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TVA『テイルズ オブ ジ アビス』DVD/BD初回特典ドラマCD
特殊音譜盤スペシャルフォンディスク 4〜6

バンダイビジュアル

 TVアニメ版DVD/BDの、初回特典ドラマCDのVol.4から6まで。

 

特殊音譜盤スペシャルフォンディスク
〜闇夜の森の一夜の出来事〜

 TVアニメ第9話「奪われし者」、10話「償いの帰還」、11話「雪降る街」が収録された、DVD/BD Vol.4の初回特典ドラマCD。

 今回は毛色が異なるように感じました。Vol.1と9のラジオドラマ編を除いて、他巻の特典話は全て、TVアニメ版で取りこぼした原作小ネタの落ち穂拾い&変形補完なのですが、今回は完全なオリジナルで、強いて言えばジェイドの怪談に喜ぶナタリアと怯えるティアの対比ネタが拾ってある程度。これといった元ネタがないうえ、本編の流れにも全く関わらないコメディになっています。

 ついでながら、ほのかにレトロな匂いを感じました。『うる星やつら』っぽいと言うか、幽霊ホテルの仕掛けとオチは高橋留美子系な感じですね(笑)。

 

 深い森の中を行くルーク一行。今夜も野宿かとうんざりしていたところ、木々の向こうに古いホテルを発見。喜んで入りましたが、中は客がいなくて閑散。スーッと出てきた主人は影が薄くて顔が怖く、ぼそぼそ不気味に喋ります。まるで幽霊みたいなやつれっぷりです。
 主人が言うには、このホテルに幽霊が出るという噂が立ち、客が寄り付かなくなってしまったんだとか。

主人たまに来てくださるお客様も…今のようにわたくしが説明すると……帰られてしまいます
アニス「それ言わなきゃいいのに」
ガイ「正直者、なんだな」
主人やはり…お客様方も…ご宿泊は…や め ら れ ま す か………?
ティア「そ、そうですね。残念ですが、またの機会に」
ルーク「いや。泊まろう」
ティア「え?」
ルーク「疲れてるんだから、ここでいいじゃないか。イオンだって休ませてやりたいしさ」
ティア「でも……」
ルーク「大丈夫。もしも幽霊が出たら、俺が倒す」
ナタリア「まあ。実際倒したことがあるんですの?」
ルーク「いや。ない」
ガイ「まーた適当なことを……」

 恐怖でカチカチに強張って渋るティアでしたが、ルークだけでなくジェイドやイオンにまで泊まった方がいいと言われ、いさぎよく承知。一行はそのホテルに一泊することになったのでした。

 ホテルは予想以上に立派で、みんな満足。こんなに素敵なのに噂だけで人が来なくなるなんて勿体ない、幽霊なんているはずないのにと話していると、ジェイドが「こことは別のホテルの話ですが」と、実在だという幽霊ホテルの話を始めました。火事で一人の女性客が焼死したそのホテルは、建て替えて営業再開した後も、夜になるとどこからともなく、助けを求めるように、ドン…ドン…ドンと壁を叩く音が響いてくるようになったと言うのです。

 話が終わるとティアの顔色は真っ青で、幽霊なんているはずないわバカバカしい、と怒った顔で個室に引き上げてしまいました。苦笑しつつ、みんなもそれぞれの個室に入って就寝することになったのですが……。

 ベッドでうとうとしていたルークは、部屋の扉を叩く音に起こされました。夜中だというのに、ティアが訪ねて来たのです。

ティア「私、隣の部屋なんだけど。……(声、泣きそうに震えて)今何か聞こえなかった?」
ルーク「え?」
ティア「ドン…ドン…ドンって。壁を叩くような音」
ルーク「お前な。それはさっきの話だろ」
ティア「でも! 確かに聞こえたのよ」
ルーク「そんなわけない。(笑って)お前、軍人だー何だーって言うわりに、ほんとに怖がりだな」
ティア(子供っぽくむくれて)な、何よ。そんな言い方しなくても……」
#ドン! とどこからか音が響く
ティア「きゃ!」
ルーク「うおっ? とと」
#ティア悲鳴を上げ、ルークにしがみつく。慌てて抱きとめるルーク。
#音、ドン…ドン…と続いている

ティア「いやあ。あああ」
#ぎゅうぎゅうルークにしがみつくティア
ルーク「ティア。離れろって。そんなにくっついたら、う、動けないだろォ?」←と言いつつ嬉しそうです
ティア「お、お願い」
#もがくルークから必死に離れまいとするティア。
#近くの部屋の扉が開き、ガイが飛び出してくる。緊迫した様子で

