して読み直し、文章を少し追加修正しております。)

 

 で、ティアとヴァンが愛の告白をし合いつつ決別。

 ヴァンは、ラジエイトゲートでアッシュが超振動を放とうとしている、これがかねてよりの師弟の約束だと嗤う。「怯えているか? ローレライよ」と言ってるので、超振動でローレライを消そうとしているという意味みたいです。(どうせ、アッシュはヴァンの言うことなんて聞かないで、裏切られたヴァンが「馬鹿な…!」とか言うオチになるんでしょーが。)

 ヴァンに捨て駒だと言われたルークは、剣も折れ血まみれになりながらも立ち上がり「本当に俺はそれだけの存在なのですか?」と、何故か台詞に傍点つけて強調します。(ここでは下線で表現。)ヴァンの方も「何かのために生まれなければ生きられないというのか? 哀れなレプリカ・ルークよ」「だからおまえはレプリカなのだ」と、台詞の一部に傍点つけて強調。どういう意図なのか解りませんが、きっと後で説明するんでしょう。

 ちなみにこの場面のティアは、何故か頬を紅潮させてアップになって、感動している感じです。……多分、仲間全員倒されて絶望していたらルークが立ちあがったから希望が湧いた、という意味なんだろうけど……。どうしてこの漫画のティアは、全然ヴァンに攻撃しようとしないんでしょう。一人だけ完全無傷で陶酔台詞言ってるだけなんだよね。変なの。

 立ち上がったルークは、楽しかったヴァンとの思い出を見開き使って脳裏に浮かべ、涙をひと筋こぼしながらも

師匠せんせい」「いいや ヴァン」「違うよ」「あなたが俺を認めなくても」「もうかまわない」「俺は俺だ

と、ボロボロの上着を脱ぎ捨てるのでした。ワイルドです。ズボンまでもれなく端がボロボロになってるし。

 ここで今回は終了。

 

 前回の感想に、崩落編で終了するつもりじゃないかと書きましたが、その疑念が強まりました。レプリカ編まで続けるなら、ルークにここで、これほどはっきりと「違うよ」と言わせるとマズい感じですし。エルドラント最終決戦を前借りしてまとめてるよーな……。仲間たちが知らないうちに全滅してたり、大雑把とゆーか、とにかくさっさと終わらせようとしている感じに見えます。あーあ。

 

