注意!

 

# 3 神託の盾オラクル来襲

脚本:岸本みゆき/コンテ:青木康直/演出:鳥羽 聡/作画監督:前澤弘美

 ガイが再登場して嬉しい回でした。

 

 以下は重箱の隅ツッコミです。読みたい方だけどうぞ。





 今回はアバンが二段重ねになっていて、まずは《ユリアの独白》という形で世界観のおさらい。次いで《前回のハイライト》が流れてました。……正直、《前回のハイライト》は要らないので、その分、本編内でカットする台詞を減らしてほしいかも。

『この母なる星、オールドラントは、七つの音の振動、音素フォニムによって形作られている。大地も海も、あらゆる生きとし生けるものの全てが、みなそれぞれの旋律を奏で、調和した美しい世界。
 しかし、七番目の音素フォニム・ローレライの意識は語る。この星の誕生から終焉を。
 私、ユリア・ジュエは、これを預言スコアとし、後の世の人々に託すものである』

 惑星を取り巻く譜石帯の辺りに《ユリアの姿の精霊のようなモノ》が漂っているという描写は原作冒頭のムービーの時点でありますが(原作版では一人ではなくウジャウジャいます)、これは現実にそういうモノが譜石帯にいるということではなく、砕かれた《ユリアの譜石》、即ち《ユリアの預言スコア》の擬人イメージ化、なのだそうです。

 

 タルタロスに拘束されたルークとティアの尋問。ミュウも一席を与えられてちょこんと椅子に座っているのは原作どおり。ただ、ルークとティアが手枷をはめられていて、協力要請される段になって初めて外されたのは、アニメオリジナルの流れ。

 原作では間に艦内探索のゲームパートを挟む、長くて少しくどいエピソードを、簡潔に上手く短縮してありました。スッキリ。ただし、《譜術と音譜帯おんぷたい》と《譜石とは何か》《譜石に第五音素フィフスフォニムを吹き込むと照明になる》などを説明する部分もカットされちゃいましたので、アニメ版のみの視聴者さんは公式サイトの用語集のチェックが欠かせなさそう。で、例によってギスギス会話の数々も殆どカット。

 

カットされたギスギス会話の一部

ジェイド「温室育ちのようですから、世界情勢には疎いようですし」
ルーク「けっ、バカにしやがって」

ルーク「協力して欲しいんなら、詳しい話をしてくれればいいだろ」
ジェイド「説明してなお、ご協力いただけない場合、あなた方を軟禁しなければなりません」
ルーク「何……!」
ジェイド「ことは国家機密です。ですからその前に決心を促しているのですよ」

ルーク「へー、おまえでも笑うことあるんだ」
ティア「……失礼な人」

ルーク「おーい! 俺を置いてけぼりにして勝手に話を進めるな!」
ジェイド「ああ、済みません。あなたは世界のことを何も知らない『おぼっちゃま』でしたねぇ」
ルーク「……なんだと!?」

イオン「チーグル族は教団にとって聖獣ですから。それにエンゲーブで受け取るはずだった親書も届くのが遅れていたし……」
ルーク「おまえ、人がいいな」
ティア「あなたとは正反対ね」
ルーク「おまえ いちいち感じわりぃぞ!」
ティア「そっくりそのままお返しするわ」
イオン「二人とも、仲良くして下さい……」

イオン「教団の始祖ユリアは、チーグル族から第七音素セブンスフォニムを操る術を学んだと聞いています」
ミュウ「照れるですの……」
ルーク「おめーが教えた訳じゃねーだろ。ブタザル」
ティア「ミュウが可哀相じゃない」
ルーク「うるせぇっ!」

アニス「ルーク様♥ ルーク様って、すっごく高貴な方なのに全然気取ってなくて、素敵です♥」
ティア「アニスって可愛いのに趣味が悪いのね……」
アニス「ティアさんは大詠師派だから……私、嫌いです……」

ルーク「何も殺すことなかったんじゃないか?」
ジェイド「おやおや。あちらは我々を殺してもよく、こちらは殺すのはよくない、というのは道理が通りませんねぇ」
ティア「ルーク。これは軍事演習でも剣術の稽古とも違うのよ。相手の命を気遣う余裕なんてないわ」
ルーク「でもよ!」
ジェイド「相手も覚悟をもって襲撃してきていると思いますよ。組織のために命がけで作戦行動をとる。それが軍人です。ファブレ公爵家の方は、その覚悟なしに戦場に身を置けるようですが」
ルーク「ちっ! そういう事言ってんじゃねぇよ、うわ〜もうくそっ」

