# 10 償いの帰還脚本:岸本みゆき/コンテ:小倉宏文/演出:小倉宏文/作画監督:中島里恵 絵もよかったし、とても面白かったです! なんだかガイが目立ってました。 今回はとにかく心理描写に凝っている印象でした。前回とは打って変わって尺に余裕があって、《間》や表情の変化を駆使し、細やかな情感を出している感じ。嬉しいです。素敵でした。 ただ描写が繊細過ぎて、ジェイド・アニス・ナタリアとの再会シーンでのルークの態度が原作以上にひ弱になっているのが気になりました。何故か、嫌味を言われたら悲しそうに黙り込むだけで前向きなことは何も言わないんですよ、今回のアニメルークは。覇気がないと言うか意欲に乏しいと言うか。早くも原作レプリカ編前半の、精神的に一番参っていた頃の卑屈ルークになっちゃったみたいな うじうじっぷり。 前半アラミス湧水洞でガイに励まされますが、ラストに再び励まされ決意を新たにするオリジナルシーンが追加されてましたので、わざと途中はうじうじさせたのかも。ともあれ、原作のルークとは違うなぁという印象は残りました。
OPは変化なし。いつも通りに長髪ルークから始まります。もうすぐ1クール消化しますが、最後までこのままなのかな。(『テイルズ オブ マガジン』Vol.2の記事を見た感じだと、EDが最後まで変化なしなのは確かっぽいですが。)
以下は重箱の隅ツッコミです。読みたい方だけどうぞ。 アバンは久々に《前回のハイライト》。その代わり最短。始まった時点でOP曲の前奏が始まっている状態です。
Aパートは、テオドーロに 原作では、ルークはまず、テオドーロに謝罪します。 「えと……アクゼリュスのことでは……ご迷惑をおかけして、す……すみません……でした」 私、このシーンが結構好きです。ルークが初めて、公的に自分の非を謝罪するからです。一つの都市を滅ぼした罪。既にティアに向かって罪を認めて決意を述べてはいますが、社会的立場のある大人に謝罪するのはまた違う。とても恐ろしかっただろうと思いますが、彼はけじめをつけた。逃げませんでした。 ところがアニメではこの台詞をカットしました。直前のルークとミュウの他愛無いやり取りなんかは削ってないのに。なんで(汗)? ルークは謝罪していないのに、テオドーロは原作どおり「しかしアクゼリュスのことは我らに謝罪していただく必要はありませんよ」と言って話を進めます。雰囲気だけで押し流してしまいました。どうしてルークにハッキリ謝らせることを避けたんだろう……。まじ分からん。
テオドーロはルークの存在などいかにも軽く見ている様子で、挨拶もさして意に介さず、開口一番に「きみがルークレプリカか。なるほどよく似ている」と言う。原作だと、そう言われたルークは苦しそうに目を閉じてぐっと左手を握りしめます。自分がレプリカに過ぎぬという現実を受け入れて前に進まなければと決意しつつも、未だ心は生々しく痛んでいることが分かる。対してアニメのルークは、ただ驚いたように軽く目を見開いただけでした。 ティアの非難を軽くいなしたテオドーロは、アクゼリュス崩落は
そんなわけで、以下の会話も丸々カットされていました。 ルーク「ヴァン
また、前回テオドーロが「我らには監視者の役目がある。この土地を離れるわけにはいかない」と言ったのをアッシュの意識の中から聞いたルークが(監視者って)と疑問に思う描写は原作どおり入れていたというのに、それを受けるためのテオドーロの台詞「我らはユリアの預言を元に外殻大地を繁栄に導く監視者。ローレライ教団はそのための道具なのです」もカットしています。なんで? 教団幹部たちが自らを歴史の監視者だと思っていることが、現時点で、アニメ版では説明されないままになっていますよ。まあ、後でこの言葉が出てくることはあるんでしょうけど。これは脚色のミスじゃないのかなー…。
ホドの話題のカットに関しては、実は原作の方がおかしかったと思うので、これは修正なんだなと思いました。ホドがマルクト領の島で十六年前に崩落したことや、ティアとヴァンの故郷だということは、原作でもテオドーロと話した後、ティアの部屋に行った時に初めて説明される。つまり原作では、ホドとは何かと知る前に既知の知識として長々と話題にされていて、プレイヤーは置いてけぼりになってしまうのです。(遡れば、バチカル港に帰還した時、ワイヨン鏡窟で演算機を調べた時にも《ホド》の話題が出ているのですが、それは何なのかという具体的な説明はここに至るまで一切無い。冒頭のユリアの もっともアニメ版でも、自室のベッドに座り込んだティアが、テオドーロに確認を取ることもなく「きっとホドの消滅も #アニメではティアは一切を知らなかったことになりましたが、原作のティアは、ホド崩落が秘預言に詠まれていたこと自体は知っていました。ただ、教団が積極的に秘預言を成就させようとしていたことまでは知らなかった。ホド崩落に関しては、教団側が警告したにもかかわらず、キムラスカとマルクトは聞く耳を持たずにホドで戦って崩落を引き起こしたと聞かされていたのです。些細だけれど大きな変更ですね。