 それはともかく、柱に書いてある前回のあらすじ、アブソーブゲートと書くべきところがラジエイトゲートになってます。しかしもはや、どーでもいいことなのでしょう。


12月号

 アブソーブゲート決戦決着。

 絵がとても迫力があったと思います。ボルテージをいっぱいにまで振り切ってある感じでした。

  • 1ページ目で、やっと気絶していた仲間たちが目を覚ます。が、やっぱり戦闘には参加しない
  • 相変わらず頬を染め微笑んで、うっとりと ヒーロー・ルークを見つめ続けるティア
  • 前向きで諦めず揺らがず、精神的にヴァンをすっかり乗り越えた風情のルーク
    • ヴァンと斬り結びながらの「諦めない」「ここまで来たんだ」「たくさんの犠牲を払って」「だから」「諦めない」「俺は」「諦め」「ない!!!」という台詞は、いいなぁと思いました。
    • っていうかこれ、アニメ版最終話ヴァン戦のルークのオリジナル台詞「俺は絶対に諦めない。それが、俺の生きるってことだからだ!」の導入…?
  • 半分に折れた剣でヴァンと互角に戦い続けてるルーク。ガイ、剣を交換してあげてよー。
  • ポッキン剣がついに弾き飛ばされ、ルークのピンチ。するとジェイドが強力な譜術で援護。眼鏡が床に落ちるという演出付き。(ジェイドが自分で眼鏡を投げ捨てたのか? 譜術のせいで勝手にすっ飛んだのか?)
    • 原作のエルドラント最終決戦の際、ジェイドが眼鏡を外して指でくるくる回し再び掛け直すという謎の演出があります。スタッフインタビューによれば、最終決戦でジェイドが眼鏡を外して戦う、という没アイディアがあり、その名残なのだそうです。
      何故没になったかと言うと、ジェイドの眼鏡は譜力を制御するものに過ぎず、外すとパワーアップするものではないから。(暴走の危険が高まるだけ。)
      この漫画でジェイドの眼鏡を外したのは、きっと「理屈よりもカッコよさ」を優先した結果なんでしょうね
    • ジェイドが何の譜術を使ったのかは不明ですが、アニメ版に倣っているのなら「タービュランス」か
  • ヴァンと戦うルークを見て、微笑みながら「変われるんです…ね」「人は」「ユリアの預言スコアに一番とらわれているのは」「ヴァン」「あなただったんだと評するイオン
    • これは、原作アニスのエルドラント決戦時の台詞の変形
    • 前述のルークの台詞やジェイドの眼鏡を併せて考えるに、やはり、原作のエルドラント決戦をここにまとめているように思えます。つまり、この漫画の最終決戦は原作とは全く違うものになる可能性が…?
  • ジェイドの譜術に吹っ飛ばされつつリグレット叫ぶ。「い…いつの間に貴様!?」「封印術アンチフォンスロットが…解けて――」
    • この漫画ではまだ解けたことになってなかったんだっけ…。年単位で過去のエピソードでしたから、もはや忘却の彼方でした。ともあれ、一つエピソードの終端を結んだようです
    • 眼鏡を外したジェイドが片膝をついて眼光鋭く譜術を放ち終えている決めシーン、横にいるティアも杖を構えていて、その先に放電光らしきものが描かれているので、彼女は彼女で援護譜術を放ったということらしいです
  • ジェイドの譜術で隙の出来たヴァンの腹部に、ルークが超振動でとどめを叩きこむ。
    床が砕け、ヴァンは一言も残さず落下、退場
  • ラジエイトゲートで、ラルゴとアリエッタに見守られながら、ローレライ消去というヴァンの命令を待っていたはずのアッシュ。ルークがヴァンにとどめを刺した直後、「――来る!!」と言って、パッセージリングに何か力を放って、ヴァンへの裏切り行為をしたらしい
    • 何が「来た」のか不明。何をしてルークたちの味方をしたのかも不明。ルークによれば「あいつが支えてくれてる!!」そうですが、どういうことなのか論理的な説明は一切ありません
    • ラルゴ「…!? アッシュおまえ!! 何を――」(近付こうとするが、放電的なものに阻まれたらしい)「くっ!?」
      アリエッタ「あいつらの…味方をするの!?」
      アッシュ「俺は元より誰の指図も受けない」「俺の望むまま行動しているだけだ」「結局…目の前のことに必死なのさ」「おまえたちもそうだろう?」「答えなんてないんだ!!」「だから――俺たちは!!」

      意味不明です。
      「元より」誰の指図も受けない? ヴァンに依存して言われるがまま動いてきて、そこから脱却するためもがき苦しんでたんじゃなかったのか…。
      「答えなんてない」? 「答え」と言うからにはアッシュが元々、何かの答えを探していたということになりますが、そんな描写なかったと思う。それにどうして「答えなんてない」という結論になったのか。それはどういう意味か。何のことを言っているのかわからない。説明してください…。
      「だから俺たちは」と言っているのは、文脈的に、アッシュがルークと同じ気持ちだと言っているのでしょうが、どうしてまた一足飛びにそういう心情になったのか。説明してください…。
  • 崩落した床と共に消えたヴァンを追うリグレット
    • 制止の声をかけたティアに、振り向かないまま「自分の身を犠牲にしてでも…守りたいもの」「それが違っただけなのだ ティア」「私たちは」と言い残す
  • (リグレットの飛び降りた?)穴を覗き込んだティアは、ルークが折れた剣を壁面に突き刺して生き残っているのを発見し、明るく笑う
  • 崩壊しかけているアブソーブゲート。そんなボロボロの体でと心配するティアを制し、ルークはアッシュが支えてくれているのを感じると告げ、外殻降下を行う
    (ローレライの呼びかけは無し)
  • 見開きページを二回連続。
    ヴァンを想うルークのアップと独白&兄に呼び掛けるティアのアップを最初の見開きで。次の見開きで泣きそうに表情を歪めたルーク&悲しげに詠う(?)ティアのアップ、合間に切なげな様子の仲間たちを描写。
    最終ページに「…さようなら」という一言を付し、切なく仕上げて終了

