///カーバンクル


カーバンクル 性別 不明
身長 25cm
体重 不明
スリーサイズ Bなし、W38、H37 頭囲31、耳長12、尻尾4
年齢 不詳。
真魔導設定を参照すると、一万一千歳ほどらしい。
誕生日 不明
一般的紹介
(真魔導系除く)
元はサタンのペットだが、今ではアルルといつでも一緒な愛くるしい怪生物。何を考えているのかは誰にも分からない。
好物はカレーとらっきょ。
ところ構わず踊り、「寝たふり」も得意。
必殺技は額のルベルクラクから放つカーバンクルビームだ。

「紅い石」の名を持つシリーズのマスコット。謎だらけのその正体は……?

 マスコットキャラとして、常にアルルの側にいる。アルルの左肩が定位置。見た目たいそう可愛いが、手足はぐにぐに伸びるわ舌は制限なしに長いわやたらと食うわ額の宝石からビームやらリバイアやら出すわで、かなり謎な怪生物。少なくとも骨はないに違いない。ただし、歯はあるらしい。ゲーム起動時にカーバンクルが出てきて「がおー」と言うコンパイルのロゴアニメでは、二本のキバが口からのぞいている。とはいえ、食べ物は基本的に丸呑みしている模様。
 人語を解するが喋ることはできず、「ぐー」としか言えない。だが、まれに「きゅう」(『ぷよまん食うカーバンクル』)だとか「ほげぇ」(『ぷよぷよフィーバー』)だとか、前述のごとく「がおー」と鳴くこともある。シリーズ一番最初のMSX-2 DS版『魔導物語』においては、「キィ……」と鳴いていた。

 そのデザインの原型は「キツネ」であったと言われており、初登場の際はしっぽがちょっと長く、耳が少しふさふさしている感じに見え、体色は黄土色だった。
 もっとも、MSX-2版『魔導』の取説に描かれているリアル版カーバンクルは、思いっきりウサギである。毛はふさふさで、わりとデカい。
 ちなみに、額の赤い宝石・ルベルクラクは、コンパイル時代には六角形だったのだが、『ぷよぷよフィーバー』シリーズでは逆五角形になっている。


●カーバンクルの愛称
 本来は魔王であるサタンのペットだったが、なりゆきでサタンを倒したアルルがそのまま連れ去ってしまった。サタンがアルルを付け狙う一因でもある。また、サタンは自分の妃となる女性にカーバンクルを渡すと公言していたので、妃志望のルルーがアルルをライバル視するキッカケにもなった。
 性別は不明だが、サタンは(基本的に)「カーバンクルちゃん」と女の子っぽく呼んでおり、アルルは「カーくん」と男の子っぽい愛称を付けている。飼い主の嗜好に合わせて全対応、という感じで便利だ。

 ただ、オリジナル『魔導』〜94年のシリーズまでを参照すると、当初のアルルは「カーバンクル」と まんまの名前で呼んでいて、愛称は付けていなかった。現在のようにべったりと癒着して「常に一緒に行動している」わけでもなく、一定の距離を置いて付き合っているように見える。
 ゲーム中で初めて「カーくん」という愛称が使われたのは、恐らく94年末のGG版『魔導V』で、同じ年の秋に発売された『ぷよ通』の、それ以降の解説本の多くに「愛称はカーくん」という記述が見えることから、この頃に新たに作り足された設定なのではないかと推測できる。
 面白いのは、ゲーム本編に現れる以前に、やはりこの年の初夏に発行された角川版小説一作目でも「カーくん」という愛称が使われ、同年夏発行の『Disc Station Vol.3』より連載開始の漫画『魔導外伝』でも「かーくん」「かあくん」という愛称が見える、ということだ。特に角川版小説は、アルルの一人称の地の文では「カーバンクル」と呼びつつ、台詞では「カーくん」と呼んでいたり、壱女史の挿絵のアルルは吹き出しで「カーバンクル」と呼んでいたり、この時点では「カーバンクル」と呼ぶ方がスタンダートで、「カーくん」という呼び方はイレギュラーだったように読み取れる。
 アルルの一人称と同じく、”言いだしっぺ”は角川版小説などの二次作品群で、公式設定がそれに追随したように思えるのだが、どうだろうか。