「二人とも、そんなに心配ならユリアロードで外殻大地へ行ってみなさい」と言うテオドーロの口調に、原作に比べて小馬鹿にしたような嗤いのニュアンスが籠もっており、続く「お前たちの心配は杞憂なのだよ」という台詞は、すれ違い際に、憤りに震えるルークの横に立ち止まって強く言っていて。《くだらない妄想だ》と言い切られたかのようでした。 原作テオドーロには頭は固いが真面目過ぎるほど真面目な人だという印象を持っていたんですが、アニメの彼には《厭な人だ》という印象を抱きました。
再びティアの部屋へ。窓際の壁に背を預けて佇むルークは「……なんだよ、あれ」と暗く呟く。ここはかな〜り長く《間》がとってあって、今までの放送回と比較して非常に珍しかったです。 アニメのルークは記憶力がよくて、ヴァンがホドのレプリカを作ろうとしているらしいとワイヨン鏡窟の演算機から知ったことをしっかり覚えており、ティアに説明していました。私は忘れていました(笑)。原作より親切構成。そしてティアはそれを聞いてもさして驚いてませんでした。
ルークと二人きりの自室でベッドの上にあがり、膝を抱えて座り込んだティアは、(ベッドに横たわる時さえ靴を脱がない(^_^;)オールドラントで)ブーツを揃えて脱いで、スリットから太腿を露出させて悩ましげでした。ただの視聴者サービスだと分かってはいるものの、アニメのティアは少しも堅物じゃないなぁ、ルークに気を許しきってるよと苦笑。男の子の前だから裾を整えるのじゃ乙女よ。誘ってると言われても仕方ない姿態かもよそれ。 スカートの中はレオタードだし軍服だし普段の戦闘でもこのくらいの露出をする可能性はありますとかで、見られても平気ですってコトかもしれないけど。 しかしヘタレ七歳児ルーク君は何も感じてないようであった…!(笑)
本編開始直前ユリアシティで、兄とリグレットの会話を盗み聞きしてしまったティアの回想シーン。 原作ではティア自身の姿は映りませんが、アニメでは描かれていました。服装は第7話の回想と同じ、『ファンダム Vol.2』からのデザイン。しかしそちらでのシチュエーションは踏襲されていません。 『ファンダム Vol.2』のティアは、既にユリアシティを出てダアトの でもアニメのティアは私服を着ていて、ずっとユリアシティに住んでいた感じ。花鋏を持っていましたから、きっと花を摘もうと中庭に行って、偶然、兄たちの会話を聞いてしまったのでしょう。 ……あれ。『ファンダム Vol.2』ティア編は原作ゲーム会社が出した公式外伝ですが、私服デザイン以外は採られていないんですね。確かにこの外伝は、元の原作ゲームから見て状況が不自然ではあったんだけど。…く、黒歴史化? ティアが『ファンダム Vol.2』の私服を着て兄とリグレットの会話を盗み聞いてるという絵は、『マ王』漫画版に準じてるっぽい。
兄は外殻大地の人々を消そうとしている。それを知って、刺し違えてでも止めるつもりだったのに、アクゼリュスを救えなかった。崩落をルークだけのせいにはできない、ときっぱり言い切るティアに、ルークは苦笑して「……お前って強いな」と言う。ここ以降の会話は全く原作どおり。ただ、そう言われたティアが「……そう、かしら」と頬を染める演出が追加されていました。確かに褒め言葉ですけど、そんな頬を染めるまでの台詞かなー、「お前って強いな」って(笑)。らぶらぶですね。 この辺りの会話は、変な省略もされてなくて会話リズムが崩れてないし、《間》もしっかりとってあるし、文句なしでした。つーか、こういうのを見ると前回の断髪前のチャカチャカ会話が本当に残念に思えてきます。
ルーク「強すぎ。でも……話してくれてありがとう。お前のこと、少しだけ分かった気がする」←照れ臭そうに鼻をこする動作が再現されてなかったのは少し残念
「それよりさ、さっき市長が言ってた〜」以降はアニメオリジナルの会話です。 原作のルークは、会議場でテオドーロに話を否定され、心配ならセントビナーを見に行けばいいとまで言われて、憤りに震える激情のままに「ティア、外殻大地へ戻ろう! ここにいても埒があかない」と言い放ちます。出発前に荷物を取りに行きたいとティアが言うので一緒に部屋に戻り、荷物を取った後で「ユリアロードは会議場の右側よ。行きましょう」と彼女に促されることになりますが、強い意思でこれ以上の悲劇の阻止を願い、地上に戻りたがっていました。 預言に詠まれてたから謝らなくていいと言われても「そうだろ俺は悪くヌェー。崩落しないって市長が言うなら俺の知ったことじゃヌェー」なんて以前みたいに他人に責任を持たせて逃げたりしません。 でもアニメのルークはテオドーロに否定されるとティアと二人でクシュ〜ンと落ち込んで、部屋に籠もってぐちぐち言って、やがて会話が男女交際的にイイ感じになると、照れ臭さを誤魔化すかのように「とにかく一旦、上の世界に帰らないか?」と。「とにかく一旦」かい。 《何が何でもセントビナーの崩落を止める、崩落しないにしても自分の目で確かめる》んじゃないんだ…。イマイチ目的意識が希薄と言うか、柔らか〜い感じですね。(^_^;) それはそうと、アニメのティアはルークに地上に戻ろうと言われて、どうして迷うような表情を見せたんでしょうか。ヴァンと戦うのがやっぱり辛いのかな?