ガイ「おい! 今、何か音が」
#抱き合ってもみくちゃになっているルークとティアを見て、固まるガイ
ガイ「――………あ。悪い。邪魔したか?」
ルーク/ティア「「え!?」」
#ガイ、ぎこちなく笑いながら、やがてしみじみと感動したように
ガイ「ルーク。お前も成長したんだなぁあ……!」
ルーク/ティア「う。わぁあ!」「きゃっ」
#ルークとティア、お互いを弾くように離れる。二人、ガイに向かって
ルーク「何考えてんだ!」
ティア「ちょっとよろけただけで……」

 直後に、他の部屋からもアニス、イオン、ナタリア、ジェイドが飛び出してきました。全員が怪しい音を聞いたのです。これは空耳ではない。一行は、続いている音を辿って廊下を歩いていき、ついにある一室へ……。

 結局、この音の正体はミュウでした。壁の向こうから美味しそうなキノコの匂いがしたから、壁板を叩いていたというのです。悪い子ですね。ともあれ、それ以降怪異が起こることもなく、一行は翌朝、普通にホテルを出発したのでした。

 ところが、ホテルを出てしばらく行ったところで出会った狩人に森の出口など尋ねていたところ、思いがけないことを言われます。この辺りにはホテルなんてないと言うのです。昔はあったが、火事で焼けてしまったんだとか。……と、い う こ と は………!!??

 …という、本物の(?)怪談話でした(笑)。

 

 この話の見どころならぬ聴きどころは、何と言っても、怯えるティアに抱きつかれて巨乳でもみくちゃにされるルークと、そんな二人を目撃して固まっちゃうガイの場面ですね(笑)。ルークの濡れ場(?)を見て「お前も成長したんだなぁ」なんてしみじみ言っちゃうガイ様は、さすが育て親と言うか、なんかズレてると言うか(笑)。

 ところで、今回ティアがルークの部屋に行ったことに、一応「隣の部屋だったから」という理由が与えられてるんですが。もしもティアの部屋の隣がガイだったら、更なる惨劇が起きていた気がします(笑)。しがみつかれたガイはすんごい悲鳴をあげるでしょうから恐怖倍増、びっくりして飛び出してくるであろうルークに目撃されれば、よくもティアにと恨まれること請けあい。ガイ様、針のむしろですね。うーん。ティアの部屋の隣がルークでよかったです(笑)。

 

 あと、以下の場面が印象的でした。

ナタリア「こうなったら、正体を突き止めましょう」
ティア「え。や、やめましょうよ」
ナタリア「本物の幽霊を見られる機会なんて滅多にありませんもの。行きましょう。(期待込めて)さあ、ルーク」
ティア(非難するように)ルーク…!」
ルーク「うーん……。でも、このまま眠ることなんてできないよな。(面白そうに)正体を突き止めてやる!」
ティア「ひええ!?」
ルーク「ん? じゃあティアはここに残ってろよ(笑)←ジャイアンみたいですな(笑)
ティア「ま、待って。(必死に)行くぅ!」

 何気に、ヒロイン二人がルーク中心に動いてます。ジェイドやガイに決めさせようとはしてない。たまたまなんでしょうし、ナタリアとしては屋敷時代の遊びのノリだったのかなという気もしますが、ちょっと面白かったです。アニメ本編では、ルークがリーダーになるのが平和条約締結前で凄く遅かったですから、尚更。

 それにしても、怪談系の状況だと、いつも強過ぎるティアがひどく子供っぽく頼りなくなるので、ルークとしては嬉しいんでしょうねぇ。ニヤニヤしっぱなしだよこの子。

 

 フリートークコーナー。

 今回は《怖かったこと》をテーマにキャスト各自がトーク。

 ジェイド役の声優さんはゴキブリが怖いそうです。そして、フナムシも怖いそうです(笑)。

 このドラマCDより四ヶ月ほど前に発売されたお祭りゲーム『テイルズ オブ ザ ワールド レディアント マイソロジー2』にて、ジェイドが「(ルークが)フナムシにたかられているかもしれない」などと言う場面があって印象的だったんですけど、どこかで繋がってる話題なんでしょうか(笑)。

 