●サタンとカーバンクル
 ところで、一般にはカーバンクルはサタンを嫌っているという説が流布しているが、個人的にはあまりそうは思わない。きっとサタンのことも好きだろう。鬱陶しいとは思っていそうだが。でなければ、どうしてアルルと出会うまでの長い間、サタンと一緒に暮らしていたのだろうか。

 世間に流布している、カーバンクルがサタンよりアルルを選んだ理由とは、
A.女の子の方が好きだから
B.アルルのくれたカレーが美味しかったから
C.サタンが過保護すぎてウンザリしていたから
 のどれかだが、Aが より広く浸透しているようだ。しかし、ならば女の子なら誰でもいいのかというと、現実にはそうではない。カーバンクルは、ドラコにもウィッチにもルルーにも付いて行かない。特にルルーは、サタンとの結婚の証としてカーバンクルを欲しがっているし、アルルよりも美しくてナイスバディだというのに、彼女の方へ行こうとはしないのだ。
 この辺りは、二次創作作品では「年増が嫌いだから」と理由付けされていることが多い。……しかし、十八歳で年増だなんて、あんまりだと思うのだが。ルルーはあんなに美しくてピチピチしているのに。ルルーが十六歳の時には、しばらく行動を共にしていたことがあるので、カーバンクルは十六歳以下の少女が好きなのか? とすれば、アルルもあと二年もすると「捨てられる」ことになるのだろうか。


 アルルに付いて行ってしまったものの、カーバンクルはサタンを特別に嫌っているわけではないだろう。ゲームの中でカーバンクルはよくサタンにビーム攻撃をかましているが、『わくぷよ決定盤』ではシェゾにもやっており、サタンだけがその被害に遭っているわけではない。
 なお、シェゾがビームで撃たれたのは、彼とアルルがちょっといい雰囲気になったシーンだったのだが……恐るべき「虫除け」だ。アルルに近付く男は全て排除しようとでもいうのだろうか? サタンをやたらとビームで撃つのもそのせいか? なんだか殆ど、アルル嫁ぎ遅れ決定である。


 なお、真魔導設定では、カーバンクルの本来の主・リリスの力をアルルが引いているため、アルルに付いて行って守護している、とされている。ここでは、サタンとカーバンクルはリリスという共通の愛する人を失って(?)、一時的に寄り添っていたに過ぎないのである。


●ルベルクラクとカーバンクル
 魔王サタンさえ一撃で倒すカーバンクルは、コンパイル晩期のシリーズでは、ほぼ無敵・最強の存在として描かれることが多かった。力だけではなく、精神性や立場においてすらだ。だが、オリジナル『魔導3』では、キックやパンチなど強力な攻撃を有するものの、すぐにスタミナ切れしてしわしわになる、最強とは言いがたい存在で、それでも戦わせようとすると怒って逆にアルルを攻撃してくるような、精神性も未熟で危険な存在であった。流石、魔王の元ペットといったところか。GG版『魔導V』になると、キれてアルルを攻撃することはないものの、頻繁にお腹をすかせてしおしおになるわ、カーバンクルをエネルギー源とする魔導砲を一発撃ったらげっそりとやつれて瀕死になるわで、常にエネルギー(食べ物)を補給していないと死んでしまう生き物のように描かれていた。
 ネズミなどの小動物は、自分の体重の何倍もの食料を常に食べ続けていなければ、活動エネルギーを維持できないと言うが、まさに、カーバンクルもそんな感じだ。
 スタミナ不足は置いておいても、シリーズ通して気まぐれな性格で、面倒くさいと戦闘中だろうが構わず寝たふりをするので、戦力としてあてに出来るかは微妙なところ、というのが結論だろう。


 カーバンクルの未知のパワーは、何処から発生しているのだろうか。そもそも、カーバンクルとは生物なのだろうか?
 実は過去のシリーズには「えせバンクル」なる、カーバンクルそっくりの生物が多数出現している。カーバンクルと違うのは、額の宝石がない、ということだ。
 この点を見ると、もしかするとカーバンクルも元々は「えせバンクル」の中の一匹で、額の宝石――ルベルクラクを得たことにより超パワーを手に入れたのではないか、などと推察することもできる。しかしカーバンクルは額のルベルクラクを取ると死んでしまうらしいので、えせバンクルとは全然違う生物なのかもしれない。ルベルクラクはカーバンクルの力の源であり、心臓のようなものらしい。

