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『電撃マ王』2008年連載分

 アスキー・メディアワークス/『電撃マ王』/玲衣

『電撃マ王』連載の『アビス』本編コミカライズ。原作ゲーム発売より早く連載開始した、関連物の中では最も古参の作品です。

 

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3月号

 2008年の第一回目です。今回は難しい設定がいっぱいなので気合入れて読まないとハテナの海に押し流されるよー。

 ユリアシティの人々と対峙したルークたち。ティアは崩落の危機に瀕した外殻大地を救う方法を養祖父テオドーロに尋ねます。
 漫画版ではハッキリした描写がなかったんですが、ここでテオドーロが開口一番「預言スコアは――狂った!!」と言ってるからにはセントビナーは崩落したってことなんですよ…ね? って、あれ? テオドーロは口を閉じてるから前述のセリフはティアのものなのだろうか。いやでもテオドーロは結局反論しないで話進めるからどちらにしてもセントビナー崩落済みは確かってことで……だってユリアシティ的には「崩落しそう」という状態だとまだ「預言にない事態が起こった」とは言えないからルークたちに完全協力して動くことはない…は…ず………あれ? 「落ちかけてる、崩落が開始している」だけでもう「預言は狂った」ってことでいいのかな? むむ。しょっぱなからよく分かりません。混乱。(@_@;)

 ここ、厳しい顔で養祖父に質問をするティアの背後で、ガイとルークが「…こ この街ってこんなに人がいたのか?」「知らねぇよ 俺ほとんど寝てたもん」とヒソヒソやりとりしていて、ナタリアが口に人差し指当てて「しィッ」と叱ってるのが可愛くてよかったです。うん。せっかく漫画(絵)なんだから、余裕ある限り本筋の流れの後ろとかにこういう余録があるといいなァ。今回は個人的に好きなバチカル幼馴染組だったので、給食にプリンがついてた時のように嬉しい(笑)。

 テオドーロは崩落を止めることはできないが、魔界クリフォトへ下ろすことなら出来るかもしれないと言います。

「大地を支えているセフィロトの力を少しずつ弱め… 魔界の泥の海へと軟着陸したところで停止させればいい」

 なるほど。ここは原作とは設定を変えたんですね。原作では地殻が振動して液状化しているから大地を下ろしただけでは泥の海の中に呑まれてしまう。だからパッセージリングを「停止させないまま」大地を下ろさねばなりませんでした。リングが発生させるディバイディングラインによって液状化大地の上に外殻大地を浮かせようとしていたから。

 つーか、漫画版では「魔界には障気が渦巻いている」という設定がないっぽい…。前、ユリアシティでルークとティアが屋外でゆっくり会話してたのにビビリましたが、障気蝕害インテルナルオーガンの設定がない? せいぜい「吸い過ぎはよくない」くらいの認識? だから障気は問題視されないのかな。

 漫画版ではパッセージリングの一つのあるシュレーの丘は最初から魔界にある「島」ってことらしい。…いや。あれ? 先日まで地上にあったのがセントビナー崩落に先駆けて落ちたってことですよね? 最初から魔界にあったんだと、このセフィロトツリーはとうの昔に出力低下していたってことになるので、今ヴァンが操作したからセントビナーが落ちるってのは辻褄が合わなくなる。セフィロトツリーが伸びている限り三万メートル高空になくちゃならない。そもそもここのダアト式封咒を解いたのイオンのはずですよね。

 ともあれ、ヴァンが先に操作していて強制ロックしていることが予測される。原作ではそのプログラムを超震動で削り取ろうと提案したのはルーク自身でしたが、漫画版ではそれを含め全てテオドーロの指示でした。

 ユリア式封咒で封じられていた制御板がティアに反応して起動。セフィロト図が綺麗です。ここで「ティア… なんともないのか?」と心配するルークに「え…ええ 私は大丈夫よ」と答えながら、ティアがふっと顔を伏せて(これは…)と考え込むシーン、最初ザッと読んだ時、てっきり障気蝕害インテルナルオーガンの伏線かと思っちゃったんですが、そんなことないか…。漫画版では十中八九扱わないでしょうし。単に「ユリア式封咒とはユリアの遺伝子に反応するものだと気付いた」ってシーン?
 考えてみれば、まだ漫画版では「ティアとヴァンはユリアの子孫」ってことは説明してなかったですよね。ティアの譜歌がユリアの譜歌だということや、グランツ兄妹がホド崩落後に魔界に落ちたってことは説明されてますけど。んじゃもうしばらく後に「実はティアとヴァンはユリアの子孫だったのですジャジャーン!」ってなシーンが用意されてんのだろうか。(それともどっかで地味に説明されてたんでしたっけ?

 かつてヴァンを信じてアクゼリュスを崩落させてしまったことを思い出して恐怖を感じながらも、「今度は みんなが側にいる!!!」と超震動を発揮するルーク。ジェイドの指示で強制書き込みを続けますが、途中で眩暈を起こしてジェイドの肩に掴まってよろめいてしまう。するとナタリアが「わたくしに任せて!!」と進み出て、治癒術でルークの疲労を癒してくれます。「お忘れですの? わたくしはこれでも治癒術師ヒーラーなんですのよ わたくしにも手伝わせてください!!」と微笑むナタリア。明るい表情で見守る仲間たち。元気いっぱいになったルークは「よし!! どんどん行くぞ!!」と作業再開。

 ここでルークを癒す役をティアに振らなかったのは驚きました。ナタリア空気化阻止ってことで私は嬉しいけど。原作だと、ここで「ルークがティアに抱きつく」「ティアと以前から超震動特訓してたことに触れる」というルクティアイベントが入るんですけど、それをスルーしちゃった…。
 ドラマCD版みたいに、ティアがルークをサポートするんだと完璧だったのかなぁ。ジェイドが作業の指示して、ルークが戸惑うとティアが易しく説明し直したりして、眩暈でよろめいた時は側のティアに寄りかかって、そこでナタリアが進み出て癒してくれる、みたいな? そんで成功した後でティアに抱きついて、しかし耐用限界表示が出たとジェイドかアニスが言って、喜びから一転、みたいな感じのが。…うーん。
 ルークがティアとしかろくに関わらないのは不自然なんで、ここ数回に仲間たち一丸の描写が多いのはとても嬉しいんですが、わりと重要な(?)ルクティアイベントだと思ってたのでビックリしました。つっても、きっと今後 代替エピソードがあるのでしょうが。

 それはさておきここのシーン、張り切るルークの後ろで無言でメガネのブリッジを指で押し上げているジェイドが怖いよ! 同じコマのルークとナタリアが可愛い分スゲー怖いよ! 小さい子供は泣いちゃうよおっさん。

 ルークが作業に集中する間に、なぜだかガイ、アニス、ミュウの二人と一匹は微笑みながら黙ってその場を離れ、扉の向こうへ行ってしまいます。そんでそこで作業が終わるまでの数時間、何するでもなくじーっとしていた。何故…。
 同じ場所にいるんだと時間経過が見せづらいと思って変化をつけるためにそうしたのかなと思いましたが、物語上の理由付けがなかったので、大事な作業をしている時にフッと席を外してしまうのが奇異に感じられて「どうしたんだろ?」と気になって仕方なかったのであった。門外漢で第七音譜術士セブンスフォニマーじゃないからって、見守ることは出来ると思うんだー。

 そして物凄くどうでもいいことではありますが、ここでミュウが四足歩行してるように見えるのが気になったよぅ。チーグルは常に二足歩行ですの。そもそもミュウはユルユルのソーサラーリングを両手で抱えて歩いてるんですの。みゅうう。

 数時間後に部屋の外のアニスやガイが待ちくたびれたころ、扉が開いてルークたちが出てきました。なんか暗い顔をしているルークを見て不安に駆られるアニス。

アニス…… だめ…だったの…?
ティアいいえ 降下作業はうまくいったわ」「今頃セントビナーは魔界へ到着しているはずよ
ジェイドルグニカ平野やほかの街にも同じ命令を送り込みました」「いずれも崩落することなく時間をかけて魔界に軟着陸するでしょう

 …つまり、漫画版では「ユリアシティに相談に行った時点で、まだセントビナーは崩落していなかった」のかー。んで、「全世界のセフィロト一つ一つを廻ったりしないし、最後に全降下命令をルークが出すこともない」ってことですね。原作とは違うのでちゃんと覚えておかないと混乱しそうです。それにしても「全パッセージリングは連動している」という根底設定の説明を忘れてるよーな。

 しかしその直後にルークが「パッセージリングはもうすぐ壊れちまうんだ!! 俺たちのしたことは無駄だったんだよ!!!」と喚く。ジェイドが言います。

「パッセージリングが耐用年数限界に到達していると制御板に警告が出ていました」「セフィロトが暴走しているようなので――その影響でしょう」

 パッセージリングが壊れたら、その時は。イオンが説明します。

「セフィロトツリーそのものが…消える」「外殻大地も魔界に浮かぶ大地もそのすべてが落ち」「何もかもが魔界の泥の海に飲み込まれるでしょう」



 …え? 「魔界に浮かぶ大地もそのすべてが落ち」って。最初の方のページでテオドーロさんが「セフィロトの力を少しずつ弱め… 魔界の泥の海へと軟着陸したところで停止させればいい」と言ってたのはデマかよー! やっぱ原作通り、パッセージリングを作動させたままじゃないと外殻を下ろしても泥の海に呑まれるってことですか。騙された!! うぐぐ。

 ともあれ、全員が絶望感にとらわれた中、前回では卑屈になってたイオンが誰よりも早く気を取り直し、解決法を探すためにダアトへ行こうと提案したところで今回は終了でした。次回でモースと再会でしょうか。

余談。
 この漫画の作者さんはガイとアニスの組み合わせがお好きっぽい。
 カップリングとしてはイオンとアニスなのですが、ちょっとした幕間のようなシーンは殆ど必ずこのコンビです。反対に、原作では多かった印象のある「ジェイドとアニス」の組み合わせは乏しいよーな。っつーか、この漫画のジェイドは絶対に「アニース♥」とは言いそうにない…(苦笑)。なんか半歩くらい原作とは性格違うよね。シリアス寄り?

余談2。
 パッセージリング強制操作の際のジェイドのセリフ
では我々の使っているフォニック言語で結構 方法はほぼ同じですから動くでしょう
 誤植…ですよね? 正解は「文法」でいいのだろーか。

 

4月号

 今月は普通にストーリー消化の回でした。

 ルークたちはダアトに潜入し、イオンの詠む秘預言クローズドスコアを聞きます。ユリアの預言スコアにはレプリカルークの存在がなく、歪みが生じていることに気付く。そこに待ち受けていたモースが出現。イオンは教会に戻ることと引き換えにルークたちの身の安全を約束させますが、彼が立ち去るとすぐ、モースはナタリアが偽王女であることを暴露。ルークとナタリアを戦争継続の餌にすると言い放つのでした。

 イオンは「彼らを不当に扱うのは許しません!!」と言ってモースは快諾する。で、ルークが「モース!! イオンとの約束は守ってもらうぞ!!」と言うと、「もちろんだとも。用意してやろう!! キムラスカ王家を騙し続けてきた咎人とがびとに相応しい舞台を!!」と言うのでした。……あー。確かに嘘は言ってヌェーのかも…。頓知大詠師モース様。

 第一から第六までの譜石を結合したものが、礼拝堂の地下に設置されていることになっていました。結合したものなのに刻まれている文字は綺麗に揃っていたので、アレは後から刻み直した碑文なんでしょうか。それとも結合加工した職人さんが、熟練の技で文字を揃えたのでしょうか。タイル職人みたいに。とかいうことを想像すると面白かった。
 預言を読むイオンがカッコよかったです。
 一方ルーク。初めてローレライ教団総本山の街に入って、考えることと言えばヴァン師匠せんせいのこと。相変わらずの師匠中毒でティアに呆れられています。そのうちヴァン師匠と再会した時にどん底に叩き落とされる布石かと思うと、あぁ〜ゾクゾクするぅ〜〜。(ひでぇ)
 あと、アニスが導師守護役フォンマスターガーディアンを解任されたシーン。コミカルに驚くアニス本人以上に、周囲の仲間たち(ジェイド除く)の表情が面白かった♥

 お便りコーナーに「コミックも中盤に突入し」と書いてありました。じゃあやっぱ全八巻なのだろーか。了解。
 次回は本編連載は休みで、単行本第四巻発売に合わせた別冊外伝が付くそうです。でも誰の外伝なのかは秘密だそうで。…よっぽどマイナーな脇キャラとかなんだろうか? それとも期待をあおってるだけなのかな。

 

6月号

 外伝を挟んで一か月ぶりに再開の本編連載です。ナタリアやアッシュのファンの人は大喜びしたであろう回でした。そしてしばらく前は大活躍だったジェイドが、今回は壁の絵でした。セリフいっこもなし。むう。順当ってやつなのね。(無言でルークたちの後ろから走ってくる大佐は、眼鏡で表情見えないのでなんか妙に怖い。

 モースによってナタリアが偽王女だと暴露され、ルークたちはバチカルへ移送されます。卑屈ぶりを発揮して、俺は処刑された方がいいのかも俺さえいなければとグズグズ言い出したルークをティアが一喝。ティアが自分に希望を見て、大きな期待をかけてくれていたことを知ったルーク。なのに自分はそれが分からなかったばかりか、曲解して拗ねて不幸ぶってさえみせた。自己嫌悪して顔に影落として俯いちゃうルークが印象的でした。

 バチカルでは、すぐにインゴベルト王との謁見シーンに。原作ではインゴベルト王はナタリアと会うことを避けて、顔を合わせないまま安楽な毒で処刑しようとしたものですが、漫画版のインゴベルト王は割と肝が据わっている? でもファブレ公爵がいないのは相変わらず。原作そのまま、未だ息子から逃げているヨワヨワなお父さんです。

 本編初登場のころ、漫画版ナタリアがいかにもツンツンした意地悪女の顔だったのが少し嫌だったんですが、すっかり可愛い顔になりました。個人的には嬉しい。んで、王に処刑を言い渡されたナタリアは、よろめいてルークの背にぶつかる。背中を合わせて、取り囲む兵たちに武器を向けられるナタリアとルーク。おお、ゲームのオープニングアニメーションのイメージですね。あのシーンが本編にもあればよかったのに、という意見もプレイヤー間にあったかと思うのですが、その意味で夢の実現ですね。

 そこに、どっか上の方のガラスを破ってアッシュが飛び降りてきました。…私の中の「アッシュさまは常に上から登場」というイメージが更に強固に。アッシュは剣の一閃で周囲の兵たちをなぎ倒し、ルークたちの手の縛めまで断ってしまうのでした。
 あんた…スゲェよ。

 アッシュに促されてナタリアの手を引いて謁見の間から逃げ出すと、アッシュによって牢から救われた仲間たちが待っていました。あんなに失望させるような駄目な姿を見せてしまったのに、こうして見捨てずに来てくれたティアを見て、嬉しくてたまらなくなってしまうルーク。仔犬のしっぽが弱々しげながらパタパタし出したぞ。
 …いやホントにマイナス思考だよねルークは。そんなに心配しなくても、あのくらいでルークを嫌いになる人はいないよ。特にティアとかガイとかは。ティアはルークが好きだからあれだけルークの自己否定に腹を立てたんだよ。自信持ちなさいって!