特殊音譜盤スペシャルフォンディスク
〜孤独をいだいて〜

 TVアニメ第12話「水の都」、13話「開戦」、14話「閉ざされた過去」が収録された、DVD/BD Vol.5の初回特典ドラマCD。

 アッシュ主役……と見せかけて、漆黒の翼メインの話です。原作ではナム孤島のイベントで語られる、彼らの背景事情(盗賊とサーカス団を兼業している理由)が、かなり不明瞭にではありますが説明されています。そして彼らの視点でアッシュの人となりを批評。やはり漆黒の翼(大人たち)の目から見れば、アッシュはいたいけな面を持つ子供なんですね。

 また、アッシュが便利連絡網でこっそり覗き見…というシチュエーションで、ルーク、ナタリア、ガイのバチカル幼馴染み組の和気あいあいとした買い物風景も描かれています。この子たちホントに仲いいなぁ♥ こちらのパートでは、ナタリアがノワールとアッシュの関係を誤解して嫉妬の炎を燃やす、原作のサブイベントネタが取り入れられています。

 場面がぎゅんぎゅん飛びますし、前半と後半でパキンと割れたように話が変わっている。冒頭・中盤・ラストをアッシュ&漆黒の翼で繋いで、漆黒の翼がアッシュに肩入れしていく様子を描いて整えてはあるものの、まとまりは今一つ悪いです。

 個人的には、ギンジが仲間になってるアッシュパーティの様子が聴きたかったです。Vol.7か8くらいの特典にして。

 なお、バチカル脱出時に漆黒の翼にからかわれる場面は、『鮮血のアッシュ』に取り入れられて漫画化されています。

 

 物語は、アッシュと漆黒の翼の初顔合わせから始まります。当時まだヴァンの指揮下にあったアッシュは、導師イオンをバチカルから連れ出す仕事を漆黒の翼に依頼。漆黒の翼の方も、伏せていた鮮血のアッシュの名を探り当てていることを示して牽制。ともあれ、金銭による契約が成立しました。

 漆黒の翼がアッシュの依頼を引き受けたのは、陸艦タルタロスに追い回され、当分はマルクトに入れないと踏んでいたからです。《子供たち》のためにもキムラスカで稼がなければ。一方、アッシュが漆黒の翼を雇ったのは、レプリカに居場所を奪われた自分が故郷バチカルに入るわけにはいかないからでした。未だ色褪せぬナタリアとの約束を思い浮かべ、消えぬ望念を苦しげに打ち払います。

 語はビュンビュン飛んで、レプリカルークとの雨中の初邂逅、次いでユリアシティでの真実暴露が断片的に語られます。そして偽姫事件でナタリア達をバチカルから脱出させた直後の場面に。

ウルシー「いやー、驚いたでゲスよ。アッシュの旦那に言われていた通り、いざとなったら市民たちを何とか扇動して騒ぎを起こすつもりだったんでゲスが」
ヨーク「ちょっと事情を説明しただけで、みんな自主的に王女様を助けようと動き出してくれたんですぜ? 王女様は、本当に国民に愛されてるってことですかねぇ」
アッシュ「あいつは、貴族の家に生まれたと言うだけで、威張り散らす無能な奴らとは違う。自分から民たちの元へ行き、直接その声を聞いて、何ができるかをいつも考えている。
 そういう王女だからこそ、皆が付いていくんだ。血筋など関係ない」
ノワール「へ〜え〜〜?」
ヨーク「ほほぉ〜」
ウルシー「うししし」
ノワール「うふふふふ」
アッシュ「な、何だ」
ノワール「あの王女様のこと、よっぽど大事なんだねぇ」
アッシュ「っ……!! 俺は……。――(咳払い)もうここには用はねぇ。さっさと移動するぞ!」
#アッシュ、肩を怒らせて立ち去る
ノワール「あっはははは。なんて可愛いんだろう。やっぱりまだまだ坊やなんだねぇ。これぐらいで照れるなんて」
ヨーク「からかっちゃ可哀想ですぜ」
ウルシー「意外に純情でゲスなぁ、アッシュの旦那は(ニヤニヤ)

 ひとしきり笑うと、漆黒の翼たちはアッシュの批評を始めました。

ノワール「最初の印象とはずいぶん変わったけど、あれがあの子の本質なんだろうね。――ウチの子供たちと同じ目をしてたから、気になってたんだけど」
ヨーク「確かに。戦争やなんかで親を亡くして、ウチに来る子供たちと同じ目でしたね。すさんでるって言うか……」
ノワール「荒んでるように見えて、ほんとは淋しいのさ。
 だけどあの子にはちゃんと、心の支えになる人がいるってことだ。いいことだよ。出来ればもっと一緒にいられる世の中になるといいけどねぇ」