原作には、《思いがけず弱い面を見せたティアを励ますルーク》というシチュエーションを含むエピソードが、この辺りには二種存在しています。フェイスチャット『兄妹』とサブイベント『ユリアの譜歌1』です。長髪時代はティアを《冷血女》《無愛想な女》と呼んで憚らなかったルークですが、知らなかった彼女の苦しみや悩みを知り、接し方が変わります。前述の「話してくれてありがとう。お前のこと、少しだけ分かった気がする」の会話はメインシナリオにある同系統エピソードで、これがあるからには不必要ではあるんですけど、個人的には『兄妹』後半の会話が採られなかったのは残念でした。 ルーク「ティアは…… ティアは感情を内に押し隠して頑なに面に出すまいとする傾向がある。今まで彼女の表面だけ見て罵っていたルークがとうとうそれに気付いて、もっと感情を開放していいって言ってやるんですよね。ルークとティアの変化後の関係の核のようなものだと、私は思っているので。 とは言え、野営イベントの「変な奴。無理して強がってる風にしか見えねーや」をカットして普遍的な萌え萌えラブコメに置き換えたアニメ版ですから、同一ライン上にあるこのエピソードも採られなくて当然だったかも。アニメのティアは、最初から自然体の優しい少女ですもんね。 ……となると、崩落編終盤〜レプリカ編序盤の、
設定関係は、セフィロトがダアト式・ユリア式の他に《アルバート式という封咒で守られていた》という説明がカット。確かにこれはストーリー上は不必要な情報。同様に、ホドは第八セフィロト、アクゼリュスは第五セフィロトだという情報もここでは語らず。 ティアはユリアシティで生まれたのでホドの地を踏んだことがないこと、ホド崩落に巻き込まれたヴァンが恐らく譜歌で自分の身と母親を守ったこと、ヴァンは子供時代に無知な外殻の子供よとユリアシティの人々に差別されて苦労したこと、教団に入って出世してから若く見られないために髭を伸ばしたこと(笑)も説明しませんでした。 そして、ティアの譜歌がユリアの譜歌であること、ヴァンとティアがユリアの子孫であること、大譜歌についても説明されませんでした。…まだアニメ版では説明されてない、ですよね? 原作ではカイツールに入る前とこの初回ユリアシティで説明されるんですが。 これらは説明しない訳にはいかない重要設定。どこまで先延ばしするんだろう。 まさかヴァン戦一回目まで説明しないとか。いやいや、最終決戦直前に説明し出すとか? 流石にそれは酷いか。……無難に、メジオラ高原のセフィロトを開ける辺りで説明するのかなぁ。ガイが第七譜石の思い出を語ったり、リグレットにワイヨン鏡窟に呼び出される辺りで一緒にとか。
すぐにユリアロードへ。ティアが譜陣の真ん中を踏むと、ラ♪ シ♪ と音が鳴ったのが面白かったです。アレはスイッチを入れたとかいう意味なんでしょうか? ルークが踏んでも鳴らなかったし。 ルークの肩にしがみつきながらお目々ギュッと閉じてドキドキしますのと訴えるミュウが愛らしい♥ 転移後に泉に出て溺れると思って必死にバチャバチャしてたのも愛らしい♥ 大丈夫だと分かると水面を見つめて手でツンツン 泉の辺りは景色が綺麗でした。でも湧水洞の中の地下水の描写があまり綺麗に見えなかったのは、結構残念でした…。流れる青く澄んだ地下水、鍾乳洞的な神秘的景色が見たかったです。
ガイとの再会。原作では通路の坂の上に座っていましたが、アニメでは通路の脇の大岩の上に座っていました。アニメではカットされた、原作冒頭でルークの部屋から去る時の、二本の指を立ててピッと振る挨拶が、ここで再現されました。更には、大岩の上から身軽に宙返りしてルークの前に降りてくる。えらく派手な再会になりましたね(笑)。 ルークが喜びの余りガイに一歩駆け寄った時、ずっと肩に乗っていたミュウが勢いで地面に頭からぼたっと落ちちゃったのが、愛らしくもちょっと可哀想でした。「みゅう!? ……みゅ」って鳴くし。最後は潰れた蛙みたいに低く。
ガイとルークの会話はかなり圧縮されていました。 それでも、ドラマCD版、『マ王』漫画版と、カット・構成変更され続けてきたアラミスが扱われただけで、すんごく嬉しい。 (アニメ版) (原作)