 

 今回の柱のあらすじは、普通に「アブソーブゲート」になっていました。

 次号からも連載は続き、レプリカ編もコミカライズ遂行されています。ただし、内容はこれまでにない強さのアレンジが掛けられています。

 作者ブログによれば、夏に休載が二回続いたのは、体調不良、他誌連載のオリジナル漫画の執筆、そしてシナリオ調整の相談のためだったそうです。

 なんとなく、あと一年くらいかけて単行本一冊分描いて終わるのかな、と思いました。


1月号

 '09年11月末発売。

 レプリカ編突入。一ヶ月多く休載してシナリオ調整したというだけあり、読者の目から見て、よく練り込まれた物語圧縮がされているように感じました。仲間たちをあえて一度に合流させず、幾つかのグループごとに行動させ、並行して物語を進行することで、多くの情報を一度に表出させることに成功しています。

 それと、この感想を書いている時点であと二回分話が進んでますが、どうもアニメ版の影響が強い感じです。アニメ版のアレンジ描写を発展させて使っているらしき部分がチョコチョコ散見できるので。

 アニメ版が放映開始した時、この漫画の漫画家さんは、自分の漫画のアレンジ内容がアニメに取り込まれることに大喜びしておられましたが、今度は漫画の方がアニメを取り込んでいる。面白いなぁと思ったりします。

 

 物語の切り口も変更し、イオン視点でスタート。三ページに渡る彼の独白で世界の現状を説明。

 次いでルークの様子が描かれます。ローレライの呼びかけが《ルークの夢》の形で描かれる。原作ルークはローレライの言葉が理解できずに一ヶ月も放置して後手に回りましたが、漫画だとローレライの方が外殻降下の一ヶ月後に呼び掛けてきた、と。また、原作では「アッシュ、ルーク」と呼びかけてきますが、漫画ローレライは「ルーク」としか呼びかけず、「おまえたちに鍵と宝珠を送る」と言ってました。アッシュとルークどちらも《ルーク》という認識?

 それはともかく毎度おなじみ重箱の隅つつきをさせていただきますと、ローレライが送るのは「と宝珠」ではなく「と宝珠」でないと変です。剣と宝珠を一つに合わせたものが「鍵」ですので。

 

 ルークが屋敷でレプリカ差別を受ける・存在に悩む描写は全くありませんでした。ベッドから窓の外を見て物憂げに「今日も晴れ…か」と言う様子に、ほのかに片鱗が感じられる程度です。

 マルクトに帰還したガイが、使用人時代と変わらぬ様子で窓から入ってきて公爵邸ここにもたまには顔出さないと」「誰かさんが心配でな」「どうだルーク 久々に剣の稽古でもやるか? それとも――」と笑い、「ほら着替えた着替えた! 身体がなまって根がはえるぞ!」と中庭に引っ張り出す。

 色々なしがらみがある筈ですから、僅か一ヶ月でルークを元気づけるため外国から帰ってくるのは、物語とは言えちょっと非現実的ですが、ファンサービスの一環かもしれません。「国も立場も関係なく、大切な人のための行動は優先・容認されるべき」みたいな《夢》は、誰しも抱くものでしょうから。

 原作ルークの消沈した一ヶ月を思う時、「誰かが側で元気づけてくれてたら」と思うプレイヤーも多かったでしょうし、その《夢》を叶えたとか。

 ちなみにガイの服装は原作の称号服《スマートスタイル》に変更されていました。これもやっぱりファンサービスかな?