 その後、原作通りに白光騎士団とペールが登場。…漫画版はペールのキャラクターデザインが原作とは違うものになっちゃってて、でも一巻の時修正しなかったので、てっきり今後漫画版ではペールは活躍させないんだと思ってたんで、なんか驚きました。原作とは違うキャラクターデザインのまま押し通しちゃうのか…。(ちなみに執事のラムダスも原作とは違うデザインのまま。)

 原作では、このエピソードの時点で既にガイの正体が明かされています。ですが、漫画版ではまだガイの正体には全く触れていない。伏線すら張られたことがなかった。その結果、なんと、このエピソードがガイの正体に関する、漫画版での初の伏線に変えられていました。おおー! なんかすごい。ルークたちが逃げた後、ペールが「ルーク様とナタリア様をたのみましたぞ ガイラルディア様!!」とニヤッと笑って、意味ありげに言うという。(漫画版のペールは、この時点で、ガイがルークたちを庇ってキムラスカのお家騒動に巻き込まれ殺されかかっている状況をどう考えていたんだろう?
 ところでこのシーン、ペールを盾にして逃げるなんて出来ねぇよと言うルークをガイが強引に引っ張るんですが、腕とかを引っぱるんじゃなくて、襟を掴んでる(ように見える)のが笑えた(笑)。着崩れる、着崩れちゃってるよルーク。(襟ぐりが広いんで首が絞まったりはしないのね。

 その後、
 市民がナタリアを庇う→ゴールドバーグがナタリアが偽王女だと暴露→ナタリア、毅然として認めて市民に手を出させない→市民たちがナタリアの盾になる→アッシュが登場、ナタリアに約束をほのめかす
 という、ほぼ原作通りの流れになります。が、ニュアンスが違う。原作ではアクゼリュス崩落後ベルケンドを訪ねた前後にアッシュとナタリアの交流がありますが、漫画版ではそれがカットされていたため、ここでアッシュがナタリアに向かって、ティアに対するみたいに「…女!!」と呼びかける。すっげー余所余所しくてビックリ。で、半ば背を向けたままの彼に「しけたツラをするな!!」と怒鳴られたナタリアはナタリアで、「――」「え?」と、ポカンとしてる。全然心が通じてねぇ〜!(^^;) そんなわけでアッシュさま、汗を垂らして「ちっ!!」と舌打ち。ちょっと赤くなったりして。意地を張るのをやめ、ちゃんと顔を向けて心を込めてナタリアに言いますよ。
そんなしけたツラした奴とじゃ――」「一緒に国を変えられないだろうが!?
 二度目のプロポーズ(??)。近くにいたノワールが「ヒューーーウ」と口笛を吹き、ルークとティアは何故か顎を落として驚愕してました。この二人、その後も口をあんぐりさせてたり、声もなく口をパクパクさせてたり。流石に驚きすぎだろ…。
 ナタリアはと言えば大感激。たちまち目が輝き頬は紅潮して、嬉し涙をこぼして元気いっぱいに。アッシュに「ぐずぐずするな!! 行け!!」と言われて、自ら先頭になって駆け出し、バチカル脱出を果たすのでした。

 原作ではこの辺、あくまでメインの視点はルークにあって、市民たちに危険が及ぶと”ルークが”無視できずに駆け戻る。(ナタリアはその後に続く。)そしてアッシュはナタリアに二度目のプロポーズ(?)をした後、”ルークに”ナタリアを無事逃がせと託します。けど漫画版ではルークは完全に脇役で、それは全然いいんですが、何故かずーっとナタリアの後ろで変な顔芸でギャグやってました。ティアと共に。

 え、えーと…。この辺のシーンって、いちいち顎落として驚いたり、逃げながら汗タラで苦笑いして「ペールもアッシュもヘンだ!! いったい何がどうなってんだ!?」と言ったりするような、そんなシーンなんでしょうか。
 ケテルブルクでジェイドの過去を聞いた後のシーンや、セントビナーでディストと対峙した時のシーンで、突然ルークがワーギャー騒ぐ系のギャグを始めたのが、個人的にどうにも馴染めなくて仕方なかったんですが、今回のここのシーンにも同じ違和感を感じました。
 ここってシリアスなシーンじゃないの? なんでここに延々とギャグを入れるのか。更にはギャグで締めちゃうのか。単に感覚の差、なんだろうけど…。(あと、ティアは大口開けてワーギャー騒いだり驚いたりするキャラじゃないと思うんですが。)

 で。汗タラのティアがベルケンドへ急ぎましょう、と言ったところで今回は終わりでした。次回はヴァン師匠と会ったりガイの正体を知ったりして、またルークがどん底に落ちたり唐突にギャグしたりするのかな。なんか躁鬱の波がかなり小さくて激しい気がしてきました漫画版ルークって。まあ小動物だとでも思えば可愛いか…。
 小動物で思い出しましたが、脱出の時、ミュウってどこにいたんでしょう。謁見の間の外で合流した時にはいるのに。…お、おいてけぼり、とか。(ゴクリ) アッシュか漆黒の翼が連れてきてくれたらいい。(それともティアの胸の中とかに入ってたのかナ)←他に隠れられそうな場所がないから…。さもなきゃガイの燕尾の裏とか?

 

7月号

 今回は、イニスタ湿原〜ベルケンド・ガイの正体パレ直前まで。ミュウは無事同行してました。よかったよかった。今更なのに何故か今月はルークの顔が丸いなー円いなーと気になって仕方なかったアルよ。

 てっきりイニスタ湿原はカットするのかと思いこんでいたので、ちゃんと触れられていてビックリしました。素でナタリアを口説……ゲフン、励ますガイ。兄さんはキラキラと煌めいていたよ!(ホントに。書き文字ででっかく「キラ キラ キラーン」と書かれてあった。

 ベルケンドに入り、アッシュに間違われたルークが話を合わせるべく下手なアッシュのモノマネを披露するギャグ入る。次回の読者のお便りコーナーは、このシーンに対する可愛い感想で埋まると見ました。

 ヴァン師匠せんせいと対面。画面が黒くてグネグネ加工してあったり、ヴァンに睨まれただけでルークがヘタリと尻餅をついてしまったり、ルークにとってのヴァンの絶対性がよく伝わってきてよかったです。

 ティアの激怒が怖かった。このひとこえぇー。

 尻餅ついたルークをさり気に助け起こしているのがナタリアとガイの幼馴染み組なところが、個人的には幸せでした。モエモエ〜

 ヴァンが曖昧にガイの正体をバラし、ガイが自分で告白せねばならないよう仕向けてから、自分はとっとと立ち去る。ドSっ!!! 立ち去ってから(今頃ガイラルディア様はあの連中に責められているに違いないククククク)とか ほくそ笑んでたんかねー。

 残され、ルークに不安げな顔で名を呼ばれて暗い目で沈黙するガイ。兄さんはどんよりしていたよ! でも次回ではナタリアが盛大に援護してくれるはずっ。そのための湿原だし。という感じで次回への期待感高まりつつ今月分は終わりです。


 読み終わってから何かが足りないよーな…? という気がしてよくよく考えてみたら、原作では居たアッシュが居ないのである。次回、ガイの告白が終わった後で出てきて禁書を渡すのでしょーか。それともアッシュは出てこなくて、ノエルが「アッシュさんに助けていただいたんです」とか言いながら出てきて禁書を渡すんでしょーか。あるいは禁書すっとばして直接スピノザに繋ぐとか。スピノザのエピソードってどーなるんだろ。既に登場はさせてるんで、カットは無しかな。

 それはそうと、ベルケンドでヴァンのもとに案内されるときに

アニス「ここって前にもアッシュと来たよね?」
ガイ「ベルケンドに向かえというのは こういう意味だったのか?」
ジェイド「さすがに人違いまでは計算外でしょうがね…」

 という会話をしていて、ちょっと愕然としました。つまり、漫画版のアッシュはヴァンと話をさせるためにルークたちを故意にベルケンドに向かわせたってことですか。敵の大ボス(兵隊付き)がいる所にポンと送り込む。愛するナタリアも込みでかっ。その場で捕まって殺されても可笑しくないんですが…。罠? 教団兵が嬉しそうに「お戻りでしたか!!」なんて言ってるしなー。この言い方だとアッシュ自身がここを拠点にしてたってことになっちゃって色々状況が矛盾してくるんですがー…。バチカルにナタリア助けに行く前にここで既にヴァンと面会してたってことかな??
 原作だと、ベルケンドへ向かったのは、砂漠の方は既に魔界クリフォトへ落ちてて、徒歩で行ける一番近い町がベルケンドだったからなんだけど。(バチカルの市民たちは、逃げるナタリアにそう言って誘導してくれる。)ヴァンの所に行ったのも大勢の教団兵に取り囲まれて半ば連行された形でもありましたし。でも漫画版では全てアッシュの計らい…? 漫画版の彼は、実はまだヴァンの手先なの? それともガイがアッシュを信頼してないからそんな根も葉もない邪推をしてしまったという復讐系の伏線とか(笑)。

 そういえば教団兵がルークとアッシュを間違えて「バチカルでは派手にやってくれたそうですな」と言うシーン。原作では嫌味たらしく高圧的に言うんだけど(この時点でアッシュは既にヴァンから離反していて、バチカルでの立ち回りも完全な独断、裏切り行動でしたからね。また、年齢的にも教団兵の方が上だと思いますし、明らかにヴァンの贔屓によって実績も特にないのに役を与えられてるアッシュは面白くない存在なんだろーなーと思ってた)、漫画版では純朴な手下が親分の偉業を褒め称えてるみたいなニュアンスになってて不思議でした。「髪を切られたんですね!!」とか、ちょっと芸能人に向かうファンにも思える感じで言ってるし。漫画版では、アッシュという人間ってどーゆー立ち位置になってんじゃろ?? というか、漫画版のこの教団兵がアニス父並みに浮世離れした性格なだけなんでしょうか。もやもや〜。

 

8月号

 私が住んでる地域には『電撃マ王』を売ってる本屋さんが一軒しかありません。そして、創刊から二年以上経て、だんだん入荷数が減っているような気がするなぁとセンセンキョウキョウとしていたのですが、今月買いに行きましたら、「本日入荷」の札が立ってたのに、置いてあったのは一冊でした。
 ・・・・。
 流石に、漫画雑誌を注文取り寄せしてまで購読する根性は私にはありません。ガソリン値上げしたから隣県の本屋に行くのも余程の時以外は致しかねる。
 というわけでこの感想コーナー、わりと風前の灯火ともしびかもしれません。(^_^;) 風が吹かないことを祈るばかり。


 今月は躁状態著しいガイの身の上話と、翼の傷ついた天使なアッシュと、上品じゃないキャッシーと、最高権力者イオン様でした。
 ちなみに、ナタリアがガイを庇うシーンはありませんでした。ありー。そもそもガイが責められるシーン自体なかったし。(^_^;)

 ガイ兄さんがいっぱい出てアップになっていたし、彼とレプリカルークの子供時代の回想絵(コメディタッチ)がありましたし、ジェイドは目元涼しかったので、ファンの人は喜んだ回じゃないでしょうか。


 なんか、今月の『マ王』は最終回ラッシュな感じ?? 結局、ゲームのコミカライズ雑誌という方向に落ち着くのでしょうか。
 私は基本的に「アビス」しか読んでいないらしく、『マ王』を読んでると、不意に最終回だと気づいて「こういう漫画連載してたんだ」と驚いたり、突然「あのマンガそう言えば載ってない気がするけど連載終わってたのか?」と首を傾げたりすることがよくあります。最低の読者ですな。もっと集中して読めよ自分。「ロッテのおもちゃ」は唯一楽しみに読んでる漫画です。お色気ものだけどドドメ色な感じはせず、可愛くてどこか晴れ晴れとした上品さというか、ナチュラルな節度がある感じなのがいいね。
 小説「デュアルアース」は、どうしてもデュエルアースとかデュアルエースと読み間違える。そして異世界の言葉が特殊フォントで書いてありますが、この文章を書いている今この瞬間まで、「そそそねそそそねそそ」とか書いてあるんだと思ってた…。なにやらホラーっぽく囁かれてるんだと思ってた…。

 

9月号

 今月は普通に三冊くらい書店にありました。よかったよかった。それにしても、同時に連載開始した『ディスガイア2』のコミカライズが今号で最終回なのを見ると、『アビス』は本当に長い話なんだなぁとつくづく思います。


 先月分の感想に、幾分皮肉をこめて「最高権力者イオン様」と書いていたらば、今号の(扉絵の次の)一ページ目でイオン様が曇りない笑顔で「一応僕は最高権力者ですから」と仰ったので、なんか後ろめたくなりました。スミマセンスミマセンイオン様……。

 シェリダンめ組の老人三人組。原作では、イエモン存命時はアストンは常にイエモンの後ろで尻馬に乗って「そうじゃ、そうじゃ」と囃し立てているばかりな印象ですが、漫画版では初登場時から常にアストンが中心です。物語終盤での活躍を見越しての配置換えかなーと思いつつ、やっぱ不思議な感じがします(苦笑)。今月号のイエモンの大人しさは怖いほどでした。ラストシーンが、立ち去るアッシュを見たキャシーが、若い頃のイエモンを思い出すわ、あの子も本当はきっと寂しいのよ、などと言うというものでしたので、確かにあの座敷わらしっぷりだと寂しかったろうなぁ、アッシュも座敷わらしになるのかしらんと思いました。(うわ我ながら意味不明な感想が出来あがっとる。)


 前に、漫画版のジェイドはシリアス寄りで原作とは半歩性格が違う感じだと書きましたが、他のキャラクターに関しても、そういうことを感じるようになってきました。原作のキャラが持っている複数の要素のうち、一部を引いて強化して、残りはほぼ扱わない感じ? 扱われなかった部分が自分的萌えポインツだった場合は、淋しいものですね。

 前号はガイ、ルーク、アッシュ、特にガイに関して色々思いました。色々薄いガイ様は漫画版ではまた別の意味で薄い。彼はきっと何かしら薄くなる宿命の人。


 ところで、前号でガイが身の上話してたら、ココロが傷ついたらしいアッシュが一人で黙って部屋を出て行ってしまってたんですが、てっきりそのまま姿を消したんだと思っていたので、今号で一ページ目から普通にいたのを見てお茶吹いた。いたんか! まだ!