 ここまでが前半で、以降、話がガラリと変わります。ここ以降はオマケと言ってもいいのかもしれません。

 どこかの街の市場で、仲良く買い物をしているルーク、ナタリア、ガイの幼馴染み三人。その様子を、秘かに回線を繋いだアッシュが覗き見しています。ルークには頭痛が起きますが、気のせいかと思って気付きません。

 荷物を持つと張り切るナタリアに、ガイは思わず「いやあ。流石にナタリア姫に荷物持ちなんてさせられませんよ。俺たちだけで大丈夫ですから」と使用人口調で苦笑してしまいますが、ルークはいいじゃんかと押しとどめて一つ荷物を持たせます。でも、それはとても軽いものでした。なのにナタリアがそう言うと、そうか? 俺は荷物を持ってもらって楽だけど、と笑うのです。ナタリアは感銘を受けて彼の名を呟きます。

ナタリア「本当に、あなたは変わりましたのね。こんなさりげない気遣いをされる方ではなかったのに」
ルーク「あ……うん。昔の俺、ひどかったもんな。自分勝手で、ちっとも優しくなかったって。今なら分かる」
ナタリア(からかうように)そうですわね。婚約者に対する態度がなっていませんでしたわ」
ルーク「う。それを言われると」
ナタリア「ふふ。冗談ですわ。わたくしも、あなたに自分の理想を押し付けるようなことをしていたと思います。あなたはあなたでしたのにね」
ルーク「ナタリア……」
ナタリア「こんな風にあなたと色々な話を出来るようになったこと、本当に嬉しいのです。ほら、今みたいに一緒にお買い物をするなんて、考えたこともありませんでしたでしょう?」
ルーク(笑顔になって)――そうだな。うん。こういうの、楽しいな」
ナタリア「うふふ」

 仲睦まじく買い物を続ける二人。ルークが、食料の良し悪しの見分け方がまだ分からないと言えば、ナタリアが、アニスに習ってきたと胸を叩く。そんな阿吽の二人の様子を見ていたガイは、おかしそうに笑い始めました。まるで新婚さんみたいだと言うのです。そんなつもりじゃないと照れ怒りした二人を、「そうだよな。二人とも、誤解されたら困る奴がいるもんな」とからかえば、二人とも図星で言葉に詰まる様子です。

ガイ「ま、それはともかく。俺もこういう風に、ルークとナタリアと一緒に市場でお買い物、な〜んてする日が来るなんて、想像したこともなかったよ。本来なら、俺が二人の使用人として、あれこれ働いていたはずだしな」
ルーク「ガイ。俺は、お前をただの使用人なんて思ってないって言ったろ!」←また言ってるよこの子は(笑)
ナタリア「ええ。ガイもわたくしたちの大切な幼馴染み。――今は、大切な仲間ですわ」
ルーク「うん。そういうことだ」
ガイ「ルーク……。ナタリア。うん。そうだな。仲間か」
ルーク「へへっ。やっぱり、仲間ってさ、いいよな。(少ししんみりして)俺、みんなと一緒でよかったって、ほんとに思うよ」
ガイ(少し感銘を受けた様子で)そりゃあ俺もさ」

 ルークとガイがそう語りあっていた傍らで、ナタリアは急に暗く考え込んでいました。今は神託の盾オラクル騎士団からも離れているらしいアッシュ。彼に頼れる仲間はいないのではないか、独りで辛くはないのかと心配になったと言うのです。その時、ルークが思い出しました。ケセドニアでチラッと、アッシュの仲間っぽい奴らを見たことがあると。
 仲間らしき三人組の一人が、年上の派手で色っぽくてスタイルの良い女性で、アッシュのことをよく知っている様子だったと聞くうちに、ナタリアの様子が変わりました。

ナタリア「……そうですか。女の方と。いずれきちんとアッシュにはお話を聞かなければなりませんわね

 俺は知らないぞ、と若干逃げ腰で苦笑するガイ。急に般若になったナタリアに、ちょっと怯えるルークなのでした。

 全てを見終えて回線を切ったアッシュは、「あの屑、余計なことを!」と怒鳴ってノワールを驚かせました。
 とは言え、ノワールはアッシュが回線でナタリアたちの様子を覗き見していることを、とうに承知しています。今までも時々そうしていたからです。あの子たちの様子が心配なんだろうと言われて、幾ら様子を窺えても遠くにいられたらどうしようもない、と素直に不安をこぼすアッシュ。なにしろ、ナタリアたちは飛晃艇を持っていて、行動範囲と移動速度がとても大きいからです。