ジェイド「それより、このタイミングでは詠唱が間に合いません。譜術は使えないものと考えて下さい」
ルーク「どっちにしたって封印術アンチフォンスロットのせいでセコい譜術しか使えないんだろ」
ティア「大佐は少しずつ封印術を解除しているのよ。そんな言い方、最低だわ」

 こーやって並べてみると、ホントに原作のこの時期はギスギスしてます(苦笑)。ただ、アニメ版でも、

ティア「知らないのはあなただけだと思うわ」
ルーク「……お前もイヤミだな」

ルーク「さぁな。バチカルまで連れてってくれるなら、もう何でもいいや」
ティア「……軽薄……」
ルーク(怒)〜! お前ホント、いちいちうるせぇな!」
#ティアを指さして詰め寄るルーク。ティア、ふいっとそっぽを向く。ミュウが宙を滑ってルークの眼前に回り込む
ミュウ「ケンカしないでくださいですの!」
ルーク「お前はいちいちうっぜぇんだよ!」
#ティアを指さしていた腕をぶんぶん振って喚くルーク

という部分は、原型に近い形で残されてありました。

 といっても、あくまでコメディっぽい、むしろ微笑ましい演技。痴話ゲンカの予行練習みたいな? やはり全体に優しい暖かい感じにアレンジされています。

 例えば《両手に花》のエピソードは、原作だと「おめーじゃねーよ。アニスとミュウだろ」と意地悪くルークに言われてティアは黙り込んでしまうという気まずさなのですが、アニメ版ではミュウがオスだと知って(そうだったんだ。でも、可愛い♥)と内心で思いながらティアが可愛く微笑むというオチが追加されていました。ティアの愛らしさを見せる萌えエピソードに仕立て替えられてます。

 にしても、ティアの言うとおり、「おまえ、オスかよ!?」と言われて「はいですの」と誇らしげに胸を張るミュウはホンっト可愛いです♥♥

 

 そういえば、今回やっと、ルークがミュウを《ブタザル》と呼びました。

ルーク「ジェイドの野郎、人を馬鹿にしやがって。こんなことなら、チーグルの森になんて行かなきゃよかったぜ」
#ミュウが宙を滑ってルークの隣に並ぶ
ミュウ「でも森に来なかったらご主人さまとミュウの出会いもなかったですの」
ルーク「黙れブタザル!」
ミュウ「ブタザル……」
#不思議そうに呟き、「みゅう?」と少し考え込む様子のミュウ

 原作では、ルークが初めてミュウをブタザル呼びしたとき、ティアが「ルーク! 酷いわ!」と怒ったんですが、アニメ版では怒りません。また、原作では少なくとも外殻大地編まで、これは横暴なルークから哀れなミュウへの言葉の暴力という扱いで、ミュウも悲しそうな鳴き声をあげたり日記に何回ブタザルと呼ばれたか記録してみたり、嫌がって根に持っている様子が窺えたんですが(レプリカ編からは嫌がらなくなり、むしろご主人様に名前を付けてもらって嬉しいと、ルークの美点として数え出す)、アニメ版では最初から全く嫌がっていませんでした。ブタザルと呼ぶのは酷いことではない、あくまでユニークなニックネーム扱いで、愛情ある関係です虐待じゃありません、ということみたいです。

 

 ティアが、大詠師モースが戦争を望んでいるはずがないと反駁し、アニスに「ティアさんは大詠師派なんですね。ショックですぅ……」と言われて「私は中立よ」と返すシーン。原作でもドラマCD版でも、ティアは大詠師派だと言われて戸惑ったように声を揺らして半端に否定します。(文字では「私は中立派よ」と断言して書かれてますが、声は「わ、私は中立派よ」と揺らしてある。)ところがアニメ版では全く声を揺らさず、文字どおりに冷徹に言い切っていました。…ふむ。多分、ティアの揺れない断固とした表情が付いちゃってたから声優さんも演技を変えたんだろうと思うんですが。