 んで、その後もずーっと一緒にいたのに、ルークが改めて「一緒に行こう」と誘ったら、ルークに信頼を寄せられたことが癪に障ったらしくて、「俺が悪人だったらどーするんだ」と考えようによってはあらあらウフフな屁理屈を怒鳴りたてて一人でキレて立ち去りました。扱いにくい子だなぁ。前号からずっと”孤独だから可哀想オーラ”を発散し続けているわけですが、漫画版アッシュはこの面が強化要素に選ばれた模様。つーか漫画版のアッシュはやっぱまだヴァン側から離れてないってことなのでしょうか。言動が単独行動してる感じじゃない。

 そういえば原作ではこの辺りからそろそろアニスのスパイイベントの伏線が張られ始めるんですが、漫画版はまだやってないですね。レプリカ編まではアニスの問題は棚に置いておくのかな。


 お便りコーナーには『アビス』アニメ化についてどこを期待するか漫画家さんに尋ねるお便りが掲載されていて、七月七日にアニメ化情報開示で『マ王』9月号は二十七日頃に発売されたのに、もう読者の反応が載ってるのか〜、雑誌って短いサイクルで作っているんだなぁと感心しました。質問の答えは、漫画家さん曰く、今回のアニメ化で最も注目している点は脚本とシリーズ構成で、というのもあのボリュームをまとめるのは難しいと思うが、素晴らしい脚本に仕上がっていると聞いているので、だそうです。ご自分でもストーリーをまとめるのに苦心されているからこその脚本への注目なのかな。

 関係ないけど、ふと気付いたらトーンの目の粗さが落ち着いてきてますね。

 

10月号

 もう連載も29回目。そろそろ三年になるんですね。崩落編の終盤に到達し、漫画として全体の三分の二ほどには来てるんじゃないかと思います。これまでずっと、漫画版はどの方向を目指すのか量ってみようという気持ちで見ている部分がありました。原作のストーリーをどうアレンジしていくのか、キャラクターをどう描くのか。ですが流石にもう、量る時期ではないですね。少なくとも、『マ王』漫画版がどこに主眼を置き、どうキャラクターを捉え、どんな再構築を目指しているのかについては、もう確定したものとして見なければなりません。

 結論を言えば、私が望む形にはならなかった。ストーリーもちゃんとまとめられて絵も可愛く、コミカライズとして何ら問題はありません。ただ、取捨選択される中で、私が原作から掬い取ってもらえることを期待していた色々な要素は、殆ど選んでもらえませんでした。お年玉くじに外れた気分で残念です。痒いところには手が届かない。でも、当然ながら仕方がない。

 もうひとつ、この漫画の感想を書いていると、自分の馬鹿さ加減をどんどん露呈することになるんで、恥ずかしくてやりきれねー、というのもあります(笑)。シュレーの丘のパッセージリングを操作した回(今年の3月号分)で、ジェイドが「ルグニカ平野やほかの街にも同じ命令を送り込みました」「いずれも崩落することなく時間をかけて魔界に軟着陸するでしょう」と言ってました。私はてっきり、漫画版ではパッセージリング巡りはしないし、最後に一点から全降下命令を出すこともしないんだな、これは大きな設定変更だからよく覚えておかないと、なんて本気で思ったりしたんですが。今月号ではジェイドが「外殻降下の準備もしてしまいましょう」と言って、これからパッセージリング一つ一つに命令を書き込んで最後に一点から全降下命令を出す、と原作どおりのことだけをのたまっておりました。うわ恥ずかチィ! 私は漫画の設定一つ理解できません。
#まさかと思うけど急に連載延長になってプロット変更したとかじゃないよね。どっちにしても読者を連れてかない気満々ですけど。

 そんなこんなで、この本編連載漫画に関しては、自分の感想の書き方も少し軌道修正するつもりです。余計なことは考えず、あるがままに受け止めて、毎回一回分の区切りの中のみで、刹那を大切に。


 では今月分の内容。地核振動停止装置制作のためにタタル渓谷のセフィロトへ。地核の振動数計測、原作では譜石でチェックしてたと思いますが漫画版では制御板。ティアの障気蝕害インテルナルオーガンの伏線らしきものあり。ルークが外殻降下の前に平和条約を締結させて世界の首脳陣にも相談すべきと提案。原作ではみんな素直に感心・賛同してくれたものでしたが(個別イベントでジェイドが少しヒネたことを言うくらい)、漫画版では相変わらずギャグ風味で処理。みんなが「ルークがまっとうなことを言った」と汗タラで微妙に引く。ティアが感動した様子を見せるのは汗タラした後。

 ところで、このシーンのページが今月の『マ王』公式サイトでのサンプルページに使われてましたが、最初に見たとき、二コマ目のポカンとする仲間たちの中のガイ兄さんの顔を見て、何かの記憶が刺激されてなりませんでした。
 わ かっ た。
 鼻から口の線が、この顔文字に似てたんだ〜! → (´<_`  )
( ゜<_゜ )←こんな顔だった。
 今日からガイを《流石兄さん》と呼び……はしないけど。スッキリした。

 その後に、ルークがタタル渓谷が始まりの場所だと気付く展開に。アニスがルークとティアの仲を冷やかすと、ティアがキツく「ありえないから!!」。やっぱりこのシーンのティアは可愛くない。と言うか普通に失礼。むつかしいお嬢さんである。でもここのコマの隅に、からかったアニスまで暗く落ち込んで、「なんか…ごめん」と言い、落ち込むルークが「いや…別に…」と返す、原作にないアレンジが小さく入っていて、それはとてもよかったです。ギャグとしてちゃんと昇華された感じで、救われた気分になった…。(原作のこのシーンは、ラブコメとして受け止めるべきなんだろうけど理不尽に傷つけられた感じで、ガイとジェイドのやり取りもフォローには感じられず、何とも言えない気分になったんで。)

 その後、アッシュとナタリアの「この国を変えよう」の約束、続けてルークとティアの「あなたはここにいるのよ」のシーン。アッシュとナタリアのシーンにはとにかく非常に力が入っている気がしたのでファンの人は大喜びできたのではないかと思います。ところで原作では朝焼けのシーンなのに夕焼けに変更されていました。(日が沈んでいく様子が時間経過として描かれている。)何か考えがあってそうしたのだろうかと思っていたらば、漫画家さんの個人ブログに

>多くの人が原作ゲームの名場面として挙げるであろうあの夕焼けのシーンがついに…

と紹介記事が書いてあったんで、素で間違えてるっぽい。
 ラスト、バチカルに戻る決意をしたナタリアの晴れやかな力強い笑顔で次回へ続く。


 次回は単行本第五巻発売に合わせてメインシナリオライターさん原作の公式外伝付録五作目。で、本編連載は休み。前回外伝同様、今回も外伝の主人公が誰なのか明記されてませんが、予告イラストが(使い回しですが)ジェイドとアニスで、「ゲームの物語の前日談」と書いてあるんで、イオンに平和使節になってほしいと頼みに行った時のジェイドの話? アニメ版放送開始時期の付録なので新規さんが手に取る率が高いと思われますが、やっぱ導入的なエピソードが選ばれるのでしょうか。

 

12月号

 外伝を挟んで一ヶ月ぶりの本編連載です。今月分の内容は、《インゴベルト説得》。

 今月号から『電撃マ王』の版型が変わり、ゲーム誌と同じ変形サイズから、一般的な漫画雑誌サイズに。今までアニメ誌やゲーム誌のコーナーに居心地悪げに並べられていたものが、漫画雑誌のコーナーに、他の雑誌に埋もれて並べられていたので、なんだか新鮮でした。サイズが変わっただけで、普通の漫画雑誌読んでる気がする…!(じゃあ今まで何読んでる気分だったんだ)

『マ王』漫画版のナタリア初登場は外伝1の幼少姿で、丸い目の愛らしい顔立ち、フワフワした髪の毛にデザインされていました。が、本編に登場すると、切れ長の吊り上がった目に、ぶわっと広がった独特な髪形の、クールビューティーな女王様風になっていて、個人的には残念に感じていたものです。
 しかしいつのまにやら、本編連載ナタリアの目もすっかり円くなって、愛らしい顔立ちに変わりましたね。今月はそんなナタリアのオンステージ。泣いて回想して訴えて。こんな娘に懇願されたら、突っぱね続けられる父親なんていないでしょう。


『マ王』漫画版は、キャラの頬がぷっくりしている個性的な絵柄こそ人によって好みが分かれるようですが、背景は毎回奇麗で、アクションシーンに迫力があり、良い漫画だと思います。
 しかし以前に何度か書いたように、キャラクター描写に関しては個人的に不満があります。語るのが可能であろう場面でも、各キャラクターの背景・内面から起こるであろう言動を、決して取らせようとしないからです。
 アニメ版第1話の感想に、「脚本に《少しでも多く伝えようとする欲》があって好き」というようなことを書いたのは、『マ王』漫画版はそれが希薄だ、というモヤモヤが、心の中にずっとあったからでした。

 例えばガイ。正直言って、私はこの漫画でのガイの描かれ方に満足を感じられません。ずっと「あれ?」と思っていたのですが、いやいや、ガイの復讐者としての正体が明かされるエピソードが来たら、まとめて補完されるのだろうと、不満を先送りしていました。…結果、間抜けな期待は捨てて、切り替えていくしかないと認識させられましたが。

 勿論、漫画家さんは商業漫画として不足ないレベルで《ガイ》を描いてくださっています。けれど、といって《ガイについて出来るだけ多く描こうという欲》までは持っておられないのですね。淡白に《いいひと》として扱う。彼が復讐者としての過去と心境を語った8月号分のエピソードを読んで、それを理解せざるを得ませんでした。


 今号分のラスト、ナタリアとインゴベルト王が和解した後に、ガイとルークが語り合うエピソードが追加されていました。この漫画のこれまでなら、ルークと語り合う役はティアに与えていただろうに珍しいこともある、個人的にガイとルークの組み合わせは好きだから嬉しいけど…などと思いつつ。このエピソードでのガイの言動を読んで、ああ本当に、この漫画のガイは《違う》んだなァと、しみじみ感じ入った次第でした。

ルーク「………。ナタリアにはちゃんと帰る場所があってよかった」
ガイ「なんだそれ?」(ルークを小突く真似をして からかいながら)「羨ましいなら おまえも公爵様に甘えてこい!」「こんなとこで油売ってないでホレ

 この漫画版のガイは、とうの昔から一点の曇りもなく復讐心を消滅させているようですから、平和条約締結の場でインゴベルト王に刃を突き付けるなんて有り得ないでしょう。明るい愛情に満ち、恨みも迷いも領主家生き残りとしての責任もそれらから生じる苦悩も何もないから、自分が復讐者であったことを明かした今になっても、自分の家族を殺したファブレ公爵をプライベートの場で《公爵様》と敬称付けで呼ぶことに何の屈託もありはしない。

 でも私は、この《ガイ》は、原作のガイとは違う。全く異なる内面を持つキャラクターだと思います。違うクリエイターが作っているのですから、改めて言うことでもないですが。
 別人だこれ。


 もっとも、『マ王』漫画版でも、ゲームシナリオライターさんの原作の付く外伝だと、本編漫画では描写の薄かったアニスや性格が違う感じだったジェイドが原作に近い感じに描かれたように思ったので、ガイも、今後、彼が主役の外伝が描かれることがあれば、恐らく内面の光陰も原作に準じた形で描き出されるだろうと思っています。それは今でも期待しています。というか、まだ期待させといてください(苦笑)。


 同じように、今月分では内務大臣アルバインに違和感を感じてなりませんでした。彼はキムラスカの《国家としての汚く残酷な本音》を代弁するキャラだと思っていたのですが。頭が固く、国家が何より最優先で。インゴベルト王やファブレ公爵が反逆者となった娘や息子に残酷・傲慢なことを言えずにひよってる時に、彼が代わりに《国家の言葉》を厳しく傲慢に語って物語を進めてくれるという。割とモースと同調するキャラ。
 なのに漫画版のアルパインは、むしろインゴベルトよりも物分かりのいい柔らか頭の人物でした。エェー。

 と言うか。ナタリアが国を想う演説したら、インゴベルトより先に、アルバインとゴールドバーグがナタリアにひざまずいてたんですけど。聴衆の面前で。オイオイオイ! この時点でナタリアは国家反逆者の重罪人なんですよ。インゴベルト王がナタリアを娘だと認める前に彼らがナタリアに恭順してしまったら、その瞬間に、彼らもインゴベルト王に逆らった反逆者になるんですが。なにこれ。

 彼らはナタリアに仕えてるんじゃなく、インゴベルトに仕えてるんでしょ。インゴベルトよりナタリアが上ですか。ここまでナタリアを持ちあげちゃうと、新たな問題が出てくるよ―な。普通に、ナタリアの演説に心動かされつつ戸惑っていたらインゴベルト王が出てきてナタリアを娘だと認めたので、抱き合う父娘の両脇でひざまずくとか、そういうのでよかったんじゃないかなぁ…。
 これが漫画版の世界なのだから仕方ないけど。


 書くの忘れるところだった。えーと、今号分から読者ページの、漫画家さんへの質問コーナーが予告なく消滅してました。で、次号からはキャラクターごとの漫画版の名場面を選ぶ投稿を募るみたいです。「名場面は、必ずコミックスから選んでくださいね!」と念押しがしてあったり、トップに今更のように「コミック版への」応援を募集していますと書いてあったので、アニメ版の感想ばかりになって困ってるのかなーと思いました。

 

1月号

 1月号ですが、'08年11月発売なので、ここに記載。

 今月は創刊三周年だそうです。じゃー『アビス』漫画版も三周年なんですね。
 雑誌の表紙がTVA版の『アビス』で、背中合わせで剣を構える短髪ルークとガイでした。同じ月に発売された『テイルズ オブ マガジン』Vol.3の表紙がTVA『アビス』の長髪ルークとガイだったせいか、いやに印象に残ったり。相乗効果?

