ブラックキキーモラは、
キキーモラの
逆位相キャラである。髪型・服装はキキーモラとおそろいの色違いで、能力・趣味は正反対になっている。
●ブラックキキーモラの変遷
ブラックキキーモラの初登場は『キキーモラのお掃除大作戦』。キキーモラの登場二回目にして初主演であるこのゲームで、彼女は掃除するキキーモラに対して面を汚し、モップを投げつけて襲ってくるラスボスであった。
セリフやデモは全くなく、このゲームの段階では まさに「黒キキーモラ」に過ぎない。だが、キャラクターデザイン画でキキーモラとは明らかに違う顔付き・表情で描かれており、独自の「個性・自我」を想像させるものはある。
次に彼女が登場したのは『ルルーの鉄拳春休み』。ここで、はじめてセリフとストーリーを伴って出現した。
とはいえ、このゲームでの彼女はまさにキキーモラのリバース。つまり、「鏡の実」を食べさせられて性質が正反対になってしまったキキーモラ、としての登場だった。もう一度鏡の実を食べさせられると彼女は消滅し、キキーモラに"戻った"。
要するに、この時点まではブラックキキーモラはあくまでキキーモラの鏡像であって、個として独立はしていないのである。
事態が劇的変化を迎えたのは、『わくわくぷよぷよダンジョン』によってだった。
このブラックキキーモラは、家庭用機種版での初登場、つまりメジャーデビューなのだが、なんと「キキーモラの影」ではない。キキーモラからは独立した、完全な別人として登場したのだった。
「汚すのが好き」という性質は潜められ、代わりに「罠を仕掛けるのが好き」という特性が与えられた。また、モップを使って戦う優れた武術家でもあり、その腕前は
ルルーや
ミノタウロスを唸らせ、
シェゾに名を問わせたほどだ。性格もキキーモラと明確に異なり、しかし「悪い・粗暴なキキーモラ」のような単純な性格付けにはなっていない。物事を丁寧に伝えたりせずに短く結果だけを告げるような、無愛想で沈着な、武人タイプの人物として描かれている。
現在、ブラックキキーモラといえば殆どのユーザーがこのゲームの彼女を想起するだろう。このゲームによって、ブラックキキーモラは初めて独自の命を得たのであった。
その後、彼女は『アルルの冒険』と『ぷよBOX』にも登場したが、ストーリーは一切持たず、ただ、その他大勢のザコ敵キャラとしての出演だった。
●ブラックキキーモラの口調など
ブラックキキーモラの一人称は、「わたし」である。
彼女が台詞を喋るゲームは二作品だけなのだが、その双方でこの一人称を使う。……ただし、口調はそれぞれで異なっている。
『鉄拳春休み』では、性質が逆転したキキーモラとして登場したために、基本的な口調はキキーモラ時と変わらない。ただ、「です・ます」や「様付け」のような丁寧語は使わない。
『わくぷよ』になると、無愛想な「で・ある・だ」口調になる。
また、ブラックキキーモラが頭につけているヘッドドレスは、基本的にはドレスと同じ黒い色なのだが、『鉄拳春休み』においてのみ、エプロンと同じ白い色になっている。
これは、『鉄拳春休み』のブラックキキーモラが、キキーモラが変化しただけの、いわば「ニセ ブラックキキーモラ」であることを現しているのだろうか。(笑)
●ブラックキキーモラは闇精霊か?
キキーモラは精霊である。とくれば、そのリバースであるブラックキキーモラも精霊だと考えるのが自然であろう。
『わくぷよ』『アルルの冒険』においては、キキーモラは光属性の技を使い、ブラックキキーモラは闇属性の技を使っている。キキーモラのお掃除好きの性質から「光属性」が導かれ、そのリバースのブラックキキーモラには対称の「闇属性」……という思考の流れは至極分かりやすい。
つまり、ブラックキキーモラは闇系の精霊だということなのだろうか。
ところが、事態はそう単純ではない。
なんと、『わくぷよ』におけるブラックキキーモラは、闇属性技を持ちながら、自分自身は光に耐性を持ち、闇に脆性を持つ。この点ではキキーモラと同じなのだ。
どうやら、ブラックキキーモラといえども あくまで「キキーモラ」の一人、光系の精霊であるらしい。光系でありながら汚すことを趣味とし、闇属性の技を操る、中途半端な異端者なのである。
●ブラックキキーモラも女の子
『わくぷよ』のブラックキキーモラは、ムツッとしていて愛想のかけらもない性格なので、一見して、容姿の美醜や恋愛のような浮ついた事柄には興味を持っていないように思える。
ところが、彼女関連のデモを見ていくと、案外にそうでもない。
たとえば、
アルルに面と向かって「
そうじのおばさん」と呼ばれて何度もモップで殴っているし、シェゾが遠くで「
愛想の悪いババァだな」と呟いたり、無愛想を「
ブサイク」と言い間違えると、恐るべき地獄耳で聞きつけて、やはりモップで殴りつけてくるのだった。おばさん呼ばわりされたり、容姿や愛想をけなされるのは、相当に嬉しくないらしい。
また、異性であるシェゾへの対応が、アルルやルルーに対するものと微妙に違っている。シェゾが何か呟くのを耳をそばだてて聞いているらしく、やけに激しく反応してくる。面白いのは、シェゾが遠くで
「
笑えばけっこう可愛いと思うが…」
と呟くと、それをしっかり聞いていて、わざわざ後ろから追いかけてきて
「
大きなお世話だ!」
と叫んでいる点である。悪口ではなく、面と向かって言ったわけでもないのに、過剰なまでの反応ぶりだ。異性に「可愛い」と言われたことに動揺して、どう反応すればいいかわからずに、心と裏腹の行動を取ったと読み取れる。なかなか可愛いではないか。
しかし、シェゾの方は あまり彼女がお気に召さなかったらしい。何度かの邂逅を繰り返した後、
「
………。あの女はニガ手だ」
と呟いている。
(決定盤では、「………。かわいくない女だ」)
この呟きも、遠くに離れてからの独り言だったのだが、やはりブラックキキーモラは聞いていて、追いかけてきて後ろから「
よけいなお世話だ!」と叫んだ。
ちょっとばかり、ハートブレイク気分だったのかもしれない。
●商業二次作品のブラックキキーモラ
ブラックキキーモラの商業二次作品への出演は、現在のところ角川版小説第三期『超☆魔導物語』のみである。この小説は『わくぷよ』を基にした内容で、彼女もゲーム本編と同じ、わくぷよランドの従業員として現れる。
ところが、彼女の口調はゲーム本編デモとは異なる。一人称は「オレ」であり、「
デッケェお世話だ」「
ちょろっとしか出てねぇからなぁ」など、べらんめぇの男口調で話すのだ。沈着で淡々とした武人タイプ……というよりも、口の悪い女ヤンキーといった風情である。どうも、キャラクターを読み間違えているというか、意図的に変更しているのかという感じだが、ゲーム本編でもダンジョン中のドット絵キャラの友好時台詞には「
おい オレのじゃまはするなよ」というのがあるので、ここから採っているのかもしれない。