 ついでにアニスの方も、原作では猫を被った感じの(まだ真意を見せない)声音でしたが、アニメ版では胡乱げな表情と、机に両肘をついてダラッと身を乗り出したポーズが描かれていて、声の演技もそれに添ったものになっていました。この表情とポーズは『マ王』漫画版からそのまま採られたもの。

 玉の輿を狙うアニスは、原作より分かり易く記号化されてる感じでした。「はわわ。公爵様のご子息? ……ということは」と悪い顔で低く呟いたかと思えば、クネクネして「玉の輿チャ〜ンス♥」と目をハートにしたり。猫を被る間もなくアニス節全開ですね(笑)。よく動くし、可愛くて面白くていいなぁ。これも『マ王』漫画版から採った演技ですね。

 

 ルークに協力を要請した際のジェイド。「人にものを頼むときは、頭下げるのが礼儀じゃねーの?」 と言われて、片膝をついて丁寧に請願してみせる。で、ルークに「あんた、プライドねぇなあ」と言われて、「生憎と、この程度のことに腹を立てるような安っぽいプライドは持ち合わせていないものですから」とニッコリ。

 ここ、ジェイドは大人だよねと素直に見る向きもあるかもですが、嘘くさい笑みが全てを台無しにしてますよね(笑)。また、アニメ版ではこのシーン、眼鏡のブリッジを指で押し上げる例の仕草をして、ずっと眼鏡を光らせてジェイドの目を見せないようにしてまして、なんとも憎い演出になっておりました。

 ジェイドに頭を下げられ《様》付けされたルークは「呼び捨てでいいよ。キモイな」と言う。ルークはイオンにも呼び捨てでいいと言っていましたし、ガイにもそう呼ばせていて、ティアがそう呼ぶのも自然に許しています。けれど誰に対しても呼び捨てでいいと言って回ってるわけでもなくて、フリングス将軍やセシル将軍やアルマンダイン伯爵など、多くの人に対しては《様》付けで呼ばせるままです。

 要すんに、ここでルークがムカつくおっさんに「呼び捨てでいいよ」とわざわざ言ったのは、内心で(少し悪かったかな…)と後悔して、多少歩み寄ろうと考えたからだと思われる。この当時のルークの一杯一杯の謝罪、みたいな。「キモイな」と悪態をくっつける辺りがどうしようもない子供っぽさですが。ジェイドはそれが分かってたと思うんですけど、「わかりました。ルーク『様』」と笑顔で拒絶(笑)。大人は大人でも、《だめな大人》だよ!(大笑)

 

 神託の盾オラクルの襲撃。原作ではライガがグリフィンの背に乗って襲って来たとしか語られていませんでしたが、アニメ版ではラルゴも飛翔するグリフィンの背に微動だにせずに仁王立ちしてました。

 ラルゴのグリフィン立ち乗りも『マ王』漫画版から採ったもの。そのシーンのラルゴの眼窩が黒塗りになってるのも。ホント漫画版が好きだなぁ、アニメ版は。

 ともあれ、すげーバランス感覚だナァーと思いましたが、『テイルズ オブ マガジン』の連載漫画ではアッシュ、リグレットも同様に、一人一頭のグリフィンの背に仁王立ちしてタルタロスに乗艦してました。六神将は凄い。ちなみにヴァン謡将はアクゼリュスからグリフィンに乗って逃げる時、片膝をついた状態でした。立ってなかった。ヴァンが一番ヘタレ?(笑)

 

 ライガ(厳密にはライガル)が先んじてタルタロスの乗組員たちに襲いかかり、数頭ずつで一人をガフガフと食べてました。わー。

 ルークが「冗談じゃねぇっ! あんな魔物がうじゃうじゃ来てんのかよ! こんな陸艦に乗ってたら死んじまう! 俺は降りるからな!」 と、パニック映画なら最初の犠牲者になる人の台詞みたいなことを言って逃げ出そうとしますが、侵入してきたラルゴに大鎌の峰で壁に叩きつけられ、人質に取られてしまう。さー来たぞ来たぞ、少年冒険活劇ものの主人公にあるまじき小者キャラっぷりが(笑)。

 ジェイドがサンダーブレードを放つ。サンダーブレードはジェイドの譜術の中で一番好きなんで、なんか嬉しかった。なんでかっつーと、第二秘奥儀のインディグネイションを使えるようにするための条件の一つが《サンダーブレードの使用回数200回以上》だったので、一時期、大佐がこれ以外 術技を使えない設定にして、延々使ってたからです。そればっか聴いてたら刷り込まれた(苦笑)。