 そもそも、アルルがカーバンクルと出会ったのは、魔物商人(?)のミイルに、「ルベルクラクという宝石」を取ってきてくれと持ちかけられたからだった。つまりは、カーバンクルはその額に宿す宝石を世間的に狙われている存在なのである。それまではサタンがそんなカーバンクルを守護していたわけで、アルルにサタンが倒されてしまったときのカーバンクルの怯えようは凄かった。
 いくら強い攻撃力を持っているとはいえ、カーバンクルにはスタミナがない。彼(?)には自分を常に守ってくれる存在が必要なのだ。
 その後、カーバンクルがアルルについていったのは、サタンよりも確実に自分を守ってくれる存在だと判断したからなのかもしれない。


 なお、真魔導設定では、カーバンクルの正体は祕宝石の力が実体化したもの、つまりは擬似生命体(?)だと示唆されている。


●アルルとカーバンクル
 ところで、オリジナル『魔導』におけるアルルとカーバンクルの初邂逅は前述の通りなのだが、その後に作り足されていったゲームによっては、色々と別の出会いが描かれている。それらを総合してみると……。

 アルルが四歳のとき、妖精の森でチラッとカーバンクルの姿を見かけたのが最初の出会い(A・R・S)。また、やはり四歳の夏、アルルはサタン組親方の衣裳部屋でカーバンクルのポシェットを見つけてすっかり気に入り、勝手に持ち出して自分のものにしてしまった。未来の暗示であろうか。(GG魔導A)。六歳の時、家の近くの物見の岩山で旅の途中のカーバンクルと遭遇、友達になる(はなまる)。しかし、互いにこの出会いのことは忘れてしまい、アルル十六歳のときに再び「初対面」した、ということらしい。……「忘れた」というのは、つくづく便利なフレーズである。

 この他、カセットドラマ『の〜てんSPECIAL』では、アルルが十二歳のとき卒業試験のために入った校庭地下のダンジョンでも出会い、試験の間だけ行動を共にしたものの、忘れっぽいアルルはやっぱりカーバンクルのことを忘れてしまった、と語られている。……幼児ならともかく、十二歳でその記憶力のなさは問題がないか、アルルよ。


 ちなみに小説『真魔導』では、大事にしすぎたサタンに宝箱に閉じ込められたことに怒ったカーバンクルが家出して、道中の落石からアルルに助けられたのが最初の出会い。その後、仲睦まじい二人の様子を見たサタンが泣く泣くカーバンクルをアルルに預けた、という、大変平和的で愛溢れる形になっている。
 他、商業二次作品の漫画『とっても! ぷよぷよ』では、アルルが幼稚園児の頃、たまたまサタンと散歩に来たカーバンクルがアルルの食べていたカレーライスの香りに惹かれてサタンから離れ、泣きながら探すサタンを置き去りにしたまま、アルルに付いて行ってしまった、と語られている。


●カーバンクルの腹の底
 四歳のアルルが初めてカーバンクルと出会った時、カーバンクルは不意に茂みから飛び出してきて、その場でピコピコと踊り、終わると再び茂みに消えていた。まるで、アルルに踊りを見せたいがためだけに現れたような様相である。
 カーバンクルは、とにかく踊る。食うか寝るか(たまに)戦うか以外の時は殆ど踊っていると言っても過言ではない。特に、『ぷよ通』『ぷよSUN』では、対戦の間中 画面中央で気ままに踊り狂っている。
 どうしてそんなに踊りが好きなのだろう? それは誰にも分からない。カーバンクルの血管には、ラテンの血が流れているのだろうか。……血管があればの話だが。