アニメ版の回想シーン。まだ歩行訓練をしているルークが、言葉はペラペラ喋っているのに違和感を覚えました。よく歩けない頃のルークは片言喋りだったんじゃないかというイメージがありましたので。漫画家さんが口を酸っぱくして「直接原作ゲームと繋がる唯一の公式外伝ですから。他の公式二次とは違いますから」と主張している漫画版外伝1でも、幼少レプリカルークがよろよろしながらも自力で庭を歩き回っていた頃、「あーうー」ぐらいしか言えない赤ん坊状態として描かれてましたし。 って言うか。これは多分、「歩き方さえ知らなかったルークの面倒をガイがみていた」「幼いルークがガイに『過去なんていらない』と言った」という二つの情報をワンシーンで表現するための方便に過ぎない、ですよね。原作で説明されてるシチュエーションとも違ってますし。 後に宝刀ガルディオス関連のエピソードが扱われるとしたら、ちゃんと「昔のことばっか見てても前に進めない」という言葉も使われるんでしょうか。今回のアニメの「過去なんていらねーよ!」は、ただ幼児が癇癪を起こしたようにしか見えないので、ガイの人生を変えた一言としては弱いと言うかカッコ悪いと言うか。
それから。『アビス』では《卑屈》という単語がしばしば使われるんですが、キツいからと忌み嫌う方たちも一部おられるようで。その配慮なのかは知りませんが『ファンダム Vol.2』では《後ろ向き》という言葉に代えられていた感じでした。で。今回のアニメ版では、ガイの台詞から《卑屈》も《後ろ向き》もどちらも削除されてました。偶然? もし意図的な削除なのだとしたら、そんなにマズい言葉なのかな。《卑屈》や《後ろ向き》って。
湧水洞を出るとジェイドが出現。ガイに助力を頼みに来たと言います。見つめ合うガイとルークに声をかけて友情賛歌な雰囲気をぶち壊す空気の読めなさです(笑)。ここでAパート終了。
Bパート。 原作ジェイドはタイミングよく外から駆け込んでくるんですが、アニメでは近くの木にもたれかかって待ち受けていました。とても冷たい顔をしています。 ジェイド「イオン様とナタリアがモースに軟禁されました」 ルークの最後の台詞。原作だとふてくされた声音なんですが、アニメでは、そう言われて気まずそうに目を背け、消え入りそうな声で言っていました。ジェイドに「いえ、別に」と言われてすごく苦しそうに目を閉じる。……ふむ。繊細な感情描写ですね。
原作でイオンがダアトへ向かったのは、起こりかけている《戦争を止めるべく導師詔勅を出そうと思った》から。でもアニメ版では戦争を起こそうとする《モースを止めようとして》教団に戻ったそうで。易しい言い回しに変えただけなんでしょうが、印象が違って聞こえるなぁ。 ちなみにダアトへはアニスも同行していて、ただ一人なんとか逃亡、タルタロスの修理のため港に残っていたジェイドに助力を要請し、彼がガイを呼びに行った間にとって返して情報収集を行っていたことが原作では説明されています。
さて。ここ以降の会話は、原作から大きく意味を変えてありました。 原作のガイはジェイドに直接返事せず、ルークに向かって「よし、ルーク。二人を助けよう。戦争なんて起こしてたまるか。そうだろう?」と力強く呼びかけます。ルークも「……ああ。ダアトへ行けばいいのか?」と、一拍置きながらも迷いなく答える。フェイスチャットの方も併せて見ると、危機迫るセントビナーへ行くべきかイオン・ナタリア救出を優先すべきか迷って混乱し、どうしようどちらへ行こうとわあわあ言った後でティアに宥められてダアト行きを決定してます。行動は頼りないながらも、ルーク自身の《やる気》はちゃんと見えます。 ところがアニメ版では、ジェイドがルークを無視して改めてガイに、そしてティアにも協力を要請。二人は応諾しミュウまでもが助力を買って出る。なのにルークだけが何も言えないでグズグズしている状態になってしまうのです。 ジェイド「ガイ」