 今号分の内容は、《平和条約締結》前半まで。扉絵省略していっぱいいっぱいまでエピソードが詰め込まれてあり、力作。そしていろいろと急展開な回でした。

 まずはバチカル城の庭の東屋にて、実の祖母たる乳母と対話するナタリア。原作ではレプリカ編終盤に位置するエピソードを大幅アレンジ…っていうより、オリジナルエピソードに入れ替えてありました。
 漫画版の乳母は身勝手な人間に感じられました。「私が娘たちの幸せを奪ってしまった」「私自身の幸せも…」なんて、自分を憐れむ言葉を被害者たるナタリアの前で言うんだもん。そのうえ「ナタリア様!! お願いです。どうか一度だけ」「一度だけでもあなた様を本当の名で――」と懇願。
 で、ナタリアは動揺一つせずに「私はナタリア・L・キムラスカ・ランバルディア」「私の名はナタリアです」と言い切り、毅然とした微笑みで拒絶。哀れな老女は「…ナタリア様。私はなんと浅はかな願いを…」と泣き伏せるのでありました。
 なんか、辛い感じになっちゃいましたね。原作だと暖かい対話に仕上がってたのに。

 そこに偶然通りかかるルークとガイ。更に偶然通りかかる、ダアトへ帰還する途中のモース御一行。モースの護衛として何故かアリエッタが従っていて、唐突に表情を一変させて「イオン様…どこ? あなたたち…知ってるはず。アニスが隠したの?」「嘘! 隠してる!!」とヤンデレぽくキレ出す。急展開神託の盾オラクル兵に止められると「離して!! イオン様のお顔見れるからアリエッタこの任務来たのに…」「みんな嘘つき!! イオン様をアリエッタに返してよぉ!!!」と喚き暴れてナタリアの辺りめがけて譜術を放ちます。すると乳母が身を挺してナタリアを庇い、軽傷を負う。原作ではアニスの母がイオンを庇うエピソードが、こういう形に変形。
 で、その様子を見ていたガイは姉の死にまつわる記憶を思い出し、前号では朗らかに公爵に様づけして呼んでたのがこれまた態度豹変、落ち込む以前にキムラスカへの憎悪を燃え上がらせる。急展開。でも全〜然ピンと来てないルークなのでした。

 飛行譜石奪還やケセドニアにアスターを訪ねるエピソードは無し。玲衣さんがアスターを描いたら、どんな感じだったんでしょうね。原作のルークは、降下させたケセドニアの人々が障気に苦しんでいる様子を見て自分を責め、ティアに慰められるんですが、漫画のルークは考えてもいなかった様子で、ティアが平和条約締結の際に「あとひとつだけ問題があります」と提案すると、ポカンとして「え? まだ何かあったか?」なんて言ってました。

 前号分の感想に、「漫画版のガイは、とうの昔から一点の曇りもなく復讐心を消滅させているようですから、平和条約締結の場でインゴベルト王に刃を突き付けるなんて有り得ないでしょう。」と書いたら、今号でガイが豹変して憎悪に顔を歪ませ、しまいに涙を滲ませてインゴベルトに刃を突き付けたので、萌え喜ぶより先にビックリし過ぎて途方に暮れました。
 …え、えーと。謝らないといけないのかなコレ。
 的外れな感想書いてすみませんでした。ごめんなさい。でもマジに、この展開は読めなかったです。

 ガイの恨み節を聞いていたピオニーが「剣を向けるなら俺のほうがふさわしいかもしれん。ガイラルディア・ガランよ」「ホドを滅ぼしたのはキムラスカではないのだよ」「ホドは自滅した…」「――いや」「我々マルクトが消したのだ」と言ったところで次回へ続く。

 雑誌の表紙も漫画も、ガイがいっぱいで嬉しかったです。


 素朴な疑問。
 ひとつ。アリエッタはイオンの顔を見るためにこの任務を引き受けたと言ってましたが、モース帰還のためだけに急遽護衛に駆け付けたという意味なんでしょうか? だってイオンが(国家反逆者扱いの)ナタリア達と共にバチカルへ乗り込んで来たのは、通常ならあり得ない事態で、モースたちはダアトを出る際には予想していなかったはずですから。

 ふたつ。ピオニーが「剣を向けるなら俺のほうがふさわしいかもしれん。ガイラルディア・ガランよ」と言い出した時、インゴベルトが「ピオニー陛下…」と慌てて止めようとし、ピオニーに「黙っていてもいずれわかることです。インゴベルト陛下」「我々の知る真実を全て話すべきだ」と宥められてました。
 どうしてインゴベルトが止めようとするのでしょーか。
 ホド崩落に関しては、キムラスカとマルクトでは立場も視点も違う。公式にはマルクト側がキムラスカのせいだと責めてキムラスカは自分たちのせいじゃないと反発して、十六年経った今も責任をなすりつけ合って醜く争っていたんでしょう。
 で、キムラスカ側は、崩落は自分たちのせいじゃないことは知っていても、マルクト側の自滅だとは知らないはず。ただ、ダアトから教えられ、ホド崩落が秘預言クローズドスコアに詠まれていたことは知っていたはず。一方マルクト側は、自分たちのせいで崩落したことは知っているけれど素知らぬ顔してキムラスカのせいにして責めたてていた。そして崩落が秘預言に詠まれていたことを知らされていなかったはず。
 ホド崩落はマルクトの(いわば)自演だったと、マルクト皇帝がキムラスカとの会談の席で語るのは、某国が拉致を認めたくらいすんごいこと、国家間の関係に大きく影響することじゃないんでしょうか。
 マルクトのゼーゼマン参謀総長辺りが止めるなら分かるんですが、どうしてインゴベルトが止めようとするのか、ホントに分からない。マルクトとキムラスカが協力してホド崩落を預言どおりに演出してたとかいう訳じゃないはずですよね。


 今号分は、読んでてつくづく「絵柄が変わったなぁ」と感じました。
 最初の頃はパーっと勢いよく描いた絵みたいな雰囲気がありましたが、今はクリアな感じ。特に目。処理も違うし、何より黒目が大きく丸くなってる。

 

2月号

 2月号ですが、'08年12月発売なので、ここに記載。


 ピオニー陛下がホド崩落は先代皇帝の指示が誘因で起こったと明かし、疑似超振動を起こさせられた哀れな被験者の少年こそが幼き日のヴァンだったと判明。

 十一歳ヴァンのデザインは『ファンダムVol.2』の十六歳ヴァンを服装も大体そのまま縮めたような感じで、TVA版デザインと同方向。

 場面は飛んでシェリダン。
 嵐が来そうだというのを「腰が痛い」というタマラの台詞で表現してたのは微笑ましかったです。
 師団を率いて高みから悠々と街を見下ろすリグレット。妙に艶めかしいです。傍らのスピノザに向かっての「おまえはここにいていいのか? スピノザよ」という台詞、ナンノコッチャと思ったんですが、多分、《ここで待つことはせず、今から一緒に街に降りてイエモンたちの殺されるところを見届けなさい》という意味なんですよね。でもかなり分かりにくい言い回しだと思った。

 話は再びユリアシティに戻りますが、平和条約締結の場の結末は語りません。
 何故かユリアシティに停泊中のアルビオール艇内で、ノエルが《地核振動停止作戦》の説明。タルタロスのミニチュア付き指示棒さえ用意している準備の良さです。

 危険な作戦にイオンを参加させることにアニスが異を唱え、「替えのきかない御身なんですから――」と言うとイオンが目を見開いて硬直し、そんなイオンを見てジェイドもハッとするエピソードを作っていたのは、とても上手いなと思いました。実際、不思議だったですもんね、原作(笑)。導師イオンが圧死しかねない地核へ行くというのに誰も異を唱えさえしないのは。それと、恐らく次回辺りで明かされるだろうイオンの正体について、読者の注意を上手く喚起しています。

 けどアニスの台詞がどうも…。角が立つ感じにも読めちゃいますねぇ。(^_^;)

「イオン様!! イオン様だけでもシェリダンに残ったほうがいいですよ」「もしものことがあったら今後のことはどうするんです!?」
「イオン様は導師ですよ!? このなかで一番替えのきかない御身なんですから――」「そしてついでにアニスちゃんも一緒にシェリダンに

このなかで一番」という部分は、ない方が良かったんじゃないかなぁ。事実ではありますが。それから、書き文字で小さくとは言え「ついでにアニスちゃんも一緒にシェリダンに」ってのも言わせない方が良かった気がしました。勿論ギャグだとは分かりますが、色々と台無しにしている感じが…。
 これだと、《イオンを案じて》ではなく《自己保身のため》に、イオンにかこつけて危険な任務を他の仲間に押し付けようとしているようにも感じられちゃう。アニスがちょっと嫌な子に見えてしまいました。

 作戦説明中からずっとルークが一人で落ち込んでいる様子。気付いたティアが、兄に同情する必要はないどんな事情があっても許されないと諌め、「あなたには」「…私が」「――」「……」「いえ」私たちがいるわ」と、原作の二倍くらい息継ぎしつつ慰めるのでした。

 原作平和条約締結前夜のケセドニアでのルクティアイベントと、原作平和条約締結後のフェイスチャットからルークやティアの台詞のエッセンスを抜き出して再構成してあります。
 スルーされたと思っていたケセドニアのルクティアイベントが、変形しつつも取り入れられたのは単純に嬉しかったです。
 それにしても、漫画版のティアさんは微妙に恥ずかしそうにしながらも顔を向けずに少し離れて言ってて、冷たい感じにも見えます。多分これは漫画家さんの萌えツボなんですね。原作だとベッドに腰かけているルークの前にしゃがんで下からじっと覗き込みながら微笑んで言ってくれる、ドキドキのシーンだったなぁ。

 タマラの腰痛によるお天気予報が的中して、シェリダンは雨。タルタロスへ向けて振動発生装置の演算機を譜業の大八車みたいなので運んでいたシェリダンめ組の前に、多くの住人たちを殺したリグレットたちが追いついたところで次回へ続く。

 雨に濡れたリグレット教官のお色気度がアップしていました。


 わざわざ雨を降らせたのは、演出上の意図があるんでしょうか。
 次回、老人たちの死を見て荒れるルークに、ティア辺りが雨に濡れた状態で喝を入れて、瞳から流れ落ちたのは涙か雨か…とかやりそう。ティアはラストシーンまで《涙を流させてはいけない》という縛りがあるキャラだから。さもなきゃルークかスピノザをずぶ濡れにしてどん底感を描写するのだろーか。
 なんて想像してみても、今までの経験上、十中八九、盛大に外れるんですが。(^_^;)
 単にリグレット教官が濡れ濡れで色っぽいってだけのことかも。……はっ。濡れ濡れの色っぽいヴァン師匠が見られたりするのかしらっ!?
 大穴展開で、嵐による落雷で、殺されていたアストンが復活するとか。どんなホラーだ。

 あと、何故かアストンとタマラが一緒にいてイエモンがいないのも気になります。
 原作ではシェリダン側にタマラとイエモンがいてリグレットに殺害され、アストンはい組と共に港にいるので。
 アストンとイエモンの役割を交換? それとも、ルークたちがアルビオールで直接シェリダン港に着いたら、怪我をしたアストンが譜業大八車で爆走してきて、一方で港にいたイエモンが目立つ感じに殺されるんでしょうか。あるいは原作でアルビオールを初入手した時のノリで、老人たちがみんなで盾になっている間にタルタロス発進とか。

 超展開で、アッシュが現れて、老人たち全員を救いましたとかルークたちを庇ってタルタロス出港させるとか(笑)。ギンジが出たら神。
 いや。真の超展開はタルタロスが巨大ロボットに変形して、その頭部にアルビオールがパイルダーオン。パートナー回路付き巨大トクナガとの合体技で地核を止めるッ…! が、内部に侵入したシンクのためにピンチに。頑張れ負けるな音素フォニム戦隊アビスマン。(すみません訳分からなさすぎです。)

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 ホド崩落はマルクトのいわば自演のようなものであって、ガイ含むマルクト国民はみんな騙されていたんだと皇帝が明かし、ガイは戸惑いに顔を歪めて「陛下…!!」と言う。
 それでおしまいでした。

とうに復讐する気は失せてたんだがね」とガイが剣を収める様子も無ければ、会談終了後に仲間たちに謝罪して、どうしても死んだホドの人々のためにけじめをつけたかったと言うのも無し。ヴァンも自分と同じような復讐を望んでいると思っていたけど違ったようだ、同じ痛みを持っていた者としてヴァンを止めたい、と決意を新たにする台詞もありません。
 何の考えも述べない、仲間の誰もこの件でガイに語りかけない、皇帝たちの謝罪も描かない。
 後はもう、その他大勢の一人として普通の表情で画面の隅にいるだけでした。

 例えばジェイドの話を扱った時は、ジェイドの原作以上の懺悔、果てはジェイドのためにルークが命がけで戦うところまで描きましたし、ナタリアの話では乳母との会話まで描いた。でもガイの場合はありません。ぶつっと切れてフォローなし。

 今月のその他のエピソードの描き方の余裕っぷりから見ると、ページが足りなくてやむなく切ったという感じじゃない。多分、素で、ガイを中心にした流れの終端を描く《必要を感じなかった》んだろうなぁと。


 連載初期の頃から漠然と感じていたことではありますが、この漫画版の作者さんはガイにあまり興味を持っておられないっぽいですよね。(^_^;) クリエイターとして見ると、面白くないキャラとかなんでしょうか?

 ガイの過去や内面に関わる物語は原作では外殻大地編からかなり多く伏線が張られ始めて、崩落編でナタリアの物語と二分して大きく語られるものです。
 が、漫画版では外殻大地編での伏線をとことんカットし続けました。メインシナリオに掛かる《カースロット》や《欠けた記憶》もスルー。ルークが髪を切った時に「公爵様にご報告を」なんて言わせてたので、もしや漫画版のガイは復讐者という設定が無いことになってるのかとすら危ぶんだものでした。

 随分と遅く、崩落編中盤になってやっと復讐者だと明かされましたが。今までの感想で書いたように、個人的にはガッカリしました。カットカットカットで、待ちに待った果てだったから、そのように感じてしまったんでしょう。

 余談ながら、ここにアッシュが心を傷つかせて黙って席を外すオリジナル描写を挿入したのを見て、この漫画家さんはアッシュに特に強い思い入れがあるっぽいなぁと思っていました。アッシュの心理は精緻に掘り下げようとしているんだな、と。
 で、その後にアニメ雑誌の記事で、漫画家さんが(アッシュの過去を描いた)外伝1のネームを切りながらボロボロ泣いた、と仰っているのを読んで、ああやっぱりと腑に落ちたものでした。

 無論、実際にどのような考えでそうされたのかは読者には量り知りようもないんですが。


 復讐者だと明かされた際の台詞に、宝刀ガルディオスイベントのエッセンスも取り込んでいましたので、漫画版ではこれでガイの話は全部片付けたってことなんだなと思っていました。ガイの《欠けた記憶》に関しては取り扱わないか、扱っても2コマくらいで済ませるんだろう、平和会議で剣を突き付けるエピソードは絶対にやらないだろうと。ニコニコ笑って「公爵様に甘えてこい」と言うキャラになってましたし。

 ところが翌月分で豹変。
 漫画版ガイが初めて生々しい内面を見せてくれたのはとても嬉しかったですし、表情も素晴らしかったけれど、それも吹っ飛ぶくらい、本当に、心底ビックリしました。

 正直言うと今でも、元は《記憶の回復》も《剣の突き付け》も描かないつもりでいて、どういう理由か土壇場で方針変更したんじゃないかと疑っています。そのくらい急激な変化に感じられました。

 ともあれ、ガイファンとしては喜ぶべきことだよねと思っていたらば。
 今月は、ぶつっと切れておしまい。アァー…。(へなへなへな)