「雷雲よ。我が刃となりて敵を貫け。――サンダーブレード!」

 ラルゴがジェイドを《死霊使いネクロマンサージェイド》と呼ぶ。「死霊使い。ネクロマンサー・ジェイド」と言葉を重ねて言ってたのが、文字面の分からないアニメ版ならでは。

 多分、セントビナー初回訪問時の街の子供との会話や、バチカルの港でのコンタミネーション1のイベントはアニメ版じゃやらないですよね。ジェイドがどうして死霊使いネクロマンサーと呼ばれ恐れられたのかは、アニメ版しか見なかった人には謎のまま終わるのかも。(もっとも、原作でも、そのものズバリな明言は避けられてますが。戦場で死体を回収してレプリカを作っていた…傍目から見ると死者を蘇らせていたから、ですよね。マルクト帝国軍第三師団は死人しびとの軍、という噂が神託の盾オラクル騎士団にも広まっていたほど。

 

 ラルゴとの戦闘。原作ではティアが身構えようとしたところで、動いたらルークの首を斬るとラルゴが牽制しますが、アニメ版ではティアとシンクロしたようにジェイドも動いてました。身構えようとしたというよりは動き揃えて歩いてる感じだった。なんか可笑しかった。あと、ジェイドがミュウに指示して天井の譜石に炎を照射させ、輝かせて目くらましにする展開は使用されず。

 ラルゴが刺されて血が迸る。血に透過光処理が施されていたことに突っ込む感想を沢山見ましたが、自分的にはそれはどうこう思わなかったです。そういえば原作では血は全く表現されなかったんだっけ…と改めて思いました。流れる血、というものは、人間の感情を大きく動かすものなんですね。

 ジェイドがかけられた封印術アンチフォンスロットを解くには数ヶ月かかる、ということは、ここではまだ説明されず。ドラマCD版みたいに、そのうち「もうとっくに解けましたよ」なんてアッサリ語られるんでしょうか。

 

 インタビュー記事で監督さんが、原作では言葉でしか語られていなかった部分も映像化すると仰っていましたが、今回それが一つ出て、アニスがタルタロスの窓から吹き飛ばされた状況が映像化されていました。「ヤローてめーぶっ殺ーす!」のシーン(笑)。

 ただ、《親書をイオンから預かった後、イオンが神託の盾オラクル兵に腕を掴まれたのを見て「イオン様を放せぇ」と飛びかかり、外に投げ飛ばされた》という形になってましたけど、原作では《敵に奪われた親書を取り返そうとして魔物に船窓から吹き飛ばされた》と語られてましたんで、状況が違いますね。……神託の盾にタルタロスの位置を報せたのはアニスですんで、どうせならその辺の含みも多少見せてくれたらよかったなぁ。それこそ《表情の伏線》とかで。

 

 艦橋ブリッジへ。ティアが譜歌で近辺の兵を眠らせるという描写はなし。……にも拘らず、ジェイドとティアは真正面から普通に自動ドアを潜って艦橋の中へ。いいのか。そんで素人のルーク一人を「そこで見張りをしていて」とその場に残していきます。

 原作だと、ティアの声音はいかにも邪魔だからそこで静かにしていてと言わんばかりに尖っていて、ルークも「……へっ。邪魔だってか」とふてくされるのですが、アニメ版のティアの声音は静かで、ルークも素直に「わ、分かった」と答えるのでした。全然違〜う。

 

 原作では、ティアの譜歌で眠っている神託の盾オラクル兵を前にして、手持ち無沙汰なルークとミュウが第七音素セブンスフォニムと譜歌について話し、自分の知識量がブタザル以下だということに苛立ったルークがミュウを掴んで振り回すなど、ちょっとコミカルなシーンの後、一転、目を覚ました神託の盾兵に襲われて殺されそうになる、という緩急の付いた展開になりますが、アニメ版では転がるマルクト兵たちの死体を眺めながら(なんだよ。なんなんだよこれ……)と内心の怯えをこらえていたルークが、唐突に神託の盾兵に襲われるという急展開です。