今回のアニメのルークは、原作のルークとは明らかに精神状態が異なっています。 まず、《やる気》が殆ど見えません。やたらとオドオド・しょんぼりしていて消極的で、最初に書いたように、原作レプリカ編前半の一番精神状態が悪かった時のようです。いや。やるべきことをやる意思すら見せないのですから、もっと酷いのかも。 そして、ストーリー自体が原作とは違う意味合いのものに変えられていました。 原作ルークは、(湧水洞でガイに励まされたこともあって、)変わろう償おう頑張ろうという意欲に満ちています。だから嫌味に痛みを感じながらも、めげずに自らダアトへ向かうことを選択する。ガイやティアもサポートしてくれますが、あくまで中心にあるのはルークの意思です。 しかしアニメは違う。 ジェイドが、ガイとティアには協力を呼びかけるのにルークにだけ何も言わない。ただでさえ肩身が狭いのに誘ってもらえないからしょんぼりしています。ところが同じように誘われていないミュウが自ら協力を申し出ました。そう、誘われるのを待ってるだけじゃいけない。自分で「やる」と言わなきゃ。でもやっぱり何も言えないで俯いてしまう。それを見かねたガイが声をかけると、やっと返事をするけれど、居心地悪そう…。そしてジェイドさんはこの様子を全て観察しているのでした。
原作では、応諾したルークにジェイドが「まあ、そういうことですね。念のためお知らせしておきますが、ダアトはここから南東にあります。迷子になったりして足を引っ張らないようにお願いしますよ」と嫌味を言います。するとティアがルークの傍に歩み寄って「ルーク。一度失った信用は簡単には取り戻せないわ」と言う。ルークは頑張ろうとしてますがジェイドは本当に冷たい。失った信用を取り戻す道はなかなか険しそうだ、という感じ。 でもアニメ版は違いますよ。 ジェイド「ま、付いて来たいと言うのなら、止めはしませんがね」 ルークやティアは、ジェイドに冷たい態度をとられたと思ってる。けどあからさまに違うニュアンス込められてますよね、これ。だって「付いて来たいと言うのなら、止めはしませんがね」だもん。その意思があるなら付いて来なさいって意味だもんなぁ。遠回しに励ましておられます。 アニメの大佐はなんて優しいんだろうと、ビックリしました。原作の大佐は「やれやれ。また、あなたと行動することになるとはねぇ」「いつまでも一緒にいなければならない義理もないですし。しばらくは我慢しましょう」「アニスは不必要に先走ったりはしませんよ。あなたと違って」なんて言うんですよ。本気で嫌そうな顔したり冷たく嫌味言ったりするんですよ。ルークを試しつつ観察してさりげなく導いてあげるような面倒くさいことしてあげませんよ。原作ジェイドがそういう態度を見せるようになるのは、ルーク自身がある程度頑張る意思を見せ、実行してからですよ。 これが監督さんが仰っていたところの、《性善説に基づいた芝居づけ》なんでしょうか。大佐がみょーに優しい人になってて驚き。崩落編序盤だというのになんたるツンデレおじさん。 でも。ジェイドは優しいんですがルークが異常に悄然としてるので、非常に可哀想にしか見えないのでした。 《悪人はいないのにルークが可哀想》状態が実現している。すごい。
前回分までは、ルークの可哀想さが削られ薄められていると感じましたが、今回はルーク一人で卑屈になってます。何なんだろうこの段差。ツンツンしてるジェイドに向かってろくに喋ることもできないなんて。原作ルークはたどたどしくながらちゃんとジェイドに謝罪していましたよ。アニスに嫌味言われても怒らず卑屈にならず熱意を消さなかったですよ。 「……ごめん。だけど、俺、前みたいなことはしない……と思う……」「いや、まぁ、先走ったのは事実だし」 「いや、いわれても仕方がないよ。でも寝てるわけにはいかないんだ。何を言われても、俺はやらなきゃ!」 原作のルークは、ジェイドやアニスに真っ向から嫌味を言われても、そりゃ傷ついた様子は見せますが、ここまでヘコたれてなかったです。もうちっと気概がありました。 ルークはとても弱い子なんですが、同時に、とても強い人だと思うのですよ。だから《変われた》んだし。ルークのそういう目を眩ませるような強さに、復讐者のガイも、兄さんを殺して私も死ぬみたいに思い詰めてたティアも、過去の罪を引きずっていたジェイドも、今犯している罪に慄くアニスも、みんな感化を受け、結果的に救われたのではないかと。 ルークは過酷な目にばかり遭う可哀想な人で、短髪時代は特に厳しい状況が続くし、頻繁に悩み迷い、地獄のように落ち込みます。それでも、レプリカ編前半以外では、言うべきことも言えずにうじうじすることだけはなかったと思います。 特に崩落編序盤は、迷いながらもやる気は非常にある時期で、だからこそ、その頑張りにアニスもジェイドも感心して、セントビナー救出作戦以降は彼をしっかり信頼するようになったんじゃないかなと思うわけで。 なので今回のうじうじルークは、この時期としては、ちょっとやり過ぎなんじゃないかなぁと思ったり。……最初に書いたように、今回のラストシーンを綺麗にまとめるために、あえてグズグズさせてるのかもしれないですけど。