 その予定がなかったのだとしても、針に糸を通して縫い目を作ったのならば、最後に糸の端を結んで止めるところまでやってほしかったです。
 他のキャラに関してはちゃんとそうやってきてるのに。ちぇー。

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 素朴な疑問。
 崩落するホドのイメージイラストに、エルドラント(レプリカホド)と同じ外骨格。
 あの外骨格は、生成途中のレプリカホドを空中に保持しつつ要塞にするために後からヴァンが取り付けさせた…のかと思ってたんですが、ホドってオリジナルの段階から要塞島だったのかな。
 ちなみにアニメ版のホドは普通の島で、外骨格は付いてませんでした。

 



 

テイルズ オブ ジ アビス4

メディアワークス/DENGEKI COMICS/玲衣

 メディアワークスの雑誌『電撃マ王』連載のコミカライズ。ギリギリ・メディアワークス名義の第四巻。(三月末の発売で、四月から出版社名がアスキー・メディアワークスになったので。)

 表紙は凛々カワイイ ナタリア姫♥ それはそうと、毎巻裏表紙にはデフォルメされたちびキャラが数人載るんですが、一巻目は「ルーク、ティア、ジェイド、イオン」。二巻目が「ガイ、ナタリア、アニス、ミュウ」。三巻目が「アッシュ、リグレット、シンク、アリエッタ」ときて、今巻は誰かと思ってたら「ディスト、カイザーディスト、ラルゴ」でした……。人数減った上に人格を持たない(つまり、”キャラクター”じゃない)モノが混じっとる(笑)。後ろにちっちゃいカイザーディスト引き連れて先頭で意気揚々としてるディストが可愛いと言うかなんとなくアレに思えてくると言うか。(アレって何だよ)
 ヴァンを入れなかったのは意外でした。まさかラルゴの大鎌がスペース取ってるせいか。確かにあの後ろに付いていくのは危険すぎる。最終巻には最終決戦バージョン・ヴァン師匠がいたらいいなぁ。

 収録されているのは2007年9月号、同年11月号〜2008年2月号の連載分まで。2007年10月号は外伝3でお休みだったのですが、前巻同様、それを無視して「初出/電撃マ王2007年9月号〜2008年 2月号」と巻末に記載されてました。確かにこれでも嘘ではないのですが、もしも将来この漫画について調べようとする人がいたら、ちょっと可哀想(笑)。ガンバレ。
 にしても。ありゃ!? 外伝2は収録されないんだ……。いや考えてみたらここで収録したら盛大なネタばれになるのか……。『テイルズ オブ シンフォニア』のコミカライズ版のように、最後に外伝のみを集めた別巻単行本が出たりするのかなぁ。それもいいかも。

 ストーリーは、断髪後のルークがユリアシティから出発、仲間と合流して、ケテルブルクでジェイドの過去に触れ、ノエルとアルビオールとその他ご老人をゲットし、セントビナーで救助活動を行ってディストと追いかけっこらんらら&ジェイドのためなら心中未遂、ピオニーと謁見して誉められちょっと浮きつつ再びユリアシティへ……というところまで。内容への感想は連載時に書いたので割愛。
 今回はおまけが豪華で、書き下ろし四コマ漫画が五ページ、ミュウのモノクロイラスト付きあとがき一ページ、更に足跡マップと用語集が付いていました。マップと用語集を見て、なんとなく、読む方もですが書く方も設定の確認とストーリーの再構成で苦労してそうだなぁと思いました。
 書き下ろし漫画は面白かったです! ルークとアッシュがメイン。そうそう、ゲームとかしてる時に脇から口出されたり、後ろから「……あっ」とか呟かれたりするの、嫌ですよね(笑)。そして「半端な違和感」に笑った。

 あとがきによれば、次巻は「数々の転機が訪れる激動の5巻」だそうで。ナタリアの偽王女バレは現時点の雑誌掲載分でもう出てますが、他は何なんでしょう。ルークとヴァンの再会は来そう。…ガイの正体バレが来るかなぁ。来るといいですね。


 そういえば、連載中に気になってた「ケテルブルグ」が「ケテルブルク」に、「譜業ふぎょう」が「譜業ふごう」に修正されていました。こういうのを校正するのって編集記者さんなのでしょうか。毎回お疲れ様です。
 それはともかく、連載時には読み流していたジェイドのセリフ「同位体複写技術フォミクリーの生みの親の名ですよ」に今頃「あれ?」と思った私なのでした。フォミクリーは物体を複写するけど同位体は作れないって、原作ゲームでは最初にフォミクリーの説明した時にジェイドが言ってた…記憶がある…けど。ルークがアッシュの同位体なのは事故による偶発現象、異常事態なんですし。
 …いちいち細かくてすみません。ホンにどうでもいいことですな…。

 



 

テイルズ オブ ジ アビス外伝4 dance! dance!! dance!!!

メディアワークス/『電撃マ王』'08年5月号付録/漫画:玲衣、オリジナルストーリー:実弥島 巧

 単行本第四巻発売に合わせた付録。今回は「アニスとディストの出会いを描いた 外伝史上初のコメディ」です(付録裏表紙のあおり文より)。表紙の紙の種類がまたツルピカに戻りました。うむ。こっちの方が好きかも。

 今までになかったことに、前号の予告の時点で誰の外伝なのかがまるで明かされていませんでした。蓋を開けてみるとアニスとディストという思いがけない組み合わせ。
 私は田舎に住んでいるので雑誌が書店に入荷するのが遅く、先に出版社の公式サイトの情報でそれを知ったのですが、その時点ではとてもガッカリしていました。
 今までずっと、原作であまり触れられなかった部分をシリアスに語っていたのがよかったのに。アニスとディストの出会いのエピソードなんて原作で結構明かされちゃってて目新しさがないし、それでコメディなら、商業二次創作作家の方たちの作品でもきっと変わらない、十二分に質が高くて面白いだろう。なのに貴重な「メインシナリオライター原作の公式コミック」の枠を消費するなんて勿体ない。
 まさかシリアスネタだと(私のような)読者がぶつぶつ言う確率が高いから、作り手側の方たちが、もうヤダ緩い番外編コメディしかやりたくないと思ったとか、そんなことだったりするのだろうか。そうだったらどうしよう。などなど。←ルーク以上のマイナス思考型人間

 しかし実際に読んでみたら、そんな懸念は吹き飛んでしまいました。とても面白かったです! ファミ通外伝小説のナタリア編を読んだ時はラルゴが好きになりましたが、この漫画を読んだらディストが好きになりました。


 物語はゲーム本編の三年前(でも、多分実質時間的には二年前くらい?)のND2015、幼年学校を出て正式に神託の盾オラクル騎士団に入団したばかりのアニスと、彼女とたまたま食堂で同席したディストの交流を描いています。
 ちょっと意外だったんですが、騎士団にアニスくらいの年齢の子がいるのは珍しいことだったんですね。(幼年学校も付属しているらしいし、アリエッタもシンクも十二歳くらいで入団しているようなので、さして珍しくもないことなのかと思っていました。
 あと、ディストは常に飛行椅子に座ってるわけじゃなかったのか(苦笑)。普通に食堂の椅子に座って、いつも普通に立って歩いて登場してました。この頃はまだ飛行椅子を作ってなかったとか? …いや。外伝1で、七年前の時点でもう飛行椅子使ってたっけ。
 そういえば今のところ、本編連載分ではディストはカイザーディストから脱出するときぐらいにしか飛行椅子使ってないですよね。ドラマCD版風に。漫画家さんが使うのを避けているのでしょうか。(ディストが飛行椅子に座ってるのって、多分原作ゲームのグラフィック系のスタッフさんたちの悪ノリで、元はシナリオにはなかったんだろうと思いますし。色々不自然だもんなァ。

 一般兵士用食堂は人でいっぱい。その日入団したばかりで勝手の分からないアニスは空席を見つけて、相席になる人物に向かって愛想良く「ここ…座ってもいいですか?」と尋ねます。ですが、彼こそは屈強の兵士たちの誰もが恐れ忌んで避けていた男。教団幹部にして稀代の奇人、死神ディストだったのでした。
 初対面のその日、話しかけるとディストは「……座っていいか… ですって?」と呟いて、”くわっ!!”と凄い目で睨む。それから結構な沈黙の後に「…どうぞ!!」。気の弱い人間ならその時点で退散しそうなものですが、流石はアニス、ちょっと怪訝に思いはしたものの笑顔で着席。そのうえニコニコと話しかけます。ところがディスト、完全無視。それどころかまだ全然食べ終わってなかったのに無言で立ち上がり、そのままトレイを持ってスタスタと食堂を出て行ってしまったのでした。残されたアニスはポカンとし、次いで噴火寸前に。「最高級の営業スマイルで声かけてやったのに」「あいつ…何様!!?」。無理もないですディストひでぇよ(^_^;)。しかし食堂を出て歩くディストは、なにやら鬼気迫る恐ろしい表情でぶつぶつと呟き続けていたのでした。

……………………れた ……られた 声をかけられた」「あの席に座り続けて六年」「はじめて人から声をかけられた…!!!」

 オイ(笑)。
 どうやらあまりに嬉しすぎてじっと座っているのに耐えられなかった模様。難儀な人やねぇ。
 それはともかく、席に座り続けて六年か。彼が神託の盾に入ったのは少なくともこの時点から六年前、ND2009頃だったと推測できますね。ディストがジェイドと袂を分かってから五年後、ヴァンがアリエッタを拾ってオリジナルイオンと引き会わせた頃か。

 アニスがイオンと初顔合わせしたのはその日の午後? それともあの食事は朝食だったんでしょうか。『エピソードバイブル』のイオン小説によれば、初顔合わせの時のアニスは、腰はトコトン低いんだけど導師への対応としては庶民臭すぎる感じにペラペラペラペラ喋って、ところが手は緊張のあまりひどく冷たくて。それに気付いたイオンはアニスに興味を持った、とのことでしたが。そのせいもあったのか、イオンは取り入ろうと必死な導師守護役フォンマスターガーディアンの少女たちの中から、さほどギラついていなかったアニス一人を選択。…おー。アニスを付き人に選んだのはイオン個人の意志だったのか。重要ポストですし、てっきりモースがそう配置したのかと思ってました。

 それにしても本当に不思議なんですが、アニスはどうしてイオンに殆ど媚びようとしなかったんでしょうね。『エピソードバイブル』のアニス小説を読む限り可能性を考えてはいたようなのに、実際に付き人になるとイオンに対しては玉の輿なんてまるで言わない。他の男にはあれだけ擦り寄るのに、イオンにはそういう風にはまるで接しようとしない。……実はアニスはかなり年上の男がタイプだったりとか(笑)。いやいや、導師とは言っても実際はモースの支配下にあって力ない存在だと、予め知っていたからなのかな。

 ここで物陰からアリエッタとシンクが「ケッ」とか「イオン様ぁあ」とか、それぞれの様子でイオンを見ているのが、いかにも戯画的で面白かったです。

 翌日、再び食堂にやって来たアニス。昨日の変人が実は六神将の死神ディストだと知った途端、瞳の中には「金」と「地位」の文字がキラキラときらめく。

「うっそぉ〜〜〜〜!!! 何様かと思えばエリート中のエリートじゃあ〜〜ん♥ (性格はアレだけど) 貯金いくらあるのかなぁああああああ」

 現金なアニスはさっそく今日も相席して、ペラペラと美辞麗句を並び立てた……のですが。
 不自然なほど恐ろしげに顔をひきつらせて沈黙していたディストが、頬を真っ赤にして汗を流し、ぷるぷる震えつつ、ついにニヤッと笑みを浮かべて(やはり引きつっていますが)、聞き取りにくい声でボソボソっと。聞き返すと何度か言い直した挙げ句にデカい声で!

「この美しい私とそんなに友だちになりたいのならば」「特別に許してあげます!!

 訳が分からず反応できないアニス。するとディストは怯えたようにビクッと震え、愛想笑いを浮かべながら怒涛の勢いで言い訳を開始。

あっ!! いや!! イヤならいいんですよ!? 別に私のほうが友だちになってほしいわけじゃありませんから!!
 いつもここでひとりで座ってたのは友達がいないからじゃないですよ!!私はひとりが好きなんですでも私は心が広いですから一般兵士とも交流しようとわざわざここで食事をしてあげているというのに私があまりに美しいから妬みで近づけないのでしょうねああなんとおろかな連中なのでしょうそういう意味ではあなたは彼等と比べれば私に声をかけたという点において優れた勇気を…」← ひと息で読むべし

 こうして、アニス・タトリン十一歳の早熟過ぎる玉の輿計画は早くも没となり、あえなく挫折を迎えたのでした。自主的に。
 にしても、ほんの数分とは言え、アニスがディストもお婿さん候補認定してたことがあったとは(笑)。

 一方、イオンも何故かアニスがすっかり気に入ったようで、彼女にばかり仕事を頼む。仕事自体も忙しいのですが、それ以上に、妬んだ他の導師守護役たちが嫌がらせを始め、アニスはその標的になってしまいます。しかしそれを怒りに変えてめげないアニス。偉い。
 そしてディスト。アニスはもう彼と相席することをやめたのですが、彼の方からあからさまにアニスを探して近付いてきて、前に座るではありませんか。自分からは何も言いませんが、頬を紅潮させて物言いたげにチラッチラッと視線を送ってきます。恥ずかしがり屋の子供みたいに。キモいですが仕方なく「…あの…」声をかけると、強張りつつも一瞬で笑顔を輝かせ、変な動作と共に不自然にデカい声が炸裂。「おや君はあのときの!! 奇遇ですね!!!」。凍りついた食堂の空気にも気づかず、以降は例によって延々と自分の話したいことだけを話し続けるのでした。痛い。色々と痛いですディストよ…。(涙)

メシがまずくなった…)とうんざりしながらも、子供じみたこの変人の様子を見ていると、アニスは拒絶できないと思ってしまう。
……なんつーか かわいそうな人なのかな?)(参ったなァ)(私… かわいそうな人って どーしても嫌いになれないんだよねぇ)(頼られるたちなのかな… やだなー
 哀れな両親の姿を思い浮かべてしまうアニス。……そっかぁ。だからルークが断髪した後も、散々嫌味を言ったくせに、いざルークが落ち込んでぐるぐるしちゃってると、励まさずにはいられなかったんですね。
 けどアニスが頼られるたちだというのはまさにその通りな気がしました。もう少し成長したら姐御肌、年をとったら肝っ玉母さんになりそう。