 ルークの初めての人殺し。このシーンは、原作、『マ王』漫画版、ドラマCD版と、みんな違う演出になってますよね。最もねっとり描いたのはドラマCD版でしょうか。

 原作だと、ルークはまず、神託の盾兵に右(利き手じゃない方)の二の腕を軽く斬られる。(原作には流血の描写がないので違うかもしれませんが、相手の剣の一閃から逃げて二の腕を押さえ、怯えています。)相手が向かってきたので剣を抜いて立ち向かいます。ここはプレイヤー操作のイベント戦闘なんですが、仕様的に走り回れなくなっている。足がすくんでいるらしいです。何回か切り結ぶと悲鳴をあげながら背を向けて逃げようとし、しかし無様に転び、必死で剣を振り回して、それが偶然、相手の胸に突き刺さる、という流れになっています。

 アニメ版では非常にシンプルに、ミュウの「ご主人様!」の声に振り向いたら神託の盾兵が「死ねぇ!」と斬りかかって来ていたので、「来るなぁ!」と、抜いた剣を突き出したら、それが相手の胸に刺さった、という形でした。

 

 というか、これも『マ王』漫画版を参考にして画面作ってるみたいですね。敵が「死ねェエエエ」と剣を振りかぶって、ルークが兵の方を向いたまま顔だけ背けて「く…くるなァ!!!」と剣を突き出したらそれが刺さる。刺したシーンの絵の構図・ポーズ、漫画版と全く同じ。んで、ルークの顔のアップ、兵士が断末魔の表情を見せながらルークの方に向かって倒れ込んでくるというカット割りも同じ。絶命した兵士を見るルークの俯瞰の構図も同じ。死体からはルークの剣が突き出て血まみれで突き立っている。で、ルークがそれを見ながら「さ……刺した……。俺が……殺した……?」と言いつつ手をわなわな震わせるまで、ほぼ同じ流れです。

 原作の方だとルークは自分の剣を持ったまま放心したみたいに俯いて突っ立って「俺が……殺した……?」 と呟くので、全然違うのですよね。つまりここ、漫画版の方が原作より採るに値すると判断されたってことか……。

 こうまで頻繁に使われてるとなってくると、アニメ版の原作は二つある…というか、二重に濾過されてるって感じです。原作をアレンジして作られた漫画版を更にアレンジして作られたアニメかー。原作ファンとしては微妙に複雑、かも。

 …まあ、漫画版はまだ崩落編終盤くらいまでしか進んでないから、レプリカ編に入ったらどうしたって参考にすることはできないでしょうけど。

 というかここまで沢山参考にしてるんならクレジット表記してあげなよ。と思わなくもなかった。権利関係で無理なんでしょうが。原作のメインシナリオライターさんがEDに監修協力という名で毎回クレジットされてるのは、結構凄いことなのでしょうか。

 

 原作では兵士キャラはみんな、兜の中の顔が見えません。無個性です。しかしアニメ版(と、『マ王』漫画版)は兜の中の顔が見える。断末魔の男の顔が、はっきりと見えました。

 う、う。

 ここの血は、やっぱり透過光処理でしたけど、口の中の血は赤黒い処理なんですね。歯がいっぱい欠けてんのかと思った。

 人を殺したことに怯え、両手をわなわな震わせるルークの表情と動きはアニメならではで、真に迫る。

 

 アッシュ登場。…アイシクルレインが、サンダーブレードみたいでした。原作だと宙に開いた空間の穴から氷塊が雨みたいに降ってくる譜術なんですけど、大きいのが一個しか落ちてこない。それが地に突き立つと爆発みたいに砕けて飛び散る、と。うーん? ルークとティアは一瞬で気絶。ジェイドはバックステップで華麗に回避。で、なんとミュウも無傷。気絶したルークに必死で呼び掛けてました。

 捕らえられたイオンがジェイドの前に連れてこられる、というオリジナル部分あり。原作にあった謎のシーン、《艦橋に戻りかけたアッシュが軽い頭痛を起こした様子を見せる》描写はカット。これ、『エピソードバイブル』でも無視されてましたし、今となっては削除するべき、無効化した伏線だったのかな?

 

 すっごい細かいですが、気絶しているルークに呼びかけるローレライの台詞が変更されてる(笑)。アニメ版のローレライさんは、ルークに「我が魂の片割れよ」と呼びかけるのがやたらと好きだ(笑)。これで三度目でんがな。(原作ではこの台詞一回しか言ってないよ!)