 そこで、ノワールが提案しました。シェリダンにはもう一機、飛晃艇があるらしい。乗せてもらえるよう交渉する価値はある、と。即座に立ち上がり、無言で出発しようとしたアッシュに、ノワールが言いました。

ノワール「お待ちよ。勿論、あたしたちも行くよ」
アッシュ「……何故、俺にそこまで従う。金は払った。これ以上危険なことに付き合う必要はないだろう」
ノワール「まあね。うーん、だ・け・ど。あんたに死なれるとこっちも困るんだよ。あんたは上客だからね。もっと仕事を依頼してもらって、報酬をたんまり貰うつもりなんだよ」
アッシュ「――フン。好きにしろ」
#背を向けて歩いていくアッシュ。ノワール、にっこり笑って
ノワール「ふふ。そうさせてもらうよ」
#追っていく。おしまい

 ツンデレアッシュの仲間になるには、これくらい押しが強くて包容力がないと駄目なんですねぇ。

 アッシュに自分たちが育てている戦災孤児たちと同じ傷を感じたのが、漆黒の翼たちが仕事を超えてアッシュに肩入れするようになった動機の一つ、とする解釈は、なるほどなぁと思えて面白かったです。

 

 後半の、バチカル幼馴染み組の買い物シーン。

 復讐者であったことがとうに明かされているのに、ルークもナタリアも「ガイはただの使用人じゃなくて友達だ」と言うばかりで、「本当は使用人の立場ではない」ことに触れないのは不思議な感じがしました。それに触れてたら話がアッシュからズレ過ぎるからでしょうか。

 会話を聞いていると、どうやら本当の買い物当番はルークで、ガイは荷物持ち&補佐役として付いて来たみたいなんですが、ゲスト扱いされてたナタリアと違って、ルークを手伝うのが当然、みたいにルークもナタリアもガイ本人も思ってる様子なのがおかしかった(笑)。

 ルークは買うものをメモすらしてなくて、いちいち「あとは……何だっけ、ガイ」と確認し、「だーから、買い出しに出るときはちゃんとメモを取れって言ったろ、ルーク」とたしなめられてました。けど、懲りてないみたいです。解ったメモする、って返事しないし。分かんなくなったらガイに聞くからいーじゃん、とか思ってそう。

 

 アッシュがルークに気付かれないまま回線を繋いで覗き見しているという、個人的に好きでない二次創作設定が使われています。でも、ルークに頭痛が起きたという描写はしてあったんで良かったです。うん。せめてそれぐらいは枷を作っててほしいです。

 アッシュがルークに一切意識させないまま自由自在にルークの見るもの聞くもの知れてしまうと言うことになると、大爆発ビッグ・バンで記憶吸収するまでもなく、アッシュがルークと元々記憶を共有していた、共有することが可能だったという、設定の大穴が発生してしまいます。そうするとラストの大爆発関連設定が成り立たなくなってしまい、物語が崩壊する、気がするのですが。多くの公式二次で、気付かれないまま自在にアッシュが見てることにされてて、気になって仕方なかった。幾ら便利設定とは言え、マズいではないですか。作家先生方は誰も、その辺 気にならないのかなぁ。読み手としては気になるですよ。気にするなと怒られそうですけども。

 そんなこんなで、辛うじてながらルークの頭痛描写が入って、ホッとしました。…今度は、なんで気付かないんだルーク、みたいになってきちゃいますけども(笑)。

 

 フリートークコーナー。

 一番手がガイ役の声優さんだったので、いつにないことの気がして「あれ?」と思ったんですが、ジェイドやティア役の声優さんが今回はお休みだったから、なんですね。

 ノワール役の声優さんが、やっとノワールの背景事情が分かった、みたいに言ってて印象的でした。とても背の高い方だそうです。

 

特殊音譜盤スペシャルフォンディスク
〜テイルズ オブ ジ アビスマン!〜

 TVアニメ第15話「それぞれの決意」、16話「地核突入作戦」、17話「崩壊の序曲」が収録された、DVD/BD Vol.6の初回特典ドラマCD。

 原作レプリカ編の称号サブイベント《アビスマン》を元ネタにしたコメディです。

 アビスマンをネタにした先行の商業二次には、ゲーム版アンソロドラマCD2収録の「戦え! 音素フォニム戦隊アビスマン」がありますが、こちらは音素戦隊ではなく「テイルズ オブ ジ アビスマン」。ちなみに原作は何も付かない「アビスマン」です。並べてみると、無印、音素、テイルズオブで、一作ごとに設定を変えながら長期続いてるアビスマンシリーズって感じですな(笑)。『プリキュア』とか『仮面ライダー』とかみたいな。