ダアトの街へ。街なかを馬車が走ってました。やっぱ自動車は一般的じゃないんかな。あと、港の位置が原作と違う? 街に隣接してました。 アニスが不意に現れます。アニメアニスは意図的にガイを脅かすべく飛び出したようで、「ばぁーっ♥」なんて言ってました。間近に迫られたガイは悲鳴をあげてルークの背中に逃げ込む、のは原作通りですが、更に、ルークの後ろにいたティアに怯えて勢い余って露店に並べられたリンゴの中に突っ込む様子が加えられてました(笑)。そんな凄い有様を見ても、もはや仲間の誰も慌てない(笑々)。ガイはシリアスもギャグもこなせる、いいキャラクターだなぁ。
ルークを見たアニスは最初アッシュかと思い、やがてルークだと気付いて驚く。間違われたルークは気まずさを感じる…。アニメではエピソードを付け加え、《アニスがルークに辛辣な嫌味を言う》要素をここでまとめて表していました。 (アニメ版) とても上手くできたアレンジだと思います。すごい。 にしても、アニメのルークはティアを精神的に頼っちゃってるなぁ。それと、ジェイドの台詞のニュアンスが微妙に変わって、困るルークに助け船を出すべく、やんわりアニスを宥めたような形になっています。今回のジェイドはなんでこんなに優しいんだろ(苦笑)。 ちなみに元になったと思われる原作のエピソードは以下の二つ。 (原作・メインシナリオ)
前述したように、原作ルークはアニスに辛辣に嫌味を言われても変にヘコたれてないんですよね。空元気であろうとも。髪を切って変わると誓った、その思いは半端なものじゃない。 原作ルークはこの後、自らアニスに話しかけて、神託の盾本部について質問してました。気後れしておらず、積極的に交流してます。アニスは少し嫌味を言いますが、すぐに気持ちを切り替えて、笑顔で分かり易く説明してくれる。するとルークも彼女に笑顔を向けて「ありがとう」と言ったのでした。言われたアニスの方は「はぅあっ!」と声をあげて、アラミス湧水洞でのガイと同じく心底驚き、次いで薄気味悪そうに「……ルークにありがとうって言われた」と呟いてました。「はは、最初は驚くよなー」と笑うガイ。今までは、ルークに何をしてもお礼を言われたことなんてなかったんですね。 …現段階では、こんな風にルークにツンツンしているアニスが、レプリカ編に入ると損得抜きにルークのために涙を流し、ぎゅっと抱きついてくるようになるんですから、これこそ語源的な意味での《ツンデレ》ってやつか。TVアニメOPのラストカットは毎週見ても見飽きませんです。
第8話で、バレバレのはずの第七譜石探索任務をティアが隠している様子なのが奇異に思えたのですが、その伏線(?)が今回で回収されました。大詠師特命任務の証人を連れて来たと偽って、ティアが仲間たちを連れての教会潜入に成功します。入ってから今更のように アニス「ちょっとちょっと。どういうことか説明してよね」 と会話してました。えー…。アニメのジェイドは本気で、ティアが第七譜石探索の密命を帯びていることに気づいてなかったのか。 ちなみに、原作だとジェイドの方から「ティア。第七譜石が偽物だったという報告は、まだしていませんよね。私たちを第七譜石発見の証人として本部へ連れて行くことはできませんか?」と持ちかけるんですよね。でもアニメでは、ティアが仲間に説明すらせずに、ただ「私に任せてください」とだけ言って教会の門に向かったことになってました。仲間たちも詳しい説明を聞きもしないでイキナリ門へ。だからティアが番兵たちに嘘の説明を始めると、全員があからさまに「初耳ですよ」って感じの驚いた顔になったという…。どうして番兵に疑われなかったのか不思議です(笑)。報告・連絡・相談は団体行動の基本だよ〜。
神託の盾本部だけではなく、ダアトの教会そのものがモースの命によって進入禁止にされたことになっていました。なので内部には一般信者も一般教団員も一切いません。そして、真っ直ぐ神託の盾本部へ行ったはずなのに、何故か礼拝堂を通過してました。 この後はどうするのと問うたアニスに「勿論、実力行使です♥」とイイ笑顔で告げる大佐。サッと眼鏡の表面に光が走りましたが、なんと《キュピーン!》って感じの効果音まで入ってました(笑)。