 この時点では、アニスにとってディストは厄介なおっさんに過ぎないのですが、やがて事件が起こります。同僚たちからの苛めがエスカレートし、ついに頭から水を掛けられイオンの書類を台無しにされたうえ、両親を馬鹿にされ嘲笑われて、トクナガ――母・パメラが作ってくれたヌイグルミを踏み破られてしまう。(――ああ くだらないくだらない もめるだけ損だ 相手をしたら同レベル)と懸命に自分に言い聞かせていたアニスの中で、ついに何かが切れ――かけた瞬間、通りかかったディストが助けてくれます。「何をしているんです?」と声をかけてキザったらしくポーズを決めただけなのですが、導師守護役の少女たちは「ゲッ!! 死神ディスト」「行きましょ!! 変人がうつる!!」と悪態を残して逃げて行きました。…教団内で面と向かって上官にそんなこと言うなんて。ディストって恐れられてんだか舐められてるんだか判りませんね。けど、このシーンのディストは食堂での時とは違って、ちゃんと理知的な大人に見えました。変な挙動してなかったし。そんなには。

 苛められていることを導師に言わないのか、とディストに言われて、目を向けないまま、自分のことは自分で解決しますからとアドバイスを拒絶するアニス。彼女はイオンの一番のお気に入りですが、決して彼に頼らないし、胸の内も見せようとはしないんですね。背景を考えれば当然なんでしょうが。十一かそこらの女の子が、こんな目に遭って誰にも頼ることができず。そんなアニスの様子を見て、ディストはすぐにアニスの両親の問題が根底にあると察した模様。(いつから話聞いてたんだ?)といって特に心動かされた様子もなく(この辺、彼は幼なじみのジェイドと割と似てるかも)、しらっと「あなたがいくらがんばっても彼らの間抜けぶりはどうにもならないと思いますがね? それよりはさっさと導師に――」と言ってしまう。

 その瞬間、感情をこらえていたアニスは爆発してしまうのでした。年相応に涙をこぼして。
パパとママを悪く言うな!!
 怒鳴りつけて駆け去るアニス。破れたヌイグルミと共に残されたディストは…”友達”に怒られちゃって、プルプル震えて涙を浮かべていたりして。ほんにデリケートで難儀な人やなぁ。


 この後の展開は素敵でした。アニスもディストも、それぞれ優しいです。こうしてゲーム本編のアニス言うところの「そしたらトクナガを作ってくれた。悪い奴じゃないんだけど、いい奴でもないんだよねぇー」というエピソードに繋がる、というわけです。

 ディストがアニスに共感して彼女を好ましく思ったというのは驚きでした。幼い頃、ジェイドにどんなに冷たくされても彼を嫌えなかった自分。そしてアニスも、両親にどんなに面倒をかけられても見捨てることが出来ない。――それは、相手をとても好きだから。
 また、アニスがね。ディストをウザいと思っていたのに、怒鳴りつけた後ディストが食堂に来なくなると、自ら彼の好きな(食堂でよく食べていた)料理を作って、「昨日はごめんなさい」と書いたカードを付けて差し入れとして置いていくのです。なんていい子なんだろう! ちなみにディストはぷるぷる震えて無言で感動してました。カードに「大人のくせにすききらいすんなよ」と追伸が書かれてあるのが、偽悪者なアニスらしいですね。
 そしてディストはツンデレ。アニスに巨大化するよう改造したトクナガを渡し、それに戦わせることも可能だと言って。
…まあ あれですよ」「そのへんの導師守護役など雑魚同然です」「この人形があればね」「…もっもちろん実験のためですよ!? ちょうど実戦データがほしかったのです」「私は美の探究者であると同時に優れた超天才譜業学者ですからね!!!
 そうか。苛められてるアニスの心配をして、手助けをしてくれたんですね。

 この様子を見ると、ディストはいい奴だなーと思える。ですがゲーム本編では、罪のない人間を笑いながら殺しているのも事実で。セントビナー崩落の時には小さな子供を躊躇なく殺そうとしたし、査問会に送られる途中のモースを救い出した時なんか、護送船の乗員を皆殺ししてますし。
 人にはいろんな面があって。いいところを確かに持っている、根が悪いわけじゃない人間が、でも一方では、現実に何人も人を殺してケロッとして笑ってる。…ほんとシビアですね。


 その他、個人的好ポイント幾つか。
 そのいち。
 食堂で顔を合わせる時、アニスとディストっていつも同じメニューを食べてる。これ、絵をじっと見ていて気付いて、すごい発見した気になってとても楽しんだんですが、よくよく読んだらセリフでもばっちり説明してあった…。かくん。
 ディスト曰く「2人ともラーメンとはこれはまた奇遇ですね初日も同じオムライスでしたねあれは美味しいものですからね」だそうです。
 最初、アニスとディストって意外と気が合うんだ、味覚が似てるんだと思って大受けしたんですが、じっくり考えてみて、あ、ちょっと違うかなと思った。これ、ディストの味覚がアニス並み…つまり、味覚が子供っぽいって意味なんだな、きっと(笑)。ラーメンはともかくとして、他はオムライス(タコさんウインナー付き)、ハンバーグセット、極めつけはお子様ランチ!(ライスの上に旗立ってるんで、多分
 ディストは特にオムライスが好きっぽい。でも添え物のグリーンピースはパサパサしてて嫌いなんだそーです。
 ルークの味覚も子供っぽい気がするので一緒に食堂に行ったら似たようなもの注文しそう。ディスト、ルークなみに偏食だったりして。

 そのに。
 ディストの私室の扉に掛けられたプレートや貼り紙の文章。
薔薇のディスト様の華麗なる研究室」「ただいま華麗に研究中」「邪魔する者は華麗に殺します
 …ディストはガイと気が合いそうな気がした。譜業好きで華麗好き(?)だ。あるいはセンスが似ているのかもしれない。個人的にはいやだ。(苦笑)

 そのさん。
 かつてディストがジェイドを”金の貴公子”と呼んでいたらしいことはゲーム本編のコンタミネーションイベントに出てくるんですが、彼が自分自身を”銀の貴公子”と呼んでいたとは知らなかったです。初出情報、ですよね。なるほどー!

 そのよん。
 六神将全員分の二つ名をつけたのはディストだったんだそうです! へー!!
 勝手に付けたらしいのですが、その二つ名が世界中に知られているうえ、ラルゴとシンクに至っては自らそう名乗ってましたよね。ザオ遺跡で。なんかすげぇ。
 にしても、ディストがアニスにつけてやった二つ名が「つるぺたのアニス」。
 三十三歳の男が十一歳の少女に面と向かって自信満々に「つるぺたのアニス」。
 なんだこの六神将の二つ名のかっこよさとの格差は。
 アニスが怒ると実に不本意そうだった辺り、やっぱディストって変人なんですよねぇ。



 今回の外伝を読んでいて、去年の夏の付録に掲載された、藤村あゆみさんのアニス外伝漫画「そのままのあなたに」を思い出してなりませんでした。そちらの漫画はあくまで二次作品扱いで公式外伝ではないのですが、とてもよく出来ていた。解釈も説得力があって、これが公式でも問題なく思えるほどだったんですが、今回の公式外伝と比べると、ちょうど正反対になってたんです、アニスのある部分に関する解釈が。それで、これは面白いなぁと思ったのでした。

 「そのままのあなたに」では、アニスは思い切りイオンに媚びて、イオンの権力を借りてモースから逃れようと画策していました。でも公式外伝ではアニスは同僚の中で一人だけイオンに媚びなかった。そして自分の苦境からはあくまで自分の力で逃れるべきだとして、絶対イオンの力を頼ろうとしない。

 どちらでもアニスらしい感じがすると思いましたが、ゲーム本編でアニスとイオンがああいう結末を迎えたのは、アニスが頑なに、問題を自分一人で抱え込んで、絶対誰も頼ろうとしなかったからなんですよね。そう思えば、確かにアニスは今回の公式外伝のようであるべきなのか…。

 ずいぶん前に、アニスがモースから逃れられずにイオンを死に追いやってしまったのは、つまり彼女の周囲には頼れる大人が誰もいなかったということなので痛ましい、という感じの考察コメントを閲覧者様からいただいたことがあるんですが、今回の外伝を読んで、初めて真に迫ってそう感じられた気がしました。アニスは誰も頼れなかったから、すごくすごく頑張った。全部自分で責任を負って処理してきた。処理できないものは辛くても抱え込んだ。結果として彼女は、助けが必要な時でも誰かに救いを求めることが出来ない人間に育ってしまってたんですね。

 ルークたちと過ごしたND2018の一年間は、アニスのそういう面にも何か変化を与えたんでしょうか。…一人では手に余ることを抱え過ぎて、イオンを殺し、アリエッタをも殺してしまったわけですから。



たいしたことない追記。いや、書こうと思って忘れていたことを、後で思い出したので。
 ゲーム本編中で、何度かアニスが「トクナガは可愛い」と発言するシーンがあります。ザオ遺跡クリア後のフェイスチャットと、あとナム孤島に入った時だったっけ? 男性陣やナタリアが、トクナガを可愛いと主張されて皮肉を言ったり言葉を詰まらせたりするのに、アニスは重ねて「可愛いじゃないですか! 目はぎょろっとしてて、口はじゃぎじゃぎで!」と笑う。
 ゲームだけを見ていたときは、アニスって変わった趣味をしてるんだな、くらいに思っていました。けど今回の外伝に、こんなシーンがあったんですよね。

#恐らく、アニスが導師守護役として初勤務する日の朝
パメラ「アニスちゃん おめでとう」「今日から導師守護役ね おめでとう」「ごめんねアニスちゃん」「お母さんたちのためにありがとう」「がんばってね――」
#トクナガを両手で差し出す
パメラ「アニスちゃん この人形をパパとママだと思って持っていってね」
アニス「またこれ? 同じのばっかり何個めなの ママ?」
#黙って優しく見守る両親
アニス「継ぎはぎだらけで 全然かわいくないよ」「ねぇ パパもそう思うでしょ?」
#そう言いながら、嬉しそうにトクナガを抱きしめるアニス
アニス「ねぇパパ」「…ママ―――」

 そうか。アニスも本当はトクナガを可愛くないって思ってたんですね。でも、母親が作ってくれたものだから。だからアニスにとって、世界で一番可愛い人形だったんだ。

 アリエッタが常にヌイグルミを抱いているのは、彼女が不安だからですよね。だからこそ外伝2では、オリジナルイオンが生きていた時代にはヌイグルミを持っておらず、その死後(アリエッタが導師守護役を解任されイオンから遠ざけられて)からヌイグルミを持っているように演出されている…と思ってますが。
 で、アニス。アニスも常にヌイグルミを持っていますが、彼女の場合はあくまで武器として携帯しているのだと、ずっと思っていました。でも今回の外伝を読んで、実はアニスのヌイグルミも、不安ゆえに肌身離さず携帯されている部分があったのかな、と感じました。ただ、アリエッタはヌイグルミを抱きしめて縮こまったポーズを取っているのに対し、アニスはヌイグルミを”背負って”いる。すごくアニスらしいなぁと思いました。

 

'08年12月発売の「公式外伝集」に収録。

 



 

テイルズ オブ ジ アビス5

アスキー・メディアワークス/電撃コミックス/玲衣

 アスキー・メディアワークスの雑誌『電撃マ王』連載のコミカライズ、単行本第五巻。原作のTVアニメ化に合わせた発売でもあります。

 表紙はルパン三世っぽい表情のガイ。ということは次がアニスかな。その次が誰になるかが問題だ。順当に考えればイオン様だろうけど。外伝単行本の表紙はきっとアッシュになるんだろーな…って、現時点で単行本未収録分の外伝にはアッシュ出てないか。裏表紙のちびキャラはシェリダン「め組」+ノエル。スペース的に仕方ないんでしょうけど、ギンジ兄さん仲間外れぇ。

 収録されているのは2008年3、4月号と、同年6月号〜8月号の連載分まで。今回は出版社名が変わったからでもあるでしょうが、外伝執筆で本編連載休止した回はきっちり除外されて、正確に記録してありました。これは安心。

 ストーリーは、ユリアシティでテオドーロに外殻降下の指示をされ、パッセージリング停止の危険と聖なる焔の光に関する秘預言クローズドスコアが明らかになり、イオンがダアトに残留、ナタリアが偽王女と発覚してバチカルから逃走、ベルケンドでヴァンと再会してガイが復讐者だと分かり、地核振動停止装置の製造をベルケンド「い組」に依頼したところまで。こうして書いてみると山の連続ですね。内容への細かい感想は連載時に書いたので割愛。

 今回の単行本書きおろしは、アニスとティアとナタリアの女性陣三人とついでにミュウの愛らしいカラー口絵一枚。モノクロのあとがきトークページ一枚。トークの内容は、TVアニメ化に関われた喜びと、近々外伝をまとめた単行本が出るという告知です。…外伝の単行本は『シンフォニア』コミカライズ版のように完結後に出るのかなと思っていたのでビックリしました。アニメ放映中に出しちゃってなるべく売るのかなぁ。

 このあとがきには「私はアニメに関しては見守るだけの立場ではありますが」と書いてあり、漫画版はアニメ版には一切関わらないようにも読めますが、作家さんの個人ブログの方には、漫画版(外伝)の内容もアニメに反映されるのだと嬉しそうに書いてありました。

 今回は、単行本の帯にもデカデカと「TVアニメスタート!」と書いてありますし、挟み込まれた電撃コミックスの広告ペーパーも、トップページが『マ王』漫画版アビスになってたり、『マ王』本誌の宣伝に外伝5の表紙イラストが大きく使われていたり、今までになく大きな扱いです。TVアニメ化って凄いなぁと思いました。

 



 

テイルズ オブ ジ アビス外伝5 EPISODE 00

メディアワークス/『電撃マ王』'08年11月号付録/漫画:玲衣、オリジナルストーリー:実弥島 巧

 単行本第五巻発売、そしてTVアニメ放映開始に合わせた付録。予想通り「イオンに平和使節になってほしいと頼みに行った時のジェイドの話」でした。主視点はイオン。ジェイドが(変装として)オリジナル衣装+ポニーテールで登場し、巻末に設定画も載っているので、ファンの人は大喜びしたのかな。

 一読して抱いた感想は、「あれ、普通のストーリー漫画になってる」ということでした。
 今までの外伝はみんな、イメージ的な要素が多いと感じていたので。何年もの間の心情や状況の推移を、心情イメージを多く含む過去の回想的な短いシーンを繋ぐことで構成し、表現しているという。(特に外伝1と外伝2が顕著。)それが今回初めて、時間軸どおりに展開していく、しっかりした普通の漫画でした。
 前回の外伝4も、それ以前に比べるとイメージシーン挿入の技法がぐっと少なくなっていたのですが、今回は完全に無かったです。フワフワしてない。

 その点で、今までの外伝とは雰囲気が違うので、読者の好みによって評価が分かれるのかもしれませんね。キャラクター中心に見ていて、キャラクター理解を深めたい、リリカルな思い入れの世界にどっぷり浸りたいと思っている人は物足りなく感じるのかも。逆に、原作で語られなかったストーリーを知りたい、補完したいと思う人は、今回のような描き方の方が喜ぶのかもしれません。