 また、カーバンクルは よく眠る。鼻ちょうちんを膨らませてうとうとする姿は頻繁に目撃されており、白い枕を出して本格的に横になっている姿もしばしば見受けられる。踊りと同様、野っ原だろうが戦闘中だろうがTPOはお構い無しだ。
 枕は普段携帯している様子が見えないのだが、どこから取り出しているのかは不明である。カーバンクルがくるりと一回転すると、何故か枕を持っている。何かの魔法でも使っているのだろうか? 回転の勢いのまま、この枕に頭をうずめて横になると、もう鼻ちょうちんを出して眠りについている。恐るべき寝つきのよさだ。『ドラえもん』の野比のび太の特技の一つは「立って座布団(枕)を背後に落としつつ、後ろに倒れて眠りに就くまで0.93秒」というものだが、それに匹敵するスバラシサと言えよう。
 しかし、ここで一つの疑惑が浮かび上がる……。オリジナル『魔導3』のラストで、カーバンクルはアルルに「寝たふり得意なカーバンクル」と評されているではないか。ということは、もしや、あの寝つきのよさは演技、ただのタヌキ寝入りだったのか?

 概ね、カーバンクルは幼児や小動物のようにイノセンスで、それ故に突拍子もない行動をとるかのように描かれる。しかし、商業二次作品の漫画『わくぷよ』や、一部の商業アンソロジー漫画、ユーザーの二次創作作品では、腹黒で自己中心的な性格に描かれているものも比較的見かける。これら二次作品のように、実は高い知性とスレた精神を持ちながら、可愛らしい外見とボーッとした態度で故意にそれを隠している、そんな(ある意味で)処世に長けた性格が、カーバンクルの真の姿なのであろうか。だからこそ、都合の悪い場面ではバンバンと寝たふりをするのか?
 ……とはいえ、出会って三日目のアルルにさえバッチリ見抜かれているのだから、あまり大した隠し方ではないようだけれども。単純に、子供レベルで小狡いだけなのかもしれない。


●カレーシェフ・カーバンクル
 カーバンクルが、ただペットか幼児のようにアルルやサタンに養われているだけの存在ではないことを示す事例として、「自らカレーを作り、アルルたちに振舞うことがある」、というものがある。それだけの技能と、周囲に振舞うだけの気前の良さを有しているのだ。もしかしたら、この点においてのみはルルーよりしっかりしているのかも?

 この元ネタは、恐らくはPC-98『DS#12』収録のBGV『カレー食うカーバンクル』なのだろう。五匹のカーバンクルたちがひたすらカレーを作り、一匹のカーバンクルがひたすらそれを食べ続ける、というだけの映像ソフトなのだが、これにより、カーバンクルには調理技能があると認識されたようで、SS版『ぷよ通』の通モードエンディングでは、

アルル
「え? カーくんおなか減ったの? そうだね。お家に帰ってなにか食べよう」
カーバンクル
「グッグッ、グーッ!」
アルル
「え? カーくんがカレー作ってくれるの? やったー」


 というやり取りがなされている。その後、『白熱! ぷよりんぴっく!』のエンディングの一つでは、カーバンクルがカレーを作り、それをみんなにご馳走する、というエピソードが語られた。
 ただ作れるというだけでなく、腕の方もかなり優れているとの噂である。……噂、というのは、具体的に「カーバンクルの手作りカレーが美味かった」というエピソードが本編で語られたことがないからだが、カーバンクルはカレーに関してはこだわり派の食通だという認識が根強く、であれば、彼がOKを出して周囲にご馳走できるカレーも、相当美味しいに違いない……と推測できるというわけだ。


 かつて、コンパイルは自社開発のレトルトカレー「きまぐれカーくんのビーフカレー」を販売していたが、「中辛」であったにもかかわらず、かなり辛かった。味の監修はカーバンクル自身が……などと妄想してみるに、きっと、彼(?)は辛いカレーがお好みなのだろう。


●カーバンクルの腹の皮
 とはいえ、作るのはごくまれなことで、普段のカーバンクルはアルルの手作り料理を食べている。カレーが大好物で、付け合せのらっきょも大好きだ。アルルと共に毎日カレー三昧、という印象があって、体が黄色いのもカレーの食べすぎでは……と思えてしまったりするのだが、実は、カレーが好物になったのはアルルと一緒に暮らし始めてからなのだとか。意外である。サタンと一緒に暮らしていたころは好きではなかったのか? というより、豪華なサタンの食卓には、庶民派の(あるいは、魔導師ご用達の薬膳たる)カレーが載せられることがなかったのかもしれない。『す〜ぱ〜なぞぷよ』によれば、サタンの好物もカレーとのことなので、アルルと暮らすようになったことは、カーバンクルとサタン両名の食の好みに大影響を与えた、と言えそうだ。