詠師トリトハイムは未登場。多分、最後まで出てこないのでしょう。…もしかしなくても、ケセドニアのアスターも登場しないような気がする。 アニスの両親も未登場でした。この人たちは登場させないわけにはいかない気がするんですが…。今後、ちゃんと出てくるのかな。ガイが姉の死の記憶を取り戻すエピソードに初登場を兼ねさせるんでしょうか。もし出てこないなら、かなりストーリー改変が入ることになりますよね。 …あ。雑誌等の予告にアニス母の登場が書いてありました。じゃ、やっぱ初登場でガイの記憶回復なんだ。
神託の盾本部へ向かう通路を隠れながら走る。原作のレアなイベント、《モースとリグレットの会話の盗み聞き》がしっかり採られていました。その会話はカットなしで、修正もほぼ無し。今回は本当に尺に余裕があるんですねぇ。 にしても、モースたちから隠れるべく咄嗟に逃げ込んだ空き部屋で、引き出した椅子に反対向きに座り込んで、背もたれに抱きつくみたいにもたれかかってるガイ様。くつろぎ過ぎじゃ(笑)。
ここで、ジェイドがルークに《人殺しの覚悟》を問いただす。 このエピソード自体は原作にも存在しているのですが、アニメ版ではタルタロス脱出後の《人殺しの決意》をカットしていたので、ここにまとめられた形になって強調されていました。 (原作・メインシナリオ) (アニメ版) 素晴らしい脚色でした。 長髪時代の《人殺しの決意》がカットされたこと自体は、やっぱり少し残念に思いますけど、それでもここの脚色は本当に素晴らしかった! 戦闘シーンの最初と最後のシチュエーションがループしているので、脚本段階では斬り結ぶシーンがなく、ルークが不意を突かれて神託の盾兵の剣を受けてすぐに、剣を弾き返して斬り殺す展開だったのかも。第3話のルークの初めての人殺しとシチュエーションを揃える意図で。脚本、同じ人が書いてますもんね。でも作画の手間をかけて、かなり長い 人間との一対一の戦いをこれだけ長く、しかも今までになく良い動きで描いたのは、放映開始前に監督さんがコメントしておられた、《ルークの成長に合わせて戦闘も変化させる》って演出意図なのかな。それにしても動きが尺に押し込めるべく早回ししたかのように早かったですが(笑)。ガイよりよっぽど早えぇ。なんにしてもカッコよかったし、だからこそ、より心に残るエピソードになりました。すんごく良かった!
囮となって神託の盾兵たちを引きつけて、お目々をぐるぐるさせながら必死に逃げ回るミュウは、もう、お疲れ様と言うしかない……。(@_@;) キミのおかげで犠牲を最小限にすることができたんだよ。ありがとう。
ついに、イオンとナタリアが軟禁された部屋を探し当てます。ガイと共に扉を守っていた兵を殺して、中に飛び込む。軟禁されてた部屋の窓、雨戸まで閉じられてて徹底されてました。 ルーク「イオン! ナタリア! 無事か?」 切ないなぁ……。 ちなみに、原作ルークは「アッシュじゃなくて悪かったな」と、少し皮肉を込めて言っていました。ナタリアが怒って「誰もそんなこと言ってませんわ!」と言い返すとムスッとしたりして。微妙に痴話喧嘩風味。……ふむふむ。
前述したように、ジェイドとの初再会時のルークの台詞「……いたら悪いのかよ」が、原作ではふてくされた声音なのにアニメ版では俯いて消え入りそうな声で言ってます。それと同じ現象がここでも起こっています。 原作のこの時期のルークはもう少し逞しくて、辛くとも強いて顔を上げている。気心の知れたナタリア相手だと、むしろ怒った様子さえ見せる。原作ルークがナタリアに対して申し訳なさそうな態度を見せるようになるのは、夜明けのシェリダンでアッシュとナタリアが約束の言葉を語り合っているのを覗き見して以降くらいじゃないでしょうか。でもアニメのルークは既にヘタレていて、とにかく繊細でひ弱な印象ですね。 前三回分が、原作にあったルークの繊細さや《可哀想さ》を削る描き方でしたので、急激過ぎる変化に戸惑いました。 髪を切ったから、今まで抑えていた演出が解禁になったってことなのかなー。長髪時は凄く気を遣って、視聴者に嫌われないよう同情され過ぎないようにバランスとってたのが、ここからはあらゆる点で自由に行きますよー、みたいな(笑)。