 少なくとも外伝2までは、原作者(ゲームのメインシナリオライター)さんから、文書のほかに口頭でエピソードを聞いて、それを元に漫画家さんが漫画を描いていたそうなんですが、今回は台詞等も書かれた厳密な文書の原作が作られていたか、さもなきゃ相当煮詰めて話し合って作ったとかなのかな、という印象を持ちました。
 なんにせよ、アニメ化に合わせて、ゲーム未プレイの新規ファン層を取り込むことを目論んでいるのは間違いない。アニメ版第一話〜四話くらいまで見ただけの人が楽しめるよう、結構気を遣って作ってある気がしました。なにしろ、ネタバレ配慮してある(笑)。導師イオンがレプリカだということを語らないようにしてますし、アニスがモースのスパイだということも明示はしない。ゲームプレイ済みの人は暗黙の了解的に理解でき、未プレイの人には伏線的に感じられる、という描き方でした。



 ストーリーの内容。
 物語の時期はND2018……と言うんだから、ホントにゲーム本編開始(ND2018/01/23)直前。ラストシーンから推測するに、01/23を最終日として、遡って数日くらいの間にあった話みたいですね。

 レプリカイオンは穏やかに《導師イオン》を演じながら、心の奥底で《自分自身が》導師として仕事を成し遂げたいと思っています。が、まだそれを無自覚。漠然と「これでいいのかな?」と微量の疑問を感じる日々です。

 そんなある日、マルクト皇帝の使者としてジェイドが教団本部を訪ね、キムラスカへ和平を望む親書を送りたいこと、その際に導師に協力してほしいことを申し入れました。《自分自身は》協力するにやぶさかではないイオンでしたが、所詮は傀儡。モースに断固反対され、「すべて我々にまかせておけばよいのです」と自発の芽を抑えつけられてしまう。そして言われるがまま、不本意そうな顔をするでもなく悲しそうにするでもなく、「…はい。すみません」とだけ答える。それがレプリカイオンという存在でした。そしてそのまま、公式には「急病」という扱いで自室に軟禁されてしまいます。

 さて。教団本部でイオンに直接返答を聞くどころか、待機していたダアト港で代理人から「ご協力できかねる」と伝言されてしまったジェイド。折よく、ダアト港の第三十三石碑の前で巡礼のガイドの(非公認)バイトをしていたアニスを発見。「導師は公式行事にも出ず臥せっておられるそうですね。突然のご病気で」「私が訪ねた直後に突然倒れられ… しかもピオニー殿下宛てのご返答を人づてになさるほどのご病状!!」「心配ですねぇ」「真意をお伺いしたいとご伝言願えませんか。ご病気の導師に」と、人の悪い笑みを浮かべて言う。

 とはいえ、モースの支配下にあるアニスにそんな協力ができるはずがない。モースも何かを感じたのかわざわざ釘を刺してきますし。ところが、軟禁されているイオンに夕食を運んで行った時、椅子に座って窓の外の夕景を物憂げに眺めていたイオンが、苦しそうに尋ねてきたのです。

イオン「ねえ…アニス」
アニス「は…はい?」
イオン「導師が和平に協力するのはそんなにいけないことでしょうか」
アニス「!」
イオン「僕は導師として間違っているのでしょうか…」
アニス「そ…それは」「きっとモース様にも大詠師としてのお考えが…」
#予想通りの答えに悄然としたかのごとく、無言で暮れて行く窓の外を眺めるイオン。アニス、苦しそうに黙り込んで
アニス「……市民たちが噂してます。今度こそ戦争がはじまるんじゃないかって」「その懸念から物価もどんどん上がっていて…」
#少し驚いたようにアニスを見るイオン
アニス「本当は誰もが不安で苦しいはずなんです」「でも… イオン様が街を歩いているときはみんな笑顔で幸せそうです。なぜだかわかりますか」
イオン「…なぜです?」
#アニス、イオンを見て
アニス「あなたを敬愛し信頼しているからです」「私たちの”導師イオン”を」

 ここのアニスの表情が、笑ってるんだけど苦しそうでもあって、複雑なアニスの心情を想像できる感じです。そんで、これは一人の《市民》としてのアニスの本音でもあるんでしょうね。
 アニスのこの言葉を聞いたイオンは、法杖を握りしめて勢いよく立ち上がり、今までにない明るい顔、活力ある声でお礼を言います。驚いて実に不思議そうなアニスの様子をよそに、手にした法杖の、教団のシンボルマークでもある音叉を見つめながら言うのです。

イオン「僕 ずっと考えてたんです」「導師とはどうあるべきなんだろう」「導師とはこんなものなんだろうか? って――」
#ぐっと法杖を握りしめて
イオン「そうだ…」「やっぱり…そうじゃない!!」
#決然とした表情をアニスに向けて
イオン「僕を教会から連れ出してくださいアニス!! 和平のために!!」「僕はカーティス大佐のもとへ行きます」

 衝撃を受けて青ざめ、ジタバタと一人顔芸するアニスでしたが、結局イオンの「子犬のような瞳」に負け、脱走に付き合うことにしたのでした。……うーむ。悪いけど、導師守護役フォンマスターガーディアンとしてはちょっと軽率かもですね。面倒見のいい、優しい子ではあるのだけど。それにイオンに協力しながらモースとの繋がりも維持し続けたわけですし…。根本の色んなことを決断できないまま流されちゃって、歪みが出てきちゃってる。両方の視点から無責任と言われても仕方がない。でも、この行動が結果的に世界を救ったのだから、物事はどう転んで行くのか分かりません。

 翌日なのか数日後なのか分かりませんが、アニスはジェイドと連絡をつけた模様。ジェイドは軍服を普通の服に変えて、眼鏡まで外して市民に変装し、導師が軟禁されていると触れ回ったようです。「教会の横暴を許すな!!」「導師を解放せよ。我らの導師に自由を!!」と、(漫画に描かれている部分では)部下を使わず自ら扇動してました。まんまと乗せられて激怒した市民たちが教会に押しかけて大騒ぎ。

 関係ないけど、ここで市民たちがフォニック文字を縦書きと横書きで書いた横断幕を一つずつ掲げてるんですが、アルファベットに直すと「FREE FONMASTER」と書いてある。ちゃんとフォニック文字で描いてるところが凝ってるなーと思いました。んで、オールドラントでは縦書きもアリなのか…。

 この騒ぎに神託の盾オラクル兵たちが気を取られている隙に、イオンとアニスは高い窓からロープを垂らして、壁面を伝い降りて脱出。っつーか導師の私室は教会の上の方(尖塔?)にあったっぽいですが…。(譜陣で行くので実際の位置は分からないのですけど、なんとなく。)そんなところからロープで降りるなんて。イオンは体が弱いうえ精神的にも緊張し、降りながら息を荒げて汗を流し、わなわな震えるのですが、無茶な方法を詫びるアニスに「いいえ…僕の言いだしたことです」「大丈夫!」とへこたれません。その様子を見て、(あの大人しいイオン様がこんなにがんばるなんて)(本気なんだ…)と、またもや複雑な、嬉しそうな苦しそうな顔になるアニスなのでした。

 さっきまで市民たちを扇動していたジェイドが、早くも川辺に譜業モーターの小型ボートで待っていて、河を下って一気に海を目指します。マルクト軍の高速艇(タルタロスではありません)を沖に停泊させているとのこと。ジェイドが言うには様々な状況を想定していたそうで、アニスが協力しなくてもイオンを連れて行くつもりだったみたいです。六神将が留守にしていることも知っていて、だからイオンを連れていけると踏んだ模様。(…どこに行ってたんだろ? 六神将)

 そこに、教団の譜業モーターボートが十隻弱、追って来ました。ここから追手と戦うアクションシーンになります。すごくよく描けていました。迫力あったし、絵も奇麗だったし。また、ジェイドとアニスのやり取り、台詞回しが良かったです。『マ王』漫画版の本編連載は、イマひとつジェイドがジェイドらしくない、ジェイドとアニスが絡むことさえないのが不満だったのですが、やっと『マ王』漫画版で《らしい》ジェイド&アニスが見れた感じ。

 ジェイドはボートの操縦中。アニスは自己判断で譜術を放ち、ジェイドを感心させます。でも大怪我させるわけにはいかないので加減が難しい。そこで考えたアニスは、ジェイドに言います。

アニス「カーティス大佐。ダンスのご経験は?」
ジェイド「!!」「……たしなむ程度には」「しかしダンスは床の上でするものと思っていましたが? お嬢さん」
アニス「アニス」「アニス・タトリンです。大佐」
#アニス、笑ってウインク
アニス「これでも私…導師守護役フォンマスターガーディアンです」「しかも最年少エリートの♥」
ジェイド「ふむ」「これは失礼」「ではアニス殿」
#ジェイド、ニヤッと笑ってボートの急ハンドルを切る
ジェイド「お手並み拝見と行きましょうか」
#トクナガを巨大化させてボートから跳び出していくアニス
イオン「アニス!?」
アニスせぇーのッ
#アニス、トクナガに乗って八艘跳びのごとく追手ボートからポートへ飛び移り、トクナガのパンチで撃沈させていく

 ここのとこのコマ割りや絵、アニスの表情は本当にいいです。
 原作の外殻大地編に、

ジェイド「大丈夫だと思いますよ。アニスですからね」
イオン「ええ。アニスですから、きっと無事でいてくれます」
ガイ「なんだか凄い言われようだな〜。そのアニスって子」
ジェイド「ははは。元気いっぱいの可愛い子ですよ」
イオン「とても頼りになります」
ルーク「そうなのか? 頼りになるようには見えなかったけど……」
ジェイド「人は見かけによらないものですよ」

という会話があるんですけど、その下地はここで作られていたんですね。あのジェイドが、アニスの特攻に驚き心配するイオンに向かって、薄く笑みを浮かべながら言うのです。

ジェイド「あなたを守るためですよ。導師」「いい部下をお持ちですね」

 そうして二隻までを沈めたアニスでしたが、追手も馬鹿じゃない。追手ボートが散開したので足場を失ったトクナガは無力化。ジェイドがボートを回して見事に拾いましたが、追手に取り囲まれてしまう。……その時、決意したイオンはダアト式譜術…アカシック・トーメントを用い、一撃で、広範囲にいた全ての追手を気絶させてのけたのでした。しかし、それと引き換えるように昏倒してしまいます。


 次の場面は、沖を行くマルクト帝国軍第三師団旗下の高速艇の中。前にも書きましたが、タルタロスではありません。どのくらい時間が経過しているかは不明です。元気を取り戻したイオンの前に並び、叱り始めるジェイドと、彼の言葉にうんうん頷くアニス。

ジェイド「無礼を承知で申し上げます」「独断の暴走はお控えください導師」
#愕然とするイオン
ジェイド「あの場を切り抜ける手は まだいろいろありました」「面識の浅い私を信用しろとは言いませんが…」
イオン「……」「すみません……」
ジェイド「助けていただいたことは感謝します。しかし…」「そのためにあなたが倒れるというのは本末転倒だ」「いいですか導師」「今後戦いは我々にまかせてください」
#怯えたように、ビクッとするイオン
イオン「…まかせる?」

 これはモースに散々言われてきたのと同じ、「お前は定められた以外のことをする必要はない」という檻のような言葉なのか。イオンの表情に不安が落ちる。のですが。

ジェイド「そうです」「身体を張って戦うのは あなたの役目ではない」
#ジェイド、微笑んで
ジェイド「あなたはその御心で民を戦争から守ってください」「イオン様」

 ずっとイオンのことを「導師」と肩書で呼んでいたジェイドが、初めて「イオン様」と名前で呼ぶ。「何もするな」という意味ではない。イオンの意志、望み、存在を認めて、ジェイドからイオン個人にかけた言葉。と思っていいですよね。

 その言葉に、イオンの心は解放されたのです。

 突然声をあげて可笑しそうに笑いだしたイオンに、ジェイドもアニスもびっくり。

アニス「な…何がおかしいんですか? イオン様」
イオン「ええ…だって」「なんだか急に安心してしまったんです」「でも」「ついさっきまでは すごく すごく怖かったんです」
#晴れ晴れとした表情で
イオン「僕」「こんなにドキドキしたのは生まれて初めてです!!」

 生きている。《自分自身》として。それを認めてもらえる。それでいいんだ。
 未だ漠然とながら、イオンはそう思ったんじゃないでしょうか。

 教会の壁を伝って降りたことも、追手と戦ったことも怖かったでしょう。でもそれ以上に。「あなたは《導師の代替品として》言われたとおりにしていればいい。我々に任せなさい」と言われることを、目覚めかけている《自分》を潰されることを、イオンは怖がっていたんじゃないでしょうか。すごく すごく。でも、ジェイドの言葉はそんな意味じゃなかった。自分には《自分として》やりたいことがあり、それが行える。外にはそんな世界がある。それを知ることができたんですね。

 その直後、進む高速艇のはるか後方に光の柱が立ち昇るのが見え、艇がグラグラと揺れます。兵士が駆け込んできて、キムラスカ方面から発してマルクト領土に収束した、強力な第七音素セブンスフォニム反応が確認されたと報告。

ジェイド「キムラスカからの第七音素?」「調べておく必要がありますね…」

 こうして物語はゲーム本編へ続く、というところで終了です。



 さて。残りは細かく気になったところを幾つか。

◆イオンの軟禁
 原作で、ルークとティアがタルタロスに拘束されたとき、イオンが言うのですよね。
「モースは戦争が起きるのを望んでいるんです。僕はマルクト軍の力を借りて、モースの軟禁から逃げ出してきました」と。
 で、ずっと軟禁されてたのかなと思ってたんですが、今回の漫画を見たところ、軟禁されてたのは出奔する直前のほんの数日だけで、それ以前は(モースにはいい顔をされていなかったものの)護衛のアニスを連れてダアトの街を自由に歩き回っていました。
 なるほど、そうだったのかぁ…。イメージが少し変わりました。

 にしても「マルクト軍の力を借りて逃げ出してきた」のが、こんなにも派手な立ち回りを行ってのことだったとは思わなかったので、ビックリです。これは、マルクトが導師誘拐したということで国際問題になって、タルタロス襲撃されても文句言えなかったんじゃ…と思ったんですが、ああそうか、だからジェイドは軍服を普通の服に着替えて変装して、ほぼ単独行動で、第三師団の部下も全然使わなかったんですね。言い逃れする余地を作るため。にゃるほど。(結局襲撃されたけどナー。詰め甘大佐)


◆導師に自由を!
 モースがイオンを軟禁したことを、ジェイドがダアトの市民たちに伝え、導師解放運動を扇動する。その騒ぎの隙にまんまとイオンを連れ出すことに成功しました。が。
 これ、この後どうなっちゃったんでしょうね?