 音素戦隊アビスマンが、脈絡なくヒーロー芝居(?)をしているシュールなメタフィクションだったのに対し、こちらは、どうしてルークたちがヒーロー芝居をやることになったのかをきちんと説明しています。

 ところで音素戦隊の方、ラストのナレーションで、ラスボスが実はジェイド=悪の譜術使いでは? と思わせる仕込みがあるんですが、こちらでは物語中ではっきりと、ジェイドがラスボス・悪の譜術士フォニマードイジェとして登場しています。偶然か意図的かはわかりませんけど、アンソロドラマCD版を引き継いで発展させた感じもして面白いです。

 

 グランコクマ安らぎの家。ピオ二―皇帝が戦災孤児の保護のために作ったその施設の野外劇場で開かれる、サーカス団・暗闇の夢の慰問公演に招待されたルークたち。
 ところが会場に着いてみると、サーカス団がドタキャンしてしまったとピオ二―に打ち明けられました。しかし楽しみにしている子供たちのためにも何もしないわけにはいかない、幸いにも、以前用意させた『アビスマン』の台本と衣装がある。お前たちがやるんだ、と。
 寝耳に水の話に驚くルークたちでしたが、仕方なく、子供向けヒーロー・アビスマンに扮して、ヒーローショウを行うことになったのでした。
 ちなみに、イオンはピオ二―と共に客席で観劇です。

 司会のミュウが台本の難しい字をなかなか読めなかったり、アビスレッドことルークが緊張して上手く台詞を言えなかったり。色々ありましたが、物語は、勝手に役柄変更して登場した悪の譜術士フォニマージェイド、もとい、ドイジェと、アビスマンチームの対決に突入。卑怯にも、ドイジェは司会のミュウを人質に取りますが、そこにアビスシルバーことアッシュが登場。颯爽とミュウを救い、アビスグリーンことナタリアと二人きりの愛の世界を見せつけた後、速やかに立ち去ったのでした。

 さて。ショウはいよいよ佳境に。アビスマン達がそれぞれの決め口上を言って音楽もカッコよく盛り上がり……と思ったら、ドイジェが「決め台詞がちょっとムカついたから」という理由でアビスピンクことアニスに容赦ない先制攻撃。ぷっつんしたアビスピンクはトクナガを巨大化させ、ステージ上で本気(?)のバトルが始まってしまいます。とばっちりを受けて腹を立てたアビスグリーンも参戦。秘奥義アストラルレインを放てば、ドイジェは第二秘奥義のインディグネイションを返す始末。舞台はめちゃくちゃに壊れて、正義の使者アビスマンは、なんと全滅。悪の譜術士ドイジェが大勝利を収めたのでした。

 ともあれ、ド迫力の戦闘に子供たちは大喜び。公演は大成功だったとピオ二―もご満悦です。専用劇場を造って『アビスマン』の定期公演を行おう、勿論お前たちもやってくれるよな、な〜んて笑顔で言われて、即座に「やりません!」と叫んだルークたちなのでした。(…ショウを心底楽しんだ一名除く。)おしまい。

 キャラクターたちのやり取りが面白い、スタンダードな話で、にまにましながら楽しくスラッと聴けました。

 にしても、子供のアニスの体型に合わせたアビスピンクの衣装が用意されてたんですから、どー考えても《たまたま》衣装と台本があったわけではないですよね、陛下。定期公演のチラシの用意もいやに手際がいいですし。暗闇の夢のドタキャンも嘘……とまではいかなくても、何か裏があったりして(笑)。

 

 以下、面白かったシーン。


◆ピオ二―の人となり

 冒頭、仲間たちを先導しながら地図を片手に迷っているルーク。てっきり地図の読み方が下手なんだと思ったら、ピオ二―の書いた地図が、ガイすら苦笑するほど判りにくかったのでした。目印が曖昧だとか。皇帝は地図…ってより、絵が下手なのかなぁ?
 また、ピオ二―は戦災孤児のための施設を作り、時には自ら慰問に訪れるそうで、ナタリアが「素晴らしいですわ。まさに為政者の鑑ですわね」と絶賛していました。ジェイド曰く、陛下は意外と子供好きなんだそうな。


◆タイツヒーローは憧れのヒーロー?