 

 この後、中庭で剣術稽古していると、ガイが呼んだというアルビオールが飛んできました。「視察も大事な仕事じゃないのか?」「親善大使殿」とウインクされ、途端に満面の笑みになるルーク。よほど屋敷の外に出たかったんですね。(裏返せば、一人では外に出られなかったのか。) そんでガイは、ルークを元気づけるためだけにどんだけ完璧な手配をしとるんじゃ。

 いえ。結局、アニメ版での母・シュザンヌの行動を、ガイにずらして膨らませてるってことですよね。部屋を訪ねて元気のないルークと話し、アルビオールを手配して外に出るよう促す、と言う。

 さて。ルークたちは即座に出かけようとしたようで、シュザンヌが驚いた様子で部屋から出てくると、ルークは振り向かず片手を振っただけ、ガイは両手を合わせて拝み倒す仕草をして、そのまま二人(とミュウ)で屋敷を出て行ってしまいました。仕方ないわね、と言う風に微笑むシュザンヌ。

 ペールも小さく描かれていて、ちょっと焦ってガイに駆け寄ろうとしてたみたいでした。

 

 アルビオールは広い草原みたいなところに着陸してましたが、ここはファブレ邸の庭なんでしょうか? 城の方からドレス姿のナタリアが駆けてきて、アルビオールに乗り込むと「あなたたち またわたくしをおいていく気でしょう?」「視察なら王女も同行しますわよ」とウインク。城からナタリアを追ってきた哀れな兵士二人を置き去りにして、アルビオールは発進するのでした。

 これも、ちょっと非現実的な状況ではあります。今のナタリアもまた、こんな風に責務を置き去りにして非公式の視察…結局は《遊び》に出られる立場ではない筈だからです。世界は変革で混乱していて、彼女自身も偽王女だと判明したばかりで。けれどこれもまた、ファンサービスな《夢》の展開ですよね。

 バチカル幼馴染み組は大好きなので、三人がワイワイ楽しそうに旅立つ様子は微笑ましく楽しく読みました。

 ちなみに(長いオーバースカートを手でまくり上げて)ミニスカートで全力疾走してきたナタリアの全身アップ絵、パンツ見えてるような。まさに股間部分が。お下品ですナタリア姫。ううむ、タイツ穿いてるんだからいいのか…。これもサービスなのでしょう。

 

 一方、ジェイドはベルケンド(シェリダン?)にいて、アストンと障気問題について話し合っています。ディバイディングラインで地核に押し込めただけでは満足してないらしく、既に、完全消去する方法について検討している模様。

 ここで、外殻大地編でティアが譜歌で障気中和した例を挙げ、振動で障気中和する案を導き出した点は、とても上手い話の繋ぎ方だと思いました。これは原作よりも綺麗に繋がっているかも。

 アストンとジェイドは共に、どうすれば惑星中の障気を消せるほどの振動を起こせるか気付いたようですが、互いに口に出さずに渋い顔になり、他の方法を考えよう、と打ち消します。

 そこにスピノザが登場。贖罪のために研究に参加していることが語られます。なんだか性格が違う感じで、声が大きくて一方的にペラペラ喋る、騒がしい感じの人になってました。

 スピノザから、海のど真ん中の特定地点で第七音素セブンスフォニムが異常消費されていることを聞くジェイド。しかし何が起こっているのか誰にも分かりません。

 とりあえず、ジェイドはダアトに報告に行くために立ち去ったようです。

 

 そして話はダアトに戻ります。テオドーロの使いで来たというティアが、イオンと面会。障気蝕害インテルナルオーガンは治せないので体調がはかばかしくないことが語られます。崩落編終盤で大幅カットされたエピソード内で説明されるはずだった設定の、補完がされていました。