息抜きのように、ミュウがイオンとナタリアに褒められて嬉しそうに照れる、可愛いオリジナルエピソードが入ります。 #ミュウ、にゅっと顔を出して、気まずい空気など気付かない様子でニコニコ笑う ルークより先にミュウが認められちゃった(笑)。 ソファの背にしがみついているミュウが、短い足をジタバタジタバタ動かし続けているのが可愛いです。やっぱ『うる星やつら』のテンちゃんを思い出すよ。性格は真逆ですが、オムツ穿いて空飛んで火を吹くところとか(笑)。
イオンの謝辞と可愛いミュウに全員が癒され、ルークとナタリアも心救われたところで、第四石碑の丘まで逃走。 原作では丘に着いてから立ち話してましたが、アニメでは丘まで駆け登りながら喋ってました。第3話の《タルタロスから即座に走って逃走》や第7話の《六神将が走って逃走しながらお喋り》と同じ系統の脚色ですね(笑)。走って場面転換、走りながら会話って、結構珍しい・慌ただしい感じで印象に残ります。 身体が弱い筈のイオン様がせっせと走る姿には、やっぱ違和感…と言うか不安は感じるなぁ。(^_^;) 丘に到着すると、皆ハアハアと苦しそうに息を整えてたのに、ジェイドだけ息も荒げずケロリンパとして立ってました。相変わらず得体がしれねーなぁ最年長。 んで、イオン様だってなんとか立ってたのに、アニスはその場にバタッと突っ伏して両手両足をついちゃってました。もしかしなくても一番体力がないのはアニスなんですね最年少女子。(ゲームシステム上のHPは低くないけど、物語上では、疲れた疲れた言うシーンが四回はあったし。) ミュウが、息を荒げているルークの肩からスッと飛び立って、「みゅう、みゅう」とハンカチでかいがいしくルークの額の汗を拭いていました。愛らしいみゅう。でもルークは隙あらばミュウに乗っかられてて大変だみゅう。ルークの肩は常にミュウに狙われてるみゅう。ついでに、ミュウのハンカチはどっから出てきたんだみゅうぅ。やっぱり耳の中ですの?
イオンの提案でマルクトのピオニー皇帝のもとへ向かうことに。でも船はどうする、とルークとガイが心配していると、ジェイドが「それなら。アッシュがタルタロスをダアト港に残してくれてますよ」。 ふと思ったんですが。タルタロスはマルクト軍の陸艦。なのに《タルタロスを置いて行ったのはアッシュの気遣い》みたいな言い回し。改めて考えてみたら不思議かも。 原作だとアッシュの提案でタルタロスを外殻に上げ、暫くは彼をリーダーにして行動してましたから、こういう言い方されても違和感なかったんですけど。でもアニメ版では打ち上げを提案実行したのはジェイドでアッシュはお手伝い。ワイヨン鏡窟へ行く指示を出したのもジェイドだったので、今更ながら「あれ?」と思ったのでした。謎だなぁ。
原作のダアト港は、ダアトの街から第四石碑の丘を越えて街道をちょっと行った先にあり、街から離れています。ところがアニメ版のダアト港は街に隣接している。なので、これではダアトの街から第四石碑の丘まで走って逃げた後、また街まで戻って港に行くことになります。しかも、行きに第四石碑の丘(?)から見下ろした時には無かった(ように見える)のに、イオンたちを救出してから見下ろすと、港にタルタロスが停泊しているのがハッキリ見えるのでした。ミステリー。
ラストシーンは、原作ダアト第4石碑の丘後のフェイスチャット『アッシュの思惑は?』と、スピノザ追跡イベントの《アッシュに追いつけずクリア》会話などから、ルークとガイの会話部分のエッセンスを抽出したみたいな感じのオリジナルエピソードでした。 #一人、丘の上からダアトを見下ろすルーク 自分に出来ることをやるんじゃなかったのか、か。ガイはルークかティアから、ユリアシティでのルークの決意の内容を聞いてるってことですね。 最後は、荒海の中のタルタロスと背を向けたアッシュの横顔、そして決意の表情を見せるルークのアップを組み合わせたイラストカットで締めでした。
ラストのルークの、決意を込めた強い表情は、今回の覇気に乏しく卑屈なルークの印象を払拭してくれるものでした。やれやれよかった、安心しました。 最後にルークを励ます役がガイだったのも、ガイファンなので嬉しかったです。今回は一話全体でアラミスエピソードをやった感じかな。
今回の総論。
ではまた次回。 |