ルーク「つーかさァ、ホントに俺たちがやらなくちゃいけないのか?」
ナタリア「ルーク。往生際が悪いですわよ。恵まれない子供たちのために力を尽くすのは、王族として当然の義務ですわ」
ルーク(むくれて)それはわかるけど。俺はそんなのやったことないぞ」
ガイ「いいじゃないか。舞台の上とはいえ、こういうの、子供の頃、憧れてただろう?」
ルーク「そんなの覚えてないって! 大体なんだよこの衣装は。こんなピッチピチの、ぱっつんぱっつんの衣装! 憧れるか? カッコイイのか! なあおいガイ!(凄い勢いでガイに詰め寄る)
ガイ「わわわ、分かった分かった、分かったから。(ルークを押しとどめて)落ち着け! な?」

 巻末のフリートークコーナーで、ガイ役の声優さんがヒーローの全身タイツは(体型を色々修正しない限り)着たくないと盛んに仰っていましたが。腹筋見せ見せで体型自慢のルークは、全身タイツが嫌みたい。綺麗なスタイルしてるのにね。普段からタイツのガイは抵抗ない?

 キャラの性格で考えていくと、全身タイツを一番恥ずかしがりそうなのはティアなんですが、彼女は全然そういう素振りを見せなかったです。自分の巨乳にコンプレックスを持っている部分があるそうなんですが。お仕事モードスイッチが入ってたのかな。「このスーツ、胸がキツくてっ……」とか「確かに動きやすいんでしょうけど、体の線がはっきり出てしまうのね。……そ、そんなに見ないでっ。ばか」とかの、男性向けなら定番だろうネタが入らなかったのは、残念なのか良かったのか(笑)。

 それはそうと、「こういうの、子供の頃、憧れてただろう?」「そんなの覚えてないって!」というガイとルークの会話。一般論なんでしょうけど、深読みして、実際にルークが子供の頃ヒーローにかぶれてガイの手を焼かせてた時期があるのかなー、なんて想像をしちゃいました。


◆悪役は?

 ジェイドは、全身タイツはともかくとして役柄が自分の性格に合わないと言いだし、アニスの出してきた《悪の譜術士フォニマー》の衣装を自ら身にまといます。で、そのまま悪役として舞台に出るのですが。

 でも、それはイレギュラー。ピオ二―とイオンは台本と違うと驚いていましたし。つまり本当は、別に悪役を演じる人がいた筈ですよね。誰だったんでしょうか。

 もしかして、元々の台本ではアッシュ演じるアビスシルバーが悪役の予定だったのかな?(原作のアビスマンでは、アビスシルバーは洗脳されて敵に回っている悪の貴公子という設定。) 台本が変わってて出るに出れなくなったアビスシルバーは、(例によって高い場所から)舞台を窺いながら、出る機会を計ってたんだったりして。


◆あがり症ルーク

 いよいよ本番となって舞台に飛び出したルークたちですが、ルークだけ、台詞に不自然に力が入ってる。声優さんは上手いなぁと思います。

 覚悟を決めて舞台に出たものの、ルークは緊張しすぎて、「正義の味方アビスマン、ここに参上!」の「参上」すらド忘れしちゃう。ここはティアにフォローしてもらい、続けて「アビスマンがいる限り、お前の好きにはさせないぞ!」と言うはずが、何故か「アビスマンがいる限り、お前が好きになったりならなかったりっ」と言ってしまう。ここはガイがフォローしてくれました。

 ルークは案外あがり症らしく、ガイ曰く「ミュウよりひどいぞ」。

 その後も、名乗り台詞を言わなきゃならない場面でボーッとしてたり。ただ、アビスシルバーへの突っ込みだけは冷静で的確でした(大笑)。


◆アビスシルバー見参!

 ドイジェがアドリブで司会のミュウを人質に取ったのを幸いに、秘奥義をぶっ放してアビスシルバーことアッシュが見参。「大丈夫かチーグル。さあ、早く逃げろ!」とミュウを放してやった様子が優しくて素敵でした。

アビスシルバー? そんなのいたか?」「この屑!」「って。アッシュじゃないか」という、ルーク/アッシュ役の声優さんの一人二役の切り替えが、一度に一人で全部続けて言ってるんだと思うと可笑しかったです。別録りしないってスゴイですよね。にしても、覆面をしたアッシュの識別点は「屑」という口癖なのか(笑)。