 ティアとヴァンがユリアの子孫であること、だからパッセージリングが反応したこと、ヴァンもまた障気に侵されていること。

 ティアが、自分がユリアの子孫だなんてお伽噺だと思っていたと語っていて、アニメ版に沿った感じでした。原作ティアは自分がユリアの子孫だと最初から普通に受け入れてましたので。

 ヴァンが自身が障気に侵されるのも構わずパッセージリングを起動させたのは、「きっと命に代えても守りたかったもの――」「兄にとっては…それが…」と陰鬱に言いかけたティアは口をつぐみ、「終わったことでしたよね」と謝る。するとイオンは「終わってなどいませんよ」「導師としてなすべきこと 何より僕自身のこと」「やることはたくさんある」「すべては…これからです」と微笑みます。

 …しかしすぐに顔色を曇らせると、ティアを障気から救う方法を恐らく自分は知っているが、伝えるべきか迷っている、何故なら「そのためには 誰かが――」と心苦しそうに言いかける。

 直後に部屋の扉を破壊する勢いで巨大化したトクナガが襲撃、ティアを打ち倒し、気絶したイオンを抱えてどこかに連れていく。床に這いつくばったティアは、背後にレプリカたちを従えたアニスに愕然とし、懸命に疑問の言葉を投げかけるのでした。

 

 それと同時刻、ベルケンド(?)ではアストンやスピノザや研究者たちが、海の真ん中の第七音素消費地点の大地が消え、空中にホド島が浮かび上がったのを見て愕然としていました。「大地の亡霊が」「大地を喰らったとでもいうのか――」という台詞回しはカッコいいですね。

 

 そしてまた別の地点。海上を飛ぶアルビオール三号機には漆黒の翼と共にアッシュが乗っていて、不安げにローレライの剣を握りしめながら、「急いでくれギンジ…!!」「このままではこの惑星は」「滅びるぞ」「近付いている…」「”期限”が」と焦っています。

 アルビオール二号機の艇内では、ガイが空に浮かぶホドを見て、よろけるほどに愕然。

 一方アブソーブゲートでは、死んだはずのヴァンがリグレットを横抱きして復活していたのでした。上着はボロボロ、髪は下りています。ぐったりしたリグレットも髪が下りていて、彼女の服はもっとボロボロ。ストッキングはビリビリですし、おへそも乳房も丸出しです。辛うじて乳首だけは隠してありますよ。ファンサービスなんでしょうね。

 

 というところで、今回は終了。

 

 今回分までが単行本七巻に収録されています。これまでは半年ごとに単行本が出ていましたが、七巻は出るのに一年近くかかりました。一回分のページ数が減ったり、何回も休載があったためかと思います。

 六巻発売時に雑誌の付録についていた特殊カバー用のイラスト(子爵ルーク&メイドティア)が口絵として収録されていました。

 ちなみに七巻が出た時の雑誌(2010年3月号)にはオールキャラの描き下ろしピンナップが付いてましたが、これも八巻に収録されるんでしょうかね。


2月号

 '09年12月末発売。

 なんか混乱しました。

 今回、世界各地の人々が空に浮かぶホドを見て驚愕している場面から始まります。するとアストンが言う。

「違う…」「あれは映像じゃ」「実体は海上じゃ」「まさにかつてホド島が存在したその位置から」「何者かが映像を送っておる」「世界中の空に」

 へ? 空のホドは映像なの? 実体はホドが存在していた海上って、この漫画のエルドラントは浮かばずに普通に海の島として在るのか? あれ? 先月ホドが現れたの自体が幻だったのかな。

 と首を傾げて読んで、そのまま読み終わっていたのですが。数ヵ月後に感想を書くため読み返して、

●レプリカホドは原作同様に中央大海の空に浮いており、その映像を世界中の人間の視線の先に投影している

という意味なのかと、やっと理解しました。

 中央大海に面した都市(ベルケンド、シェリダン、バチカル、グランコクマ)からは肉眼でも見えたんじゃないかなと想像してみましたが、現実的には難しいのかな。

 