 

 タルタロスの船室(牢)で目覚めたルーク。原作のこの場面では消えてるミュウがちゃんと足してあって嬉しい。そしてやっぱり靴履いたままベッドに寝かされてる(苦笑)。こういうところは頑固に原作踏襲です。

 

 一方その頃、という感じで、シュレーの丘でダアト式封咒を解かされているイオンの映像入る。封咒が、原作では恒常的にカラフルに輝いていましたが、アニメ版では普段は無色の金属製のような扉で、解咒時にだけ鮮やかに輝くようになってました。ゲームと違って、プレイヤーが発見しやすいよう目立たせなきゃならない必要ないですもんね。なんにしても綺麗。

 

 話はタルタロスの船室に戻って。タルタロスから脱出しイオンを奪還するために戦うか否か、ルークに選択が突きつけられる。原作の会話の縮小版なのですが、ルークの態度が割と違う感じかもでした。言ってる台詞は大体同じながら、至る結論がなんか違ってる、みたいな?

(アニメ版)
#ルーク、立ち上がって
ルーク「……お、おい! そんなことしたらまた戦いになるぞ!」
#ティア、冷徹な声で
ティア「それがどうしたの?」
ルーク「また人を殺しちまうかもしれねぇって言ってんだよ!」
ティア「……それも仕方ないわ」
#冷たい目で言い、微かに表情を歪めて視線をそらすティア
ルーク「な……何言ってんだ……! 人の命をなんだと思って……」
ジェイド「そうですね。人の命は大切なものです。でもこのまま大人しくしていれば、戦争が始まって、より多くの人々が死ぬんですよ」
ルーク「……っ。けどよ……」
#ベッドに座り込んで項垂れるルーク
ミュウ「ご主人様……」
#ティア、ルークから目線を外して冷徹な顔で
ティア「戦う気がないなら、後ろに下がっていて。あなたは足手まといになる」
ルーク「た、戦わないなんて言ってない! ……人を殺したくないだけだ」
#ティア、僅かに俯いて、静かに
ティア「私だって……好きで殺しているんじゃないわ」
#ティア、ルークと目線を合わせないまま顔をあげて、冷然と
ティア「戦場では、相手の命を気遣う余裕なんてない。生きるか死ぬか、ただそれだけよ」
#何かに感じ入ったようにティアの横顔を見つめるルーク
ルーク「ティア……」
ジェイド「結局どうするんですか? 戦うんなら、戦力に数えますよ」
#ルーク、ムキになったように声を荒げて
ルーク「戦うって言ってんだろ」
ジェイド「結構」

 で、原作だと以下のような感じ。

(原作)
ルーク「……お、おい! そんなことしたらまた戦いになるぞ!」
#ティア、不思議そうに
ティア「それがどうしたの?」
#ルーク、立ち上がって
ルーク「また人を殺しちまうかもしれねぇって言ってんだよ」
ティア「……それも仕方ないわ」
#目を伏せて静かに言うティア。「!」と驚愕するルーク。ティア、目を上げて
ティア「殺らなければ殺られるもの」
ルーク「な……何言ってんだ……! 人の命をなんだと思って……」
ジェイド「そうですね。人の命は大切なものです。でもこのまま大人しくしていれば、戦争が始まって、より多くの人々が死ぬんですよ」
ティア「今はここが私たちの戦場よ。戦場に正義も悪もないわ。生か死か、ただそれだけ」
ルーク「……っ!」
ティア「普通に暮らしていても魔物や盗賊から襲われる危険がある。だから力のない人々は傭兵を雇ったり、身を寄せ合って辻馬車で移動しているのよ。戦える力のあるものは子供でも戦うことがあるわ。そうしなければ生きていけないから」
ルーク「そんなの俺には関係ない! 俺はそんなこと知らなかったし好きでここに来た訳じゃねぇ!」
ジェイド「驚きましたね。どんな環境で育てば、この状況を知らずに済むというのか……」
ティア「マルクトに誘拐されかかって以来、身を守るため、お屋敷に軟禁されていたそうですから」
ジェイド「この世界のことを知らなくて当然……ですか」
ルーク「仕方ねぇだろ! ガキの頃の記憶もねぇんだ! 俺は何も知らないんだ!」
ティア「確かにこんなことになったのは私の責任だわ。だから私が必ずあなたを家まで送り届けます」
#ルーク、ティアを見る
ルーク「…………」
ティア「そのかわり、足を引っ張らないで。戦う気がないなら、あなたは足手まといになる」
ルーク「た、戦わないなんて言ってない! ……人を殺したくないだけだ」
ティア「同じことだわ。今戦うということはタルタロスを奪った『人間』と戦うということよ。敵を殺したくないというなら、大人しく後ろに隠れていて」
ルーク「……なるべく戦わないようにしようって言ってるだけだ。……俺だって死にたくない」
#ティア、ルークを睨んで一瞬激昂する
ティア「私だって」
#感情を抑えて静かに
ティア「……好きで殺しているんじゃないわ」
ジェイド「結局戦うんですね? 戦力に数えますよ」
#ルーク、少しムッとしたように
ルーク「戦うって言ってんだろ」
ジェイド「結構」