 角川版小説では、カレーの他にぷよぷよも好物なようで、よく食べる。しかしアルルはそれを快く思わず、「ペッしなさい」と幼児に対する口調で叱っていた。
 実は、ゲーム本編のエピソードや設定には、カーバンクルがぷよを食べる・好物であるというものは存在しない。しかしこの小説のワンシーンがよほど印象深かったのか、後に『DS13』に収録されたカーバンクル(スクリーン)セーバーでは、緑ぷよを押さえ付けて食べる(?)カーバンクルの姿を見る事が出来る。
 その一方で、『DS14』収録のゲーム『ぷよまん食うカーバンクル』では、カーバンクルはぷよまんは好きでもぷよは嫌いらしく、間違って口に入れさせてしまうと鳴きながら抗議してくる。

 コンパイルシリーズも後期になると、カーバンクルの「よく食べる」という設定は、「なんでも食べる悪食の大食漢」というイメージにまで拡張されていた。『はちゃめちゃ』のEDアニメ(ゲーム本編とは独立した内容)では、カーバンクルはらっきょ屋の店舗(!)を丸ごと食べて すぐに消化してしまう。『DS13』収録のアニメ『シェゾの長い一日』では闇の剣を丸呑みしてしまい、このエピソードは角川版小説『新☆魔導3』にも取り入れられた。
 いくらなんでも口が卑し過ぎやしないか。そもそも、これはどんなものでも食べて消化してしまうということだから、とてつもなく危険なのでは? ……と、戦慄さえ覚えるが、今のところ、食物以外の巨大物を食べてしまうカーバンクルの姿が、ゲーム本編では描かれていないのが救いだろうか。


 ちなみに、ゲーム本編を見る限り、カーバンクルはよく言われているほどには「底無しの大食い」ではない。二次創作においては、アルルの家計が破綻するのでカーバンクルの食費はサタン持ち……などと語られることさえあるのだが、本当にそうだとしたら、アルルはお金は取りつつカーバンクルは返さない、という相当身勝手な女になってしまう。
 GG版『魔導V』や『わくぷよ』を参照する限り、カーバンクルは、カレー一皿、らっきょ一粒程度で普通に満腹するようだ。ただ、再び空腹になるまでの時間が短く、つまみ食いもするので、結局「常に食べている」→「やたらと食べる」ような印象が生じている。



●伝承の世界
 カーバンクルの名は、ラテン語の「小さな石炭 Carbunculus」に由来する。赤々と燃える石炭――赤い輝石のことで、現在では「紅い宝石」の意味で捉えられ、ガーネットやルビーがこう呼ばれることもある。赤い石は内部に炎を持つとされ、つまり陽性の力を持ち、愛や幸運を呼ぶと言われた。

 16世紀の大航海時代になると、カーバンクルを生物の一種とする認識が広まった。南アメリカに向かったスペインの征服者たちが、この地で燃える石炭のように輝く鏡を頭に戴いた小さな生物を目撃したと報告したのだ。ただし、それが獣なのか鳥なのか、どんな姿をしているのか、具体的な姿を見た者は誰もいなかった。……暗闇の中にチラッと小さな一つ〜二つの光を見たというのだから、何か獣の目が光っていただけだと思うのだが。想像力がたくましい。
 カーバンクルの目撃者の中には、これをスペインの書物に書かれたドラゴンの伝承と結び付けて考えた者もいた。なんでも、ドラゴンの脳から、その血が固まって出来る真紅の宝石が採れるのだそうだが、生きたドラゴンの首を打ち落として頭を開くのでないと、血は宝石に固まらない。そのため、魔法使いは調合した穀物を撒いてドラゴンを眠らせ、その首を落として宝石を取るのだという。

 すると、魔導師アルルがルベルクラクを手に入れようとした場合、カーバンクルを眠らせてから首を落とし、抜き出さねばならなかったのだろうか? ……そりゃー、サタンも逆上することだろう。

 ともあれ、伝承上のカーバンクルが頭に載せている鏡も宝石であると考えられるようになり、手に入れれば富と幸運が手に入るとされたため、生涯をかけてそれを追い求めた冒険家もいた。だが、ついに捕らえられることはなかったという。

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