 さて。浮かぶホドの中からモースが全世界放送で演説。怪物化はしてませんが、精神的に軽くイッちゃってる感じで、髪の毛はほつれ、目つきが変で、「ひゃは! ひゃはははははは」と笑うのでした。原作ではキムラスカ・マルクト両国に向け、不服従時は武力制圧すると勧告してましたが、漫画ではそれはなく、民衆が為政者や導師イオンに不信を抱くよう扇動している感じでした。あと、未だレプリカホドをエルドラントと呼んでないです。

世界は滅亡しようとしている!! 大地は魔界クリフォトに落ち! 障気は消えず… 」というモースの言葉を聞く限り、漫画版の世界では障気問題は全く解決されておらず、普通に湧いてるらしい。障気で人が苦しむ描写は今のところ全然ないですけども。ちなみに「封印されたはずの障気が再び湧いた」という描写もなかったです。みんな障気の中で普通に暮らしてたのかな?

 モースを操る六神将はディスト一人。原作だと、地核から出られないヴァンに代わって、アッシュを除く六神将たちがモースをそれぞれの思惑で利用していたのですが、この漫画ではリグレットはヴァンとアブソーブゲートにいて状況に少し不本意そう。ラルゴとアリエッタはダアトに身を潜めていて、イオンの立場悪化に深刻に渋い顔をしてました。やはり、モースの宣言が不本意らしい。

 原作と異なり、モースの行動とヴァンの行動が完全に分離しているようです。

 なお、地味にフローリアンが初登場。台詞はありません。

 

 その頃イオンは、レプリカたちと共にザレッホ火山のセフィロトにいました。そこに、ほつれ髪で目つきのヤバいモースが来て、最期の仕事として惑星預言プラネットスコアを詠むよう命令。

 一方、ルーク、ガイ、ナタリアはダアトの街中の人がうじゃうじゃいるところに強引にアルビオールを降ろして、相談するべくイオンの部屋に猛ダッシュ。しかしそこにイオンはおらず、傷ついたティアをジェイドが助け起こしているところでした。アニスが裏切ってイオンを連れ去ったと聞き、全員で走り出す。……どこへ? それには全く触れられませんでした。

 描かれてませんが、漫画アニスは立ち去り際に「ザレッホ火山のセフィロトへ行く」と言い残したということなんでしょうか??

 廊下の窓を突き破って、ライガに乗ったアリエッタとラルゴ(!?)が登場。イオン様を助けてとアリエッタがルークに泣きつき、抜け道があると言う彼女の先導でザレッホ火山へ向かう。

 アリエッタの先導でイオン救出に向かうのは、アニメ版アレンジの導入ですね。

 それにしても、どうしてラルゴが一緒なのか。その後は姿が見えないのでザレッホ火山にまで一緒に行ったわけではないっぽいけど。

 

 一方、アブソーブゲートのヴァンとリグレット。

 吹雪の中、半裸状態でレプリカホドの映像を見ているリグレットに、ヴァンが自分の上着を着せかけてやる。更に、側に寄り添って彼女の肩に手を置いていました。漫画版のこの二人は、男女関係が成立してるっぽいですね。原作だとリグレットの片思いっぽいのですが。(『ファンダム Vol.2』のドンジャラの牌の説明か何かでは、片思いだと明言されてた気がします。)

 二人の会話により、ヴァンの体内にローレライが封印されていることが暗示されます。

 それはそうと、リグレットさんは寒さに強いのねぇ。

 

 その頃のルーク。惑星預言プラネットスコアを詠めばイオンは死ぬとジェイドやティアから聞いて、な、なんだってぇーーっ! って感じに驚いたところで次回へ続く、です。

 惑星預言とは何なのかという具体的な説明はされませんでした。ティアの台詞からなんとなく解る感じですかね。

 

 



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