 さて。違いがお分かりになったでしょうか。

 原作は、ルーク自身の《生きるという原罪》への葛藤、そして、今までの自分の常識が覆された混乱が描かれてます。あくまで、ルークの精神的な辛さを中心に語っている。ついでに、「そんなの俺には関係ない! 俺はそんなこと知らなかったし好きでここに来た訳じゃねぇ!」と言い切る、身勝手さと卑小さも存分に描写されている。そんなルークを《外界の人々》であるティアやジェイドは《なんて非常識なんだろう》という呆れと苛立ちと憐れみの態度を隠さずに見てきます。

 しかしアニメ版では、《辛さを押し隠すティアの強さ》が中心になってるのですね。そしてルークはみっともない、醜いことを一言も言いません。人を殺したくないと訴える、優しくて綺麗な部分しか採られていない。ティアはと言えば、表情と声に《辛さを押し隠している》様子をはっきり見せてきて、最後にはルークも「ティア……」と、感じ入ったように彼女を見つめるのでした。

 なーんーじゃーこーりゃ〜〜(笑)。

 別にいいけど、この時期でもう、ルークにティアの内面の辛さを推し量れちゃう物分かりのよさ、《視野の広さ》を与えちまうんかーい!

 崩落編まで待ってほしかったなそれは…。外殻大地編ではルークのギチギチに視野が狭い駄目っぷりを痛いくらい描写してくれてよかったのに。アニメ版のルークさんは普通の人過ぎだよ。こんなに普通で常識的で善良な青年が、なんでアクゼリュス崩壊させることになるんだかさっぱりぷーである。

 

 ジェイドが非常停止機構を作動させ、タルタロスを停止させる。その後の細かいイベントは全カット。左舷昇降口ハッチでイオンを連れたリグレットを待ち伏せ。…ああ、昇降口ハッチにちゃんと外の様子が覗けるガラス張りの丸窓作ったんだ…と感心しました。原作だと、ルークたちがどこから外のリグレットたちの様子見てたんだか分からなかったんで。外側から起動された非常昇降口ハッチの動きが見事でした。折りたたまれていた複雑な意匠の手すりまでスーッと開いて展開していくの。

 機先を制してリグレットたちに攻撃。原作では兵が上がってくるのを待って、扉が開いた瞬間にルークがミュウに火を吐かせましたが、アニメ版は『マ王』漫画版に倣い、階段を一気に駆け下りてミュウに火を吐かせてました。

 ティアがライガに肉弾攻撃で階段から吹っ飛ばされるところは、物凄い迫力でカッコよかったです。絵面自体は『マ王』漫画版を参考にしてるっぽいですが(原作ではライガの吐いた雷気に弾き飛ばされた感じでした)、音と声もよかった。

 ガイ様が華麗に参上。……あれ? これ結局、(原作の方も)マストじゃなくて砲台の上から飛び降りてきてんの?