 モースは「導師を軟禁などしていない」と市民たちに説明して騒ぎを鎮めただろうとは思うのですが、イオンは脱走してしまっているので、その後 姿を現すことができません。それまで気さくに街を歩き回っていた導師が公式行事にすら姿を現さない。市民たちは納得したのでしょうか?

 導師が行方不明になったことはヴァンには伝えられ、ヴァンはファブレ公爵家の人々にはそれを明かしていました。でもティアは知らなかったですし、一般にも知れ渡っていた様子ではありません。この辺、どうなっていたんでしょう。

 アクゼリュス崩落後、ユリアシティから出たイオンがナタリアと共に戦争停止の導師詔勅を出すためにダアトに戻った辺りのエピソードはゲーム中では具体的に描かれてないんですが、イオンがダアトの市街地に入ったら市民たちがワッと群れ集まって来て「イオン様、よくぞ御無事で!」と拝んだりしてたのかしらん。


◆設定変更?
 レプリカイオンとジェイドの出会いのエピソードについては、二〇〇六年の三月にゲーム雑誌『ファミ通PS2』vol.210のシナリオライターインタビューで語られていたことがあります。以下引用。

●導師イオンの人物像
 ゲーム中に登場する導師イオンが誕生したのは、オリジナルイオンが死亡したND2015年になります。ヴァンのレプリカ計画に協力していたオリジナルイオンは、自分の死後に傀儡の導師を建てることを提案します。それを平和的な性格に育て上げて、改革派のトップにすることで、激しくなっていた教団の内部抗争を鎮める手段として利用し、同時に教団の実権をヴァンに握らせることが、レプリカのイオンが作られた目的でした。ただし、導師が変わったことを隠すために大詠師モースを抱き込む必要があり、モースに実権を与えるという口約束で彼を仲間に引き込み、アリエッタを含む導師守護役をすべて新人と入れ替えることになったんです。
 ちなみに、ジェイドはオリジナルイオンとの面識はありません。ジェイドと密接なつながりを持っていた改革派の詠師が失脚し、そのあとに改革派のトップになった導師イオンと引き合わされてジェイドとイオンの親交が始まります。このときのイオンはすでにレプリカです。ジェイドは話に聞いていたイオンと、実際のイオンとの差に違和感を覚えていましたが、ゲーム中でのルークとの出会いによって、イオンへの疑惑を確信へと変えていきました。

 ここで語られていた、「失脚した改革派の詠師に引き会わされて親交が始まった」という設定。ダアトを出奔する以前からイオンとジェイドに個人的な付き合いがあったという風に読んでたんですけど、今回の漫画では、ジェイドはピオニー皇帝の使者として公式に訪ねて来て、それが初対面になってます。設定変更…と思っていいのかな? それとも、ダアトを出奔して以降のことを「親交が始まった」と表現してらしたんでしょうか。


◆イオンの評判
 んで。インタビュー記事の「ジェイドは話に聞いていたイオンと、実際のイオンとの差に違和感を覚えていました」という部分。今回、そこはしっかり漫画化されていたりします。

#教会の礼拝堂。講壇に立つイオン、モース、アニスと、壇の下で片膝をつく跪礼をしているジェイド
イオン「カーティス大佐とおっしゃられましたね」「ご意向はたしかに承知いたしました」「この親書の内容こそがピオニー陛下の嘘偽りない本心であると…」「陛下は心より和平を望んでいらっしゃるのですね」
ジェイド「はい」
イオン「それも何より国民を愛するがゆえに…」「素晴らしいことだと思います」
#はっきりと驚きの色を浮かべるジェイド
イオン「?」「どうかされましたか?」
#ジェイド、気まずげに眼鏡のブリッジを押し上げて
ジェイド「…いえ」「これは失礼を」
#イオンを見上げて微笑み
ジェイド「想い深きお言葉に胸をなでおろす思いでおります」「…噂とはあてにならぬものと」

 ふむふむですの。
 でも、導師イオンが噂どおりの性格だと想定していたのなら、ジェイドはどうやって彼を仲裁役として引っ張り出すつもりだったんだろ? 何か取り引きでもするつもりだったんでしょうか。


◆時間経過の疑問
 今回、一番気になったのは時間経過に関してです。
 ラストシーン、海の沖を走るマルクト軍の高速艇の中から、ルークとティアが飛ばされた疑似超振動を、イオンたちは感知したことになっています。であれば、この時点でND2018/01/23の昼近くということになろうかと思うのですが。
 ルークとティアの方は、その日の夜にタタル渓谷で目覚め、渓谷から街道に降りて辻馬車に乗り込み、翌日の午前中にローテルロー橋を渡り終えた直後、ジェイドが指揮するタルタロスが漆黒の翼を追っているところに出くわします。

 つまり、(どの辺の位置かは不明ですが)海の上の高速艇にいたイオンたちが、丸一日後にはもう、ルグニカ大陸でタルタロスに乗っていて、盗賊団追跡までしていなければならないのです。これ、不可能とは言えませんが、かなりの過密スケジュールでは。

 ゲームだけをプレイしたときは、てっきりダアトから直接タルタロスに乗り込んだのだと思っていたので、高速艇での移動だったのにも驚いたのですが、マルクト軍の仕業だということを出来る限り隠すため…? あと、もしかすると、「陸艦タルタロスは海上での移動速度が遅い」という設定を踏まえて、素早くルグニカ大陸に移動したことにするために、タルタロスでもただの小型船でもなく、《高速》艇ということにしたのかなぁ…?

 それにしても、今回の漫画を読むと、まるでイオンがダアトを出奔した直後、その日のうちにルークとティアが超振動で飛ばされたように読めてしまうんですが、やっぱそれだと物理時間的におかしいような…。たった一日でダアトのあるパダミヤ大陸からルグニカ大陸に移動して、移動しただけでなく盗賊団の追跡までしてるなんて。それが可能だというんなら、どんだけ高速なんだよマルクト帝国軍第三師団旗下高速艇。途中で一角クジラにぶつかったらばらばらになって死ぬぞ。

 つーか。ヴァンは「導師イオンが行方不明になったので捜索のためにダアトに帰国する」と、ND2018/01/23の午前中にキムラスカのファブレ公爵邸に報告に行っていたわけで。その数十分〜数時間後(昼食前と思われる)にティアが乱入して来て、ルークとティアは疑似超振動で飛ばされているわけでして。
 もしもイオンがダアトを出奔した当日に疑似超振動の発生と移動を感知したなら、ヴァンは海を隔てた遠い海外にいながら、リアルタイムにイオンの出奔の情報を知っていたことになってしまいます。この世界には無線も電話もテレビもインターネットも遠話魔法もないのに、幾らなんでもおかしすぎる。最も速い通信手段が伝書鳩なんですよ? ダアトの伝書鳩は一瞬で海を渡り大陸横断して移動できるのか。どんだけ高速なんだよダアトの以下略。

 まあ、逃走の際にイオンがダアト式譜術を使って昏倒してから、高速艇の中でジェイドとアニスに説教されるまでに、どれだけの時間が経過しているのかが明確には語られていないので、それを逃げ道にすれば間に数日あったことに出来て、何とかつじつまは合わせられる、のかな…。


◆タルタロスはどこに?
 どこで高速艇からタルタロスに乗り換えたのか語られていないので、色々と想像しました。

 最初は、グランコクマに行って軍本部からタルタロスで出発したのかなと思っていたんですが、翌日の午前中にはもうルークとすれ違っていなければならない。グランコクマに立ち寄ったならピオニーと顔を合わせないはずがありませんので、ピオニーと会談して出発して……というのを半日程度でやっちゃうのは少し慌ただしい。(ゲーム本編中ではよくやってたからありえなくもないんだけど。)何より、ピオニーからのキムラスカ宛ての親書をエンゲーブで受け取る、という手筈になっていたのが、えらく非効率ということになってしまわないでしょうか。グランコクマに立ち寄っていたなら、そこで直接親書を預かればいいんですものね。

 そう思うと、グランコクマには立ち寄らず、ローテルロー橋近くの海上辺りで待機していたタルタロスに乗り換えて、タルタロスで上陸、キムラスカの動向を知るためにも正体不明の第七音素セブンスフォニムを確認すべくタタル渓谷へ向かおうとしたところで漆黒の翼を発見、追い始めたところでルークたちの乗る辻馬車とすれ違った……って感じなんでしょうか?

 大佐って、極秘任務中なのにフラフラし過ぎですよね(笑)。まんまと六神将に追いつかれちゃいましたし。


◆イオンの未熟さ
 高速艇でジェイドとアニスに無茶な行動を咎められたイオン。自分自身の能力と存在を否定されたわけではないと悟って、むしろホッとして笑いだし、「す…すみません 失礼しました。ありがとう二人とも」「もう勝手はしません! 約束します。ふふ」と言います。

 んが。この後(ゲーム中では一日後かのように扱われていますが、物理時間的には疑問を感じるので数日〜一週間くらい後だと思いたい)、エンゲーブで食糧庫荒らし事件に遭遇すると、たった独りでチーグルの森まで行っちゃうんですよね。勝手に。おいおーい。

 そんで独りで森の魔物と戦い、案の定、その場で倒れてしまっていました。たまたまルークとティアが近くにいたからよかったものの。この後追い付いてきたジェイドが、

「あなたらしくありませんね。悪いことと知っていてこのような振る舞いをなさるのは」

と叱ってましたが、無理ないです。イオン様も同じ失敗を繰り返しちゃうところがあったんですね。

 イオンは、ルークという比較対象がいたせいか、非常によくできた人間、完璧な聖者のような印象が強いのですが、実際は結構無茶で、我を通そうとする、頑固な気質の持ち主だったんだなーと、改めて思いました。
 それは、ダアトを出奔するまで《自分》を持たなかったゆえの反動なんでしょうけど。
 だからアクゼリュスに行く時も、ダアトに帰ろうとするアニスに逆らい、強引にルークたちに付いて行っちゃったのでしょうか。


◆トクナガ
 ものすごくどうでもいい話なんですが、今回アニスがトクナガを巨大化させて河で大立ち回りをしてびしょ濡れになっていたのを見て、トクナガって濡れても平気なんかなーと思いました。ヌイグルミだし。中身の綿が水を吸って重くなるとか…。あるいは、トクナガが動くのは譜業だということなので、水でショートしたりしないんだろーか、とか。

 って。トクナガを改造したのはディストなんですから、そんな手抜かりあるはずないですよね。きっと完全防水なんだろうなぁ。フワフワした優しい手触りを保持しながら、過酷な耐衝撃・防刃テストにも合格! 血糊がしみ込みにくく手洗いOK! いつでも心地よくお手元に置いていただけます! ……とか。そういうこだわりの粋のような気もしますと言うかそうであってほしい。

 

'08年12月発売の「公式外伝集」に収録。

 



 

テイルズ オブ ジ アビス アナザーストーリー 公式外伝集

アスキー・メディアワークス/電撃コミックス/漫画:玲衣、オリジナルストーリー:実弥島 巧

 別冊付録の形で発表されてきた公式外伝のうち、単行本未収録だった外伝2〜5までをまとめた外伝集です。

 各外伝の内容に関しては、発表時に書いてきたので割愛。

>>外伝2 外伝3 外伝4 外伝5  外伝1

 おまけ要素は、《付録当時の表紙イラストのカラー口絵化》、《公式外伝シリーズ キャラクターデザインラフ集》、《あとがき漫画「実録? 公式外伝のできるまで」》の三つ。

 …しかしカラー口絵は、デザイナーさんの気合は伝わってきましたが、タイトル文字をこんなに大きく・ゴチャゴチャと入れないでほしかった、というのが本音でした。表紙だった時にいっぱい文字が入ってたのが取り除かれたのが見られるんだと思い込んじゃってたんで…。デザインよりイラストを見たかったです。特に「dance! dance!! dance!!!」は文字がうるさすぎるよぅ。

 

 私は別冊付録版の外伝を全て持っています。ですから外伝集を購入したのは、おまけ要素のためのみと言って間違いではありません。特に、あとがき漫画「実録? 公式外伝のできるまで」には期待をしていました。

 外伝をどのようにして描いたかは、今まで漫画家さんの個人サイトの日記やブログ、『月刊Newtype』'08年12月号で語られていましたので、それと同等かそれ以上の内容が書かれているんじゃないかと期待していたのです。原案のメインシナリオライターさんとどういう形の打ち合わせをして、どの程度アレンジして描いているのか知りたかったのでした。

 ですが、その点では肩透かし。外伝シリーズを、編集部の人たちがいかにして開始させたか、って話でした…。あらら。

 そういえば外伝1が出るとき、《最後の真実》とかなんとかの予告が打たれてたっけ、なんてことを思い出しました。外伝2が出たのを見て「オイオイオイ、最後じゃなかったんかーい!」と突っ込んだっけなぁ、とか。ホントに突発的に出て、思いがけず続いたものだったんですね。




 漫画家さんがブログで熱く語っておられましたが、『アビス』の外伝的関連本は多くの作家さんが書いているけれども、自分が描いている外伝は、公認アンソロジーなど監修を受けただけのレベルのものとは決定的に意味合いが異なり、パラレルではない、原作ゲームと直接繋がる公式外伝だとのことです。だからアニメにも取り入れられている、と。

 他の商業二次の存在を挙げて自作品の上位性を説いておられるのは、なんとなく、『マ王』別冊付録の簡易アンソロジーに掲載されたことのある、ガイやアニスのシリアスパロディ漫画を意識してるのかなぁと感じました。読者に公式外伝と混同されてるのを時折見かけますから。

 

 それはともかくとして、漫画家さんが公式である根拠として挙げたものが、「原作シナリオライターの実弥島さん自らが原案を書き、漫画家の自分と共著という形で発表したものだから」だけだったので、妙に考え込んでしまいました。

 バンナムが出した『テイルズ オブ ファンダム Vol.2』ティア編は、別のシナリオライターさんが書いていますが、流石にアレを非公式だとは言えないですよね。アニメで採用されなかったせいで黒歴史っぽくはなってますが。

 逆に、実弥島さんが直接執筆した『キャラクターエピソードバイブル』の小説はどうなんでしょうか。バンナムの監修は受けていますが、《公式外伝》と銘打ってはいないです。読者的には一も二もなく公式扱いしちゃいますが。

 今後『アビス』のリメイクなり続編なりが出るとして、違うシナリオライターを起用する可能性も低くはないですが、そうなったとしても間違いなく《公式》ですよね。勿論、ファンの心情としてはオリジナルのライターさんの書いたものが一番ですけど。企画段階で決まるものでしょうが、誰が書いたってことじゃなく、権利元のゲーム会社がそう見なしているかどうかじゃないでしょうか、公式であるかどうかの境目は。

 …と、読者としては思ってしまいましたが、そういうわけでもないのでしょうね。

 

 なお、この漫画家さんによる公式外伝は、これでひとまず終了だそうです。お疲れ様でした。

 



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