アビスグリーン「アッシュ! いえ、アビスシルバー。来てくださいましたのね」
アビスシルバー「ナタ、――いや。グリーンのためだ」
アビスグリーン「まあ……! わたくしのために?」
アビスシルバー「ああ。国も民も大事だが、今の俺は、アビスシルバー! グリーンのためだけに生きている」
アビスレッド「……それ、役じゃなくてお前の本音だろ!」
アビスグリーン「ああ…、シルバー!」
アビスシルバー「グリーン!」
#ひし、と抱き合う二人←ホントにアッシュが「ひし」と喋ってるとゆー(笑)。
アビスピンク「……あは。完全に二人だけの世界になってるよね」
アビスブラック「え、ええ。そうね」
アビスシルバー「グリーン。俺に出来ることはここまでだ。後は、お前たちで頑張るんだぞ」
アビスグリーン「あ…! 行ってしまわれるのですね、シルバー」
アビスシルバー「また逢おう、グリーン。――はぁっ!」
#アビスシルバー、跳んで姿を消す
アビスレッド「つーか、あいつの出番あれで終わりかよ
アビスグリーン「素敵でしたわ〜♥」

 アッシュとナタリアのカップルも、どんどん暴走しているなぁ(笑)。あのアッシュが大勢の前でナタリアに愛の告白したうえ抱き合うとは。これが覆面効果ってヤツでしょうか。今の俺はルークでもアッシュでもなく、アビスシルバー! だからこんなことも言えるしあんなこともできるのだ! なんつて。後で我に返ったら悶絶してそうですけどね。アニス辺りは、会ったら絶対からかいそうですし。


◆ワンダーモモーイ

 アビスマンが各自ポーズを決めながら名乗り台詞を言いますが、アビスピンクことアニスのそれは、

「ワワワワーンダー、モモ桃〜色。アビ〜スピンク☆」

って奴でした。アニス役の声優、桃井はるこさんの持ち歌『ワンダーモモーイ』のパロディ……で、いいんかな? これを聞いたドイジェことジェイドが「失礼。思わず攻撃してしまいました、ちょっとムカつきまして」とエナジーブラストをぶっ放してくるんですが、声に笑気が満ちてて凄かった(苦笑)。

 ちなみに他のメンバーの名乗り台詞は、

「紅きほのおは聖なる輝き! アビス、レ〜ッド!」
「闇夜に響く黒き旋律。アビスブラック!」
「天空を駆ける茜の翼。アビスオレンジ!」
「慈愛を映す緑の瞳。アビスグリーン!」

って感じでした。

 アビスオレンジことガイ、「茜」だとオレンジってよりレッド…ルークのカラーみたいなんですけど、流石に「オレンジの翼」やら「だいだいの翼」じゃしまらないか。(^_^;)

 そしてアビスグリーン@ナタリア。TVアニメ版には、緑の瞳のナタリアに対して瞳が蒼いから偽王女だ、と糾弾する場面があって引っかかったものでしたが、こんなところで瞳は緑色でしたよ主張がされている(苦笑)。


◆イオン様も男の子

 アニスとジェイドが舞台上で戦闘を始めると、ピオ二―は大喜びで応援。隣でイオンも一緒になって「いいぞアニスー!」と声を上げ、すぐにハッとなって、ばつが悪そうに「へ、陛下。ぶ、舞台が壊れてしまうのでは?」と言ったのが可愛かったです。

 イオンも、本当はまだ子供ですもんね。けど、羽目を外し過ぎないところもまた好ましい。



 原作ゲームや「戦え! 音素フォニム戦隊アビスマン」では、ルークはなんだかんだでノッてアビスレッドを演じてたんですが、このドラマのルークは徹頭徹尾、嫌がって&緊張していて、少しもヒーローを楽しんでいなかったのが目を引く感じでした。アニスとジェイドの戦闘のとばっちりに腹を立てて戦闘参加する、トラブル拡大役もナタリアだけに振られていて、ルークはティアやガイと共に逃げ惑う役回りでしたし。

 アニメのルークは、案外 真面目っ子かな?



 フリートークコーナー。

 今回はテーマが定められてはおらず、みなさん、ドラマの内容と自分の演技の感想をそのまま語っておられる感じでした。

 ガイ役の声優さんが、アビスオレンジは清涼飲料水の名前みたいだと仰ったのが、凄く面白かった。ホントだ! その通りですよ。

 ジェイド役の声優さんは、今回、大変ノリにノって演じられていたそうです(笑)。しかしご本人曰く、《ドイジェ》という呼称をファンが喜んで使いそうな感じがして非常に厭。「それ言ったらホントぶっ殺す。」だそうです(笑)。

 

 



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