 原作では飛び降りてくるなりリグレットを突き倒してイオンを抱えて救出してきて、ちょっと動きがコミカルでもあるんですけど、アニメではシリアスな殺陣たてでイオンを捕らえていた神託の盾兵たちを一瞬で斬殺してました。

 …つか、ここも『マ王』漫画版参考にしてるね。ガイのポーズもそのまま。

 かなりのロングショットで描かれてましたが、原作みたいにちゃんとアップにして「ガイ様、華麗に参上」と言わせてほしかったなぁ。(漫画版でも、ちゃんとアップのコマが並べて用意されていました。)

 原作ではリグレットの譜銃から放たれた弾を一発だけ剣で弾きますが、アニメでは二発弾く。リグレットが二挺譜銃だからというこだわりのアレンジかね。リズムがついてカッコよさが増したからなんでもよし。

 ガイが現れたのを見て、ルークが嬉しそうに「ガイ!」と呼ぶ。これはアニメオリジナル。

 ガイの登場に人々が気を取られた隙をついて、ジェイドがアリエッタを人質にし、神託の盾の一団をタルタロスの中に一時的に閉じ込める。キャラクターの位置が違うだけで、ここは原作どおり。にしてもアニメ版のアリエッタは可愛いです。もしかしたら原作より可愛いかも。

 …しかし、原作だと昇降口ハッチを外側から閉じてロックした後、ほんの少しですがその場で話すんですけど、アニメ版では即行、凄い勢いで全員で走って逃走しだしたので、理屈で言えば正しいながら、落ち着かない感じでちょっと変でした。ルークとガイの「ガイ! よく来てくれたな!」「やー、捜したぜぇ。こんな所にいやがるとはなー」の会話くらいは、こっちに回してもよかったんじゃないかなー。

 

 延々走って逃げてたら、途中でイオン様がヘバって倒れました。ジェイドが「このままではイオン様の寿命を縮めかねません」と言って休憩に。イオン様は冬のマラソンの授業には出られません。

 原作では歩いていてイオンが倒れて、ジェイドが「イオン様。タルタロスでダアト式譜術を使いましたね?」と指摘し、イオンが「すみません。僕の身体はダアト式譜術を使うようには出来ていなくて……」とルークに話す。イオンがダアト式譜術を使うと寿命が縮みかねないほど衰弱することが分かる。これは伏線でもあるんですが、アニメでは語らない…尺が足りなくて出来ない?

 ガイが自己紹介し、女性恐怖症を披露したところで神託の盾の追手が出現。いかにも尺が足りないという感じの忙しないスピード展開です。

 戦闘シーン。ティアが相変わらず《杖》で敵をバッサバッサ斬ってる。…甲冑着込んだ男の身体を。あの細腕でどんな怪力なんだよぅ。響律符キャパシティコアのおかげかしら。それはともかく、ガイはむちゃくちゃカッコ良かった。動きが派手なんですよね。高くトンボを切ってから一撃で斬り伏せたりとか。特撮ヒーローみたい。

 ルーク一人、恐怖のあまり身がすくんで剣も抜けない。そこに神託の盾兵が斬り込んで来ました。

 原作だと一応戦って、最後にとどめを刺す段になって躊躇してしまい、愚かにも目を閉じて剣を振り降ろしたら相手に剣を弾き飛ばされて殺されそうになる…という展開でしたが、アニメ版のルークは戦う以前の問題。ここだけ原作より情けなさ度アップです。

 ルークの危機を見てガイが駆け寄るが僅差で間に合わず、ルークを庇ったティアが二の腕を斬られて倒れる。一瞬後に駆け込んだガイが神託の盾兵を斬り倒す。流れは同じですが、原作では怯える神託の盾兵を前にしたルークに、ジェイドが「ルーク。とどめを!」と指示し、剣を弾き飛ばされたルークを「ボーッとすんな、ルーク!」とガイが叱咤していて、もっとシビアです。

 んで、細かいことですが原作ではティアが切られたのは左腕。でもアニメでは右腕でした。

ルーク「……ティア……お、俺……」
ティア「……ばか……」

 みっともなく座り込み、血を流して倒れたティアを前に震えるルークの姿で、今回は終わり。

 

 今回の総論。

  • ティアもルークも、人格的に《綺麗》
  • 設定の説明を三つ四つくらいすっ飛ばした
  • 『マ王』漫画版、相変わらず大人気
  • 走ってる(色んな意味で)

 

 余談ですが、今回、原作未見の方々の感想を拝見したところ、私の見た範囲では、怯えて戦わないルークに苛立ったり呆れ気味の方が多数でした。ちょっと新鮮だった。自分は初プレイの時この辺で何考えてたっけ…? 思い出せない。(つまるところ、大したこと考えてなかったんだろーなぁ。)

 ではまた次回。

 



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